(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078957
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両用シートのシートバック
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20240604BHJP
B60N 2/66 20060101ALI20240604BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/66
B68G7/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191605
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】治根田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 允敏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】一部が他の部位よりも前側に位置するようにランバーサポートの形状が変化させられたときに、表皮材の背面構成部とランバーサポートの間に大きな隙間が形成され難いようにする。
【解決手段】中央部及び中央部の一対の側縁部のそれぞれに相対回転可能に接続する一対の側部28を有するクッション部材20と、中央部の後面に接触し且つ一部の前後方向の位置が変化させられるランバーサポート60と、クッション部材及びランバーサポートに被せられる袋状の表皮材76と、表皮材の内面に接続され一対の側部をそれぞれ拘束する一対の側部拘束部材92、95と、表皮材の背面構成部87A、87Bの内面に設けられ、一対の側部拘束部材にそれぞれ接続される一対の背面拘束部材97と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート幅方向の中央部、及び、前記中央部の一対の側縁部のそれぞれに、前記側縁部まわりに相対回転可能に接続する一対の側部を有するクッション部材と、
前記中央部の後面に接触し、一部の前後方向の位置が変化するように変形可能とされたランバーサポートと、
前記クッション部材及び前記ランバーサポートに被せられる袋状の表皮材と、
前記表皮材の内面に接続され、一対の前記側部をそれぞれ拘束する一対の側部拘束部材と、
前記表皮材の背面構成部の内面に設けられ、一対の前記側部拘束部材にそれぞれ接続されることにより、前記側部拘束部材に接続されない場合よりも前記背面構成部を前記ランバーサポートに接近させる一対の背面拘束部材と、
を備える車両用シートのシートバック。
【請求項2】
前記側部を拘束している左側の前記側部拘束部材の右側縁部に左側の前記背面拘束部材が接続され、前記側部を拘束している右側の前記側部拘束部材の左側縁部に右側の前記背面拘束部材が接続される請求項1に記載の車両用シートのシートバック。
【請求項3】
前記中央部の後面に、一対の前記側部の間に位置し且つ前記ランバーサポートが収納される第1凹部が設けられ、
左右の前記背面拘束部材と前記側部拘束部材との接続部が前記第1凹部に位置する請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートバック。
【請求項4】
前記中央部に、前記中央部を貫通する左右一対の貫通孔が設けられ、
前記側部拘束部材が、前記表皮材の内面に一端部が接続され且つ他端部に第1係合部が設けられた第1拘束部材、及び、前記表皮材の内面に一端部が接続され且つ他端部に前記第1係合部と係合可能な第2係合部が設けられた第2拘束部材を備え、
前記クッション部材の前方から前記貫通孔を後方に通り抜けた前記第1拘束部材の前記第1係合部と、前記側部の後面に接触する前記第2拘束部材の前記第2係合部とが係合する請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートバック。
【請求項5】
左右の前記側部の後面に第2凹部が形成され、
前記第2凹部において前記第1係合部と前記第2係合部とが係合する請求項4に記載の車両用シートのシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には車両用シートが開示されている。この車両用シートのシートバックは、シートバックフレームに支持されたクッション部材と、シートバックフレームに支持されたランバーサポートと、ランバーサポートの形状を変化させる駆動装置と、クッション部材及びランバーサポートに被せられる袋状の表皮材と、を備える。駆動装置が発生した力がランバーサポートに付与されると、ランバーサポートの一部が他の部位よりも前側に位置するように変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランバーサポートの形状が変化したときに、表皮材の背面構成部の形状がランバーサポートの形状変化に追従せず、ランバーサポートと背面構成部の間に大きな隙間が形成されるおそれがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、一部が他の部位よりも前側に位置するようにランバーサポートの形状が変化させられたときに、表皮材の背面構成部とランバーサポートの間に大きな隙間が形成され難い車両用シートのシートバックを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートのシートバックは、シート幅方向の中央部、及び、前記中央部の一対の側縁部のそれぞれに、前記側縁部まわりに相対回転可能に接続する一対の側部を有するクッション部材と、前記中央部の後面に接触し、一部の前後方向の位置が変化するように変形可能とされたランバーサポートと、前記クッション部材及び前記ランバーサポートに被せられる袋状の表皮材と、前記表皮材の内面に接続され、一対の前記側部をそれぞれ拘束する一対の側部拘束部材と、前記表皮材の背面構成部の内面に設けられ、一対の前記側部拘束部材にそれぞれ接続されることにより、前記側部拘束部材に接続されない場合よりも前記背面構成部を前記ランバーサポートに接近させる一対の背面拘束部材と、を備える。
【0007】
請求項1のシートバックのランバーサポートの一部が前方に移動させると、ランバーサポートからクッション部材が力を受け、クッション部材の両側部が中央部に対して回転しようとする。しかし表皮材の内面に接続された一対の側部拘束部材が一対の側部をそれぞれ拘束する。さらに表皮材の背面構成部の内面に設けられた一対の背面拘束部材が、一対の側部拘束部材にそれぞれ接続される。そのため、ランバーサポートの一部が前方に移動させられたときに、各側部が中央部に対して相対回転し難い。
【0008】
さらに一対の背面拘束部材が一対の側部拘束部材にそれぞれ接続されると、一対の背面拘束部材が、側部拘束部材に接続されない場合よりも背面構成部をランバーサポートに接近させる。そのため、一部が他の部位よりも前側に位置するようにランバーサポートの形状が変化させられたときに、表皮材の背面構成部とランバーサポートの間に大きな隙間が形成され難い。
【0009】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートのシートバックは、請求項1に記載の車両用シートのシートバックにおいて、前記側部を拘束している左側の前記側部拘束部材の右側縁部に左側の前記背面拘束部材が接続され、前記側部を拘束している右側の前記側部拘束部材の左側縁部に右側の前記背面拘束部材が接続される。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートのシートバックでは、側部を拘束している左側の側部拘束部材の左側縁部に左側の背面拘束部材が接続され且つ側部を拘束している右側の側部拘束部材の右側縁部に右側の背面拘束部材が接続される比較例と比べて、左右の背面拘束部材の対応する側部拘束部材との接続部とランバーサポートとの左右方向の距離が短くなる。そのため上記比較例と比べて、請求項2に記載の発明に係る車両用シートのシートバックでは、表皮材の背面構成部とランバーサポートとの間に大きな隙間が形成され難い。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートのシートバックは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートバックにおいて、前記中央部の後面に、一対の前記側部の間に位置し且つ前記ランバーサポートが収納される第1凹部が設けられ、左右の前記背面拘束部材と前記側部拘束部材との接続部が前記第1凹部に位置する。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートのシートバックでは、左右の背面拘束部材と側部拘束部材との接続部が第1凹部に位置する。そのため、これらの接続部が表皮材の背面構成部の内面に接触することにより、背面構成部の一部が外側に盛り上がるおそれが小さい。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートのシートバックは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートバックにおいて、前記中央部に、前記中央部を貫通する左右一対の貫通孔が設けられ、前記側部拘束部材が、前記表皮材の内面に一端部が接続され且つ他端部に第1係合部が設けられた第1拘束部材、及び、前記表皮材の内面に一端部が接続され且つ他端部に前記第1係合部と係合可能な第2係合部が設けられた第2拘束部材を備え、前記クッション部材の前方から前記貫通孔を後方に通り抜けた前記第1拘束部材の前記第1係合部と、前記側部の後面に接触する前記第2拘束部材の前記第2係合部とが係合する。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートのシートバックでは、各側部が、表皮材の内面、第1拘束部材、及び第2拘束部材によって囲まれる。そのため、ランバーサポートの一部が前方に移動させられたときに、各側部が中央部に対してより相対回転し難い。
【0015】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートのシートバックは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのシートバックにおいて、左右の前記側部の後面に第2凹部が形成され、前記第2凹部において前記第1係合部と前記第2係合部とが係合する。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートのシートバックでは、左右の側部の後面に形成された第2凹部において第1係合部と第2係合部とが係合する。そのため、背面構成部の一部を外側に大きく盛り上がらせるように、第1係合部及び第2係合部が表皮材の背面構成部の内面に接触するおそれが小さい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートのシートバックによれば、一部が他の部位よりも前側に位置するようにランバーサポートの形状が変化させられたときに、表皮材の背面構成部とランバーサポートの間に大きな隙間が形成され難い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るシートバックを備える車両用シートの斜視図である。
【
図2】表皮材、クッション部材及びランバーサポートの前方から見た分解斜視図である。
【
図3】表皮材、クッション部材及びランバーサポートの後方から見た分解斜視図である。
【
図4】クッション部材、シートバックフレーム及びランバーサポートの背面図である。
【
図6】互いに分離した表皮材及びクッション部材の左側部の後方から見た図である。
【
図7】クッション部材に表皮材の一部が被せられ且つ第1拘束部材がスリットを後方に通り抜けた様子を示す後方から見た図である。
【
図8】先端係合部と係合部がクッション部材の背面凹部において接続された様子を示す後方から見た図である。
【
図9】完成したシートバックの
図5に相当する断面図である。
【
図11】クッション部材、ランバーサポート、基材及び緩衝材の模式的な縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート10(以下、シート10と称する)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(シート幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両前後方向の前後、車両左右方向(シート幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0020】
図1に示されたシート10は、車両の車室の床面100に設けられている。シート10は、シートクッション11と、シートクッション11の後端部に下端部が回転可能に接続されたシートバック15と、ヘッドレスト99と、を備える。床面100に設置されたスライドレール(図示省略)によってシートクッション11が支持されている。
【0021】
シートバック15は、クッション部材20、シートバックフレーム50、ランバーサポート60、駆動装置65、表皮材76、第1拘束部材(側部拘束部材)92、第2拘束部材(側部拘束部材)95及び背面拘束部材97を備える。
【0022】
図2~
図5に示されたクッション部材20は、例えばポリウレタンフォームにより構成されている。クッション部材20は、本体部22及び背面部24を有する。背面部24はクッション部材20の後部を構成し、本体部22はクッション部材20の背面部24以外の部位を構成する。背面部24は、上部構成部26と、上部構成部26の左右両端部から下方に延びる左右一対の側部構成部28と、を有する。さらにクッション部材20の後面には、上部構成部26及び左右の側部構成部28の間に位置する中央凹部(第1凹部)29が形成されている。
図4及び
図5に示されたように、本体部22の後面と背面部24との間に背面視略U字形のフレーム収納空間30が形成されている。フレーム収納空間30は、上部構成部26と本体部22の後面との間に形成された上部空間32と、左側の側部構成部28の右半部と本体部22の後面との間に形成された左側部空間34と、右側の側部構成部28の左半部と本体部22の後面との間に形成された右側部空間36と、を備える。さらに左側部空間34及び右側部空間36の下端部は、左右の側部構成部28の下端面において開口している。
【0023】
クッション部材20は、中央部37及び左右一対の側部38を有する。中央部37は、本体部22の左右方向の中央部及び上部構成部26の左右方向の中央部によって構成されている。左側の側部38は、本体部22の左側部、上部構成部26の左端部及び左側の側部構成部28によって構成され、右側の側部38は、本体部22の右側部、上部構成部26の右端部及び右側の側部構成部28によって構成されている。さらに左右の側部38の前部は、クッション部材20の前面の中央部よりも前方に突出する膨出部39によって構成されている(
図5参照)。左右の側部38は中央部37に対して、中央部37の各側縁部まわりに相対回転可能である。左右の側部構成部28の後面には、中央凹部29側の端部及び後面が開放された背面凹部(第2凹部)40が形成されている。さらに本体部22には、上下方向に延びる、左右一対のスリット(貫通孔)42が形成されている。各スリット42は本体部22を前後方向に貫通している。
図4に示されたように、後方からクッション部材20を見たときに、中央凹部29を通して左右のスリット42が露出する。
【0024】
シートバック15の骨格部材である金属製のシートバックフレーム50は、左右方向に延びるアッパーフレーム52と、アッパーフレーム52の左右両端部から下方に延びる左右一対のサイドフレーム54と、を備える。さらにシートバックフレーム50は、ランバーサポート60を支持するための支持部材(図示省略)を有する。
図4に示されたように、アッパーフレーム52が上部空間32に挿入され、左側のサイドフレーム54が左側部空間34に挿入され、右側のサイドフレーム54が右側部空間36に挿入された状態で、シートバックフレーム50にクッション部材20が固定される。左右のサイドフレーム54の下端部は左右の側部構成部28の下端から下方に突出する。
【0025】
図2~
図4に示されたランバーサポート60は、硬質樹脂製の一体成形品である。ランバーサポート60は弾性変形可能である。正面視におけるランバーサポート60の全体形状は略長方形である。ランバーサポート60は、複数の上下方向に延びる直線状の部位と、複数の左右方向に延びる直線状の部位と、を有する。ランバーサポート60の形状は図示形状に限定されない。例えば、ランバーサポート60は正面形状が略長方形をなす板状部材であってもよい。ランバーサポート60の上下寸法及び左右寸法は中央凹部29より小さい。ランバーサポート60は中央凹部29の内部に位置する状態で上記支持部材に支持されている。さらにランバーサポート60の前面の少なくとも一部は、本体部22の後面(中央凹部29の底面)に接触している。
【0026】
図1に示されるようにクッション部材20の内部には、電動アクチュエータを有する駆動装置65が設けられている。シートバック15に設けられたスイッチ部材(図示省略)が操作されると、電動アクチュエータの駆動力が駆動装置65からランバーサポート60に伝わり、ランバーサポート60の側面形状が変化する。例えば、ランバーサポート60がシートバック15の内部において
図2及び
図3に示された形状になることがある。このときのランバーサポート60の側面形状は略直線形状である。また電動アクチュエータの駆動力が駆動装置65からランバーサポート60に伝わることにより、ランバーサポート60がシートバック15の内部において
図11に示された形状になることがある。このときのランバーサポート60の側面形状は、上下方向の中央部がその他の部位よりも前方に位置する湾曲形状である。
【0027】
図1~
図3に示されたように表皮材76は、上部構成部78、前面中央構成部80、左右一対の前面側部構成部82、左右一対の側面構成部84及び背面構成部86を有する。背面構成部86は基材87A及び緩衝材87Bを有する。基材87Aの上縁部が上部構成部78の後縁部に接続され、基材87Aの内面の上部に緩衝材87Bの上縁部が接続されている。展開状態にある緩衝材87Bの正面形状は、中央凹部29の正面形状より僅かに小さく且つランバーサポート60の正面形状より大きい。上部構成部78の前縁部に前面中央構成部80の上縁部が接続され、上部構成部78の左右両側縁部と左右の側面構成部84の上縁部が接続されている。さらに左右の前面側部構成部82が前面中央構成部80の側縁部及び左右の側面構成部84の前縁部に接続されている。
【0028】
表皮材76は可撓性を有する材料により構成される。例えば、上部構成部78、前面中央構成部80、左右一対の前面側部構成部82、左右一対の側面構成部84及び基材87Aは本革又は合成皮革により構成される。例えば、緩衝材87Bは、基材87Aより厚みが大きいフェルト材により構成される。さらに左側の側面構成部84の後縁部及び基材87Aの左側縁部には第1ファスナー88が設けられ、右側の側面構成部84の後縁部及び基材87Aの右側縁部には第2ファスナー90が設けられている。
【0029】
図3及び
図6に示されたように、前面中央構成部80と左右の前面側部構成部82との接続部には、左右一対の布材である第1拘束部材92の一端部がそれぞれ接続されている。各第1拘束部材92の上下寸法は前面側部構成部82より短い。各第1拘束部材92の他端部には、硬質樹脂からなる先端係合部(第1係合部)93が固定されている。先端係合部93は略長方形の板材である。さらに第1拘束部材92の一方の面には、硬質樹脂からなる中間係合部(接続部)94が固定されている。
図9及び
図10に示されたように、中間係合部94の断面形状は略J形状である。即ち、中間係合部94は係合溝94Aを有する。
【0030】
図3及び
図6に示されたように、左右の側面構成部84の内面の側縁部近傍(後縁部近傍)には、左右一対の布材である第2拘束部材95の一端部が接続されている。各第2拘束部材95の上下寸法は側面構成部84より短い。各第2拘束部材95の他端部には、硬質樹脂からなる係合部(第2係合部)96が固定されている。
図9及び
図10に示されたように、係合部96の断面形状は略J形状である。即ち、係合部96は係合溝96Aを有する。係合部96の上下寸法は先端係合部93と略同一である。
【0031】
さらに
図3に示されたように、基材87Aの内面の左右2か所には、左右一対の布材である背面拘束部材97の一端部がそれぞれ接続されている。背面拘束部材97の上下寸法は基材87Aより短い。背面拘束部材97の他端部には、硬質樹脂からなる係合部(接続部)98が固定されている。係合部98は略長方形の板材である。係合部98の上下寸法は中間係合部94と略同一である。
【0032】
表皮材76(第1拘束部材92、第2拘束部材95、背面拘束部材97)は、以下の手順によってクッション部材20に装着される。
【0033】
まず
図6に示されるように、クッション部材20から分離している表皮材76の第1ファスナー88及び第2ファスナー90を開いた状態にする。続いてクッション部材20の直前に位置させた表皮材76の前面中央構成部80及び前面側部構成部82をクッション部材20の前面に被せ、且つ、上部構成部78をクッション部材20の上面に被せる。
【0034】
次いで
図7に示されたように、左右の第1拘束部材92の先端係合部93を本体部22の前方から対応するスリット42に挿入し、先端係合部93及び第1拘束部材92の一部を本体部22の直後に位置させる。さらに左右の第2拘束部材95を対応する側部構成部28の外側面及び後面に接近させる。
【0035】
次いで
図8~
図10に示されたように、左右の第1拘束部材92及び第2拘束部材95を自由状態より伸ばしながら、先端係合部93及び係合部96を対応する背面凹部40において互いに係合させる。即ち、各先端係合部93を対応する係合部96の係合溝96Aに挿入する。これにより
図9及び
図10に示されたように、表皮材76の各前面側部構成部82が対応する側部38の前面に圧接し、各側面構成部84が対応する側部38の外側面に圧接し、第2拘束部材95が対応する側部38の後面に圧接し、且つ各第1拘束部材92が対応する側部38の内側面に圧接する。即ち、表皮材76(前面側部構成部82、側面構成部84)、第1拘束部材92及び第2拘束部材95が環状をなしながら対応する側部38を拘束する。このとき第1拘束部材92は
図10に示されたように、前向きの張力T92を発生する。
【0036】
次いで、
図9及び
図10に示されたように、左右の背面拘束部材97を自由状態より伸ばし且つ各係合部98を対応する中間係合部94に係合させる。即ち、各係合部98を対応する中間係合部94の係合溝94Aに挿入する。このとき中間係合部94、背面拘束部材97及び係合部98が中央凹部29に位置する。即ち、左側の第1拘束部材92の右側縁部に左側の背面拘束部材97が接続され、右側の第1拘束部材92の左側縁部に右側の背面拘束部材97が接続される。さらに前向きの張力T92を発生している第1拘束部材92によって、背面拘束部材97が前方へ引き寄せられる。そのため、展開状態にある緩衝材87Bが前方へ移動しながら中央凹部29に入り、緩衝材87Bがランバーサポート60の後面に接触する。さらに基材87Aの左右方向の中央部が緩衝材87Bの後面に接触する。さらにこのとき、背面拘束部材97は
図10に示されたように、後ろ向きの張力T97を発生する。
【0037】
最後に第1ファスナー88及び第2ファスナー90を閉じる。これにより表皮材76が袋状をなし、
図1に示されたシートバック15が完成する。完成したシートバック15の上端部にはヘッドレスト99が装着される。さらに左右のサイドフレーム54の下端部が、シートクッション11の後端部に設けられたリクライング装置(図示省略)に接続される。これにより
図1に示されたシート10が完成する。
【0038】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0039】
例えば、ランバーサポート60の側面形状が略直線形状をなしているシート10に着座した乗員がスイッチ部材を操作して、ランバーサポート60の側面形状を
図11に示された湾曲形状に変更した場合を想定する。このようにランバーサポート60の一部が他の部位より前方へ位置すると、クッション部材20の中央部37がランバーサポート60から力を受け、左右の側部38が中央部37の上下方向に延びる側縁部に対して
図5に示された矢印RW方向に回転しようとする。しかし表皮材76(前面側部構成部82、側面構成部84)、第1拘束部材92及び第2拘束部材95が環状をなしながら対応する側部38を拘束する。さらに背面拘束部材97が第1拘束部材92に、後ろ向きの張力T97を付与する。この張力T97は、第1拘束部材92から側部38に及んだときに、側部38を
図5の矢印RW方向と反対側へ回転させようとする。そのため、表皮材76が第1拘束部材92、第2拘束部材95及び背面拘束部材97を備えない場合と比べて、左右の側部38が中央部37に対して相対回転し難い。
【0040】
さらに基材87Aに設けられた各背面拘束部材97に固定された係合部98が各第1拘束部材92に固定された各中間係合部94にそれぞれ接続されると、各背面拘束部材97が中間係合部94に接続されない場合よりも、基材87A及び緩衝材87Bがランバーサポート60に接近する。特に本実施形態では、左側の第1拘束部材92の右側縁部に左側の背面拘束部材97が接続され、右側の第1拘束部材92の左側縁部に右側の背面拘束部材97が接続される。そのため、左側の第1拘束部材92の左側縁部に左側の背面拘束部材97が接続され、右側の第1拘束部材92の右側縁部に右側の背面拘束部材97が接続される場合と比べて、左右の係合部98とランバーサポート60との左右方向の距離が短い。そのためランバーサポート60の側縁形状がいずれの形状になった場合も、基材87A及び緩衝材87Bの形状がランバーサポート60の形状に追従し易い。そのため、緩衝材87Bとランバーサポート60との間に大きな隙間が形成され難い。
【0041】
さらに
図10に示されたように、中間係合部94、背面拘束部材97及び係合部98が中央凹部29に位置する。そのため、中間係合部94、背面拘束部材97及び係合部98が表皮材76の緩衝材87Bに接触することにより、基材87Aの一部が後方に盛り上がるおそれが小さい。
【0042】
さらに左右の側部構成部28の後面に形成された背面凹部40において先端係合部93と係合部96が係合する。そのため側部構成部28に背面凹部40が形成されていない場合と比べて、先端係合部93及び係合部96が緩衝材87Bに接触することにより、基材87Aの一部が後方に盛り上がるおそれが小さい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、表皮材76の背面構成部86が緩衝材87Bを備えなくてもよい。
【0045】
背面構成部86がランバーサポート60に接触しないように、ランバーサポート60の変形に伴って背面構成部86が変形してもよい。
【0046】
また先端係合部93及び係合部96は、互いに係合可能な形状であれば、図示形状とは異なる形状であってもよい。同様に、中間係合部94及び係合部98は、互いに係合可能な形状であれば、図示形状とは異なる形状であってもよい。
【0047】
駆動装置65が、アクチュエータを備えない手動式の駆動装置であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 車両用シート(シート)
15 シートバック
20 クッション部材
29 中央凹部(第1凹部)
37 中央部
38 側部
40 背面凹部(第2凹部)
42 スリット(貫通孔)
60 ランバーサポート
65 駆動装置
76 表皮材
86 背面構成部
92 第1拘束部材(側部拘束部材)
93 先端係合部(第1係合部)
94 中間係合部(接続部)
95 第2拘束部材(側部拘束部材)
96 係合部(第2係合部)
97 背面拘束部材
98 係合部(接続部)