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特開2024-78956没入度合い判定方法及び没入度合い判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078956
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】没入度合い判定方法及び没入度合い判定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/18 20060101AFI20240604BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240604BHJP
   A61B 5/372 20210101ALI20240604BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240604BHJP
   G08B 21/06 20060101ALI20240604BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B5/18
A61B3/10 800
A61B5/372
G08G1/16 F
G08B21/06
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191604
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】劉 権鋒
(72)【発明者】
【氏名】宝来 淳史
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊行
(72)【発明者】
【氏名】小谷 泰則
(72)【発明者】
【氏名】大上 淑美
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
4C316
5C086
5H181
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ04
4C038PS00
4C038PS03
4C038PS07
4C127AA03
4C127GG05
4C127KK03
4C127KK05
4C316AA30
4C316AB13
4C316FA20
4C316FB26
4C316FC28
5C086AA23
5C086BA22
5C086CA08
5C086CA12
5C086DA08
5C086FA01
5C086FA17
5H181AA01
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】被験者からの脳活動信号に基づいて被験者の没入度合いを判定する判定精度を向上する。
【解決手段】没入度合い判定方法では、被験者の脳の中央領域及び後方領域の脳活動信号を検出し(S1)、被験者の瞬目を検出し(S2)、検出された脳活動信号に基づいて中央領域と後方領域との間の機能的連結性を測定し(S3)、瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間における機能的連結性の有無と、第1期間以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間における機能的連結性の有無に基づいて、被験者の没入度合いを判定する(S4~S10)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳の中央領域及び後方領域の脳活動信号を検出し、
前記被験者の瞬目を検出し、
検出された前記脳活動信号に基づいて前記中央領域と前記後方領域との間の機能的連結性を測定し、
前記瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間における前記機能的連結性の有無と、前記第1期間以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間における前記機能的連結性の有無に基づいて、前記被験者の没入度合いを判定する、
ことを特徴とする没入度合い判定方法。
【請求項2】
前記第2期間に前記機能的連結性があると判定した場合に、前記被験者の没入度合いが比較的高いと判定することを特徴とする請求項1に記載の没入度合い判定方法。
【請求項3】
前記第1期間に前記機能的連結性があり且つ前記第2期間に前記機能的連結性がないと判定した場合に、前記被験者の没入度合いが比較的低いと判定することを特徴とする請求項1に記載の没入度合い判定方法。
【請求項4】
前記第1期間及び前記第2期間内に前記機能的連結性がないと判定された場合に、前記被験者が無意識状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の没入度合い判定方法。
【請求項5】
前記没入度合いの違いに応じて異なる警報を前記被験者に提示することを特徴とする請求項1に記載の没入度合い判定方法。
【請求項6】
前記第2期間に前記機能的連結性があると判定した場合に、前記第1期間及び前記第2期間内に前記機能的連結性がないと判定された場合よりも強い警報を前記被験者に提示することを特徴とする請求項5に記載の没入度合い判定方法。
【請求項7】
前記第2期間に前記機能的連結性があると判定した場合、又は前記第1期間及び前記第2期間内に前記機能的連結性がないと判定された場合に前記被験者に警報を提示し、前記第1期間に前記機能的連結性があり且つ前記第2期間に前記機能的連結性がないと判定した場合に前記被験者に警報を提示しない、ことを特徴とする請求項1に記載の没入度合い判定方法。
【請求項8】
前記中央領域の脳活動信号として前記被験者の脳の後帯状回の脳活動信号を検出し、
前記後方領域の脳活動信号として前記被験者の脳の左角回、右角回、左後下頭頂溝又は右後下頭頂溝の少なくとも1つの脳活動信号を検出する、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の没入度合い判定方法。
【請求項9】
被験者の脳活動を検出するセンサと、
前記センサの検出信号に基づいて前記被験者の脳の中央領域及び後方領域における脳活動信号を検出し、前記検出信号に基づいて前記被験者の瞬目を検出し、検出された前記脳活動信号に基づいて前記中央領域と前記後方領域との間の機能的連結性を測定し、前記瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間における前記機能的連結性の有無と、前記第1期間以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間における前記機能的連結性の有無に基づいて、前記被験者の没入度合いを判定する電子回路と、
を備えることを特徴とする没入度合い判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、没入度合い判定方法及び没入度合い判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転者の脳波からα波、β波及びθ波の強さを示す第1ないし第3の指標値を算出し、これら第1ないし第3の指標値に基づいて運転者の覚醒状態及び集中状態を判定する運転者状態判定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-248535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脳波は集中度以外の要因でも変化し、また脳波の周波数強度には被験者によって個人差があるため、α脳波の周波数帯の強度だけでは、被験者の具体的な脳内機能まで捉えることはできず、誤判定を生じさせ易かった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被験者からの脳活動信号に基づいて被験者の没入度合いを判定する判定精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による没入度合い判定方法では、被験者の脳の中央領域及び後方領域の脳活動信号を検出し、被験者の瞬目を検出し、検出された脳活動信号に基づいて中央領域と後方領域との間の機能的連結性を測定し、瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間における機能的連結性の有無と、第1期間以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間における機能的連結性の有無に基づいて、被験者の没入度合いを判定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被験者からの脳活動信号に基づいて被験者の没入度合いを判定する判定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の没入度合い判定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
図2】被験者の脳の各領域の模式図である。
図3図1のコントローラの機能構成の一例のブロック図である。
図4】機能的連結性の有無を判定する期間の模式図である。
図5】実施形態の没入度合い判定方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1は、実施形態の没入度合い判定装置のハードウエア構成の一例を示す図である。没入度合い判定装置1は、没入度合いの判定対象となる被験者の脳の各領域における脳活動をセンサで検出し、検出された脳活動に基づいて、被験者が特定の又は不特定の対象に対して没入しているか否かを判定する装置である。
以下の説明では、没入度合い判定装置1が、車両に搭載されて運転者の没入度合いを判定する場合の例(すなわち被験者が運転者である場合の例)について説明するが、本発明はこのような用途に限定されず、様々な用途において被験者の没入度合いを判定する場合に広く適用することができる。
【0010】
没入度合い判定装置1は、脳活動センサ2と、表示装置3と、スピーカ4と、コントローラ5を備える。
脳活動センサ2は、被験者である運転者の脳活動を検出するセンサである。例えば脳活動センサ2は、運転者の脳波を検出する脳波センサであってよい。
また、例えば磁気共鳴機能画像法(fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging)により運転者の脳活動を測定する場合には、脳活動センサ2は、運転者の脳に磁場を印加する磁場印加機構と応答波を受信する受信コイルを備えてもよい。また、例えば機能的近赤外線分光法(fNIRS:functional Near-InfraRed Spectroscopy)により運転者の脳活動を測定する場合には、脳活動センサ2は、近赤外線の送光部と受光部を備えてもよい。
【0011】
表示装置3は、運転者が視認可能な位置に設けられて、没入度合い判定装置1が生成する視覚的情報を提示する出力装置である。表示装置3は、例えば、ナビゲーションシステムの表示画面や、運転席前方のメータ近くの位置やその他の位置に設けられたディスプレイ装置であってよい。
スピーカ4は、没入度合い判定装置1が生成する聴覚的情報を提示する出力装置である。聴覚的情報を出力する装置としてブザーを備えてもよい。
例えば、没入度合い判定装置1は、運転者の没入度合いが高いと判定した場合には、運転者が運転に対して集中していないと判断して、表示装置3から警報表示や視覚的な警報メッセージを出力したり、スピーカ4やブザーから、警報音や聴覚的な警報メッセージを出力したりしてよい。
【0012】
コントローラ5は、脳活動センサ2から出力される検出信号に基づいて運転者の没入度合いを判定する電子回路である。コントローラ5は、プロセッサ5aと、記憶装置5b等の周辺部品とを含む。プロセッサ5aは、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置5bは、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置5bは、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
以下に説明するコントローラ5の機能は、例えばプロセッサ5aが、記憶装置5bに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
なお、コントローラ5を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。例えばコントローラ5は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。コントローラ5はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0013】
運転者の没入度合いを判定する際に、コントローラ5は、脳活動センサ2から出力される検出信号を解析して、運転者の脳の複数の部分領域からの脳活動信号を検出する。例えば脳活動信号として、複数の部分領域からのEEG(ElectroEncephaloGraphy)データや、MRIデータ、NIRSデータを検出する。具体的には、コントローラ5は、脳の中央領域と後方領域の脳活動信号を検出する。
図2は、被験者の脳の各領域の模式図である。例えばコントローラ5は、脳の中央領域の脳活動信号として、後帯状回PCC(Posterior Cingulate Cortex)の脳活動信号を検出してよい。
また例えばコントローラ5は、脳の後方領域の脳活動信号として、左角回LAG(Left Angular Gyrus)、右角回RAG(Right Angular Gyrus)、左後下頭頂溝LplPS(Left Posterior Inferior Parietal Sulcus)又は右後下頭頂溝RplPS(Right Posterior Inferior Parietal Sulcus)の少なくとも1つの脳活動信号を検出してよい。
【0014】
そしてコントローラ5は、これらの領域の脳活動信号に基づいて、脳の中央領域と後方領域との間の機能的連結性(functional brain connectivity)を測定する。機能的連結性は、神経系内の異なる領域間の統計的依存関係のパターンである。
図2の例では、コントローラ5は、中央領域と後方領域との間の機能的連結性として、以下に述べる第1連結性C1、第2連結性C2、第3連結性C3又は第4連結性C4のいずれか1つ以上を測定する。
【0015】
第1連結性C1は後帯状回PCCと左角回LAGとの間の機能的連結性であり、第2連結性C2は後帯状回PCCと右角回RAGとの間の機能的連結性であり、第3連結性C3は後帯状回PCCと左後下頭頂溝LplPSとの間の機能的連結性であり第4連結性C4は後帯状回PCCと右後下頭頂溝RplPSとの間の機能的連結性である。
【0016】
本発明の発明者らは、被験者が何らかの対象に没入する没入度合いが高い状態では、没入度合いが低い場合に比べて、被験者の瞬目(まばたき)の後の脳の中央領域と後方領域との間の機能的連結性がより長く継続することを発見した。また、被験者が何にも没入しておらず、無意識状態や覚醒度が低い状態にある場合には、被験者の瞬目の後に中央領域と後方領域との間の機能的連結性が発生しないことを発見した。
【0017】
そこで、実施形態の没入度合い判定装置1は、運転者の瞬目を検出し、運転者の瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間における中央領域と後方領域との間の機能的連結性の有無と、第1期間以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間における中央領域と後方領域との間の機能的連結性の有無に基づいて、被験者の没入度合いを判定する。
このように、被験者の瞬目の後に生じる具体的な脳内部位の機能的連結性に基づいて被験者の没入度合いを判定することにより、上記特許文献1のような単なる脳波の周波数強度に基づく判定よりも誤判定を低減することができる。これにより、被験者の没入度合いを判定する判定精度を向上できる。
【0018】
図3は、図1のコントローラ5の機能構成の一例のブロック図である。コントローラ5は、脳活動解析部10と、瞬目検出部11と、被験者状態判定部12と、警報生成部13を備える。
脳活動解析部10は、脳活動センサ2から出力される検出信号を解析して、運転者の脳の中央領域(例えば後帯状回PCC)からの脳活動信号(例えばEEGデータ、MRIデータ、NIRSデータ等)と、後方領域(例えば、左角回LAG、右角回RAG、左後下頭頂溝LplPS、右後下頭頂溝RplPS)からの脳活動信号をそれぞれ検出する。
【0019】
脳活動解析部10は、中央領域からの脳活動信号と後方領域からの脳活動信号とに基づいて、中央領域と後方領域との間の機能的連結性を演算する。
例えば脳活動解析部10は、中央領域からの脳活動信号と後方領域からの脳活動信号との間の相関係数を演算する。例えば、脳活動解析部10は、脳活動信号どうしの相関係数として、脳活動信号の時系列データどうしの正規相関の相関係数を演算してもよい。
【0020】
また例えば脳活動解析部10は、脳活動信号どうしの相関係数として、脳活動信号の時系列データどうしのコヒーレンスを演算してもよい。例えば、相関係数を演算する対象の領域の脳活動信号の時系列データx、yの自己スペクトルをPxx(f)及びPyy(f)と表記し、クロススペクトルをPxy(f)と表記すると、これらの領域の脳活動信号のコヒーレンスCxy(f)は、次式で演算できる。
Cxy(f)=|Pxy(f)|/(|Pxx(f)|×|Pyy(f)|)
また例えば脳活動解析部10は、脳活動信号どうしの相関係数として偏有向コヒーレンス(PDC:Partial Directed Coherence)の自己回帰係数(autoregressive coefficient)を演算してもよい。
【0021】
脳活動解析部10は、演算した相関係数に基づいて中央領域と後方領域との間の機能的連結性の有無を判定してよい。例えば、相関係数が閾値以上である場合に機能的連結性があると判定し、相関係数が閾値未満である場合に機能的連結性がないと判定してよい。
例えば、左角回LAG、右角回RAG、左後下頭頂溝LplPS又は右後下頭頂溝RplPSのうちいずれか1つの領域の脳活動信号と中央領域からの脳活動信号と相関係数を演算し、相関係数が閾値以上である場合に中央領域と後方領域との間の機能的連結性があると判定し、相関係数が閾値未満である場合に機能的連結性がないと判定してよい。
【0022】
また例えば、左角回LAG、右角回RAG、左後下頭頂溝LplPS又は右後下頭頂溝RplPSのうち2以上の領域の脳活動信号と中央領域からの脳活動信号との相関係数を各々演算し、これらの相関係数の何れかが閾値以上である場合に中央領域と後方領域との間の機能的連結性があると判定し、これらの相関係数の全てが閾値未満である場合に機能的連結性がないと判定してよい。
【0023】
また例えば、左角回LAG、右角回RAG、左後下頭頂溝LplPS又は右後下頭頂溝RplPSのうち2以上の領域の脳活動信号と中央領域からの脳活動信号との相関係数を各々演算し、これらの相関係数の統計値(例えば平均値、中間値、最大値又は最小値)が閾値以上である場合に中央領域と後方領域との間の機能的連結性があると判定し、これらの相関係数の統計値が閾値未満である場合に機能的連結性がないと判定してもよい。
脳活動解析部10は、機能的連結性の測定結果を被験者状態判定部12へ出力する。
【0024】
瞬目検出部11は、脳活動センサ2から出力される検出信号に基づいて運転者の瞬目(まばたき)を検出する。例えば瞬目検出部11は、脳波センサにより検出される筋電位変化を検出することにより運転者の瞬目を検出してよい。また例えば瞬目検出部11は、眼球電図(EOG:ElectroOculography)法に基づいて運転者の瞬目を検出してもよく、運転者の顔画像を解析することにより運転者の瞬目を検出してもよい。没入度合い判定装置1は、眼球電図測定装置や運転者の顔画像を撮影するカメラを備えてもよい。瞬目検出部11は、瞬目の検出結果を被験者状態判定部12へ出力する。
被験者状態判定部12は、脳活動解析部10による脳の中央領域と後方領域との間の機能的連結性の測定結果と、瞬目検出部11による瞬目の検出結果とに基づいて、運転者の没入度合いを判定する。
【0025】
具体的には、瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間T1における機能的連結性の有無と、第1期間T1以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間T2における機能的連結性の有無に基づいて運転者の没入度合いを判定する。
図4は、第1期間T1と第2期間T2の模式図である。第1所定時間と第2所定時間とは同じ長さであってもよく異なる長さであってもよい。
【0026】
例えば第1所定時間と第2所定時間は150ミリ秒であってよい。すなわち、第1期間T1は、瞬目を検出した時点から開始し、瞬目を検出してから150ミリ秒経過した時点で終了する期間であってよい。また第2期間T2は、瞬目を検出してから150ミリ秒経過した時点から開始し、瞬目を検出してから300ミリ秒経過した時点で終了する期間であってよい。
【0027】
例えば被験者状態判定部12は、第2期間T2に機能的連結性があると判定した場合に、運転者が何か特定の対象に没入する没入度合いが比較的高いと判定してよい。例えば被験者状態判定部12は、運転者の没入度合いが、運転中に許容される没入度合いよりも高いと判定してよい(すなわち運転者の没入度合いが過度に高いと判定してよい)。例えば被験者状態判定部12は、第1期間T1だけでなく第2期間T2にも機能的連結性があると判定した場合に運転者の没入度合いが比較的高いと判定してよい。
【0028】
また、例えば被験者状態判定部12は、第1期間T1に機能的連結性があり且つ第2期間T2に機能的連結性がないと判定した場合に、運転者が何か特定の対象に没入する没入度合いが比較的低いと判定する。例えば被験者状態判定部12は、運転者の没入度合いが、運転中に許容される没入度合いの範囲であると判定してよい。例えば、運転中の没入度合いとして適度な没入度合いであると判定してよい。
【0029】
また例えば、被験者状態判定部12は、被験者の瞬目の後に中央領域と後方領域との間の機能的連結性が発生しない場合には、運転者が何にも没入しておらず、無意識状態や覚醒度が低い状態にあると判定してよい。例えば、第1期間T1及び第2期間T2内に機能的連結性がない場合には運転者が無意識状態や覚醒度が低い状態にあると判定してよい。
図3を参照する。警報生成部13は、被験者状態判定部12による運転者の没入度合いの判定結果に基づいて、表示装置3や、スピーカ4、ブザーから運転者に警報を提示する。このとき警報生成部13は、運転者の没入度合いの違いに応じて異なる警報を運転者に提示してよい。
【0030】
また、運転者の没入度合いが比較的高いと被験者状態判定部12が判定した場合、例えば、警報生成部13は、第1警報を生成して表示装置3や、スピーカ4、ブザーから出力する。これにより、運転に集中するように運転者を促すことができる。
また例えば、運転者が無意識状態や覚醒度が低い状態にあると被験者状態判定部12が判定した場合、警報生成部13は、第2警報を生成して表示装置3や、スピーカ4、ブザーから出力する。これにより、運転者を無意識状態や覚醒度が低い状態へ回復させることができる。
例えば第1警報及び第2警報は、表示装置3に表示される警報表示や視覚的な警報メッセージや、スピーカ4やブザーから出力される警報音や聴覚的な警報メッセージであってよい。
【0031】
また例えば警報生成部13は、運転者の没入度合いが比較的高いと判定された場合に、第1警報として第2警報よりも強い警報(例えば緊急警報)を提示して、運転者に緊急性が高いことを知らせてもよい。また、第2警報よりも強い第1警報を生成することにより、運転者が非常に高い没入度で没入していても警報に気づかせることができる。
例えば、第2警報としては、表示装置3に表示される警報表示や視覚的な警報メッセージのみを生成し、第1警報としては、表示装置3に表示される警報表示や視覚的な警報メッセージと、スピーカ4やブザーから出力される警報音や聴覚的な警報メッセージの両方を生成してもよい。
【0032】
また例えば、第1警報として表示装置3に表示される警報表示や視覚的な警報メッセージを、第2警報として表示される警報表示や視覚的な警報メッセージよりも目立つ表示やメッセージとしたり、より注意を喚起する表示やメッセージとしたりしてよい。
また例えば、第1警報としてスピーカ4やブザーから出力される警報音や聴覚的な警報メッセージを、第2警報として出力される警報音や聴覚的な警報メッセージよりも大きな音量としたり、より注意を喚起する警報音や警報メッセージとしたりしてよい。例えば第1警報としてスピーカ4やブザーから出力される警報音や聴覚的な警報メッセージの音の周波数を、第2警報の周波数よりも高くしてよい。
一方で、運転者の没入度合いが比較的低いと被験者状態判定部12が判定した場合、運転者やすぐに運転に集中した状態に戻ることができるため、警報生成部13は警報信号を生成しない。すなわち、上記の第1警報信号及び第2警報信号の提示を停止する。
【0033】
(動作)
図5は、実施形態の没入度合い判定方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において脳活動解析部10は、脳活動センサ2から出力される検出信号を解析することにより、運転者の脳の中央領域及び後方領域からの脳活動信号を測定する。
ステップS2において瞬目検出部11は、脳活動センサ2から出力される検出信号に基づいて運転者の瞬目を検出する。
ステップS3において脳活動解析部10は、運転者の瞬目の検出時点以降の期間における運転者の脳の中央領域と後方領域との間の機能的連結性を演算する。
【0034】
ステップS4において被験者状態判定部12は、第1期間T1内に機能的連結性があるか否かを判定する。第1期間T1内に機能的連結性がある場合(ステップS4:Y)に処理はステップS5へ進む。第1期間T1内に機能的連結性がない場合(ステップS4:N)に処理はステップS9へ進む。
ステップS5において被験者状態判定部12は、第2期間T2内に機能的連結性があるか否かを判定する。第2期間T2内に機能的連結性がある場合(ステップS5:Y)に処理はステップS6へ進む。第2期間T2内に機能的連結性がない場合(ステップS5:N)に処理はステップS8へ進む。
【0035】
ステップS6において被験者状態判定部12は、運転者の没入度合いが比較的高い没入度合いであると判定する。
ステップS7において警報生成部13は、第1警報を生成して運転者に提示する。その後に処理はステップS11へ進む。
【0036】
ステップS5において第2期間T2内に機能的連結性がないと判定された場合(ステップS5:N)、ステップS8において被験者状態判定部12は、運転者の没入度合いが比較的高い没入度合いであると判定する。この場合には、警報生成部13は警報を生成せず、その後に処理はステップS11へ進む。
ステップS4において第1期間T1内に機能的連結性がないと判定された場合(ステップS4:N)、ステップS9において被験者状態判定部12は、運転者が無意識状態や覚醒度が低い状態にあると判定する。
【0037】
ステップS10において警報生成部13は、第2警報を生成して運転者に提示する。その後に処理はステップS11へ進む。
ステップS11においてコントローラ5は、車両のイグニションキーがオフに切り替わったか否かを判定する。イグニションキーがオフに切り替わっていない場合(ステップS11:N)に処理はステップS1へ戻る。イグニションキーがオフに切り替わった場合(ステップS11:Y)に処理は終了する。
【0038】
(実施形態の効果)
(1)脳活動センサ2及びコントローラ5は、被験者の脳の中央領域及び後方領域の脳活動信号を検出する。コントローラ5は、被験者の瞬目を検出し、検出された脳活動信号に基づいて中央領域と後方領域との間の機能的連結性を測定し、瞬目を検出した時点から第1所定時間が経過するまでの第1期間T1における機能的連結性の有無と、第1期間T1以降の時点から第2所定時間が経過するまでの第2期間T2における機能的連結性の有無に基づいて、被験者の没入度合いを判定する。
これにより、被験者の瞬目の所定の期間の間に、被験者の脳の中央領域及び後方領域との間の機能的連結性によって、被験者の没入度合いをリアルタイムに正確に判定できる。
【0039】
(2)コントローラ5は、第2期間T2に機能的連結性があると判定した場合に、被験者の没入度合いが比較的高いと判定してよい。
これにより、被験者が比較的高い没入度合いで特定の対象に没入していることを判定できる。
【0040】
(3)コントローラ5は、第1期間T1に機能的連結性があり且つ第2期間T2に機能的連結性がないと判定した場合に、被験者の没入度合いが比較的低いと判定してよい。
これにより、被験者が特定の対象に没入しているが、その没入度合いは比較的低いことを判定できる。
【0041】
(4)コントローラ5は、第1期間T1及び第2期間T2内に機能的連結性がないと判定された場合に、被験者が無意識状態であると判定してよい。
これにより、被験者が無意識状態であることが判定できる。
【0042】
(5)コントローラ5は、没入度合いの違いに応じて異なる警報を被験者に提示してよい。これにより被験者の没入度合いに応じて必要な警報を生成できる。
【0043】
(6)コントローラ5は、第2期間T2に機能的連結性があると判定した場合に、第1期間T1及び第2期間T2内に機能的連結性がないと判定された場合よりも強い警報を被験者に提示してよい。
これにより緊急性が高いことを被験者に知らせることができる。また、運転者が非常に高い没入度で没入していても警報に気づかせることができる。
【0044】
(7)コントローラ5は、第2期間T2に機能的連結性があると判定した場合、又は第1期間T1及び第2期間T2内に機能的連結性がないと判定された場合に被験者に警報を提示し、第1期間T1に機能的連結性があり且つ第2期間T2に機能的連結性がないと判定した場合に被験者に警報を提示しなくてもよい。
これにより、被験者が特定の対象に没入しすぎていたり無意識状態であったりする場合に、これらの状態から回復するように警報を提示することができ、一方で、被験者が比較的低い没入状態からすぐに回復できる場合には不要な警報出力を抑制できる。
【0045】
(8)コントローラ5は、中央領域の脳活動信号として被験者の脳の後帯状回の脳活動信号を検出し、後方領域の脳活動信号として被験者の脳の左角回、右角回、左後下頭頂溝又は右後下頭頂溝の少なくとも1つの脳活動信号を検出してよい。
このように、特定の脳領域における脳活動に基づいて没入度合いを判定することにより、判定精度を向上できる。
【符号の説明】
【0046】
1…没入度合い判定装置、2…脳活動センサ、3…表示装置、4…スピーカ、5…コントローラ、5a…プロセッサ、5b…記憶装置、10…脳活動解析部、11…瞬目検出部、12…被験者状態判定部、13…警報生成部
図1
図2
図3
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図5