(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078961
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】乾燥フィルター用カバー
(51)【国際特許分類】
D06F 58/22 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
D06F58/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191613
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山岸 めい
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AE02
3B166BA72
3B166EB03
3B166EB08
3B166EB24
(57)【要約】
【課題】乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターの掃除の効率化を図ること。
【解決手段】乾燥フィルター用カバー10を、乾燥フィルターの捕集口を覆う矩形の不織布からなるカバー本体11と、乾燥フィルターの引き出し方向の手前側と奥側にそれぞれ取り付けることが可能な粘着層12からなる取付部12dを備える構成とする。通気性が阻害されることなく捕集口が覆われるため、乾燥運転時の排気エアに含まれるリントは、カバー本体11の不織布へと捕集され、乾燥フィルター自体には、リントが付着したり絡みついたりすることがない。したがって、乾燥フィルターを清掃する必要がなく、カバー10を取り外し、廃棄し、新たなカバーを付け直すだけで掃除作業が完了する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機付洗濯機に付属しかつ前記乾燥機付洗濯機から引き出して取り外すことが可能な、乾燥運転時にネットが張られた捕集口でリントを捕集する乾燥フィルターに取り付けられる、乾燥フィルター用カバーであって、
前記乾燥フィルターの捕集口を覆う通気性を有するシート体からなるカバー本体と、
前記カバー本体に設けられ、前記乾燥フィルターに取り付けることが可能な取付部と、を備える乾燥フィルター用カバー。
【請求項2】
前記カバー本体は、前記乾燥フィルターの捕集口を覆う矩形の不織布からなり、
前記取付部は、前記カバー本体の対向する二辺に設けられ、前記乾燥フィルターの引き出し方向の手前側と奥側にそれぞれ取り付けることが可能である、請求項1に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項3】
前記カバー本体は、前記乾燥フィルターの捕集口を覆う矩形の不織布からなり、
前記取付部は、前記カバー本体の対向する二辺のうちの一辺のみに設けられ、前記乾燥フィルターの引き出し方向の奥側に取り付けることが可能であり、
前記カバーの対向する前記二辺のうちの他辺は、前記乾燥フィルターの引き出し方向の手前側で乾燥フィルターと前記乾燥機付洗濯機に挟み込むことが可能な挟持部となっている、請求項1に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項4】
前記取付部は、前記カバー本体に積層された粘着層である請求項2または3に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項5】
前記取付部は、前記カバー本体の対向する二辺に沿って並列しかつ対向する二辺間方向に延びる複数の線状の粘着剤欠落部を有する請求項4に記載のフィルター用カバー。
【請求項6】
前記粘着層の粘着力が、0.1N/10mm以上10N/10mm以下である請求項4に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項7】
前記粘着層は、ポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかを含む請求項6に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項8】
前記取付部は、前記カバー本体の対向する二辺に沿って並列しかつ対向する二辺間方向に延びる複数の易破断線を有する請求項2または3に記載のフィルター用カバー。
【請求項9】
前記カバー本体の不織布の剛軟度が、10mN・cm以上120mN・cm以下である請求項2または3に記載の乾燥フィルター用カバー。
【請求項10】
前記カバー本体の不織布の目付が、30g/m2以上160g/m2以下である請求項2または3に記載の乾燥フィルター用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターに取り付けられるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯し終わった洗濯物を洗濯機から別体の乾燥機に移し替えることなく、引き続き乾燥をおこなうことができる乾燥機付洗濯機が普及している。
この種の洗濯機では、特許文献1のように、乾燥運転時に糸くず、髪の毛、毛羽等などのいわゆるリントを捕集するための乾燥フィルターが付属している。
【0003】
乾燥フィルターは、通常は着脱式になっており、定期的に乾燥機付洗濯機から引き出して、その捕集口に張られたネットを絞ったタオルなどで拭き、ここに付着したり絡まったりしたリントを取り除くことで、捕集機能を維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような乾燥フィルターの捕集口に張られたネットに、付着したり絡まったりしたリントを拭き取る掃除作業をおこなうのは手間がかかる。
そこで、本発明の解決すべき課題は、乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターの掃除の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明者らは、乾燥フィルターにリントを捕集するための専用のカバーを被せることに思い至った。
【0007】
すなわち、発明にかかる乾燥フィルター用カバーを、乾燥フィルターの捕集口を覆う通気性を有するシート体からなるカバー本体と、カバー本体に設けられ、乾燥フィルターに取り付けることが可能な取付部と、を備える構成としたのである。
【0008】
より詳しくは、発明にかかる乾燥フィルター用カバーを、乾燥フィルターの捕集口を覆う矩形の不織布からなるカバー本体と、カバー本体の対向する二辺に設けられ、乾燥フィルターの引き出し方向の手前側と奥側にそれぞれ取り付けることが可能な取付部と、を備える構成としたのである。
あるいは、発明にかかる乾燥フィルター用カバーを、乾燥フィルターの捕集口を覆う矩形の不織布からなるカバー本体と、カバー本体の対向する二辺のうちの一辺のみに設けられ、乾燥フィルターの引き出し方向の奥側に取り付けることが可能な取付部と、を備え、カバーの対向する前記二辺のうちの他辺は、乾燥フィルターの引き出し方向の手前側で乾燥フィルターと乾燥機付洗濯機に挟み込むことが可能な挟持部となっている構成としたのである。
【0009】
乾燥フィルター用カバーをこのように構成することで、カバー本体により、通気性が阻害されることなく乾燥フィルターの捕集口(ネット)が覆われることになる。このため、乾燥運転時の排気エアに含まれるリントは、カバー本体へと捕集され、乾燥フィルターの捕集口にリントが付着したり絡みついたりすることがない。
したがって、乾燥フィルター自体は掃除する必要がなく、カバーを乾燥フィルターから取り外し、廃棄し、新たなカバーを乾燥フィルターに付け直すだけで作業が完了する。
取付部等により固定されるため、乾燥運転時にも、カバーが乾燥フィルターから外れてしまうことが防止され、乾燥フィルターが汚れてしまうことが充分に防止されている。
【0010】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、取付部は乾燥フィルターに取り付け可能である限りにおいて特に限定されず、面ファスナ、スナップボタン、タッピンネジ、両面テープが例示できるが、取付部はカバー本体に積層された粘着層からなる構成を採用することが好ましい。
【0011】
このように構成すると、取付部の粘着層を乾燥フィルターに付けはがしするだけで取り付け取り外しできるため、作業の手間がかからない。
また、面ファスナやスナップボタンの雌雄の一方を乾燥フィルターに備え付けたり両面テープを別途準備して設置する手間もなく、ねじ穴を形成するなどして乾燥フィルターを傷つけたりすることもない。
【0012】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、取付部がカバー本体に積層された粘着層である場合に、カバー本体の対向する二辺に沿って並列しかつ対向する二辺間方向に延びる複数の線状の粘着剤欠落部を有する構成を採用することができる。
【0013】
このように構成すると、乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターの捕集口の幅は、種々のものが存在するところ、粘着剤欠落部に沿って乾燥フィルター用カバーを切断具でカットすることで、その幅寸法を捕集口の幅寸法に合致するように調整することが容易となる。
粘着剤欠落部に沿ってカットするため、はさみなどの切断具に粘着剤が付着等することがなく、スムーズにカットすることができる。
【0014】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、取付部がカバー本体に積層された粘着層である場合に、その粘着層の粘着力が、0.1N/10mm以上10N/10mm以下である構成を採用することが好ましい。
【0015】
このように構成すると、粘着層を乾燥フィルターに貼り付けた際に剥がれが生じにくく、かつ糊残りも生じにくいものとすることができる。
粘着力が0.1N/10mmを下回ると、乾燥運転中にカバーが意図せずして乾燥フィルターから剥がれてしまう恐れがあり、粘着力が10N/10mmを上回ると、カバーを乾燥フィルターから取り外す際に、糊残りが生じる恐れがある。
【0016】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、取付部がカバー本体に積層された粘着層でありかつその粘着力が上記所定の粘着力である場合に、粘着層はポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかを含む構成を採用することが好ましい。
【0017】
このように構成すると、上記所定の粘着力を有する粘着層を、汎用されている比較的安価な粘着剤から構成することができるとともに、糊残りが生じにくい種類の粘着剤であるため、粘着層を乾燥フィルターから剥がした際に、乾燥フィルターが汚れることも抑制される。
【0018】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、取付部は、カバー本体の対向する二辺に沿って並列しかつ対向する二辺間に延びる複数の易破断線を有する構成を採用することができる。
【0019】
このように構成すると、乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターの捕集口の幅は、種々のものが存在するところ、易破断線を切断することで、その幅寸法を捕集口の幅寸法に合致するように調整することが容易となる。
易破断線の種類は特に限定されず、ミシン目、ハーフカット、化学的に変性された脆弱部が例示できる。
【0020】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、カバー本体の不織布の剛軟度が、10mN・cm以上120mN・cm以下である構成を採用することが好ましい。
【0021】
このように構成すると、乾燥フィルター用カバーの剛軟度を、乾燥フィルターの捕集口を隙間なく覆うのに好適な柔らかさとすることができる。
カバー本体の不織布の剛軟度が120mN・cmを上回ると、コシが大きすぎるため、乾燥フィルターの外面に沿って撓ませた場合にも、復元弾性により外れたり隙間ができたりしてしまうおそれがある。
また、カバー本体の食府の剛軟度が10mN・cmを下回ると、コシがなさすぎて、カバー本体にしわができやすく、乾燥フィルターの捕集口との間に隙間ができてしまうおそれがある。
【0022】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーにおいて、カバー本体の不織布の目付が、30g/m2以上160g/m2以下である構成を採用することが好ましい。
【0023】
このように構成すると、カバー本体を強度が不足せず、リントの捕集能力が高く、乾燥運転時における乾燥を阻害しないものとすることができる。
カバー本体の不織布の目付が、30g/m2を下回ると、不織布が薄く密度の小さなものとなるため、カバー本体が破断したりその捕集性能が不十分なものとなる恐れがある。
また、カバー本体の不織布の目付が、160g/m2を上回ると、不織布が厚く密度が大きくなりすぎるため、湿気が蓄積されるなどして、乾燥効率が低下してしまう恐れがある。
【発明の効果】
【0024】
発明にかかる乾燥フィルター用カバーを以上のように構成したので、乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターの掃除の効率化が図られることになった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】乾燥フィルター用カバーの(a)は正面図、(b)は側面拡大図
【
図2】乾燥フィルター用カバーの(a)は背面図、(b)は背面からみた斜視図
【
図3】乾燥フィルター用カバーを乾燥フィルターに取り付ける様子を示す(a)は斜視図、(b)は側面図
【
図4】乾燥フィルター用カバーを取り付けた乾燥フィルターを乾燥機付洗濯機にセットする様子を示す斜視図
【
図5】乾燥フィルター用カバーを取り付けた乾燥フィルターを乾燥機付洗濯機にセットする様子を示す側面図
【
図6】乾燥フィルター用カバーをカットして他の乾燥フィルターに取り付ける様子を示す(a)は正面図、(b)は斜視図
【
図7】乾燥フィルター用カバーの他の例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1および
図2に示す乾燥フィルター用カバー10は、
図3から
図5に示すように、乾燥機付洗濯機Wの乾燥フィルターFに取り付けて使用され、乾燥フィルターFが乾燥運転時に発生するリントにより汚れるのを防止するものである。
【0027】
図1および
図2に示すように、乾燥フィルター用カバー10は、平面視で矩形をなしており、カバー本体11、粘着層12、および保護フィルム13の三層構造となっている。
乾燥フィルター用カバー10の縦横寸法は特に限定されないが、市販されている乾燥機付洗濯機Wの最大寸法の乾燥フィルターFの捕集口を覆うことが可能なものとして、縦寸法(上下寸法)が50mmから150mmで好ましくは70mmから90mm、横寸法(左右寸法)が50mmから200mmで好ましくは130mmから150mm程度が例示できる。
【0028】
カバー本体11は、不織布からなる。カバー本体11は、洗濯機付乾燥機の乾燥運転時に、排気エアに含まれるリントを捕集し、かつ排気エアの流通が阻害されないようになっている。
カバー本体11の不織布の材質は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、モダクリルを含むアクリル繊維等の公知の合成繊維や天然繊維が例示できる。その製法も特に限定されず、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等の公知の製法が例示できる。また、不織布には本発明の効果を阻害しない範囲で適宜抗菌効果や抗カビ加工を施してもよい。
【0029】
カバー本体11の不織布の目付は特に限定されないが、30g/m2以上160g/m2であることが好ましく、40g/m2以上100g/m2であることがより好ましい。
目付をこの範囲とすることで、カバー本体を強度が充分なものとでき、かつ、リントの捕集能力が高く、乾燥運転時における乾燥を阻害しないものとすることができる。
【0030】
また、カバー本体11の不織布の剛軟度も特に限定されないが、10mN・cm以上120mN・cm以下であることが好ましく、60mN・cm以上100mN・cm以下であることがより好まししい。
剛軟度をこの範囲とすることで、乾燥フィルターの捕集口を隙間なく覆うのに好適な柔らかさとすることができる。
なお、剛軟度は、JIS-L-1096 A法「45°カンチレバー法」に準拠して、曲げ長さC(mm)を測定し、これと目付m(g/m2)により、JIS-L-1913 2010「41.5°カンチレバー法」に準拠して、次式に基づき、剛軟度G(mN・cm)を測定したところによる。なお、次式において、9.81m/s2の自由落下の加速度は10m/s2とみなしている。
G=m×C3×10-3
【0031】
図1のように、粘着層12は、粘着剤を所定のパターンでカバー本体11の不織布に積層することにより形成されている。
具体的には、図示のように、粘着層12は、カバー本体11の縦方向に長い、短冊状の単位粘着部12aが、フィルター本体11の横方法に複数(図では6つ)並列するパターンをなしている。
隣接する単位粘着部12aの間は、粘着層12の存在しない粘着剤欠落部12bとなっている。粘着剤欠落部12bは線状の形状をなしており、カバー本体11を(上下に)縦断している。
また、各単位粘着部12aの内部も、粘着層12の存在しない粘着剤欠落部12cとなっている。粘着剤欠落部12bと異なり、粘着剤欠落部12cはカバー本体11の外縁には連通しておらず、矩形の形状をなしている。比較的大きな粘着剤欠落部12cを形成することで、カバー本体11の通気性が保たれている。
粘着剤欠落部12cの存在しない、乾燥フィルター用カバー10の上下の箇所は、粘着剤欠落部12bを除く大部分が粘着剤が積層された、取付部12dとなっている。このため、取付部12dを乾燥フィルターに貼り付けた場合に、はがれにくくなっている。
取付部12dの上下寸法は特に限定されないが、貼り付け強度が良好なものとして、25mmから35mmが例示できる。
【0032】
粘着剤欠落部12bに沿って、カバー本体11をはさみ等の切断具で切断することで、乾燥フィルター用カバー10の横寸法(左右寸法)を調整可能となっている。
ここで、各社から市販されている乾燥機付洗濯機の乾燥フィルターFの幅寸法(左右寸法)は種々存在するところ、単位粘着部12aは、その幅寸法(左右寸法)のほぼ整数倍が各社乾燥フィルターの幅寸法に相当するように設定されている。
これにより、いずれかの粘着剤欠落部12bに沿ってカットすることで、必ず特定の乾燥フィルターFの幅に合致するように、乾燥フィルター用カバー10の幅が調節できる。
各社乾燥フィルターFの幅寸法に対応させた、具体的な単位粘着部12aの幅としては、35mmから40mm程度が例示できる。
【0033】
粘着層12の粘着力(粘着強度)は特に限定されないが、0.1N/10mm以上10N/10mm以下であることが好ましく、0.3N/10mm以上3N/10mm以下であることがより好ましい。
粘着力をこの範囲とすることで、粘着層12を乾燥フィルターに貼り付けた際に剥がれが生じにくく、かつ糊残りも生じにくいものとすることができる。
ここで粘着力は、JIS Z 0237に準拠しており、ステンレス板に2kg圧着ローラーを用いて、試験片を貼り付け、180°で5mm/分の速度で引きはがし測定したところによる。
【0034】
粘着剤の種類は特に限定されないが、ポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれか、またはこれらの混合物であることが好ましい。
粘着剤をこのような種類とすることで、比較的安価に粘着層12を糊残りが生じにくいものとすることができる。
粘着層12のカバー本体11に対する積層方法も特に限定されず、スプレー塗布法、転写法などが例示できるが、粘着剤の密度を高くして粘着力をあげるのが容易な方法としては、転写法が好ましい。
【0035】
図1のように、保護フィルム13は、カバー本体11とは反対側において粘着層12に積層されている。
保護フィルム13により、乾燥フィルター用カバー10の不使用時に粘着層12が意図せずに他の物品に貼り付いたり、粘着層12が露出した状態で埃等が付着して粘着力が低下したりすることが防止されている。
図2のように、保護フィルム13は、粘着層12から剥離可能となっている。
保護フィルム13の種類は特に限定されず、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニルなどが例示できる。その中でも、ポリエチレンテレフタレートが好適に使用できる。
保護フィルム13は、透明でも不透明でもよいが、保護フィルム13をはがさなくとも粘着層12の粘着パターンを確認可能なものとして、無色透明または有色透明が好ましい。
図1では、保護フィルム13が透明であり、粘着層12が透けて見える状態が描かれている。
【0036】
実施形態の乾燥フィルター用カバー10の構成は以上のようであり、次にその使用方法について説明する。
まず、乾燥フィルターFをあらかじめ乾燥機付洗濯機Wから引き出しておく。
つぎに、乾燥フィルター用カバー10から保護フィルム13をはがした状態で、
図3のように、その粘着層12を乾燥フィルターFのネットが張られた捕集口Oに対向させ、捕集口Oが覆われるようにして被せる。
そして、粘着層12の上下の取付部12dを乾燥フィルターFの上側の箇所(引き出し方向の手前側)と下側の箇所(引き出し方向の奥側)に貼り付けることで、乾燥フィルター用カバー10を乾燥フィルターFに取り付ける。
ここで図示のように、粘着層12の上側の取付部12dは、乾燥フィルターFの上部に設けられた蓋板Lに貼り付けられる。なお、乾燥フィルター用カバー10は、粘着層12の上下の取付部のいずれか一方を先に所定箇所に貼り付けた後に、捕集口Oが覆われるようにして被せ、最後に粘着層12の上下の取付部の他方を所定箇所に貼り付けるようにして、乾燥フィルター用カバー10を乾燥フィルターFに取り付けてもよい。
【0037】
この状態で、
図4および
図5のように、乾燥フィルターFの蓋板Lに設けられた凹状の取っ手Hをつまんで、乾燥フィルターFを乾燥機付洗濯機Wに押し込んでセットする。
乾燥機付洗濯機Wの乾燥運転時には、排気エアに混じったリントが、乾燥フィルターFの捕集口Oを覆う乾燥フィルター用カバー10により捕集される。
乾燥運転が終わると、再び乾燥フィルターFを乾燥機付洗濯機Wから引き出し、乾燥フィルター用カバー10の取付部12dを乾燥フィルターFから取り外す。
カバー本体11にリントが付着したり絡まったりした乾燥フィルター用カバー10は廃棄され、新しいカバー10に付け替えられる。
カバー10に覆われた乾燥フィルターFの捕集口O等は汚れることがなく、使用後のカバー10は使い捨てられ、新たなカバー10を乾燥フィルターFに取り付けるだけであるから、手間がかからず、掃除の効率化が図られる。
【0038】
図3から
図5に示す乾燥フィルターFよりも幅の狭い、
図7のような乾燥フィルターFに乾燥フィルター用カバー10を取り付ける際には、粘着剤欠落部12bでカバー10をカットして横寸法をあらかじめ調整しておく(図示では、単位粘着部12aが2つ分の寸法に調整している)ことで、過不足なく捕集口Oを覆うことが可能となる。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明の内容を一層明確にする。
実施例1から7および実施例1から5として、次表1に示すような、カバー本体としての不織布と粘着層を積層してなる乾燥フィルター用カバーを準備した。
ここで乾燥フィルター用カバーは、カバー本体としての不織布と粘着層を積層してなり、その粘着層のパターンは、
図1に示したとおりである。
また、その寸法は、80mm×140mmであり、カバー本体の不織布は、主にポリエチレンテレフタレート繊維から構成される不織布である。
【0040】
表1中、粘着強度、剛軟度については、本明細書の段落0030、段落0033に記載した測定方法による。
なお、表1において、実施例1から実施例7は、カバー本体としての不織布における目付および剛軟度が本明細書の段落0020および段落0021の数値範囲に収まっており、かつ粘着層における粘着強度(粘着力)が本明細書の段落0014の数値範囲に収まっている。
一方、実施例9から実施例12は、カバー本体としての不織布における目付および剛軟度、粘着層における粘着強度(粘着力)のいずれかが、本明細書の上記数値範囲に収まっていない。
【0041】
【0042】
これら実施例1から実施例12の乾燥フィルター用カバーについて、乾燥フィルターからの剥がれ試験、リント捕集試験、糊残り試験、乾燥試験をおこない、評価した。
結果を次表2に示す。
【0043】
(乾燥フィルターからの剥がれ試験)
日立グローバルライフソリューションズ株式会社製の洗濯機用乾燥フィルターBD-SX110EL-001を用いて、その捕集口を被覆するように実施例1から実施例12の乾燥フィルター用カバーを貼り付けた。ここで、乾燥フィルター用カバーの上下部における折れ曲がり長さは10mmとした。
貼り付けて1分後に剥がれがなければ〇と判定し、わずかでも剥がれがあれば△と判定した。
【0044】
(リント捕集試験)
実施例1から実施例12の乾燥フィルター用カバーを貼り付けた上記乾燥フィルターを、東芝製のドラム式洗濯機(乾燥機付)にセットし、これを稼働させて、乾燥運転まで実施した。乾燥運転が停止した状態で、乾燥フィルターを引き出し、目視でリントの捕集状態を確認した。
乾燥フィルター用カバーがほぼすべてのリントを捕集し、乾燥フィルターにホコリや糸屑などが付着してなければ〇と判定し、わずかでも乾燥フィルターにホコリや糸屑が侵入していれば△と判定した。
【0045】
(糊残り試験)
日立グローバルライフソリューションズ株式会社製の洗濯機用乾燥フィルターBD-SX110EL-001を用いて、その捕集口を被覆するように実施例1から実施例12の乾燥フィルター用カバーを貼り付けた。ここで、乾燥フィルター用カバーの上下部における折れ曲がり長さは10mmとした。
温度65℃、湿度75%の環境条件の恒温恒湿槽に1週間静置した後、乾燥フィルター用カバーを乾燥フィルターから剥がして、乾燥フィルターの表面を目視で確認した。
表面に糊残りがまったく発生していなければ〇と判定し、糊残りがわずかでも発生していれば△と判定した。
【0046】
(乾燥試験)
まず、パナソニック株式会社製のドラム式洗濯機(乾燥機付)に乾燥フィルター用カバーを取り付けない状態で稼働させ、未使用タオル5枚を洗濯、乾燥に要する時間を計測した。
次に、乾燥フィルター用カバーを取り付けた状態で同様に稼働させ、同一の未使用タオル5枚を洗濯、乾燥するのに要する時間を計測し、取り付けない状態との時間の差異を算出した。
時間の差が5分以内の場合を〇と判定し、時間の差が5分を上回る場合を△と判定した。
【0047】
【0048】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
実施形態では、乾燥フィルター用カバー10のカバー本体11を矩形としているが、カバー本体11の形状はこれに限定されず、円形、長円形、多角形などでもよい。
また、実施形態では、カバー本体11の材質を不織布としているが、通気性のあるシート体である限りにおいてこれに限定されず、織布、メリヤス生地、多孔性フィルムなどでもよい。
【0050】
実施形態では、乾燥フィルター用カバー10の取付部12dを粘着層12から形成しているが、乾燥フィルターFの引き出し方向の手前側および奥側に取り付け可能である限りにおいて、取付部12dの態様はこれに限定されない。
たとえば、取付部を面ファスナ、スナップボタン、ねじ、両面テープなどにより構成することができる。
【0051】
また、実施形態では、乾燥フィルター用カバー10を乾燥フィルターFの引き出し方向の手前側および奥側の双方に取り付け可能なように、取付部12dをその上下に設けているが、取付部12dの位置や数はこれに限定されない。
たとえば、上側の取付部12dを省略し、下側にのみ取付部12dを設けることもできる。
すなわち、乾燥機付洗濯機Wの機種によっては、
図7のように、乾燥フィルターFの引き出し方向の手前側において蓋板Lと乾燥機付洗濯機Wの隙間に、乾燥フィルター用カバー10の上部を挟持部12eとして挟み込んで固定することが可能であり、この場合には、上側の取付部12dを省略することが可能となる。挟持部12eは、粘着層12などの取付部12dが存在しない。
これとは逆に、取付部12dを増やす方向に、すなわち、乾燥フィルター用カバー10の上下のみならず、左右側などにも設けることもできる。
【0052】
実施形態では、粘着層12に粘着剤欠落部12bを設け、ここで乾燥フィルター用カバー10をカットすることでその横寸法を調整可能としたが、横寸法を調整可能とする構成はこれに限定されない。
たとえば、乾燥フィルター用カバー10を縦断する複数の易破断線をカバー10の横方向に並列して設け、これを破断することで横寸法を調整可能としてもよい。
ここで、易破断線としては、ミシン目、ハーフカット、脆弱部などが例示できる。
【0053】
実施形態では、乾燥フィルター用カバー10として保護フィルム13を備えるものとしたが、保護フィルム13は省略することができる。