(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079037
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】PC鋼より線の接続具および接続方法
(51)【国際特許分類】
E04C 5/08 20060101AFI20240604BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E04C5/08
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191733
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細居 清剛
(72)【発明者】
【氏名】荒木 茂
(72)【発明者】
【氏名】野田 一成
(72)【発明者】
【氏名】松平 拓人
(72)【発明者】
【氏名】平尾 みなみ
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164DA01
2E164DA13
2E164DA32
(57)【要約】
【課題】接続具一次側ウェッジに起因する空隙の発生を防止して接続底板を固定してカップラーシースを容易に取り付ける。
【解決手段】接続具200は、接続底板によりカップラーシース220が取り付けられるPC鋼より線の接続具であって、一次側PC鋼より線10の定着部材を緊張可能に保持する接続具一次側保持部と、二次側PC鋼より線20を緊張可能に保持する接続具二次側保持部と、接続具一次側保持部よりも一次側PC鋼より線10側に設けられ、螺合部材の組合せ(内ねじプレート110Fの雌ねじ110F1と外ねじプレート110Mの雄ねじ110M1)を含む鋼製の支持部材110と、を含む。支持部材110は、螺合部材の螺合状態を変化させることにより伸縮可能に構成され、伸長することにより接続具一次側ウェッジ114に起因する空隙を埋めて接続底板を兼ねる内ねじプレート110Fを固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続するカップラーシース型の接続具であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、
前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、
前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、
前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線側に設けられ、螺合部材の組合せを含む鋼製の支持部材と、を含み、
前記接続底板は、前記一次側PC鋼より線の定着部材である一次側スリーブの前記一次側PC鋼より線側の端部に設けられ、
前記支持部材は、前記螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成され、前記支持部材が伸長することにより前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を埋めて前記接続底板を固定することを特徴とする、接続具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の周面または端面に少なくとも当接する部分を備えることを特徴とする、請求項1に記載の接続具。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備えた短い円筒形状で前記円筒の外周に外ねじとして雄ねじを備える外ねじプレートと、
前記外ねじプレートの雄ねじに螺合する内ねじとしての雌ねじを略中央部に備えた平板形状の内ねじプレートと、を含み、
前記螺合部材の組合せである前記内ねじに前記外ねじを螺合させた前記支持部材の内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記外ねじプレートを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじプレートの端面を前記接続具一次側スリーブに当接させることにより、前記接続底板を固定することを特徴とする、請求項1に記載の接続具。
【請求項4】
前記外ねじプレートは、前記長手方向の一部に前記外ねじに代えて面取り部を備え、
前記面取り部を用いて前記外ねじプレートを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじプレートの面取り部側の端面を前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に当接させることにより、前記接続底板を固定することを特徴とする、請求項3に記載の接続具。
【請求項5】
前記支持部材は、
前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備えるとともに、前記円形穴部の外周側に雌ねじ穴を備えた平板形状のプレートと、
前記雌ねじ穴に螺合するボルトと、を含み、
前記螺合部材の組合せである前記雌ねじ穴に前記ボルトを螺合させた前記支持部材の内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記ボルトを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、ボルト頭の端面を前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に当接させることにより、前記接続底板を固定することを特徴とする、請求項1に記載の接続具。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備える平板形状のプレートと、
前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の外周に設けられた雄ねじに螺合する雌ねじを内周に備えたリングナットと、を含み、
前記プレートの内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記リングナットを前記一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記リングナットの前記一次側PC鋼より線側の端面を前記プレートに当接させることにより、前記接続底板を固定することを特徴とする、請求項1に記載の接続具。
【請求項7】
前記支持部材は、
前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備える平板形状のプレートと、
前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に設けられた雌ねじに螺合する雄ねじを外周に備えるとともに前記長手方向の一部に前記雄ねじに代えて面取り部を備えた外ねじリングと、を含み、
前記プレートの内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記外ねじリングを前記一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじリングの前記一次側PC鋼より線側の端面を前記プレートに当接させることにより、前記接続底板を固定することを特徴とする、請求項1に記載の接続具
【請求項8】
前記内ねじプレートの前記内ねじよりも外周側、または、前記プレートの前記円形穴部よりも外周側に、前記カップラーシースを取り付けるための穴を備え、前記内ねじプレートまたは前記プレートが前記接続底板を兼ねることを特徴とする、請求項3~請求項7のいずれかに記載の接続具。
【請求項9】
一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とをカップラーシース型の接続具を用いて接続する接続方法であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、
前記接続具は、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、螺合部材の組合せを含む鋼製の支持部材と、を含み、
前記接続底板は、前記一次側PC鋼より線の定着部材である一次側スリーブの前記一次側PC鋼より線側の端部に設けられ、
前記接続方法は、前記接続具一次側保持部を取り付ける前に、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線側に、前記螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成され、前記支持部材が伸長することにより前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を埋めて前記接続底板を固定する支持部材を取り付けることを特徴とする、接続方法。
【請求項10】
前記支持部材が前記接続底板を兼ねることを特徴とする、請求項9に記載の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材の接続具および接続方法に関し、特に、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)PC鋼材(本発明においてはこのPC鋼材とはPC鋼より線を指す)の接続具および接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポストテンション方式プレストレストコンクリート(PC)構造において、コンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材を接続するコンクリート打継部では、先行工区Aと後行工区Bの各PC鋼材を接続具を用いて接続した後、後行工区BのPC鋼材を緊張する際に接続具がコンクリートによって移動を拘束されないようにするために、直接埋設型の接続具、または、カップラーシース型の接続具が用いられていた。
【0003】
本願出願人により出願された特開2007-046313号公報(特許文献1)は、直接埋設型の接続具を用いた接続方法を開示する。この特許文献1に開示されたPC鋼材の直接埋設接続方法は、先行工区と後行工区とのコンクリート打継部にて、一次側接続部と二次側接続部とを備える接続装置を用いて直接埋設方式によりPC鋼材を接続するPC鋼材の緊張接続方法において、後行工区のPC鋼材を緊張する際に前記接続装置をコンクリートの支圧による拘束力に抗し移動可能にするために、二次側接続部の端末部に関連させて支圧緩和手段を設ける一方、前記接続装置とコンクリートとの直接の固着を回避させるために、接続装置の外周部に外被層を被着させることを特徴とする。
【0004】
このPC鋼材の直接埋設接続方法によると、先行工区Aと後行工区Bとのコンクリート打継部にて、直接埋設方式によりPC鋼材を緊張下において(一次側のPC鋼材が緊張定着済みであることを意味する)接続するに際して、接続装置の二次側接続部の端末部に関連させて簡単な構造になる支圧緩和手段を取着させ、かつ、外皮層としての防食テープを螺旋状に巻着するなどの簡易な手法によって接続装置の外周部に外被層を被着させるだけの簡単な作業を行えば良くて、接続装置全体を覆わせる空間形成用殻管(カップラーシース)が省略でき、また、接続装置周囲の空間に現場で樹脂を充填する作業が不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたPC鋼材の直接埋設接続方法は、カップラーシースを省略でき、また、接続装置周囲の空間(カップラーシース)に現場で樹脂を充填する作業が不要であるという作業性の格段の向上が高く評価され好評を得ている。その一方、直接埋設型ではなくカップラーシース型の接続方法が採用される場合がある。
【0007】
このようなカップラーシース型の接続方法が採用される場合においては、
図10に示すように、カップラーシース型の接続具500の一次側である接続具一次側ウェッジ114と接続具一次側スリーブ116とからなる部材(定着部材)を用いて、接続具500における一次側でカップラーシース220をボルト214で(支圧板とは別部材の)接続底板210に接続する。この場合、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して、接続具500を用いて一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20とを接続する際において(より限定的にはカップラーシース220をボルト214で接続底板210に固定するまでにおいて)、接続底板210と接続具一次側との間に空隙Gが発生する可能性がある。すなわち、カップラーシース型の接続具500を用いて一次側PC鋼材である一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20とを接続する作業において、接続底板210を適切に固定できない場合である。
【0008】
このような空隙Gが発生すると、
図10(A)および
図10(B)に示すように(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板210を適切に固定することができなくなる場合がある。このため、カップラーシース220を容易に取り付けることができなくなったり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを発生させたりする可能性がある。ここで、この樹脂漏れとは、接続底板210にカップラーシース220を接続することができたとしても、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して発生した
図10(A)~
図10(B)に示す空隙Gの存在を理由として、
図10(C)に黒塗り矢示で示すように接続底板210とともにカップラーシース220がPC鋼材の長手方向に移動可能であるために支圧板18と接続底板210との間に空隙Gが発生する可能性があり、
図10(D)に示す空隙Gから樹脂が漏れる可能性があることを意味する。
【0009】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線のカップラーシース型の接続具であって、接続具一次側でカップラーシースをボルト等で(支圧板とは別部材の)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)PC鋼より線の接続具および接続方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るPC鋼より線の接続具、および、本発明の別の局面に係るPC鋼より線の接続方法は、以下の技術的手段を備える。
【0011】
すなわち、本発明のある局面に係るPC鋼より線の接続具は、一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続するカップラーシース型の接続具であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線側に設けられ、螺合部材の組合せを含む鋼製の支持部材と、を含み、前記接続底板は、前記一次側PC鋼より線の定着部材である一次側スリーブの前記一次側PC鋼より線側の端部に設けられ、前記支持部材は、前記螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成され、前記支持部材が伸長することにより前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を埋めて前記接続底板を固定することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記支持部材は、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の周面または端面に少なくとも当接する部分を備えるように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記支持部材は、前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備えた短い円筒形状で前記円筒の外周に外ねじとして雄ねじを備える外ねじプレートと、前記外ねじプレートの雄ねじに螺合する内ねじとしての雌ねじを略中央部に備えた平板形状の内ねじプレートと、を含み、前記螺合部材の組合せである前記内ねじに前記外ねじを螺合させた前記支持部材の内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記外ねじプレートを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじプレートの端面を前記接続具一次側スリーブに当接させることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、前記外ねじプレートは、前記長手方向の一部に前記外ねじに代えて面取り部を備え、前記面取り部を用いて前記外ねじプレートを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじプレートの面取り部側の端面を前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に当接させることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記支持部材は、前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備えるとともに、前記円形穴部の外周側に雌ねじ穴を備えた平板形状のプレートと、前記雌ねじ穴に螺合するボルトと、を含み、前記螺合部材の組合せである前記雌ねじ穴に前記ボルトを螺合させた前記支持部材の内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記ボルトを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、ボルト頭の端面を前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に当接させることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記支持部材は、前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備える平板形状のプレートと、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の外周に設けられた雄ねじに螺合する雌ねじを内周に備えたリングナットと、を含み、前記プレートの内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記リングナットを前記一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記リングナットの前記一次側PC鋼より線側の端面を前記プレートに当接させることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記支持部材は、前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備える平板形状のプレートと、前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に設けられた雌ねじに螺合する雄ねじを外周に備えるとともに前記長手方向の一部に前記雄ねじに代えて面取り部を備えた外ねじリングと、を含み、前記プレートの内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記外ねじリングを前記一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記外ねじリングの前記一次側PC鋼より線側の端面を前記プレートに当接させることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0018】
さらに好ましくは、前記支持部材は、前記一次側スリーブの外径よりも大きな内径を備える円形穴部を略中央部に備える平板形状のプレートと、前記プレートと略同じ形状で、前記円形穴部の外周に雌ねじ穴を備えた平板形状の調節プレートと、前記雌ねじ穴に螺合する六角穴付き止めねじと、を含み、前記螺合部材の組合せである前記雌ねじ穴に螺合された前記六角穴付き止めねじの前記一次側PC鋼より線側の端面を前記プレートに当接させた支持部材の内径を前記一次側スリーブの外径に装着して、前記六角穴付き止めねじを用いて前記調節プレートを前記接続具一次側スリーブ側へ移動させるように前記螺合状態を変化させて、前記調節プレートを前記接続具一次側スリーブにおける前記一次側PC鋼より線側の端面に当接させて前記プレートで反力を取ることにより、前記接続底板を固定するように構成することができる。
【0019】
さらに好ましくは、上述した接続具において、前記内ねじプレートの前記内ねじよりも外周側、または、前記プレートの前記円形穴部よりも外周側に、前記カップラーシースを取り付けるための穴を備え、前記内ねじプレートまたは前記プレートが前記接続底板を兼ねるように構成することができる。
【0020】
また、本発明の別の局面に係るPC鋼より線の接続方法は、一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とをカップラーシース型の接続具を用いて接続する接続方法であって、前記接続具の外周にカップラーシースが接続底板を用いて接続され、前記接続具は、前記一次側PC鋼より線の定着部材を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジおよび接続具一次側スリーブを含む接続具一次側保持部と、前記二次側PC鋼より線を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部と、螺合部材の組合せを含む鋼製の支持部材と、を含み、前記接続底板は、前記一次側PC鋼より線の定着部材である一次側スリーブの前記一次側PC鋼より線側の端部に設けられ、前記接続方法は、前記接続具一次側保持部を取り付ける前に、前記接続具一次側保持部よりも前記一次側PC鋼より線側に、前記螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成され、前記支持部材が伸長することにより前記接続具一次側ウェッジに起因する空隙を埋めて前記接続底板を固定する支持部材を取り付けることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、上述した接続方法において、前記支持部材が前記接続底板を兼ねるように構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る接続具および接続方法によると、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧板とは別部材の)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止することができる(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るカップラーシース型の接続具200についての(A)二次側PC鋼より線を緊張する前の状態を示す側面における一部分(接続具一次側保持部)の断面図、(B)二次側PC鋼より線を緊張した後の状態を示す側面における断面図である。
【
図2】(A)
図1における支持部材110の二面図、(B)支持部材110を構成する内ねじプレート110Fの二面図、(C)支持部材110を構成する外ねじプレート110Mの二面図、(D)外ねじプレート110Mを回転させるレンチ110Wの二面図である。
【
図3】接続具200を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その1)である。
【
図4】接続具200を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する手順を説明するための図(その2)である。
【
図5】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る支持部材310を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る支持部材410を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る支持部材510を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態の第4の変形例に係る支持部材610を説明するための図である。
【
図9】接続具200を用いた一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する場合の留意点を説明するための図である。
【
図10】従来のカップラーシース型の接続具500を用いた一次側PC鋼より線と二次側PC鋼より線とを接続する場合の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本発明の実施の形態に係るPC鋼より線のカップラーシース型の接続具200およびカップラーシース型の接続具200を用いたPC鋼より線の接続方法について、図面を参照して詳しく説明する。なお、一次側鋼材である一次側PC鋼より線10は、二次側鋼材である二次側PC鋼より線20と接続具200により接続される前に、緊張され定着部材(ウェッジ14およびスリーブ16)により定着されて一次側PC鋼より線10の張力が保持されている。ここで、以下の説明において参照する図については、本発明の容易な理解のために、基本的には詳細な構造を省略した模式図であって、内部ではなく外形で表現すべき部分であっても内部を透視するように表現している場合があったり、外形ではなく断面で表現すべき部分を外形で表現している場合があったり、断面ではなく外形で表現すべき部分を断面で表現している場合があったり、隠れ線を点線ではなく実線で表現している場合があったりする。
【0025】
本実施の形態に係るカップラーシース型のPC鋼より線の接続具200およびその接続具200を用いたPC鋼より線の接続方法について、
図1~
図4を参照して詳しく説明する。なお、
図1(A)が、接続具200の一次側定着部材(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を支持部材110および接続底板(本実施の形態においては内ねじプレート110Fが接続底板を兼ねている)とともに取り付けた状態を、
図1(B)が、接続具200の二次側定着部材(接続具二次側ウェッジ124、接続具二次側スリーブ126、ウェッジ押さえ122)を二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続させて、さらに接続底板にカップラーシース220を接続(固定)した状態を、それぞれ示している。そして、特徴的であるのは、
図1(A)の状態から
図1(B)の状態へ移行する(接続作業を進める)場合において、支持部材110がPC鋼より線の長手方向に伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板(上述した通り接続底板は内ねじプレート110Fが兼ねている)が一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制している。
【0026】
ここで、接続具200を説明する
図1~
図4においては、一次側PC鋼より線10は樹脂が塗布されてシース12で覆われて、二次側PC鋼より線20も樹脂が塗布されてシース22で覆われている。また、接続具一次側スリーブ116と二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とは、二次側ジョイント120および接続プラグ118を介して接続されている。また、二次側定着部材において、接続具二次側ウェッジ124はウェッジ押さえ122により二次側PC鋼より線20の長手方向の移動が規制されている。
【0027】
このカップラーシース型の接続具200は、直接埋設型とは異なる点として、カップラーシース220、カップラーシース220がボルト214で接続される接続底板(上述した通り接続底板は内ねじプレート110Fが兼ねている)およびエポキシパテ230を備える。カップラーシース220およびエポキシパテ230は公知のものである。この接続具200は、接続具一次側でカップラーシース220をボルト214で(支圧板18とは別部材の)接続底板に接続する場合に好適に用いられる。
【0028】
このように、この接続具200はカップラーシース型の接続具であって、
図1(B)に示すように、接続具200の外周にカップラーシース220が接続底板(上述した通り接続底板は内ねじプレート110Fが兼ねている)を用いて接続される。この接続具200は、接続具一次側ウェッジ114が固定されていないための遊びに起因して、接続具200を用いて一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する際において(より限定的にはカップラーシース220をボルト214で接続底板に固定するまでにおいて)、接続底板と接続具一次側との間に空隙Gが発生しようとしても(内ねじプレート110Fからの外ねじプレート110Mの出っ張り厚みである)厚みt(4)の支持部材110を厚みt(5)まで伸長させることにより空隙Gが発生しない(発生した空隙Gを埋める)ようにすることができる。このため、接続底板を固定することができないことを回避することができる。その結果、(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板を適切に固定することができて、カップラーシース220を容易に取り付けることができたり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを回避することができたりする。
【0029】
これらの
図1~
図4に示すように、この接続具200は、一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続するカップラーシース型の接続具であって、接続具200の外周にカップラーシース220が接続底板を用いて接続される。なお、限定されるものではないが、本実施の形態においては、支持部材110の内ねじプレート110Fが接続底板を兼ねている。支持部材110の内ねじプレート110Fが接続底板を兼ねない場合の接続底板は、
図2(B)に示す内ねじプレート110Fにおける円形穴部110FHに内ねじ110F1を備えない。この接続底板(および接続底板を兼ねる内ねじプレート110F)は、
図2(B)に示すように、略矩形状の金属製薄板(鋼製)のプレートであって、一次側PC鋼より線10の定着部材のスリーブ16が挿通される円形穴部110FHを中央部に備えるとともに、カップラーシース220を接続(固定)するためのボルト214と螺合する雌ねじ穴110F2を四隅に備える。この接続底板(および接続底板を兼ねる内ねじプレート110F(ならびに
図5~
図8に示す変形例に係る支持部材310のプレート310P、支持部材410のプレート410P、支持部材510のプレート510Pおよび支持部材610のプレート610P))は、一次側PC鋼より線10の定着部材である一次側スリーブ16の一次側PC鋼より線10側の端部に設けられる。
【0030】
この接続具200は、(1)一次側PC鋼より線10の定着部材(ウェッジ14およびスリーブ16)を緊張可能に保持する、接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116を含む接続具一次側保持部と、(2)二次側PC鋼より線20を緊張可能に保持する、接続具二次側保持部(接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)と、(3)接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10側に設けられ、螺合部材の組合せ(より具体的には
図2に示す内ねじプレート110Fにおける内ねじとしての雌ねじ110F1と外ねじプレート110Mにおける外ねじとしての雄ねじ110M1との組合せであって
図5~
図8に示す変形例における組合せであっても構わない)を含む鋼製の支持部材110とを含む。この支持部材110(ならびに
図5~
図8に示す変形例に係る支持部材310、支持部材410、支持部材510および支持部材610)は、螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成され、この支持部材110が伸長することにより接続具一次側ウェッジ114に起因する空隙Gを埋めて接続底板(ここでは接続底板を兼ねる内ねじプレート110F)を固定する。
【0031】
ここで、支持部材110は、接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10側の周面または端面に少なくとも当接する部分を備える。より具体的には、
図1~
図4に示す支持部材110は端面に、
図5、
図7および
図8に示すに示す支持部材310、支持部材510および支持部材610は端面に、
図6に示すに示す支持部材410は周面に、それぞれ当接する部分を備える。
【0032】
図1および
図2を参照して、接続具200を構成する支持部材110について説明する。この支持部材110は、一次側スリーブ16の外径よりも大きな内径を備えた短い円筒形状でその円筒の外周に外ねじとして雄ねじ110M1を備え円形穴部110MHを備えた外ねじプレート110Mと、外ねじプレート110Mの雄ねじ110M1に螺合する内ねじとしての雌ねじ110F1を略中央部に備えた平板形状で円形穴部110FH(円形穴部110FHの内径>円形穴部110MHの内径)を備えた内ねじプレート110Fと、を含む。螺合部材の組合せである内ねじである雌ねじ110F1に外ねじである雄ねじ110M1を螺合させた支持部材110の内径(より具体的には円形穴部110MH)を一次側スリーブ16の外径に装着して、外ねじプレート110Mを接続具一次側スリーブ116側へ移動させるように螺合状態を変化させて、外ねじプレート110Mの端面を接続具一次側スリーブ116に当接させることにより、接続底板を兼ねる内ねじプレート110Fを固定することができる。
【0033】
ここで、螺合状態を変化させる場合において以下のように構成することも好ましい。外ねじプレート110Mは、一次側PC鋼より線10の長手方向の一部に外ねじである雄ねじ110M1に代えて面取り部110M2を備える。この面取り部110M2に(厚み10mm程度の)レンチ110Wの係合部110W2を係合させて持ち手110W1を用いて(レンチ110Wで外ねじプレート110Mを回して)外ねじプレート110Mを接続具一次側スリーブ116側へ移動させるように螺合状態を変化させることができる。このように螺合状態を変化させて、外ねじプレート110Mの面取り部110M2側の端面を、接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10側の端面に当接させることにより、接続底板を兼ねる内ねじプレート110Fを固定することができる。
【0034】
ここで、
図2(A)、
図3(E)および
図3(F)を参照して、この支持部材110の一次側PC鋼より線10の長手方向の厚みについて説明する。ここで、t(1)およびt(2)は支持部材110の全長(長手方向の厚み)であって、t(4)およびt(5)は支持部材110における内ねじプレート110Fからの外ねじプレート110Mの突出長さ(長手方向の厚み)である。支持部材110における最小厚みt(1)は、たとえば、内ねじプレート110Fおよび外ねじプレート110Mの一次側PC鋼より線10側のそれぞれ端面が一致している状態まで(外ねじプレート110Mの一次側PC鋼より線10側の端面が内ねじプレート110Fの一次側PC鋼より線10側の端面よりも二次側PC鋼より線20側に位置(同じ位置を含む)する必要があり内ねじプレート110Fの一次側PC鋼より線10側の端面から外ねじプレート110Mの一次側PC鋼より線10側の端面が突出していないことが好ましい)、内ねじプレート110Fの内ねじである雌ねじ110F1に外ねじプレート110Mの外ねじである雄ねじ110M1が螺合している状態である。
【0035】
そして、上述したように外ねじプレート110Mをレンチ110Wで回転させることにより、外ねじプレート110Mを接続具一次側スリーブ116側へ空隙Gの長さ以上のΔtだけ移動させることができるように構成されている。このときのΔtだけ移動した状態とは、支持部材110における厚みt(2)は、内ねじプレート110Fの内ねじである雌ねじ110F1と外ねじプレート110Mの外ねじである雄ねじ110M1とが螺合している状態であって、内ねじプレート110Fおよび外ねじプレート110Mの一次側PC鋼より線10側のそれぞれ端面が一致せず、外ねじプレート110Mの端面が内ねじプレート110Fの端面の端面よりも接続具一次側スリーブ116側に位置しており、内ねじプレート110Fから外ねじプレート110MがΔtだけ突出している状態である。したがって、t(2)=t(1)+Δt、t(5)=t(4)+Δt、Δt≧空隙Gの長さの関係が成立する。なお、図においては、この外ねじプレート110Mの移動代であるΔtが理解しやすいように、実際の寸法(3mm~4mm程度まで)よりも強調して大きく描いている。
【0036】
このような接続具200を用いて一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続する接続方法について
図3~
図4を参照して説明する。大略的には、この接続方法は、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付ける前に、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)よりも一次側PC鋼より線10側に、螺合部材の螺合状態を変化させることによりPC鋼より線の長手方向に伸縮可能に構成された支持部材110を取り付ける。そして、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付けた後に、支持部材110を伸長させることにより、接続具一次側ウェッジ114に起因する空隙Gを埋めて接続底板を兼ねる内ねじプレート110Fを固定することを特徴とする。このように、この支持部材110(より具体的には支持部材110を構成する内ねじプレート110F)が、カップラーシース220を固定するための接続底板を兼ねることが好ましい。
【0037】
図3(A)が、接続具200で一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とが接続される前の状態であって、一次側PC鋼より線10は既に緊張され定着部材(ウェッジ14およびスリーブ16)により定着されて一次側PC鋼より線10の張力が保持されている状態である。
【0038】
図3(A)および
図3(B)に示すように、螺合部材の組合せである内ねじである雌ねじ110F1に外ねじである雄ねじ110M1を螺合させた支持部材110の内径(より具体的には円形穴部110MH)を一次側スリーブ16の外径に装着する。このときの支持部材110の全長は、限定されるものではないが、上述したt(1)である。
【0039】
次に、
図3(C)および
図3(C)の部分拡大図である
図3(E)に示すように、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付ける。より具体的には、接続具一次側スリーブ116に取り付けた後に、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116に(楔である接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116にたたき込むようにして)取り付ける。このときに留意すべき点については、
図9を参照して後述する。
【0040】
次に、
図3(D)および
図3(D)の部分拡大図である
図3(F)に示すように、外ねじプレート110Mをレンチ110Wで回転させることにより、外ねじプレート110Mを接続具一次側スリーブ116側へ空隙Gの長さ以上の(ここでは空隙Gの長さに等しい)Δtだけ移動させる。このときの支持部材110の全長は、上述したt(1)に空隙Gの長さ以上(ここでは空隙Gの長さに等しい)Δtだけ伸長されたt(2)である。そして、空隙Gの長さが0になる。これにより、内ねじプレート110Fの内ねじである雌ねじ110F1に外ねじプレート110Mの外ねじである雄ねじ110M1が螺合している状態で、支持部材110により接続底板を兼ねる内ねじプレート110Fを固定することができる。このように、この
図3(C)の状態から
図3(D)の状態へ移行する(さらに
図4(C)に示すカップラーシース220の接続作業を進めるまでの)場合において、支持部材110が伸長することにより、接続具一次側ウェッジ114が(二次側PC鋼より線20が緊張されておらず)固定されておらずその遊びに起因する空隙Gを発生させないで、接続底板を兼ねる支持部材110の内ねじプレート110Fが一次側PC鋼より線10の長手方向で移動することを規制することができる。
【0041】
次に、
図4(A)に示すように、接続具一次側スリーブ116と接続具二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とを接続するための、二次側ジョイント120および接続プラグ118を接続具一次側スリーブ116に接続する。
【0042】
次に、
図4(B)に示すように、接続具一次側スリーブ116と二次側定着部材(ここでは接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)とを接続する。このとき、二次側定着部材において、接続具二次側ウェッジ124をウェッジ押さえ122で押えて、二次側PC鋼より線20の長手方向に接続具二次側ウェッジ124が移動することを規制する。
【0043】
次に、
図4(C)に示す状態になるように、一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを接続している接続具(ここでは、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)、支持部材110、接続具二次側定着部材(接続具二次側ウェッジ124および接続具二次側スリーブ126)、接続プラグ118、二次側ジョイント120、ウェッジ押さえ122、および、二次側PC鋼より線20)を内包するようにカップラーシース220を取り付ける。具体的には、接続底板を兼ねる支持部材110の内ねじプレート110Fの雌ねじ穴110F2にボルト214を螺合させて、カップラーシース220を接続底板(ここでは支持部材110の内ねじプレート110F)に接続(固定)する。
【0044】
次に、
図4(D)に示すように、カップラーシース220の内部に(未硬化の)エポキシ樹脂232を充填して、二次側にコンクリートを打設して、そのコンクリートが固まった後に、二次側PC鋼より線20を緊張して定着する。これら一連の接続方法により、カップラーシース型のPC鋼より線の接続具200を用いて、一次側PC鋼より線10と二次側PC鋼より線20とを、好適に接続することができる。
【0045】
以上のようにして、本実施の形態に係る接続具およびその接続方法によると、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線を接続する場合において、二次側定着前の接続具一次側のウェッジの遊びに起因する空隙Gが発生しないようにできる。このため、接続底板(ここでは支持部材110の内ねじプレート110F)を固定することができないことを回避することができる。その結果、(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板(ここでは支持部材110の内ねじプレート110F)を適切に固定することができて、カップラーシース220を容易に取り付けることができたり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを回避することができたりする。
【0046】
より具体的には、本実施の形態に係る接続具およびその接続方法によると、すなわち、外ねじを有する鋼製の外ねじプレートと内ねじを有する鋼製の内ねじプレートとからなる支持部材を用いて接続具を支持部材により固定することにより、PC鋼材(PC鋼より線)軸芯のずれを防ぐことができて接続具の二次側を接続する時に、接続具とカップラーシースとの干渉を回避したり、カップラーシース取付時にカップラーシース固定用ボルトのずれを回避したりすることができるために、接続具の二次側を接続するときの作業性が向上する。さらに、PC鋼材(PC鋼より線)が自重による曲げ配置になることを回避することができるために、緊張時の鋼材破断などの不具合を解消することができる。また、接続具の一次側を支持部材により確実に固定することができるために、接続具の二次側部材を取り付ける時および二次側のPC鋼材(PC鋼より線)を緊張する時において、一次側ウェッジの脱落を防止することができて、作業性が向上したり、角度定着となるリスクおよび角度定着による接続性能の低減を抑制したり、することができる。
【0047】
<変形例>
以下において、
図5~
図8を参照して、本実施の形態の4つの変形例に係る支持部材について詳しく説明する。なお、以下において、上述した実施の形態と同じ構造および方法については繰り返して説明しない。特に、同じ構造については、変形例に係る支持部材を説明するための
図5~
図8において、上述した実施の形態において説明に用いた図と同じ符号を付しており、上述した説明と重複するために繰り返して説明しない。
【0048】
図5に示すように、第1の変形例に係る支持部材310は、一次側スリーブ16の外径よりも大きな内径を備える円形穴部110FHを略中央部に備えるとともに、円形穴部110FHの外周側に雌ねじ穴310F1を備えた平板形状のプレート310Pと、雌ねじ穴310F1に螺合するボルト310Bと、を含む。なお、これらのプレート310Pとボルト310Bとが鋼製であること、および、カップラーシース220を接続(固定)するためのボルト214と螺合する雌ねじ穴110F2をプレート310Pが備えることは、上述した実施の形態と同じである。
【0049】
螺合部材の組合せである雌ねじ穴310F1にボルト310Bを螺合させた支持部材310の内径(円形穴部110FHの内径)を一次側スリーブ16の外径に装着して、ボルト310Bを接続具一次側スリーブ116側へ移動させるように螺合状態を変化させて(ボルト310Bを回転させて)、ボルト310Bの頭の端面を接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10側の端面に当接させることにより、接続底板を兼ねるプレート310Pを固定する。
【0050】
図6に示すように、第2の変形例に係る支持部材410は、一次側スリーブ16の外径よりも大きな内径を備える円形穴部110FHを略中央部に備える平板形状のプレート410Pと、接続具一次側スリーブ116RNにおける一次側PC鋼より線10側の外周に設けられた雄ねじ116RN1に螺合する雌ねじ410RN1を内周に備えたリングナット410RNと、を含む。なお、これらのプレート410Pとリングナット410RNとが鋼製であること、および、カップラーシース220を接続(固定)するためのボルト214と螺合する雌ねじ穴110F2をプレート410Pが備えることは、上述した実施の形態と同じである。
【0051】
プレート410Pの内径(円形穴部110FHの内径)を一次側スリーブ16の外径に装着して、螺合部材の組合せであるリングナット410RNの雌ねじ410RN1と接続具一次側スリーブ116RNの雄ねじ116RN1とにおいてリングナット410RNを一次側スリーブ16側へ移動させるように螺合状態を変化させて(リングナット410RNを回転させて)、リングナット410RNの一次側PC鋼より線10側の端面をプレート410Pに当接させることにより、接続底板を兼ねるプレート410Pを固定する。
【0052】
図7に示すように、第3の変形例に係る支持部材510は、一次側スリーブ16の外径よりも大きな内径を備える円形穴部110FHを略中央部に備える平板形状のプレート510Pと、接続具一次側スリーブ116Rにおける一次側PC鋼より線10側の端面に設けられた雌ねじ116R1に螺合する雄ねじ510R1を外周に備えるとともに長手方向の一部に雄ねじ510R1に代えて面取り部510R2を備えた外ねじリング510Rと、を含む。なお、これらのプレート510Pと外ねじリング510Rとが鋼製であること、および、カップラーシース220を接続(固定)するためのボルト214と螺合する雌ねじ穴110F2をプレート510Pが備えることは、上述した実施の形態と同じである。
【0053】
プレート510Pの内径(円形穴部110FHの内径)を一次側スリーブ16の外径に装着して、螺合部材の組合せである外ねじリング510Rの雄ねじ510R1と接続具一次側スリーブ116RNの雌ねじ116R1とにおいて外ねじリング510Rを一次側スリーブ16側へ移動させるように螺合状態を変化させて(面取り部510R2を用いて外ねじリング510Rを回転させて)、外ねじリング510Rの一次側PC鋼より線10側の端面をプレート510Pに当接させることにより、接続底板を兼ねるプレート510Pを固定する。
【0054】
図8に示すように、第4の変形例に係る支持部材610は、一次側スリーブ16の外径よりも大きな内径を備える円形穴部110FHを略中央部に備える平板形状のプレート610Pと、このプレート610Pと略同じ形状(円形穴部110FHを略中央部に備える点と平板形状である点とで略同じ形状)で円形穴部110FHの外周に雌ねじ穴610AP2を備えるとともにその外形(大きさ)がプレート610Pが備える雌ねじ穴110F2の位置よりも(カップラーシース220をプレート610Pに接続(固定)するために)小さい大きさの調節プレート610APと、この雌ねじ穴610AP2に螺合する六角穴付き止めねじ610S、を含む。なお、これらのプレート610Pと調節プレート610APと六角穴付き止めねじと610Sとが鋼製であること、および、カップラーシース220を接続(固定)するためのボルト214と螺合する雌ねじ穴110F2をプレート610Pが備えることは、上述した実施の形態と同じである。
【0055】
螺合部材の組合せである雌ねじ穴610AP2に螺合された六角穴付き止めねじ610Sの一次側PC鋼より線10側の端面をプレートに当接させた支持部材610の内径(円形穴部110FHの内径)を一次側スリーブ16の外径に装着して、六角穴付き止めねじ610Sを用いて調節プレート610APを接続具一次側スリーブ116側へ移動させるように螺合状態を変化させて(六角穴付き止めねじ610Sを回転させて)、調節プレート610APを接続具一次側スリーブ116における一次側PC鋼より線10側の端面に当接させてプレート610Pで反力を取ることにより、接続底板を兼ねるプレート610Pを固定する。
【0056】
これらの4つの変形例に係る支持部材310、支持部材410、支持部材510、および、支持部材610によっても、支持部材110と同じく、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼より線を接続する場合において、二次側定着前の接続具一次側のウェッジの遊びに起因する空隙Gが発生しないようにできる。このため、接続底板(ここでは支持部材のプレート)を固定することができないことを回避することができる。その結果、(二次側PC鋼材である二次側PC鋼より線20の緊張前において)接続底板(ここでは支持部材のプレート)を適切に固定することができて、カップラーシース220を容易に取り付けることができたり、カップラーシース220への樹脂充填時に樹脂漏れを回避することができたりする。
【0057】
最後に、以下において、
図9を参照して、本実施の形態に係る接続方法において、
図3(C)に示す(支持部材を取り付けた後に)接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付ける際に留意すべき点について説明する。
【0058】
図9(A)に示すように、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付ける際には、接続具一次側スリーブ116に取り付けた後に、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116に(楔であるウェッジをスリーブに打ち付けるようにして)取り付ける。
【0059】
この場合において、
図9(B)~
図9(E)に示すように、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116への打ち付け(楔であるウェッジをスリーブへのたたき込み)が甘いと、外ねじプレート110Mが二次側PC鋼より線20側に移動して、内ねじプレート110Fから外れてしまったり、接続具一次側スリーブ116の二次側PC鋼より線20側への移動量が大きくカップラーシース220を取り付けることが困難になったりする。
【0060】
また、この場合において、
図9(F)~
図9(H)に示すように、接続具一次側スリーブ116を支圧板18から浮いた状態で接続具一次側ウェッジ114をセットすると(たたき込むと)、浮いた間隔+接続具一次側ウェッジ114の遊び分だけ接続具一次側スリーブ116が移動して隙間発生して、カップラーシース220を取り付けることが困難になる。
【0061】
このような不具合を発生させないために、支持部材を取り付けた後に、接続具一次側保持部(接続具一次側ウェッジ114および接続具一次側スリーブ116)を取り付ける際には、接続具一次側スリーブ116を支圧板18から浮いていない状態で、かつ、接続具一次側ウェッジ114を接続具一次側スリーブ116へ十分に打ち付ける(楔であるウェッジをスリーブへ十分にたたき込む)ことに留意しなければならない。
【0062】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ポストテンション方式プレストレストコンクリートにプレストレスを与えるために用いるPC鋼材の接続具および接続方法に好ましく、カップラーシース型の接続具において接続具一次側でカップラーシースをボルトで(支圧部材の内ねじプレートが兼ねる場合がある)接続底板に固定する場合において接続具一次側のウェッジが固定されていないための遊びに起因する接続底板と接続具一次側との空隙が発生することを防止する(終局的には接続底板を適切に固定できてカップラーシースを容易に取り付けることができるとともにカップラーシースへの樹脂充填時の樹脂漏れを防止することができる)点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0064】
10 一次側PC鋼より線
20 二次側PC鋼より線
200 (カップラーシース型の)PC鋼より線の接続具
110 支持部材
110M 外ねじプレート
110F 内ねじプレート
114 接続具一次側ウェッジ
116 接続具一次側スリーブ
118 接続プラグ
120 二次側ジョイント
124 接続具二次側ウェッジ
126 接続具二次側スリーブ
214 ボルト
210 接続底板
220 カップラーシース
230 エポキシパテ
232 (未硬化の)エポキシ樹脂
310 第1の変形例に係る支持部材
410 第2の変形例に係る支持部材
510 第3の変形例に係る支持部材
610 第4の変形例に係る支持部材