(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078950
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】簡単袴
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20240604BHJP
【FI】
A41D1/00 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191589
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】511278132
【氏名又は名称】株式会社ツインズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直美
(72)【発明者】
【氏名】小野 宏積
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA08
3B030BB01
3B030BC07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、帯と関連付けながら簡単に独りでも着脱できる袴を提供することにある。
【解決手段】かかる簡単袴は、袴の前身頃の上側に弾性部材を含む紐状の接続部材を左右に設けてなる袴であって、該接続部材の自由端またはその近傍に左右の接続部材のいずれにも帯に係止する係止手段、および/または左右の接続部材同士を係止する係止手段が設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袴の前身頃の上側に弾性部材を含む紐状の接続部材を左右に設けてなる袴であって、該接続部材の自由端またはその近傍に左右の接続部材のいずれにも帯に係止する係止手段、および/または左右の接続部材同士を係止する係止手段が設けられていることを特徴とする簡単に着脱可能な袴。
【請求項2】
前記左右の接続部材の張力が、実質的に同一である請求項1記載の袴。
【請求項3】
前記左右の接続部材が実質的に対称に設けられている請求項1または2記載の袴。
【請求項4】
前記左右の接続部材に長さ調節手段が設けられている請求項1または2記載の袴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性部材を使用し、帯と関連付けながら簡単に独りでも着脱できる袴に関する。
【背景技術】
【0002】
袴は日本の民族衣装であり、祭礼の際に着用されることが多い。袴の基本形は、下部で繋がっている前身頃と後身頃を前身頃の上側の両側端から延びている左右の前紐と後身頃の上側の両側端から延びている左右の後紐で構成されており、まず、左右の前紐を予め締めた帯の結びに絡めながら結んで前身頃を固定し、次いで、後紐を前で結ぶことで着付けをしている。
【0003】
しかしながら、後ろ手の作業が多く、自分で着付けをすることは着物を着る以上に習熟がいる。
【0004】
そこで、これまで着付けが簡単になるように工夫された多くの簡単袴が提案されている。その中でも、ゴムなどの弾性材料を使用して袴の固定を容易にする例としては、前紐同士または前紐や後紐と袴の見頃を接続する特許文献1(特許第6670537号公報)、特許文献2(特開2001-355106号公報)、特許文献3(実用新案登録第3024144号公報)、および特許文献4(実開平3-1908号公報)、並びに帯の結びに絡めて左右非対称の前紐同士を繋ぐ特許文献5(特開2017-71866号公報)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6670537号公報
【特許文献2】特開2001-355106号公報
【特許文献3】実用新案登録第3024144号公報
【特許文献4】実開平3-1908号公報
【特許文献5】特開2017-71866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1~4記載の袴は帯と関連付けられておらず、動いているうちに帯から上下左右にズレる恐れがある。
【0007】
特許文献5記載の袴は一方の前紐の先を8の字にして帯の結び(一文字結びやリボン結び)に絡め、他方の前紐の先端に形成した留具と係止するものであり、8の字部分を帯の結びに性格に絡める作業が必要で、自分での着装(自装)が容易とは言えない。また、帯との関係は比較的安定するが、左右の前紐の役割が異なるため形状や長さが非対称になっており、左右の前紐の引っ張り具合が同じではなく袴の前後の位置決めが難しい。
【0008】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、初めて袴を自装する人に対しても極めて簡単にかつ安心して着装でき、しかも外観に違和感のない簡単袴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、左右の前紐をいずれも帯と係止することで上記の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、袴の前身頃の上側に弾性部材を含む紐状の接続部材を左右に設けてなる袴であって、該接続部材の自由端またはその近傍に左右の接続部材のいずれにも帯に係止する係止手段、および/または左右の接続部材同士を係止する係止手段が設けられていることを特徴とする簡単に着脱可能な袴を提供する。
【0011】
本発明の第1の特徴は、袴の前紐の一部または全部を弾性部材を含む紐状の接続部材とし、その接続部材を左右に設けている点にある。
【0012】
本発明の第2の特徴は、接続部材の自由端またはその近傍に左右の接続部材のいずれにも帯に係止する係止手段が設けられていることである。接続部材は相互に係止されるのではなく帯に直接または間接的に(器具を介在させるなどして)係止する必要がある。ただし、帯に係止されていれば、追加的に相互に係止されていてもよい。
【0013】
前記第1の特徴と第2の特徴を併せ持つことにより、着装時に素人の方でも左右のバランスを自然に取りながら帯に対して袴の位置決めと固定が可能となる。
【0014】
本発明の簡単袴において、前記左右の接続部材の張力が実質的に同一であることが好ましい。左右の接続部材の張力が実質的に同一であることにより、装着時に袴の左右のバランスが取れ、袴が自然にセンターラインに沿った形となりやすい。
【0015】
本発明の簡単袴において、前記左右の接続部材が実質的に対称に設けられていることが好ましい。「実質的に対称」とは、たとえば実質的に同一の長さと張力を有することが挙げられる。この「実質的に対称」に保つために、長さ調節手段を左右の接続部材に設けることが好ましい。
【0016】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、弾性部材は特に限定されず、従来公知の種々の弾性部材を用いることができる。たとえば紐ゴム、板ゴム、織りゴムなど伸縮系の弾性材料が好ましい。また、係止手段も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の係止手段を用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、初めて袴を自装する人に対しても極めて簡単にかつ安心して着装でき、しかも外観に違和感のない簡単袴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分正面図である。
【
図2】本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分斜視図である。
【
図3】本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分背面図であり、係止手段を帯の結びに絡めた状態である。
【
図4】本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分背面図であり、接続部材を帯に設けられた留具に係止した状態の概略説明図である。
【
図5】本発明の簡易袴の接続部材の別の例の概略平面図であり、左右の接続部材同士を接続する形態の例である。
【
図6】本発明の簡易袴の接続部材の別の例の概略平面図である。
【
図7】本発明の簡易袴の接続部材に設けられている長さ調節手段の一例の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の簡易袴の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0020】
1.簡単袴
本発明の簡単袴は、袴の前身頃の上側に弾性部材を含む紐状の接続部材を左右に設けてなる袴であって、該接続部材の自由端またはその近傍に左右の接続部材のいずれにも帯に係止する係止手段、および/または左右の接続部材同士を係止する係止手段が設けられていることを特徴とする。以下、各部材や手段について図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
(1)袴
本発明の簡単袴は後身頃に袴板のない女袴(卒業式に着装される袴)に好適に適用できるが、後身頃に袴板を持つ男袴にも適用可能である。以下、女袴を代表させて説明する。
【0022】
図1は本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分正面図であり、
図2は本発明の簡易袴の一実施形態の概略部分斜視図である。本発明の簡単袴は前身頃1と後身頃2からなり、前身頃1の上端の両側に接続部材3a、3bが設けられている。この実施形態の接続部材3a、3bは紐状の接続部4a、4bと係止手段5a、5bとからなる。係止手段5a,5bはここではゴム紐で弾性部材を構成している。
【0023】
図3に、係止手段を帯の結びに係止する形態の概略部分背面図を示す。袴を着装する場合、帯6aはリボン結びや一文字結びで結ぶのが常道である。たとえばリボン結び7の場合、帯6aの結び7の両側に羽根8a、8bが出来る。本発明では係止手段3を羽根8に絡めることにより、前身頃1を固定する。図中では、接続部材3aの弾性係止手段5aを羽根8bに、接続部材3bの弾性係止手段5bを羽根8aにクロスして絡めている。弾性部材として適切な張力(伸び)をもつ材料を選定することで、必要な固定力が得られる。
【0024】
ここで、左右の係止手段の張力(伸び)を実質的に同一にすることが好ましい。左右の接続部材の張力が実質的に同一であることにより、装着時に袴の左右のバランスが取れ、袴が自然にセンターラインに沿った形となりやすい。
【0025】
また、好ましくは、左右の接続部材が実質的に対称に設けられていることが好ましい。実質的に対称にすることで左右の張力を実質的に同一にすることにも貢献できるし、着装の混乱も軽減できる。
【0026】
係止手段3の係止は帯の結び(羽根)に絡める以外に、
図4に示すように、帯6b自体に突起やフック、リングなどの被係止手段9a、9bを設け、係止手段5a、5bを係留してもよい。
【0027】
また、
図5に示すように、係止手段5a、5bを直接係止することも可能である。その場合、S字フックなどの連結具10を用いてもよい。
【0028】
接続手段はこれまで説明してきたゴム紐の輪を係止手段とする形態だけでなく、
図6に示すように、紐状の接続部14aに織りゴムなどの幅広いゴム部分16aを介在させることもできる。この場合、係止手段15aは伸びのない紐(編み紐)の輪でよい。また、図示していないが、
図4に示す帯に係止する形態の場合、係止手段として、フック、リング、公知の係止具や連結具を用いてもよい。
【0029】
左右の接続手段の張力を実質的に同一にするため、および/または左右対称にするために、接続手段の長さを調節する長さ調節手段を設けてもよい。たとえば、
図7に示すように、接続手段23aにバックル17aを設け接続部24aの長さを調節し、係止手段25aの位置を調節することもできる。なお、この長さ調節手段としてはたとえば面テープ、スナップ、ボタンなどのほか、バッグやリュックの紐の調節に使われている公知の手段を用いることがきる。
【0030】
本発明の効果を損なわない限りにおいて、袴の種類や形は特に限定されず、従来公知の種々の袴に適用できる。あんどん型のほか、馬乗り型、巫女用の袴などにも適用することができる。
【0031】
帯については特に限定されず、一本の帯を従来の方法で結んでも良いし、帯結びを予め作成している作り帯でもよいし、羽根や突起を設けた専用の帯を用いても良い。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 前身頃
3a、3b、13a、23a 接続手段
4a、4b、14a、24a 接続部
5a、5b、15a、25a 係止手段
6a、6b 帯
7 帯結び
8a、8b 帯の羽根
9a、9b 被係止手段
10 連結具
17a バックル