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特開2024-7898走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007898
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240112BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240112BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240112BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01C21/34
G05D1/02 W
B60W30/10
G08G1/0969
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109290
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洸一
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA01
2F129BB03
2F129BB04
2F129DD20
2F129DD32
2F129EE02
2F129EE52
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF57
3D241BA11
3D241BA55
3D241BB24
3D241BC01
3D241BC02
3D241CA19
3D241CE02
3D241CE04
3D241DB20Z
5H181AA07
5H181BB04
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF22
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB02
5H301BB03
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG14
5H301GG16
5H301HH01
5H301HH02
5H301HH15
(57)【要約】
【課題】曲線を有する走行経路を容易に作成することができる走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムを提供する。
【解決手段】建設機械の走行経路を生成する走行経路生成装置2Aであって、道路または河川の線形データを取得する線形データ等取得部21と、前記線形データに基づいて前記走行経路を生成する走行経路生成部23とを備える。前記線形データには、道路または河川の延在方向の基準線を示す基準線形が含まれており、前記走行経路は、前記建設機械が通過する通過点における座標の集合で表される。走行経路生成部23は、前記基準線形上に所定の間隔で通過基準点を設定する通過基準点設定部24と、前記基準線形と平行な一つ以上の車線を生成する車線生成部25と、前記通過基準点に対応する前記車線上の位置に前記通過点を生成する通過点生成部26とを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の走行経路を生成する走行経路生成装置であって、
道路または河川の線形データを取得する線形データ取得部と、
前記線形データに基づいて前記走行経路を生成する走行経路生成部と、を備え、
前記線形データには、道路または河川の延在方向の基準線を示す基準線形が含まれており、
前記走行経路は、前記建設機械が通過する通過点における座標の集合で表され、
前記走行経路生成部は、
前記基準線形上に所定の間隔で通過基準点を設定する通過基準点設定部と、
前記基準線形と平行な一つ以上の車線を生成する車線生成部と、
前記通過基準点に対応する前記車線上の位置に前記通過点を生成する通過点生成部と、を有する、
ことを特徴とする走行経路生成装置。
【請求項2】
前記基準線形は、直線、円曲線、および緩和曲線を用いて定義されており、
前記通過点生成部は、前記基準線形に対する垂線であって前記通過基準点を通る垂線と、前記車線との交点を前記通過点として求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項3】
前記走行経路は、複数の車線で構成されており、
車線変更時の走行経路である車線変更経路を生成する車線変更経路生成部を備え、
前記車線変更経路生成部は、車線変更前に走行していた変更前車線の終点を始点とし、車線変更後に走行する変更後車線の前記通過点であって前記変更前車線の終点に対応する以外のものを終点とする前記車線変更経路を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項4】
前記通過点生成部は、前記車線の識別情報と、前記車線内での前記通過点の識別情報と、前記通過点の座標と、を関連付けた情報を走行経路データとして生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行経路生成装置。
【請求項5】
建設機械の走行経路を生成する走行経路生成方法であって、
道路または河川の線形データを取得する線形データ取得ステップと、
前記線形データに基づいて前記走行経路を生成する走行経路生成ステップと、を備え、
前記線形データには、道路または河川の延在方向の基準線を示す基準線形が含まれており、
前記走行経路は、前記建設機械が通過する通過点における座標の集合で表され、
前記走行経路生成ステップは、
前記基準線形上に所定の間隔で通過基準点を設定する通過基準点設定ステップと、
前記基準線形と平行な一つ以上の車線を生成する車線生成ステップと、
前記通過基準点に対応する前記車線上の位置に前記通過点を生成する通過点生成ステップと、を有する、
ことを特徴とする走行経路生成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の走行経路生成方法をコンピュータに実行させるための走行経路生成プログラム。
【請求項7】
請求項1に記載の走行経路生成装置と、
前記走行経路生成装置によって生成された前記走行経路に基づいて自動走行する建設機械と、を備え、
前記建設機械は、前記通過点を目標点とすることで、前記通過点を順番に通過しながら走行する、
ことを特徴とする自動化施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動ローラにセンサ類を搭載させて、転圧エリアに設定された走行経路に沿って振動ローラを走行させることにより施工を行う技術が開発されている(例えば、特許文献1ないし特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-067126号公報
【特許文献2】特開2016-126625号公報
【特許文献3】特開2017-204089号公報
【特許文献4】特開2019-218817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、転圧エリア内に直線状の走行経路を設定し、振動ローラが設定された走行経路を自動で走行するものであった。そのため、曲線を有する対象(例えば、道路など)を自動走行させる場合、CAD(Computer Aided Design)上で道路曲線を再現して走行経路を作成する必要があり、走行経路の作成に非常に時間を要していた。例えば、人間がCAD図面上から走行経路の座標を取得して走行経路データを作成するなどしていた。
このような観点から、本発明は、曲線を有する走行経路を容易に作成することができる走行経路生成装置、走行経路生成方法、走行経路生成プログラムおよび自動化施工システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る走行経路生成装置は、建設機械の走行経路を生成する走行経路生成装置である。この走行経路生成装置は、道路または河川の線形データを取得する線形データ取得部と、前記線形データに基づいて前記走行経路を生成する走行経路生成部とを備える。
前記線形データには、道路または河川の延在方向の基準線を示す基準線形が含まれており、前記走行経路は、前記建設機械が通過する通過点における座標の集合で表される。
前記走行経路生成部は、前記基準線形上に所定の間隔で通過基準点を設定する通過基準点設定部と、前記基準線形と平行な一つ以上の車線を生成する車線生成部と、前記通過基準点に対応する前記車線上の位置に前記通過点を生成する通過点生成部と、を有する。
本発明に係る走行経路生成装置においては、道路または河川の線形データに含まれる基準線形に基づいて走行経路を生成する。ここで、線形データは、ICT施工で用いられる一般的な設計データであるので、施工者にとって入手が容易な情報である。そのため、時間をかけずに走行経路を作成することができる。また、本発明に係る走行経路生成装置によれば、走行経路が道路または河川の線形に追従したものとなるので、施工管理者が道路または河川の線形を再現して作成せずとも、自動走行に適した走行経路を生成可能である。
【0006】
前記基準線形は、直線、円曲線、および緩和曲線を用いて定義されており、前記通過点生成部は、前記基準線形に対する垂線であって前記通過基準点を通る垂線と前記車線との交点を前記通過点として求めてもよい。
このようにすると、車線が多数ある場合であっても通過点を容易に生成することが可能である。また、円曲線および緩和曲線に関して、中心に近い内側の車線は、中心から遠い外側の車線に比べて通過点間の距離が短くなる。そのため、外側の車線に比べて急な曲線である内側の車線を、建設機械が滑らかに走行することが可能である。
【0007】
また、前記走行経路は、複数の車線で構成されており、車線変更時の走行経路である車線変更経路を生成する車線変更経路生成部を備えてもよい。前記車線変更経路生成部は、例えば、車線変更前に走行していた変更前車線の終点を始点とし、車線変更後に走行する変更後車線の前記通過点であって前記変更前車線の終点に対応する以外のものを終点とする前記車線変更経路を生成する。このようにすると、車線変更を適切に行うことが可能である。
また、前記通過点生成部は、前記車線の識別情報と、前記車線内での前記通過点の識別情報と、前記通過点の座標と、を関連付けた情報を走行経路データとして生成する。
【0008】
本発明に係る走行経路生成方法は、建設機械の走行経路を生成する走行経路生成方法である。この走行経路生成方法は、道路または河川の線形データを取得する線形データ取得ステップと、前記線形データに基づいて前記走行経路を生成する走行経路生成ステップとを備える。
前記線形データには、道路または河川の延在方向の基準線を示す基準線形が含まれており、前記走行経路は、前記建設機械が通過する通過点における座標の集合で表される。
前記走行経路生成ステップは、前記基準線形上に所定の間隔で通過基準点を設定する通過基準点設定ステップと、前記基準線形と平行な一つ以上の車線を生成する車線生成ステップと、前記通過基準点に対応する前記車線上の位置に前記通過点を生成する通過点生成ステップと、を有する。
【0009】
本発明に係る走行経路生成プログラムは、上記の走行経路生成方法をコンピュータに実行させるための走行経路生成プログラムである。
本発明に係る走行経路生成方法および走行経路生成プログラムにおいては、道路または河川の線形データに含まれる基準線形に基づいて走行経路を生成する。ここで、線形データは、ICT施工で用いられる一般的な設計データであるので、施工者にとって入手が容易な情報である。そのため、時間をかけずに走行経路を作成することができる。また、本発明に係る走行経路生成方法および走行経路生成プログラムによれば、走行経路が道路または河川の線形に追従したものとなるので、施工管理者が道路または河川の線形を再現して作成せずとも、自動走行に適した走行経路を生成可能である。
【0010】
本発明に係る自動化施工システムは、上記の走行経路生成装置と、前記走行経路生成装置によって生成された前記走行経路に基づいて自動走行する建設機械とを備える。前記建設機械は、前記通過点を目標点とすることで、前記通過点を順番に通過しながら走行する。
本発明に係る自動化施工システムにおいては、道路または河川の線形データに含まれる基準線形に基づいて走行経路を生成する。そのため、時間をかけずに走行経路を作成することができる。また、本発明に係る走行経路生成装置によれば、走行経路が道路または河川の線形に追従したものとなるので、施工管理者が道路または河川の線形を再現して作成せずとも、自動走行に適した走行経路を生成可能である。その結果、施工の自動化を実現した上で、事前の準備が容易であるとともに従来よりもコストを低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、曲線を有する走行経路を容易に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る自動化施工システムの全体図である。
図2】走行経路ファイルを生成する処理の流れ、および、自動走行を実現する処理の流れを示した図である。
図3】道路線形データを説明するための図であり、(a)は道路線形データのイメージであり、(b)は道路線形データに基づいて作成される走行経路を説明するための図である。
図4】走行経路データを説明するための図であり、(a)は走行経路データのイメージであり、(b)は走行経路データのフォーマットの例示である。
図5】本発明の実施形態に係る走行経路生成装置の機能構成図である。
図6】走行経路生成画面の例示である。
図7】通過基準点の設定処理を説明するための図である。
図8】車線の生成処理を説明するための図である。
図9】通過点の生成処理を説明するための図である。
図10】車線変更動作を説明するための図である。
図11】本発明の実施形態に係る振動ローラの外観図である。
図12】振動ローラのアーティキュレート機構の概略図であり、(a)は直進時の状態を示し、(b)は旋回時の状態を示す。
図13】振動ローラの自動制御を実現する自動制御システムの概略図である。
図14】本発明の実施形態に係る走行経路生成方法の工程を示すフローチャートの例示である。
図15】本発明の実施形態に係る自動走行方法の工程を示すフローチャートの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
≪実施形態に係る自動化施工システムの構成≫
実施形態に係る自動化施工システム100の全体図を図1に示す。図1に示す自動化施工システム100は、建設機械を自動走行させて施工現場の地面を締め固めるものである。本実施形態では、施工現場として道路の舗装工事を想定して説明する。自動化施工システム100は、施工現場を自動走行しながら地面を転圧する振動ローラ1と、自動化施工システム100を管理する管理システム2と、を備えて構成されている。管理システム2は、例えば、一つまたは複数のPC(Personal Computer)を備える。なお、振動ローラ1は、建設機械の一例である。
【0015】
振動ローラ1および管理システム2は、無線通信を用いて通信可能である。また、振動ローラ1は、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。なお、自動化施工システム100の構成はここで示すものに限定されず、例えば、振動ローラ1が管理システム2の一部の機能を有していてもよい(つまり、管理システム2を含めて振動ローラ1であってもよい)。
【0016】
<測位用衛星>
測位用衛星3は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を、振動ローラ1に対して周期的に送信する。測位用衛星3は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。測位用衛星3から送信される情報は、振動ローラ1において、例えば、位置(緯度、経度、標高)の制御に使用される。なお、測位用衛星3に代えてトータルステーションやSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)を用いて振動ローラ1の位置の制御を行ってもよい。つまり、振動ローラ1の位置を求める方法は限定されず、様々な技術を用いることができる。
【0017】
<管理システム>
図2に示すように、管理システム2は、走行経路生成装置2Aと、自動走行支援装置2Bとを主に備える。図2は、走行経路ファイルを生成する処理の流れ、および、自動走行を実現する処理の流れを示した図である。なお、走行経路生成装置2Aと自動走行支援装置2Bとが一つの装置として構成されてもよい。
走行経路生成装置2Aは、振動ローラ1が走行する経路(走行経路)を生成する装置である。走行経路生成装置2Aが有する走行経路生成に関する機能は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)等に格納された走行経路生成プログラムを実行処理することにより実現される。走行経路生成装置2Aは、道路線形ファイルを読み込み、走行経路ファイルに生成して、当該走行経路ファイルを出力する。
【0018】
道路線形ファイルには、道路の線形に関する情報(道路線形データ)が含まれており、例えば「LandXML形式」のデータである。LandXMLは、土木、測量業界におけるオープンなデータ交換フォーマットである。道路線形データは、ICT施工で用いられる一般的な設計データである。
走行経路ファイルには、振動ローラ1が走行する走行経路に関する情報(走行経路データ)が含まれており、例えば「CSV(Comma Separated Value)形式」のデータである。
自動走行支援装置2Bは、振動ローラ1の自動走行を支援する装置である。自動走行支援装置2Bが有する自動走行支援に関する機能は、例えばCPUがROM等に格納された自動走行支援プログラムを実行処理することにより実現される。自動走行支援装置2Bは、走行経路ファイルを読み込み、振動ローラ1を自動走行させるために必要な情報を作成し、振動ローラ1に送信する。このようにして、自動走行支援装置2Bは、振動ローラ1による自動走行を間接的に制御することで、振動ローラ1による自動走行を支援する。
【0019】
図3を参照して、道路線形データについて説明する。図3は、道路線形データを説明するための図であり、(a)は道路線形データのイメージであり、(b)は道路線形データに基づいて作成される走行経路を説明するための図である。
道路線形データには、道路の基準線を示す情報(「基準線形」と称する)が含まれる。道路の基準線は、道路の延在方向(縦断方向)に沿う仮想線であり、道路の任意の位置に設定することが可能である。図3(a)に示すように、本実施形態では、基準線として道路の中心線を採用し、基準線形は道路の中心線形CLである。中心線形CLは、例えば、直線、円曲線、緩和曲線を用いて定義される。二次元を想定した場合、中心線形CLは、道路の平面的な線形を表す平面線形であってよい。本実施形態では、説明を簡単にするために二次元を想定する。
【0020】
走行経路生成装置2Aは、図3(b)に示すように、中心線形CLに基づいて走行経路を生成する。走行経路は、一つ以上の車線で構成され、道路内に設定された走行範囲内に生成される。走行範囲は、道路左端から道路右端までの間の一部または全部に設定される。車線は、転圧路の延在方向(縦断方向)に沿う仮想線であり、振動ローラ1の自動走行の目標となる走行ルートである。ここで、転圧路は、振動ローラ1が走行することで転圧する領域を意味している。そのため、転圧路は所定の幅を持つことになる。車線は、転圧路の任意の位置に設定することが可能である。本実施形態では、車線として転圧路の中心線を採用する。振動ローラ1は、車線変更しつつ各々の車線上を往復することにより、走行範囲内を満遍なく走行する。車線同士の間隔は、車幅(特に、車輪幅)から重複幅を差し引いた距離とすることができ、例えば振動ローラ1の車幅が「2m」で重複幅が「50cm」の場合、車線同士の間隔は「1.5m」となる。
【0021】
図4を参照して、走行経路データについて説明する。図4は、走行経路データを説明するための図であり、(a)は走行経路データのイメージであり、(b)は走行経路データのフォーマットの例示である。
走行経路データは、振動ローラ1が通過する通過点における座標の集合で表される。図4(a)に示すように、通過点は、車線上に設定される。図4(a)では、四つの車線に亘る走行経路を示している。振動ローラ1が、通過点を順番に通過することによって、車線に沿った走行を実現する。同一車線上の通過点間の距離は、施工条件によって適宜決定でき、例えば「2m」として設定できる。
【0022】
図4(b)に示すように、走行経路データは、例えば通過点の識別情報と、位置情報とで構成される。図4(b)では、一つの行が一つの通過点の情報となっている。通過点の識別情報は、車線番号と、車線内番号とで構成される。車線番号は、車線の識別情報である。車線内番号は、車線内での通過点の識別情報である。位置情報は、通過点のx座標と、y座標とで構成される。ここでのxy座標系は、例えば、施工現場に設定されるローカル座標系である。このように、本実施形態での走行経路データは、走行時に通過する通過点の座標の羅列を、車線ごとに区切って記述したものである。なお、通過点の識別情報として、車線番号と車線内番号とを併せた通し番号を用いてもよい。
【0023】
図5を参照して、走行経路生成装置2Aについて説明する。図5は、走行経路生成装置2Aの機能構成図である。
走行経路生成装置2Aは、線形データ等取得部21と、走行範囲設定部22と、走行経路生成部23とを備える。
線形データ等取得部21は、他の装置とのデータ通信、デバイスを介した入力などによって、道路線形データを取得する。線形データ等取得部21は、道路線形データを格納する記憶装置から該当の道路線形データを取得してもよい。道路線形データを格納する記憶装置は、自身が有するものであってもよい。つまり、道路線形データの取得方法は特に限定されない。
【0024】
線形データ等取得部21は、振動ローラ1が自動走行する走行範囲、振動ローラ1のサイズに関する情報、自動走行における走行条件の情報などを取得する。線形データ等取得部21は、例えば、図6に示す走行経路生成画面600を走行経路生成装置2Aの表示部に表示する。図6は、走行経路生成画面の例示である。走行経路生成画面600は、例えば、線形データ表示領域610と、走行範囲情報入力領域620と、走行条件情報入力領域630と、生成ボタン640とを備える。線形データ等取得部21は、走行範囲情報入力領域620および走行条件情報入力領域630に入力された情報を取得し、必要に応じて取得した情報を他の機能に渡す。
【0025】
線形データ表示領域610は、取得した道路線形データを表示する領域である。線形データ表示領域610には、例えば二次元モデル化した道路線形データが表示される。なお、道路線形データのうち、走行経路の生成に必要ない情報は表示されなくてよい。また、線形データ表示領域610には、例えば三次元モデル化した道路線形データを表示させてもよい。
走行範囲情報入力領域620は、走行範囲に関する情報が入力される領域である。施工管理者は、走行範囲情報入力領域620に、始点位置、終点位置、左端、右端の情報を入力する。始点位置および終点位置は、予め決められた基準点からの距離である(キロポスト(距離標)に対応する値)。左端および右端は、中心線形CLからの距離(オフセット値)である。左右方向は、例えば、基準点から遠ざかる方向(始点から終点に向かう方向)に対してのものである。
【0026】
走行条件情報入力領域630は、走行条件に関する情報が入力される領域である。施工管理者は、走行条件情報入力領域630に、車幅、重複幅、通過点の点間距離の情報を入力する。車幅は、自動走行する振動ローラ1の値である。重複幅は、隣接する転圧路が重なる領域の横断方向の幅である。通過点の点間距離は、同一車線上での通過点の間隔である。
生成ボタン640は、施工管理者が走行経路生成装置2Aに対して走行経路の生成を指示するボタンである。施工管理者は、走行範囲情報入力領域620および走行条件情報入力領域630に入力した状態で、生成ボタン640を押下する。
【0027】
図5に示す走行範囲設定部22は、振動ローラ1の走行範囲を設定する。走行範囲設定部22は、走行経路生成画面600の走行範囲情報入力領域620に入力された情報に基づいて走行範囲を設定する。本実施形態における走行範囲設定部22は、距離程範囲と中心線形CLからの横断方向位置として走行範囲を定義する。例えば、基準点からの中心線形CL上の距離が「10m~47m」の「37m区間」、中心線形CLから左に「6m~1m」の「5m幅」を走行範囲として設定する。なお、中心線形CLと重なった状態で走行範囲を設定してもよい。走行範囲設定部22によって設定される走行範囲のイメージを図6に示す。走行範囲設定部22は、図6に示すように、二次元モデル化した道路線形データに関連付けて走行範囲を表示してもよい。このようにすることで、施工管理者は、走行範囲の位置や領域を一目で把握することが可能である。
【0028】
図5に示す走行経路生成部23は、振動ローラ1の走行経路を生成する。走行経路生成部23は、中心線形CL、並びに、走行範囲情報入力領域620および走行条件情報入力領域630に入力された情報に基づいて走行経路を生成する。本実施形態における走行経路生成部23は、通過基準点設定部24と、車線生成部25と、通過点生成部26と、車線変更経路生成部27とを備える。
通過基準点設定部24は、通過点を生成する基になる点(「通過基準点PC」と称する)を設定する。通過基準点PCは、中心線形CL上に所定の間隔で設定される。図7を参照して、通過基準点PCの設定処理の一例について説明する。図7は、通過基準点PCの設定処理を説明するための図である。
【0029】
図7に示すように、通過基準点設定部24は、始点ASから終点AGに至るまで、点間距離Lごとに通過基準点PCを設定する。通過基準点PCは、通過点の基準になる情報であり、通過点は通過基準点PCに基づいて生成される。本実施形態では、始点ASおよび終点AGも通過基準点PCの役割を担うので、始点ASおよび終点AGは通過基準点PCに含まれる。図7では、「(AG-AS)/L」が割り切れない場合を想定しているので、終点AGとその隣りの通過基準点PCとの間隔が、点間距離Lよりも短くなっている。なお、「(AG-AS)/L」が割り切れない場合に、点間距離Lを定義し直して(入力された点間距離Lを調整して)、通過基準点PCの間隔を等距離としてもよい。例えば、(AG-AS)を点間距離Lで割った数の小数以下繰上げした整数で、(AG-AS)を割った数を新たな点間距離Lと定義し直すことで、通過基準点PCの間隔を等距離とする方法を取ることができる。振動ローラ1がゆるやかな曲線を走行する場合、例えば点間距離「L=5.0m」とし、より急な曲線を走行する場合、例えば点間距離「L=2.0m」などとする。「AS=10.0m」、「AG=47.0m」、「L=5.0m」を想定した場合、図7に示すように、通過基準点PCは、始点AS、終点AGを含めて9点となる。なお、通過基準点PCの間隔を等距離とする場合には、(AG-AS)/L=(47.0-10.0)/5.0=7.4となるので、小数点以下を繰り上げした「8」で37.0 m(=AG-AS)を割った数(=4.625m)を、新たな点間距離Lと定義する。
【0030】
図5に示す車線生成部25は、走行経路を構成する車線を生成する。車線生成部25は、中心線形CLと平行な一つ以上の車線を生成する。車線は、外側から内側へ、左側から右側へ、など必要に応じた方法で生成してよい。図8を参照して、車線の生成処理の一例について説明する。図8は、車線の生成処理を説明するための図である。図8に示すように、ここでは、左側から右側へ車線を順番に生成することにし、左側の車線から順番に符号l1,l2,l3,l4を付すことにする。つまり、図8の例示では、四つの車線が走行範囲内に並べて生成される。車線は、走行範囲を隙間なく転圧できるように生成される。そのため、図8に示すように、走行範囲の左右方向の幅「BR-BL」を網羅するように車線を並べて生成する必要がある。BLは走行範囲の左端であり、BRは走行範囲の右端である。
【0031】
車線は、通常では振動ローラ1の中心を基準として生成されるために、走行範囲の左端BLと最左端の車線l1の位置とは一致しない(図8参照)。最左端の車線l1の位置は、「BL+WB/2(WBは車幅)」となる。同様に、最右端の車線l4の位置は、「BR-WB/2」となる。車線生成部25は、最左端の車線l1から順番に「WB-WW」ごとに車線を生成する。図8では、「(BR-BL-WB)/(WB-WW)」が割り切れない場合を想定しているので、最右端の車線l4とその一つ左側の車線l3との間隔が「WB-WW」よりも短くなっている。なお、「(BR-BL-WB)/(WB-WW)」が割り切れない場合に、重複幅WWを定義し直して(入力された重複幅WWを調整して)、車線の間隔を等距離としてもよい。例えば、(BR-BL-WB)を(WB-WW)で割った数の小数以下繰上げした整数で、(BR-BL-WB)を割った数を(WB-WW)に代えて車線の間隔とすることもできる。
【0032】
「WB=1.5m」、「WW=0.1m」、「BL=-6.0m」、「BR=-1.0m」を想定した場合(BL、BRは、中心線形CLの右側を正、左側を負と定義)、最左端の第1の車線l1は、「BL+WB/2=-6.0+1.5/2=-5.25」となる(すなわち、中心線形CLから左側へ5.25mの位置である)。また、最右端の第4の車線l4は、「BR-WB/2=-1.0-1.5/2=-1.75」となる(すなわち、中心線形CLから左側へ1.75mの位置である)。また、第1の車線l1から「WB-WW=1.5-0.1=1.4m」ごとに第2の車線l2および第3の車線l3を生成する(すなわち、中心線形CLから左側へ3.85m、2.45mの位置である)。その結果、車線l1~l4は、中心線形CLから左側{5.25,3.85,2.45,1.75m}へ離れた位置に生成される。車線l3と車線l4の間隔は「0.7m」となり、その他の車線に比べて当該間隔だけ狭くなっている(車線l3と車線l4の間の重複幅が大きくなる)。
【0033】
図5に示す通過点生成部26は、通過基準点PCに対応する車線上の位置に通過点を生成する。図9を参照して、通過点の生成処理の一例について説明する。図9は、通過点の生成処理を説明するための図である。
図9に示すように、本実施形態における通過点生成部26は、中心線形CL上の通過基準点PCを、各々の車線l1~l4に転写する。例えば、中心線形CLに対する垂線VCであって各々の通過基準点PCを通るものを描き、垂線VCと車線l1~l4との交点を通過点Plとして求める。中心線形CLは、幾何的に定義されているので(例えば、直線、円曲線、緩和曲線を用いて定義されているので)、垂線VCは計算により求めることが可能である。その結果、各々の車線上には通過基準点PCと同じ数の通過点Plが生成される(図9では合計で36個の通過点Plが生成されている)。ここで求めた通過点Plのまとまりが走行経路データとなり、通過点生成部26は、通過点Plのまとまりを決められた形式(例えば、CSV形式)にし、走行経路ファイルとして出力する。本実施形態では、図4(b)に示すように、通過点Plを車線ごとにまとめた集合(Pl1,Pl2,Pl3,Pl4)を作成し、当該集合に対して車線番号および車線内番号を付し、位置情報(x座標、y座標)を関連付けたものを出力する。
【0034】
図5に示す車線変更経路生成部27は、車線変更時の走行経路(車線変更経路)を生成する。図10を参照して、車線変更経路の生成処理の一例について説明する。図10は、車線変更動作を説明するための図である。図10では、説明を簡単にするために、通過点Plに対して「1~36」までの数字を付している。この数字は、右側の車線に進むにつれて大きくなっており、また、基準点から遠ざかる(始点から終点に向かう)につれて大きくなっている。
【0035】
車線変更経路生成部27は、第nの車線から第n+1の車線へ車線変更する場合、第nの車線の終点を第nの車線から退出する退出点とし、第n+1の車線の終点から予め決められた点間(例えば、3点間)だけ戻った通過点Plを、第n+1の車線に進入するための進入点とする。例えば、図10に示すように、第1の車線l1から第2の車線l2へ車線変更する場合の車線変更を想定すると、第1の車線l1の終点である第9の通過点Plを退出点とし、第2の車線l2の終点から3点間だけ戻った第15の通過点Plを進入点とする。そして、車線変更経路生成部27は、退出点を始点とし、進入点を終点として結んだ経路を車線変更経路として生成する。つまり、進入点は、車線変更前に走行していた変更前車線の終点に対応する以外の通過点Plとなる。車線変更経路に関する情報は、走行経路データとは別に作成されてもよいし、走行経路データに車線変更経路に関する情報を含めてもよい。
【0036】
<振動ローラ>
図11を参照して、振動ローラ1の構成について説明する。振動ローラ1は、転圧を行う建設機械の一例である。振動ローラ1は、車体10と、車体10の前後に取り付けられた二つの鉄輪11,11と、車体10の下部に配置されたアーティキュレート機構12と、車体10の上部に設置された測位用アンテナ13および通信アンテナ14と、制御装置15と、機体情報取得手段S(図13参照)とで構成されている。振動ローラ1は、鉄輪11,11の回転方向を変更することで、前進および後進が可能である。
【0037】
車体10は、振動ローラ1の本体となるものである。車体10は、内部に図示しない駆動手段を収容する。以下では、「ローラの方位角G」といった場合には、車体10の方向を意味する。
鉄輪11は、図示しない振動を発生する装置を備え、振動しながら回転することで地面を転圧する。以下では、前側の鉄輪11を前輪11aと呼び、後側の鉄輪11を後輪11bと呼ぶ場合がある。
【0038】
アーティキュレート機構12は、振動ローラ1を旋回させるための機構であり、車体10の下部に設置される。アーティキュレート機構12は、前輪11aを回転自在に保持する前輪保持部12aと、後輪11bを回転自在に保持する後輪保持部12bと、前輪保持部12aおよび後輪保持部12bを連結するセンターピン12cと、前輪保持部12aと後輪保持部12bとの間に介設されるステアリングシリンダ(図示せず)とを備えている。制御装置15から進行方向を修正する制御指令(ステアリング角度θを制御指令角度とする制御指令)を受信すると、ステアリング角度θに応じてステアリングシリンダが伸縮する。そして、ステアリングシリンダが伸縮すると、センターピン12cを中心に前輪保持部12aおよび後輪保持部12bが屈折し、それに伴い前輪11aおよび後輪11bの方向が変化する。
【0039】
測位用アンテナ13は、測位用衛星3(図1参照)から発信される電波を受信するものである。具体的には、振動ローラ1の制御装置15は、測位用アンテナ13を介して測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報などを受信する。制御装置15は、測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報を用いて振動ローラ1の位置を計算する。
ここで、前輪11aに後輪11bが追従するというアーティキュレート機構12の特性を考慮して、自動走行制御を行う基準点を振動ローラ1が進んでいる側の鉄輪11の回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に設けることが好ましい。そのため、本実施形態では、振動ローラ1の位置を振動ローラ1が進んでいる側の鉄輪11の回転軸の中心位置の真上になるように演算により補正を行うことにする。つまり、振動ローラ1は、前後進を繰り返す往復走行により所定の回数だけ転圧を行うので、前進時には前輪11aが基準点となり、後進時には後輪11bが基準点となるように補正を行う。そして、振動ローラ1の制御を行う際に基準となる方向(基準方向)は、基準点を設定した側の鉄輪11(前輪11aまたは後輪11b)の向きθJとする。
【0040】
図12を参照して、振動ローラ1の自動走行制御を行う際の基準点および基準方向について説明する。図12は、振動ローラ1のアーティキュレート機構12の概略図であり、(a)は直進時の状態を示し、(b)は旋回時の状態を示す。振動ローラ1は、上記説明した通り前後進を行うことが可能であるが、ここでは前進する場合を想定して説明を行う。そのため、基準点としての振動ローラ1の位置は、前輪11aの回転軸の中心位置に補正される。なお、詳細は後記するが、振動ローラ1の車体10の向き(方位角G(deg))は、姿勢検出センサS1(図13参照)によって検出される。また、アーティキュレート機構12のステアリング角度θ(deg)は、ステア角度検出センサS3(図13参照)によって検出される。
【0041】
図12(a)に示すように、直進時(ステアリング角度θが0°の状態)では、前輪保持部12aおよび後輪保持部12bが進行方向に対して直線状になっているので、前輪11aおよび後輪11bの回転軸が平行になる。つまり、振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)と前輪11aの向きθJとは同じ方向になる。
一方、図12(b)に示すように、右旋回時(ステアリング角度θが0°でない状態)では、センターピン12cを中心にして前輪保持部12aが進行方向に対して右側に屈折し、それに伴い前輪11aの右側が後輪11bに近接する方向に傾斜する。左旋回時の場合も同様にして、センターピン12cを中心にして前輪保持部12aが進行方向に対して左側に屈折し、それに伴い前輪11aの左側が後輪11bに近接する方向に傾斜する。これにより、前輪11aおよび後輪11bが同じ軌跡を通過する。この場合、振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)と前輪11aの向きθJとは違う方向になる。旋回時における振動ローラ1の前輪11aの向きθJは、地面と前輪11aとの間の摩擦を無視した場合、振動ローラ1の方位角G(deg)にステアリング角度θ(deg)を加算(または減算)した値になる。
【0042】
なお、図示しないが、後進時における基準点は、後輪11bの回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に設定される。つまり、後進時においては、振動ローラ1の位置が後輪11bの回転軸の中心位置または回転軸の中心位置を通る鉛直線上に補正される。また、後進時における振動ローラ1の後輪11bの向き(基準方向)θJは、直進時,旋回時に関わらず振動ローラ1の方位角G(車体10の向き)の反対方向になる。
このようにして位置の補正を行うことにより、振動ローラ1の基準点の座標は、前進時の前輪11aの回転軸の中心位置または後進時の後輪11bの回転軸の中心位置である。そのため、自動走行の制御において、ステアリング動作に遅れが発生しにくい。なお、振動ローラ1の基準点はこれに限定されるものではなく、例えばセンターピン12cの位置またはセンターピン12cを通る鉛直線上に設けてもよい。
【0043】
図11に通信アンテナ14は、管理システム2との通信を行うものである。具体的には、振動ローラ1の制御装置15は、通信アンテナ14を介して管理システム2から走行経路や走行条件などの情報を受信する。また、制御装置15は、通信アンテナ14を介して管理システム2に対して振動ローラ1の機体情報を送信する。
【0044】
図13を参照して、機体情報取得手段Sの構成について説明する。図13は、振動ローラ1の自動制御を実現する自動制御システムM1の概略図である。機体情報取得手段Sは、姿勢検出センサS1と、速度検出センサS2と、ステア角度検出センサS3と、前方探査センサS4とで構成されている。
姿勢検出センサS1は、振動ローラ1の方位角G(deg)を検出するものである。姿勢検出センサS1は、例えば、ジャイロであって、車体10の内部に設置される。方位角G(deg)は、制御装置15に受け渡され、慣性航法(INS)を用いた現在位置の算出などに用いられる。なお、測位用衛星3から送信された情報に基づいて計算した位置情報は、姿勢検出センサS1のドリフトの補正に用いられてもよい。
【0045】
速度検出センサS2は、振動ローラ1が前進および後進する速度V(km/h)を検出するものである。速度検出センサS2は、例えば、ロータリーエンコーダであって、後輪11bに設置される。速度V(km/h)は、制御装置15に受け渡され、慣性航法(INS)を用いた現在位置の算出などに用いられる。
【0046】
ステア角度検出センサS3は、アーティキュレート機構12のステアリング角度θ(deg)を検出するものである。ステア角度検出センサS3は、例えば、ポテンショメータであって、アーティキュレート機構12のセンターピン12cに設置される。ステアリング角度θ(deg)は、制御装置15に受け渡され、振動ローラ1の走行方向の修正などに用いられる。なお、ステアリングシリンダのロッドの進退量を検出するセンサをステア角度検出センサS3としてもよい。
【0047】
前方探査センサS4は、振動ローラ1の前方方向の物体情報Q(座標)を検出するものである。前方探査センサS4は、例えば、2Dや3Dのスキャナであって、車体10の前方上部に設置される。物体情報Q(座標)は、制御装置15に受け渡され、障害物の検知および停止制御などに用いられる。
【0048】
図13に示す制御装置15は、機体情報取得手段Sが取得した情報や管理システム2から受信した情報などを用いて、設定された走行経路に沿った自動走行の制御を行うものである。制御装置15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。
施工管理者は、走行経路ファイルを自動走行支援装置2B(図2参照)に読み込み、車線ごとの走行回数や走行速度などの設定を行う。施工管理者は、設定が完了した後で、走行開始ボタンを押下することで振動ローラ1は自動走行を開始する。振動ローラ1は、通過点Plを目標点とすることで、通過点Plを順番に通過しながら走行する。これにより、曲線を有する車線であっても、曲線を短い連続した直線として走行する。そのため、点間距離Lが過大であると、直線と方向転換が目立ち振動ローラ1の動きが滑らかにならない。曲率半径が100m程度であれば「L=2~5m」程度に設定することで実用上は問題ないことが確認された。
【0049】
振動ローラ1は、ある車線を規定回数だけ転圧したのち、車線変更を行う。車線変更では、次の車線上の通過点Plから適当な進入点を選択し、該時点での目標点(現在の車線の終端点)から選択した通過点Plに向かって走行するように制御を行う。ここで、進入点の定義方法は、例えば車線端点から規定の点数だけ反対側に遷移した点とすることができる。または、現在位置(端点)とは反対側の、次の車線にある端点としてもよい。上記動作を最終車線まで繰り返すことにより、走行を完了する。
【0050】
≪実施形態に係る走行経路生成方法≫
図14を参照して(適宜、図5を参照)、本発明の実施形態に係る走行経路生成方法について説明する。図14は、走行経路生成方法の工程を示すフローチャートの例示である。
最初に、走行経路生成装置2Aの線形データ等取得部21は、道路線形ファイル(LandXML形式)を読み込む(ステップS11)。次に、線形データ等取得部21は、自動走行に関する走行条件の情報や走行範囲に関する情報を取得し、走行範囲設定部22は取得した情報に基づいて走行範囲を設定する(ステップS12)。次に、走行経路生成部23は、設定した走行範囲内に走行経路を生成する(ステップS13)。具体的には、通過基準点設定部24が中心線形CLに所定の間隔で通過基準点PCを設定し(ステップS14)、車線生成部25が中心線形CLと平行な車線を生成し(ステップS15)、通過点生成部26が通過基準点PCを車線上に転写して通過点Plを生成する(ステップS16)。そして、走行経路生成装置2Aは、通過点Plのまとまりを決められた形式(例えば、CSV形式)にし、走行経路ファイルとして出力する(ステップS17)。
【0051】
≪実施形態に係る自動走行方法≫
図15を参照して(適宜、図5を参照)、本発明の実施形態に係る自動走行方法について説明する。図15は、自動走行方法の工程を示すフローチャートの例示である。
最初に、自動走行支援装置2Bは、走行経路ファイルを読み込み(ステップS21)、施工管理者は、車線ごとの走行回数や走行速度などの設定を行う(ステップS22)。施工管理者は、設定が完了した後で、走行開始ボタンを押下することで振動ローラ1は自動走行を開始する。振動ローラ1は、一つの車線の転圧作業を実施し(ステップS23)、実施後に全ての車線の転圧作業を完了したか否かを判定する(ステップS24)。全ての車線の転圧作業が完了していない場合(ステップS24で“No”)、振動ローラ1は車線変更を実施し(ステップS25)、次の車線の転圧作業を実施する(ステップS23)。全ての車線の転圧作業が完了している場合(ステップS24で“Yes”)、転圧作業が完了となる。
【0052】
図10を参照して(適宜、図5を参照)、振動ローラ1の具体的な自動走行の流れについて説明する。
(第1の車線の走行)
最初に、振動ローラ1は、走行経路ファイル(CSVファイル)の一番はじめに記述されている座標(第1の通過点Pl)へ向かう。その座標に到達したのち、振動ローラ1は、走行経路ファイル(CSVファイル)の1つ次に記述されている座標(第2の通過点Pl)へ向かう。これを繰り返し、同一車線番号を持つ座標の最後(図10では第9の通過点Pl)に至る。これにより、第1の車線l1の転圧回数が1回となる。ここで、規定の転圧回数が3回の場合、同一車線であと2回の転圧が必要であるため、振動ローラ1は辿ってきた座標を逆順で進み(第9番目→第1番目)、始点に至る。これで転圧回数が2回となる。同様に、3回目の転圧を行い(第1番目→第9番目)、終点に至ると第1の車線l1の転圧が完了する。
【0053】
(車線変更および第2の車線の走行)
続いて、振動ローラ1は、第2の車線l2への車線変更を行う。この時点で、振動ローラ1は、第9番目の通過点Plに居るが、次の目標点を第2の車線l2の終点から規定の点間(ここでは3点間)だけ戻った点(第15番目の通過点Pl)に設定する。第15番目の通過点Plに至れば、第14番目、第13番目と遡り、第2の車線l2の始点である第10番目の通過点Plに進む。この走行は転圧回数としては計数せず、次の走行(第10番目→第18番目)を第2の車線l2の1回目の転圧とする。その走行方法は、第1の車線l1と同様に行い、完了後に第3の車線l3への車線変更を行う。以上を最終車線の転圧完了まで繰り返す。
【0054】
以上のように、実施形態に係る走行経路生成装置2Aにおいては、道路線形データに含まれる基準線形に基づいて走行経路を生成する。ここで、道路線形データは、ICT施工で用いられる一般的な設計データであるので、施工者にとって入手が容易な情報である。そのため、時間をかけずに走行経路を作成することができる。また、実施形態に係る走行経路生成装置2Aによれば、走行経路が道路の線形に追従したものとなるので、施工管理者が道路の線形を再現して作成せずとも、自動走行に適した走行経路を生成可能である。
また、実施形態に係る走行経路生成装置2Aにおいては、通過点生成部26が、中心線形CLに対するものであって通過基準点PCを通る垂線と、車線との交点を通過点Plとして求める。そのため、車線が多数ある場合であっても通過点Plを容易に生成することが可能である。また、円曲線および緩和曲線に関して、中心に近い内側の車線は、中心から遠い外側の車線に比べて通過点間の距離が短くなる。そのため、外側の車線に比べて急な曲線である内側の車線を、振動ローラ1が滑らかに走行することが可能である。
【0055】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
例えば、本実施形態では、施工現場として道路の舗装工事を想定して説明した。しかしながら、河川の堤防の舗装工事などにも本発明を適用することが可能である。河川の堤防の舗装工事を想定した場合、河川線形データには、河川の延在方向(縦断方向)の基準線を示す情報(基準線形)が含まれ、河川の基準線形は、例えば堤防法線である。道路線形データおよび河川線形データは、「線形データ」の一例である。河川線形データを用いた場合であっても実施形態と同様の効果を奏する。つまり、河川線形データは、ICT施工で用いられる一般的な設計データであるので、施工者にとって入手が容易な情報である。そのため、時間をかけずに走行経路を作成することができる。また、走行経路が河川の線形に追従したものとなるので、施工管理者が河川の線形を再現して作成せずとも、自動走行に適した走行経路を生成可能である。
また、実施形態では、建設機械として振動ローラ1を想定し、振動ローラ1が生成した走行経路を自動走行して施工現場の地面を締め固める場合を例示していた。しかしながら、振動ローラ1以外の建設機械が走行する走行経路を生成してもよく、例えば車線を分離して自動搬送車などの建設機械を走行させる際の走行経路を生成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 振動ローラ(建設機械)
2 管理システム
2A 走行経路生成装置
2B 自動走行支援装置
3 測位用衛星
10 車体
11a 前輪(鉄輪)
11b 後輪(鉄輪)
12 アーティキュレート機構
12c センターピン
13 測位用アンテナ
14 通信アンテナ
15 制御装置
S 機体情報取得手段
21 線形データ等取得部(線形データ取得部)
22 走行範囲設定部
23 走行経路生成部
24 通過基準点設定部
25 車線生成部
26 通過点生成部
27 車線変更経路生成部
100 自動化施工システム
600 走行経路生成画面
610 線形データ表示領域
620 走行範囲情報入力領域
630 走行条件情報入力領域
640 生成ボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15