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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078945
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20240604BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240604BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240604BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240604BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F17/04 A
H01F27/32 140
H01F27/29 P
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191583
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】寺内 直也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奈津子
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA08
5E070AA01
5E070AB03
5E070CB12
5E070EA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コイル導体間の結合を高める、少ないターン数の周回部を有するコイル導体を備える磁気結合型コイル部品を提供する。
【解決手段】磁気結合型コイル部品1は、基体内に設けられた第1コイル導体及び第2コイル導体を備える。第1コイル導体の第1導体パターンは、第1周回軌道部を有し、第2導体パターンは、第2周回軌道部を有する。第2面10bに対向する第2コイル導体の第3導体パターンは第3周回軌道部を有し、第4導体パターンは、第4周回軌道部を有する。第1周回軌道部は、コイル軸Axに沿う軸方向Tにおいて第2周回軌道部と対向する第1重複領域R11aを有し、第2周回軌道部は、軸方向において第1周回軌道部と対向する第2重複領域R21aを有する。第3周回軌道部は、軸方向において第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域R31bを有する。第1重複領域及び第2重複領域は、軸方向において第3非重複領域と対向している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りの周方向に延びる第1軌道の上にある第1周回軌道部を有する第1導体パターンと、前記コイル軸に沿う軸方向において前記第1導体パターンから離間して配置されており、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有し、
前記第1周回軌道部は、前記軸方向において前記第2周回軌道部と対向する第1重複領域と、前記軸方向において前記第2周回軌道部と対向しない第1非重複領域と、を有し、
前記第2周回軌道部は、前記軸方向において前記第1周回軌道部と対向する第2重複領域と、前記軸方向において前記第1周回軌道部と対向しない第2非重複領域と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第3軌道の上にある第3周回軌道部を有する第3導体パターンと、前記軸方向において前記第3導体パターンから離間して配置されており、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第4軌道の上にある第4周回軌道部を有する第4導体パターンと、を有し、
前記第3周回軌道部は、前記軸方向において前記第4周回軌道部と対向する第3重複領域と、前記軸方向において前記第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域と、を有し、
前記第4周回軌道部は、前記軸方向において前記第3周回軌道部と対向する第4重複領域と、前記軸方向において前記第3周回軌道部と対向しない第4非重複領域と、を有し、
前記第1重複領域及び前記第2重複領域は、前記軸方向において前記第3非重複領域と対向している、
コイル部品。
【請求項2】
前記第3重複領域及び前記第4重複領域は、前記軸方向において前記第2非重複領域と対向している、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第3導体パターンは、前記第2導体パターンと対向するように配置されている、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1コイル導体は、前記第1導体パターン及び前記第2導体パターンを含む
第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と
、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、

前記第2コイル導体は、前記第3導体パターン及び前記第4導体パターンを含む第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有する、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、前記軸方向に沿って延びる第1ビア導体によって接続され、
前記第3導体パターンと前記第4導体パターンとは、前記軸方向に沿って延びる第2ビア導体によって接続される、
請求項4に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1導体パターンの一端は、前記第1ビア導体に接続され、
前記第1導体パターンの他端は、前記第1一端引出部に接続され、
前記第2導体パターンの一端は、前記第1ビア導体に接続され、
前記第2導体パターンの他端は、前記第1他端引出部に接続され、
前記第3導体パターンの一端は、前記第2ビア導体に接続され、
前記第3導体パターンの他端は、前記第2一端引出部に接続され、
前記第4導体パターンの一端は、前記第2ビア導体に接続され、
前記第4導体パターンの他端は、前記第2他端引出部に接続される、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1周回軌道部、前記第2周回軌道部、前記第3周回軌道部、及び前記第4周回軌道部はそれぞれ、前記周方向に0.75ターン以上延びている、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記第1コイル導体のインダクタンス値と前記第2コイル導体のインダクタンス値との差は、前記第1コイル導体のインダクタンス値の3%以下である、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記第1導体パターンは、前記第1一端引出部と前記第1周回軌道部との間で直線状に延びる第1接続部をさらに有し、
前記第2導体パターンは、前記第1他端引出部と前記第2周回軌道部との間で直線状に延びる第2接続部をさらに有し、
前記第3導体パターンは、前記第2一端引出部と前記第3周回軌道部との間で直線状に延びる第3接続部をさらに有し、
前記第4導体パターンは、前記第2他端引出部と前記第4周回軌道部との間で直線状に延びる第4接続部をさらに有する、
請求項4に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記第1重複領域は、前記軸方向において、前記第3重複領域及び前記第4重複領域と対向していない、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項11】
絶縁材料から構成されており、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する第3面と、前記第3面と対向しており前記第3面から一軸方向において離間する第4面と、を有する基体と、
前記基体内に設けられた第1磁気結合型コイルと、
前記基体内に、前記第1磁気結合型コイルから前記一軸方向に離間して設けられた第2磁気結合型コイルと、
を備え、
前記第1磁気結合型コイルは、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、第1コイル軸の周りの周方向に延びる第1軌道の上にある第1周回軌道部を有する第1導体パターンと、前記第1コイル軸に沿う第1軸方向において前記第1導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有する第1周回部を有し、
前記第1周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第2周回軌道部と対向する第1重複領域と、前記第1軸方向において前記第2周回軌道部と対向しない第1非重複領域と、を有し、
前記第2周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第1周回軌道部と対向する第2重複領域と、前記第1軸方向において前記第1周回軌道部と対向しない第2非重複領域と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第3軌道の上にある第3周回軌道部を有する第3導体パターンと、前記第1軸方向において前記第3導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第4軌道の上にある第4周回軌道部を有する第4導体パターンと、を有する第2周回部を有し、
前記第3周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第4周回軌道部と対向する第3重複領域と、前記第1軸方向において前記第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域と、を有し、
前記第4周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第3周回軌道部と対向する第4重複領域と、前記第1軸方向において前記第3周回軌道部と対向しない第4非重複領域と、を有し、
前記第1重複領域及び前記第2重複領域は、前記第1軸方向において前記第3非重複領域と対向しており、
前記第2磁気結合型コイルは、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第3コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第4コイル導体と、
を備え、
前記第3コイル導体は、前記第1コイル軸から前記一軸方向に離間している第2コイル軸の周りの周方向に延びる第5軌道の上にある第5周回軌道部を有する第5導体パターンと、前記第2コイル軸に沿う第2軸方向において前記第5導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有する第3周回部を有し、
前記第5周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第6周回軌道部と対向する第5重複領域と、前記第2軸方向において前記第6周回軌道部と対向しない第5非重複領域と、を有し、
前記第6周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第5周回軌道部と対向する第6重複領域と、前記第2軸方向において前記第5周回軌道部と対向しない第6非重複領域と、を有し、
前記第4コイル導体は、前記第2コイル軸の周りの周方向に延びる第7軌道の上にある第7周回軌道部を有する第7導体パターンと、前記第2軸方向において前記第7導体パターンから離間して配置されており、前記第2コイル軸の周りの周方向に延びる第8軌道の上にある第8周回軌道部を有する第8導体パターンと、を有する第4周回部を有し、
前記第7周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第8周回軌道部と対向する第7重複領域と、前記第2軸方向において前記第8周回軌道部と対向しない第7非重複領域と、を有し、
前記第8周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第7周回軌道部と対向する第8重複領域と、前記第2軸方向において前記第7周回軌道部と対向しない第8非重複領域と、を有し、
前記第5重複領域及び前記第6重複領域は、前記軸方向において前記第7非重複領域と対向している、
アレイ型コイル部品
【請求項12】
請求項1に記載のコイル部品を含む、回路基板。
【請求項13】
請求項12に記載の回路基板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、主にコイル部品に関する。本明細書の開示は、より具体的には、高周波回路に適したコイル部品に関する。本明細書の開示は、また、複数のコイルを備えるアレイ型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品の一種として、互いと磁気的に結合する二以上のコイル導体を備える磁気結合型コイル部品が知られている。特開2016-131208公報(特許文献1)に記載されているように、磁気結合型コイル部品は、基体内で互いから電気的に絶縁されるとともに互いと磁気的に結合する二以上のコイル導体を有する。磁気結合型コイル部品は、回路において、例えば、コモンモードチョークコイル、トランス、または結合型インダクタとして使用される。
【0003】
磁気結合型コイル部品を構成するコイル導体の各々は、コイル軸周りの周方向に沿って延びる周回部と、周回部の両端の各々を対応する外部電極に接続する引出部と、を有する。従来の磁気結合型コイル部品に備えられるコイル部品の周回部は、比較的多いターン数を有している。例えば、特許文献1の磁気結合型コイル部品においては、各コイル導体の周回部は、5ターン以上巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-131208公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気結合型コイル部品においては、一般に、コイル導体間の結合が高いことが望ましい。このため、従来から、磁気結合型コイル部品の結合係数を高めるための提案がなされている。例えば、上記の特許文献1においては、磁性基体に埋め込まれた一組のコイル導体を、その巻回軸が略一致するとともに互いと密着するように設けることにより、高い結合係数を実現するとされている。
【0006】
高周波回路に用いられる磁気結合型コイル部品には、少ないターン数(例えば、2ターン未満)の周回部を有するコイル導体が用いられる。従来、少ないターン数の周回部を有するコイル導体同士の結合については十分な検討がなされていなかった。
【0007】
本明細書において開示される発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決または緩和することである。本明細書において開示される発明のより具体的な目的の一つは、磁気結合型コイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めることである。本発明のより具体的な目的の一つは、少ないターン数の周回部を有するコイル導体を備える磁気結合型コイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めることである。
【0008】
本発明の前記以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、「発明を解決しようとする課題」の欄の記載以外から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るコイル部品は、絶縁材料から構成されており、基体と、第1コイル導体と、第2コイル導体と、を備える。基体は、第1面と、この第1面と対向する第2面とを有する。第1コイル導体は、基体内に第1面に対向するように設けられる。第2コイル導体は、基体内に第2面に対向するように設けられる。
【0010】
一態様において、第1コイル導体は、第1導体パターンと、第2導体パターンと、を有する。第1導体パターンは、コイル軸の周りの周方向に延びる第1軌道の上にある第1周回軌道部を有する。第2導体パターンは、コイル軸に沿う軸方向において第1導体パターンから離間して配置されている。第2導体パターンは、コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する。
【0011】
一態様において、第1周回軌道部は、軸方向において第2周回軌道部と対向する第1重複領域と、軸方向において第2周回軌道部と対向しない第1非重複領域と、を有する。一態様において、第2周回軌道部は、軸方向において第1周回軌道部と対向する第2重複領域と、軸方向において第1周回軌道部と対向しない第2非重複領域と、を有する。
【0012】
一態様において、第2コイル導体は、第3導体パターンと、第4導体パターンと、を有する。第3導体パターンは、コイル軸の周りの周方向に延びる第3軌道の上にある第3周回軌道部を有する。第4導体パターンは、軸方向において第3導体パターンから離間して配置されている。第4導体パターンは、コイル軸の周りの周方向に延びる第4軌道の上にある第4周回軌道部を有する。
【0013】
一態様において、第3周回軌道部は、軸方向において前記第4周回軌道部と対向する第3重複領域と、軸方向において第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域と、を有する。一態様において、第4周回軌道部は、軸方向において第3周回軌道部と対向する第4重複領域と、軸方向において第3周回軌道部と対向しない第4非重複領域と、を有する。
【0014】
一態様において、第1重複領域及び前記第2重複領域は、軸方向において第3非重複領域と対向している。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示されている発明の一実施形態によれば、磁気結合型コイル部品において、コイル導体間の結合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態による磁気結合型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2a図1の磁気結合型コイル部品に含まれる一つの導体パターンを示す平面図である。
図2b図1の磁気結合型コイル部品に含まれる別の導体パターンを示す平面図である。
図2c図1の磁気結合型コイル部品に含まれるさらに別の導体パターンを示す平面図である。
図2d図1の磁気結合型コイル部品に含まれるさらに別の導体パターンを示す平面図である。
図3図1の磁気結合型コイル部品のI-I線断面を模式的に示す断面図である。
図4図1の磁気結合型コイル部品のII-II線断面を模式的に示す断面図である。
図5】従来の磁気結合型コイル部品における磁束の流れを模式的に示す図である。
図6】第2実施形態による磁気結合型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
図7a図6の磁気結合型コイル部品に含まれる一つの導体パターンを示す平面図である。
図7b図6の磁気結合型コイル部品に含まれる別の導体パターンを示す平面図である。
図7c図6の磁気結合型コイル部品に含まれるさらに別の導体パターンを示す平面図である。
図7d図6の磁気結合型コイル部品に含まれるさらに別の導体パターンを示す平面図である。
図8図6の磁気結合型コイル部品のIII-III線断面を模式的に示す断面図である。
図9】第4実施形態によるアレイ型コイル部品を示す斜視図である。
図10図9のアレイ型コイル部品を上面から見た透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される実施形態は、必ずしも特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
1 第1実施形態
1-1 磁気結合型コイル部品の基本構造
図1を参照して、第1実施形態に係る磁気結合型コイル部品1の基本構造について説明する。図1は、第1実施形態に係る磁気結合型コイル部品1の斜視図である。
【0019】
磁気結合型コイル部品1は、DC-DCコンバータに用いられるチョークコイルとして使用され得る。磁気結合型コイル部品1は、DC-DCコンバータ用のチョークコイル以外にも、トランス、カップルドインダクタ及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品に適用することができる。
【0020】
磁気結合型コイル部品1は、互いと磁気的に結合する複数のコイル導体を備える。図示の例では、磁気結合型コイル部品1は、2つのコイル導体を備えている。より具体的には、図1に示されている磁気結合型コイル部品1は、基体10と、基体10に設けられた第1コイル導体25と、基体10に設けられた第2コイル導体35と、第1コイル導体の一端に接続された第1外部電極21と、第1コイル導体の他端に接続された第2外部電極22と、第2コイル導体の一端に接続された第3外部電極23と、第2コイル導体の他端に接続された第4外部電極24と、を備える。第1コイル導体25と第2コイル導体35とが磁気的に結合する。
【0021】
磁気結合型コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24と、ランド部3a、3b、3c、3dと、をそれぞれ接合することで実装基板2aに実装される。回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備えることができる。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0022】
1-2 基体10の基本構造
一態様において、基体10は、絶縁材料から直方体形状に構成される。例えば、コイル部品1のL軸方向における寸法(長さ寸法)は、0.5mm~6.0mmの範囲にあり、W軸方向における寸法(幅寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にあり、T軸方向における寸法(高さ寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にある。一態様において、コイル部品1の長さ寸法は、幅寸法よりも大きくてもよい。本明細書において「直方体」または「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。後述するように、基体10の角及び/または辺は、湾曲していてもよい。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0023】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fはいずれも、第1主面10a及び第2主面10bに接続されている。また、第1端面10cは、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。第2端面10dも、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。第1主面10a及び第2主面10bはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10c及び第2端面10dはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成し、第1側面10e及び第2側面10fはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成している。図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」または「底面」と呼ぶことがある。
【0024】
図示の実施形態において、基体10の第2主面10bには、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24が設けられている。コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置される。このため、基体10の第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、第4外部電極24の少なくとも一つは、基体10の下面10b以外の面まで延伸していてもよい。例えば、第1外部電極21は、下面10bだけでなく端面10cに接するように延伸していてもよい。
【0025】
上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の長さ寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の幅寸法だけ離間している。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、磁気結合型コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、図1のL軸方向、W軸方向、及びT軸方向とする。
【0026】
基体10は、絶縁性に優れた絶縁材料から作製される。基体10は、磁性材料から作成されてもよい。基体10用の磁性材料として、軟磁性合金材料、樹脂に磁性粒子を分散させた複合磁性材料、フェライト材料、またはこれら以外の任意の公知の磁性材料を用いることができる。
【0027】
1-3 コイル導体の基本構造
図示の実施形態において、第1コイル導体25は、基体10の上面10aと対向するように基体10内に設けられている。また、第2コイル導体35は、基体10の下面10bと対向するように基体10内に設けられている。よって、第1コイル導体25は、第2コイル導体35よりも上方(すなわち、T軸方向のプラス側)に配置されている。第1コイル導体25と第2コイル導体35との間には、絶縁性の基体10の一部が介在しているため、第1コイル導体25と第2コイル導体35とは、基体10内において電気的に絶縁されている。
【0028】
第1コイル導体25は、第1周回部25aと、第1周回部25aの一端と第1外部電極21とを接続する第1一端引出部25bと、第1周回部25aの他端と第2外部電極22とを接続する第1他端引出部25cと、を有する。同様に、第2コイル導体35は、第2周回部35aと、第2周回部35aの一端と第3外部電極23とを接続する第2一端引出部35bと、第2周回部35aの他端と第4外部電極24とを接続する第2他端引出部35cと、を有する。
【0029】
第1周回部25aは、T軸に沿って延びるコイル軸Axの周りの周方向に延伸している。第1周回部25aと同様に、第2周回部35aは、コイル軸Axの周りの周方向に延伸している。図示の実施形態において、コイル軸Axは、T軸と平行である。コイル軸Axは、T軸と平行でなくともよい。コイル軸Axは、基体10の上面10a及び下面10bと交わる。第1周回部25a及び第2周回部35aの詳細については、後述する。
【0030】
第1一端引出部25bは、第1周回部25aの一端から、T軸に沿って下方に延びる。第1一端引出部25bの一端は、第1周回部25aの一端と接続される。第1一端引出部25bの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第1一端引出部25bは、下面10bから露出した他端において、第1外部電極21と接続される。
【0031】
第1他端引出部25cは、第1周回部25aの他端から、T軸に沿って下方に延びる。第1他端引出部25cの一端は、第1周回部25aの他端(第1一端引出部25bが接続された端部とは反対側の端部)と接続される。第1他端引出部25cの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第1他端引出部25cは、下面10bから露出した他端において、第2外部電極22と接続される。
【0032】
第2一端引出部35bは、第2周回部35aの一端から、T軸に沿って下方に延びる。第2一端引出部35bの一端は、第2周回部35aの一端と接続される。第2一端引出部35bの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第2一端引出部35bは、下面10bから露出した他端において、第3外部電極23と接続される。
【0033】
第2他端引出部35cは、第2周回部35aの他端から、T軸に沿って下方に延びる。第2他端引出部35cの一端は、第2周回部35aの他端(第2一端引出部35bが接続された端部とは反対側の端部)と接続される。第2他端引出部35cの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第2他端引出部35cは、下面10bから露出した他端において、第4外部電極24と接続される。
【0034】
以上述べたとおり、図示されている実施形態においては、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24がいずれも基体10の下面10bに設けられており、第1一端引出部25b、第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cがそれぞれ、下面10bまで引き出されて、対応する外部電極に接続されている。このように、図示の実施形態によれば、第1コイル導体25が基体10の下面10bから引き出されているので、第1コイル導体25が基体10の下面10b以外の面から引き出される態様と比較して、ランド部3aから第1外部電極21及び第1コイル導体25を通り第2外部電極22を経てランド部3bへ至る電流経路を短くすることができ、これにより、第1コイル導体25を含む回路要素の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。同様に、図示の実施形態によれば、第2コイル導体35が基体10の下面10bから引き出されているので、第2コイル導体35が基体10の下面10b以外の面から引き出される態様と比較して、ランド部3cから第3外部電極23及び第2コイル導体35を通り第4外部電極24を経てランド部3dへ至る電流経路を短くし、これにより、第2コイル導体35を含む回路要素の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。
【0035】
第1コイル導体25の表面及び第2コイル導体35の表面は、絶縁性に優れた絶縁材料から構成される絶縁被膜(不図示)により覆われていてもよい。絶縁被膜は、コイル部品1の製造工程における加熱処理において第1コイル導体25の表面及び第2コイル導体35の表面に形成される酸化膜であってもよい。絶縁被膜は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド等の絶縁性に優れた樹脂から構成されたコーティング膜であってもよい。
【0036】
1-4 磁気結合型コイル部品1の具体的な説明
1-4-1 基体10の説明
一態様において、基体10は、複数の磁性膜が積層された積層体である。基体10は、後述するように、表面に第1周回部25aに対応する導体パターンが形成された磁性膜、表面に第2周回部35aに対応する導体パターンが形成された磁性膜、及びこれら以外の磁性膜が積層された積層体であってもよい。基体10において第1コイル導体25と上面10aとの間の領域は、上側カバー部と呼ばれる。上側カバー部は、複数の磁性膜が積層された積層体であってもよい。基体10において第2コイル導体35と下面10bとの間の領域は、下側カバー部と呼ばれる。下側カバー部は、複数の磁性膜が積層された積層体であってもよい。下側カバー部を構成する磁性膜には、第1一端引出部25b、第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cをそれぞれ貫通させるための貫通孔が形成されている。
【0037】
基体10の各領域の厚さ(T軸方向の寸法)は、磁性膜の数や膜厚に応じて変更可能である。例えば、上側カバー部及び下側カバー部のそれぞれの厚さは、上側カバー部及び下側カバー部の各々を構成する磁性膜の枚数及び/または磁性膜1枚あたりの膜厚を通じて調整することができる。
【0038】
図示されている実施形態において、基体10を構成する磁性膜には、磁性膜11a、11b、11c、11dが含まれる。ただし、磁性膜11a~11dの境界は、基体10の断面をSEMで観察しても視認できないことがある。基体10において、磁性膜11a~11dが積層された領域は、本体部と呼ばれる。このように、基体10は、本体部と、本体部の上側に配置された上側カバー部と、本体部の下側に配置された下側カバー部と、を有する。
【0039】
磁性膜11a~1dの上面には、第1コイル導体25及び第2コイル導体35の一部を構成する導体パターンが形成されている。また、磁性膜11a~11dの所定の位置には、T軸方向に各磁性膜を貫く貫通孔が形成されており、この貫通孔にビア導体が埋め込まれている。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体の各々は、磁性膜11a~11dの前駆体である磁性体シートに、導電性に優れた金属または合金から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、この磁性体シートに印刷された導電性ペーストを加熱することにより形成される。この導電性ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Alまたはこれらの合金を用いることができる。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、前記以外の材料により形成されてもよい。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、例えば、スパッタ法、インクジェット法、またはこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0040】
1-4-2 コイル導体の具体的な説明
次に、図2aないし図2dを参照して、磁気結合型コイル部品1に含まれるコイル導体ついてさらに説明する。図2aは、第1コイル導体25の第1周回部25aを構成する第1上側導体パターン25a1を示し、図2bは、第1コイル導体25の第1周回部25aを構成する第1下側導体パターン25a2を示す。図2cは、第2コイル導体35の第2周回部35aを構成する第2上側導体パターン35a1を示し、図2dは、第2コイル導体35の第2周回部35aを構成する第2下側導体パターン35a2を示す。
【0041】
1-4-2-1 第1コイル導体25の構造
まず、図2a及び図2bを参照して、第1コイル導体25について説明する。
【0042】
図2aに示されているように、磁性膜11aの上面には第1上側導体パターン25a1が形成されている。第1上側導体パターン25a1は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第1軌道O1の上にある第1周回軌道部R11と、この第1周回軌道部R11の一端と第1一端引出部25bとの間で直線状に延びる第1接続部R12と、を有する。図示の実施形態では、第1軌道O1は、楕円である。第1周回軌道部R11は、1ターン以下のターン数だけ、コイル軸Axの周りに第1軌道O1に沿って延伸している。第1接続部R12は、この第1軌道O1から外れて、直線状に延びている。一態様において、第1上側導体パターン25a1は、第1周回軌道部R11と、第1接続部R12と、に区画される。
【0043】
磁性膜11aのうち第1上側導体パターン25a1の一端と重複する領域には磁性膜11aをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V1が埋め込まれている。ビア導体V1は、第1上側導体パターン25a1と接続されている。また、磁性膜11aのうち第1接続部R12と重複する領域には磁性膜11aをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第1一端引出部25bの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0044】
図2bに示されているように、磁性膜11bの上面には第1下側導体パターン25a2が形成されている。第1下側導体パターン25a2は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第2軌道O2の上にある第2周回軌道部R21と、この第2周回軌道部R21の一端と第1他端引出部25cとの間で直線状に延びる第2接続部R22と、を有する。第2周回軌道部R21は、1ターン以下のターン数だけ、コイル軸Axの周りに第2軌道O2に沿って延伸している。第1下側導体パターン25a2の一端は、ビア導体V1と接続されており、その他端は、第1他端引出部25cと接続されている。第2接続部R22は、第2軌道O2から外れて、直線状に延びている。一態様において、第1下側導体パターン25a2は、第2周回軌道部R21と、第2接続部R22と、に区画される。
【0045】
一態様において、第2接続部R22は、第1接続部R12と平行な方向に延びる。
【0046】
このように、第1下側導体パターン25a2は、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第1上側導体パターン25a1からT軸方向のマイナス側に離間して配置されている。第1上側導体パターン25a1と第1下側導体パターン25a2とは、ビア導体V1により接続されている。
【0047】
磁性膜11bのうち第2接続部R22と重複する領域には磁性膜11bをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第1他端引出部25cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0048】
図示の実施形態において、第1軌道O1及び第2軌道O2は、同一の楕円形状である。第1軌道O1及び第2軌道O2の形状は、楕円形状には限られない。例えば、第1軌道O1及び第2軌道O2の形状は、平面視において、長円形、円形、矩形、多角形、またはこれら以外の形状であってもよい。
【0049】
一態様において、第1上側導体パターン25a1の第1周回軌道部R11は、コイル軸Axに沿う軸方向において第1下側導体パターン25a2の第2周回軌道部R21と対向する第1重複領域R11aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第1下側導体パターン25a2の第2周回軌道部R21と対向しない第1非重複領域R11bと、ビア導体V1に連結される第1連結領域R11cと、に区画される。第1重複領域R11a、第1非重複領域R11b、及び第1連結領域R11cは、第1軌道O1上において、この順に、反時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第1重複領域R11aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターン(コイル軸Ax周りの周方向において約180°)だけ巻かれている。図示の実施形態において、第1非重複領域R11bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.2ターンだけ巻かれている。第1重複領域R11a及び第1非重複領域R11bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0050】
一態様において、第1下側導体パターン25a2の第2周回軌道部R21は、コイル軸Axに沿う軸方向において第1上側導体パターン25a1の第1周回軌道部R11と対向する第2重複領域R21aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第1上側導体パターン25a1の第1周回軌道部R11と対向しない第2非重複領域R21bと、ビア導体V1に連結される第2連結領域R21cと、に区画される。第2重複領域R21a、第2非重複領域R21b、及び第2連結領域R21cは、第2軌道O2上において、この順に、時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第2重複領域R21aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターンだけ巻かれている。図示の実施形態において、第2非重複領域R21bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.25ターンだけ巻かれている。第2重複領域R21a及び第2非重複領域R21bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0051】
図示の実施形態において、第1重複領域R11aは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第2重複領域R21aと対向している。言い換えると、T軸方向からの視点において、第1重複領域R11aと第2重複領域R21aとは重複している。T軸方向から第1周回軌道部R11及び第2周回軌道部R21を見た場合、第1重複領域R11aと第2重複領域R21aとが重複するだけでなく、第1連結領域R11cが第2連結領域R21cと重複している。第1重複領域R11aと第2重複領域R21aとの重複と、第1連結領域R11cと第2連結領域R21cとの重複とは、この重複関係にある領域同士が電気的に直接接続されているか否かにおいて異なる。すなわち、T軸方向において第1重複領域R11aと第2重複領域R21aとの間には絶縁性の基体10の一部が介在しているため、第1重複領域R11aと第2重複領域R21aとは、電気的に直接的に連結されていない。これに対して、第1連結領域R11cと第2連結領域R21cとは、T軸方向に延びるビア導体V1によって、直接、電気的に接続されている。
【0052】
図示の実施形態において、第1非重複領域R11bは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第2非重複領域R21bと対向していない。言い換えると、T軸方向からの視点において、第1非重複領域R11bと第2非重複領域R21bとは重複していない。
【0053】
以上のとおり、第1上側導体パターン25a1と第1下側導体パターン25a2とはビア導体V1によって接続される。このようにして接続された第1上側導体パターン25a1、ビア導体V1、及び第1下側導体パターン25a2が、第1コイル導体25の第1周回部25aを構成する。
【0054】
一態様において、第1周回部25aのターン数は、2未満である。例えば、磁気結合型コイル部品1が高周波回路に用いられる場合には、第1コイル導体25は、小さなインダクタンス値を有することが求められる。この小さなインダクタンス値を実現するために、第1周回部25aのターン数が2未満とされる。
【0055】
1-4-2-2 第2コイル導体35の構造
次に、図2c及び図2dを参照して、第2コイル導体35について説明する。
【0056】
図2cに示されているように、磁性膜11cの上面には第2上側導体パターン35a1が形成されている。第2上側導体パターン35a1は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第3軌道O3の上にある第3周回軌道部R31と、この第3周回軌道部R31の一端と第2一端引出部35bとの間で直線状に延びる第3接続部R32と、を有する。図示の実施形態では、第3軌道O3は、楕円である。第3周回軌道部R31は、1ターン以下のターン数だけ、コイル軸Axの周りに第1軌道O1に沿って延伸している。第3接続部R32は、この第3軌道O3から外れて、直線状に延びている。一態様において、第2上側導体パターン35a1は、第3周回軌道部R31と、第3接続部R32と、に区画される。
【0057】
磁性膜11cのうち第2上側導体パターン35a1の一端と重複する領域には磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V2が埋め込まれている。ビア導体V2は、第2上側導体パターン35a1と接続されている。また、磁性膜11aのうち第3接続部R32と重複する領域には磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第2一端引出部35bの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0058】
図2dに示されているように、磁性膜11dの上面には第2下側導体パターン35a2が形成されている。第2下側導体パターン35a2は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第4軌道O4の上にある第4周回軌道部R41と、この第4周回軌道部R41の一端と第2他端引出部35cとの間で直線状に延びる第4接続部R42と、を有する。第4周回軌道部R41は、1ターン以下のターン数だけ、コイル軸Axの周りに第4軌道O4に沿って延伸している。第2下側導体パターン35a2の一端は、ビア導体V2と接続されており、その他端は、第2他端引出部35cと接続されている。第4接続部R42は、第4軌道O4から外れて、直線状に延びている。一態様において、第2下側導体パターン35a2は、第4周回軌道部R41と、第4接続部R42と、に区画される。
【0059】
一態様において、第4接続部R42は、第3接続部R32と平行な方向に延びる。
【0060】
図示の実施形態において、第2上側導体パターン35a1は、コイル軸Axを通りL軸に沿って延びる直線に対して、第1上側導体パターン25a1と対称な形状を有している。また、第2下側導体パターン35a2は、コイル軸Axを通りL軸に沿って延びる直線に対して、第1下側導体パターン25a2と対称な形状を有している。
【0061】
このように、第2下側導体パターン35a2は、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第2上側導体パターン35a1からT軸方向のマイナス側に離間して配置されている。第2上側導体パターン35a1と第2下側導体パターン35a2とは、ビア導体V2により接続されている。
【0062】
磁性膜11dのうち第4接続部R42と重複する領域には磁性膜11dをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第2他端引出部35cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0063】
図示の実施形態において、第3軌道O3及び第4軌道O4は、同一の楕円形状である。第3軌道O3と第4軌道O4とは、同一の形状であってもよい。第3軌道O3及び第4軌道O4は、第1軌道O1及び第2軌道O2と同一の形状であってもよい。第3軌道O3及び第4軌道O4の形状は、楕円形状には限られない。例えば、第3軌道O3及び第4軌道O4の形状は、平面視において、長円形、円形、矩形、多角形、またはこれら以外の形状であってもよい。
【0064】
一態様において、第2上側導体パターン35a1の第3周回軌道部R31は、コイル軸Axに沿う軸方向において第2下側導体パターン35a2の第4周回軌道部R41と対向する第3重複領域R31aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第2下側導体パターン35a2の第4周回軌道部R41と対向しない第3非重複領域R31bと、ビア導体V2に連結される第3連結領域R31cと、に区画される。第3重複領域R31a、第3非重複領域R31b、及び第3連結領域R31cは、第3軌道O3上において、この順に、時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第3重複領域R31aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターン(180°)だけ巻かれている。図示の実施形態において、第3非重複領域R31bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.2ターンだけ巻かれている。第3重複領域R31a及び第3非重複領域R31bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0065】
一態様において、第2下側導体パターン35a2の第4周回軌道部R41は、コイル軸Axに沿う軸方向において第2上側導体パターン35a1の第3周回軌道部R31と対向する第4重複領域R41aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第2上側導体パターン35a1の第3周回軌道部R31と対向しない第4非重複領域R41bと、ビア導体V2に連結される第4連結領域R41cと、に区画される。第4重複領域R41a、第4非重複領域R41b、及び第4連結領域R41cは、第4軌道O4上において、この順に、反時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第4重複領域R41aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターンだけ巻かれている。図示の実施形態において、第4非重複領域R41bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.25ターンだけ巻かれている。第4重複領域R41a及び第4非重複領域R41bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0066】
図示の実施形態において、第3重複領域R31aは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第4重複領域R41aと対向している。言い換えると、T軸方向からの視点において、第3重複領域R31aと第4重複領域R41aとは重複している。T軸方向から第3周回軌道部R31及び第4周回軌道部R41を見た場合、第3重複領域R31aと第4重複領域R41aとが重複するだけでなく、第3連結領域R31cが第4連結領域R41cと重複している。第3重複領域R31aと第4重複領域R41aとの重複と、第3連結領域R31cと第4連結領域R41cとの重複とは、この重複関係にある領域同士が電気的に直接接続されているか否かにおいて異なる。すなわち、T軸方向において第3重複領域R31aと第4重複領域R41aとの間には絶縁性の基体10の一部が介在しているため、第3重複領域R31aと第4重複領域R41aとは、電気的に直接的に連結されていない。これに対して、第3連結領域R31cと第4連結領域R41cとは、T軸方向に延びるビア導体V2によって、直接、電気的に接続されている。
【0067】
図示の実施形態において、第3非重複領域R31bは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第4非重複領域R41bと対向していない。言い換えると、T軸方向からの視点において、第3非重複領域R31bと第4非重複領域R41bとは重複していない。
【0068】
以上のとおり、第2上側導体パターン35a1と第2下側導体パターン35a2とはビア導体V2によって接続される。このようにして接続された第2上側導体パターン35a1、ビア導体V2、及び第2下側導体パターン35a2が、第2コイル導体35の第2周回部35aを構成する。
【0069】
一態様において、第2周回部35aのターン数は、2未満である。例えば、磁気結合型コイル部品1が高周波回路に用いられる場合には、第2コイル導体35は、小さなインダクタンス値を有することが求められる。この小さなインダクタンス値を実現するために、第2周回部35aのターン数が2未満とされる。
【0070】
図示されている例のように、ターン数が2未満の第1周回部25aは、2層にわたって形成された導体パターンをビア導体で接合することにより得られる。同様に、ターン数が2未満の第2周回部35aは、2層にわたって形成された導体パターンをビア導体で接合することにより得られる。よって、2枚の磁性膜を積層すれば第1周回部25aが得られ、また、別の2枚の磁性膜を積層すれば第2周回部35aが得られる。他方、ターン数が2以上の場合には、3枚以上の磁性膜のそれぞれに形成された導体パターンをビア導体で接続する必要がある。よって、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数をそれぞれ2未満とすることにより、第1周回部25a及び第2周回部35aの各々を構成する磁性膜の枚数を2枚とすることができるので、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数が2以上の態様と比べて磁気結合型コイル部品1の高さ寸法を小さくすることができる。
【0071】
図2bないし図2dから理解されるように、磁性膜11aだけでなく、磁性膜11b~11dの各々にも、第1一端引出部25bを構成するビア導体を埋め込むための貫通孔が形成され、これらの貫通孔にビア導体が埋め込まれている。また、図示は省略されているが、下側カバー部の構成する磁性膜の各々にも、第1一端引出部25bを構成するビア導体を埋め込むための貫通孔が形成され、これらの貫通孔にビア導体が埋め込まれている。これらの貫通孔に埋め込まれたビア導体は、平面視において同じ位置に形成されているため、T軸方向において隣接するビア導体同士は、電気的に接続される。このように、磁性膜11a~11d及び下側カバー部を構成する各磁性膜に形成された貫通孔に埋め込まれたビア導体を接合することにより、第1一端引出部25bが形成される。第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cも、第1一端引出部25bと同様に、磁性膜に埋め込まれたビア導体同士を接合することにより形成される。
【0072】
第1上側導体パターン25a1、第1下側導体パターン25a2、第2上側導体パターン35a1、及び第2下側導体パターン35a2は、均一な幅寸法を有していてもよい。第1上側導体パターン25a1、第1下側導体パターン25a2、第2上側導体パターン35a1、及び第2下側導体パターン35a2のそれぞれの幅寸法は、互いに等しくてもよい。第1上側導体パターン25a1、第1下側導体パターン25a2、第2上側導体パターン35a1、及び第2下側導体パターン35a2のそれぞれの幅寸法は、第1軌道O1、第2軌道O2、第3軌道O3、及び第4軌道O4にそれぞれ直交する方向における寸法を意味する。
【0073】
1-4-3 第1コイル導体と第2コイル導体との磁気結合
次に、第1コイル導体25と第2コイル導体35との磁気結合について主に図3及び図4を参照して説明する。図3は、磁気結合型コイル部品1をI-I線で切断した断面を示す。図4は、磁気結合型コイル部品1をII-II線で切断した断面を示す。図3及び図4は、WT面に平行な平面で切断された磁気結合型コイル部品1の断面を示している。
【0074】
図3に示されているように、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第1重複領域R11a及び第2重複領域R21aは、第3非重複領域R31bと対向している。上述のとおり、第3非重複領域R31bは、第2下側導体パターン35a2の第4周回軌道部R41と対向していないので、T軸方向において第3非重複領域R31bの下方には第2下側導体パターン35a2を構成する導体パターンが配置されていない。第1コイル導体25を流れる電流の変化により第1重複領域R11a及び第2重複領域R21aから発生した鎖交磁束F1は、第2下側導体パターン35a2の下方まで進まなくても、第2下側導体パターン35a2よりも上に配置されている第2上側導体パターン35a1の一部である第3非重複領域R31bの下方を通過して、第1コイル導体25の近傍まで戻ってくることができる。このように、磁気結合型コイル部品1によれば、コイル軸Axに沿う軸方向において第1重複領域R11a及び第2重複領域R21aを第3非重複領域R31bと対向させることにより、第1コイル導体25から発生した鎖交磁束が第2下側導体パターン35a2の下方を通る態様と比較して、第1コイル導体25から発生して第2コイル導体35と鎖交する鎖交磁束が通る磁路長を短くすることができる。
【0075】
また、図4に示されているように、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第3重複領域R31a及び第4重複領域R41aは、第2非重複領域R21bと対向している。上述のとおり、第2非重複領域R21bは、第1上側導体パターン25a1の第1周回軌道部R11と対向していないので、T軸方向において第2非重複領域R21bの上方には第1上側導体パターン25a1を構成する導体パターンが配置されていない。第2コイル導体35を流れる電流の変化により第3重複領域R31a及び第4重複領域R41aから発生した鎖交磁束F2は、第1上側導体パターン25a1の上方まで進まなくても、第1上側導体パターン25a1よりも下に配置されている第1下側導体パターン25a2の一部である第2非重複領域R21bの上方を通過して、第2コイル導体35の近傍まで戻ってくることができる。このように、磁気結合型コイル部品1によれば、コイル軸Axに沿う軸方向において第3重複領域R31a及び第4重複領域R41aを第2非重複領域R21bと対向させることにより、第2コイル導体35から発生した鎖交磁束が第1上側導体パターン25a1の上方を通る態様と比較して、第2コイル導体35から発生して第1コイル導体25と鎖交する鎖交磁束が通る磁路長を短くすることができる。
【0076】
1-4-4 従来の磁気結合型コイル部品との比較
次に、図5をさらに参照して、従来の磁気結合型コイル部品において鎖交磁束が通る磁路長と比較して、第1実施形態による磁気結合型コイル部品1において鎖交磁束が通る磁路長を説明する。
【0077】
図5に示されているように、基体内に上下に配置された一組のコイル導体を備える従来の磁気結合型コイル部品においては、コイル軸に沿う方向において、同数の導体部が配置されている。図5に示されている従来例では、導体部C11、C12、C21、C22を含む上側コイル導体と、導体部C31、C32、C41、C42を含む下側コイル導体と、がコイル軸に沿って配置されている。この従来例では、コイル軸に沿う軸方向において、上側コイル導体の導体部C11、C21と下側コイル導体の導体部C31、C41とが対向している。また、コイル軸に沿う軸方向において、上側コイル導体の導体部C12、C22と下側コイル導体の導体部C32、C42とが対向している。つまり、上側コイル導体の導体部C11、C21とは、これと同数(2つ)の導体部C31、C41とが対向している。また、上側コイル導体の導体部C12、C22とは、これと同数の導体部C32、C42が対向している。よって、従来の磁気結合型コイル部品において上側コイル導体を流れる電流の変化により発生する鎖交磁束F3は、下側コイル導体を構成する導体部のうち上層にある導体部C31、C32よりも下方にある導体部C41、C42のさらに下方を通過してから上側コイル導体に戻ってくる。同様に、下側コイル導体を流れる電流の変化により発生する鎖交磁束F3は、上側コイル導体を構成する導体部のうち下層にある導体部C21、C22よりも上方にある導体部C11、C12のさらに上方を通過してから下側コイル導体に戻ってくる。
【0078】
これに対して、図3を参照して説明したように、実施形態1における磁気結合型コイル部品1においては、第1コイル導体25において、第1重複領域R11a及び第2重複領域R21aから発生した鎖交磁束F1は、第2コイル導体35のうち下層にある第2下側導体パターン35a2の下まで至ることなく、第2コイル導体35のうち上層にある第3非重複領域R31bの下方を通過して、第1コイル導体25の近傍まで戻ってくることができる。よって、磁気結合型コイル部品1において2ターン分の導体部(図3の例では、第1重複領域R11a及び第2重複領域R21aであり、図4の例では、第3重複領域R31a及び第4重複領域R41a)から発生した鎖交磁束F1が通過する磁路長を、従来の磁気結合型コイル部品において2ターン分の導体部(例えば、図5における導体部C11、C21)から発生した鎖交磁束F3が通過する磁路長よりも短くすることができる。
【0079】
以上のように、実施形態1における磁気結合型コイル部品1においては、鎖交磁束F1、F2の磁路長を短くすることができるので、第1コイル導体25と第2コイル導体35との磁気結合を高めることができる。
【0080】
1-4-5 インダクタンス値の差
第1コイル導体25及び第2コイル導体35は、ターン数が少ないため、コイル導体の全長において周回部が占める割合が小さくなる。よって、第1コイル導体25の第1周回部25aのターン数と第2コイル導体35の第2周回部のターン数を互いに等しくても、引出部の長さの違いによりコイル導体の全長の差が大きくなる。このため、周回部のターン数が少ないコイル導体同士が結合する磁気結合型コイル部品において、コイル導体間の長さの違いに起因する自己インダクタンス値の差を小さくすることが望まれる。
【0081】
実施形態1における磁気結合型コイル部品1においては、第2周回部35aを第2上側導体パターン35a1及び第2下側導体パターン35a2の2層構造とすることができるので、第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの長さと、第2一端引出部35b及び第2他端引出部35cの長さとの差を小さくすることができる。
【0082】
本発明者らは、シミュレーションを行って、磁気結合型コイル部品1について、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体35のインダクタンス値を検証した。具体的には、図1図4に示されている磁気結合型コイル部品1をシミュレータに設定し、この磁気結合型コイル部品1について、第1コイル導体25の自己インダクタンス及び第2コイル導体35の自己インダクタンスを算出した。その結果、図1図4に示されているように第1コイル導体25及び第2コイル導体35を構成及び配置した磁気結合型コイル部品1において、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体35のインダクタンス値との差を、第1コイル導体25のインダクタンス値の3%以下とすることができることが分かった。
【0083】
1-4-6 製造方法
次に、磁気結合型コイル部品1の製造方法の一例を説明する。磁気結合型コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、シート積層法による磁気結合型コイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0084】
まず、基体10を構成する各磁性膜(磁性膜11a~11dを含む。)の前駆体である磁性体シートを作製する。磁性体シートは、例えば、軟磁性金属粉を樹脂と混練してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法またはこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することで作製される。
【0085】
次に、磁性膜11a~磁性膜11dの前駆体である各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11~磁性膜11dの前駆体である磁性体シートの各々の上面に、導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに未焼成の導体パターンを形成するとともに、各磁性体シートに形成された貫通孔に導電性ペーストを埋め込む。磁性膜11aの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1上側導体パターン25a1となり、磁性膜11bの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1下側導体パターン25a2となる。また、磁性膜11cの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第2上側導体パターン35a1となり、磁性膜11dの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第2下側導体パターン35a2となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0086】
磁性膜11aの前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。同様に、磁性膜11b~11dの各々の前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。磁性膜11a~11dを構成する磁性体シートの枚数を調整することにより、磁性膜11a~11dのそれぞれの厚さを調整することができる。
【0087】
次に、磁性膜11a~11dの前駆体である各磁性体シート、上側カバー部12の前駆体である複数の磁性体シート、及び下側カバー部13の前駆体である複数の磁性体シートを積層して積層体を得る。この積層体において、上側カバー部12の前駆体に含まれる磁性体シートの枚数を、下側カバー部13の前駆体に含まれる磁性体シートの枚数よりも多くすることにより、完成品である磁気結合型コイル部品1において、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることができる。積層された各磁性体シートは、プレス機により熱圧着されてもよい。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0088】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理することで基体10が得られる。この加熱処理により、磁性体シートに含まれている軟磁性金属粉の各々の表面に酸化物層が形成され、隣り合う軟磁性金属粉同士が酸化物層を介して結合する。チップ積層体の加熱処理は、例えば、600℃~800℃の加熱温度で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われる。
【0089】
次に、基体10の下面10bに導体ペーストを塗布することにより、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24が形成される。第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24は、めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。
【0090】
以上により、磁気結合型コイル部品1が得られる。磁気結合型コイル部品1は、圧縮成型法、薄膜プロセス法、スラリービルド法、またはこれら以外の公知の方法で作製されてもよい。
【0091】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。コイル部品1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時にまたは並行して実行され得る。
【0092】
2 第2実施形態
2-1 磁気結合型コイル部品101の説明
次に、図6ないし図8を参照して、本願の第2実施形態による磁気結合型コイル部品101について説明する。第2実施形態による磁気結合型コイル部品101について説明する。磁気結合型コイル部品101は、第1コイル導体25に代えて第1コイル導体125を備え、第2コイル導体35に代えて第2コイル導体135を備える点で、磁気結合型コイル部品1と異なっている。以下では、磁気結合型コイル部品101に備えられる第1コイル導体125及び第2コイル導体135について主に説明を行い、磁気結合型コイル部品101において磁気結合型コイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0093】
図6は、第1実施形態に係る磁気結合型コイル部品101の斜視図である。磁気結合型コイル部品101は、基体10に設けられた第1コイル導体125と、基体10に設けられた第2コイル導体135と、を備える。第1コイル導体25と第2コイル導体35とが磁気的に結合する。第1コイル導体125は、基体10の上面10aと対向するように基体10内に設けられている。また、第2コイル導体135は、基体10の下面10bと対向するように基体10内に設けられている。
【0094】
第1コイル導体125は、第1周回部125aと、第1周回部125aの一端と第1外部電極21とを接続する第1一端引出部25bと、第1周回部125aの他端と第2外部電極22とを接続する第1他端引出部25cと、を有する。第2コイル導体135は、第2周回部135aと、第2周回部135aの一端と第3外部電極23とを接続する第2一端引出部35bと、第2周回部135aの他端と第4外部電極24とを接続する第2他端引出部35cと、を有する。
【0095】
2-2 コイル導体の具体的な説明
次に、図7aないし図7dを参照して、第1コイル導体125及び第2コイル導体135についてさらに説明する。図7aは、第1コイル導体125の第1周回部125aを構成する第1上側導体パターン125a1を示し、図7bは、第1コイル導体125の第1周回部125aを構成する第1下側導体パターン25a2を示す。図27は、第2コイル導体135の第2周回部135aを構成する第2上側導体パターン135a1を示し、図7dは、第2コイル導体135の第2周回部135aを構成する第2下側導体パターン135a2を示す。
【0096】
2-2-1 第1コイル導体125の説明
まず、図7a及び図7bを参照して、第1コイル導体125について説明する。
【0097】
図7aに示されているように、磁性膜11aの上面には第1上側導体パターン125a1が形成されている。第1上側導体パターン125a1は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第1軌道O11の上にある第1周回軌道部R111と、この第1周回軌道部R111の一端と第1一端引出部25bとの間で直線状に延びる第1接続部R112と、を有する。図示の実施形態では、第1軌道O11は、コイル軸Axの周りに延びる渦巻き形状を有する。第1接続部R112は、この第1軌道O11から外れて、直線状に延びている。一態様において、第1上側導体パターン125a1は、第1周回軌道部R111と、第1接続部R112と、に区画される。第1上側導体パターン125a1の一端は、第1一端引出部25bと接続されており、その他端は、ビア導体V1と接続されている。
【0098】
図7bに示されているように、磁性膜11bの上面には第1下側導体パターン125a2が形成されている。第1下側導体パターン125a2は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第2軌道O12の上にある第2周回軌道部R121と、この第2周回軌道部R121の一端と第1他端引出部25cとの間で直線状に延びる第2接続部R122と、を有する。図示の実施形態では、第2軌道O12は、コイル軸Axの周りに延びる渦巻き形状を有する。第2接続部R122は、第2軌道O12から外れて、直線状に延びている。一態様において、第1下側導体パターン125a2は、第2周回軌道部R121と、第2接続部R122と、に区画される。第1下側導体パターン125a2の一端は、ビア導体V1と接続されており、その他端は、第1他端引出部25cと接続されている。
【0099】
一態様において、第2接続部R122は、第1接続部R112と平行な方向に延びる。
【0100】
このように、第1下側導体パターン125a2は、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第1上側導体パターン125a1からT軸方向のマイナス側に離間して配置されている。第1上側導体パターン125a1と第1下側導体パターン125a2とは、ビア導体V1により接続されている。
【0101】
一態様において、第1上側導体パターン125a1の第1周回軌道部R111は、コイル軸Axに沿う軸方向において第1下側導体パターン125a2の第2周回軌道部R121と対向する第1重複領域R111aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第1下側導体パターン125a2の第2周回軌道部R121と対向しない第1非重複領域R111bと、ビア導体V1に連結される第1連結領域R111cと、に区画される。第1重複領域R111a、第1非重複領域R111b、及び第1連結領域R111cは、第1軌道O11上において、この順に、反時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第1重複領域R111aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターン(180°)だけ巻かれている。図示の実施形態において、第1非重複領域R111bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターンだけ巻かれている。第1重複領域R111a及び第1非重複領域R111bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。このように、第1周回軌道部R111は、コイル軸Axの周りに0.75ターン以上延びていてもよい。
【0102】
一態様において、第1下側導体パターン125a2の第2周回軌道部R121は、コイル軸Axに沿う軸方向において第1上側導体パターン125a1の第1周回軌道部R111と対向する第2重複領域R121aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第1上側導体パターン125a1の第1周回軌道部R111と対向しない第2非重複領域R121bと、ビア導体V1に連結される第2連結領域R121cと、に区画される。第2重複領域R121a、第2非重複領域R121b、及び第2連結領域R121cは、第2軌道O12上において、この順に、時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第2重複領域R121aは、コイル軸Axの周りの周方向に0.5ターンだけ巻かれている。図示の実施形態において、第2非重複領域R21bは、コイル軸Axの周りの周方向に約1ターンだけ巻かれている。第2重複領域R121a及び第2非重複領域R121bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0103】
上述のように、第2周回軌道部R121は、磁性膜11b上において、1ターン以上、コイル軸Axの周りに巻かれている。このように、一つの平面上で1ターン以上巻かれるコイルは、平面コイルと呼ばれることがある。第1下側導体パターン125a2(または第1下側導体パターン125a2を含む第1コイル導体125)は、平面コイルの例である。
【0104】
図示の実施形態において、第1重複領域R111aは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第2重複領域R121aと対向している。言い換えると、T軸方向からの視点において、第1重複領域R111aと第2重複領域R121aとは重複している。図示の実施形態において、第1非重複領域R111bは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第2非重複領域R121bと対向していない。言い換えると、T軸方向からの視点において、第1非重複領域R111bと第2非重複領域R121bとは重複していない。
【0105】
以上のとおり、第1上側導体パターン125a1と第1下側導体パターン125a2とはビア導体V1によって接続される。このようにして接続された第1上側導体パターン125a1、ビア導体V1、及び第1下側導体パターン125a2が、第1コイル導体125の第1周回部125aを構成する。
【0106】
2-2-2 第2コイル導体135の説明
次に、図7c及び図7dを参照して、第2コイル導体135について説明する。
【0107】
図7cに示されているように、磁性膜11cの上面には第2上側導体パターン135a1が形成されている。第2上側導体パターン135a1は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第3軌道O13の上にある第3周回軌道部R131と、この第3周回軌道部R131の一端と第2一端引出部35bとの間で直線状に延びる第3接続部R132と、を有する。図示の実施形態では、第3軌道O13は、コイル軸Axの周りに延びる渦巻き形状を有する。第3接続部R132は、この第3軌道O13から外れて、直線状に延びている。一態様において、第2上側導体パターン135a1は、第3周回軌道部R131と、第3接続部R132と、に区画される。
【0108】
図7dに示されているように、磁性膜11dの上面には第2下側導体パターン135a2が形成されている。第2下側導体パターン135a2は、コイル軸Axの周りの周方向に延びる第4軌道O14の上にある第4周回軌道部R141と、この第4周回軌道部R141の一端と第2他端引出部35cとの間で直線状に延びる第4接続部R142と、を有する。第2下側導体パターン135a2の一端は、ビア導体V2と接続されており、その他端は、第2他端引出部35cと接続されている。第4接続部R142は、第4軌道O14から外れて、直線状に延びている。一態様において、第2下側導体パターン135a2は、第4周回軌道部R41と、第4接続部R42と、に区画される。
【0109】
一態様において、第4接続部R142は、第3接続部R132と平行な方向に延びる。
【0110】
第2下側導体パターン135a2は、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第2上側導体パターン135a1からT軸方向のマイナス側に離間して配置されている。第2上側導体パターン135a1と第2下側導体パターン135a2とは、ビア導体V2により接続されている。
【0111】
一態様において、第2上側導体パターン135a1の第3周回軌道部R131は、コイル軸Axに沿う軸方向において第2下側導体パターン135a2の第4周回軌道部R41と対向する第3重複領域R131aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第2下側導体パターン135a2の第4周回軌道部R141と対向しない第3非重複領域R131bと、ビア導体V2に連結される第3連結領域R131cと、に区画される。第3重複領域R131a、第3非重複領域R131b、及び第3連結領域R131cは、第3軌道O13上において、この順に、時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第3重複領域R131aは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターン(約180°)だけ巻かれている。図示の実施形態において、第3非重複領域R131bは、コイル軸Axの周りの周方向に約1ターンだけ巻かれている。第3重複領域R131a及び第3非重複領域R131bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0112】
一態様において、第2下側導体パターン135a2の第4周回軌道部R141は、コイル軸Axに沿う軸方向において第2上側導体パターン135a1の第3周回軌道部R131と対向する第4重複領域R141aと、コイル軸Axに沿う軸方向において第2上側導体パターン135a1の第3周回軌道部R131と対向しない第4非重複領域R141bと、ビア導体V2に連結される第4連結領域R141cと、に区画される。第4重複領域R141a、第4非重複領域R141b、及び第4連結領域R141cは、第4軌道O14上において、この順に、反時計回りに並んでいる。図示の実施形態において、第4重複領域R141aは、コイル軸Axの周りの周方向に0.5ターンだけ巻かれている。図示の実施形態において、第4非重複領域R141bは、コイル軸Axの周りの周方向に約0.5ターンだけ巻かれている。第4重複領域R141a及び第4非重複領域R141bのターン数は、本明細書において明示されたターン数には限定されず、適宜設定可能である。
【0113】
図示の実施形態において、第3重複領域R131aは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第4重複領域R141aと対向している。言い換えると、T軸方向からの視点において、第3重複領域R131aと第4重複領域R141aとは重複している。図示の実施形態において、第3非重複領域R131bは、コイル軸Axに沿う軸方向において、第4非重複領域R141bと対向していない。言い換えると、T軸方向からの視点において、第3非重複領域R131bと第4非重複領域R141bとは重複していない。
【0114】
以上のとおり、第2上側導体パターン135a1と第2下側導体パターン135a2とはビア導体V2によって接続される。このようにして接続された第2上側導体パターン135a1、ビア導体V2、及び第2下側導体パターン135a2が、第2コイル導体135の第2周回部135aを構成する。
【0115】
一態様において、第1周回部125aのターン数は、2以上である。同様に、
一態様において、第2周回部135aのターン数は、2以上である。第1コイル導体125が平面コイルであるため、磁気結合型コイル部品101においては、高さ方向の寸法を大型化することなく、第1コイル導体125及び第2コイル導体135のターン数を多くする(例えば、2ターン以上とする)ことができる。よって、磁気結合型コイル部品101においては、磁気結合型コイル部品1よりも高いインダクタンス値を得ることが容易である。
【0116】
第1上側導体パターン125a1、第1下側導体パターン125a2、第2上側導体パターン135a1、及び第2下側導体パターン135a2は、均一な幅寸法を有していてもよい。第1上側導体パターン125a1、第1下側導体パターン125a2、第2上側導体パターン135a1、及び1第2下側導体パターン35a2のそれぞれの幅寸法は、互いに等しくてもよい。第1上側導体パターン125a1、第1下側導体パターン125a2、第2上側導体パターン135a1、及び第2下側導体パターン135a2のそれぞれの幅寸法は、第1軌道O11、第2軌道O12、第3軌道O13、及び第4軌道O14にそれぞれ直交する方向における寸法を意味する。
【0117】
T軸方向からの視点において、第1非重複領域R111bは、第2周回軌道部R121の第2非重複領域R121bと1箇所で交差する。つまり、T軸方向から第1軌道O11及び第2軌道O12を見た場合に、第1軌道O11のうち第1非重複領域R111b内に配置されている部位と第2軌道O12のうち第2非重複領域R121b内に配置されている部位とは、1箇所で交差する。他方、第1軌道O11のうち第1非重複領域R111b内に配置されている部位と第2軌道O12のうち第2非重複領域R121b内に配置されている部位とは、互いと同じ方向に延びる部位を有していない。本明細書では、T軸方向から第1軌道O11及び第2軌道O12を見た場合に、第1軌道O11のうち第1非重複領域R111b内に配置されている部位と第2軌道O12のうち第2非重複領域R121b内に配置されている部位とが交差していても、両者が同じ向きに伸びる部位を有していない場合には、第1非重複領域R111bは、第2周回軌道部R121とは対向しない(よって、重複しない)とみなす。同様に、本明細書では、T軸方向から第3軌道O13及び第4軌道O14を見た場合に、第3軌道O13のうち第3非重複領域R131b内に配置されている部位と第4軌道O14のうち第4非重複領域R141b内に配置されている部位とが交差していても、両者が同じ向きに伸びる部位を有していない場合には、第3非重複領域R131bは、第4周回軌道部R141bとは対向しない(よって、重複しない)とみなす。
【0118】
2-2-3 第1コイル導体と第2コイル導体との磁気結合
次に、第1コイル導体25と第2コイル導体35との磁気結合について主に図8をさらに参照して説明する。図8は、磁気結合型コイル部品101をIII-III線で切断した断面を示す。図8は、WT面に平行な平面で切断された磁気結合型コイル部品101の断面を示している。
【0119】
図8に示されているように、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第1重複領域R111a及び第2重複領域R121aは、第3非重複領域R131bと対向している。上述のとおり、第3非重複領域R131bは、第2下側導体パターン135a2の第4周回軌道部R141と対向していないので、T軸方向において第3非重複領域R131bの下方には第2下側導体パターン135a2を構成する導体パターンが配置されていない。第1コイル導体125を流れる電流の変化により第1重複領域R111a及び第2重複領域R121aから発生した鎖交磁束F1は、第2下側導体パターン135a2の下方まで進まなくても、第2下側導体パターン135a2よりも上に配置されている第2上側導体パターン135a1の一部である第3非重複領域R131bの下方を通過して、第1コイル導体125の近傍まで戻ってくることができる。このように、磁気結合型コイル部品101によれば、コイル軸Axに沿う軸方向において第1重複領域R111a及び第2重複領域R121aを第3非重複領域R131bと対向させることにより、第1コイル導体125から発生した鎖交磁束が第2下側導体パターン135a2の下方を通る態様と比較して、第1コイル導体125から発生して第2コイル導体135と鎖交する鎖交磁束が通る磁路長を短くすることができる。
【0120】
また、コイル軸Axに沿う軸方向(T軸方向)において、第3重複領域R131a及び第4重複領域R141aは、第2非重複領域R121bと対向している。上述のとおり、第2非重複領域R121bは、第1上側導体パターン125a1の第1周回軌道部R111と対向していないので、T軸方向において第2非重複領域R121bの上方には第1上側導体パターン125a1を構成する導体パターンが配置されていない。第2コイル導体135を流れる電流の変化により第3重複領域R131a及び第4重複領域R141aから発生した鎖交磁束F2は、第1上側導体パターン125a1の上方まで進まなくても、第1上側導体パターン25a1よりも下に配置されている第1下側導体パターン125a2の一部である第2非重複領域R121bの上方を通過して、第2コイル導体135の近傍まで戻ってくることができる。このように、磁気結合型コイル部品101によれば、コイル軸Axに沿う軸方向において第3重複領域R131a及び第4重複領域R141aを第2非重複領域R121bと対向させることにより、第2コイル導体135から発生した鎖交磁束が第1上側導体パターン125a1の上方を通る態様と比較して、第2コイル導体135から発生して第1コイル導体125と鎖交する鎖交磁束が通る磁路長を短くすることができる。
【0121】
コイル部品101は、コイル部品1の製造方法に準じて製造される。
【0122】
3 第3実施形態
次に、複数の磁気結合型コイル部品1が一つの素子としてパッケージ化されたアレイ型コイル部品301について説明する。
3-1 背景
アレイ型のコイル部品においては、複数のコイルが一つの素子としてパッケージ化されているので、一般に、複数のコイルを基板に実装する際の実装スペースを小さくできるという利点がある。
【0123】
しかしながら、複数の磁気結合型コイル部品がパッケージングされたアレイ型のコイル部品において隣接する磁気結合型コイル部品同士の距離が近くなると、隣接する磁気結合型コイル部品間での望ましくない磁気結合が大きくなり、磁気結合型コイル部品の各々が所期の特性を発揮できなくなるおそれがある。
【0124】
このため、従来のアレイ型コイル部品においては、隣接する磁気結合型コイル部品間での磁気結合を弱めるために、隣接する磁気結合型コイル部品間の間隔を大きく取っている。しかしながら、隣接する磁気結合型コイル部品間の間隔を大きくすることは、実装スペースを小さくするというアレイ型コイル部品の本来の目的に反する。
【0125】
そこで、複数の磁気結合型コイル部品を備えるアレイ型コイル部品において、隣接する磁気結合型コイル部品間の磁気結合を小さくすることが望まれる。
【0126】
以下では、図9及び図10を参照して、上記の問題を解決または緩和するアレイ型コイル部品301について説明する。
【0127】
3-2 アレイ型コイル部品301の説明
図9は、第3実施形態に係るアレイ型コイル部品301の斜視図を示し、図10は、アレイ型コイル部品301の上面から見た透過図を示している。これらの図に示されているように、アレイ型コイル部品301は、3つの磁気結合型コイル301a、301b、301cを備えている。アレイ型コイル部品301に備えられる磁気結合型コイル部品の数は、3つに限られず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0128】
図9に示されているように、アレイ型コイル部品301は、基体310を備え、基体310に、磁気結合型コイル301a、301b、301cを構成する各コイル導体が設けられている。基体310は、基体10と同様に、絶縁材料から構成されており、磁気結合型コイル301a、301b、301cを構成する各コイル導体を互いから電気的に絶縁する。
【0129】
基体310は、上面310a、下面310b、第1端面310c、第2端面310d、第1側面310e、及び第2側面310fを有する。基体310は、3つの磁気結合型コイルを構成する各コイル導体を収容するためにL軸方向における寸法が大きくなっている点以外は、基体10と同様に構成される。上述した基体10に関する説明は、可能な限り、基体310にも当てはまる。例えば、基体10と同様に、基体310の上面310a及び下面310bは、T軸方向における基体310の両端の面を成し、第1端面310c及び第2端面310dは、L軸方向における基体310の両端の面を成し、第1側面310e及び第2側面310fは、W軸方向における基体310の両端の面を成す。図9及び図10には、説明の便宜のために、L軸方向に沿って、L軸のプラス側からマイナス側に向かってL軸に平行に延びるX1軸が記載されている。
【0130】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル301a、301b、301cは、L軸方向に平行なX1軸方向に沿って配置されている。すなわち、アレイ型コイル部品301においては、磁気結合型コイル301a、磁気結合型コイル301b、及び磁気結合型コイル301cが、X1軸方向に沿って、この順に並んでいる。磁気結合型コイル301bは、磁気結合型コイル301aからX1軸方向に離間した位置に配置されている。同様に、磁気結合型コイル301cは、磁気結合型コイル301bからX1軸方向に離間した位置に配置されている。
【0131】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル301aは、第1コイル導体325と、第2コイル導体335と、を備える。第1コイル導体325は、基体310の上面310aと対向し、第2コイル導体335は、基体310の下面310bと対向するように配置される。図10に示されているように、第1コイル導体325は、上述した第1コイル導体25と同じ形状を有し、第2コイル導体335は、上述した第2コイル導体35と同じ形状を有する。
【0132】
図示は省略されているが、磁気結合型コイル301aの第1コイル導体325の両端と接続される2つの外部電極及び第2コイル導体335の両端と接続される2つの外部電極は、基体310の下面310bに設けられる。
【0133】
磁気結合型コイル301aにおいて、第1コイル導体325は、コイル軸Ax31の周りの周方向に延びる第1周回部325aと、第1周回部325aの一端と第1外部電極(不図示)とを接続する第1一端引出部325bと、第1周回部325aの他端と第2外部電極(不図示)とを接続する第1他端引出部325cと、を有する。第2コイル導体335は、コイル軸Ax31の周りの周方向に延びる第2周回部335aと、第2周回部335aの一端と第3外部電極(不図示)とを接続する第2一端引出部335bと、第2周回部335aの他端と第4外部電極(不図示)とを接続する第2他端引出部335cと、を有する。
【0134】
磁気結合型コイル301b、301cは、磁気結合型コイル301aと同様に構成される。磁気結合型コイル301bの第1周回部325a及び第2周回部335aは、コイル軸Ax32の周りの周方向に延びる。磁気結合型コイル301cの第1周回部325a及び第2周回部335aは、コイル軸Ax33の周りの周方向に延びる。コイル軸Ax32は、コイル軸Ax31からX1軸方向に離間している。コイル軸Ax33は、コイル軸Ax32からX1軸方向に離間している。
【0135】
磁気結合型コイル301a、301b、301cの各々において、第1コイル導体325は、第1一端引出部325bからL軸方向(X1軸方向と平行な方向)に直線状に延びる第1接続部R312と、第1他端引出部325cからW軸方向に直線状に延びる第2接続部R322と、を有する。第2コイル導体335は、第2一端引出部335bからL軸方向(X1軸方向と平行な方向)に直線状に延びる第3接続部R332と、第2他端引出部335cからW軸方向に直線状に延びる第4接続部R342と、を有する。
【0136】
一態様において、磁気結合型コイル301aは、第1接続部R312、第2接続部R322、第3接続部R332、及び第4接続部R342が、X1軸方向に沿って延びている。このため、第1コイル導体325及び第2コイル導体335を流れる電流の変化により発生する磁束は、X1軸と直交する方向に流れやすい。このように、磁気結合型コイル301a及び磁気結合型コイル301bはX1軸方向に沿って配置されているのに対して、磁気結合型コイル301aの第1コイル導体325及び第2コイル導体335から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置されている。このため、磁気結合型コイル301aの第1コイル導体325及び第2コイル導体335から発生する磁束は、X1軸方向において磁気結合型コイル301aに隣接する磁気結合型コイル301bとは鎖交しにくいので、磁気結合型コイル301aと磁気結合型コイル301bとの望ましくない磁気結合を抑制することができる。同様に、磁気結合型コイル301bに備えられる第1コイル導体325及び第2コイル導体335は、第1コイル導体325及び第2コイル導体335から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置される。このため、磁気結合型コイル301bの第1コイル導体325及び第2コイル導体335から発生する磁束は、磁気結合型コイル301bに隣接する磁気結合型コイル301a及び磁気結合型コイル301cとは鎖交しにくいので、磁気結合型コイル301bと磁気結合型コイル301a及び磁気結合型コイル301cとの望ましくない磁気結合を抑制することができる。
【0137】
磁気結合型コイル部品1が備える第1コイル導体25に関する説明は、可能な限り、第1コイル導体325にも当てはまる。また、磁気結合型コイル部品1が備える第2コイル導体35に関する説明は、可能な限り、第2コイル導体335にも当てはまる。
【0138】
4 実施形態同士の組み合わせ
本明細書に記載されている実施形態を組み合わせることで得られる態様も、本願明細書により開示される実施形態に含まれる。
【0139】
第1実施形態から第3実施形態は、本願明細書の記載に基づいて当業者が理解可能な様々なコンビネーションで組み合わせられ得る。例えば、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることにより、磁気結合型コイル301a、301b、301cの各々を平面コイルとして構成し、アレイ型コイル部品301が、平面コイルとして構成された磁気結合型コイル301a、301b、301cを含むように構成することができる。
【0140】
実施形態同士の可能な組み合わせは、本明細書で明記されたものには限られない。実施形態1ないし実施形態3は、任意に組み合わせ可能である。
【0141】
5 注記
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。例えば、第1周回軌道部R11、第2周回軌道部R21、第3周回軌道部R31、及び第4周回軌道部R41の少なくとも一つは、コイル軸Axの周りに0.75ターン以上延びていてもよい。
【0142】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0143】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0144】
6 付記
本明細書において開示される実施形態には、以下の事項も含まれる。
【0145】
[付記1]
絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りの周方向に延びる第1軌道の上にある第1周回軌道部を有する第1導体パターンと、前記コイル軸に沿う軸方向において前記第1導体パターンから離間して配置されており、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有し、
前記第1周回軌道部は、前記軸方向において前記第2周回軌道部と対向する第1重複領域と、前記軸方向において前記第2周回軌道部と対向しない第1非重複領域と、を有し、
前記第2周回軌道部は、前記軸方向において前記第1周回軌道部と対向する第2重複領域と、前記軸方向において前記第1周回軌道部と対向しない第2非重複領域と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第3軌道の上にある第3周回軌道部を有する第3導体パターンと、前記軸方向において前記第3導体パターンから離間して配置されており、前記コイル軸の周りの周方向に延びる第4軌道の上にある第4周回軌道部を有する第4導体パターンと、を有し、
前記第3周回軌道部は、前記軸方向において前記第4周回軌道部と対向する第3重複領域と、前記軸方向において前記第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域と、を有し、
前記第4周回軌道部は、前記軸方向において前記第3周回軌道部と対向する第4重複領域と、前記軸方向において前記第3周回軌道部と対向しない第4非重複領域と、を有し、
前記第1重複領域及び前記第2重複領域は、前記軸方向において前記第3非重複領域と対向している、
コイル部品。
[付記2]
前記第3重複領域及び前記第4重複領域は、前記軸方向において前記第2非重複領域(R23)と対向している、
[付記1]に記載のコイル部品。
[付記3]
前記第3導体パターンは、前記第2導体パターンと対向するように配置されている、
[付記1]または[付記2]に記載のコイル部品。
[付記4]
前記第1コイル導体は、前記第1導体パターン及び前記第2導体パターンを含む
第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と
、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記第3導体パターン及び前記第4導体パターンを含む第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有する、
[付記1]ないし[付記3]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
前記第1導体パターンと前記第2導体パターンとは、前記軸方向に沿って延びる第1ビア導体によって接続され、
前記第3導体パターンと前記第4導体パターンとは、前記軸方向に沿って延びる第2ビア導体によって接続される、
[付記4]に記載のコイル部品。
[付記6]
前記第1導体パターンの一端は、前記第1ビア導体に接続され、
前記第1導体パターンの他端は、前記第1一端引出部に接続され、
前記第2導体パターンの一端は、前記第1ビア導体に接続され、
前記第2導体パターンの他端は、前記第1他端引出部に接続され、
前記第3導体パターンの一端は、前記第2ビア導体に接続され、
前記第3導体パターンの他端は、前記第2一端引出部に接続され、
前記第4導体パターンの一端は、前記第2ビア導体に接続され、
前記第4導体パターンの他端は、前記第2他端引出部に接続される、
[付記5]に記載のコイル部品。
[付記7]
前記第1周回軌道部、前記第2周回軌道部、前記第3周回軌道部、及び前記第4周回軌道部はそれぞれ、前記周方向に0.75ターン以上延びている、
[付記1]ないし[付記6]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記8]
前記第1コイル導体のインダクタンス値と前記第2コイル導体のインダクタンス値との差は、前記第1コイル導体のインダクタンス値の3%以下である、
[付記1]ないし[付記7]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記9]
前記第1導体パターンは、前記第1一端引出部と前記第1周回軌道部との間で直線状に延びる第1接続部をさらに有し、
前記第2導体パターンは、前記第1他端引出部と前記第2周回軌道部との間で直線状に延びる第2接続部をさらに有し、
前記第3導体パターンは、前記第2一端引出部と前記第3周回軌道部との間で直線状に延びる第3接続部をさらに有し、
前記第4導体パターンは、前記第2他端引出部と前記第4周回軌道部との間で直線状に延びる第4接続部をさらに有する、
[付記1]ないし[付記8]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記10]
前記第1重複領域は、前記軸方向において、前記第3重複領域及び前記第4重複領域と対向していない、
[付記1]ないし[付記9]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記11]
絶縁材料から構成されており、第1面と、前記第1面と対向する第2面(310b)と、前記第1面と前記第2面とを接続する第3面と、前記第3面と対向しており前記第3面から一軸方向において離間する第4面と、を有する基体と、
前記基体内に設けられた第1磁気結合型コイルと、
前記基体内に、前記第1磁気結合型コイルから前記一軸方向に離間して設けられた第2磁気結合型コイルと、
を備え、
前記第1磁気結合型コイルは、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、第1コイル軸の周りの周方向に延びる第1軌道の上にある第1周回軌道部を有する第1導体パターンと、前記第1コイル軸に沿う第1軸方向において前記第1導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有する第1周回部を有し、
前記第1周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第2周回軌道部と対向する第1重複領域と、前記第1軸方向において前記第2周回軌道部と対向しない第1非重複領域と、を有し、
前記第2周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第1周回軌道部と対向する第2重複領域と、前記第1軸方向において前記第1周回軌道部と対向しない第2非重複領域と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第3軌道の上にある第3周回軌道部を有する第3導体パターンと、前記第1軸方向において前記第3導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第4軌道の上にある第4周回軌道部を有する第4導体パターンと、を有する第2周回部を有し、
前記第3周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第4周回軌道部と対向する第3重複領域と、前記第1軸方向において前記第4周回軌道部と対向しない第3非重複領域と、を有し、
前記第4周回軌道部は、前記第1軸方向において前記第3周回軌道部と対向する第4重複領域と、前記第1軸方向において前記第3周回軌道部と対向しない第4非重複領域と、を有し、
前記第1重複領域及び前記第2重複領域は、前記第1軸方向において前記第3非重複領域と対向しており、
前記第2磁気結合型コイルは、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第3コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第4コイル導体と、
を備え、
前記第3コイル導体は、前記第1コイル軸から前記一軸方向に離間している第2コイル軸の周りの周方向に延びる第5軌道の上にある第5周回軌道部を有する第5導体パターンと、前記第2コイル軸に沿う第2軸方向において前記第5導体パターンから離間して配置されており、前記第1コイル軸の周りの周方向に延びる第2軌道の上にある第2周回軌道部を有する第2導体パターンと、を有する第3周回部を有し、
前記第5周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第6周回軌道部と対向する第5重複領域と、前記第2軸方向において前記第6周回軌道部と対向しない第5非重複領域と、を有し、
前記第6周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第5周回軌道部と対向する第6重複領域と、前記第2軸方向において前記第5周回軌道部と対向しない第6非重複領域と、を有し、
前記第4コイル導体は、前記第2コイル軸の周りの周方向に延びる第7軌道の上にある第7周回軌道部を有する第7導体パターンと、前記第2軸方向において前記第7導体パターンから離間して配置されており、前記第2コイル軸の周りの周方向に延びる第8軌道の上にある第8周回軌道部を有する第8導体パターンと、を有する第4周回部を有し、
前記第7周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第8周回軌道部と対向する第7重複領域と、前記第2軸方向において前記第8周回軌道部と対向しない第7非重複領域と、を有し、
前記第8周回軌道部は、前記第2軸方向において前記第7周回軌道部と対向する第8重複領域と、前記第2軸方向において前記第7周回軌道部と対向しない第8非重複領域と、を有し、
前記第5重複領域及び前記第6重複領域は、前記軸方向において前記第7非重複領域と対向している、
アレイ型コイル部品
[付記12]
[付記1]ないし[付記11]のいずれか一つに記載のコイル部品を含む、回路基板。
[付記13]
[付記12]に記載の回路基板を含む、電子部品。
【符号の説明】
【0146】
1、101、301 磁気結合型コイル部品
10、310 基体
21 第1外部電極
22 第2外部電極
23 第3外部電極
24 第4外部電極
25、125、325 第1コイル導体
25a、125a、325a 第1周回部
25b、325b 第1一端引出部
25c、325c 第1他端引出部
35、135、335 第2コイル導体
35a、135a、335a 第2周回部
35b、335b 第2一端引出部
35c、335c 第2他端引出部
Ax、Ax31、Ax32、Ax33 コイル軸
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10