(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078949
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】水性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240604BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20240604BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240604BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191588
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】前田 寛仁
(72)【発明者】
【氏名】森安 員揮
(72)【発明者】
【氏名】植田 恵理
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝明
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056FC01
2H186BA11
2H186DA12
2H186FA07
2H186FB10
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB56
2H186FB58
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD08
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE07
4J039BE01
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE30
4J039CA03
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4J039DA02
4J039EA36
4J039EA43
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性に優れる塗膜を形成することができる水性インクジェットインクを提供する。
【解決手段】顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクであって、上記樹脂微粒子の含有量は、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%であり、上記界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む水性インクジェットインク。
[化1]
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクであって、
前記樹脂微粒子の含有量は、前記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%であり、
前記界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を前記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む水性インクジェットインク。
【化1】
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【請求項2】
前記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基を含む請求項1に記載の水性インクジェットインク。
【請求項3】
前記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基及びエーテル構造を含む請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【請求項4】
前記一般式(I)中、R1の炭素数が2~11である請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【請求項5】
前記界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤を更に含む請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【請求項6】
前記一般式(I)で示す界面活性剤の含有量が、前記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.1~0.5質量%である請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【請求項7】
前記樹脂微粒子が、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、及び、ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【請求項8】
前記樹脂微粒子の含有量が、前記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で1~5質量%である請求項1又は2に記載の水性インクジェットインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
水性インクジェットインクは、安全性が高く、環境に対する負荷が小さいことから幅広い分野で利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、少なくとも水(A)、色材(B)、水溶性有機溶剤成分(C)、界面活性剤(D)、および樹脂微粒子(E)を含有する水性インクジェットインクであって、前記水性インクジェットインクは、架橋成分として水溶性カルボジイミド化合物(F)をさらに含有し、前記界面活性剤(D)が、シリコーン系界面活性剤であり、前記樹脂微粒子(E)は、少なくともその表面に、カルボジイミド基と反応する官能基を有し、前記樹脂微粒子(E)と前記水溶性カルボジイミド化合物(F)との質量比(E)/(F)が、10以上であることを特徴とする、水性インクジェットインクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、特定の樹脂微粒子とシリコーン系界面活性剤を用いることにより、インク塗膜が摩擦により取られ(かすれ)を抑制(耐擦過性)している。
【0006】
しかしながら、従来の水性インクジェットインクでは、吐出性が充分ではなく、特に連続で印刷を行うとスジ等の画質の劣化(連続吐出性に劣る)がみられることがあり、吐出性と耐擦過性との両立において更なる改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性に優れる塗膜を形成することができる水性インクジェットインクを提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクにおいて、樹脂微粒子の含有量を所定の範囲とし、特定の界面活性剤を用いることにより、上述した課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクであって、上記樹脂微粒子の含有量は、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%であり、上記界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む水性インクジェットインクである。
【0010】
【化1】
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【0011】
本発明の水性インクジェットインクでは、上記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基を含むことが好ましい。
また、上記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基及びエーテル構造を含むことが好ましい。
また、上記一般式(I)中、R1の炭素数が2~11であることが好ましい。
また、上記界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤を更に含むことが好ましい。
また、上記一般式(I)で示す界面活性剤の含有量が、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.1~0.5質量%であることが好ましい。
また、上記樹脂微粒子が、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、及び、ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、上記樹脂微粒子の含有量が、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で1~5質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性に優れる塗膜を形成することができる水性インクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性インクジェットインクは、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクであって、上記樹脂微粒子の含有量は、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%であり、上記界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む。
【0014】
【化2】
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【0015】
本発明では、樹脂微粒子を0.5~10質量%配合することでインク塗膜の耐擦過性を向上させることができる。また、一般的には樹脂微粒子を配合するとインクジェット印刷における吐出性及び連続吐出性は劣化する傾向があるが、上記一般式(I)で示す界面活性剤を添加することで流路内の水性インクジェットインクのリフィル性(再供給性能)を向上させることにより、樹脂微粒子をある程度配合していても水性インクジェットインクの吐出性及び連続吐出性を向上させることができる。
ただし、本発明は上記メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0016】
(顔料)
本発明の水性インクジェットインクは、顔料を含有する。
【0017】
上記顔料としては、公知の顔料を適宜選択すればよい。
【0018】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(例、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料など)、多環式顔料(例、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。
【0019】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等が挙げられる。
【0020】
上記顔料の含有量としては、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で1~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
【0021】
(樹脂微粒子)
本発明の水性インクジェットインクは、樹脂微粒子を含有する。
【0022】
上記樹脂微粒子としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂、フルオロオレフィン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、及び、ポリエステル樹脂等の樹脂微粒子が挙げられる。
【0023】
上記樹脂微粒子としては、耐擦過性を好適に付与の観点から、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、及び、ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0024】
上記樹脂微粒子は、1種の樹脂により構成されていてもよいが、2種以上の樹脂により構成されていてもよい。
【0025】
上記樹脂微粒子の体積平均粒径としては、例えば、10~1000nmが好ましく、30~500nmがより好ましく、50~300nmがさらに好ましい。
なお、体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置を用いて求めることができる。
【0026】
上記樹脂微粒子の含有量としては、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%である。
上記樹脂微粒子の含有量が、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5質量%未満であると耐擦過性が不十分となり、固形分で10質量%を超えると吐出性、連続吐出性が不十分となる。
【0027】
上記樹脂微粒子の含有量は、保存安定性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で1質量%以上であることが好ましい。
また、耐擦過性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
(界面活性剤)
本発明の水性インクジェットインクは、界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を含有する。
【0029】
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【0030】
上記一般式(I)中、R1が、水性インクジェットインクの保存安定性を好適に付与する観点から、ヒドロキシ基を含むことが好ましく、ヒドロキシ基及びエーテル構造を含むことがより好ましい。
【0031】
上記一般式(I)中、R1は、水性インクジェットインクの保存安定性及びリフィル性を好適に向上させる観点から、炭素数が2~11であることが好ましく、炭素数が4~11であることがより好ましい。
【0032】
上記一般式(I)で示す界面活性剤の具体例としては、2-{[2-ヒドロキシ-3-(オクチルオキシ)プロピル]スルファニル}エタン-1-オール、2,2’-チオジエタノール、1-[(2-ヒドロキシエチル)チオ]-2-プロパノール等が挙げられる。
なかでも水性インクジェットインクの保存安定性及びリフィル性を好適に向上させる観点から、2-{[2-ヒドロキシ-3-(オクチルオキシ)プロピル]スルファニル}エタン-1-オールが好ましい。
【0033】
本発明の水性インクジェットインクは、上記一般式(I)で示す界面活性剤を水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む。
上記一般式(I)で示す界面活性剤の含有量が0.01質量%未満の場合には、連続吐出性や耐擦過性が低下し、1質量%を超える場合には、保存安定性、吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性が低下する。
【0034】
上記一般式(I)で示す界面活性剤は、連続吐出性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して0.1質量%以上であることが好ましい。また、保存安定性や吐出性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の水性インクジェットインクは、吐出性を更に向上させる観点から、ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤を更に含むことが好ましい。
【0036】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエーテルシロキサンコポリマー、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0037】
上記アニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
【0038】
上記ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤の含有量としては、0.1~1質量%であることが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(水)
本発明の水性インクジェットインクは、水を含有する。
【0040】
水の含有量としては、吐出性及び保存安定性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して15~70質量%程度であることが好ましい。
【0041】
(水溶性溶剤)
本発明の水性インクジェットインクは、水溶性溶剤を含有してもよい。
【0042】
上記水溶性溶剤としては特に限定されず、モノアルコール類、3価アルコール、2価アルコール、4価以上の多価アルコール類、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ケトン類、エーテル類、エステル類、窒素含有化合物類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記水溶性溶剤の含有量としては、吐出性及び保存安定性を好適に付与する観点から、水性インクジェットインク全体の質量に対して15~70質量%程度であることが好ましい。
【0044】
(顔料分散剤)
本発明の水性インクジェットインクは、顔料分散剤を含有してもよい。
【0045】
上記顔料分散剤としては、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。
これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0046】
上記顔料分散剤としては、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸の共重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸とステアリル(メタ)アクリレートとの共重合体や、スチレンとラウリル(メタ)アクリレートの共重合体が更に好ましく、(メタ)アクリル酸とステアリル(メタ)アクリレートとスチレンとの共重合体が特に好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
【0047】
上記顔料分散剤の含有量としては、上記顔料100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0048】
(その他添加剤)
本発明の水性インクジェットインクは、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、保存性向上剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。
上記添加剤の含有量としては、例えば、水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0~10質量%程度である。
【0049】
(水性インクジェットインクの製造方法)
本発明の水性インクジェットインクの製造方法としては特に限定されず、例えば、上記の各成分を順番に、あるいは同時に添加して、混合撹拌及び錬肉すればよい。
上記の各成分を順番に混合撹拌する場合、例えば、顔料分散剤と水や水溶性溶剤とを混合して水性樹脂ワニスを得た後、顔料を混合撹拌して水性顔料インクベースを作製し、その後、樹脂微粒子、界面活性剤、必要に応じて水や水溶性溶剤とを混合撹拌及び錬肉して水性インクジェットインクを作製してもよい。
【0050】
上記混合撹拌及び錬肉をする方法としては、特に限定されず、例えば、ビーズミル、レディーミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を用いて公知の方法により混合撹拌及び錬肉すればよい。
【0051】
(水性インクジェットインクの物性)
本発明の水性インクジェットインクは、保存安定性に優れることが好ましい。
保存安定性は以下の方法により評価することができる。
【0052】
水性インクジェットインクをガラス瓶に採り、25℃における粘度を粘度計(東機産業社製 RE100L型)を用いて測定する。
その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を上記粘度計により測定する。
保存安定性は、粘度変化率(60℃、(1ヵ月後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度)により評価する。
上記粘度変化率が10%未満であれば保存安定性に優れると評価することができる。上記粘度変化率が5%未満であれば保存安定性に極めて優れると評価することができる。
【0053】
本発明の水性インクジェットインクは、吐出性に優れる。
吐出性は以下の方法により評価することができる。
【0054】
水性インクジェットインクをエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて印字を行い、吐出性を評価する。
多少印字の乱れがあっても吐出することができれば吐出性に優れると評価することができる。印字の乱れがなく、安定して吐出できれば吐出性に極めて優れると評価することができる。
なお、水性インクジェットインクがブラック、シアン、マゼンタ又はイエローの場合には、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に対して印字を行い、水性インクジェットインクがホワイトの場合には、遮光紙に対して印字を行う。
【0055】
本発明の水性インクジェットインクは、連続吐出性に優れる。
連続吐出性は以下の方法により評価することができる。
【0056】
水性インクジェットインクをエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、15cm×20cmのベタ画像を50枚連続で印刷し、連続吐出性を評価する。
上記印刷により得られた印刷物の画質が良好であり、水性インクジェットインクを安定して吐出できれば連続吐出性に優れると評価することができる。
なお、水性インクジェットインクがブラック、シアン、マゼンタ又はイエローの場合には、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に対して印刷を行い、水性インクジェットインクがホワイトの場合には、遮光紙に対して印刷を行う。
【0057】
本発明の水性インクジェットインクは、耐擦過性に優れる。
耐擦過性は以下の方法により評価することができる。
【0058】
上記連続吐出性の評価により得られた印刷物を80℃のオーブンで3分間乾燥させたあと、綿棒で印刷面を擦って耐擦過性を評価する。
印刷面を綿棒で10回摩擦した後、綿棒に色が移り、摩擦部分がわずかにかすれる程度であれば、耐擦過性に優れると評価することができる。印刷面を綿棒で10回摩擦した後でも全くかすれない場合には耐擦過性に極めて優れると評価することができる。
【実施例0059】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその主旨と適用範囲を逸脱しない限りこれらに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、本実施例において、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0060】
<水性顔料インクベースの作製>
(水性樹脂ワニス)
アクリル酸/ステアリルアクリレート/スチレン共重合体30質量部を、水酸化カリウム3.8質量部と水66.2質量部との混合溶液に溶解させて、固形分30質量%の水性樹脂ワニスを作製した。
【0061】
(水性ブラックインクベース)
上記水性樹脂ワニスの32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
上記顔料分散用樹脂ワニスに、カーボンブラック(商品名:プリンテックス90、デグサ社製)の20質量部を加え、撹拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性ブラックインクベース(顔料の割合=20質量%)を調製した。
【0062】
(水性シアンインクベース)
上記水性樹脂ワニスの32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
上記顔料分散用樹脂ワニスに、シアン顔料(商品名:ヘリオゲンブルーL7101F、BASF社製)の20質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性シアンインクベース(顔料の割合=20質量%)を調製した。
【0063】
(水性マゼンタインクベース)
上記水性樹脂ワニスの32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
上記顔料分散用樹脂ワニスに、マゼンタ顔料(商品名:インクジェットマゼンタE5B02、クラリアント社製)の20質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性マゼンタインクベース(顔料の割合=20質量%)を調製した。
【0064】
(水性イエローインクベース)
上記水性樹脂ワニスの32質量部に水48質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
上記顔料分散用樹脂ワニスに、イエロー顔料(商品名:ノバパームイエロー4G01、クラリアント社製)の20質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性イエローインクベース(顔料の割合=20質量%)を調製した。
【0065】
(水性ホワイトインクベース)
上記水性樹脂ワニスの32質量部に水28質量部を加え混合し、顔料分散用樹脂ワニスを調製した。
上記顔料分散用樹脂ワニスに、酸化チタン顔料(商品名:CR-90、石原産業社製)の40質量部を加え、攪拌混合後、湿式サーキュレーションミルで練肉を行い、水性ホワイトインクベース(顔料の割合=40質量%)を調製した。
【0066】
以下の実施例、比較例で使用する各種材料は以下のとおりである。
【0067】
<樹脂微粒子>
ポリエチレン樹脂微粒子(商品名:AQUACER531、BYK社製)
アクリル樹脂微粒子(商品名:ヨドゾールAD173、ヘンケル社製)
スチレン-アクリル共重合体樹脂微粒子(商品名:NeoCryl A-1092、コベストロ社製)
酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂微粒子(商品名:ビニブラン1245L、日信化学工業社製)
塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂微粒子(商品名:ビニブラン278、日信化学工業社製)
酢酸ビニル樹脂微粒子(商品名:ビニブランGV6181、日信化学工業社製)
ポリエステルポリウレタン樹脂微粒子(商品名:スーパーフレックス740、第一工業製薬社製)
ポリエーテルポリウレタン樹脂微粒子(商品名:NeoRez R-966、コベストロ社製)
ポリカーボネートポリウレタン樹脂微粒子(商品名:スーパーフレックス420NS、第一工業製薬社製)
ポリエステル樹脂微粒子(商品名:セポルジョンES、住友精化社製)
【0068】
<界面活性剤>
(上記一般式(I)を満たす界面活性剤)
2-{[2-ヒドロキシ-3-(オクチルオキシ)プロピル]スルファニル}エタン-1-オール
2,2’-チオジエタノール
1-[(2-ヒドロキシエチル)チオ]-2-プロパノール
(上記一般式(I)を満たさない界面活性剤)
2-(メチルチオ)エタノール
2-(エチルチオ)エタノール
2-(イソプロピルチオ)エタノール
2-(イソブチルチオ)エタノール
2-(n-プロピルチオ)エタノール
(ノニオン系界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤A(商品名:SURFYNOL 465、日信化学工業社製)
ノニオン系界面活性剤B(商品名:エマルゲン 705、花王社製)
ノニオン系界面活性剤C(商品名:TEGO Glide 450、Evonk社製)
(アニオン系界面活性剤)
アニオン系界面活性剤(商品名:パーソフトEF、ADEKA社製)
【0069】
<水溶性溶剤>
プロピレングリコール
グリセリン
【0070】
<水>
精製水
【0071】
(実施例1~25、比較例1~8)
各材料を表1、表2、及び、表3に記載の配合量で混合及び撹拌し、水性インクジェットインクを作製した。
【0072】
<保存安定性>
作製した水性インクジェットインクをガラス瓶に採り、25℃における粘度を粘度計(RE100L型、東機産業社製)を用いて測定した。
その後、密栓し60℃、1ヵ月保存し、保存後の粘度(25℃)を上記粘度計により測定した。
保存安定性は、粘度変化率(60℃、(1ヵ月後の粘度-保存前の粘度)/保存前の粘度)に基づいて以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:粘度変化率が5%未満であった
〇:粘度変化率が5%以上、10%未満であった
×:粘度変化率が10%以上であった
【0073】
<吐出性>
作製した水性インクジェットインクをエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて印字を行い、以下の評価基準で吐出性を評価した。
なお、水性インクジェットインクがブラック、シアン、マゼンタ又はイエローの場合には、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に対して印字を行い、水性インクジェットインクがホワイトの場合には、遮光紙に対して印字を行った。
(評価基準)
◎:印字の乱れがなく、安定して吐出することができた
〇:多少印字の乱れがあったが、吐出することができた
×:印字の乱れがあり、安定して吐出することができなった
【0074】
<連続吐出性>
作製した水性インクジェットインクをエプソン社製プリンターPX105のカートリッジに詰めて、15cm×20cmのベタ画像を50枚連続で印刷し、以下の評価基準で連続吐出性を評価した。
なお、水性インクジェットインクがブラック、シアン、マゼンタ又はイエローの場合には、写真用紙GL-101A450(キヤノン社製)に対して印刷を行い、水性インクジェットインクがホワイトの場合には、遮光紙に対して印刷を行った。
(評価基準)
〇:印刷により得られた印刷物の画質が良好であり、安定して吐出することができた
×:印刷により得られた印刷物にスジ等画質の劣化が見られ、安定して吐出することができなかった
【0075】
<耐擦過性>
上記連続吐出性の評価により得られた印刷物を80℃のオーブンで3分間乾燥させたあと、綿棒で印刷面を擦って以下の評価基準で耐擦過性を評価した。
(評価基準)
◎:印刷面を綿棒で10回摩擦した後でも全くかすれなかった
〇:印刷面を綿棒で10回摩擦した後、綿棒に色が移り、摩擦部分がわずかにかすれた
△:印刷面を綿棒で10回摩擦した後、摩擦部分の一部が剥がれた
×:印刷面を綿棒で10回摩擦した後、摩擦部分が全て剥がれた
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
実施例より、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクにおいて、樹脂微粒子の含有量を所定の範囲とし、特定の界面活性剤を用いることにより、保存安定性、吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性に優れる塗膜を形成できることが確認された。
特に上記一般式(I)で示す界面活性剤として2-{[2-ヒドロキシ-3-(オクチルオキシ)プロピル]スルファニル}エタン-1-オールを用いた実施例では、吐出性が極めて優れていた。
また樹脂微粒子として、ポリエチレン樹脂微粒子、スチレン-アクリル共重合体樹脂微粒子、ポリエステルウレタン樹脂微粒子、又は、ポリエーテルポリウレタン樹脂微粒子を用いた実施例では、耐擦過性が極めて優れていた。
一方で比較例では、吐出性、連続吐出性、及び、耐擦過性の全てに優れる塗膜を形成することができなかった。
なお、比較例2~8では、連続吐出性の評価において印刷物を得ることができなかったので、耐擦過性の評価を行うことができなかった(表3中では「-」と記載した)。
【0080】
本明細書では以下の事項が開示されている。
【0081】
本開示(1)は、顔料、樹脂微粒子、界面活性剤、及び、水を含む水性インクジェットインクであって、上記樹脂微粒子の含有量は、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で0.5~10質量%であり、上記界面活性剤として、下記一般式(I)で示す界面活性剤を上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.01~1質量%含む水性インクジェットインクである。
【化4】
(一般式(I)中、R
1は、ヒドロキシ基及び/又はエーテル構造を含み、炭素数1~15の直鎖又は分岐鎖の置換基である。)
【0082】
本開示(2)は、上記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基を含む本開示(1)に記載の水性インクジェットインクである。
本開示(3)は、上記一般式(I)中、R1が、ヒドロキシ基及びエーテル構造を含む本開示(1)又は(2)に記載の水性インクジェットインクである。
本開示(4)は、上記一般式(I)中、R1の炭素数が2~11である本開示(1)~(3)の何れかに記載の水性インクジェットインクである。
本開示(5)は、上記界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤を更に含む本開示(1)~(4)の何れかに記載の水性インクジェットインクである。
本開示(6)は、上記一般式(I)で示す界面活性剤の含有量が、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して0.1~0.5質量%である本開示(1)~(5)の何れかに記載の水性インクジェットインクである。
本開示(7)は、上記樹脂微粒子が、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、及び、ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(6)の何れかに記載の水性インクジェットインクである。
本開示(8)は、上記樹脂微粒子の含有量が、上記水性インクジェットインク全体の質量に対して固形分で1~5質量%である本開示(1)~(7)の何れかに記載の水性インクジェットインクである。