(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078975
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20240604BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191630
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 豪
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB01
3D054CC11
3D054CC27
3D054CC34
3D054DD09
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】膨張展開したときに従来の一般的なエアバッグよりも大きな展開ストロークを得ることが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ(10)は、第1基布(21)及び第2基布(22)と、第1基布(21)の外周縁部の少なくとも一部と第2基布(22)の外周縁部の少なくとも一部とに接合される中間基布(23)とを有する袋状のエアバッグ本体(20)を備えたエアバッグ(10)において、中間基布(23)の少なくとも一部は、織布のバイアス方向が、膨張展開したときの第1基布(21)の外周縁部と第2基布(22)の外周縁部とを連結する中間基布(23)の連結方向に沿っているバイアス部(23a)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張展開したときに乗員に対向する位置に配される第1基布、及び少なくとも一部が前記第1基布から離れた位置に配される第2基布と、前記第1基布の外周縁部の少なくとも一部と前記第2基布の外周縁部の少なくとも一部とに接合される中間基布とを有する袋状のエアバッグ本体を備えたエアバッグにおいて、
前記中間基布の少なくとも一部は、織布により形成され、且つ、前記織布のバイアス方向が、膨張展開したときの前記第1基布の前記外周縁部と前記第2基布の前記外周縁部とを連結する前記中間基布の連結方向に沿っているバイアス部を有する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記バイアス部は、前記中間基布における前記連結方向の少なくとも一部の範囲に、前記連結方向に直交した直交方向に沿って、及び/又は前記中間基布における前記連結方向に直交した直交方向の少なくとも一部の範囲に、前記連結方向に沿って設けられている
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記バイアス部は、前記中間基布の全体に設けられている
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記エアバッグ本体の内部に、前記エアバッグ本体の膨張形状を規制する少なくとも1つの規制テザー部材が配されている
請求項1~3の何れかに記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両には、車両が衝突した際に乗員に加えられる衝撃を緩和して乗員を保護するエアバッグ装置が搭載されている。一般的に、エアバッグ装置は、ガスを供給するインフレータと、所定の形状に折り畳まれた袋状のエアバッグ本体を備えたエアバッグとを有しており、エアバッグは、インフレータから発生するガスによって膨張して展開する。
【0003】
また、例えば車両のステアリングホイールに搭載される従来のエアバッグ装置には、膨張展開時に乗員に対向するように配される第1基布と、エアバッグで第1基布とは反対側の部分(面)に配される第2基布と、第1基布の外周縁部及び第2基布の外周縁部に接合される中間基布とを有する袋状のエアバッグが使用されることが知られている。
【0004】
一方、例えば特開2007-50851号公報(特許文献1)には、乗員に対向するように配される第1メイン基布と、インフレータが取り付けられる第2メイン基布と、第1メイン基布及び第2メイン基布間に配される中間布体とを有するエアバッグが開示されている。
【0005】
特許文献1において、エアバッグの中間布体は、例えばドーナツ型の形状を有する2枚の基布パーツ(サブ基布)の内周縁部同士を縫い合わせることによって形成されている。また、中間布体は、一方の基布パーツの外周縁部と第1メイン基布の外周縁部とを縫い合わせることによって、第1メイン基布に接合されており、また、他方の基布パーツの外周縁部と第2メイン基布の外周縁部とを縫い合わせることによって、第2メイン基布に接合されている。
【0006】
このような特許文献1のエアバッグは、基布パーツを用いて形成される中間布体が第1メイン基布と第2メイン基布との間に挟まれている層状の構造を有する。このため、エアバッグが膨張して展開するときに、中間布体が開くことによって第1メイン基布及び第2メイン基布間の間隔を広く確保し易くできる。これにより、エアバッグを膨張展開させたときに、例えば上述したような中間布体が用いられる従来の一般的なエアバッグに比べて、展開ストローク(衝撃吸収ストローク)を容易に拡大できるため、車両の衝突時に乗員を安全に保護でき、また、乗員が受ける衝撃を小さく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のエアバッグでは、エアバッグの展開ストロークを拡大させることが可能な中間布体が、2枚の基布パーツを使用して複雑な形状で形成されている。また、その中間布体は、第1メイン基布と第2メイン基布との間に挟まれるようにして第1メイン基布及び第2メイン基布のそれぞれの外周縁部に縫い合わせられている。
【0009】
従って、上述のような特許文献1のエアバッグを、例えば第1基布、第2基布、及び中間基布により形成される従来のエアバッグを製造する一般的な製造方法及び製造設備を用いて製造することは難しい。このため、特許文献1のエアバッグを製造するためには、製造ラインの変更や製造設備の改修等が必要とされ、製造コストの増大が避けられなかった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の製造方法及び製造設備を利用して製造可能で、且つ、膨張展開したときに従来の一般的なエアバッグよりも大きな展開ストロークを得ることが可能なエアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるエアバッグは、膨張展開したときに乗員に対向する位置に配される第1基布、及び少なくとも一部が前記第1基布から離れた位置に配される第2基布と、前記第1基布の外周縁部の少なくとも一部と前記第2基布の外周縁部の少なくとも一部とに接合される中間基布とを有する袋状のエアバッグ本体を備えたエアバッグにおいて、前記中間基布の少なくとも一部は、織布により形成され、且つ、前記織布のバイアス方向が、膨張展開したときの前記第1基布の前記外周縁部と前記第2基布の前記外周縁部とを連結する前記中間基布の連結方向に沿っているバイアス部を有するエアバッグである。
【0012】
本発明のエアバッグにおいて、前記バイアス部は、前記中間基布における前記連結方向の少なくとも一部の範囲に、前記連結方向に直交した直交方向に沿って、及び/又は前記中間基布における前記連結方向に直交した直交方向の少なくとも一部の範囲に、前記連結方向に沿って設けられていることが好ましい。
更に、前記バイアス部は、前記中間基布の全体に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明のエアバッグにおいて、前記エアバッグ本体の内部に、前記エアバッグ本体の膨張形状を規制する少なくとも1つの規制テザー部材が配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアバッグによれば、従来の製造方法及び製造設備を利用して製造することができ、また、膨張展開したときに従来の一般的なエアバッグよりも大きな展開ストロークを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係るエアバッグの組み立てられた形状を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したエアバッグが分解された状態を模式的に示す分解図である。
【
図3】膨張展開したエアバッグを乗員側から見たエアバッグの模式的な正面図である。
【
図4】
図3に示したIV-IV線の位置におけるエアバッグの断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】第1変形例に係るエアバッグの断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】第2変形例に係るエアバッグの中間基布を示す模式図である。
【
図7】第3変形例に係るエアバッグの中間基布を示す模式図である。
【
図8】第4変形例に係るエアバッグの中間基布を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0017】
例えば、以下の実施例で説明するエアバッグは、自動車のステアリングホイールに搭載される運転席用のエアバッグ装置に使用されるが、本発明のエアバッグは、例えば助手席用のエアバッグ装置などのその他のエアバッグ装置に使用される場合にも同様に適用可能である。
【実施例0018】
図1は、本実施例に係るエアバッグの組み立てられた形状を模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施例のエアバッグが分解された状態を模式的に示す分解図であり、
図3は、膨張展開したエアバッグを乗員側から見たエアバッグの模式的な正面図である。
【0019】
なお、エアバッグに関して、上下方向及び左右方向とは、ステアリングホイールに装着されたエアバッグ装置を運転者側から見た場合の上下方向及び左右方向を言う。また、前方とは、エアバッグ装置を運転者側から見た場合に、エアバッグ装置に対して手前側(運転者側)の方向を言い、後方とは、エアバッグ装置に対して奥側(ステアリングホイール側)の方向を言う。
【0020】
本実施例のエアバッグ装置は、自動車のステアリングホイールに取り付けられており、自動車の衝突時等に、エアバッグ装置の後述するエアバッグ10が乗員側となる前方に向けて膨張展開する。この膨張展開したエアバッグ10に乗員が接触して拘束されることによって、乗員を安全に保護できる。
【0021】
本実施例のエアバッグ装置は、
図1~
図4に示すエアバッグ10と、エアバッグ10にガスを供給する図示しないインフレータと、エアバッグ10及びインフレータ等を保持する図示しない保持部材(リテーナ)とを有する。また、エアバッグ10は、所定の手順で折り畳まれ、更に、その折り畳まれた形態が、図示しないラッピング部材によって包まれて保持された状態で保持部材に取り付けられている。なお本発明において、エアバッグ装置を形成する部品又は部材のうち、エアバッグ10以外の部品又は部材は特に限定されない。
【0022】
本実施例のエアバッグ10は、
図1及び
図2に示すように、袋状に形成されるエアバッグ本体20と、エアバッグ本体20の内部に配される2つの規制テザー部材30とを有する。また、エアバッグ本体20には、インフレータの一部を挿通させる挿通開口部24と、エアバッグ本体20内に流入したガスを排出するための図示しないベントホールとが設けられている。なお本発明において、ベントホールの設置箇所、ベントホールの形状、及びベントホールの設置数は特に限定されず、エアバッグ10の大きさや膨張形状等に応じて変更可能である。
【0023】
本実施例のエアバッグ本体20は、3枚の基布(パネル)により袋状に形成されている。具体的に説明すると、エアバッグ本体20は、円形又は略円形に形成される第1基布21及び第2基布22と、長方形又は略長方形に形成される中間基布23とを有する。このエアバッグ本体20は、エアバッグ本体20の内部にインフレータからガスが供給されることによって膨張して展開する。また、膨張展開するエアバッグ本体20は、エアバッグ本体20内に配される規制テザー部材30の張力によってエアバッグ本体20の膨張形状が規制されることにより、
図1に示すような略円柱の形状に膨張展開する。
【0024】
このため、膨張展開したエアバッグ本体20は、例えばエアバッグ本体20の運転席側から見た正面視(
図3を参照)において円形又は略円形の形状を有し、また、前後方向に適切な大きさ(厚さ)を有する。この場合、膨張展開したエアバッグ本体20は、乗員に対向する乗員対向面部(前面部)26と、ステアリングホイールに対向するホイール対向面部(後面部)27と、乗員対向面部26及びホイール対向面部27間を接続する側面部28とを有する。また、乗員対向面部26及びホイール対向面部27は、それぞれ第1基布21及び第2基布22によって形成されており、側面部28は、中間基布23によって形成されている。
【0025】
エアバッグ本体20を形成する第1基布21、第2基布22、及び中間基布23は、それぞれ経糸及び緯糸により織成された織布により形成されている。エアバッグ本体20の第1基布21は、エアバッグ10が膨張展開したときに乗員に対向する位置に配される部分であり、本実施例の場合、円形の形状を有する。
【0026】
エアバッグ本体20の第2基布22は、エアバッグ10が膨張展開したときに第1基布21から離れた位置に配される部分であり、本実施例の場合、第1基布21と同じ円形の形状を有する。また、円形の第2基布22の中心部には、挿通開口部24が設けられている。
【0027】
本実施例の第2基布22は、第2基布22の経糸が織り込まれる方向(経糸の方向)及び緯糸が織り込まれる方向(緯糸の方向)が、第1基布21の経糸の方向及び緯糸の方向に対して、平行ではなく、傾斜させた向きで中間基布23に縫い合わされている。例えば本実施例の場合、第1基布21及び第2基布22は、エアバッグ本体20において、第1基布21における経糸及び緯糸の方向と、第2基布22における経糸及び緯糸の方向とが互いに90°で交差する向きに配されている。なお、
図2では、第1基布21、第2基布22、及び中間基布23の各織布における経糸及び緯糸の方向を模式的に示している。
【0028】
エアバッグ本体20の中間基布23は、第1基布21及び第2基布22の円周方向に長く、且つ、第1基布21及び第2基布22間を連結する連結方向に短い長方形の形状を有する。この中間基布23は、中間基布23の長辺側の一対の側縁部が、第1基布21の外周縁部と、第2基布22の外周縁部とにそれぞれ縫い合わされて連結される。この場合、中間基布23の連結方向は、中間基布23が第1基布21の外周縁部と第2基布22の外周縁部とにより引っ張られる引っ張り方向と言うことがき、また、膨張展開するエアバッグ本体20の膨張方向又は展開方向と言うこともできる。
【0029】
中間基布23は、その中間基布(織布)23のバイアス方向が、中間基布23の連結方向(引っ張り方向)又はエアバッグ本体20の膨張方向(展開方向)に沿って形成されるバイアス部23aを有する。本実施例の場合、中間基布23のバイアス部23aは、中間基布23の全体に設けられている。
【0030】
ここで、織布のバイアス方向とは、経糸の方向及び緯糸の方向に対して45°の角度で傾斜する方向である。また、バイアス方向が中間基布23の連結方向に沿うことには、バイアス方向が中間基布23の連結方向と平行であること、及び、バイアス方向が中間基布23の連結方向に対して±10°以下の角度で傾斜して配されることが含まれる。
【0031】
中間基布23の全体に上述のようなバイアス部23aが設けられていることにより、例えば中間基布に上述したバイアス部23aが設けられていない場合に比べて、中間基布23の弾性率を小さくし、中間基布23を連結方向に伸び易くすることができる。従って、本実施例のエアバッグ10では、エアバッグ本体20が膨張展開したときに、エアバッグ本体20を連結方向に長く伸ばして、エアバッグ本体20の展開ストローク(衝撃吸収ストローク)を拡大させることができる。
【0032】
本実施例のエアバッグ本体20の内部には、2つの規制テザー部材30が取り付けられている。各規制テザー部材30は、一定の幅を有する細長くて扁平なベルト状の基布(ベルト部材)により形成されており、折り曲げることが可能な柔軟性を備えている。各規制テザー部材30は、規制テザー部材30における長さ方向の一端部と他端部とが、
図3及び
図4に示すように、エアバッグ本体20の中間基布23(側面部28)の互いに異なる位置の内面に、縫製によって固定されている。
【0033】
規制テザー部材30の一端部と他端部とがエアバッグ本体20の中間基布23に固定されることによって、エアバッグ本体20が膨張展開したときに、それぞれの規制テザー部材30は、前後方向に対して直交する方向に沿ってまっすぐに延ばされ、それによって、それぞれの規制テザー部材30には長さ方向に沿った張力が生じる。このような規制テザー部材30の張力によって、膨張展開したエアバッグ本体20の膨張形状を、前後方向に対して直交する方向に規制することができる。
【0034】
本実施例において、2つの規制テザー部材30は、膨張展開したエアバッグ10の正面視(
図3)又は背面視において、エアバッグ本体20の中央部で互いに交差して+字状を示すようエアバッグ本体20の内部に取り付けられている。すなわち、上述した正面視(
図3)又は背面視において、一方の規制テザー部材30は上下方向に沿って配されるとともに、他方の規制テザー部材30は左右方向に沿って配される。また、各規制テザー部材30は、規制テザー部材30の表面(ベルト表面)及び裏面(ベルト裏面)が前後方向に向くように配されている。
【0035】
2つの規制テザー部材30が、上述のようにエアバッグ本体20の内部に設けられていることにより、エアバッグ本体20を、円形又は略円形の形状に安定して膨張展開させることができる。更に、エアバッグ本体20が膨張展開したときに、エアバッグ本体20の展開ストロークを前後方向により拡大させることができる。また、エアバッグ本体20の乗員対向面部(前面部)26を平らに形成させ易くして、エアバッグ本体20で乗員(例えば運転者)を安定して拘束できる。それによって、エアバッグ装置の乗員拘束性能を高めることができる。
【0036】
なお本発明において、規制テザー部材30をエアバッグ本体20の内面に固定する方法及び手段は特に限定されない。また、エアバッグ本体20の内部に設置する規制テザー部材30の設置数、設置位置、設置方向等も限定されるものではなく、エアバッグ本体20を膨張展開させる形状やエアバッグ装置の設置位置等に応じて変更可能である。
【0037】
例えば本実施例において、2つの規制テザー部材30は、
図4に示したように中間基布23の内面に縫製により固定されているが、本発明では、例えば
図5に本発明の第1変形例に係るエアバッグ10aの断面を模式的に示すように、2つの規制テザー部材30のそれぞれの一端部及び/又は他端部は、エアバッグ10aの中間基布23と第1基布21との間に挟まれた状態で、中間基布23及び第1基布21に縫着されていてもよい。また本発明では、エアバッグ本体の内部に、1つの規制テザー部材又は3つ以上の規制テザー部材が配されていてもよい。
【0038】
更に、規制テザー部材は、本実施例のように膨張展開したエアバッグ本体の前後方向に対して直交する方向ではなく、例えば、前後方向に交差する方向(言い換えると、前後方向に対して0°より大きく90°よりも小さい角度で傾斜する傾斜方向)に沿って配されていてもよく、また、前後方向に沿って配されていてもよい。また本発明では、規制テザー部材を設けずにエアバッグが形成されていてもよい。
【0039】
次に、上述のような本実施例のエアバッグ10を製造する方法について説明する。
本実施例のエアバッグ10を製造するために、先ず、エアバッグ本体20を形成する第1基布21、第2基布22、及び中間基布23を準備し、第1基布21、第2基布22、及び中間基布23を縫い合わせる本体側縫製加工を行う。
【0040】
この本体側縫製加工では、長方形の中間基布23の長い辺を形成する一対の側縁部を、円形(又は略円形)に形成された第1基布21の外周縁部と第2基布22の外周縁部とにそれぞれ縫合することによって、袋状のエアバッグ本体20を形成する。なお本発明において、本体側縫製加工の具体的な方法及び手段は特に限定されない。
【0041】
続いて、得られた袋状のエアバッグ本体20の中間基布23に対し、2つの規制テザー部材30を縫い付けるテザー取付縫製加工を行う。更に得られたエアバッグ本体20の内面と外面とを、第2基布22に設けた挿通開口部24を利用して反転させる(裏返す)。これにより、
図1に示した本実施例のエアバッグ10を製造できる。
なお本発明において、テザー取付縫製加工の具体的な方法及び手段も特に限定されない。また、このテザー取付縫製加工は、本実施例のように本体側縫製加工の後に行われてもよく、又は、本体側縫製加工の前に行われてもよい。
【0042】
本実施例のエアバッグ10では、上述したように、エアバッグ本体20が第1基布21、第2基布22、及び中間基布23の3枚の基布によって形成されているため、従来のエアバッグを製造する一般的な製造方法及び製造設備を利用して、本実施例のエアバッグ10を製造できる。このため、本実施例のエアバッグ10は、例えば複雑な形状を有する特許文献1のエアバッグに比べて、容易に、また低コストで製造可能である。
【0043】
更に、上述のようにして製造された本実施例のエアバッグ10では、エアバッグ本体20が所定の手順で折り畳まれるとともに、折り畳まれたエアバッグ本体20にラッピング部材が被せられることによって、エアバッグ本体20の折り畳まれた形態が保持される。
【0044】
その後、エアバッグ本体20に設けた挿通開口部24にインフレータの一部を挿通させるとともに、エアバッグ本体20及びインフレータを保持部材に取り付けて保持することによって、本実施例のエアバッグ10を有するエアバッグ装置が製造される。更に、製造されたエアバッグ装置は、例えばステアリングホイールのセンターパッドに装着される。
【0045】
そして、ステアリングホイールに装着されたエアバッグ装置は、例えば自動車が衝突したとき等に衝撃を感知することにより、エアバッグ装置のインフレータを作動させて、インフレータから、エアバッグ10のエアバッグ本体20の内部にガス(気体)が供給されるため、エアバッグ10(エアバッグ本体20)を略円柱の形状に膨張展開させることができる。
【0046】
このとき、本実施例のエアバッグ10では、上述したようにエアバッグ本体20の中間基布23の全体に、織布のバイアス方向が中間基布23の連結方向に沿っているバイアス部23aが設けられている。このため、本実施例のエアバッグ10は、例えば中間基布(織布)にバイアス部が設けられていないエアバッグに比べて、中間基布23の連結方向に沿った弾性率を小さくでき、中間基布23を連結方向に伸長し易く形成できる。
【0047】
従って、本実施例のエアバッグ10によれば、エアバッグ本体20を膨張展開させたときに、エアバッグ本体20の内圧によって第1基布21及び第2基布22の前後方向における伸びと、第1基布21及び第2基布22に中間基布23を縫合する縫製部の伸びとに加えて、中間基布23のバイアス部23aの伸びも得ることができるため、膨張展開させたエアバッグ本体20の展開ストロークを効果的に大きくすることができる。
【0048】
更に、本実施例のエアバッグ10は、エアバッグ本体20内に配される2つの規制テザー部材30で、上述したようにエアバッグ本体20の膨張形状を、前後方向に対して直交する方向で規制できる。このようにエアバッグ本体20の膨張形状を規制することによって、エアバッグ本体20の展開ストロークを更に前後方向に拡大させることが可能となる。
【0049】
上述のように、本実施例のエアバッグ10は、エアバッグ本体20を膨張展開させたときにエアバッグ本体20を前後方向に長く伸ばし易くすることができるため、エアバッグ10に乗員をより迅速に接触させて、乗員をエアバッグ10でより早い段階で拘束でき、更に、エアバッグ10の衝撃吸収特性を高めることができる。これにより、自動車の衝突時に乗員をより安全に保護することが可能となり、また、乗員が受ける衝撃を小さく抑えることができる。
【0050】
更に、本実施例のエアバッグ10では、中間基布23のバイアス部23aを利用してエアバッグ本体20の展開ストロークを大きくできるため、例えばエアバッグ本体20を大型化しなくても、大きな衝撃吸収ストロークを容易に得ることができる。このため、本実施例のエアバッグ10では、エアバッグ本体20のコンパクト化や軽量化を図ることも期待できる。
【0051】
なお、上述した実施例のエアバッグ10において、エアバッグ本体20は、エアバッグ10が膨張展開したときに略円柱の形状を有するように形成されている。しかし本発明において、エアバッグ本体の形状は、上述した実施例のような略円柱に限定されるものではなく、変更することが可能である。
【0052】
また、上述した実施例において、エアバッグ本体20の第1基布21及び第2基布22は、第1基布21と第2基布22との間に中間基布23が縫合されているため、エアバッグ10が膨張展開したときに互いに離間する位置に配される。しかし本発明において、エアバッグ本体は、例えば第1基布の外周縁部の一部と第2基布の外周縁部の一部とを直接縫い合わせるとともに、第1基布及び第2基布の外周縁部の残りの部分に中間基布を縫い合わせることによって形成されていてもよい。
【0053】
更に、上述した実施例のエアバッグ10においては、エアバッグ本体20を形成する中間基布23の全体に、上述したバイアス部23aが設けられている。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、中間基布のバイアス部は、中間基布の少なくとも一部の範囲に設けられていればよい。すなわち、本発明では、車両におけるエアバッグ装置の装着位置やエアバッグの膨張展開形状等に応じて、中間基布に設けるバイアス部の位置、大きさ、範囲等を、例えば
図6~
図8に示すように適宜変更することが可能である。なお、
図6~
図8では、各中間基布42,43,44の経糸の方向及び緯糸の方向を模式的に示している。
【0054】
例えば本発明の第2変形例に係るエアバッグの中間基布42を
図6に模式的に示すように、バイアス方向が中間基布42の連結方向に沿っているバイアス部42aは、中間基布42における前後方向(連結方向)の一部の範囲に、中間基布42の周方向(連結方向に直交した直交方向)に沿って設けられていてもよい。
【0055】
また、例えば
図7に本発明の第3変形例を示すように、中間基布43のバイアス部43aは、中間基布43における周方向の一部の範囲に、前後方向に沿って設けられていてもよい。更に、
図8に本発明の第4変形例を示すように、中間基布44のバイアス部44aは、中間基布44における前後方向の一部の範囲に周方向に沿って設けられているとともに、周方向の一部の範囲に前後方向に沿って設けられていてもよい。
【0056】
図6~
図8に示したように中間基布42,43,44の一部の範囲のみにバイアス部42a,43a,44aが設けられていることによって、エアバッグを膨張展開させたときに、バイアス部42a,43a,44aを設けた部分において、エアバッグ本体を前後方向に伸長させ易くすることができるため、エアバッグの展開ストロークを増大させることができる。
【0057】
このため、第2変形例(
図6)~第4変形例(
図8)の中間基布42~44を有するエアバッグにおいても、実施例で説明したエアバッグ10と同じように、自動車の衝突時に乗員をより安全に保護できる。なお、バイアス部を一部の範囲のみに有する中間基布は、例えばバイアス部が設けられた織布と、バイアス部が設けられていない織布とを組み合わせて繋ぎ合わせることによって、容易に作製可能である。