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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078969
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】排水口用フィルター
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/26 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
E03C1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191622
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】二神 華帆
(72)【発明者】
【氏名】山岸 めい
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA04
2D061DE15
(57)【要約】
【課題】洗濯パンの排水口の目皿に貼り付けられる排水口用フィルターについて、目皿から浮き上がるなどして、目皿との間に隙間が生じるのを防止すること。
【解決手段】排水口用フィルター10を、排水ホースが挿通するための円形の開口11aを有する、不織布からなるフィルター本体11と、フィルター本体11の裏面に積層される粘着層12とを備えるものとし、フィルター本体11の不織布は、剛軟度が、0.4mN・cm以上、100mN・cm以下である構成とする。フィルター本体11の硬さが、目皿の外面に沿わせるのに好適なものとなり、目皿の傾斜面や取手から浮き上がりにくく、目皿との間に隙間が生じるのが防止される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機を載せる洗濯パンの排水口に取り付けられている目皿に被せられる排水口用フィルターであって、
通気性を有するシート体からなり、前記洗濯機から延長され前記洗濯パンの排水口に挿入される排水ホースが挿通するための開口を有する、フィルター本体を備え、
前記フィルター本体の不織布は、剛軟度が、0.4mN・cm以上、100mN・cm以下である、排水口用フィルター。
【請求項2】
前記開口は、円形をなしている請求項1に記載の排水口用フィルター。
【請求項3】
前記通気性を有するシート体は不織布である請求項1または2に記載の排水口用フィルター。
【請求項4】
前記フィルター本体の不織布の目付が、20g/m以上160g/m以下である請求項1に記載の排水口用フィルター。
【請求項5】
前記フィルター本体の裏面に積層される粘着層をさらに備える、請求項1または2に記載の排水口用フィルター。
【請求項6】
前記粘着層の粘着強度が、0.3N/10mm以上、100N/10mm以下である、請求項5に記載の排水口用フィルター。
【請求項7】
前記粘着層は、ポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかを含む請求項6に記載の排水口用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機を載せる洗濯パンの排水口に取り付けられている目皿に被せられる排水口用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機を載せる洗濯パンには、洗濯機からの排水を流すための排水口が設けられており、この排水口には、洗濯機から延長された排水ホースの端部が挿入されている。
排水口の口径は排水ホースの口径よりも大きいことから、排水口と排水ホースの間には隙間が形成される。
この隙間から排水口内に髪の毛や埃などが侵入しないよう、排水口には、排水ホースを挿通可能な開口が形成された、ドーナツ形状の目皿が被せられている。
【0003】
特許文献1のように、この目皿に特定の機能を有するカバーを被せる各種の試みがなされている。なお、同文献のカバーは、水の跳ね返り等を防止する機能を有するものである。
そのようなカバーの一例として、目の粗い目皿だけでは、排水口への髪の毛や埃などの侵入を十分に阻止できないことから、目皿に不織布からなるドーナツ形状のフィルターを被せるタイプのものが存在する。
通常、この種の不織布からなるフィルターは、その裏面に粘着層が積層されており、目皿に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-78474号公報
【特許文献2】意匠登録第1347645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の不織布からなる排水口用フィルターでは、その剛軟度に特段の配慮がなされておらず、中央に窪む向きに微少に傾斜する目皿から浮き上がったりしていた。特許文献2のように、目皿には、突起状の取手を有する種類もあり、その場合には、目皿の外面に沿わせにくく、浮き上がりがより顕著となった。
このため、目皿と排水口用フィルターに隙間が生じ、この隙間を通じた、排水口への髪の毛や埃などの侵入、また排水口から室内への害虫の侵入を阻止することができなかった。
【0006】
そこで、本発明の解決すべき課題は、洗濯パンの排水口の目皿に貼り付けられる排水口用フィルターについて、目皿から浮き上がるなどして、目皿との間に隙間が生じるのを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、発明にかかる排水口用フィルターを、通気性を有するシート体からなり、洗濯機から延長され洗濯パンの排水口に挿入される排水ホースが挿通するための開口を有する、フィルター本体を備え、フィルター本体の不織布は、剛軟度が、0.4mN・cm以上、100mN・cm以下である構成としたのである。
【0008】
発明にかかる排水口用フィルターをこのように構成すると、フィルター本体の硬さが、目皿の外面に沿わせるのに好適なものとなり、目皿の傾斜面や取手から浮き上がりにくく、目皿との間に隙間が生じるのが防止される。
フィルター本体の不織布の剛軟度が100mN・cmを上回ると、コシが大きすぎるため、目皿の傾斜面や取手に沿わせることが困難となり、隙間ができるおそれがある。
また、フィルター本体の不織布の剛軟度が0.4mN・cmを下回ると、コシがなさすぎて、皺ができやすく、目皿との間に隙間ができてしまうおそれがある。
【0009】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、フィルター本体の開口は、円形である構成を採用することが好ましい。
【0010】
このように構成すると、開口の形状が円筒状の排水ホースの外面形状に合致するため、開口と排水ホースの外面との間に隙間が生じにくくなり、かかる隙間を通じた、髪の毛や埃等の排水口への侵入、排水口から室内への害虫の侵入が抑制される。
【0011】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、フィルター本体を構成する通気性を有するシート体は、不織布とする構成を採用することが好ましい。
【0012】
このように構成すると、フィルター本体の髪の毛や埃等の捕集性能と排水口の内部にカビ等が発生しないような通気性能を高いレベルで両立させることができる。
【0013】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、フィルター本体の不織布の目付が、20g/m以上160g/m以下である構成を採用することが好ましい。
【0014】
このように構成すると、フィルター本体の強度が不足せず、髪の毛や埃などの捕集能力が高く、洗濯機から水漏れ等が発生した場合にも、フィルター本体が排水の障害にならず、スムーズな排水が可能となる。
フィルター本体の不織布の目付が、160g/mを上回ると、通気性、通水性が悪くなることで、洗濯機から水漏れ等が発生した場合の排水をスムーズに行なうことが困難となり、また排水口内部の空気が滞留し、カビが発生する恐れがある。
フィルター本体の不織布の目付が、20g/mを下回ると、強度が不足してフィルター本体が破れやすくなり、また、十分な捕集性能を発揮せず、排水口に埃等が蓄積するおそれがある。
【0015】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、フィルター本体の裏面に積層される粘着層をさらに備える構成を採用することが好ましい。
【0016】
このように構成すると、粘着層を洗濯パン等に貼り付けることで、フィルター本体を目皿上に固定することが容易となるため、フィルター本体がずれ動くなどして、意図せずにフィルター本体と目皿との間に隙間が生じてしまうことが防止される。
【0017】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、粘着層の粘着強度が、0.3N/10mm以上、10N/10mm以下である構成を採用することが好ましい。
【0018】
このように構成すると、粘着層を目皿に貼り付けた際に密着性が高く、かつ糊残りも生じにくいものとすることができる。
粘着強度が10N/10mmを上回ると、排水口用フィルターを目皿から取り外す際に、糊残りが生じるおそれや、フィルターの一部が破断して目皿に貼り付いたまま残ってしまう恐れがある。
粘着強度が0.3N/10mm以を下回ると、経時により排水口用フィルターが目皿か剥がれたり、排水口内の排水が逆流した際にその圧力で排水口用フィルターが目皿から剥がれたりして、埃の排水口への侵入を阻止できないおそれがある。
【0019】
発明にかかる排水口用フィルターにおいて、粘着層の粘着強度が上記所定の場合に、粘着層はポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれかを含む構成を採用することが好ましい。
【0020】
このように構成すると、上記所定の粘着強度を有する粘着層を、汎用されている比較的安価な粘着剤から構成することができるとともに、糊残りが生じにくい種類の粘着剤であるため、粘着層を目皿から剥がした際に、目皿が汚れることも抑制される。
【発明の効果】
【0021】
発明にかかる排水口用フィルターを以上のように構成したので、目皿から浮き上がるなどして、目皿との間に隙間が生じるのを防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】排水口用フィルターの(a)は平面図、(b)は側面図
図2】排水口用フィルターを洗濯パンの目皿に取り付けた状態を示す全体斜視図
図3】排水口用フィルターを洗濯パンの目皿に取り付けた状態を示す拡大斜視図
図4】排水口用フィルターを洗濯パンの目皿に取り付けた状態を示す(a)は平面図、(b)は側面図
図5】排水口用フィルターを洗濯パンの目皿へ取り付ける方法を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す実施形態の排水口用フィルター10は、図2から図4のように、洗濯機Wが載せられる洗濯パンTの排水口Dに取り付けられる目皿Pに被せて使用され、排水口Dに髪の毛や埃などが侵入することを防止し、また排水口から室内へ害虫が侵入することを防止するものである。
【0024】
図1に示すように、排水口用フィルター10は、平面視でほぼ正方形をなしており、フィルター本体11および粘着層12の二層構造となっている。
未使用時には、粘着層12のカバー本体に接する面とは逆側の面に剥離可能な保護フィルムを積層しておくことで、粘着層12が乾燥して粘着力が低下したりすることを防止してもよい。
【0025】
排水口用フィルター10の縦横寸法は特に限定されないが、市販されている洗濯パンTの排水口Dに取り付けられる目皿Pを覆うことが可能なものとして、縦横それぞれ140mmから180mm程度が例示できる。
縦横寸法が140mmを下回ると、一般的な目皿Pを覆い難くなり、180mmを上回ると、大きすぎて取り扱いが不便となる。
【0026】
フィルター本体11は、不織布からなる。フィルター本体11は、排水口Dに髪の毛や埃などが侵入することを防止し、また排水口から室内へ害虫が侵入することを防止するようになっているが、排水口D内外の空気の流通は阻害されないようになっている。
フィルター本体11の不織布の材質は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、モダクリルを含むアクリル繊維等の公知の合成繊維や天然繊維が例示できる。その製法も特に限定されず、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等の公知の製法が例示できる。また、不織布には本発明の効果を阻害しない範囲で適宜抗菌効果や抗カビ加工を施してもよい。
【0027】
フィルター本体11の不織布の目付は特に限定されないが、20g/m以上160g/m以下であることが好ましく、40g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。
目付をこの範囲とすることで、フィルター本体の強度が不足せず、髪の毛や埃などの捕集能力が高く、洗濯機から水漏れ等が発生した場合にも、フィルター本体が排水の障害にならず、スムーズな排水が可能となる。
【0028】
また、フィルター本体11の不織布の剛軟度も特に限定されないが、0.4mN・cm以上100mN・cm以下であることが好ましく、40mN・cm以上80mN・cm以下であることがより好ましい。
剛軟度をこの範囲とすることで、フィルター本体の硬さが、目皿の外面に沿わせるのに好適なものとなり、目皿の傾斜面や取手から浮き上がりにくく、目皿との間に隙間が生じるのが防止される。
なお、剛軟度は、JIS-L-1096 A法「45°カンチレバー法」に準拠して、曲げ長さC(mm)を測定し、これと目付m(g/m)により、JIS-L-1913 2010「41.5°カンチレバー法」に準拠して、次式に基づき、剛軟度G(mN・cm)を測定したところによる。なお、次式において、9.81m/sの自由落下の加速度は10m/sとみなしている。
G=m×C×10-3
【0029】
図1のように、フィルター本体11の中央部には、円形の開口11aが設けられている。洗濯機Wから延長され、洗濯パンTの排水口Dに差し込まれている排水ホースHは、この開口11aに挿通される。
開口11aの径は特に限定されないが、一般的な排水ホースHの口径とほぼ同じか若干小さいものとして、20mmから60mmが例示され、より好ましい範囲としては25mmから35mmが例示される。本発明の実施形態では30mmとした。
開口11aの径が20mmを下回ると、一般的な排水ホースHを挿通させることが困難となり、60mmを上回ると、排水ホースHとの間に隙間ができてしまい、排水口Dに埃等が侵入したり、排水口Dから害虫が室内に侵入したりする恐れがある。
【0030】
図1のように、フィルター本体11の開口11aからは、複数のスリット11bが放射状に延びている。スリット11bは、開口11aの円周方向に、ほぼ等間隔に配置されている。
また、隣接するスリット11b間には、図5に示すようにフラップ11cが区画されており、フラップ11cのコシが柔らかいので、フィルター本体11の面に対して、フラップ11cを所望の角度に変えたり、折り曲げたり、めくれ上げたりすることが可能となっている。
排水ホースHが開口11aに挿通する際には、排水ホースHと開口11aとの寸法関係から、フラップ11cが排水ホースHの外面に沿って撓んで、その外面に密着した状態となる。これにより、フィルター本体11と排水ホースHとの間に、隙間が生じることが抑制される。なお、フラップ11cの端部が排水ホースHの外面に密接した状態となっていれば、フラップ11cが排水ホースHの外面に沿って撓んでその外面に密着した状態となっていなくてもよい。すなわち、フラップ11cが排水ホースHの外面に沿って撓んでその外面に密着した状態になっていなくても、フィルター本体11が目皿を覆う状態となっていればよく、フラップ11cが排水ホースHの外面に密着した状態となっていることは必要ではない。
【0031】
ここでスリット11bの長さは特に限定されないが、10mmから40mmが例示され、より好ましい範囲としては10mmから20mmが例示される。本発明の実施形態では15mmとした。
スリット11bの長さが10mmを下回ると、フラップ11cが小さくなりすぎて排水ホースHの外面に届かず、隙間が生じてしまうおそれがあり、40mmを上回ると、フラップ11cが大きくなりすぎて、しわが出来るなどして排水ホースHの外面に密着しがたくなり、これも隙間が生じてしまうおそれがある。
【0032】
図1のように、複数のスリット11bのうち、フィルター本体11の四辺に最短距離のスリットの一つは、延長されて、そのフィルター本体11の辺へと連通する連通スリット11dとなっている。
この連通スリット11dを開くことで、排水ホースHの導入経路が形成され、ここからフィルター本体11の開口11a内に排水ホースHを導入できるようになっている。排水ホースHの導入後は、フィルター本体11の不織布の復元弾性により、連通スリット11dが元の状態へと閉じる。
連通スリット11dは、フィルター本体11の四辺から最短距離にあるため、排水ホースHの導入経路が短くなり、開口11aへの導入がスムーズに行なわれる。
ここで連通スリット11dのスリットの長さは特に限定されないが、50mmから80mmが例示される。
連通スリット11dの長さが50mmを下回ると、導入経路が短くなりすぎて、排水口用フィルター10が目皿Pの奥側(排水口用フィルター10を目皿Pに設置した場合に導入経路が位置する側)を十分に覆うことができないおそれがあり、長さが80mmを上回ると、導入経路が長くなりすぎて、排水口用フィルター10をセットする手間がかかるおそれがある。
【0033】
図1のように、粘着層12は、粘着剤を所定のパターンでフィルター本体11の不織布に積層することにより形成されている。
具体的には、図示のように、粘着層12は、フィルター本体11の開口11aの同心円状に、円環状の内側環部12aと円環状の外側環部12bとが、二重円状に配置されるパターンをなしている。
内側環部12aと外側環部12bとの間には、粘着層12は存在していない。
排水口用フィルター10の使用時には、内側環部12aが目皿Pに、外側環部12bが洗濯パンTの排水口Dの開口縁に、それぞれ貼り付けられる。
排水口用フィルター10は、目皿Pと洗濯パンTの双方に貼り付けられることで、目皿Pからのずれ動きや浮き上がり、目皿Pとフィルター10との隙間の発生が防止されている。
【0034】
内側環部12aと外側環部12bの径は限定されないが、内側環部12aの内径は目皿Pの外径よりも僅かに小さく、内側環部12aの中心径は目皿Pの外径と同程度であり、外側環部12bの中心径は目皿よりも大きく、目皿Pを備えた排水口ユニット(詳細な図示は省略)の目皿Pより外方側に形成されたフランジFの中心径と同程度に設定されている。このように設定することで、排水口用フィルター10の使用時には、内側環部12aは目皿Pの外周と排水口ユニットのフランジFの上面内周との境界に生じる隙間を塞ぐようになり、さらに目皿Pの外周近傍とフランジFの上面内周近傍とに内側環部12aが架かるように(跨るように)貼り付けられるので、この隙間から害虫が室内に侵入することを防ぐことが可能となる。すなわち、内側環部12aが害虫に対して第1の障壁となる。また、外側環部12bにおいては、排水口ユニットのフランジFの上面の中央付近に貼り付けられることになるので、万一目皿Pが浮いたり外れたりしてその隙間から害虫が出てきたとしても、外側環部12bがあることで害虫が室内へ侵入することを防ぐことができる。すなわち、外側環部12bが害虫に対して第2の障壁となる。また、内側環部12aと外側環部12bの幅も限定されないが、幅が狭すぎると粘着力が劣るとともに前述の第1、第2の障壁としての機能が発揮しにくくなるため、5mm以上であることが例示できる。なお、目皿Pおよび排水口ユニットのフランジF(洗濯パンの排水口の開口縁)は種々の大きさや形状があるため、内側環部12aおよび外側環部12bと目皿Pおよび排水口ユニットのフランジF(洗濯パンの排水口の開口縁)との位置関係は、厳密に上述した位置関係となる必要はなく、内側環部12aが目皿内方側に位置したりフランジFに位置したりしてもよく、同様に外側環部12bがフランジFの中央付近でなく内方側や外方側に位置したり、フランジFより外側の洗濯パンTに位置していても構わない。
【0035】
また図1のように、内側環部12aとフィルター本体11の開口11aとの間であって、各フラップ11cに対応する位置には、開口11aの周方向に並列する複数のフラップ粘着部12cが形成されている。フラップ粘着部12cはそれぞれ台形状の形状をなしている。
内側環部12aとフラップ粘着部12cの間には、粘着層12は存在していない。
排水口用フィルター10の使用時には、フラップ11cは手指で押さえれば容易に撓んで目皿Pの傾斜面に対してぴったりと沿わすことができるので、フラップ粘着部12cを目皿Pの傾斜面に密着させることができる。また、排水口用フィルター10はコシが強くないためフラップ11cが目皿Pの傾斜面から剥がれたり浮き上がったりすることもない。さらに、フラップ粘着部12cは、フラップ11cが撓んで排水ホースHの外面に密着させた場合には、その外面に貼り付けられる。
このため、フラップ粘着部12cは、フラップ11cが撓んで排水ホースHの外面に密着させた場合には、排水ホースHとフィルター10との隙間の発生が防止されている。
フラップ粘着部12cは、フラップ11cの外端(スリット11bの外端)よりもわずかに外側にまで形成されている。これにより、フラップ粘着部12cは、排水ホースHの外面や目皿Pの傾斜面のみならず、一部が目皿Pの傾斜面よりも外方の平坦面にも貼り付けられることも可能となる。そのため、排水ホースHの周辺部と目皿Pとフィルター10との間に隙間が生じることが一層防止されている。
フラップ粘着部12cの幅(開口方向に向かう長さ)は特に限定されないが、フラップ11cよりも外方側(開口方向とは反対側)へはみ出すものとして、15mmから45mmが例示され、より好ましい範囲としては15mmから25mmが例示できる。本発明の実施形態では20mmとした。なお、フラップ粘着部12cの幅はフラップ11cと同程度に設定してもよい。
【0036】
図1のように、外側環部12bとフィルター本体11の外縁(四辺)との間には、フィルター本体11の外縁に沿うように、正方環状の外縁環部12dが形成されている。
外側環部12bと外縁環部12dの間には、粘着層12は存在しない。
排水口用フィルター10の使用時には、外縁環部12dは、洗濯パンTの排水口Dから所定距離離れた位置に貼り付けられる。
このため、内側環部12a、外側環部12bと相俟って、目皿Pからのずれ動きや浮き上がり、目皿Pとフィルター10との隙間の発生が防止されている。また、万一目皿Pや排水口ユニットの浮きやズレにより排水口から害虫が外へ出ることができる状態となっていても、外縁環部12dが洗濯パンTと密着している限り、害虫が室内へ侵入することを防ぐことが可能である。すなわち、外縁環部12dが害虫に対して第3の障壁となる。
外縁環部12dの縦横寸法は特に限定されないが、フィルター本体11の外縁に沿うものとして、縦横それぞれ120mmから160mm程度が例示できる。外縁環部12dの幅も特に限定されないが、幅が狭すぎると粘着力が劣るとともに前述の第3の障壁としての機能が発揮しにくくなるため、5mm以上であることが例示できる。
【0037】
図1のように、スリット11b、連通スリット11dと、内側環部12a、外側環部12b、フラップ粘着部12c、外縁環部12dとの境界は、いずれも粘着層12の存在しない粘着欠落部12eとなっている。
これにより、不織布と粘着層との積層体を切断具でカットして、排水口用フィルター10を製造する際に、その切断具が粘着層12に接触することがないようになっている。このため、切断具に粘着剤が付着することがなく、スムーズにカット作業がおこなわれることとなる。
【0038】
粘着層12の粘着力(粘着強度)は特に限定されないが、0.3N/10mm以上10N/10mm以下であることが好ましく、1N/10mm以上5N/10mm以上であることがより好ましい。
粘着力をこの範囲とすることで、粘着層12を目皿Pに貼り付けた際に密着性が高く、かつ糊残りも生じにくいものとすることができる。
ここで粘着力は、JIS Z 0237に準拠しており、ステンレス板に2kg圧着ローラーを用いて、試験片を貼り付け、180°で5mm/分の速度で引きはがし測定したところによる。
【0039】
粘着剤の種類は特に限定されないが、ポリウレタンポリオール系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤のいずれか、またはこれらの混合物であることが好ましい。
粘着剤をこのような種類とすることで、比較的安価に粘着層12を糊残りが生じにくいものとすることができる。
粘着層12のフィルター本体11に対する積層方法も特に限定されず、スプレー塗布法、粘着層パターンを保護フィルムに塗工した上でフィルター本体11に転写する転写法などが例示できるが、粘着剤の密度を高くして粘着力をあげるのが容易な方法としては、転写法が好ましい。
【0040】
実施形態の排水口用フィルター10の構成は以上のようであり、次にその使用方法について説明する。
まず図5(a)のように、排水口用フィルター10をその連通スリット11dが、排水ホースHに正対するように、洗濯パンTの排水口Dに取り付けられた目皿Pへと近づける。この状態で、図示のように、フィルター本体11の全体を撓ませて、連通スリット11dを開き、導入路を形成する。
【0041】
次に、図5(a)から(b)のように、導入路を排水ホースHに挿通させ、そのまま排水口用フィルター10全体をスライドさせる。
このとき、フィルター本体11のフラップ11cは、撓んで排水ホースHの外面へと密着する。また、排水ホースHに開口11aが導入されると、不織布の復元弾性により、連通スリット11dは自然に閉じられる。
【0042】
この状態で、粘着層12の内側環部12aと外側環部12bとを目皿Pと排水口ユニットのフランジFにそれぞれ貼り付ける。また、フラップ粘着部12cの外方側の一部を排水ホースHの外面に、残りを目皿Pにそれぞれ貼り付ける。さらに、外縁環部12dを洗濯パンTの排水口Dの開口縁から所定距離離れた箇所に貼り付ける。
これにより、排水口Dの近辺は隈なく排水口用フィルター10により覆われ、排水口Dに髪の毛や埃などが侵入すること、また排水口Dから室内へ害虫が侵入することがいずれも防止される。
【0043】
排水口用フィルター10は、一定期間使用した後に、上記したのと逆に粘着層12をはがし取る手順を踏むことで、取り外され、廃棄される。
排水口Dには、交換用の排水口用フィルター10が被せられる。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて、本発明の内容を一層明確にする。
実施例1から3および比較例1から3として、次表1に示すような、フィルター本体としての不織布と粘着層を積層してなる排水口用フィルターを準備した。
ここで排水口用フィルターの粘着層のパターンは、図1に示したとおりである。
また、その寸法は160mm×160mmであり、フィルター本体の不織布は、主にポリエチレンテレフタレート繊維から構成される不織布である。
【0045】
表1中、粘着強度、剛軟度については、本明細書の段落0028、段落0038に記載した測定方法による。
なお、表1において、実施例1から実施例3は、カバー本体としての不織布における目付および剛軟度が本明細書の段落0027および段落0028の数値範囲に収まっており、かつ粘着層における粘着強度(粘着力)が本明細書の段落0038の数値範囲に収まっている。
一方、比較例1から比較例3は、カバー本体としての不織布における目付および剛軟度、粘着層における粘着強度(粘着力)のいずれかが、本明細書の上記数値範囲に収まっていない。
【0046】
【表1】
【0047】
これら実施例1から実施例3および比較例1から比較例3の排水口用フィルターについて、排水口からの剥がれ試験、糊残り試験をおこない、評価した。
結果を次表2に示す。
【0048】
(排水口からの剥がれ試験)
株式会社サヌキ製の洗濯排水用目皿に、実施例1から実施例3および比較例1から比較例3の排水口用フィルターを幅10mm長さ50mmに切り取って貼り付けた。
これを40℃、湿度75%の環境下で恒温恒湿槽に1カ月間静置した。
その後、目視により確認し、目皿の傾斜面に対して剥がれが生じず密着していた場合には、〇と判定し、わずかでも浮き上がりや剥がれがあれば×と判定した。
【0049】
(糊残り試験)
株式会社サヌキ製の洗濯排水用目皿に、実施例1から実施例3および比較例1から比較例3の排水口用フィルターを幅10mm長さ50mmに切り取って貼り付けた。
これを40℃、湿度75%の環境下で恒温恒湿槽に1カ月間静置した。
その後、排水口用フィルターを目皿から剥がして、目皿の表面を目視で確認した。
表面に糊残りがまったく発生していなければ〇と判定し、糊残りがわずかでも発生していれば×と判定した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2からわかるように、比較例1から3は、いずれも排水口からの剥がれか糊残りのいずれかが生じているのに対して、実施例1から3は、排水口からの剥がれと糊残りのいずれも確認されなかった。
【0052】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
たとえば、実施形態ではフィルター本体11の形状を正方形としたがこれに限定されず、円形や多角形などでもよい。
実施形態ではスリット11b、連通スリット11dの形状を直線状としたがこれに限定されず波形などでもよい。スリット11b、連通スリット11dは省略可能である。
【0054】
実施形態では、フィルター本体11の開口11aを円形としているが、排水ホースHを挿通可能である限りにおいて、形状は限定されず、多角形、楕円形などとしたり、排水ホースHを挿通する際に開くことが可能なスリットなどでもよい。
実施形態では、フィルター本体11を不織布から構成したが、通気性を有するシート体である限りにおいて、これに限定されず、織布、メリヤス生地、多孔性フィルムなどでもよい。
また、実施形態では、フィルター本体11の裏面に粘着層12を積層しているが、粘着層12を省略して排水口用フィルター10を目皿Pに被せるだけに構成することもできる。また、面ファスナ、スナップボタン、両面テープなど、他の取り付け手段により、排水口用フィルター10を目皿Pに取り付けられるようにしてもい。
【0055】
粘着層12のパターンは実施形態に限定されない。フィルター本体11の全面に通気性を阻害しない程度にスプレー塗布法などにより細かな粘着剤を点在させていてもよい。
実施形態では、粘着層12の内側環部12a、外側環部12bを円環状に形成したが、環状である限りにおいてこれに限定されず、方環状などでもよい。
実施形態では、粘着層12のフラップ粘着部12cを台形状に形成したが、形状はこれに限定されない。フラップ粘着部12cは省略可能である。
実施形態では、粘着層12の外縁環部12dを方環状に形成したが、環状である限りにおいてこれに限定されず、円環状などでもよい。また、外縁環部12dを省略することも可能である。
内側環部12a、外側環部12b、フラップ粘着部12cおよび外縁環部12d以外にも、粘着層12は存在してもよい。
また、粘着欠落部12eも図示した以外の箇所にも存在してもよいし、逆に粘着欠落部12eを省略することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10 排水口用フィルター
11 フィルター本体
11a 開口
11b スリット
11c フラップ
11d 連通スリット
12 粘着層
12a 内側環部
12b 外側環部
12c フラップ粘着部
12d 外縁環部
12e 粘着欠落部
W 洗濯機
T 洗濯パン
H 排水ホース
D 排水口
P 目皿
F フランジ
図1
図2
図3
図4
図5