(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078967
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20240604BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240604BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240604BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20240604BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01F27/00 R
H01F17/04 A
H01F27/29 P
H01F27/32 140
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191620
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】寺内 直也
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA08
5E070AA01
5E070AB03
5E070CB12
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】 コイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めること。
【解決手段】
一実施形態に係るコイル部品は、絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、第1コイル導体と、第2コイル導体と、を備える。第1コイル導体は、基体内に第1面に対向するように設けられる。第2コイル導体は、基体内に第2面に対向するように設けられる。第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、第1周回部の一端から第2面まで延びる第1一端引出部と、第1周回部の他端から第2面まで延びる第1他端引出部と、を有する。第2コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、第2周回部の一端から第2面まで延びる第2一端引出部と、第2周回部の他端から第2面まで延びる第2他端引出部と、を有する。記第1周回部と第1面との距離を示す第1距離は、第2周回部と第2面との距離を示す第2距離よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第1周回部と前記第1面との距離を示す第1距離は、前記第2周回部と前記第2面との距離を示す第2距離よりも大きい、
コイル部品。
【請求項2】
前記第1周回部は、第1閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記第2周回部は、第2閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記コイル軸及び前記第1閉ループ軌道に直交する方向における前記第1周回部の寸法は、前記コイル軸及び前記第2閉ループ軌道に直交する方向における前記第2周回部の寸法よりも大きい、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1周回部の前記コイル軸に沿う軸方向における厚さを示す第1厚さは、前記第2周回部の前記軸方向における厚さを示す第2厚さよりも厚い、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1コイル導体のインダクタンス値と前記第2コイル導体のインダクタンス値との差は、前記第1コイル導体のインダクタンス値の5%以下である、
請求項2に記載のコイル部品。
【請求項5】
磁性材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、第1閉ループ軌道に沿ってコイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸している第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、第2閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸している第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記コイル軸及び前記第1閉ループ軌道に直交する方向における前記第1周回部の寸法は、前記コイル軸及び前記第2閉ループ軌道に直交する方向における前記第2周回部の寸法よりも大きい、
コイル部品。
【請求項6】
磁性材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第1周回部の前記コイル軸に沿う軸方向における厚さを示す第1厚さは、前記第2周回部の前記軸方向における厚さを示す第2厚さよりも厚い、
コイル部品。
【請求項7】
前記第1周回部は、前記コイル軸の周りに2ターン未満だけ巻かれており、
前記第2周回部は、前記コイル軸の周りに2ターン未満だけ巻かれている、
請求項1、5、及び6のいずれか1項に記載のコイル部品。
【請求項8】
絶縁材料から構成されており、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する第3面と、前記第3面と対向しており前記第3面から一軸方向において離間する第4面と、を有する基体と、
前記基体内に設けられた第1磁気結合型コイルと、
前記基体内に、前記第1磁気結合型コイルから前記一軸方向に離間して設けられた第2磁気結合型コイルと、
を備え、
前記第1磁気結合型コイルは、前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、を有し、
前記第2磁気結合型コイルは、前記第1面に対向するように設けられた第3コイル導体と、前記第2面に対向するように設けられた第4コイル導体と、を有し、
前記第1コイル導体は、第1コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記第1コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第3コイル導体は、前記第1コイル軸から前記一軸方向に離間している第2コイル軸の周りに巻かれた第3周回部と、前記第3周回部の一端から前記第2面まで延びる第3一端引出部と、前記第3周回部の他端から前記第2面まで延びる第3他端引出部と、を有し、
前記第4コイル導体は、前記第2コイル軸の周りに巻かれた第4周回部と、前記第4周回部の一端から前記第2面まで延びる第4一端引出部と、前記第4周回部の他端から前記第2面まで延びる第4他端引出部と、を有し、
前記第1周回部の他端は、前記第1周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第2周回部の他端は、前記第2周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第3周回部の他端は、前記第3周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第4周回部の他端は、前記第4周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にある、
アレイ型コイル部品
【請求項9】
請求項1、5、及び6のいずれか1項に記載のコイル部品を含む、回路基板。
【請求項10】
請求項9に記載の回路基板を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、主にコイル部品に関する。本明細書の開示は、より具体的には、高周波回路に適したコイル部品に関する。本明細書の開示は、また、複数のコイルを備えるアレイ型コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品の一種として、互いと磁気的に結合する二以上のコイル導体を備える磁気結合型コイル部品が知られている。特開2016-131208公報(特許文献1)に記載されているように、磁気結合型コイル部品は、基体内で互いから電気的に絶縁されるとともに互いと磁気的に結合する二以上のコイル導体を有する。磁気結合型コイル部品は、回路において、例えば、コモンモードチョークコイル、トランス、または結合型インダクタとして使用される。
【0003】
磁気結合型コイル部品を構成するコイル導体の各々は、コイル軸周りの周方向に沿って延びる周回部と、周回部の両端の各々を対応する外部電極に接続する引出部と、を有する。従来の磁気結合型コイル部品に備えられるコイル部品の周回部は、比較的多いターン数を有している。例えば、特許文献1の磁気結合型コイル部品においては、各コイル導体の周回部は、5ターン以上巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気結合型コイル部品においては、一般に、コイル導体間の結合が高いことが望ましい。このため、従来から、磁気結合型コイル部品の結合係数を高めるための提案がなされている。例えば、上記の特許文献1においては、磁性基体に埋め込まれた一組のコイル導体を、その巻回軸が略一致するとともに互いと密着するように設けることにより、高い結合係数を実現するとされている。
【0006】
高周波回路に用いられる磁気結合型コイル部品には、少ないターン数(例えば、2ターン未満)の周回部を有するコイル導体が用いられる。従来、少ないターン数の周回部を有するコイル導体同士の結合については十分な検討がなされていなかった。
【0007】
本明細書において開示される発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決または緩和することである。本明細書において開示される発明のより具体的な目的の一つは、コイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めることである。本発明のより具体的な目的の一つは、少ないターン数の周回部を有するコイル導体を備えるコイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めることである。
【0008】
本発明の前記以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、「発明を解決しようとする課題」の欄の記載以外から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るコイル部品は、絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、第1コイル導体と、第2コイル導体と、を備える。第1コイル導体は、基体内に第1面に対向するように設けられる。第2コイル導体は、基体内に第2面に対向するように設けられる。第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、第1周回部の一端から第2面まで延びる第1一端引出部と、第1周回部の他端から第2面まで延びる第1他端引出部と、を有する。第2コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、第2周回部の一端から第2面まで延びる第2一端引出部と、第2周回部の他端から第2面まで延びる第2他端引出部と、を有する。記第1周回部と第1面との距離を示す第1距離は、第2周回部と第2面との距離を示す第2距離よりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本明細書に開示されている発明の一実施形態によれば、コイル部品において、コイル導体間の磁気結合を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態による磁気結合型コイル部品を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の磁気結合型コイル部品のI-I線断面を模式的に示す断面図である。
【
図3a】
図2の磁性膜11aに設けられる導体パターンを示す平面図である。
【
図3b】
図2の磁性膜11bに設けられる導体パターンを示す平面図である。
【
図3c】
図2の磁性膜11cに設けられる導体パターンを示す平面図である。
【
図3d】
図2の磁性膜11dに設けられる導体パターンを示す平面図である。
【
図4】
図1の磁気結合型コイル部品を上面から見た透過図である。
【
図5】
図1の磁気結合型コイル部品を下面から見た透過図である。
【
図6】第2実施形態による磁気結合型コイル部品を上面から見た透過図である。
【
図7】
図6の磁気結合型コイル部品を下面から見た透過図である。
【
図8】第3実施形態による磁気結合型コイル部品の断面図である。
【
図9】第4実施形態によるアレイ型コイル部品を示す斜視図である。
【
図10】
図9のアレイ型コイル部品を上面から見た透過図である。
【
図11】第5実施形態によるアレイ型部品を上面から見た透過図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される実施形態は、必ずしも特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1 第1実施形態
1-1 磁気結合型コイル部品の基本構造
図1を参照して、第1実施形態に係る磁気結合型コイル部品1の基本構造について説明する。
図1は、第1実施形態に係る磁気結合型コイル部品1の斜視図である。
【0014】
磁気結合型コイル部品1は、DC-DCコンバータに用いられるチョークコイルとして使用され得る。磁気結合型コイル部品1は、DC-DCコンバータ用のチョークコイル以外にも、トランス、カップルドインダクタ及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品に適用することができる。
【0015】
磁気結合型コイル部品1は、互いと磁気的に結合する複数のコイル導体を備える。図示の例では、磁気結合型コイル部品1は、2つのコイル導体を備えている。より具体的には、
図1に示されている磁気結合型コイル部品1は、基体10と、基体10に設けられた第1コイル導体25と、基体10に設けられた第2コイル導体35と、第1コイル導体の一端に接続された第1外部電極21と、第1コイル導体の他端に接続された第2外部電極22と、第2コイル導体の一端に接続された第3外部電極23と、第2コイル導体の他端に接続された第4外部電極24と、を備える。第1コイル導体25と第2コイル導体35とが磁気的に結合する。
【0016】
磁気結合型コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24と、ランド部3a、3b、3c、3dと、をそれぞれ接合することで実装基板2aに実装される。回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備えることができる。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0017】
1-2 基体10の基本構造
一態様において、基体10は、絶縁材料から直方体形状に構成される。例えば、コイル部品1のL軸方向における寸法(長さ寸法)は、0.5mm~6.0mmの範囲にあり、W軸方向における寸法(幅寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にあり、T軸方向における寸法(高さ寸法)は0.3mm~4.5mmの範囲にある。一態様において、コイル部品1の長さ寸法は、幅寸法よりも大きくてもよい。本明細書において「直方体」または「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。後述するように、基体10の角及び/または辺は、湾曲していてもよい。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0018】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fはいずれも、第1主面10a及び第2主面10bに接続されている。また、第1端面10cは、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。第2端面10dも、第1側面10eと第2側面10fとを接続している。第1主面10a及び第2主面10bはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10c及び第2端面10dはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成し、第1側面10e及び第2側面10fはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成している。
図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」または「底面」と呼ぶことがある。
【0019】
図示の実施形態において、基体10の第2主面10bには、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24が設けられている。コイル部品1を実装基板2aに実装する際には、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置される。このため、基体10の第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、第4外部電極24の少なくとも一つは、基体10の下面10b以外の面まで延伸していてもよい。例えば、第1外部電極21は、下面10bだけでなく端面10cに接するように延伸していてもよい。
【0020】
上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の長さ寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の幅寸法だけ離間している。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、磁気結合型コイル部品1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1のL軸方向、W軸方向、及びT軸方向とする。
【0021】
基体10は、絶縁性に優れた絶縁材料から作製される。基体10は、磁性材料から作成されてもよい。基体10用の磁性材料として、軟磁性合金材料、樹脂に磁性粒子を分散させた複合磁性材料、フェライト材料、またはこれら以外の任意の公知の磁性材料を用いることができる。
【0022】
1-3 コイル導体の基本構造
図示の実施形態において、第1コイル導体25は、基体10の上面10aと対向するように基体10内に設けられている。また、第2コイル導体35は、基体10の下面10bと対向するように基体10内に設けられている。よって、第1コイル導体25は、第2コイル導体35よりも上方(すなわち、T軸方向のプラス側)に配置されている。第1コイル導体25と第2コイル導体35との間には、絶縁性の基体10の一部が介在しているため、第1コイル導体25と第2コイル導体35とは、基体10内において電気的に絶縁されている。
【0023】
第1コイル導体25は、第1周回部25aと、第1周回部25aの一端と第1外部電極21とを接続する第1一端引出部25bと、第1周回部25aの他端と第2外部電極22とを接続する第1他端引出部25cと、を有する。同様に、第2コイル導体35は、第2周回部35aと、第2周回部35aの一端と第3外部電極23とを接続する第2一端引出部35bと、第2周回部35aの他端と第4外部電極24とを接続する第2他端引出部35cと、を有する。
【0024】
第1周回部25aは、T軸に沿って延びるコイル軸Axの周りの周方向に延伸している。第1周回部25aと同様に、第2周回部35aは、コイル軸Axの周りの周方向に延伸している。図示の実施形態において、コイル軸Axは、T軸と平行である。コイル軸Axは、T軸と平行でなくともよい。コイル軸Axは、基体10の上面10a及び下面10bと交わる。第1周回部25a及び第2周回部35aの詳細については、後述する。
【0025】
第1一端引出部25bは、第1周回部25aの一端から、T軸に沿って下方に延びる。第1一端引出部25bの一端は、第1周回部25aの一端と接続される。第1一端引出部25bの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第1一端引出部25bは、下面10bから露出した他端において、第1外部電極21と接続される。
【0026】
第1他端引出部25cは、第1周回部25aの他端から、T軸に沿って下方に延びる。第1他端引出部25cの一端は、第1周回部25aの他端(第1一端引出部25bが接続された端部とは反対側の端部)と接続される。第1他端引出部25cの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第1他端引出部25cは、下面10bから露出した他端において、第2外部電極22と接続される。
【0027】
第2一端引出部35bは、第2周回部35aの一端から、T軸に沿って下方に延びる。第2一端引出部35bの一端は、第2周回部35aの一端と接続される。第2一端引出部35bの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第2一端引出部35bは、下面10bから露出した他端において、第3外部電極23と接続される。
【0028】
第2他端引出部35cは、第2周回部35aの他端から、T軸に沿って下方に延びる。第2他端引出部35cの一端は、第2周回部35aの他端(第2一端引出部35bが接続された端部とは反対側の端部)と接続される。第2他端引出部35cの他端は、下面10bから基体10の外方に露出する。第2他端引出部35cは、下面10bから露出した他端において、第4外部電極24と接続される。
【0029】
以上述べたとおり、図示されている実施形態においては、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24がいずれも基体10の下面10bに設けられており、第1一端引出部25b、第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cがそれぞれ、下面10bまで引き出されて、対応する外部電極に接続されている。このように、図示の実施形態によれば、第1コイル導体25が基体10の下面10bから引き出されているので、第1コイル導体25が基体10の下面10b以外の面から引き出される態様と比較して、ランド部3aから第1外部電極21及び第1コイル導体25を通り第2外部電極22を経て第2ランド部3bへ至る電流経路を短くすることができ、これにより、第1コイル導体25を含む回路要素の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。同様に、図示の実施形態によれば、第2コイル導体35が基体10の下面10bから引き出されているので、第2コイル導体35が基体10の下面10b以外の面から引き出される態様と比較して、ランド部3cから第3外部電極23及び第2コイル導体25を通り第4外部電極24を経て第4ランド部3dへ至る電流経路を短くし、これにより、第2コイル導体25を含む回路要素の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。
【0030】
第1コイル導体25の表面及び第2コイル導体35の表面は、絶縁性に優れた絶縁材料から構成される絶縁被膜(不図示)により覆われていてもよい。絶縁被膜は、コイル部品1の製造工程における加熱処理において第1コイル導体25の表面及び第2コイル導体35の表面に形成される酸化膜であってもよい。絶縁被膜は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエステル-イミド等の絶縁性に優れた樹脂から構成されたコーティング膜であってもよい。
【0031】
1-4 磁気結合型コイル部品1の具体的な説明
次に、
図2を参照して、磁気結合型コイル部品1についてさらに説明する。
図2は、磁気結合型コイル部品1をI-I線で切断した断面を示す。
図2は、コイル軸Axを通り、WT面に平行な平面で切断された磁気結合型コイル部品1の断面を示している。
【0032】
1-4-1 基体10の説明
図2に示されているように、基体10は、本体部11と、本体部11の上側に配置された上側カバー部12と、本体部11の下側に配置された下側カバー部13と、に区画される。本体部11の上面は、上側カバー部12の下面と接している。本体部11の下面は、下側カバー部13の上面と接している。本体部11の内部に、第1周回部25a及び第2周回部25bが配置されている。上側カバー部12には、第1コイル導体25を構成するいずれの部材も含まれていない。下側カバー部13には、第1周回部25a及び第2周回部25bは含まれていないが、第1一端引出部25b、第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cの一部が含まれている。
【0033】
一態様において、基体10は、複数の磁性膜が積層された積層体である。本体部11は、後述するように、表面に第1周回部25aに対応する導体パターンが形成された磁性膜、及び、表面に第2周回部35aに対応する導体パターンが形成された磁性膜が積層された積層体であってもよい。上側カバー部12は、複数の磁性膜が積層された積層体であってもよい。下側カバー部13は、複数の磁性膜が積層された積層体であってもよい。下側カバー部13を構成する磁性膜には、第1一端引出部25b、第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cをそれぞれ貫通させるための貫通孔が形成されている。
【0034】
本体部11の厚さ(T軸方向の寸法)は、本体部11を構成する磁性膜の数や膜厚に応じて変更可能である。例えば、本体部11を構成する磁性膜の枚数を増やすことにより、本体部11の厚さを厚くすることができる。また、本体部11を構成する磁性膜の1枚あたりの厚さを厚くすることにより、本体部11の厚さを厚くすることができる。同様に、上側カバー部12及び下側カバー部13のそれぞれの厚さは、上側カバー部12及び下側カバー部13の各々を構成する磁性膜の枚数及び/または磁性膜1枚あたりの膜厚を通じて調整することができる。
【0035】
図2に示されている実施形態において、本体部11は、磁性膜11a、11b、11c、11dを積層して構成された積層体である。ただし、磁性膜11a~11dの境界は、基体110の断面をSEMで観察しても視認できないことがある。本体部11は、磁性膜11a~11d以外の磁性膜を含んでもよい。磁性膜11a~1dの上面には、第1コイル導体25及び第2コイル導体35の一部を構成する導体パターンが形成されている。また、磁性膜11a~11dの所定の位置には、T軸方向に各磁性膜を貫く貫通孔が形成されており、この貫通孔にビア導体が埋め込まれている。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体の各々は、磁性膜11a~11dの前駆体である磁性体シートに、導電性に優れた金属または合金から成る導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、この磁性体シートに印刷された導電性ペーストを加熱することにより形成される。この導電性ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Alまたはこれらの合金を用いることができる。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、前記以外の材料により形成されてもよい。コイル部品1が有する導体パターン及びビア導体は、例えば、スパッタ法、インクジェット法、またはこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0036】
1-4-2 コイル導体の構造
次に、
図3aないし
図3dをさらに参照して、第1コイル導体25及び第2コイル導体35についてさらに説明する。
【0037】
図3aに示されているように、磁性膜11aの上面には第1上側導体パターン25a1が形成されている。第1上側導体パターン25a1は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)においてコイル軸Axの周りの周方向に1ターン未満のターン数だけ延伸している。コイル軸Axの周りの周方向に延びている導体パターンのターン数は、コイル軸Axの周りの周方向において当該導体パターンが形成されている領域の割合を示す。所定の導体パターンのターン数は、コイル軸Axの周りで当該導体パターンが延在する領域の中心角を用いて表すことができる。例えば、
図3aにおいて、第1上側導体パターン25a1は、コイル軸Axの周りの周方向において中心角α1の範囲に延在しているので、第1上側導体パターン25a1のターン数は、(α1/360)ターンと表すことができる。例えば、α1が150°であれば、第1上側導体パターン25a1のターン数は、約0.42ターンとなる。
【0038】
磁性膜11aのうち第1上側導体パターン25a1の一方の端部と重複する領域には磁性膜11aをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第1一端引出部25bの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。また、磁性膜11aのうち第1上側導体パターン25a1の他方の端部と重複する領域には磁性膜11aをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V1が埋め込まれている。
【0039】
図3bに示されているように、磁性膜11bの上面には第1下側導体パターン25a2が形成されている。第1下側導体パターン25a2は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)においてコイル軸Axの周りの周方向に約1ターンだけ延伸している。第1下側導体パターン25a2の一方の端部はビア導体V1と接続されている。磁性膜11bのうち第1下側導体パターン25a2の他方の端部と重複する領域には磁性膜11bをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第1他端引出部25cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0040】
このように、第1上側導体パターン25a1と第1下側導体パターン25a2とはビア導体V1によって接続される。このようにして接続された第1上側導体パターン25a1、ビア導体V1、及び第1下側導体パターン25a2が、第1コイル導体25の第1周回部25aを構成する。第1上側導体パターン25a1がコイル軸Axの周りに約0.42ターンだけ巻かれており、第1下側導体パターン25a2がコイル軸Axの周りに約1ターンだけ巻かれているので、第1周回部25aは、コイル軸Axの周りに約1.42ターンだけ巻かれている。
【0041】
一態様において、第1周回部25aのターン数は、2未満である。第1周回部25aのターン数は、1.5以下であってもよい。例えば、磁気結合型コイル部品1が高周波回路に用いられる場合には、第1コイル導体25は、小さなインダクタンス値を有することが求められる。この小さなインダクタンス値を実現するために、第1周回部25aのターン数が2未満とされる。
【0042】
図3cに示されているように、磁性膜11cの上面には第2上側導体パターン35a1が形成されている。第2上側導体パターン35a1は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)においてコイル軸Axの周りの周方向に約1ターンだけ延伸している。図示の実施形態において、第2上側導体パターン35a1は、コイル軸を通りL軸に沿って延びる直線に対して、第1下側導体パターン25a2と対称な形状を有していてもよい。
【0043】
磁性膜11cのうち第2上側導体パターン35a1の一方の端部と重複する領域には磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第2一端引出部35bの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。また、磁性膜11cのうち第2上側導体パターン35a1の他方の端部と重複する領域には磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔にはビア導体V2が埋め込まれている。さらに、磁性膜11cの右下隅には、磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には、第1他端引出部25cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている
【0044】
図3dに示されているように、磁性膜11dの上面には第2下側導体パターン35a2が形成されている。第2下側導体パターン35a2は、コイル軸Axに直交する平面(LW平面)においてコイル軸Axの周りの周方向に約0.42ターンだけ延伸している。第2下側導体パターン35a2は、コイル軸を通りL軸に沿って延びる直線に対して、第1上側導体パターン25a1と対称な形状を有していてもよい。
【0045】
第2下側導体パターン35a2の一方の端部はビア導体V2と接続されている。磁性膜11dのうち第2下側導体パターン35a2の他方の端部と重複する領域には磁性膜11dをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この貫通孔には第2他端引出部35cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。さらに、磁性膜11dの右下隅及び左上隅にはそれぞれ、磁性膜11cをT軸方向に貫く貫通孔が設けられており、この右下隅に形成された貫通孔には、第1他端引出部25cの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。また、左上隅に形成された貫通孔には、第2一端引出部35bの一部を構成するビア導体が埋め込まれている。
【0046】
このように、第2上側導体パターン35a1と第2下側導体パターン35a2とはビア導体V2によって接続される。このようにして接続された第2上側導体パターン35a1、ビア導体V2、及び第2下側導体パターン35a2が、第2コイル導体35の第2周回部35aを構成する。第2上側導体パターン35a1がコイル軸Axの周りに約1ターンだけ巻かれており、第2下側導体パターン35a2がコイル軸Axの周りに約0.42ターンだけ巻かれているので、第2周回部35aは、コイル軸Axの周りに約1.42ターンだけ巻かれている。
【0047】
一態様において、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数はそれぞれ、2ターン未満である。第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数はそれぞれ、1.5ターン以下であってもよい。例えば、磁気結合型コイル部品1が高周波回路に用いられる場合には、第1コイル導体25及び第2コイル導体35はそれぞれ、小さなインダクタンス値を有することが求められる。この小さなインダクタンス値を実現するために、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数が2未満とされる。
【0048】
図示されている例のように、ターン数が2未満の第1周回部25aは、2層にわたって形成された導体パターンをビア導体で接合することにより得られる。同様に、ターン数が2未満の第2周回部35aは、2層にわたって形成された導体パターンをビア導体で接合することにより得られる。よって、2枚の磁性膜を積層すれば第1周回部25aが得られ、また、別の2枚の磁性膜を積層すれば第2周回部35aが得られる。他方、ターン数が2以上の場合には、3枚以上の磁性膜のそれぞれに形成された導体パターンをビア導体で接続する必要がある。よって、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数をそれぞれ2未満とすることにより、第1周回部25a及び第2周回部35aの各々を構成する磁性膜の枚数を2枚とすることができるので、第1周回部25a及び第2周回部35aのターン数が2以上の態様と比べて磁気結合型コイル部品1の高さ寸法を小さくすることができる。
【0049】
図3bないし
図3dから理解されるように、磁性膜11aだけでなく、磁性膜11b~11dの各々にも、第1一端引出部25bを構成するビア導体を埋め込むための貫通孔が形成され、これらの貫通孔にビア導体が埋め込まれている。また、図示は省略されているが、下側カバー部13の構成する磁性膜の各々にも、第1一端引出部25bを構成するビア導体を埋め込むための貫通孔が形成され、これらの貫通孔にビア導体が埋め込まれている。これらの貫通孔に埋め込まれたビア導体は、平面視において同じ位置に形成されているため、T軸方向において隣接するビア導体同士は、電気的に接続される。このように、磁性膜11a~11d及び下側カバー部13を構成する各磁性膜に形成された貫通孔に埋め込まれたビア導体を接合することにより、第1一端引出部25bが形成される。第1他端引出部25c、第2一端引出部35b、及び第2他端引出部35cも、第1一端引出部25bと同様に、磁性膜に埋め込まれたビア導体同士を接合することにより形成される。
【0050】
次に、
図4及び
図5をさらに参照して、第1コイル導体25及び第2コイル導体35の形状についてさらに説明する。
図4には、T軸のプラス側から基体10を透過して磁気結合型コイル部品1を見た透過図が示されている。
図5には、T軸のマイナス側から基体10を透過して磁気結合型コイル部品1を見た透過図が示されている。
【0051】
図4及び
図5に示されているように、磁気結合型コイル部品1をT軸方向から見たとき、第1周回部25aの一部は、楕円形の閉ループ軌道CL1に沿って延伸している。第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cはそれぞれ、平面視において基体10の右上及び右下のコーナー近傍に設けられているため、第1周回部25aの一部は、閉ループ軌道CLから離脱して、第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cに向かって延伸している。閉ループ軌道CLの形状は、楕円形状には限られない。閉ループ軌道CLの形状は、平面視において、長円形、円形、矩形、多角形、またはこれら以外の形状であってもよい。第1周回部25aと同様に、第2周回部35aの一部は、楕円形の閉ループ軌道CL2に沿って延伸している。本段落における第1周回部25aに関する説明は、第2周回部35aにも当てはまる。
【0052】
図示されている実施形態において、第1周回部25aの幅寸法W11は、第2周回部35aの幅寸法W12と等しい。第1周回部25aの幅寸法W11は、閉ループ軌道CL1に直交する方向における第1周回部25aの寸法である。同様に、第2周回部35aの幅寸法W12は、閉ループ軌道CL2に直交する方向における第2周回部35aの寸法である。
【0053】
1-4-3 コイル導体の配置
次に、第1コイル導体25及び第2コイル導体35の配置について主に
図2を参照して説明する。
【0054】
図2に示されているように、第1コイル導体25は、第1周回部25aの上面(具体的には、第1上側導体パターン25a1の上面)が基体10の上面10aとT軸方向において第1距離T1だけ離れるように基体10の内部に配置されている。第1周回部25aの上面は、基体10の上面10aと対向している。コイル軸Axを通る断面で磁気結合型コイル部品1を切断した断面において、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとが間隔が一定でない場合には、第1周回部25aの上面にW軸方向において均等な間隔だけ離れた3点を取り、この3点の各々と基体10の上面10aとの間のT軸方向における間隔の平均を、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1とすることができる。
【0055】
第2コイル導体25は、第2周回部35aの下面(具体的には、第2下側導体パターン35a2の下面)が基体10の下面10bとT軸方向において第2距離T2だけ離れるように基体10の内部に配置されている。第2周回部35aの下面は、基体10の下面10bと対向している。コイル軸Axを通る断面で磁気結合型コイル部品1を切断した断面において、第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとが間隔が一定でない場合には、第2周回部25bの下面にW軸方向において均等な間隔だけ離れた3点を取り、この3点の各々と基体10の下面10bとの間のT軸方向における間隔の平均を、第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2とすることができる。
【0056】
一態様において、第1コイル導体25及び第2コイル導体35は、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1が、第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2よりも大きくなるように配置される。
【0057】
1-4-4 従来の磁気結合型コイル部品との比較
基体内に上下に配置された一組のコイル導体を備える従来の磁気結合型コイル部品においては、基体内で磁気抵抗が局所的に大きくならないようにするために、当該一組のコイル導体のうち上側にあるコイル導体と基体の上面との間の距離(
図2の第1距離T1に対応する距離)が、当該一組のコイル導体のうち下側にあるコイル導体と基体の下面との間の距離(
図2の第2距離T2に対応する距離)と等しくなるように、当該一組のコイル導体が配置される。
【0058】
これに対して、本願の第1実施形態においては、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1が、第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2よりも大きい。言い換えると、第1コイル導体25及び第2コイル導体35が、T軸方向において、下方に(T軸方向のマイナス側に)偏って配置されている。よって、本願の磁気結合型コイル部品1においては、上下方向において均等に一組のコイル導体が配置される従来の磁気結合型コイル部品と比べて、各コイル導体を引き出すための引出部の長さを短くすることができる。具体的には、本願の第1コイル導体25は、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1が第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2よりも大きくなるように配置されているため、第1コイル導体25を下面10bに引き出す第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの長さを、一組のコイル導体が上下方向において均等に配置されている従来の磁気結合型コイル部品における引出部の長さと比べて短くすることができる。第2コイル導体35についても同様に、第2コイル導体35を下面10bに引き出す第2一端引出部35b及び第2他端引出部35cの長さを、従来の磁気結合型コイル部品における引出部の長さと比べて短くすることができる。
【0059】
磁気結合型コイル部品1において、第1コイル導体25と第2コイル導体35との磁気結合に寄与する磁束は、第1コイル導体25においては、第1周回部25aから発生し、第2コイル導体35においては第2周回部35aから発生する。第1コイル導体25においては、第1一端引出部25bや第1他端引出部25cからも磁束が発生するが、第1一端引出部25bや第1他端引出部25cから発生する磁束は、第2コイル導体35の第2周回部35aと鎖交しないので、第1コイル導体25と第2コイル導体35との磁気結合の向上には寄与しない。第1実施形態による磁気結合型コイル部品1においては、第1距離T1が第2距離T2よりも大きくなるように配置されているため、第1コイル導体25を下面10bに引き出す第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの長さを短くすることができるので、第1コイル導体25の全長において第1周回部25aが占める割合を大きくすることができる。第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることは、第2コイル導体35についても、磁気結合の強化に寄与している。すなわち、第1距離T1が第2距離T2よりも大きいため、第2コイル導体35を下面10bに引き出す第2一端引出部35b及び第2他端引出部35cの長さを短くすることができるので、第2コイル導体35の全長において第2周回部35aが占める割合を大きくすることができる。このように、磁気結合型コイル部品1においては、第1距離T1が第2距離T2よりも大きくなるように第1コイル導体25及び第2コイル導体35を配置することにより、第1コイル導体25と第2コイル導体35との間の磁気結合を向上させることができる。
【0060】
一態様においては、第1コイル導体25の第1周回部25aは、2ターン未満だけコイル軸Axの周りに巻かれている。このため、第1コイル導体25においては、ターン数が2ターン以上の周回部を有するコイル導体と比較して、その全長に占める第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの割合が大きい。よって、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくして第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの長さを短くすることにより、第1コイル導体25と第2コイル導体35との結合度を大きく改善することができる。逆にいえば、一のコイル導体の全長に占める周回部の割合が大きい場合には、周回部の長さ、形状、及び配置が他のコイル導体との結合度に対して大きな影響を持つため、引出部の長さを短くしても結合度の向上は、限定的である。本願の第1実施形態においては、第1コイル導体25の全長に占める第1一端引出部25b及び第1他端引出部25cの割合が大きいため、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることにより、第1コイル導体25と第2コイル導体35との結合を大きく改善することができる。第2コイル導体35の第2周回部35aが2ターン未満であることも、第1コイル導体25と第2コイル導体35との結合度を大きく改善することに寄与している。
【0061】
1-4-5 製造方法
次に、磁気結合型コイル部品1の製造方法の一例を説明する。磁気結合型コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、シート積層法による磁気結合型コイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、基体10を構成する各磁性膜(磁性膜11a~11dを含む。)の前駆体である磁性体シートを作製する。磁性体シートは、例えば、軟磁性金属粉を樹脂と混練してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法またはこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することで作製される。
【0063】
次に、磁性膜11a~磁性膜11dの前駆体である各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11~磁性膜11dの前駆体である磁性体シートの各々の上面に、導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに未焼成の導体パターンを形成するとともに、各磁性体シートに形成された貫通孔に導電性ペーストを埋め込む。磁性膜11aの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1上側導体パターン25a1となり、磁性膜11bの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第1下側導体パターン25a2となる。また、磁性膜11cの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第2上側導体パターン35a1となり、磁性膜11dの前駆体である磁性体シートに形成された未焼成の導体パターンは、加熱後に第2下側導体パターン35a2となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0064】
磁性膜11aの前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。同様に、磁性膜11b~11dの各々の前駆体となる磁性体シートは、1枚の磁性体シートであってもよいし、複数毎の磁性体シートを積層した積層シートであってもよい。磁性膜11a~11dを構成する磁性体シートの枚数を調整することにより、磁性膜11a~11dのそれぞれの厚さを調整することができる。
【0065】
次に、磁性膜11a~11dの前駆体である各磁性体シート、上側カバー部12の前駆体である複数の磁性体シート、及び下側カバー部13の前駆体である複数の磁性体シートを積層して積層体を得る。この積層体において、上側カバー部12の前駆体に含まれる磁性体シートの枚数を、下側カバー部13の前駆体に含まれる磁性体シートの枚数よりも多くすることにより、完成品である磁気結合型コイル部品1において、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることができる。積層された各磁性体シートは、プレス機により熱圧着されてもよい。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0066】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を加熱処理することで基体10が得られる。この加熱処理により、磁性体シートに含まれている軟磁性金属粉の各々の表面に酸化物層が形成され、隣り合う軟磁性金属粉同士が酸化物層を介して結合する。チップ積層体の加熱処理は、例えば、600℃~800℃の加熱温度で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われる。
【0067】
次に、基体10の下面10bに導体ペーストを塗布することにより、第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24が形成される。第1外部電極21、第2外部電極22、第3外部電極23、及び第4外部電極24は、めっき層を含んでもよい。このめっき層は2層以上であってもよい。2層のめっき層は、Niめっき層と、当該Niめっき層の外側に設けられるSnめっき層と、を含んでもよい。
【0068】
以上により、磁気結合型コイル部品1が得られる。磁気結合型コイル部品1は、圧縮成型法、薄膜プロセス法、スラリービルド法、またはこれら以外の公知の方法で作製されてもよい。
【0069】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。コイル部品1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時にまたは並行して実行され得る。
【0070】
1-4-6 シミュレーション結果
本発明者らは、シミュレーションを行って、磁気結合型コイル部品1について、第1距離T1及び第2距離T2と結合係数との関係を検証した。具体的には、第1距離T1及び第2距離T2が表1に示されている値となるサンプル番号S1~S10の10種類の磁気結合型コイル部品1をシミュレータに設定し、この10種類の磁気結合型コイル部品1の各々について、第1コイル導体25の自己インダクタンス、第2コイル導体35の自己インダクタンス、及び第1コイル導体25と第2コイル導体35との間の相互インダクタンスを算出した。そして、この自己インダクタンス及び相互インダクタンスに基づいて、各サンプルについて第1コイル導体25と第2コイル導体35との結合係数kを算出した。表1には、このようにして算出された結合係数kも記載されている。
【0071】
【0072】
表1に示されているように、第1距離T1が第2距離T2よりも大きいサンプルS1~S5における結合係数の絶対値は、第1距離T1と第2距離T2とが等しいサンプルS6の結合係数の絶対値よりも大きくなっている。また、サンプルS1~S5における結合係数の絶対値は、第1距離T1が第2距離T2よりも小さいサンプルS7~S10における結合係数の絶対値よりも大きい。以上により、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることにより、磁気結合型コイル部品1において第1コイル導体25と第2コイル導体35との間の結合が強まることが確認できた。シミュレーションにおいて第1距離T1及び第2距離T2以外のパラメータ(例えば、第1周回部25a及び第2周回部35aの形状、基体10の寸法)を変更しても、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることにより磁気結合型コイル部品1において第1コイル導体25と第2コイル導体35との間の結合が強まるという結果が得られた。
【0073】
2 第2実施形態
次に、本願の第2実施形態による磁気結合型コイル部品101について説明する。
【0074】
2-1 背景
磁気結合型コイル部品に備えられる複数のコイル導体の周回部のターン数が少ない場合(例えば、2ターン未満の場合)には、コイル導体間で長さの違いが大きくなりやすく、その結果、コイル導体間でインダクタンス値の差が大きくなりやすいという問題がある。周回部のターン数が多い場合には、コイル導体の全長において周回部が占める割合が大きいため、複数のコイル導体間で周回部のターン数が等しければ、コイル導体の全体の長さは概ね等しくなる。このため、複数のコイル導体間の長さの違いに起因するインダクタンス値の差は問題となりにくい。
【0075】
他方、コイル導体の周回部のターン数が少ない場合には、コイル導体の全長において周回部が占める割合が小さくなるため、複数のコイル導体間で周回部のターン数が互いに等しくても、引出部の長さの違いによりコイル導体の全長の差が大きくなる。このため、周回部のターン数が少ないコイル導体同士が結合する磁気結合型コイル部品において、コイル導体間の長さの違いに起因する自己インダクタンス値の差を小さくすることが望まれる。
【0076】
以下では、
図6及び
図7を参照して、上記の問題を解決または緩和する磁気結合型コイル部品101について説明する。
【0077】
2-2 磁気結合型コイル部品101の説明
図6及び
図7には、第2実施形態による磁気結合型コイル部品101が示されている。磁気結合型コイル部品101は、第2コイル導体35に代えて、第2コイル導体35よりも小さな幅方向寸法を有する第2コイル導体135を備える点で、磁気結合型コイル部品1と異なっている。以下では、磁気結合型コイル部品101に備えられる第2コイル導体135について主に説明を行い、磁気結合型コイル部品101において磁気結合型コイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0078】
図6は、T軸のプラス側から基体10を透過して磁気結合型コイル部品101を見た透過図を示し、
図7は、T軸のマイナス側から基体10を透過して磁気結合型コイル部品101を見た透過図を示す。
図7に示されているように、第2コイル導体135は、第2周回部135aと、第2周回部135aの一端と第3外部電極23とを接続する第2一端引出部35bと、第2周回部135aの他端と第4外部電極24とを接続する第2他端引出部35cと、を有する。
【0079】
第2コイル導体135は、第2周回部135aの幅寸法W22が第1周回部25aの幅寸法W11よりも小さくなるように構成されている。言い換えると、第1周回部25aの幅寸法W11は、第2周回部135aの幅寸法W22よりも大きい。このため、
図7において、第2周回部135aの内側の領域に、第2周回部135aの背後にある第1周回部25aの径方向内側の縁部がはみ出ている。第1周回部25aの幅寸法W11は、閉ループ軌道CL1に直交する方向における第1周回部25aの寸法であり、第2周回部135aの幅寸法W22は、閉ループ軌道CL2に直交する方向における第2周回部135aの寸法である。図示の実施形態において、第1周回部25aの厚さ寸法は、第2周回部135aの厚さ寸法と同じである。第1周回部25aの厚さ寸法は、第2周回部135aの厚さ寸法と異なっていてもよい。第1周回部25aの厚さ寸法は、コイル軸Axに沿う方向(T軸方向)における第1周回部25aの寸法である。第2周回部135aの厚さ寸法は、コイル軸Axに沿う方向における第2周回部135aの寸法である。
【0080】
幅寸法W11は、例えば、幅寸法W22の1.05倍以上、1.1倍以上、1.15倍以上、または1.2倍以上とすることができる。幅寸法W11は、例えば、シミュレータを用いて第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体135のインダクタンス値をそれぞれ算出し、この算出したインダクタンス値の差が第1コイル導体25のインダクタンス値の5%以下となるように設定されてもよい。第2コイル導体135のインダクタンス値と第1コイル導体25のインダクタンス値との差が、当該第1コイル導体25のインダクタンス値の5%以下であれば、磁気結合型コイル部品101の実用上、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体135のインダクタンス値とを同じ値とみなすことができる。
【0081】
以上のように、磁気結合型コイル部品101においては、第1周回部25aの幅寸法W11が第2周回部135aの幅寸法W22よりも大きいため、第1コイル導体25を流れる電流の変化により発生する磁束が通過する磁路長は、第2コイル導体25を流れる電流の変化により発生する磁束が通過する磁路長よりも長くなる。よって、第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11を第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22よりも大きくすること(言い換えると、第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22を第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11よりも小さくすること)により、幅寸法W11と幅寸法W22とが等しい場合と比べて、第1コイル導体25のインダクタンス値を、第2コイル導体135のインダクタンス値に対して小さくすることができる。
【0082】
結合型コイル部品101においては、第1コイル導体25が第2コイル導体135よりもT軸方向において上方に配置されているため、第1コイル導体25の全長は、第2コイル導体135の全長よりも長い。よって、第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11と第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22とが等しい場合には、他の条件が異ならなければ、第1コイル導体25のインダクタンス値は、第2コイル導体135のインダクタンス値よりも大きくなる。
【0083】
結合型コイル部品101においては、第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11を第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22よりも大きくすることにより、幅寸法W11と幅寸法W22とが等しい場合と比べて、第1コイル導体25のインダクタンス値を第2コイル導体135のインダクタンス値に対して小さくすることができる。つまり、第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11を第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22よりも大きくすることにより、第1コイル導体25のインダクタンス値を第2コイル導体135のインダクタンス値に近づけることができる。このため、磁気結合型コイル部品101においては、複数のコイル導体の周回部の幅方向の寸法が等しい磁気結合型コイル部品と比べて、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体135のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0084】
磁気結合型コイル部品101においては、磁気結合型コイル部品1と同様に、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1が、第2周回部135aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2より大きくともよい。この場合、第1コイル導体25と第2コイル導体135との結合を向上させるとともに、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体135のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0085】
磁気結合型コイル部品101においては、磁気結合型コイル部品1とは異なり、第1周回部25aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1と、第2周回部135aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2とは、互いに等しくともよい。この場合、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることにより結合度を向上させる効果は得られないが、第1コイル導体25のインダクタンス値と第2コイル導体135のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0086】
コイル部品101は、コイル部品1の製造方法に準じて製造される。
【0087】
2-3 シミュレーション結果
本発明者らは、シミュレーションを行って、磁気結合型コイル部品101について、第1コイル導体25の第1周回部25aの幅寸法W11及び第2コイル導体135の第2周回部135aの幅寸法W22と、第1コイル導体25の自己インダクタンスと第2コイル導体135の自己インダクタンスの差(ΔL)との関係を検証した。具体的には、第1周回部25aの幅寸法W11及び第2周回部135aの幅寸法W22が表2に示されている値となるサンプル番号S21~S28の8種類の磁気結合型コイル部品101をシミュレータに設定し、この8種類の磁気結合型コイル部品101の各々について、第1コイル導体25の自己インダクタンスL1及び第2コイル導体135の自己インダクタンスL2を算出した。そして、各サンプルについて、第1コイル導体25の自己インダクタンスL1と第2コイル導体135の自己インダクタンスL2との差ΔL(=L1-L2)を算出した。
【0088】
【0089】
表2に示されているように、幅寸法W11が幅寸法W22よりも大きいサンプルS25~S28におけるインダクタンスの差ΔLは、幅寸法W11と幅寸法W22とが等しいサンプルS24におけるインダクタンスの差ΔLよりも小さくなっている。また、サンプルS25~S28におけるインダクタンスの差ΔLは、幅寸法W11が幅寸法W22よりも小さいサンプルS21~S23におけるインダクタンスの差ΔLよりも小さい。以上により、幅寸法W11を幅寸法W22よりも大きくすることにより、磁気結合型コイル部品101において第1コイル導体25の自己インダクタンスと第2コイル導体135の自己インダクタンスとの差ΔLが小さくなることが確認できた。シミュレーションにおいて幅寸法W11及び幅寸法W22以外のパラメータ(例えば、第1周回部25a及び第2周回部35aの形状、基体10の寸法)を変更しても、幅寸法W11を幅寸法W22よりも大きくすることにより磁気結合型コイル部品101において第1コイル導体25の自己インダクタンスと第2コイル導体135の自己インダクタンスとの差ΔLを小さくすることができるという結果は変わらなかった。
【0090】
3 第3実施形態
3-1 磁気結合型コイル部品201の説明
続いて、
図8を参照して、コイル導体間のインダクタンス値の差を小さくすることができる別の実施形態について説明する。磁気結合型コイル部品201は、第1コイル導体25に代えて、第1コイル導体125を備える点で、磁気結合型コイル部品1と異なっている。以下のでは、磁気結合型コイル部品201に備えられる第1コイル導体125について主に説明を行い、磁気結合型コイル部品201において磁気結合型コイル部品1と共通する点については説明を省略する。
【0091】
図8は、コイル軸Axを通り、WT面に平行な平面で切断された磁気結合型コイル部品201の断面を示す。
図8に示されているように、第1コイル導体125は、第1周回部125aと、第1周回部125aの一端と第1外部電極21とを接続する第1一端引出部25bと、第1周回部125aの他端と第2外部電極22とを接続する第1他端引出部25cと、を有する。
【0092】
図8に示されている第3実施形態において、第1周回部125aの厚さ寸法T11は、第2周回部35aの厚さ寸法T12よりも大きい。第1周回部125aの厚さ寸法T11は、コイル軸Axに沿う方向(T軸方向)における第1周回部125aの寸法である。第2周回部35aの厚さ寸法T12は、コイル軸Axに沿う方向(T軸方向)における第2周回部35aの寸法である。図示の実施形態において、第1周回部125aの幅寸法は、第2周回部35aの幅寸法と同じである。第1周回部125aの幅寸法は、第2周回部35aの幅寸法と異なっていてもよい。第1周回部125aの幅寸法は、上述した第1周回部25aの幅寸法W11と同様に定めることができる。第2周回部35aの幅寸法は、上述した第2周回部135aの幅寸法W22と同様に定めることができる。
【0093】
第1周回部125aの厚さ寸法T11は、例えば、第2周回部35aの厚さ寸法T12の1.1倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、または1.7倍以上とすることができる。厚さ寸法T11は、例えば、シミュレータを用いて第1コイル導体125と第2コイル導体35のインダクタンス値をそれぞれ算出し、この算出したインダクタンス値の差が第2コイル導体35のインダクタンス値の5%以下となるように設定されてもよい。第2コイル導体35のインダクタンス値と第1コイル導体125のインダクタンス値との差が、第1コイル導体125のインダクタンス値の5%以下であれば、磁気結合型コイル部品201の実用上、第1コイル導体125のインダクタンス値と第2コイル導体35のインダクタンス値とを同じ値と見なすことができる。
【0094】
以上のように、磁気結合型コイル部品201においては、第1周回部125aの厚さ寸法T11が、第2周回部35aの厚さ寸法T12よりも大きいため、第1コイル導体125を流れる電流の変化により発生する磁束が通過する磁路長は、第2コイル導体35を流れる電流の変化により発生する磁束が通過する磁路長よりも長くなる。よって、第1コイル導体125の第1周回部125aの厚さ寸法T11が第2コイル導体35の第2周回部35aの厚さ寸法T12よりも大きいことは、第1コイル導体125のインダクタンス値を、第2コイル導体35のインダクタンス値に対して小さくするように働く。
【0095】
磁気結合型コイル部品201においては、第1コイル導体125が第2コイル導体35よりもT軸方向において上方に配置されているため、第1コイル導体125の全長は、第2コイル導体3の全長よりも長い。よって、第1コイル導体125の第1周回部125aの厚さ寸法T11と第2コイル導体35の第2周回部35aの厚さ寸法T12とが等しい場合には、他の条件が異ならなければ、第1コイル導体125のインダクタンス値は、第2コイル導体35のインダクタンス値よりも大きくなる。
【0096】
磁気結合型コイル部品201においては、第1コイル導体125の第1周回部125aの厚さ寸法T11を第2コイル導体35の第2周回部35aの厚さ寸法T12よりも大きくすることにより第2コイル導体35のインダクタンス値に対する第1コイル導体125のインダクタンス値の比を小さくすることができる。つまり、第1コイル導体125の第1周回部125aの厚さ寸法T11を第2コイル導体35の第2周回部35aの厚さ寸法T12よりも大きくすることにより、第1コイル導体125のインダクタンス値を第2コイル導体35のインダクタンス値に近づけることができる。このため、磁気結合型コイル部品201においては、複数のコイル導体の周回部の厚さ方向の寸法が等しい場合と比べて、第1コイル導体125のインダクタンス値と第2コイル導体35のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0097】
磁気結合型コイル部品201においては、磁気結合型コイル部品1と同様に、第1周回部125aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1が、第2周回部135aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2よりも大きくともよい。この場合、第1コイル導体125と第2コイル導体35との結合を向上させるとともに、第1コイル導体125のインダクタンス値と第2コイル導体35のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0098】
磁気結合型コイル部品201においては、磁気結合型コイル部品1とは異なり、第1周回部125aの上面と基体10の上面10aとのT軸方向における第1距離T1と、第2周回部35aの下面と基体10の下面10bとのT軸方向における第2距離T2とは、互いに等しくともよい。この場合、第1距離T1を第2距離T2よりも大きくすることにより結合度を向上させる効果は得られないが、第1コイル導体125の1インダクタンス値と第2コイル導体35の第2インダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0099】
コイル部品201は、コイル部品1の製造方法に準じて製造される。
3-2 シミュレーション結果
本発明者らは、シミュレーションを行って、磁気結合型コイル部品201について、第1コイル導体125の第1周回部125aの厚さT11及び第2コイル導体35の第2周回部35aの厚さ寸法T12と、第1コイル導体125の自己インダクタンスと第2コイル導体35の自己インダクタンスの差(ΔL)との関係を検証した。具体的には、第1周回部125aの厚さ寸法T11及び第2周回部35aの厚さ寸法T12が表3に示されている値となるサンプル番号S31~S38の8種類の磁気結合型コイル部品201をシミュレータに設定し、この8種類の磁気結合型コイル部品201の各々について、第1コイル導体125の自己インダクタンスL1及び第2コイル導体35の自己インダクタンスL2を算出した。そして、各サンプルについて、第1コイル導体125の自己インダクタンスL1と第2コイル導体35の自己インダクタンスL2との差ΔL(=L1-L2)を算出した。
【0100】
【0101】
表3に示されているように、厚さ寸法T11が厚さ寸法T12よりも大きいサンプルS31~S34におけるインダクタンスの差ΔLは、厚さ寸法T11と厚さ寸法T12とが等しいサンプルS35におけるインダクタンスの差ΔL(=3.3)よりも小さくなっている。また、サンプルS31~S34におけるインダクタンスの差ΔLは、厚さ寸法T11が厚さ寸法T12よりも小さいサンプルS36~S38におけるインダクタンスの差ΔLよりも小さい。以上により、厚さT11を厚さ寸法T12よりも大きくすることにより、磁気結合型コイル部品201において第1コイル導体125の自己インダクタンスと第2コイル導体35の自己インダクタンスとの差ΔLが、厚さT11と厚さ寸法T12とが等しい場合のインダクタンスの差ΔL(=3.3)よりも小さくなることが確認できた。シミュレーションにおいて厚さ寸法T11及び厚さ寸法T12以外のパラメータ(例えば、第1周回部125a及び第2周回部35aの形状、基体10の寸法)を変更しても、厚さ寸法T11を厚さ寸法T12よりも大きくすることにより磁気結合型コイル部品201において第1コイル導体125の自己インダクタンスと第2コイル導体35の自己インダクタンスとの差ΔLを、厚さT11と厚さ寸法T12とが等しい場合のインダクタンスの差Δよりも小さくすることができるという結果は変わらなかった。
【0102】
4 第4実施形態(アレイ型コイル部品301)
次に、複数の磁気結合型コイル部品1が一つの素子としてパッケージ化されたアレイ型コイル部品301について説明する。
【0103】
以下では、
図9及び
図10を参照して、アレイ型コイル部品301について説明する。
【0104】
図9は、第4実施形態に係るアレイ型コイル部品301の斜視図を示し、
図10は、アレイ型コイル部品301の上面から見た透過図を示している。これらの図に示されているように、アレイ型コイル部品301は、3つの磁気結合型コイル301a、301b、301cを備えている。アレイ型コイル部品301に備えられる磁気結合型コイル部品の数は、3つに限られず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0105】
図9に示されているように、アレイ型コイル部品301は、基体310を備え、基体310に、磁気結合型コイル301a、301b、301cを構成する各コイル導体が設けられている。基体310は、基体10と同様に、絶縁材料から構成されており、磁気結合型コイル301a、301b、301cを構成する各コイル導体を互いから電気的に絶縁する。
【0106】
基体310は、上面310a、下面310b、第1端面310c、第2端面310d、第1側面310e、及び第2側面310fを有する。基体310は、3つの磁気結合型コイルを構成する各コイル導体を収容するためにL軸方向における寸法が大きくなっている点以外は、基体10と同様に構成される。上述した基体10に関する説明は、可能な限り、基体310にも当てはまる。例えば、基体10と同様に、基体310の上面310a及び下面310bは、T軸方向における基体310の両端の面を成し、第1端面310c及び第2端面310dは、L軸方向における基体310の両端の面を成し、第1側面310e及び第2側面310fは、W軸方向における基体310の両端の面を成す。
図9及び
図10には、説明の便宜のために、L軸方向に沿って、L軸のプラス側からマイナス側に向かってL軸に平行に延びるX1軸が記載されている。
【0107】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル301a、301b、301cは、L軸方向に平行なX1軸方向に沿って配置されている。すなわち、アレイ型コイル部品301においては、磁気結合型コイル301a、磁気結合型コイル301b、及び磁気結合型コイル301cが、X1軸方向に沿って、この順に並んでいる。磁気結合型コイル301bは、磁気結合型コイル301aからX1軸方向に離間した位置に配置されている。同様に、磁気結合型コイル301cは、磁気結合型コイル301bからX1軸方向に離間した位置に配置されている。
【0108】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル301aは、第1コイル導体325と、第2コイル導体335と、を備える。第1コイル導体325は、基体310の上面310aと対向し、第2コイル導体335は、基体310の下面310bと対向するように配置される。
図10に示されているように、平面視において(T軸の方向から見た視点において)、第1コイル導体325は、上述した第1コイル導体25と同じ形状を有し、第2コイル導体335は、上述した第2コイル導体35と同じ形状を有する。第1コイル導体325と基体310の上面310aとの距離は、第2コイル導体335と基体310の下面310bとの距離より大きくともよいし、これらの距離は互いに等しくともよい。
【0109】
図示は省略されているが、磁気結合型コイル301aの第1コイル導体325の両端と接続される2つの外部電極及び第2コイル導体335の両端と接続される2つの外部電極は、基体310の下面310bに設けられる。
【0110】
図示の実施形態において、第1コイル導体325は、コイル軸Ax31の周りの周方向に延びる第1周回部325aと、第1周回部325aの一端と第1外部電極(不図示)とを接続する第1一端引出部325bと、第1周回部325aの他端と第2外部電極(不図示)とを接続する第1他端引出部325cと、を有する。第2コイル導体335は、コイル軸Ax31の周りの周方向に延びる第2周回部335aと、第2周回部335aの一端と第3外部電極(不図示)とを接続する第2一端引出部335bと、第2周回部335aの他端と第4外部電極(不図示)とを接続する第2他端引出部335cと、を有する。
【0111】
アレイ型コイル部品301によれば、複数の磁気結合型コイルが一つの素子としてパッケージ化されているので、複数のお磁気結合型コイルの実装スペースを小さくすることができる。
【0112】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル301aは、W軸方向における寸法がL軸方向の寸法よりも大きくなるように構成されている。例えば、磁気結合型コイル301aの第1周回部325aは、楕円形の閉ループ軌道CL1に沿って延伸しており、この閉ループ軌道CL1の長軸方向をW軸方向と並行にすることができる。磁気結合型コイル301b、301cも、磁気結合型コイル301aと同様に、W軸方向における寸法がL軸方向の寸法よりも大きくなるように構成されてもよい。かかる構成により、アレイ型コイル部品301のL軸方向における寸法を小さくすることができる。
【0113】
5 第5実施形態(アレイ型コイル部品401)
4-1 背景
アレイ型のコイル部品においては、複数のコイルが一つの素子としてパッケージ化されているので、一般に、複数のコイルを基板に実装する際の実装スペースを小さくできるという利点がある。
【0114】
しかしながら、複数の磁気結合型コイル部品がパッケージングされたアレイ型のコイル部品において隣接する磁気結合型コイル部品同士の距離が近くなると、隣接する磁気結合型コイル部品間での望ましくない磁気結合が大きくなり、磁気結合型コイル部品の各々が所期の特性を発揮できなくなるおそれがある。
【0115】
このため、従来のアレイ型コイル部品においては、隣接する磁気結合型コイル部品間での磁気結合を弱めるために、隣接する磁気結合型コイル部品間の間隔を大きく取っている。しかしながら、隣接する磁気結合型コイル部品間の間隔を大きくすることは、実装スペースを小さくするというアレイ型コイル部品の本来の目的に反する。
【0116】
そこで、複数の磁気結合型コイル部品を備えるアレイ型コイル部品において、隣接する磁気結合型コイル部品間の磁気結合を小さくすることが望まれる。
【0117】
以下では、
図11を参照して、上記の問題を解決または緩和するアレイ型コイル部品401について説明する。
図11は、第5実施形態に係るアレイ型コイル部品401の上面から見た透過図を示している。アレイ型コイル部品401は、3つの磁気結合型コイル401a、401b、401cを備えている。アレイ型コイル部品401に備えられる磁気結合型コイル部品の数は、3つに限られず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0118】
アレイ型コイル部品401は、基体410を備え、基体410に、磁気結合型コイル401a、401b、401cを構成する各コイル導体が設けられている。基体410は、基体10と同様に、絶縁材料から構成されており、磁気結合型コイル401a、401b、401cを構成する各コイル導体を互いから電気的に絶縁する。
【0119】
基体410は、上面、下面、第1端面410c、第2端面410d、第1側面、410e及び第2側面410fを有する。基体410は、基体310と同様に構成される。上述した基体10、310に関する説明は、可能な限り、基体410にも当てはまる。
図11には、説明の便宜のために、L軸方向に沿って、L軸のプラス側からマイナス側に向かってL軸に平行に延びるX1軸が記載されている。
【0120】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル401a、401b、401cは、L軸方向に平行なX1軸方向に沿って配置されている。すなわち、アレイ型コイル部品401においては、磁気結合型コイル401a、磁気結合型コイル401b、及び磁気結合型コイル401cが、X1軸方向に沿って、この順に並んでいる。磁気結合型コイル401bは、磁気結合型コイル401aからX1軸方向に離間した位置に配置されている。同様に、磁気結合型コイル401cは、磁気結合型コイル401bからX1軸方向に離間した位置に配置されている。
【0121】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル401aは、第1コイル導体425と、第2コイル導体435と、を備える。第1コイル導体425は、基体410の上面と対向し、第2コイル導体435は、基体410の下面と対向するように配置される。第1コイル導体425と基体410の上面との距離は、第2コイル導体435と基体410の下面との距離より大きくともよいし、これらの距離は互いに等しくともよい。
【0122】
図示は省略されているが、磁気結合型コイル401aの第1コイル導体425の両端と接続される2つの外部電極及び第2コイル導体435の両端と接続される2つの外部電極は、基体410の下面に設けられる。
【0123】
図示の実施形態において、第1コイル導体425は、コイル軸Ax41の周りの周方向に延びる第1周回部425aと、第1周回部425aの一端と第1外部電極(不図示)とを接続する第1一端引出部425bと、第1周回部425aの他端と第2外部電極(不図示)とを接続する第1他端引出部425cと、を有する。第2コイル導体435は、コイル軸Ax41の周りの周方向に延びる第2周回部435aと、第2周回部435aの一端と第3外部電極(不図示)とを接続する第2一端引出部435bと、第2周回部435aの他端と第4外部電極(不図示)とを接続する第2他端引出部435cと、を有する。
【0124】
一態様において、第1コイル導体425は、第1周回部425aの一端と他端とがW軸方向において互いから離間するように構成及び配置される。図示の実施形態では、第1周回部425aの一端は、第1周回部425aの他端からW軸方向に変位した位置に配置されている。第1周回部425aの一部は、コイル軸Ax41を囲む閉ループ軌道CL1から外れて第1一端引出部425bに向かってX1軸方向に沿って延伸し、また、第1周回部425aの別の一部は、コイル軸Ax41を囲む閉ループ軌道CL1から外れて第1他端引出部425cに向かってX1軸方向に延伸している。このため、第1周回部425aにおいては、X1軸方向に沿って延びる部位が占める割合が大きい。より具体的には、第1周回部425aは、その一端(第1一端引出部425bと接続される部位)と閉ループ軌道CL1に合流する位置との間の区間、及び、その他端(第1他端引出部425cと接続される部位)と閉ループ軌道CL1に合流する位置との間の区間において、X1軸方向に沿って延びている。このため、第1コイル導体425を流れる電流の変化により発生する磁束は、X1軸と直交する方向に流れやすい。
【0125】
第2コイル導体435は、第1コイル導体425と同様に、第2周回部435aの一端と他端とがW軸方向において互いから離間するように構成及び配置される。このため、第2コイル導体435を流れる電流の変化により発生する磁束も、X1軸と直交する方向に流れやすい。
【0126】
以上のように、磁気結合型コイル401a及び磁気結合型コイル401bはX1軸方向に沿って配置されているのに対して、第1コイル導体425及び第2コイル導体435は、磁気結合型コイル401aの第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置されている。このため、磁気結合型コイル401aの第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束は、X1軸方向において磁気結合型コイル401aに隣接する磁気結合型コイル401bとは鎖交しにくいので、磁気結合型コイル401aと磁気結合型コイル401bとの望ましくない磁気結合を抑制することができる。
【0127】
図示の実施形態において、磁気結合型コイル401bは、磁気結合型コイル401aと同様に、第1コイル導体425と、第2コイル導体435と、を備える。磁気結合型コイル401bに備えられる第1コイル導体425の第1周回部425aは、コイル軸Ax42の周りの周方向に沿って延びている。同様に、磁気結合型コイル401bに備えられる第2コイル導体435の第2周回部435aは、コイル軸Ax42の周りの周方向に沿って延びている。コイル軸Ax42は、コイル軸Ax41からX1軸方向に離間している。磁気結合型コイル401aと同様に、磁気結合型コイル401bに備えられる第1コイル導体425及び第2コイル導体435は、第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置される。このため、磁気結合型コイル401bの第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束は、磁気結合型コイル401bに隣接する磁気結合型コイル401a及び磁気結合型コイル401cとは鎖交しにくいので、磁気結合型コイル401bと磁気結合型コイル401a及び磁気結合型コイル401cとの望ましくない磁気結合を抑制することができる。
【0128】
磁気結合型コイル401bは、磁気結合型コイル401aとは異なる形状を有する一組のコイル導体を備えてもよい。磁気結合型コイル401bが備えるコイル導体は、そのコイル導体から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置される。
【0129】
磁気結合型コイル401cは、磁気結合型コイル401aと同様に、第1コイル導体425と、第2コイル導体435と、を備える。磁気結合型コイル401cに備えられる第1コイル導体425の第1周回部425aは、コイル軸Ax43の周りの周方向に沿って延びている。同様に、磁気結合型コイル401cに備えられる第2コイル導体435の第2周回部435aは、コイル軸Ax43の周りの周方向に沿って延びている。コイル軸Ax43は、コイル軸Ax41及びコイル軸Ax42からX1軸方向に離間している。磁気結合型コイル401aと同様に、磁気結合型コイル401cに備えられる第1コイル導体425及び第2コイル導体435は、第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置される。このため、磁気結合型コイル401cの第1コイル導体425及び第2コイル導体435から発生する磁束は、磁気結合型コイル401cに隣接する磁気結合型コイル401bとは鎖交しにくいので、磁気結合型コイル401cと磁気結合型コイル401bとの望ましくない磁気結合を抑制することができる。
【0130】
磁気結合型コイル401cは、磁気結合型コイル401aとは異なる形状を有する一組のコイル導体を備えてもよい。磁気結合型コイル401bが備えるコイル導体は、そのコイル導体から発生する磁束がX1軸方向と直交する方向に流れやすくなるように構成及び配置される。
【0131】
磁気結合型コイル部品1が備える第1コイル導体25に関する説明は、可能な限り、第1コイル導体425にも当てはまる。また、磁気結合型コイル部品1が備える第2コイル導体35に関する説明は、可能な限り、第2コイル導体435にも当てはまる。
【0132】
5 実施形態同士の組み合わせ
本明細書に記載されている実施形態を組み合わせることで得られる態様も、本願明細書により開示される実施形態に含まれる。以下の説明では、第1コイル導体25、第1コイル導体125、第1コイル導体325、第1コイル導体425を総称して「第1コイル導体」と呼ぶ。また、第2コイル導体35、第2コイル導体135、第2コイル導体335、第2コイル導体435を総称して「第2コイル導体」と呼ぶ。
【0133】
第1実施形態から第5実施形態は、本願明細書の記載に基づいて当業者が理解可能な様々なコンビネーションで組み合わせられ得る。例えば、既に説明したとおり、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせることにより、第1コイル導体と第2コイル導体との結合度を高めるととともに、第1コイル導体のインダクタンス値と第2コイル導体のインダクタンス値との差を小さくすることができる。また、第1実施形態と第4実施形態とを組み合わせることにより、複数の磁気結合型コイルの各々が備えるコイル導体同士の結合を高めるとともに、当該複数の磁気結合型コイルを個別にチップ化する場合よりも、当該複数の磁気結合型コイルの実装面積を小さくすることができる。また、別の実施形態同士の組み合わせの例として、第1実施形態と第5実施形態とを組み合わせることにより、複数の磁気結合型コイルを有するアレイ型コイル部品において、当該複数の磁気結合型コイルの各々が備えるコイル導体同士の結合を高めるとともに、隣接する磁気結合型コイル部品間での望ましくない磁気結合を抑制することができる。また、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせることにより、第1コイル導体の幅寸法を第2コイル導体の幅寸法よりも大きくするとともに、第1コイル導体の厚さ寸法を第2コイル導体の厚さ寸法よりも大きくすることで、第1コイル導体のインダクタンス値と第2コイル導体のインダクタンス値との差を小さくすることができる。
【0134】
本明細書の記載から当業者には容易に理解されるように、3つ以上の実施形態を組み合わせることも可能である。例えば、第1実施形態と、第2実施形態と、第5実施形態とを組み合わせることができる。
【0135】
実施形態同士の可能な組み合わせは、本明細書で明記されたものには限られない。実施形態1ないし実施形態5は、任意に組み合わせ可能である。
【0136】
6 注記
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。例えば、
図1から
図5に示されている実施形態では、第1下側軸部V12が第1上側軸部V11よりもコイル軸Axの近くに配置されるとともに第2下側軸部V32が第2上側軸部V31よりもコイル軸Axの近くに配置されているが、第1下側軸部V12または第2下側軸部V32の一方のみが、対応する第1上側軸部V11または第2上側軸部V31よりもコイル軸Axの近くに配置されていてもよい。この場合でも、第1引出部25b1または第2引出部25b2の少なくとも一方の周囲に磁束を通過させるための大きな領域を確保することができるので、コイル部品1の磁気特性及び直流重畳特性を向上させることができる。
【0137】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0138】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0139】
7 付記
本明細書において開示される実施形態には、以下の事項も含まれる。
【0140】
[付記1]
絶縁材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第1周回部と前記第1面との距離を示す第1距離は、前記第2周回部と前記第2面との距離を示す第2距離よりも大きい、
コイル部品。
[付記2]
前記第1周回部は、第1閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記第2周回部は、第2閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸しており、
前記コイル軸及び前記第1閉ループ軌道に直交する方向における前記第1周回部の寸法は、前記コイル軸及び前記第2閉ループ軌道に直交する方向における前記第2周回部の寸法よりも大きい、
[付記1]に記載のコイル部品。
[付記3]
前記第1周回部の前記コイル軸に沿う軸方向における厚さを示す第1厚さ(T11)は、前記第2周回部の前記軸方向における厚さを示す第2厚さ(T12)よりも厚い、
[付記1]又は[付記2]に記載のコイル部品。
[付記4]
前記第1コイル導体のインダクタンス値と前記第2コイル導体のインダクタンス値との差は、前記第1コイル導体のインダクタンス値の5%以下である、
[付記1]から[付記3]のいずれか一つに記載のコイル部品。
[付記5]
磁性材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、第1閉ループ軌道に沿ってコイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸している第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、第2閉ループ軌道に沿って前記コイル軸の周りの周方向において1ターン以上延伸している第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記コイル軸及び前記第1閉ループ軌道に直交する方向における前記第1周回部の寸法は、前記コイル軸及び前記第2閉ループ軌道に直交する方向における前記第2周回部の寸法よりも大きい、
コイル部品。
[付記6]
磁性材料から構成されており、第1面と前記第1面と対向する第2面とを有する基体と、
前記基体内に前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、
前記基体内に前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、
を備え、
前記第1コイル導体は、コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第1周回部の前記コイル軸に沿う軸方向における厚さを示す第1厚さは、前記第2周回部の前記軸方向における厚さを示す第2厚さよりも厚い、
コイル部品。
[付記7]
前記第1周回部は、前記コイル軸の周りに2ターン未満だけ巻かれており、
前記第2周回部は、前記コイル軸の周りに2ターン未満だけ巻かれている、
[付記1]から[付記6]のいずれか1項に記載のコイル部品。
[付記8]
絶縁材料から構成されており、第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面とを接続する第3面と、前記第3面と対向しており前記第3面から一軸方向において離間する第4面と、を有する基体と、
前記基体内に設けられた第1磁気結合型コイルと、
前記基体内に、前記第1磁気結合型コイルから前記一軸方向に離間して設けられた第2磁気結合型コイルと、
を備え、
前記第1磁気結合型コイルは、前記第1面に対向するように設けられた第1コイル導体と、前記第2面に対向するように設けられた第2コイル導体と、を有し、
前記第2磁気結合型コイルは、前記第1面に対向するように設けられた第3コイル導体と、前記第2面に対向するように設けられた第4コイル導体と、を有し、
前記第1コイル導体は、第1コイル軸の周りに巻かれた第1周回部と、前記第1周回部の一端から前記第2面まで延びる第1一端引出部と、前記第1周回部の他端から前記第2面まで延びる第1他端引出部と、を有し、
前記第2コイル導体は、前記第1コイル軸の周りに巻かれた第2周回部と、前記第2周回部の一端から前記第2面まで延びる第2一端引出部と、前記第2周回部の他端から前記第2面まで延びる第2他端引出部と、を有し、
前記第3コイル導体は、前記第1コイル軸から前記一軸方向に離間している第2コイル軸の周りに巻かれた第3周回部と、前記第3周回部の一端から前記第2面まで延びる第3一端引出部と、前記第3周回部の他端から前記第2面まで延びる第3他端引出部と、を有し、
前記第4コイル導体は、前記第2コイル軸の周りに巻かれた第4周回部と、前記第4周回部の一端から前記第2面まで延びる第4一端引出部と、前記第4周回部の他端から前記第2面まで延びる第4他端引出部と、を有し、
前記第1周回部の他端は、前記第1周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第2周回部の他端は、前記第2周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第3周回部の他端は、前記第3周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にあり、
前記第4周回部の他端は、前記第4周回部の一端から前記一軸方向に離間した位置にある、
アレイ型コイル部品
[付記9]
[付記1]ないし[付記8]のいずれか一つに記載のコイル部品を含む、回路基板。
[付記10]
[付記9]に記載の回路基板を含む、電子部品。
【符号の説明】
【0141】
1、101、201 磁気結合型コイル部品
10、310、410 基体
21 第1外部電極
22 第2外部電極
23 第3外部電極
24 第4外部電極
25、125、325、425 第1コイル導体
25a、125a、325a 第1周回部
25b、325b 第1一端引出部
25c、325c 第1他端引出部
35、135、335、435 第2コイル導体
35a、135a、335a 第2周回部
35b、335b 第2一端引出部
35c、335c 第2他端引出部
301、401 アレイ型コイル部品
Ax、Ax31、Ax32、Ax33、Ax41、Ax42、Ax43 コイル軸