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特開2024-79035撮像システム、ぶれ検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079035
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】撮像システム、ぶれ検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/68 20230101AFI20240604BHJP
【FI】
H04N23/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191729
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石渡 忠司
(72)【発明者】
【氏名】林 啓太
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 圭二
(72)【発明者】
【氏名】中明 靖文
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA16
5C122EA41
5C122FF10
5C122FG02
5C122FH11
5C122FH13
5C122GE01
5C122HA81
5C122HB01
5C122HB06
(57)【要約】
【課題】簡便な処理でぶれを検出することができる撮像システム、ぶれ検出方法、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】撮像システム100は、熱画像を撮像する赤外線カメラ10と、赤外線カメラ10で撮像されたキャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを用いてキャリブレーションを行うキャリブレーション部175と、キャリブレーション部175によってキャリブレーションが行われたぶれ検出用の熱画像における画素値に基づいて、ぶれ検出を行うぶれ検出部176と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱画像を撮像する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラで撮像されたキャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを用いてキャリブレーションを行うキャリブレーション部と、
前記キャリブレーション部によってキャリブレーションが行われたぶれ検出用の熱画像における画素値に基づいて、ぶれ検出を行うぶれ検出部と、を備えた撮像システム。
【請求項2】
前記ぶれ検出用の熱画像における画素値のピークに応じて、ぶれデータを算出するぶれデータ算出部と、
前記ぶれデータに基づいて、前記赤外線カメラからの熱画像に対して、ぶれ補正を行うぶれ補正部をさらに備えた請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記ぶれデータ算出部が前記ピークの幅に基づいてぶれ量を算出し、
前記ぶれ補正部が、フレーム毎の前記ぶれ量に応じて、前記ぶれ補正を行う請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
赤外線カメラを用いてキャリブレーション用の熱画像を撮像するステップと、
前記キャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを生成するステップと、
前記赤外線カメラを用いてぶれ検出用の熱画像を撮像するステップと、
前記較正データを用いて、前記ぶれ検出用の熱画像を補正するステップと、
補正された前記ぶれ検出用の熱画像の画素値に基づいて、ぶれ検出を行うステップと、を備えたぶれ検出方法。
【請求項5】
ぶれ検出方法を撮像システムのプロセッサに実行させるためのプログラムであって、
前記ぶれ検出方法は、
赤外線カメラを用いてキャリブレーション用の熱画像を撮像するステップと、
前記キャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを用いて、生成するステップであって、
前記赤外線カメラを用いてぶれ検出用の熱画像を撮像するステップと、
前記較正データを用いて、前記ぶれ検出用の熱画像を補正するステップと、
補正された前記ぶれ検出用の熱画像の画素値に基づいて、ぶれ検出を行うステップと、を備えたプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像システム、ぶれ検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された検出システムは、熱画像等から所定の方向を持つ方向エッジを抽出した後、その方向エッジと物体候補領域との連結関係に基づき、測定対象である車両を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-257133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠赤外線カメラは可視カメラと同様に、カメラの振動やユーザの手ぶれ等のぶれによる画質低下が課題となる。よって、手ぶれを適切に検出することが望まれる。
【0005】
本開示は、上述した課題に鑑み、簡便な処理でぶれを検出することができる撮像システム、手ぶれ検出方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様に係る撮像システムは、熱画像を撮像する赤外線カメラと、前記赤外線カメラで撮像されたキャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを用いてキャリブレーションを行うキャリブレーション部と、前記キャリブレーション部によってキャリブレーションが行われたぶれ検出用の熱画像における画素値に基づいて、ぶれ検出を行うぶれ検出部と、を備えている。
【0007】
本実施形態の一態様に係るぶれ検出方法は、赤外線カメラを用いてキャリブレーション用の熱画像を撮像するステップと、前記キャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを生成するステップと、前記赤外線カメラを用いてぶれ検出用の熱画像を撮像するステップと、前記較正データを用いて、前記ぶれ検出用の熱画像を補正するステップと、補正された前記ぶれ検出用の熱画像の画素値に基づいて、ぶれ検出を行うステップと、を備えている。
【0008】
本実施形態の一態様に係るプログラムは、ぶれ検出方法を撮像システムのプロセッサに実行させるためのプログラムであって、前記ぶれ検出方法は、赤外線カメラを用いてキャリブレーション用の熱画像を撮像するステップと、前記キャリブレーション用の熱画像を均一化する較正データを用いて、生成するステップであって、前記赤外線カメラを用いてぶれ検出用の熱画像を撮像するステップと、前記較正データを用いて、前記ぶれ検出用の熱画像を補正するステップと、補正された前記ぶれ検出用の熱画像の画素値に基づいて、ぶれ検出を行うステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、簡便な処理でぶれを検出することができる撮像システム、ぶれ検出方法、及びプログラムを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】撮像システムの構成図である。
図2】撮像システムの赤外線カメラの構成図である。
図3】撮像システムの制御装置のブロック図である。
図4】制御装置の画像処理部のブロック図である。
図5】画像処理部での処理を説明するための図である。
図6】水平方向プロファイルB’、Fを拡大して示す図である。
図7】水平方向プロファイルB’ ’、Gを拡大して示す図である。
図8】手ぶれデータを算出する処理を説明するフローチャートである。
図9】手ぶれを補正する処理を説明するフローチャートである。
図10】上下方向の手ぶれデータを算出するパターンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0012】
本実施の形態にかかる撮像システムは、遠赤外線カメラ等を備えており、熱画像を撮像する。遠赤外線カメラは可視カメラと同様に、カメラの振動やユーザの手ぶれによる画質低下が課題となる。
手ぶれ補正には光学式補正と、電子式補正がある。光学式補正では、レンズやイメージセンサを動かすことで、手ぶれが補正される。電子式補正では、メモリが1フレームの画像を保存する。そして、センサなどで求められた手ぶれ成分を用いて、フレーム画像が補正される。
【0013】
光学式補正では、特別な機構を用いて補正レンズやイメージセンサを動かす。遠赤外線カメラはレンズのコストが高いことやセンサのセルサイズが大きい。したがって、光学式補正では、カメラユニットが大きくなることやコストが高くなるなどの課題がある。
【0014】
電子式補正では、撮像素子の撮像可能領域が一定のサイズに狭められている。つまり、撮像素子の周縁画素が補正エリアとして利用している。手ぶれ量を相殺するように、全画素領域から撮像画像を切り出す位置及び切り出し角度が変えられる。
【0015】
電子式補正では、ジャイロセンサなどの外部センサを用いて手ぶれ成分を検出するものがある。ジャイロセンサなどの外部センサを用いる場合、コスト増加を招いてしまう。また、電子式補正では、入力画像からフレーム間の動きベクトルを検知するものがある。ベクトル検知方式では、センサを用いるタイプと比較してコストメリットが大きい。また、遠赤外線カメラは被写体から放出される遠赤外線を映像化する。このため、可視カメラのベクトル検知方式の弱点である暗闇でも問題なく機能する特徴がある。
【0016】
ベクトル検知方式を用いた電子式補正では、外部センサの部品コストを削減することができる。一方、ベクトル検知方式では、専用のASIC(application specific integrated circuit)や画像処理のCPU(Central Processing Unit)パワーを必要とするため、処理負荷が増大するおそれがある。本実施形態は、遠赤外線カメラの簡単な画像処理を応用し、簡単なアルゴリズムで手ぶれ検出を実現している。本実施の形態に係る撮像システムは、専用のASICやCPUパワーを必要とせず、簡便な処理で電子式手ぶれ補正を行うことできる。
【0017】
本実施の形態においては、ユーザが手にカメラを持って撮像する場合のぶれである手ぶれについて説明をするが、本発明が解決する課題は手ぶれに限られるものではない。例えばカメラが三脚などに固定された状態で撮像される場合においても、風などの影響でぶれが発生する場合がある。本発明は、このようなぶれによる画質低下についても対応することできる。従って、以下の説明における「手ぶれ」の記載は、「ぶれ」の記載に置き換えることができる。
【0018】
図1を参照して,本実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかる撮像システムの構成図である。図1に示すように、撮像システム100は、制御装置11と、赤外線カメラ10とを備える。なお、図1に示す撮像システム100の一例はさらにディスプレイ12を備えるが、撮像システム100はディスプレイ12を備えなくてもよい。
【0019】
赤外線カメラ10は、被写体の熱画像を撮像する。赤外線カメラ10は、遠赤外線カメラであるとよい。赤外線カメラ10は、赤外線カメラ10は、制御装置11と通信可能に接続し、制御装置11から所定の指示信号を受け取り、受け取った指示信号に応じて動作する。また赤外線カメラ10は、制御装置11に対して、赤外線カメラ10が撮影した画像(熱画像ともいう)にかかる画像データ(熱画像データともいう)を供給する。
【0020】
制御装置11は、赤外線カメラ10、およびディスプレイ12のそれぞれと通信可能に接続している。制御装置11は、赤外線カメラ10、およびディスプレイ12のそれぞれと有線で接続されてもよいし無線で接続されてもよい。制御装置11は、赤外線カメラ10を制御する。制御装置11は、赤外線カメラ10が生成した画像データを取得する。制御装置11は、取得した画像データをディスプレイ12に表示させてもよい。撮像システム100は、ディスプレイ12を複数接続し、赤外線カメラ10が生成した画像データをディスプレイ12に表示してもよい。
【0021】
ディスプレイ12は、例えば液晶パネルや有機エレクトロルミネッセンスパネルを含む表示装置であって、ユーザが視認可能な位置に設けられている。ディスプレイ12は、制御装置11を介して赤外線カメラ10が撮影した画像を表示する。なお、ディスプレイ12は、撮像システム100が測定対象の検出を開始してから終了するまで制御装置11との通信接続を解除され、制御装置11から離れた場所に配置されていてもよい。
【0022】
上述の構成により、制御装置11は、赤外線カメラ10が撮影した画像をユーザが視認可能な態様によりディスプレイ12に表示させる。これにより、制御装置11は、周辺の物体をユーザに認識させることができる。なお、撮像システム100は、ディスプレイ12を備えない場合は、制御装置11は赤外線カメラ10が撮影した画像を図示しない外部記憶装置などに保存できてもよい。また、制御装置11と赤外線カメラ10とディスプレイ12は一体の撮像装置として構成されていてもよい。
【0023】
(赤外線カメラ)
次に、図2を参照して、赤外線カメラ10の構成について説明する。図2は、図1に示す検出システムの赤外線カメラの構成図である。図2に示す赤外線カメラ10は主な構成として、筐体101、対物レンズ102、メカニカルシャッタ103、赤外線センサ104、カメラ制御回路105および温度センサ106を備える。ここで、赤外線カメラ10は、必ずしもメカニカルシャッタ103を備えなくてもよい。
【0024】
筐体101は、赤外線カメラ10の各構成を収容する。対物レンズ102は、赤外線カメラ10が撮影する範囲から入射する赤外線を受け、赤外線センサ104に投射する。メカニカルシャッタ103は、遮光性の板材を含み、対物レンズ102と赤外線センサ104との間に開閉可能に介在する。遮光性の板材は、例えば黒塗装された金属または黒アルマイト加工されたアルミニウム等である。メカニカルシャッタ103は、対物レンズ102よりも外側に配置されてもよい。
【0025】
メカニカルシャッタ103は、閉じた状態のときに、対物レンズ102から赤外線センサ104へ入射する光を遮る。一方、メカニカルシャッタ103は、開いた状態のときに、対物レンズ102から赤外線センサ104へ入射する光を遮らない。また、メカニカルシャッタ103を開いた状態で、後述するキャリブレーションを行う。
【0026】
赤外線センサ104は、アレイ状に配置された感熱素子で構成されている。赤外線センサ104は、対物レンズ102を介して入射する赤外光を受光する。赤外線センサ104は、感熱素子の各々の抵抗値変化によって画像データを生成する。すなわち赤外線センサ104が生成する画像データにはアレイ状に配置された感熱素子の出力値が含まれる。赤外線センサ104はカメラ制御回路105と通信可能に接続し、カメラ制御回路105から所定の制御信号を受けて動作する。赤外線センサ104は、画像データを生成すると、生成した画像データをカメラ制御回路105に供給する。
【0027】
赤外線センサ104は、2次元アレイ状配列された複数の画素を備えている。赤外線センサ104は遠赤外線を検出するためのマイクロボロメータを有していてもよい。あるいは、赤外線センサ104は、赤外波長に感度を有するフォトダイオードなどを有していてもよい。各画素の検出値(検出信号)が被写体の熱画像を形成する。
【0028】
なお、赤外線センサ104のセンサ出力値をディスプレイ12に表示するために設定される画素値のダイナミックレンジは、測定対象を好適に認識できるように分解能が設定されている。そのため、赤外線センサ104は、上述の異常状態を起こさない温度範囲であっても、検出信号である画素値が飽和する場合がある。
【0029】
カメラ制御回路105は、MCU(Micro Controller Unit)を含む制御回路であって、メカニカルシャッタ103および赤外線センサ104を制御する。またカメラ制御回路105は、図1に示す制御装置11と通信可能に接続し、制御装置11から制御信号を受け取り、受け取った制御信号に応じて、赤外線カメラ10の各構成を制御する。カメラ制御回路105は、赤外線カメラ10が撮影をしない場合にはメカニカルシャッタ103が閉じた状態を保つよう制御する。カメラ制御回路105は、赤外線カメラ10が撮影をする場合にはメカニカルシャッタ103が開いた状態となるよう制御する。なお赤外線カメラ10がメカニカルシャッタ103を備えない場合には、カメラ制御回路105はメカニカルシャッタ103を制御しない。またこのとき、カメラ制御回路105は、赤外線センサ104が生成したセンサ出力値を含む画像データを、制御装置11に供給する。
【0030】
またカメラ制御回路105は、所定の条件下、メカニカルシャッタ103を一時的に閉じる。所定の条件とは例えば、赤外線センサ104を保護する目的でメカニカルシャッタ103を一時的に閉じる場合などである。この場合、例えばカメラ制御回路105は、制御装置11からメカニカルシャッタ103を一時的に閉じる指示を受ける。また、カメラ制御回路105は、被写体を撮影した熱画像にかかる熱画像データを制御装置11に供給する。
【0031】
カメラ制御回路105は温度センサ106と通信可能に接続し、温度センサ106から赤外線カメラ10内部の温度に関する測定データを受け取る。またカメラ制御回路105は温度センサ106から受け取った測定データを制御装置11に供給する。
【0032】
温度センサ106は赤外線カメラ10内部に設置され、赤外線カメラ10の温度を測定し、測定データをカメラ制御回路105に供給する。温度センサ106は赤外線センサ104の近傍に設置されているのが好ましい。具体的には、温度センサ106と赤外線センサ104とは、同一の基板上に搭載され、温度センサ106は、例えば、温度センサIC(集積回路)を用いるとよい。
【0033】
(制御装置)
次に、図3を参照して、制御装置11について説明する。図3は、制御装置11のブロック図である。制御装置11は主な構成として、制御IF120、ROM130、RAM140、システム制御部150、画像データ取得部160、画像処理部170、及び画像データ出力部190を有している。またこれらの構成は、バス110を介して適宜通信可能に接続されている。
【0034】
画像データ取得部160は、赤外線カメラ10で撮像された熱画像データを取得する。以下の説明において、画像データ取得部160に入力される熱画像データのことを入力熱画像データと称することがある。例えば、赤外線カメラ10からの熱画像データを入力するためのIF(インターフェース)を備えている。なお、画像データ取得部160と、赤外線カメラ10とのインタフェースは、有線接続であってもよく、無線接続であってもよい。
【0035】
ROM130は、制御装置11、赤外線カメラ10、及びディスプレイ12を制御するための制御プログラムや各種パラメータを格納する。例えば、ROM130は、画像処理部170で実行される画像処理プログラムを格納している。また、ROM130は、システム制御部150で実行されるシステム制御プログラムを格納している。
【0036】
RAM140は、各種プログラムやその実行に用いるパラメータなどを格納している。さらに、画像処理部170の演算データ等を記憶する。また、ROM130又はRAM140は後述する較正データを格納していていても良い。
【0037】
システム制御部150は、撮像システム100の全体を制御する.システム制御部150は、CPU等のプロセッサを備えている。システム制御部150のプロセッサが制御プログラムを実行することで、システム全体を制御することができる。
【0038】
システム制御部150は、赤外線カメラ10を制御するための制御信号を生成する。例えば、システム制御部150は、赤外線カメラ10のシャッタ開閉、フォーカス、ズーム、シャッタスピード、露出などを制御することができる。また、赤外線カメラ10が、パン、チルト機能を備える雲台などの機構に設置されている場合、システム制御部150は、パン、チルトなどを制御することができる。
【0039】
制御IF120は、赤外線カメラ10を制御するためのインタフェースである。例えば、システム制御部150は、制御IF120を介して、赤外線カメラ10のメカニカルシャッタ103を開閉するための制御信号を出力する。また、制御装置11は、制御IF120を介して、赤外線カメラ10に各種の信号やデータを送信することができる。さらに、制御IF120は、赤外線カメラ10からの各種の信号やデータを受信することができる。例えば、制御IF120は、赤外線カメラ10の温度センサ106で測定された環境温度を取得する。
【0040】
画像処理部170は、画像データ取得部160で取得された熱画像データに対して、所定の画像処理を行う。画像処理部170は、画像処理プログラムを実行するためのプロセッサなどを備えていてもよい。画像処理部170のプロセッサは汎用プロセッサであってもよく、専用プロセッサであってもよい。画像処理部170は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)を含む画像処理回路であってもよい。画像処理部170のプロセッサとシステム制御部150のプロセッサは共通であってもよい。
【0041】
画像処理部170は、赤外線カメラ10の手ぶれ検出を行う。具体的には、画像処理部170は、赤外線カメラの手ぶれデータを検出する。そして、画像処理部170は手ぶれ補正を行うための画像処理を施す。画像処理部170における処理については後述する。
【0042】
画像処理部170が入力熱画像データに対して画像処理を行うことで、表示画像データが生成される。画像データ出力部190は表示画像データをディスプレイ12に出力するインタフェースである。
【0043】
次に,画像処理部170について、図4を用い説明する。図4は、画像処理部170の構成を示す制御ブロック図である。画像処理部170は、NUC(Non-Uniformity Correction)部171と、フレームメモリ173と、較正部174と、キャリブレーション部175と、手ぶれ検出部176と、手ぶれデータ算出部177と、手ぶれ補正部179とを備えている。ここで、手ぶれ検出部176のことをぶれ検出部と、手ぶれデータ算出部177のことをぶれデータ算出部と、手ぶれ補正部179のことをぶれ補正部とそれぞれ称することがある。
【0044】
上記のように、画像データ取得部160は、入力熱画像データを取得する。入力熱画像データの各画素のセンサ出力値(画素値)は、例えば、8ビットのデータとなっている。画像データ取得部160は入力熱画像データをNUC部171、較正部174、及びキャリブレーション部175に出力する。NUC部171は、画素間の出力ばらつきを補正するための処理を行う。NUC部171は、環境温度に基づいて入力熱画像データをシャッタレス補正する。
【0045】
シャッタレス補正とは、例えば、メカニカルシャッタ103を閉じずに、赤外線センサ104の画素ばらつきを、環境温度に対応した複数の補正値を用いて補正するものである。シャッタレス補正では、予め環境温度毎に取得した較正データによる補正値を用いて、赤外線センサ104の出力の画素ばらつきが補正される。
【0046】
赤外線センサ104は、環境温度に応じて温度ドリフト特性を持つため、環境温度によって画素ばらつきが変化する。したがって、赤外線カメラ10、又は制御装置11が予め複数の環境温度毎の較正データを取得し、メモリなどに格納しておく。例えば、メモリには、異なる環境温度に対応した較正データが予め取得されている。較正データは例えば環境温度が、カメラが動作する下限温度からカメラが動作する上限温度の範囲において、いくつか取得しておく。予め取得されていない環境温度に対応した較正データは、予め取得されている複数の較正データを多項式などで近似した近似値を用いた補間処理で予測することができる。
【0047】
シャッタレス補正用の較正データは、赤外線カメラ10の前方に赤外線センサ104から見て熱的に均一な黒体を配置した状態で撮影した熱画像データにより求められている。よって、熱的に均一な黒体を撮像した熱画像データを均一にするようなオフセットが画素毎に設定される。NUC部171は、例えば熱画像データ全画素の平均値から各画素の値を引くことにより、画素毎のオフセット値を較正用データとして算出する。なお、較正データの算出はNUC部171に限らず、図示しない画像処理部170の他のブロックまたは赤外線カメラ10で算出されてもよい。シャッタレス補正用の較正データは赤外線センサ104の全ての画素に対して設定されている。
【0048】
赤外線センサ104のセンサ出力は、環境温度に応じて画素ばらつきが変化する。よって、赤外線センサ104が赤外光を受光した場合、そのときの環境温度に対する画素ばらつきを、予め取得した較正データを用いて補正する。NUC部171は、予め取得した複数の較正データに基づいて、メカニカルシャッタ103の開閉を伴う較正を行わずに、画素ばらつきの補正を行う。このような補正を、シャッタレス補正という。
【0049】
なお、シャッタレス補正処理の少なくとも一部は赤外線カメラ10で実行されてもよい。赤外線カメラ10のカメラ制御回路105がシュッタレス補正の処理を実行してもよい。例えば、NUC部171が環境温度に応じた較正用データを、赤外線カメラ10に送信する。そして、カメラ制御回路105が各画素の検出値にオフセット値に基づいた補正をして出力する。この場合、画像データ取得部160がシャッタレス補正された熱画像データを取得する。
【0050】
NUC部171によって、入力熱画像データに対してシャッタレス補正が施された熱画像データをシャッタレス補正画像データとする。つまり、シャッタレス補正画像データはシャッタレス補正処理が行われた熱画像データとなる。NUC部171はシャッタレス補正画像データをフレームメモリ173に出力する。フレームメモリ173は、シャッタレス補正画像データを格納する。シャッタレス補正画像データは、後述するキャリブレーション部175でのキャリブレーション処理が行われていない熱画像である。
【0051】
較正部174は、熱画像を均一化する較正データを生成する。キャリブレーション部175は、入力熱画像データに対してキャリブレーションを行う。キャリブレーション部175は、較正部174が生成した較正データを用いてキャリブレーションを行う。例えば、メカニカルシャッタ103が開いた状態で、赤外線カメラ10がキャリブレーション用の熱画像を撮像する。キャリブレーション用の熱画像は、キャリブレーションを実施するタイミングにおける熱分布を有する被写体を撮像した画像である。キャリブレーション用の熱画像の被写体は、非均一な温度分布を有している。
【0052】
例えば、キャリブレーション用の被写体として、4barチャートを用いた例を図5に示す。4barチャートは、水平方向において、高温部分HTと低温部分LTが交互に表れた被写体である(図5の熱画像A参照)。つまり、キャリブレーション用の熱画像Aには、4つの高温部分HTがある。さらに、高温部分HTの左右両側に低温部分LTがある。高温部分HTと低温部分LTの境界線は、水平方向と直交する方向となる。
【0053】
図5の画像Bは、水平ラインH1におけるキャリブレーション用の入力熱画像データにNUC部171がシャッタレス補正した画像の水平方向プロファイルを示す。図5の画像Bの横軸は水平方向の画素座標を示し、縦軸は画素値を示している。図5の画像Bは熱画像Aの水平1ライン成分を抽出したグラフとなっている。高温部分HTの画素では画素値が大きくなり、低温部分LTの画素では画素値が小さくなる。
【0054】
較正部174は、キャリブレーション用の熱画像を均一にするための較正データを生成する。たとえば、較正部174はキャリブレーション用の熱画像データ全画素の平均値から各画素の値を引いた値を各画素におけるオフセット値として較正データを生成する。これにより、赤外線センサ104の全画素に対するオフセット値が求められる。ここで、キャリブレーション部175で用いる較正データを第1較正データとし、NUC部171で用いる較正データを第2較正データとする。第2較正データは第1較正データと同様に、画素毎に設定されたオフセット値を有している。
【0055】
キャリブレーション部175によるキャリブレーション処理は、シャッタレス補正の処理と同様のアルゴリズムを用いることができる。つまり、キャリブレーション部175は、NUC部171と同様に、不均一な熱画像データを均一な熱画像データとするためのアルゴリズムを実行する。キャリブレーション部175で用いる第1較正データは、画素毎のオフセット値を有している。同様に、NUC部171で用いる第2較正データは、画素毎のオフセット値を有している。専用のASICやCPUパワーを必要とせず、キャリブレーション部175が、キャリブレーション処理を行うことができる。
【0056】
キャリブレーション部175でキャリブレーションされた熱画像をキャリブレーション画像とする。図5のキャリブレーション画像Cは熱画像Aをキャリブレーションしたキャリブレーション画像である。キャリブレーション画像Cは、均一な画像となっている。つまり、各画素における輝度値が均一化されている。換言すると、較正データにおけるオフセット値は不均一となる。つまり、熱画像Aの高温部分HTの画素では画素値が大きいため、第1較正データのオフセット値が小さくなる。一方、熱画像Aの低温部分LTの画素では画素値が小さいため、第1較正データのオフセット値が大きくなる。キャリブレーション部175は赤外線カメラ10で撮像した入力熱画像データの画素値に第1較正データのオフセット値に基づいた補正をした値を、出力値とする。
【0057】
さらに、キャリブレーション部175は、第1較正データを用いて、手ぶれ検出用の熱画像に対して,キャリブレーション処理を行う。つまり、キャリブレーション画像を均一化する第1較正データを用いて、キャリブレーション部175が手ぶれ検出用の熱画像をキャリブレーションする。キャリブレーション部175は、手ぶれ検出用の熱画像の画素値に第1較正データのオフセット値に基づいた補正をすることで、画素毎の出力値を求める。
【0058】
手ぶれ検出用の熱画像と、キャリブレーション用の熱画像とは同じ被写体の画像となっている。手ぶれ検出用の熱画像は、キャリブレーションを実施するタイミングよりも後のタイミングで撮像された画像とすることができる。手ぶれがある場合、被写体に対する赤外線カメラ10の相対的な位置又は向きが変化している。よって、キャリブレーション用の熱画像と、手ぶれ検出用の熱画像とで、熱画像における被写体の位置がずれる。熱画像における高温部分HT及び低温部分LTの位置がずれる。
【0059】
例えば、赤外線カメラ10が同じ被写体を動画像として撮像する場合、手ぶれ検出用の熱画像と、キャリブレーション用の熱画像とは異なるフレームの画像となる。つまり、赤外線カメラ10は、キャリブレーション用の熱画像であるフレーム画像の後に、手ぶれ検出用の熱画像であるフレーム画像を撮像する。画像データ取得部160は、動画像のフレームを順次取得する。そして、画像処理部170は順次取得された各フレーム画像に対して、画像処理を行う。
【0060】
手ぶれ検出部176が、キャリブレーション部175でキャリブレーションされた手ぶれ検出用の熱画像に基づいて、手ぶれ検出を行う。つまり、手ぶれ検出用の熱画像のキャリブレーション画像の画素値に基づいて、手ぶれ検出部176は、手ぶれが生じているか否かを判定する。
【0061】
図5のキャリブレーション画像D、Eはそれぞれ手ぶれが生じている場合のキャリブレーション画像を示す。より詳細には、図5のキャリブレーション画像Dは、左方向に手ぶれ成分がある場合のキャリブレーション画像となっている。ここで左方向の手ぶれとは、赤外線カメラ10が熱画像Aに対して左方向にぶれた場合を示す。図5のキャリブレーション画像Eは、右方向に手ぶれ成分がある場合のキャリブレーション画像となっている。被写体は、図5の熱画像Aに示すように、高温部分HTと低温部分LTがある4barチャートである。
【0062】
左右方向に手ぶれが生じている場合、熱画像において、高温部分HTと低温部分LTが左右にずれる。よって、キャリブレーション処理において、低温部分LTの画素のオフセット値によって補正された高温部分HTの画素がある。このような画素では、キャリブレーションで得られた出力値が極めて大きくなる。同様に、キャリブレーション処理において、高温部分HTの画素のオフセット値によって補正された低温部分LTの画素がある。このような画素では、キャリブレーションで得られた出力値が極めて小さくなる。手ぶれがある場合、手ぶれ検出用の熱画像のキャリブレーション画像は不均一となる。
【0063】
ここで画像における、任意の一方向の幅が1画素のラインのことをプロファイルと称する。キャリブレーション画像Dの水平方向プロファイルは図5のFのようになる。キャリブレーション画像Eの水平方向プロファイルは図5のGのようになる。水平方向プロファイルF、Gはそれぞれキャリブレーション画像D、Eの水平1ラインの画素値成分を抽出したグラフとなっている。具体的には、水平方向プロファイルFは、キャリブレーション画像Dの水平ラインH2におけるプロファイルを示している。水平方向プロファイルGは、キャリブレーション画像Eの水平ラインH3におけるプロファイルを示している。
【0064】
水平方向プロファイルF、Gには、手ぶれ量に応じたピークが出現する。4barチャートでは、高温部分HTと低温部分LTの境界線が8つある。水平方向プロファイルF、Gには8つのピークが出現する。より詳細には、水平方向プロファイルF、Gには4つの正のピークと、4つの負のピークが表れる。
【0065】
手ぶれデータ算出部177は、キャリブレーション画像のプロファイルにおける画素値のピークに基づいて、手ぶれデータを算出する。手ぶれデータには少なくとも、どれだけずれているかを示す手ぶれ量と、どの方向にずれているかを示す手ぶれ方向と、が含まれる。手ぶれデータ算出部177は、手ぶれデータを手ぶれ補正部179に出力する。被写体のずれ量が大きくなるほど、極めて大きい出力値を有する画素、及び極めて小さい出力値を有する画素が増加する。被写体のずれ量が小さくなるほど、極めて大きい出力値を有する画素、及び極めて小さい出力値を有する画素が減少する。手ぶれ量が大きくなるほど、ピークの幅が広くなる。換言すると、手ぶれデータ算出部177は、ピークの幅に基づいて、手ぶれ量を算出することができる。例えば、手ぶれデータ算出部177は、ピークの幅に対応する画素数を手ぶれ量として求める。つまり、手ぶれ量は、熱画像の画素数で示される。なお、複数のピークがある場合、複数のピークの幅の平均値などによって、手ぶれ量を求めてもよい。
【0066】
また手ぶれデータ算出部177は、キャリブレーション画像のプロファイルに生じたピークの正負と、シャッタレス補正画像のプロファイルに生じたエッジの方向とに基づいて手ぶれ方向を算出する。ここで手ぶれ方向を算出する際のキャリブレーション画像とシャッタレス補正画像とは、同じ入力熱画像に基づく画像とする。つまり、同一の入力熱画像をキャリブレーション部175によってキャリブレーションされたキャリブレーション画像と、NUC部171によってシャッタレス補正されたシャッタレス補正画像とする。
【0067】
手ぶれ方向について、図6図7を用いて詳細に説明する。図6は水平方向プロファイルB’、Fを拡大して示す図である。図7は、水平方向プロファイルB’ ’、Gを拡大して示すグラフである。水平方向プロファイルB’は、手ぶれ検出用の熱画像をシャッタレス補正した画像の水平方向プロファイルである。水平方向プロファイルB’ ’は、水平方向プロファイルB’とは異なるタイミングにおける手ぶれ検出用の熱画像をシャッタレス補正した画像の水平方向プロファイルである。水平方向プロファイルFはキャリブレーション画像Dつまり手ぶれ検出用の熱画像をキャリブレーションした画像の水平方向プロファイルである。水平方向プロファイルGはキャリブレーション画像Eつまりキャリブレーション画像Dとは異なるタイミングにおける手ぶれ検出用の熱画像をキャリブレーションした画像ときの水平方向プロファイルである。
【0068】
キャリブレーション画像の任意の画素(例えば、図6中の画素P2)の前後の画素値が正のピークであり、かつ、シャッタレス補正画像の対応する画素P2の前後のエッジが立ち下がりエッジである場合、手ぶれデータ算出部177は、手ぶれ方向は左方向であると算出する。または、キャリブレーション画像の任意の画素(例えば、図6中の画素P1)の前後の画素値が負のピークであり、かつ、シャッタレス補正画像の対応する画素P1の前後のエッジが立ち上がりエッジである場合、手ぶれデータ算出部177は、手ぶれ方向は左方向であると算出する。つまり、キャリブレーション画像Dの手ぶれ方向は左方向であると算出する。
【0069】
キャリブレーション画像の任意の画素(例えば、図7中の画素P3)の前後の画素値が正のピークであり、かつ、シャッタレス補正画像の対応する画素P3の前後のエッジが立ち上がりエッジである場合、手ぶれデータ算出部177は、手ぶれ方向は右方向であると算出する。または、キャリブレーション画像の任意の画素(例えば、図7中の画素P4)の前後の画素値が負のピークであり、かつ、シャッタレス補正画像の対応する画素P4の前後のエッジが立ち下がりエッジである場合は、手ぶれ方向は右方向であると算出する。つまり画像Eの手ぶれ方向は右方向であると算出する。
【0070】
このように、手ぶれデータ算出部177は、キャリブレーション画像のピークの画素の周辺において、ピークの正負と、シャッタレス補正画像のエッジの向きを求める。そして、手ぶれデータ算出部177は、ピークの正負とエッジの向きとに基づいて、手ぶれ方向を算出することができる。なお、キャリブレーション画像のプロファイルにおける画素値のピークが複数ある場合、一番値が大きいピークのみ、または値が閾値以上のピークのみに基づいて、手ぶれ方向を求めてもよい。
【0071】
手ぶれ補正部179は、手ぶれデータに基づいて、手ぶれ検出用の熱画像に対して手ぶれ補正を行う。手ぶれ補正部179は、フレームメモリ173の熱画像データに基づいて、手ぶれ補正を行う。手ぶれ補正部179は、フレームメモリ173に格納されたデータにおいて、画像の切り出し位置を手ぶれ量だけ手ぶれ方向にずらす。後述するように手ぶれデータに手ぶれ角度が含まれる場合は、手ぶれ補正部179は、フレームメモリ173に格納されたデータにおいて、手ぶれ角度だけ傾けて切り出してもよい。これにより、手ぶれ補正処理が施された熱画像が生成される。手ぶれ補正部179は、手ぶれ補正済みの熱画像データを画像データ出力部190に供給する。
【0072】
図8は、手ぶれの検出処理及び手ぶれデータの算出処理を示すフローチャートである。まず、画像データ取得部160がキャリブレーション用の熱画像を取得する(ステップS101)。ここでは、メカニカルシャッタ103が開いた状態で、赤外線カメラ10が被写体を撮像する。
【0073】
較正部174がキャリブレーション用の熱画像を均一化する第1較正データを算出する(ステップS102)。より具体的には較正部174が、各画素のオフセット値を算出し第1較正データとする。
【0074】
次に、画像データ取得部160が手ぶれ検出用の熱画像を取得する(ステップS103)。ここでは、メカニカルシャッタ103が開いた状態で、赤外線カメラが被写体を撮像する。
【0075】
キャリブレーション部175が第1較正データを用いて、手ぶれ検出用の熱画像のキャリブレーション画像を生成する(ステップS104)。キャリブレーション部175は、ステップS102で算出された第1較正データを用いて、手ぶれ検出用の熱画像をキャリブレーションする。つまり、キャリブレーション部175は、画素値にオフセット値に基づいた補正をすることで、キャリブレーション画像を生成する。
【0076】
手ぶれ検出部176は、キャリブレーション画像から画素値のピークを検出する(ステップS105)。手ぶれ検出部176がキャリブレーション画像に画像処理を施すことで、ピークを抽出する。
【0077】
手ぶれ検出部176はキャリブレーション画像の画素値に基づいて、手ぶれの有無を判定する(ステップS106)。例えば、手ぶれ検出部176は、画素値のピークの幅、大きさ、数等に基づいて、手ぶれの有無を判定することができる。
【0078】
手ぶれの特性として、画面全体がぶれることが挙げられる。そこで、手ぶれ検出部176は、各ピークに注目し、複数のピークの幅を比較する。手ぶれ検出部176は、キャリブレーション画像の右、中央、左において、同一フレーム内でピーク幅がほぼ同じであった場合に手ぶれ有りと検出する。図5の水平方向プロファイルF、Gでは、8つのピークの幅が一定範囲以内にある場合に、手ぶれ有りと検出する。ピークの幅の違いが大きく異なる場合、手ぶれ検出部176が手ぶれ無しと判定する。つまり、手ぶれ検出部176は、被写体が移動したと判定する。このように、手ぶれ検出部176は複数のピークの幅を比較することで、手ぶれの有無を判定する。換言すると、ほぼ同じ幅のピークが、画面の右、中央、左にある場合、手ぶれ検出部176は手ぶれ有りと判定する。なお、手ぶれ検出部176は、手ぶれの検出において、複数のピークの画素値の差を比較する必要はない。被写体によっては、複数のピークのレベルが一定でない場合もあり得るからである。
【0079】
さらに、手ぶれ検出部176は、パン・チルト動作の判定用の閾値を記憶していてもよい。例えば、ピークの幅が閾値以上に広くなる場合、手ぶれ検出部176は、赤外線カメラ10のパン・チルト動作と判定する。ピーク幅が閾値よりも広い場合、手ぶれ検出部176は、手ぶれ無しと判定する。また、パン・チルト情報を制御装置11が管理し、制御IF120を介して赤外線カメラ10のパン・チルト動作を行っている場合には、パン・チルト情報に基づいて手ぶれか、パン・チルト動作かを判定してもよい。
【0080】
適切なピークが検出されない場合、手ぶれ検出部176が、手ぶれ無しと判定する(ステップS106のNO)。手ぶれ無しと判定された場合(ステップS106のNO)、画像処理部170は、処理をステップS109に進める。この場合、手ぶれデータ算出部177が手ぶれ量を0として算出してもよい。また、ステップS106によって手ぶれ無しと判定されたが、プロファイルにピークが存在する場合は、図示しないステップによって被写体が動いたと判定してもよい。被写体が動いたと判定された場合には、ステップS101に処理を戻してもよい。
【0081】
複数のピークが適切な幅を有する場合、手ぶれ検出部176が、手ぶれ有りと判定する(ステップS106のYES)。つまり、手ぶれ検出部176が手ぶれを検出する。手ぶれデータ算出部177が手ぶれ量を算出する(ステップS107)。例えば、手ぶれデータ算出部177はピークの幅の画素数に応じて、手ぶれ量を算出する。手ぶれデータ算出部177は、複数のピークの幅の平均値を手ぶれ量として算出する。例えば、手ぶれデータ算出部177はキャリブレーション画像のピークの正負と、シャッタレス補正画像のエッジの方向とに基づいて手ぶれ方向を算出する。
【0082】
手ぶれデータ算出部177は、手ぶれ量を手ぶれ補正部179に送信する(ステップS108)。画像処理部170は、撮影が終了したか否かを判定する(ステップS109)。例えば、次のフレームの熱画像が取得されない場合、画像処理部170は、撮影が終了したと判定する(ステップS109のYES)。次のフレームの熱画像が取得された場合、画像処理部170は、撮影が終了していないと判定する(ステップS109のNO)。よって、画像処理部170は、ステップS103に戻り、処理を繰り返す。画像処理部170は、環境温度が大きく変化した場合や最後にステップS101を処理してから任意の時間が経過している場合には、第1較正データを再度算出した方が適切であるためステップS101に戻ってもよい。
【0083】
次に、手ぶれを補正した映像を出力する処理について、図9を用いて説明する。まず、画像データ取得部160が熱画像を取得する(ステップS201)。ここで取得される熱画像は、図8のステップS103で取得した手ぶれ検出用の熱画像と同じものである。
【0084】
NUC部171が、第2較正データを用いて、シャッタレス補正を行う(ステップS202)。NUC部171は画素値に第2較正データのオフセット値に基づいた補正をすることで、シャッタレス補正画像を生成する。画素値に第2較正データのオフセット値に基づいた補正をした値をシャッタレス補正値とする。
【0085】
フレームメモリ173がシャッタレス補正画像を記憶する(ステップS203)。ここでは、赤外線カメラ10の全画素のシャッタレス補正値がフレームメモリ173に格納される。フレームメモリ173に格納されるシャッタレス補正画像は、画像データ出力部190から出力される出力熱画像データの有効画素数よりも多い画素数を有している。換言すると、シャッタレス補正画像では、手ぶれ補正のための周縁画素が補正エリアに設定されている。フレームメモリ173は撮像可能領域の周縁部分である補正エリアの画素のデータを含んでいる。
【0086】
手ぶれ補正部179がシャッタレス補正画像に対して手ぶれ補正を行う(ステップS204)。手ぶれ補正部179は、手ぶれデータに応じた読み出し位置で、フレームメモリ173からデータを読み出す。これにより、フレームメモリ173から手ぶれ補正された熱画像データが読み出される。そして、画像データ出力部190が、手ぶれ補正された熱画像データを図示しないメモリカードやディスプレイ12などに出力する。
【0087】
画像処理部170は、図8及び図9の処理等を例えばフレーム毎に実行することができる。つまり、キャリブレーション部175は、フレーム毎のキャリブレーションを行う。キャリブレーション部175は、同じ第1較正データを用いて、キャリブレーションを実行する。手ぶれ検出部176は、フレーム毎に手ぶれを検出する。手ぶれデータ算出部177は、手ぶれデータをフレーム毎に算出する。手ぶれ補正部179は、フレーム毎に手ぶれ補正を行う。これにより、適切に手ぶれ補正が行われた動画像データが得られる。なお、画像処理部170は、図8及び図9の処理等をフレーム毎に実行しなくてもよく、例えば数フレーム毎に図8の処理を数フレーム毎に実行し、図9の処理をフレーム毎に実行してもよい。
【0088】
このように、本実施形態では、キャリブレーション部175が、キャリブレーション用の熱画像を均一化する第1較正データを用いてキャリブレーションを行っている。キャリブレーション部175が、第1較正データを用いて、手ぶれ検出用の熱画像のキャリブレーションしている。
【0089】
手ぶれ検出部176が、手ぶれ検出用の熱画像のキャリブレーション画像の画素値のピークを検出している。手ぶれ検出部176が、このピークに基づいて、手ぶれを検出している。これにより、簡便な処理で手ぶれを検出することができる。さらに、手ぶれ検出のための加速度センサ等を不要とすることができる。
【0090】
特に、シャッタレス補正機能を有する撮像システム100では、シャッタレス補正と同様のアルゴリズムを利用することができる。よって、ASICやCPUパワーを必要とせずに、手ぶれを検出することがきる。簡便な処理で手ぶれの検出、及び補正を行うことができる。例えば、撮像システム100にNUC部171の回路やアルゴリズムが実装されている場合、フレームメモリ173のみを追加することで、手ぶれ検出及び手ぶれ補正を実現することができる。キャリブレーション部175は、NUC部171の回路やアルゴリズムを利用することができる。キャリブレーション部175は、シャッタ開状態で得られた熱画像により、第1較正データを算出することができる。よって、簡便な処理で第1較正データを利用することができる。
【0091】
なお、上記の説明では、手ぶれデータ算出部177が、水平方向(左右方向)の手ぶれ量を検出していたが、垂直方向(上下方向)についても手ぶれ量を検出してもよい。図10は上下方向における手ぶれ量を検出するためのパターンの一例を示す図である。図10において、キャリブレーション用の熱画像の一例を示す図である。
【0092】
図10には、熱画像ST1,キャリブレーション画像ST2、ST3が示されている。熱画像ST1は、キャリブレーション用の熱画像である。キャリブレーション画像ST2は、熱画像ST1をキャリブレーションしたキャリブレーション画像である。キャリブレーション画像ST3は、手ぶれが生じたキャリブレーション画像である。キャリブレーション画像ST3は、斜め方向に手ぶれした場合のキャリブレーション画像である。さらに、図10には、熱画像ST1~ST3のそれぞれに対して、水平方向プロファイルと垂直方向プロファイルが示されている。水平方向プロファイルと垂直方向プロファイルは熱画像の中央部分のプロファイルとなっている。
【0093】
熱画像ST1の水平ラインH11における水平方向プロファイルをPH11とし、垂直ラインV11における垂直方向プロファイルをPV11とする。熱画像ST2の水平ラインH12における水平方向プロファイルをPH12とし、垂直ラインV12における垂直方向プロファイルをPV12とする。熱画像ST3の水平ラインH13における水平方向プロファイルをPH13とし、垂直ラインV13における垂直方向プロファイルをPV13とする。
【0094】
キャリブレーション前の熱画像ST1に示されるように、被写体には高温部分HTと低温部分LTがある。ここで、高温部分HTが4つの長方形パターンとなっている。高温部分HTと低温部分LTの境界線が長方形となる。よって、熱画像ST1は、垂直方向プロファイルPV11においても、画素値が不均一になる。
【0095】
キャリブレーション部175は、熱画像ST1を均一化する第1較正データを生成する。よって、熱画像ST1を第1較正データで均一化することで、均一なキャリブレーション画像ST2が得られる。キャリブレーション画像ST2の水平方向プロファイルPH12と垂直方向プロファイルPV12はほぼ一定の値となる。
【0096】
手ぶれ補正が生じた熱画像のキャリブレーション画像ST3は不均一となる。斜め方向に手ぶれが生じているため、水平方向プロファイルPH13と垂直方向プロファイルPV13の両方にピークが生じる。手ぶれデータ算出部177は、水平方向プロファイルPH13に生じたピークの幅に応じて、水平方向の手ぶれ量を算出する。手ぶれデータ算出部177は、水平方向プロファイルPH13に生じたピークの正負と、シャッタレス補正画像の水平方向プロファイルに生じたエッジの方向とに基づいて水平方向の手ぶれ方向を算出する。手ぶれデータ算出部177は、垂直方向プロファイルに生じたピークの幅に応じて、垂直方向の手ぶれ量を算出する。手ぶれデータ算出部177は、垂直方向プロファイルPV13に生じたピークの正負と、シャッタレス補正画像の垂直方向プロファイルに生じたエッジの方向とに基づいて垂直方向の手ぶれ方向を算出する。
【0097】
このようにすることで、垂直方向においても手ぶれデータを検出することができる。手ぶれデータは水平成分と鉛直成分を有する2次元ベクトルで示される。手ぶれ量はピークの幅に対応する画素数で示される。そして、手ぶれ補正部179は、水平方向と鉛直位方向の手ぶれデータに基づいて、手ぶれ補正を行う。このようにすることで、画像処理部170は、より適切に手ぶれを検出して、補正することができる。
【0098】
また、手ぶれデータ算出部177は、それぞれ複数以上の水平方向プロファイルと垂直方向プロファイルとに基づいて手ぶれデータを算出してもよい。例えば手ぶれデータ算出部177は、それぞれ図示しない、画像上寄りの水平方向プロファイルと、画像上寄りの水平方向プロファイルと、画像右寄りの垂直方向プロファイルと、画像左寄りの垂直方向プロファイルと、計4本のプロファイルに基づいて手ぶれデータを算出する。
【0099】
この場合、例えば、画像上寄りの水平方向プロファイルと、画像上寄りの水平方向プロファイルとで、ピークの幅に違いがある場合、手ぶれデータ算出部177は、切り出し角度が0°でないと判定してもよい。つまり、手ぶれデータ算出部177は、複数の同方向のプロファイルにおけるピークの幅の差などから、手ぶれ角度を算出してもよい。ここで手ぶれデータには手ぶれ角度が含まれていてもよいものとする。
【0100】
ここまで、手ぶれ検出部176は、プロファイルを利用して手ぶれの有無を検出していたが、これに限らない。例えば手ぶれ検出部176は、公知の画像処理技術を用いてキャリブレーション画像を解析し、画面全体において同じ程度の幅の線が出現していることから手ぶれ有りと判定してもよい。また、同様に手ぶれデータ算出部177はプロファイルを利用して手ぶれデータを算出していたが、これに限らない。例えば手ぶれデータ算出部177は、公知の画像処理技術を用いてキャリブレーション画像を解析し、画面全体において出現している線の幅などから手ぶれデータを算出してもよい。
【0101】
上述した制御装置11のプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施の形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0102】
さらに、上述した様々な実施の形態において、撮像システム100における処理の手順を説明したように、本開示は、撮像システム100、検手ぶれ検出方法、及び手ぶれ補正方法としての形態も採り得る。また、上述のプログラムは、撮像システム100にこのような手ぶれ検出方法を実行させるための制御プログラムであると言える。また,制御装置11の処理の少なくとも一部は、赤外線カメラ10で実行されてもよい。
【0103】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
100 撮像システム
10 赤外線カメラ
11 制御装置
12 ディスプレイ
101 筐体
102 対物レンズ
103 メカニカルシャッタ
104 赤外線センサ
105カメラ制御回路
106 温度センサ
110 バス
120 制御IF
150 システム制御部
160 画像データ取得部
170 画像処理部
171 NUC部
173 フレームメモリ
175 キャリブレーション部
176 手ぶれ検出部(ぶれ検出部)
177 手ぶれデータ算出部(ぶれデータ算出部)
179 手ぶれ補正部(ぶれ補正部)
190 画像データ出力部
ST1 熱画像
ST2 キャリブレーション画像
ST3 キャリブレーション画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10