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特開2024-78990ポリウレタン製放熱シート製造用組成物、放熱シート及びポリウレタン製放熱シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078990
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ポリウレタン製放熱シート製造用組成物、放熱シート及びポリウレタン製放熱シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20240604BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240604BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240604BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240604BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/22
C08L75/04
C08K5/07
C08K5/057
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191657
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100201710
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】森 陽祐
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002EC077
4J002EE046
4J002FD157
4J002FD206
4J002GQ00
4J034GA33
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA18
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC08
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC26
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC35
4J034KD08
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA12
4J034QB19
4J034RA14
(57)【要約】
【課題】本技術では、ポットライフを延長できる新規な技術を提供すること。
【解決手段】ポリオールと、イソシアネートと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含む、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物などを提供する。
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、NHR、又はNR である。Rは、炭化水素基であり、Rは、環を形成していてもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと、
イソシアネートと、
熱伝導性フィラーと、
金属触媒と、
下記一般式(1)で表される化合物と、
を含む、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物。
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、NHR、又はNR である。Rは、炭化水素基であり、Rは、環を形成していてもよい。)
【請求項2】
難燃剤を更に含む、請求項1に記載のポリウレタン製放熱シート製造用組成物。
【請求項3】
前記金属触媒100質量部に対して、前記一般式(1)で表される化合物が、45質量部以下含まれる、請求項1に記載のポリウレタン製放熱シート製造用組成物。
【請求項4】
請求項1から3に記載のポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いられた、放熱シート。
【請求項5】
ポリオールと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、下記一般式(1)で表される化合物と、が入った配合液を分散する分散工程と、
前記分散工程の後、イソシアネートを添加した混合液を攪拌する攪拌工程と、
前記攪拌工程の後、前記混合液をシート状に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後、熱成型して放熱シートを作製する成型工程と、
を少なくとも行う、ポリウレタン製放熱シートの製造方法。
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、NHR、又はNR である。Rは、炭化水素基であり、Rは、環を形成していてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物、及びポリウレタン製放熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を用いた放熱シートは、例えば、軽薄短小化のために、ファンやヒートシンクを設置できない電子機器(例えば、スマートフォン、タブレット端末など)、電池用外装材等の放熱部材として有用である。
【0003】
樹脂を用いた放熱シートには様々な種類が存在するが、例えば、特許文献1には、ポリウレタン樹脂を用いた放熱シートの製造方法が開示されている。また、特許文献2には、ポリウレタン樹脂を用いることを選択肢の一つとする放熱シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-200454号公報
【特許文献2】特開2019-099690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した通り、従来、ポリウレタン樹脂を用いたポリウレタン製放熱シートの製造技術については、種々の開発が進められているが、更なる開発が望まれているのが実情である。例えば、ポリウレタン樹脂を用いるに当たり、ポットライフ(可使時間)の延長が困難であることが課題となることが知られているが、このポットライフを延長する技術については、まだまだ開発の途である。
【0006】
そこで、本技術では、ポットライフを延長できる新規な技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、ポットライフを延長できる技術について鋭意研究を行った結果、複数の特定の化合物を用いることで、上述した課題を達成できることを突き止め、本技術を完成させるに至った。
【0008】
本技術では、まず、ポリオールと、イソシアネートと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、下記一般式(1)で表される化合物と、を含む、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物を提供する。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、NHR、又はNR である。Rは、炭化水素基であり、Rは、環を形成していてもよい。)
本技術に係る組成物は、難燃剤を更に含んでいてもよい。
本技術に係る組成物は、前記金属触媒100質量部に対して、前記一般式(1)で表される化合物が、45質量部以下含まれていてもよい。
また、本技術では、本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いられた、放熱シートも提供する。
【0009】
更に、本技術では、ポリオールと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、上記一般式(1)で表される化合物と、が入った配合液を分散する分散工程と、前記分散工程の後、イソシアネートを添加した混合液を攪拌する攪拌工程と、前記攪拌工程の後、前記混合液をシート状に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後、熱成型して放熱シートを作製する成型工程と、を少なくとも行う、ポリウレタン製放熱シートの製造方法も提供する。
【0010】
なお、本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いて製造されるポリウレタン製放熱シートは、発泡剤を用いて発泡することにより得られる発泡ポリウレタンフォームではない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、いずれの実施形態も組み合わせることが可能である。また、これらにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
1.ポリウレタン製放熱シート製造用組成物
本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物は、ポリオールと、イソシアネートと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、上記一般式(1)で表される化合物と、を含有する。また、本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物には、必要に応じて、その他の成分を有していてもよい。
【0013】
本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いてポリウレタン製放熱シートが製造される。本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物は、後述する実施例に示すように、ポットライフ(可使時間)を延長することができる。すなわち、本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いることで、従来技術と比較して、ポットライフを放熱シートの製造に適した時間に延長でき、その結果、生産性の向上や、配合液吐出量の自由度向上、材料ロスの抑制といった効果が得られる。
【0014】
以下、本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0015】
(1)ポリオール
本技術に用いることができるポリオールとしては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオール等が挙げられる。本技術において、ポリオールは、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族系又は芳香族系の重縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールは、例えば、ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、アクリル共重合体に水酸基を導入したポリマー等のアクリル系ポリオールが挙げられる。
【0017】
ポリオールの数平均分子量としては、例えば、200~10000であってよい。なお、本技術において、ポリオールの数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による測定値とすることができる。また、ポリオールが市販品である場合には、数平均分子量としてカタログ値を採用してもよい。
【0018】
本技術では、これらの中でも、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールを用いることが好ましく、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールの中でも、アクリル系ポリオールを用いることが特に好ましい。
【0019】
(2)イソシアネート
本技術に用いることができるイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。本技術において、イソシアネートは、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネ-ト、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、デカメチレンジイソシアネート、これらの誘導体等が挙げられる。
【0022】
脂環族イソシアネートとしては、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネ-ト、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水加TMXDI)等の単環式脂環族イソシアネート;ノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(ジイソシアナートメチル)トリシクロデカン等の架橋環式脂環族イソシアネート、これらの誘導体が挙げられる。
【0023】
更に、上述した脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートの三量体(ヌレート)等が挙げられる。
【0024】
なお、本技術では、その他にも、ポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られるウレタンプレポリマー、カルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネート等も用いてもよい。
【0025】
本技術では、これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の誘導体であるHDIイソシアヌレート(HDIトリマー(HDIの3量体)、2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリイルトリス(6,1-ヘキサンジイル)トリイソシアナート)を用いることが特に好ましい。
【0026】
ポリウレタン製放熱シート製造用組成物におけるイソシアネートの含有量は、用途により適宜調整できる。例えば、イソシアネートの含有量は、粘度を十分にする観点から、ポリオール100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、8質量部以上であることが特に好ましい。一方で、柔軟性の観点から、20質量部以下であることが好ましく、16質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることが特に好ましい。
【0027】
(3)熱伝導性フィラー
熱伝導性フィラーは、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物の硬化物に熱伝導性を付与する。本技術に用いることができる熱伝導性フィラーとしては、特に限定されず、例えば、熱伝導性無機系フィラー、熱伝導性有機無機ハイブリッド系フィラー等が挙げられる。本技術において、熱伝導性フィラーは、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
熱伝導性無機系フィラーとしては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属酸化物若しくは金属窒化物;水和金属化合物;溶融シリカ、結晶性シリカ、非結晶性シリカ等のシリカ系;炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンド等の窒化系若しくは炭素系フィラー等が挙げられる。また、熱伝導性無機系フィラーの表面にフッ素系樹脂が被覆されていてもよい。
【0029】
熱伝導性有機無機ハイブリッド系フィラーとしては、例えば、上述した無機系フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングしたフィラー等が挙げられる。熱伝導性無機系フィラーの表面を樹脂や分散剤でコーティングする方法としては、従来公知の方法を用いることができる。
【0030】
本技術では、これらの中でも、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナを用いることが好ましく、酸化アルミニウムを用いることが特に好ましい。
【0031】
ポリウレタン製放熱シート製造用組成物における熱伝導性フィラーの含有量は、用途により適宜調整できる。例えば、熱伝導性フィラーの含有量は、熱伝導性を十分に付与する観点から、ポリオール100質量部に対して、500質量部以上であることが好ましく、750質量部以上であることがより好ましく、1000質量部以上であることが更に好ましく、1200質量部以上であることが特に好ましい。一方で、放熱シート製造時の作業性、すなわち、熱伝導フィラーのポリオールへの分散性、イソシアネートを除くポリウレタン製放熱シート製造用組成物(各種組成物)の混合・攪拌性及び柔軟性の観点から、3000質量部以下であることが好ましく、2000質量部以下であることがより好ましく、1500質量部以下であることが特に好ましい。
【0032】
(4)金属触媒
本技術に用いることができる金属触媒としては、特に限定されず、例えば、Sn(錫)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Zr(ジルコニウム)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)等の金属塩若しくは有機酸金属塩等が挙げられる。本技術において、金属触媒は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
Sn触媒としては、例えば、オクチル酸スズ(II)(2-エチルヘキサン酸スズ、スタナスジオクトエート)、酢酸スズ(II)、スタナスジアセテート、オクタン酸スズ(II)、スズスタナスジオレエート、ネオデカン酸スズ(II)スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズジアセテート等が挙げられる。
Pb触媒としては、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
Bi触媒としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ロジン酸ビスマス等が挙げられる。
Fe触媒としては、例えば、鉄アセチルアセトナート等が挙げられる。
Zr触媒としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート等が挙げられる。
Ni触媒としては、例えば、ニッケルアセチルアセトナート、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等が挙げられる。
Co触媒としては、例えば、コバルトアセチルアセトナート、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0034】
本技術では、これらの中でも、Fe触媒が好ましく、Fe触媒の中でも、鉄アセチルアセトナートが特に好ましい。
【0035】
ここで、特開平09-031151号公報には、放熱シートではないが、ポリウレタン製の積層体の製造方法において、金属触媒とアセチルアセトンとの重量比が2:1となるようにして、触媒活性を抑制することが開示されている。しかしながら、この触媒活性を抑制する方法は、ポリウレタン製放熱シートの場合、リン酸エステルをはじめとする難燃剤を用いることが多く、放熱シートに求められる硬度を満たすためには、これよりも更に多くの金属触媒が必要となる。
【0036】
これに対し、本技術では、後述する実施例に示すように、少ない金属触媒で、放熱シートに求められる硬度を満たすことができる。
【0037】
ポリウレタン製放熱シート製造用組成物における金属触媒の含有量は、用途により適宜調整できる。例えば、金属触媒の含有量は、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、ポリオール100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましい。一方で、金属触媒に由来する揮発性有機化合物(例えば、2-エチルヘキサン酸など)を抑制する観点から、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0.30質量部以下であることが特に好ましい。
【0038】
(5)上記一般式(1)で表される化合物
上記一般式(1)で表される化合物は、上述した金属触媒と共に用いることで、室温での金属触媒の触媒活性を抑制することができる。また、上記一般式(1)で表される化合物が温度の上昇と共に除去され、製造過程の最終段階において、完全硬化を提供することができる。
【0039】
本技術に用いることができる上記一般式(1)で表される化合物において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、NHR、又はNR である。また、Rは、炭化水素基であり、Rは、環を形成していてもよい。また、上記一般式(1)において、R、R、及びRは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0040】
及びRにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~10の炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝鎖状であってもよい。炭素原子数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、特に好ましくは1~3である。
【0041】
における炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~10の炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基のいずれであってもよく、直鎖状又は分枝鎖状であってもよく、また、炭素原子数3以上の場合は、環を形成していてもよい。
【0042】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基等が挙げられ、これらのアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状であってもよい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0043】
本技術では、これらの中でも、R及びRが、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、アルコキシ基であることが好ましく、水素原子、アルコキシ基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。また、アルコキシ基の中でも特に、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0044】
より具体的には、例えば、下記のような化合物(A)~(E)等が挙げられる。
【0045】
【化2】
【0046】
ポリウレタン製放熱シート製造用組成物における上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、用途により適宜調整できる。例えば、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、ポットライフの延長を実現する観点から、0.01質量部以上であることが好ましく、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.03質量部以上であることが特に好ましい。一方で、ポットライフの延長を制御する観点から、0.15質量部以下であることが好ましく、0.12質量部以下であることがより好ましく、0.10質量部以下であることが更に好ましく、0.07質量部以下であることが特に好ましい。
【0047】
また、例えば、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、前記金属触媒100質量部に対して、ポットライフの延長を制御する観点から、45質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることが更に好ましく、30質量部以下であることが特に好ましい。一方で、ポットライフの延長を実現する観点から、5質量部以上であることが好ましく、7.5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。
【0048】
(6)その他の成分
本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物は、本技術の効果を損なわない限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、難燃剤、可塑剤、金属以外の触媒、吸水剤(気泡抑制剤)、酸化防止剤、顔料、安定剤、分散剤、着色料、抗菌剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0049】
(6-1)難燃剤
本技術に係るポリウレタン製放熱シート製造用組成物は、難燃剤を含むことが好ましい。本技術に用いることができる難燃剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、非ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステル、窒素系化合物、リン系化合物、水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
非ハロゲンリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ノンハロゲン系リン酸エステル、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート等が挙げられる。
含ハロゲンリン酸エステルとしては、例えば、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
非ハロゲン縮合リン酸エステルとしては、例えば、芳香族縮合リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステルとポリオキシアルキレンリン酸エステルの混合物等が挙げられる。
窒素系化合物としては、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート等が挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、赤燐系難燃剤(=赤燐を含む難燃剤)、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、リン酸、オルトリン酸メラミン、リン酸メラミン、オルトリン酸ピペラジン、ピロリン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン等が挙げられる。
水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム等が挙げられる。
本技術では、これらの中でも、非ハロゲン縮合リン酸エステル、窒素系化合物を用いることが好ましく、窒素化合物の中でも、メラミンを用いることが特に好ましい。
【0051】
(6-2)可塑剤
本技術に用いることができる可塑剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、脂肪酸エステル(例えば、炭化水素系プロセス油、炭化水素油、植物油、動物油等から誘導された脂肪酸エステルなど)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)、テトラヒドロフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジ-n-オクチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、リン酸トリクレジル、リン酸アルキルアリル、ブチルフタリルブチルグリコレート、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、トリエチレングリコール・ジ(2-エチル・ヘキソエート)、クエン酸アセチル・トリ-n-ブチル等が挙げられる。可塑剤は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本技術では、これらの中でも、脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0052】
(6-3)金属以外の触媒
本技術に用いることができる金属以外の触媒としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、アミン系触媒等が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N ´,N´-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。アミン系触媒は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(6-4)吸水剤(気泡抑制剤)
本技術に用いることができる吸水剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ケイ酸塩、酸化カルシウム等が挙げられる。吸水剤は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(6-5)酸化防止剤
本技術に用いることができる酸化防止剤としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p-フェニルジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系等が挙げられる。酸化防止剤は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本技術では、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0055】
(6-6)顔料
本技術に用いることができる顔料としては、従来公知のものを用いることができるが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。顔料は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
2.ポリウレタン製放熱シート
本技術に係るポリウレタン製放熱シートは、上述したポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いており、従来技術と比較して、ポットライフを放熱シートの製造に適した時間に調整できた上で製造されたものであるため、放熱シートに求められる製品要求を満たすといった効果が得られる。
【0057】
本技術に係るポリウレタン製放熱シートの25℃における比重(密度)の下限値としては、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、特に限定されないが、5以下であることが好ましく、3以下であることが特に好ましい。
【0058】
本技術に係るポリウレタン製放熱シートの熱伝導率の下限値としては、特に限定されないが、1W/m・K以上が好ましく、1.5W/m・K以上がより好ましく、2W/m・K以上が更に好ましく、2.5W/m・K以上が特に好ましい。また、上限値としては、特に限定されないが、10W/m・K以下が好ましく、5W/m・K以下が更に好ましく、4W/m・K以下が特に好ましい。なお、熱伝導率は、JIS R2616(熱線法)に準拠して測定できる。
【0059】
本技術に係るポリウレタン製放熱シートの硬度の下限値としては、特に限定されないが、アスカーC硬度計による測定で、15度以上であることが好ましく、20度以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、特に限定されないが、アスカーC硬度計による測定で、70度以下であることが好ましく、60度以下であることが更に好ましく、50度以下であることが特に好ましい。なお、アスカーC硬度は、JIS K7312に準拠して測定できる。
【0060】
本技術に係るポリウレタン製放熱シートの厚みの下限値としては、特に限定されないが、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、特に限定されないが、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることが特に好ましい。
【0061】
3.ポリウレタン製放熱シートの用途
本技術に係るポリウレタン製放熱シートは、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、電話機、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ゲーム機、補聴器、ペースメーカー、電動工具、電気シェーバー、AV機器、ОA機器等の電子機器等;リチウム電池の外装材等;制御基板等;医療用ロボット、産業用ロボット等の放熱部材に用いることができるが、これらに限定されない。
【0062】
4.ポリウレタン製放熱シートの製造方法
本技術に係るポリウレタン製放熱シートの製造方法は、分散工程と、攪拌工程と、塗布工程と、成形工程と、を少なくとも行う。また、必要に応じて、他の工程を行ってもよい。なお、本技術に係るポリウレタン製放熱シートの製造方法においては、発泡工程は行わない。
【0063】
(1)分散工程
本工程は、ポリオールと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、上記一般式(1)で表される化合物と、が入った配合液を分散する工程である。具体的には、例えば、熱伝導性フィラー、金属触媒、上記一般式(1)で表される化合物、及び必要に応じてその他の添加剤(ただし、イソシアネートを除く。)を添加し、ミキサー等で5~15分程度攪拌して混合することにより、これらの配合液を調製する。
【0064】
(2)攪拌工程
本工程は、前記分散工程の後、イソシアネートを添加した混合液を攪拌する工程である。具体的には、前記分散工程で調製した配合液に対して、更にイソシアネートを添加し、ミキサー等で2~8分程度攪拌して混合することで、配合液が凝固し、粘度の高い混合液が得られる。
【0065】
(3)塗布工程
本工程では、前記攪拌工程の後、前記混合液をシート状に塗布する工程である。具体的には、前記攪拌工程で調製いた混合液を、ポットライフ(可使時間)を目安に、被塗面に刷毛、ローラー等で厚みを調整しつつ、シート状に塗布する。
【0066】
(4)成型工程
本工程では、前記塗布工程の後、熱成型して放熱シートを作製する工程である。具体的には、130~160℃で5~15分程度熱成型し、放熱シートを作製する。
【実施例0067】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0068】
(1)原料
ポリオ―ル1:側鎖に複数のアルコールを有するアクリル系ポリオール
ポリオール2:1,2―ジオール片末端を有するアクリル系ポリオール
可塑剤:植物油由来脂肪酸エステル
金属触媒:鉄アセチルアセトナート
感熱性アミン系触媒:シクロアミジン塩(ジアザビシクロウンデセン)
上記一般式(1)で表される化合物:アセチルアセトン(=上記化学式(A))
熱伝導性フィラー:酸化アルミニウム
難燃剤1:メラミン
難燃剤2:非ハロゲン縮合リン酸エステル
吸水剤:アルミノケイ酸塩
顔料:カーボンブラック
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤
イソシアネート:イソシアヌレート(HDIの3量体)
【0069】
(2)ポリウレタン製放熱シートの製造
上述した「4.ポリウレタン製放熱シートの製造方法」に従い、下記表1に示す各成分を混合して配合液を調製し、該配合液にイソシアネートを添加して硬化した混合液を得た後、シート状に被塗面に塗布し、熱成型した。
【0070】
(3)評価
作製したポリウレタン製放熱シートについて、下記の方法を用いて各評価を行った。
【0071】
[ポットライフ]
検査者の目視により、洩糸性の消失した時間をポットライフ(時間)とした。
【0072】
[熱成型による凝固の有無]
検査者の目視により、150℃で10分間熱成型した際の凝固の有無について確認した。
〇:凝固有り
×:凝固無し(例えば、水飴状等)
【0073】
[硬さ(C硬度)]
アスカーC硬度計を用いて測定した。
【0074】
[熱伝導率]
熱伝導率は、JIS R2616(熱線法)に準拠して測定した。
【0075】
[難燃性]
UL94燃焼性試験に準拠し、難燃性のグレードについて測定した。
〇:グレードがV-0以上
×:グレードがV-0未満
【0076】
(4)結果
結果を下記表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(5)考察
上記表1に示す通り、ポリオールと、イソシアネートと、熱伝導性フィラーと、金属触媒と、上記一般式(1)で表される化合物と、を含む、ポリウレタン製放熱シート製造用組成物を用いた実施例1~5は、比較例1~5と比較して、ポットライフの延長に成功した。一方で、実施例4及び5については、熱成型で水飴状となってしまい、C硬度や熱伝導率については測定できなかった。
【0079】
また、比較例4及び5については、実施例1~5と比較して、難燃性に劣っていた。また、比較例4については、C硬度が高すぎで、求められる製品要求を満たしていなかった。なお、表1中の「※」については、熱成型において、水飴状となってしまったことを示している。すなわち、比較例2、3、及び5については、熱成型で水飴状となってしまい、C硬度や熱伝導率については測定できなかった。