(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079058
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】キッチンタオルロール
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20240604BHJP
A47L 13/16 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
D21H27/00 F
A47L13/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191767
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 美沙
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】飯野 里保
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 秀彦
【テーマコード(参考)】
3B074
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA04
3B074AB05
3B074AC03
4L055AJ01
4L055AJ07
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA09
4L055EA10
4L055EA15
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA16
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールを提供する。
【解決手段】2プライの一方又は両方にエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、積層したキッチンタオルシートを、ロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、キッチンタオルシートの1プライの坪量が16g/m
2以上27g/m
2以下であり、DMDTとDCDTが、いずれも600gf/25mm以上1500gf/25mm以下で、かつ、DCDTに対するDMDTの比率(DMDT/DCDT)が0.3以上2.5以下であり、MD方向及びCD方向における曲げ抵抗が、いずれも4.5mN以上22.0mN以下であり、単位面積当たりの吸水量が330g/m
2以上600g/m
2以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2プライのシートの一方又は両方にエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートを、ロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、
前記キッチンタオルシートの1プライの坪量が16g/m2以上27g/m2以下であり、
前記キッチンタオルシートにおける、JIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTが、いずれも600gf/25mm以上1500gf/25mm以下で、かつ、前記DCDTに対する前記DMDTの比率(DMDT/DCDT)が0.3以上2.5以下であり、
前記キッチンタオルシートのMD方向及びCD方向における曲げ抵抗が、いずれも4.5mN以上22.0mN以下であり、
前記キッチンタオルシートの単位面積当たりの吸水量が330g/m2以上600g/m2以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。
【請求項2】
前記キッチンタオルシートの比容積が7.6cm3/g以上19.2cm3/g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記エンボスパターンが線状であり、
前記線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスが占める面積が、前記キッチンタオルシートの面積の4%以上50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項4】
前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが0.06mm以上1.05mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項5】
前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項6】
前記キッチンタオルシートの紙厚が1.3mm/10プライ以上5.0mm/10プライ以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項7】
ロールの巻直径が85mm以上180mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項8】
前記キッチンタオルシートのJIS P 8113に基づくMD方向の伸び率が6%以上15%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項9】
前記キッチンタオルシートのJIS P 8113に基づくCD方向の伸び率が3%以上10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンタオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キッチンタオルが各種開発されている。
【0003】
キッチンタオルは強度や使用時のしっかり感が重要であり、通常の原紙では、しっかり感を出すために原紙の強度を高くする抄紙技術が開発されている。
【0004】
通気乾燥を用いた、所謂TAD(Through Air Drying)抄紙技術によって得られる原紙は、吸水性が高く、柔らかな風合いをもつことから、キッチンタオルロールの原紙として優れている。
【0005】
キッチンタオルロールの先行技術文献として、例えば特許文献1には、エンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xをロール状に巻取ったキッチンタオルロール1であって、キッチンタオルシートは、エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有し、2プライの坪量が30g/m2以上54g/m2以下、紙厚が1.3mm/10枚以上5mm/10枚以下、2プライの1m2あたりの吸水量が220g以上600g以下であり、キッチンタオルロール1の巻長が14m以上44m以下、巻直径が110mm以上189mm以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
キッチンタオルロールには吸水性や柔らかな風合いだけでなく、対象物を清拭した際のしっかり感(紙のハリ・コシ)や紙が破れないことが求められる。しかし、TADの場合は、凹凸のファブリックを用いて紙厚を高くするため、しっかり感というよりは柔らかな風合いになり、また、繊維間結合する繊維が、従来のドライクレープ方式の抄紙機より少なくなるため、強度が低くなる。
【0008】
そのため、通常のエンボス(例えば、従来のエンボスパターンである、四角形、円形、楕円形等のパターン)を使用すると、今度は強度が低く(保てなく)なる。この問題に対しては、坪量を高くすることで、強度や吸水量を高く維持することができるが、その場合はコストアップになってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は鋭意検討を行い、2プライのシートの一方又は両方にエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートを、ロール状に巻取ったキッチンタオルロールにおいて、キッチンタオルシートにおける1プライの坪量、乾燥時のMD方向とCD方向のそれぞれの引張強度及びそれらの比率、MD方向及びCD方向の曲げ抵抗、及び単位面積当たりの吸水量をそれぞれ所定の数値範囲内とすることで、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールとすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様は、2プライのシートの一方又は両方にエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシートを、ロール状に巻取ったキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートの1プライの坪量が16g/m2以上27g/m2以下であり、前記キッチンタオルシートにおける、JIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDTと乾燥時のCD方向の引張強度DCDTが、いずれも600gf/25mm以上1500gf/25mm以下で、かつ、前記DCDTに対する前記DMDTの比率(DMDT/DCDT)が0.3以上2.5以下であり、前記キッチンタオルシートのMD方向及びCD方向における曲げ抵抗が、いずれも4.5mN以上22.0mN以下であり、前記キッチンタオルシートの単位面積当たりの吸水量が330g/m2以上600g/m2以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールである。
【0012】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートの比容積が7.6cm3/g以上19.2cm3/g以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記エンボスパターンが線状であり、前記線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスが占める面積が、前記キッチンタオルシートの面積の4%以上50%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記エンボスパターンにおけるエンボスの深さが0.06mm以上1.05mm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートは、前記エンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有していることを特徴とするものである。
【0016】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートの紙厚が1.3mm/10プライ以上5.0mm/10プライ以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、ロールの巻直径が85mm以上180mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(8)本発明の第8の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートのJIS P 8113に基づくMD方向の伸び率が6%以上15%以下であることを特徴とするものである。
【0019】
(9)本発明の第9の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、前記キッチンタオルシートのJIS P 8113に基づくCD方向の伸び率が3%以上10%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキッチンタオルロールの斜視図である。
【
図2】本発明のキッチンタオルシートの吸水量の測定方法を示す図である。
【
図3】本発明のキッチンタオルロールにおけるエンボスパターンの一例を示す図である。
【
図4】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
【
図5】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
【
図6】エンボスパターンについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
【
図7】本発明のキッチンタオルシートの抄紙工程の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0023】
また、キッチンタオルシートにおけるMD方向とは、キッチンタオルシートを抄紙した際の流れ方向(Machine Direction)であり、CD方向とは、MD方向に垂直な方向(Cross Direction)である。
【0024】
<キッチンタオルロール>
図1は、本発明の一実施形態に係るキッチンタオルロール1の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るキッチンタオルロール1は、2プライのシートの一方又は両方にエンボスパターンが付与されたシートをグルーで接着処理し、2プライに積層したキッチンタオルシート1xを、ロール状に巻取ったキッチンタオルロール1である。なお、キッチンタオルシート1xは、ロール巻方向の略等間隔において、ロール幅方向にミシン目を施されていることが好ましい(図示しない)。
なお、
図1に示すように、キッチンタオルシート1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(キッチンタオルシート1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(キッチンタオルシート1xの裏面)と称する。また、キッチンタオルシート1xの端部をキッチンタオルロール1の最外周の端縁1eと称する。
【0025】
キッチンタオルロール1の用途としては、例えば、家庭のキッチンや飲食店の厨房等において水分又は油分のふき取りや汚れ落とし等に使用されるキッチンペーパー(ペーパータオル、クッキングペーパー等と称される場合もある。)のロール体(キッチンペーパーロール)、その他衛生紙のロール体等が挙げられる。
【0026】
(巻長及び巻直径)
キッチンタオルロール1の巻長は、下限が10m以上であることが好ましく、20m以上であることがより好ましく、25m以上であることが更に好ましい。また、上限は50m以下であることが好ましく、40m以下であることがより好ましく、35m以下であることが更に好ましい。巻長が上記の数値範囲内であることにより、後述する巻直径DRを適切な範囲にすることができる。
【0027】
巻長は、次のように測定する。まず、キッチンタオルロール1のミシン目とミシン目の間のキッチンタオルシート1xについて、10シート分の長さを実測する。その後、キッチンタオルロール1のシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求める。例えば、10シート分の長さが1.80m、シート数が150シートの場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。なお、キッチンタオルロール1にミシン目がない場合は、巻長を実測する。
【0028】
本実施形態に係るキッチンタオルロール1の巻直径DRは、85mm以上180mm以下であることが好ましい。巻直径DRが上記の数値範囲内であることにより、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロール1とすることができる。なお、巻直径DRは100mm以上170mm以下であることがより好ましく、130mm以上160mm以下であることが更に好ましい。
【0029】
ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて実測する。測定は10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
【0030】
(ロール幅及びロール重量)
キッチンタオルロール1のロール幅は、下限が170mm以上であることが好ましく、185mm以上であることがより好ましく、195mm以上であることが更に好ましい。また、上限は290mm以下であることが好ましく、250mm以下であることがより好ましく、210mm以下であることが更に好ましい。ロール幅が上記の数値範囲内であることにより、坪量、強度及び吸水量を一定の範囲に維持したキッチンタオルロール1とすることができる。
【0031】
また、キッチンタオルロール1のロール重量は、下限が95g以上であることが好ましく、180g以上であることがより好ましく、310g以上であることが更に好ましい。また、上限は470g以下であることが好ましく、430g以下であることがより好ましく、370g以下であることが更に好ましい。ロール重量が上記の数値範囲内であることにより、坪量、強度及び吸水量を一定の範囲に維持したキッチンタオルロール1とすることができる。
【0032】
ロール重量は、キッチンタオルロール1におけるコアを含まないロール幅280mmあたりの重量とする。ロール幅が280mmでない場合は、比例計算により280mmあたりの重量に換算する。
【0033】
(ロール密度)
本実施形態に係るキッチンタオルロール1のロール密度は、下限が0.04g/cm3以上であることが好ましく、0.05g/cm3以上であることがより好ましく、0.06g/cm3以上であることが更に好ましい。また、上限は0.15g/cm3以下であることが好ましく、0.13g/cm3以下であることがより好ましく、0.08g/cm3以下であることが更に好ましい。ロール密度が上記の数値範囲内であることにより、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロール1とすることができる。
【0034】
ロール密度は、(ロール重量)÷(ロールの体積)で表される。ロール重量は、ロール幅280mmあたりのキッチンタオルロール1の重量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径DI部分の断面積)]×ロール幅(280mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅280mmあたりのロール重量(コアを除く)が382g、巻直径DRが150mm、コア外径DIが39mmの場合、ロール密度=382g÷[{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}×(280mm÷10)]=0.08g/cm3となる。
【0035】
(巻密度)
本実施形態に係るキッチンタオルロール1の巻密度は、下限が0.22m/cm2以上であることが好ましく、0.25m/cm2以上であることがより好ましく、0.28m/cm2以上であることが更に好ましい。また、上限は0.68m/cm2以下であることが好ましく、0.54m/cm2以下であることがより好ましく、0.40m/cm2以下であることが更に好ましい。キッチンタオルロール1の巻密度が上記の数値範囲内であることにより、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロール1とすることができる。
【0036】
巻密度は、(巻長×プライ数)÷(ロールの断面積)で表される。ロールの断面積は、{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積-(コア外径DI部分の断面積)}で表される。例えば、巻長27m、2プライ、巻直径DR150mm、コア外径DI39mmの場合、巻密度=(27m×2)÷{3.14×(150mm÷2÷10)2-3.14×(39mm÷2÷10)2}=0.33m/cm2となる。
【0037】
(コア外径)
また、本発明のキッチンタオルロール1の芯の外径である、コア外径DIは、下限が35mm以上であることが好ましく、38mm以上であることがより好ましく、42mm以上であることが更に好ましい。また、上限は50mm以下であることが好ましく、48mm以下であることがより好ましく、46mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが上記の数値範囲内であることにより、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロール1とすることができる。
【0038】
コア外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。なお、コアに芯(紙管)がない場合は、コア部分の空洞の外径を測定する。
【0039】
<キッチンタオルシート>
(坪量)
本実施形態に係るキッチンタオルシート1xの1プライの坪量は、16g/m2以上27g/m2以下である。1プライの坪量が16g/m2未満であると、キッチンタオルシート1xが吸水性に劣る。また、1プライの坪量が27g/m2を超えると、製造コストが高くなる。
キッチンタオルシート1xの坪量はJIS P 8124に基づいて測定することができる。なお、キッチンタオルシート1xの1プライの坪量は、18g/m2以上25g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上23g/m2以下であることがより好ましい。
【0040】
(紙厚)
キッチンタオルシート1xの紙厚は、1.3mm/10プライ以上5.0mm/10プライ以下であることが好ましい。紙厚が1.3mm/10プライ未満であると、キッチンタオルシート1xが吸水性としっかり感に劣る。紙厚が5.0mm/10プライを超えると、製造コストが高くなる。
紙厚は、シックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定することができる。測定条件は、測定荷重37.85gf/cm2、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。試料としては、キッチンタオルシート1xを10プライ分(2プライを5組分)として測定を行う。また、測定を異なる箇所で10回繰り返して測定結果を平均する。なお、キッチンタオルシート1xの紙厚は、2.0mm/10プライ以上4.4mm/10プライ以下であることが好ましく、2.6mm/10プライ以上3.8mm/10プライ以下であることがより好ましい。
【0041】
(比容積)
キッチンタオルシート1xの比容積は、7.6cm3/g以上19.2cm3/g以下であることが好ましい。キッチンタオルシート1xの比容積が7.6cm3/g未満であると、キッチンタオルシート1xが柔らかさに劣る。また、キッチンタオルシート1xの比容積が19.2cm3/gを超えると、キッチンタオルシート1xがしっかり感に劣る。
なお、キッチンタオルシート1xの比容積は、11.1cm3/g以上17.6cm3/g以下であることがより好ましく、12.4cm3/g以上16.5cm3/g以下であることが更に好ましい。比容積は、キッチンタオルシート1xの1プライ当たりの紙厚を1プライ当たりの坪量で割り、単位(g)当たりの容積(cm3)で表す。
【0042】
(DMDT、DCDT及びGMT)
キッチンタオルシート1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時のMD方向の引張強度DMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)は、600gf/25mm以上1500gf/25mm以下である。
また、キッチンタオルシート1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時のCD方向の引張強さDCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)は、600gf/25mm以上1500gf/25mm以下である。
【0043】
さらに、DMDTとDCDTの積の平方根であるGMTは、600gf/25mm以上1500gf/25mm以下であることが好ましい。
DMDT、DCDT又はGMTが600gf/25mm未満であると、結果としてキッチンタオルシート1xはしっかり感と破れにくさに劣る。DMDT、DCDT又はGMTが1500gf/25mmを超えると、結果としてキッチンタオルシート1xが硬くなり、柔らかさに劣る。
【0044】
なお、DMDTは720gf/25mm以上1350gf/25mm以下であることが好ましく、800gf/25mm以上1200gf/25mm以下であることがより好ましい。また、DCDTは720gf/25mm以上1350gf/25mm以下であることが好ましく、800gf/25mm以上1200gf/25mm以下であることがより好ましい。
さらに、GMTは720gf/25mm以上1350gf/25mm以下であることが好ましく、800gf/25mm以上1200gf/25mm以下であることがより好ましい。
【0045】
また、DCDTに対する、DMDTの比率(DMDT/DCDT)は0.3以上2.5以下である。比率が0.3未満であると、DMDTが一定の範囲である一方でDCDTが高くなり、キッチンタオルシート1xが柔らかさに劣る。2.5を超えると、DCDTが一定の範囲である一方でDMDTが高くなり、キッチンタオルシート1xが柔らかさに劣る。
なお、DCDTに対するDMDTの比率(DMDT/DCDT)は0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.7以上1.3以下であることがより好ましい。
キッチンタオルシート1xのDMDT及びDCDTは、JIS P 8113に準拠して測定し、測定したDMDTとDCDTから比率(DMDT/DCDT)を算出する。また、測定したDMDTとDCDTの積の平方根からGMTを算出する。
【0046】
(WMDT及びWCDT)
キッチンタオルシート1xの、旧JIS S 3104(1999)に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)は、190gf/25mm以上540gf/25mm以下であることが好ましい。
また、キッチンタオルシート1xの、旧JIS S 3104(1999)に基づく湿潤時のCD方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile Strength)は、190gf/25mm以上540gf/25mm以下であることが好ましい。
【0047】
WMDTが190gf/25mm未満であるか、又はWCDTが190gf/25mm未満であると、いずれもキッチンタオルシート1xはしっかり感と破れにくさに劣る。WMDTが540gf/25mmを超えるか、又はWCDTが540gf/25mmを超えると、いずれも結果としてキッチンタオルシート1xは柔らかさに劣る。
【0048】
なお、WMDTは240gf/25mm以上480gf/25mm以下であることがより好ましく、270gf/25mm以上430gf/25mm以下であることが更に好ましい。また、WCDTは240gf/25mm以上480gf/25mm以下であることがより好ましく、270gf/25mm以上430gf/25mm以下であることが更に好ましい。
【0049】
また、WCDTに対するWMDTの比率(WMDT/WCDT)は0.3以上2.5以下であることが好ましい。比率が0.3未満であると、WMDTが一定の範囲である一方でWCDTが高くなってキッチンタオルシート1xが柔らかさに劣るか、又はWMDTが低くなって、キッチンタオルシート1xがしっかり感と破れにくさに劣る。2.5を超えると、WCDTが一定の範囲である一方でWMDTが高くなってキッチンタオルシート1xが柔らかさに劣るか、又はWCDTが低くなってキッチンタオルシート1xがしっかり感と破れにくさに劣る。
なお、WCDTに対するWMDTの比率(WMDT/WCDT)は0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.7以上1.3以下であることが更に好ましい。
キッチンタオルシート1xのWMDT及びWCDTは、旧JIS S 3104(1999)に準拠して測定する。
【0050】
(伸び率)
さらに、キッチンタオルシート1xのJIS P 8113に基づくMD方向の伸び率は6%以上15%以下であることが好ましい。キッチンタオルシート1xのMD方向の伸び率が6%未満であると、結果としてキッチンタオルシート1xは硬くなり、柔らかさに劣る。また、キッチンタオルシート1xのMD方向の伸び率が15%を超えると、結果としてキッチンタオルシート1xはしっかり感に劣る。
なお、キッチンタオルシート1xのMD方向の伸び率は7%以上12%以下であることがより好ましく、8%以上9%以下であることが更に好ましい。
【0051】
そして、キッチンタオルシート1xのJIS P 8113に基づくCD方向の伸び率は3%以上10%以下であることが好ましい。キッチンタオルシート1xのCD方向の伸び率が3%未満であると、結果としてキッチンタオルシート1xは硬くなり、柔らかさに劣る。また、キッチンタオルシート1xのCD方向の伸び率が10%を超えると、結果としてキッチンタオルシート1xはしっかり感に劣る。
なお、キッチンタオルシート1xのCD方向の伸び率は4%以上8%以下であることがより好ましく、5%以上6%以下であることが更に好ましい。
キッチンタオルシート1xの各方向の伸び率は、JIS P 8113に記載された方法に準拠して測定することができる。
【0052】
(曲げ抵抗)
キッチンタオルシート1xのMD方向及びCD方向における曲げ抵抗は、いずれも4.5mN以上22.0mN以下である。キッチンタオルシート1xのMD方向又はCD方向のいずれかの曲げ抵抗が4.5mN未満であると、キッチンタオルシート1xの坪量や強度が低くなり、しっかり感、破れにくさに劣る。また、キッチンタオルシート1xのMD方向又はCD方向のいずれかの曲げ抵抗が22.0mNを超えると、キッチンタオルシート1xが硬くなり、柔らかさに劣る。
なお、キッチンタオルシート1xのMD方向及びCD方向における曲げ抵抗は、いずれも7.5mN以上17.5mN以下であることが好ましく、10.5mN以上15.5mN以下であることがより好ましい。
【0053】
キッチンタオルシート1xの各方向の曲げ抵抗は、JIS P 8125-1:2017(ISO2493)に記載された方法に準拠し、L&Wベンディングテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて測定することができる。幅38mm、長さ100mmのキッチンタオルシート1xの試験片について、曲げ角度を15度、曲げ長(試料台のスパン)を10mmとしたときの各方向の測定値を曲げ抵抗(荷重)とする。上記の測定は、MD方向及びCD方向のそれぞれの方向に対して行う。
なお、シートのミシン目の間隔が短くて、長さ100mmの試験片を採取できない場合は、試験片の長さを短くすることができる。
【0054】
(吸水量)
本発明において、キッチンタオルシート1xの単位面積当たりの吸水量は、330g/m2以上600g/m2以下である。単位面積当たりの吸水量が330g/m2未満であると、キッチンタオルシート1xが吸水性に劣る。また、単位面積当たりの吸水量が600g/m2を超えると、キッチンタオルシート1xの坪量が高くなって、コストが高くなる。
なお、キッチンタオルシート1xの単位面積当たりの吸水量は、400g/m2以上500g/m2以下であることが好ましく、420g/m2以上460g/m2以下であることがより好ましい。
【0055】
また、キッチンタオルシート1xの単位重量当たりの吸水量は、6g/g以上18g/g以下であることが好ましい。単位重量当たりの吸水量が6g/g未満であると、キッチンタオルシート1xが吸水性に劣る。単位重量当たりの吸水量が18g/gを超えると、1枚当たりの吸水量が必要以上に多くなる。
なお、単位重量当たりの吸水量は、8g/g以上15g/g以下であることがより好ましく、10g/g以上13g/g以下であることが更に好ましい。
【0056】
なお、キッチンタオルシート1xの各吸水量の測定方法は、
図2を参照しつつ以下に説明する。
まず、2プライに重ねられたキッチンタオルシート1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片10を作製する。吸水前の試験片10の重量を電子天秤で測定しておく。試験片10をホルダー12(試験片の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
【0057】
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cmまで入れ、ホルダー12にセットした試験片10を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片10をホルダー12と共に蒸留水から取り出し、
図2に示すように、試験片10の1つの隅部10dに帯11を貼り付ける。帯11は、測定するキッチンタオル2プライと同じキッチンタオルを1プライに剥離して、その紙製キッチンタオル1プライを2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片10の隅部10dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー12と試験片10を、隅部10dに対向する隅部10aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて15分間、放置する。
【0058】
その後、ホルダー12と試験片10を水槽から取り出し、帯11とホルダー12を外し、電子天秤で試験片10の重量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片10の重量変化から、試験片10の単位面積当たりの蒸留水の吸水量(水g/シートm2、1m2当たり。略してg/m2とする。)を計算する。さらに、単位面積当たりの吸水量(水g/シートm2)を試験片10の製品プライの坪量で割ることにより、単位面積当たりの吸水量(水g/シートm2)/坪量(シートg/シートm2)=単位重量当たりの吸水量(水g/シートg、1g当たり。略してg/gとする。)を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0059】
(エンボス)
本発明のキッチンタオルロール1(キッチンタオルシート1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、エンボスパターンを有している。また、本発明におけるキッチンタオルシート1xは、2プライのシートの一方又は両方にエンボス処理した後、積層して2プライにする。2プライ積層する際には、プライボンドグルー(糊)を用い、グルーを塗布して接着処理する。このように接着して2プライにすることにより、プライの接着が強くなり、キッチンタオルシート1xが水に濡れてもプライ剥がれせずに破れにくくなる。
なお、エンボス処理は2プライのシートの一方に施されることが好ましく、2プライのシートのうち、表面1aのプライに施されることがより好ましい。
【0060】
上述したように、キッチンタオルシート1xの表面1aのプライには、エンボスパターンが施されていることが好ましい。エンボスパターンが表面1aに施されることで、該エンボスパターンのエンボス部にグルーを塗布して接着処理することができ、キッチンタオルシート1xのプライ剥がれが起こりにくくなり、吸水量を一定の範囲とすることができる。
なお、エンボスパターンはドット状や線状等、キッチンタオルに一般的に施されるパターンであれば特に限定されないが、中でも線状のエンボスパターンであることが好ましい。線状のエンボスパターンとしては、具体的には
図3に示すような、1つのパターンが、略丸型の略円形とその内部に他の柄を有する図形と、全体として上下及び左右に略線対称で、複数の曲線及び図形の組み合わせを含む図形の2種類の図形を2個ずつ含むパターンであれば、特に限定されない。略丸型の略円形については、略丸型が二重になっていることが好ましい。
【0061】
また、エンボスパターンの寸法としては、エンボスパターンを囲む四角形E(Eはエンボスパターンではない)が、一辺2cm以上25cm以下四方の正方形であることが好ましく、一辺5cm以上20cm以下四方の正方形であることがより好ましく、一辺8cm以上15cm以下四方の正方形であることが更に好ましい。この四角形Eについて、縦方向はキッチンタオルロール1の流れ方向に平行であり、横方向はキッチンタオルロール1の幅方向に平行であることが好ましいが、傾いていても良い。このような柄を用いることで、本願のような吸水量が高いキッチンタオルシート1xにおいて、吸水量を良好にでき、プライも剥がれにくく、強度を保つことができるため、しっかり感が出る。
【0062】
このとき、線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスが占める面積が、キッチンタオルシート1xの面積の4%以上50%以下であることが好ましい。割合が4%未満であると、キッチンタオルシート1xがしっかり感に劣り、破れやすくなる。割合が50%を超えると、キッチンタオルシート1xが柔らかさに劣る。
上記の面積の割合は、
図3のように1つのエンボスパターンをすべて含むようにした四角形Eの内側において、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上のエンボスについて、エンボス長さを足した時の合計を総長として測定し、総長(mm)×幅(mm)をエンボスの面積として求め、キッチンタオルシート1xの1シートにおける面積を(1シートのシート長×シート幅)としたときの(エンボスの面積/キッチンタオルシート1xの1シートにおける面積)×100(%)として求める。
【0063】
なお、この四角形Eの一辺の大きさは、エンボスパターンの大きさによって適宜変更できる。また、エンボスパターンをすべて含むようにした四角形内に、四角形内に含まれるエンボスパターンに隣接するエンボスパターンが含まれる場合は、その隣接するエンボスパターンの長さも測定し、総長に含める。エンボスパターンによって、四角形Eの1辺の大きさを明確に決められない場合は、四角形Eの大きさを10×10cmとして、この四角形Eに含まれるエンボス長さの総長を測定する。総長は、上述した方法で定規、メジャー等で実測して求める。なお、エンボスの目視が困難な場合は、一般的な顕微鏡を用いて測定しても良い。
なお、線状のエンボスパターンにおける、太さが0.1mm以上4mm以下で、かつ長さが5mm以上であるエンボスが占める面積が、キッチンタオルシート1xの面積の6%以上35%以下であることがより好ましく、9%以上16%以下であることが更に好ましい。
【0064】
エンボスパターンにおいて、エンボスの深さは0.06mm以上1.05mm以下であることが好ましい。エンボスの深さが0.06mm未満であると、キッチンタオルシート1xが柔らかさに劣る。深さが1.05mmを超えると、キッチンタオルシート1xがしっかり感と破れにくさに劣る。
なお、エンボスパターンにおけるエンボスの深さは、0.10mm以上0.55mm以下であることがより好ましく、0.14mm以上0.35mm以下であることが更に好ましい。
【0065】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。又、測定条件は、倍率25倍、視野面積12mm×9mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0066】
図4は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、キッチンタオルシート1x表面の高さが濃淡で表されている。
図4の濃淡が周辺と異なる線状の部位が個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記のマイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はキッチンタオルシート1xの表面1a側で行う。また、測定時に、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のキッチンタオルシート1xを用いて、2プライのシートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、いずれも避けて測定する。
まず、
図4のように線分ABを引き、
図5の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、キッチンタオルシート1xの幅方向(CD方向)になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以下と狭く、下記の凸部の高さが低くなってしまう場合は、線分を斜め方向に引いたり、流れ方向(MD方向)に引いたりしてもよい。
図5の高さプロファイルは、実際のキッチンタオルシート1xの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(キッチンタオルシート1xの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
【0067】
そこで、
図5の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした
図6の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、
図6に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、凸部H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、凸部H1と凸部H2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、
図6に示すように、断面曲線上において連続する計2カ所(凹部D1と、凸部H3と凸部H4に挟まれる凹部D2の連続する計2カ所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向にキッチンタオルロール1を90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
なお、本発明のキッチンタオルシート1xはエンボスパターンとは異なる抄紙工程由来の凹凸のパターンを有しているため、凹部を挟んでいる左右の凸部の高さにばらつきが見られる。そのため、凹部を挟む凸部と凸部(例えば、凹部D2を挟む凸部H3と凸部H4)の縦軸の値の差が0.2mm以上ある場合は、その部分を避けた箇所で測定を行う。
【0068】
<キッチンタオルロール包装体の製造方法>
キッチンタオルロール1は、例えば(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス加工及び接着処理、(3)ロール巻取り加工、の順で製造することができる。なお、キッチンタオルシート1xの製造(抄紙)工程においては、TAD抄紙技術を用いることが好ましい。
【0069】
このとき、抄紙工程において、上述のエンボスパターンとは異なる抄紙工程(ファブリック)由来の凹凸のパターンがキッチンタオルシート1xに施されることが好ましい。この凹凸のパターンを有することにより、キッチンタオルシート1xの吸水量が更に高くなる。
なお、抄紙工程由来とは、キッチンタオルシート1xの抄紙工程において、抄紙機のヘッドボックスからヤンキードライヤー22の出口までの間に凹凸のパターンが付与されることを意味する。具体的には、
図7に示す抄紙工程の一部において、脱水ロール21とヤンキードライヤー22の間に配置される、ベルトプレス部20にて凹凸を付与することができる。ベルトプレス部20では、湿紙24と凹凸ベルト23(凹凸ベルト23は、ベルトプレス部20とヤンキードライヤー22をループしている)を一緒にプレスすることで、湿紙24に凹凸のパターンを付与することができる。
【0070】
また、凹凸のパターンは、ファブリックのパターン(細かいパターン、荒いパターン)を変更することで、適宜変更することができる。凹凸のパターンを変更すると比容積(紙厚)が変わるが、ロール状態における比容積が上述する数値範囲内になるようなパターンを選定することが好ましい。
【0071】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールを提供することができる。
【実施例0072】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0073】
(1)抄紙及びクレーピング、(2)エンボス加工及び接着処理、(3)ロール巻取り加工、の工程を経て、表1及び2に示す実施例1から実施例18、比較例1から比較例6のキッチンタオルロールを製造した。そして、全ての実施例及び比較例のキッチンタオルロール包装体に関して上述の各パラメータを測定し、かつ、以下の評価を行った。なお、下記の評価以外の各パラメータは、上述した基準又は測定方法に従って行った。
【0074】
1.坪量(コスト)
製造後のキッチンタオルシートの1プライの坪量を実測して、4段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:23g/m2以下のとき
○:23g/m2より高く、25g/m2以下のとき
△:25g/m2より高く、27g/m2以下のとき
×:27g/m2より高いとき
【0075】
2.しっかり感(シートのハリ・コシ)
製造後のキッチンタオルシートを手で持ったときの、シートのしっかり感を、20人のモニターよって官能評価し、「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数によって5段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数が0~3人
○ :「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数が4~7人
△ :「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数が8~10人
× :「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数が11~15人
××:「シートがハリ・コシに劣る」と感じた人数が16人以上
【0076】
3.柔らかさ
製造後のキッチンタオルシートを手で持ったときの、シートの柔らかさを、20人のモニターよって官能評価し、「シートが硬い」と感じた人数によって5段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :「シートが硬い」と感じた人数が0~3人
○ :「シートが硬い」と感じた人数が4~7人
△ :「シートが硬い」と感じた人数が8~10人
× :「シートが硬い」と感じた人数が11~15人
××:「シートが硬い」と感じた人数が16人以上
【0077】
4.吸水量
製造後のキッチンタオルシートの単位面積当たりの吸水量を実測して、4段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:420g/m2以上のとき
○:400g/m2以上420g/m2未満のとき
△:330g/m2以上400g/m2未満のとき
×:330g/m2未満のとき
【0078】
5.破れにくさ
製造後のキッチンタオルシートで汚れを拭き取ったときの、シートの破れにくさを、20人のモニターよって官能評価し、「シートが破れやすい」と感じた人数によって5段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :「シートが破れやすい」と感じた人数が0~3人
○ :「シートが破れやすい」と感じた人数が4~7人
△ :「シートが破れやすい」と感じた人数が8~10人
× :「シートが破れやすい」と感じた人数が11~15人
××:「シートが破れやすい」と感じた人数が16人以上
【0079】
表1及び2に、各実施例の条件及び評価結果を示す。
【0080】
【0081】
【0082】
以上より、本実施例によれば坪量を過剰に高くせずに一定の範囲に保ち、かつ、強度及び吸水量を維持しつつも、触感が柔らかく、しっかり感もある、キッチンタオルロールが得られることが確認された。