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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078992
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240604BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240604BHJP
   A61Q 1/08 20060101ALI20240604BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/898
A61K8/27
A61K8/891
A61Q1/02
A61Q1/08
A61Q1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191666
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 洸碧
(72)【発明者】
【氏名】蔵之上 和博
(72)【発明者】
【氏名】白坏 早苗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB352
4C083AB372
4C083AB431
4C083AB432
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD262
4C083BB13
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC14
4C083DD17
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきがなく、サラサラした使用感が持続し、塗布後に自然で粉っぽくない仕上がりが得られる粉末化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アミノ変性シリコーン処理された粉体、
(B)酸化亜鉛、
(C)25℃で液状の油剤
を含有し、成分(A)が、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を含む、粉末化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アミノ変性シリコーン処理された粉体、
(B)酸化亜鉛、
(C)25℃で液状の油剤
を含有し、成分(A)が、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を含む、粉末化粧料。
【請求項2】
成分(A)の含有量が1~51質量%であり、成分(B)の含有量が1~30質量%であり、成分(C)の含有量が0.1~10質量%である、請求項1記載の粉末化粧料。
【請求項3】
成分(A1)の含有量が0.3~25質量%であり、成分(A2)の含有量が0.3~25質量%である、請求項1又は2記載の粉末化粧料。
【請求項4】
成分(A2)に対する成分(A1)の質量割合(A1)/(A2)が、0.1~20である、請求項1~3のいずれか1項記載の粉末化粧料。
【請求項5】
成分(C)が、少なくともシリコーン油を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の粉末化粧料。
【請求項6】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アミノ変性シリコーン処理された粉体、
(B)酸化亜鉛、
(C)25℃で液状の油剤
を含有し、成分(A)が、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を添加して得られる、粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ルースパウダー等の粉末化粧料は、滑らかでサラサラした使用感で、均一で自然な仕上がりを得るために使用されている。
例えば、特許文献1には、アミノ変性シリコーン処理粉体、板状酸化亜鉛を含有する粉体化粧料が、塗布時に滑らかな伸び広がりを有し、きしみ感といった肌負担感がなく、更に塗布膜に不自然な膜白さを与えずに、優れた紫外線遮断効果、化粧持続効果を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-168636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粉体化粧料に用いられているアミノ変性シリコーン処理された板状粉体や酸化亜鉛は、皮脂を固化する性能を有するものの、ヒトの皮膚は肌理や毛穴のように凹凸構造を有するため、皮脂腺から分泌された皮脂が凹部に貯留し、前記板状粉体だけでは、皮脂を固定できず、テカリがまだらに発生するテカリムラがみられるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、粉末化粧料において、アミノ変性シリコーン処理された板状粉体とともに、アミノ変性シリコーン処理された球状粉体を併用することで、球状粉体が皮溝や毛穴に入り込み、いち早く固化するので、化粧肌のテカリムラが改善し、塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきがなく、サラサラした使用感が持続し、塗布後に自然で粉っぽくない仕上がりが得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)アミノ変性シリコーン処理された粉体、
(B)酸化亜鉛、
(C)25℃で液状の油剤
を含有し、成分(A)が、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を含む、粉末化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粉末化粧料は、化粧持続性が高いため、塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきがなく、サラサラした使用感が持続し、塗布後に自然で粉っぽくない仕上がりが得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)のアミノ変性シリコーン処理された粉体は、粉体の表面の一部又は全体をアミノ変性シリコーンで処理したものであり、その粒子形状は制限されず、例えば、球状、針状、板状、不定形等のいずれでも良い。
粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、体質顔料、着色顔料、光輝性顔料等を用いることができる。
体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、合成金雲母、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、シリカ、アルミナ等の無機顔料及びこれらの複合顔料などが挙げられる。複合顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化亜鉛被覆雲母、酸化チタン・酸化亜鉛被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、硫酸バリウム・酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化クロム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン内包ガラス末、酸化鉄内包ガラス末等が挙げられる。
【0009】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;カーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などが挙げられる。
【0010】
光輝性顔料としては、雲母、合成金雲母、ガラス、シリカ、アルミナ等の板状粉体等の表面を、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、酸化スズ、水酸化クロム、金、銀、カルミン、有機顔料等の着色剤で被覆したものなどを用いることができる。
【0011】
このような粉体の処理に用いられるアミノ変性シリコーンは、アミノ基又はアンモニウム基を有しているシリコーン化合物であるのが好ましく、その性状(液状、固形状等)、架橋構造の有無等を問わず、いずれのものも使用することができる。
アミノ変性シリコーンとしては、架橋構造を有さないアミノ変性シリコーン及び/又は架橋構造を有するアミノ変性シリコーンが好ましく、架橋構造を有するアミノ変性シリコーンがより好ましい。
【0012】
架橋構造を有さないアミノ変性シリコーンとしては、例えば、以下の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Rは、水酸基、水素原子又はRaを示し、Raは、置換又は非置換の炭素数1~20の一価炭化水素基を示し、XはRa、-Q-NH(CH2nNH2-ORa又は水酸基を示し、Qは炭素数1~8の二価炭化水素基を示す。nは1~5の数を示す。p及びqはその和が数平均で2以上2000未満であることが好ましく、より好ましくは20以上2000未満、さらに好ましくは30以上1000未満となる数を示す。)
【0015】
上記アミノ変性シリコーンのアミノ当量は、200g/mol~3万g/molであるのが好ましく、500g/mol~1万g/molがより好ましく、600g/mol~5000g/molがさらに好ましい。
ここで、アミノ当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味する。表記単位のg/molはアミノ基又はアンモニウム基1mol当たりに換算した値である。従って、アミノ当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
【0016】
また、上記アミノ変性シリコーンは、粉体が均一に被覆され、化粧膜の均一性が得られるという観点から、100~3000mm2/s(25℃)の範囲の動粘度を有するものであるのがより好ましい。これは、エマルションの形で使用してもよい。このアミノ変性シリコーンのエマルションは、例えば、アミノ変性シリコーンと溶媒を高剪断で機械混合したものや、アミノ変性シリコーンを水及び乳化剤で乳化したもの、若しくはこれらの組み合わせによって、又は乳化重合によっても調製することができる。
【0017】
また、上記アミノ変性シリコーンの市販品の好適な具体例(動粘度(25℃))としては、例えば、SF8451C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、動粘度600mm2/s、アミノ当量1700g/mol)、SF8452C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、動粘度700mm2/s、アミノ当量6400g/mol)、SF8457C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、動粘度1200mm2/s、アミノ当量1800g/mol)、KF8003(信越化学工業社製、動粘度1850mm2/s、アミノ当量2000g/mol)、KF8004(信越化学工業社製、動粘度800mm2/s、アミノ当量1500g/mol)、KF867S(信越化学工業社製、動粘度1300mm2/s、アミノ当量1700g/mol)、XF42-B8922(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、動粘度70000mm2/s、アミノ当量13000g/mol)等のアミノ変性シリコーンオイルや、SM8704C(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、アミノ当量1800g/mol)等が挙げられる。
また、公知の製造方法により製造してもよい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
架橋構造を有するアミノ変性シリコーンとしては、特に限定されないが、例えば、下記表面被覆処理剤(a)及び表面被覆処理剤(b)を縮合反応させて得られるシリコーンの微三次元架橋構造を有する重合物(以下、「シリコーン微架橋物」とも称する)が挙げられる。また、表面被覆処理剤(a)及び下記表面被覆処理剤(b)はそれぞれ公知の方法にて製造することができ、市販品を使用することもできる。
【0019】
表面被覆処理剤(a):下記一般式(2)で表される両末端反応性ジオルガノポリシロキサン
12 2SiO-(R2 2SiO)L-SiR12 2 (2)
(式中、各R1は水酸基を示し、各R2はそれぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基を示し、Lは3~10,000のいずれかの整数を示す。)
【0020】
表面被覆処理剤(b):下記一般式(3)で表されるアミノ基含有シラン化合物
34 mSiX(3-m) (3)
(式中、R3は少なくとも1つのアミノ基を有する炭素数1~20の炭化水素基を示し、R4は炭素数1~4のアルキル基を示し、Xは炭素数1~4のアルコキシ基を示し、mは0又は1を示す。)
【0021】
表面被覆処理剤(a)は、両末端反応性ジオルガノポリシロキサンであり、前記一般式(2)で表される両末端ヒドロキシシリル基変性シリコーンである。
表面被覆処理剤(a)の形態としては、特に限定されないが、本発明においては、水サスペンション又は水エマルジョンの形態で用いるのが、感触等を良好にする点で好ましい。この(a)の水エマルジョンを調製する方法としては、通常の方法でよく、低分子環状シロキサンを出発原料として乳化重合する方法や、オイル状の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンを乳化する方法等が例示される。
【0022】
表面被覆処理剤(b)は、アミノ基含有シラン化合物であり、前記一般式(3)で表されるものである。
表面被覆処理剤(b)としては、特に限定されないが、例えば、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。一般式(3)において、m=0のアミノ基含有のトリアルコキシ(炭素数1~4)シランが好適である。また、R3の炭化水素基の炭素数は1~10が好ましい。
表面被覆処理剤(b)の市販品として、例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903;信越化学工業社製)等が挙げられるが、本発明はこれに限定されることなく、また、公知の方法により製造してもよい。
【0023】
表面被覆処理剤(a)及び表面被覆処理剤(b)から得られるシリコーン微架橋物は、特に限定されないが、使用感に優れる等の観点から、表面被覆処理剤(a)と(b)との使用質量比が、(表面被覆処理剤(a)):(表面被覆処理剤(b))=100:0.1~100:35であることが好ましい。
また、シリコーン微架橋物は、ゴム弾性(すなわち、ゴム硬度)を有しない重合体であることが好ましい。ゴム硬度を有しない重合体とは、ISO7619-1に規定されるデュロメータタイプAOによる測定法(軟質ゴム硬度測定)の測定値が10未満であり、より好ましくは5未満のものである。
【0024】
さらに、シリコーン微架橋物のレオロジー特性は、特に限定されないが、肌への密着性に優れる等の点から、動的粘弾性測定(25℃、歪み率17%、剪断周波数4Hz)における複素弾性率が、3,000~100,000Pa、損失係数tanδ(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)が、1.0~2.5であることが好ましい。より好ましくは、複素弾性率が10,000~100,000Paであり、損失係数tanδが1.0~2.0である。
【0025】
シリコーン微架橋物のレオロジー特性は、以下のようにして測定することができる。
動的粘弾性測定装置:Rheosol-G3000(UBM社製)、
測定治具:直径20mmのパラレルプレート、
測定周波数:4Hz、
測定温度:25±1.0℃、
測定歪の設定:歪み率17%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
測定試料厚み(ギャップ):1.0mm、
ここで剪断周波数を4Hzとしたのは、人にとって一般的な物理的動作速度の範囲であり、化粧料を肌へ塗布する際速度に近似している理由による。
【0026】
本発明で用いる成分(A)において、これらの粉体の表面にアミノ変性シリコーンを被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、アミノ変性シリコーンと粉体とを直接混合し被覆する乾式被覆方法;有機溶剤(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン等から選ばれる1種又は2種以上)にアミノ変性シリコーンを溶解又は分散し、この溶液又は分散液に粉体を添加し、混合後、前記溶剤を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法;メカノケミカル方法等が挙げられる。これらを適宜組み合わせることも可能である。
【0027】
また、本発明で用いる成分(A)において、これらの粉体にアミノ変性シリコーンを表面被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、in-situ法にて粉体の存在下で前記表面被覆処理剤(a)と前記表面被覆処理剤(b)のシリコーン微架橋物を粉体粒子表面に析出させた後、加熱することで、粒子表面にシリコーン微架橋物を固着する方法を用いることができる。この方法により、粉体粒子表面への被覆の均一性が高まり、より良好な軽い使用感で、肌への密着性により優れる、表面被覆された粉体を得ることができる。
【0028】
このようにして得られる成分(A)は、粉体表面がアミノ変性シリコーンにより被覆されたものであり、その被覆量は、特に制限されない。よりなめらかな軽い感触でしっとり感があり、肌への密着性に優れる観点から、成分(A)において、表面被覆されうる粉体とアミノ変性シリコーンとの使用質量比が、(表面被覆されうる粉体):(アミノ変性シリコーン)=99.99:0.01~70:30であることが好ましく、99.9:0.1~90:10がより好ましい。
【0029】
本発明で用いる成分(A)のアミノ変性シリコーン処理された粉体の市販品としては、例えば、マイカ Y-2300WA3(ヤマグチマイカ社製)、EX-15WA3(ヤマグチマイカ社製)、SE-S-100S(処理された粉体はセリサイト)(三好化成社製)、SE-TA-13R、SE-TA-46R(処理された粉体はタルク)(三好化成社製)、MiyoSYN Fine-SE(処理された粉体は合成金雲母)(三好化成社製)、SE-MA-23(処理された粉体はマイカ)(三好化成社製)、NK-10WA3(処理された粉体は合成金雲母)(ヤマグチマイカ社製)、PSG-05WA5(処理された粉体は無水ケイ酸)(ヤマグチマイカ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また公知の方法により製造してもよい。
【0030】
本発明の成分(A)としては、アミノ変性シリコーン以外の処理剤(例えば、脂肪酸や、金属石鹸、フッ素化合物等)と同時に又は別々に処理したものを用いることもできる。特に限定されないが、本発明の効果をより顕著に発揮できることから、本発明の成分(A)の最外層がアミノ変性シリコーンであるのがより好ましい。
【0031】
本発明の成分(A)は、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を含むものである。
成分(A)は、少なくとも、
(A1)アミノ変性シリコーン処理された球状粉体と、
(A2)アミノ変性シリコーン処理された板状粉体を添加して得られる。
【0032】
成分(A1)の球状粉体は、肌への密着性が良好で、塗布時に肌にひっかからずに伸びに優れる観点から、球状であるのが好ましい。ここで、球状とは、真球、略球状、回転楕円体を含み、表面に凹凸がある球状粉体等であっても良い。
成分(A1)の球状粉体の平均粒子径は、皮溝や毛穴への密着性が良好で、分泌される皮脂を留まらせる観点から、1~50μmであるのが好ましく、1~35μmがより好ましく、2~25μmがさらに好ましく、3~10μmがよりさらに好ましい。
平均粒子径は、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)で測定された値である。なお、平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
【0033】
成分(A1)の球状粉体としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、無水ケイ酸、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等の無機球状粉体;ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース系樹脂等の有機球状粉体などが挙げられる。成分(A1)としては、無水ケイ酸が好ましい。
【0034】
成分(A1)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、皮溝や毛穴への密着性が良好で、分泌される皮脂を留まらせる観点から、全組成中に0.3質量%以上であるのが好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A1)の含有量は、全組成中に0.3~25質量%であるのが好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。
【0035】
成分(A2)の板状粉体の平均粒子径は、皮丘の密着性が良好で、過剰な皮脂を留まらせる観点から、1~60μmであるのが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~20μmがさらに好ましい。また、成分(A2)の板状粉体のアスペクト比は、皮丘の密着性が良好で、過剰な皮脂を留まらせる観点から、20~90であるのが好ましく、40~80がより好ましい。
平均粒子径は、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)で測定された値である。なお、平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。粒子の平均厚さは、電子顕微鏡を用いて測定し、その合計値を測定個数で割った値である。アスペクト比は、粒子径を粒子の平均厚さで割った値である。
【0036】
成分(A2)の板状粉体としては、例えば、窒化ホウ素、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、セリサイト、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、合成マイカ、合成金雲母、雲母チタン、酸化チタン被覆ホウケイ酸、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料及びこれらの複合顔料などが挙げられる。複合顔料の具体例としては、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化鉄被覆合成金雲母、酸化クロム被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラス末、酸化鉄被覆ガラス末、酸化チタン内包ガラス末、酸化鉄内包ガラス末等が挙げられる。
板状粉体としては、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルクから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、少なくとも合成マイカを含むのがより好ましい。
【0037】
成分(A2)は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、皮丘の密着性が良好で、過剰な皮脂を留まらせる観点から、全組成中に0.3質量%以上であるのが好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A2)の含有量は、全組成中に0.3~25質量%であるのが好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明において、成分(A2)に対する成分(A1)の質量割合(A1)/(A2)は、化粧持続性が高く、塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきが抑制され、サラサラした使用感が持続し、塗布後に自然で粉っぽくない仕上がりを得られる観点から、0.1以上であるのが好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましく、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。また、成分(A2)に対する成分(A1)の質量割合(A1)/(A2)は、0.1~20であるのが好ましく、0.15~8がより好ましく、0.2~4がさらに好ましい。
【0039】
成分(A)の含有量は、化粧持続性が高く、塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきを抑制する観点から、全組成中に1質量%以上であるのが好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上がさらに好ましく、51質量%以下が好ましく、41質量%以下がより好ましく、31質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に1~51質量%であるのが好ましく、4~41質量%がより好ましく、6~31質量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明で用いる成分(B)は、酸化亜鉛であり、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良い。
成分(B)としては、化粧持続性が高く、塗布後時間が経過してもサラサラした使用感が持続する観点から、平均粒子径0.01~1μmであるのが好ましく、0.02~0.8μmがより好ましく、0.03~0.5μmがさらに好ましい。
平均粒子径は、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)で測定された値である。なお、平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
【0041】
成分(B)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、化粧持続性が高く、塗布後時間が経過してもサラサラした使用感が持続する観点から、全組成中に1質量%以上であるのが好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、14質量%以下がさらに好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に1~30質量%であるのが好ましく、3~20質量%がより好ましく、4~14質量%がさらに好ましい。
【0042】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、化粧持続性が高く、塗布後時間が経過しても化粧肌のテカリムラや、べたつきが抑制され、サラサラした使用感が持続し、塗布後に自然で粉っぽくない仕上がりを得られる観点から、0.3以上であるのが好ましく、0.6以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。また、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、0.3~20であるのが好ましく、0.6~8がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
【0043】
本発明の粉末化粧料においては、成分(A)及び(B)以外の粉体、例えば、成分(A)に例示した粉体のアミノ変性シリコーンで処理されていないものや、アミノ変性シリコーン処理以外の疎水化処理した粉体などを含有することができる。これらの粉体も、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0044】
成分(C)は、25℃で液状の油剤である。液状とは、流動性を有するもので、ペースト状も含まれる。
成分(C)の油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、炭化水素油、エステル油、エーテル油、シリコーン油、高級アルコール等が挙げられる。
【0045】
より具体的には、炭化水素油としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、ワセリン等の直鎖又は分岐鎖の炭化水素油が挙げられる。
【0046】
エステル油としては、モノエステル油、ジエステル油、トリエステル油及びテトラエステル油が挙げられる。
モノエステル油としては、炭素数2~24の脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸又はジカルボン酸のモノエステルが挙げられ、具体例としては、2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-ヘキシルデシルステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、イソデシルベンゾエート、メトキシケイヒ酸オクチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、安息香酸アルキル(C12~C15)等が挙げられる。
【0047】
ジエステル油としては、炭素数3~18のジカルボン酸のジエステル、多価アルコールのジ脂肪酸エステル等が挙げられ、具体例としては、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0048】
トリエステル油としては、3価以上の多価アルコールのトリ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、オリーブ油、ホホバ油等が挙げられる。
【0049】
テトラエステル油としては、4価以上の多価アルコールのテトラ脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットが挙げられる。
【0050】
エーテル油としては、ジアルキルエーテルが挙げられ、具体的には、ジヘキシルエーテル、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシクロポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等のメチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
揮発性シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(1cs)、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0052】
高級アルコールとしては、炭素数10~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を有するものが挙げられ、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0053】
成分(C)の油剤としては、自然で粉っぽくない仕上がりが得られる観点から、少なくとも、シリコーン油を含むのが好ましい。
【0054】
成分(C)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、自然で粉っぽくない仕上がりが得られる観点から、全組成中に0.1質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、10質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に0.1~10質量%であるのが好ましく、0.5~6質量%がより好ましく、1~4質量%がさらに好ましい。
【0055】
本発明の粉末化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の粉体、前記以外の油性成分、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を含有することができる。
【0056】
本発明の粉末化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。
例えば、成分(A)及び(B)を含むすべての粉体成分を混合・粉砕した後、成分(C)を含むすべての油成分を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕することにより、粉末状の化粧料を製造することができる。
【0057】
本発明の粉末化粧料は、形態が粉末状である。具体的には、パウダーファンデーション、フェイスパウダー、白粉、ほほ紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディパウダーの形態が挙げられ、なかでも、フェイスパウダー、白粉が好ましく、粉末状のフェイスパウダー(ルースパウダー)として好適である。
【実施例0058】
実施例1~7及び比較例1~2
表1に示す組成の粉末化粧料(ルースパウダー)を製造し、6時間経過後の化粧肌のテカリムラのなさ、6時間経過後のべたつきのなさ、6時間経過後のサラサラした使用感、自然で粉っぽくない仕上がりを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0059】
(製造方法)
成分(A)及び(B)を含むすべての粉体成分を混合・粉砕した後、成分(C)の油剤を加えて混合し、得られた混合物をさらに粉砕機で粉砕して、粉末化粧料(ルースパウダー)を得た。
【0060】
(評価方法)
(1)6時間経過後の化粧肌のテカリムラのなさ:
専門パネラー5名により、各粉末化粧料(ルースパウダー)を、パフを用いて肌に塗布した後、6時間後のテカリのムラのなさを、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
5;テカリのムラがない。
4;あまりテカリのムラがない。
3;ややテカリのムラがある。
2;テカリのムラがある。
1;かなりテカリのムラがある。
【0061】
(2)6時間経過後のべたつきのなさ:
専門パネラー5名により、各粉末化粧料(ルースパウダー)を、パフを用いて肌に塗布した後、6時間後のべたつきのなさを、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
5;まったくべたつきがない。
4;べたつきがない。
3;あまりべたつきがない。
2;ややべたつきがある。
1;べたつきがある。
【0062】
(3)6時間経過後のサラサラした使用感:
専門パネラー5名により、各粉末化粧料(ルースパウダー)を、パフを用いて肌に塗布し、6時間経過後のサラサラした使用感を、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
5;非常にサラサラを感じる。
4;サラサラを感じる。
3;ややサラサラを感じる。
2;あまりサラサラを感じない。
1;サラサラを感じない。
【0063】
(4)自然で粉っぽくない仕上がり:
専門パネラー5名により、各粉末化粧料(ルースパウダー)を、パフを用いて肌に塗布した後の自然で粉っぽさのなさを、以下の基準で官能評価した。結果は、5名の合計点で示した。
5;まったく自然で粉っぽさがない。
4;自然で粉っぽさがない。
3;自然であまり粉っぽさがない。
2;やや自然で粉っぽさがある。
1;自然で粉っぽさがある。
【0064】
【表1】