(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079061
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車載ラジオ装置、およびサービスの選局候補提示方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20240604BHJP
H04H 60/46 20080101ALI20240604BHJP
【FI】
H04B1/16 G
H04H60/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191771
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】進藤 僚平
(72)【発明者】
【氏名】國松 真樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌隆
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA09
5K061BB01
5K061CC02
5K061DD02
(57)【要約】
【課題】ラジオ信号に基づくサービスの選局において、簡易な構成にて、ユーザの選局の負荷を低減させつつ、ユーザ嗜好のサービスの候補を提示する。
【解決手段】車載ラジオ装置は、ラジオ信号を受信するアンテナと、ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出部と、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出部と、前記嗜好情報と前記受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出部と、前記抽出部にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御部と、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオ信号を受信するアンテナと、
ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出部と、
前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出部と、
前記嗜好情報と前記受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出部と、
前記抽出部にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御部と、
を有する車載ラジオ装置。
【請求項2】
前記受信エリアの広さを示す情報は、同じサービスを放送するネットワーク局の数に基づく、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項3】
前記受信エリアの広さを示す情報は、同じサービスを放送する際に用いる誤り訂正の情報に基づく、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項4】
前記嗜好情報は、ユーザの選局履歴にて示されるサービスのジャンル、受信エリア、および放送主体の情報の少なくとも1つに基づいて導出される、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項5】
前記車載ラジオ装置が搭載されている車両の位置情報を取得する位置情報取得部を更に有し、
前記抽出部は、前記車両の現在の位置に基づいて、サービスを抽出する基準を切り替える、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項6】
前記基準は、前記ユーザの選局履歴にて選局の頻度が高いジャンル、現在受信しているラジオ信号にて選局可能なサービスのうちの最もサービス数が多いジャンル、および、所定のジャンル、のうちの少なくともいずれかに基づく、請求項5に記載の車載ラジオ装置。
【請求項7】
前記抽出部は、前記ユーザの嗜好情報に基づいて、前記画面に表示させるサービスの上限の数を切り替える、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項8】
前記抽出部は更に、抽出した1または複数のサービスを、前記ユーザの選局履歴により特定される、当該ユーザが選局を行う頻度の高い放送主体が上位になるようにソートして前記画面に設定する、請求項1に記載の車載ラジオ装置。
【請求項9】
ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出工程と、
アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出工程と、
前記嗜好情報と前記受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御工程と、
を有するサービスの選局候補提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載ラジオ装置、およびサービスの選局候補提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には様々な通信機器が搭載され、走行中などにおいて搭乗者に利用されている。このような車載の通信機器の一つとして、車載ラジオ装置が挙げられる。車載ラジオ装置は、車両周辺の基地局からのラジオ信号を受信し、ユーザは、複数のラジオ番組の中から所望のラジオ番組を選局して利用している。
【0003】
一方、ラジオ番組は、アナログラジオやデジタルラジオを含め、多くの基地局から様々な番組が提供されており、ユーザはそれら多数の中から選局をする必要がある。そのため、多くの番組の中から所望の番組を探し出して、選局する際の手間が生じている。例えば、特許文献1では、車載用選局装置において、ユーザによる選局動作を必要とせずに、ユーザの嗜好に応じた放送番組を自動的に選局する構成が開示されている。また、特許文献2では、番組を受信して提供可能な移動体において、放送終了まで安定して視聴可能な番組を、走行経路に基づいて抽出し、ユーザに提示する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/128121号
【特許文献2】特開2016-92579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、デジタルラジオの規格の1つとしてDAB(Digital Audio Broadcast)規格が知られている。このような信号の送信において、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)伝送などによる信号の高密度化により、1つの基地局から同時並行的にブロードキャストされるラジオ番組(以下、「サービス」と称する)の数は増加傾向にある。また、車両周辺には、複数の基地局があり、それぞれが複数のサービスをブロードキャストし、車両側は多数のサービスを受信して利用可能な状況となる。また、地域や国をまたがるような場合には、同じ内容でも異なる基地局から放送されているサービスとなりうるため、選局の候補としての選択肢は増加する。このような状況下では、複数のサービスからユーザが所望のサービスを選局する負荷も更なる増加傾向となっている。
【0006】
特許文献2の構成では、受信レベルのみに基づいて判定を行っているため、提示したリストに多数の番組が含まれる場合には引き続きユーザの選局の負荷が生じてしまう。また、特許文献2では、クラウドサーバ上のデータベースから目的地への移動経路で予測される受信レベルを取得し、最後まで視聴可能な番組を優先的にリスト表示してユーザに提示している。このとき、予測時にクラウドサーバへのアクセスが必要であるため、放送波の受信に対応した受信機以外の通信機器が必要になる。
【0007】
本開示は、上記のような課題を鑑み、デジタルラジオのサービスの選局において、簡易な構成にて、ユーザの選局の負荷を低減させつつ、ユーザ嗜好のサービスの候補を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ラジオ信号を受信するアンテナと、ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出部と、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出部と、前記嗜好情報と前記受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出部と、前記抽出部にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御部と、を有する車載ラジオ装置を提供する。
【0009】
また、本開示は、ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出工程と、アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出工程と、前記嗜好情報と前記受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、前記アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出工程と、前記抽出工程にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御工程と、を有するサービスの選局候補提示方法を提供する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記憶媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、デジタルラジオのサービスの選局において、簡易な構成にて、ユーザの選局の負荷を低減させつつ、ユーザ嗜好のサービスの候補を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る車載ラジオ装置のハードウェア構成の例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る車載ラジオ装置の機能構成の例を示すブロック図
【
図3】実施の形態1に係る車載ラジオ装置におけるサービス表示の例を示す図
【
図4】車両周辺のラジオの基地局および受信エリアを説明するための概念図
【
図5】実施の形態1に係るサービス情報の構成例を示す図
【
図6】実施の形態1に係るサービスの選局候補提示処理の全体フローチャート
【
図7】実施の形態1に係るUI表示処理(第1のリコメンド機能有り)のフローチャート
【
図8】実施の形態1に係るUI表示処理(第2のリコメンド機能有り)のフローチャート
【
図10】本発明の一実施形態に係るUI表示の別の例を示す図
【
図11】本発明の一実施形態に係るUI表示の別の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係る車載ラジオ装置、およびサービスの選局候補提示方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0014】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る車載ラジオ装置は、例えば、車両に積載され、ユーザが操作可能に構成される。車載ラジオ装置は、単一の装置として構成されてもよいし、所謂、ナビゲーション装置の一機能として構成されてもよい。また、以下に示す用語「車両」とは、普通乗用車に限定するものでは無く、例えば、二輪車や、バス、トラックなど任意の移動体であってよい。
【0015】
[装置構成]
図1は、本実施の形態に係る車載ラジオ装置1の構成例を示すブロック図である。
図1において、矢印は、各ブロックへの信号の流れの例を示す。なお、
図1に示す構成は一例である。したがって、
図1に示す構成以外の部位を更に備えてもよい。また、車載ラジオ装置1は、例えば、車両(不図示)に搭載された際に、車両と連携することで、機能を共有するような構成であってもよい。
【0016】
車載ラジオ装置1は、1または複数のサービスに対応するデジタルラジオの信号(以下、「ラジオ信号」と称する)を受信し、それらの1または複数のサービスの中から選局されたサービスを音声にて出力する。車載ラジオ装置1は、車両に固定されて設置されていてもよいし、着脱可能に構成されていてもよい。
【0017】
アンテナ10は、周辺の基地局から送信されてくる所定の周波数帯域のラジオ信号を受信し、各チューナに提供する。本実施の形態では、ラジオ信号としてDAB(Digital Audio Broadcasting)規格に基づく情報を想定して説明する。また、DAB規格については、例えば、ETS400401(ETS: European Technical Standard)に規定されている。
【0018】
メインチューナ11は、アンテナ10にて受信したラジオ信号のうち、ラジオ制御部13を介して受け付けたユーザの選局などにより指定された周波数のサービスを受信(フィルタリング)し、スピーカ17にて音声出力させる。なお、各チューナにおけるデジタルラジオの信号処理(キャリア周波数帯域の抽出、信号の復調、復調後の信号の復号など)については公知の方法が用いられてよく、ここでの詳細な説明は省略する。また、メインチューナ11は、現在選局されているサービスの情報を適宜、ラジオ制御部13へ通知する。ここでメインチューナ11からラジオ制御部13に渡されるサービスの情報としては、現在選局されているサービスの周波数やDABデータが含まれる。DABデータには、ジャンル、国コード、配信エリアコード、ネットワーク局情報などが含まれてよい。
【0019】
補助チューナ12は、メインチューナ11にて抽出されたサービス以外のサービスを特定し、選局可能なサービスのリストを生成してラジオ制御部13へ提供する。ここでのリストには、選局可能なサービスの周波数やDABデータが含まれてよい。したがって、メインチューナ11および補助チューナ12により、ラジオ制御部13に対して、現在選局されているサービスと、選局可能なサービスそれぞれの情報が提供される。
【0020】
ラジオ制御部13は、車載ラジオ装置1の制御全体を司り、後述する各種機能を提供する。記憶部14は、例えば、揮発性/不揮発性の記憶装置であるROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリなどにより構成され、車載ラジオ装置1による機能を提供するためのプログラムやデータの記憶などを行う。UI(User Interface)部15は、表示部および操作部としての機能を有し、ユーザからの操作を受け付けたり、後述するような各種画面を表示したりする。
【0021】
IF(Interface)部16は、外部装置とのインタフェースであり、例えば、車載ラジオ装置1が搭載される車両と連携を行う際に用いられる。車載ラジオ装置1は、例えば、IF部16を介して、車両の位置情報を取得したり、車両側に設けられた不図示の電源(バッテリ)から電力供給を受けたりするような構成であってよい。位置情報は、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)の位置測定情報であってよく、緯度、経度、高度などが含まれてよい。または、車両に搭載されたナビゲーションシステムから走行予定の走行経路の情報が取得されてもよい。
【0022】
(機能構成)
図2は、本実施の形態に係る車載ラジオ装置1のラジオ制御部13にて提供される機能の構成例を示すブロック図である。例えば、ラジオ制御部13が、記憶部14に記憶されたプログラムやデータを読み出して実行することで、
図2に示す各部位を実現してよい。また、
図2に示す構成は一例であり、1の部位が複数に分割されて構成されてもよいし、複数の部位が1つにまとめられて構成されてもよい。ここでは、本実施の形態の機能に関する部位のみを示しており、ラジオ制御部13は、更に他の機能を提供可能に構成されてもよい。
【0023】
ラジオ制御部13は、データ取得部201、位置情報取得部202、指示受付部203、表示制御部204、およびリコメンド生成部210を含んで構成される。リコメンド生成部210は、ユーザ嗜好学習部211、受信エリア算出部212、およびリコメンドリスト生成部213を含んで構成される。
【0024】
データ取得部201は、アンテナ10にて受信したラジオ信号に基づく各種データを、メインチューナ11および補助チューナ12を介して取得する。取得したデータは、記憶部14に記憶されて、管理される。取得されるデータには、上述したように、現在選局中のサービスや、選局可能なサービスの情報が対応付けられて管理されてよい。なお、データ取得部201は、記憶したデータを記憶部14から定期的に削除するような処理を行ってもよい。
【0025】
位置情報取得部202は、IF部16を介して、車両から位置情報を取得する。位置情報は、上述したような予定される走行経路の情報や、現在位置の情報を取得してよい。指示受付部203は、UI部15を介してユーザからの指示を受け付ける。ここでの指示は、例えば、サービスの選局などが挙げられる。表示制御部204は、後述するUI画面など、UI部15を介して各種情報をユーザに提示するための表示を制御する。
【0026】
リコメンド生成部210は、複数のサービスの中から、ユーザの嗜好に応じてサービスを抽出し、ユーザに提示するサービスの一覧(以下、「リコメンドリスト」とも称する)を生成する。ユーザ嗜好学習部211は、ユーザによるサービスの選局履歴に基づいて当該ユーザの嗜好(サービスの選局の傾向)を学習し、ユーザ嗜好情報を導出する。本実施の形態では、学習方法としては、ユーザの選局履歴の統計に基づく構成を例に挙げて説明する。しかし、これに限定するものではなく、例えば、機械学習などの手法を用いて、ユーザの嗜好情報を導出する構成を用いてもよい。この場合には、例えば、ユーザが選局したサービスおよび選局可能なサービスのDABデータを入力とし、1または複数のサービスを出力とした学習済みモデルを、任意の学習アルゴリズムを用いて生成することで実現されてよい。受信エリア算出部212は、データ取得部201にて取得されたデータに基づいて、現在選局可能なサービスの受信エリアに関する情報(以下、「受信エリア情報」とも称する)を算出する。受信エリア情報の算出の具体例については後述する。リコメンドリスト生成部213は、ユーザ嗜好学習部211にて学習したユーザの嗜好情報、受信エリア算出部212にて算出した受信エリア情報、および、車載ラジオ装置(車両)の位置情報に基づいて、ユーザに提示するリコメンドリストを生成する。生成されたリコメンドリストは、表示制御部204によりUI部15を介してユーザに提示される。
【0027】
[車載ラジオ装置の利用環境]
ここで、車載ラジオ装置が用いられる環境および従来の構成における課題について例を挙げて説明する。
図3は、UI画面の構成例を説明するための図である。上述したように、近年のラジオ放送においては1の基地局から複数のサービスを同時並行的に放送(ブロードキャスト)することが可能である。例えば、車両が1の基地局の受信エリア内に位置しているとする。このような状況下において、1の基地局から送信されているラジオ信号により、選局可能な複数のサービスは、
図3(a)のように表示することができる。
【0028】
図3(a)に示すUI画面300には、サービスのリスト301が示されている。ここでは、選局可能なサービスが所定の並び順にて、全て表示されている。このように、1つの基地局における受信エリア内に位置する場合には、選局可能なサービスの選択の手間は少なく、まとめて表示した際の視認性を比較的維持することができる。
【0029】
一方、複数の基地局の受信エリア内に重複して位置する場合には、選局可能なサービスが急増する。例えば、1画面中に10程度のサービスを一覧表示し、画面をスクロールして切り替えるような構成の場合には、
図3(a)のように表示させることができる。しかし、そのスクロールをさせながら選局するという操作の手間は、サービスの増加に伴って増加してしまう。一方、
図3(b)は、車両が複数の基地局の受信エリアに位置する場合に選局可能な複数のサービスを表示した場合のUI画面の例を示す。UI画面310には、選局可能なサービスのリスト311が示されている。
図3(b)に示すように、1つの画面で選局可能なサービスをまとめて表示してしまうと、画面切り替えの手間は省けるが、ユーザの視認性が低下し、結果として、所望のサービスを探して選局する際の利便性は低下してしまう。
【0030】
図4は、本実施の形態に係る車載ラジオ装置1周辺の基地局におけるラジオ信号の受信エリアを説明するための概念図である。ある地域において、車両400は、車載ラジオ装置1が搭載される車両の位置を示している。また、車両400の周りには、ラジオ信号をブロードキャストしている6つの基地局410、420、430、440、450、460が存在している。受信エリア411、421、431、441、451、461はそれぞれ、6つの基地局410、420、430、440、450、460からのラジオ信号が受信可能な受信エリアを示す。なお、実際には地形等の影響も有り、受信エリアは変動し得る。
【0031】
一例として、基地局410、430、460は、国営放送の基地局とし、基地局420、440、450は、民間放送の基地局とする。つまり、本実施の形態において、サービスの放送主体は、国営放送と民間放送に分けることができる。一般に、国営放送の基地局の方が、より広い受信エリア(より多くの基地局)を有する。なお、ここでは国営放送と民間放送に分けた例を示すが、更に詳細な分類がラジオ信号から特定可能であれば、放送主体において3以上の分類を用いてもよい。
図4に示すように、ある地域において、複数の基地局が存在し、それぞれが異なる受信エリアを提供する。
図4の例では、車両400は、5つの基地局410、430、440、450、460の受信エリア内に重複して位置するため、これに伴って、選局可能な多数のサービスが存在する。その結果、多くのサービスに対し、画面を切り替えながら選局するような構成や、
図3(b)に示したようにまとめて選局可能なサービスを表示するような構成では、ユーザはこれらの中から所望の1つのサービスを選局して利用するには手間が生じてしまう。
【0032】
本実施の形態では、このような煩雑な表示を抑制し、ユーザによるサービスの選局の負荷を軽減することを1つの目的とする。
【0033】
[サービス情報]
以下、本実施の形態にて用いるサービスに関する情報(以下、「サービス情報」と称する)について説明する。サービス情報は、アンテナ10により受信されるラジオ信号に基づいて取得され、その中には様々な項目のデータが含まれる。メインチューナ11や補助チューナ12により構成される、選局中または選局可能なサービスのDABデータの一部または全部がこれに相当する。ここでは、本実施の形態に用いる項目に着目して説明する。
【0034】
図5は、1つのサービスに対応したサービス情報の構成例である。サービスを提供する親局と、その親局と同じネットワークに属し、同様のサービスを放送する子局が存在する。ここでは、子局をネットワーク局とも称する。なお、親局と子局は便宜的な表現であり、その関係は、ラジオ信号の送受信の位置関係に応じて変更し得る。そのため、その関係性は限定されるものではない。サービス情報は、元サービスID501、送信元502、および、ネットワーク局情報503の項目を含んで構成される。元サービスID501は、親局におけるサービスを一意に示すための識別情報である。送信元502は、サービスの送信元の基地局を示す。
【0035】
ネットワーク局情報503は更に、タイプ504、サービスID505、サービス名506、および誤り訂正情報507を含んで構成される。タイプ504は、ラジオ信号の規格を示し、例えば、デジタルラジオであれば「DAB」が設定され、FMラジオであれば「FM」が設定されてよい。サービスID505は、ネットワーク局におけるサービスを一意に示すための識別情報である。なお、親局が直接発信しているラジオ信号の場合には、元サービスID501の値とサービスID505との値が一致し得る。サービス名506は、ネットワーク局ごとにサービスに任意に設定されたサービス名の情報を示す。誤り訂正情報507は、ネットワーク局によるラジオ信号の発信において用いられている誤り訂正に関する規格等が設定される。
【0036】
本実施の形態では、上述したようなサービス情報を用いて、ユーザに提示するリコメンドリストを構成する。より詳細な処理については、フローチャートと併せて後述する。
【0037】
[処理フロー]
図6~
図8を用いて、本実施の形態に係るサービスの選局候補提示処理のフローチャートについて説明する。本処理フローは、ラジオ制御部13が記憶部14に記憶されたプログラム等を読み出して実行することにより、
図2に示す各部位として動作することで実現してよい。ここでは、説明を簡単にするため、処理主体をラジオ制御部13としてまとめて示す。本処理フローは、ユーザにより車載ラジオ装置1が起動された際に開始されてもよいし、車両の動作が開始された際に開始されてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、リコメンド機能として、車載ラジオ装置1のユーザが通常の行動範囲内で提供するリコメンド機能(以下、「第1のリコメンド機能」とも称する)と、通常の行動範囲外(例えば、旅行先や遠距離移動など)で提供するリコメンド機能(以下、「第2のリコメンド機能」とも称する)を提供可能であるものとして説明する。これらのリコメンド機能の利用の要否は、ユーザが任意に設定可能である。
【0039】
なお、本処理フローが開始される前、もしくは、同時並行的に各基地局から送信されるラジオ信号を受信し、適宜管理しているものとする。ここでの管理対象には、過去にユーザによって選局が行われ、出力されたサービスに対する履歴データが含まれる。
【0040】
ラジオ制御部13は、アンテナ10を介して受信したラジオ信号に基づくデータを取得する(ステップS601)。具体的には、メインチューナ11により現在選局されているサービスの情報と、補助チューナ12にて生成された選局可能なサービスの情報がそれぞれDABデータを含んで取得される。
【0041】
ラジオ制御部13は、車両の位置情報を取得する(ステップS602)。上述したように、位置情報は、車両が備えるGPSセンサ(不図示)などにより取得されてよい。
【0042】
ラジオ制御部13は、ステップS602にて取得した位置情報に基づいて、現在位置が通常の行動範囲内に位置するか否かを判定する(ステップS603)。より具体的には、ラジオ制御部13は、車両の過去の位置情報に基づいて、位置する頻度の高い範囲を通常の行動範囲として記録しておいてよい。そして、ラジオ制御部13は、この範囲と、現在位置とを比較することで、通常の行動範囲内に位置するか否かを判定してよい。通常の行動範囲内である場合(ステップS603:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS604へ進む。一方、通常の行動範囲外である場合(ステップS603:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS605へ進む。
【0043】
ラジオ制御部13は、通常の行動範囲内におけるリコメンド機能(第1のリコメンド機能)はONに設定されているか否かを判定する(ステップS604)。第1のリコメンド機能のON/OFFは、ユーザによって任意に設定可能である。第1のリコメンド機能がONに設定されている場合(ステップS604:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS606へ進む。一方、第1のリコメンド機能がOFFに設定されている場合(ステップS604:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS607へ進む。
【0044】
ラジオ制御部13は、通常の行動範囲外におけるリコメンド機能(第2のリコメンド機能)はONに設定されているか否かを判定する(ステップS605)。第2のリコメンド機能のON/OFFは、ユーザによって任意に設定可能である。第2のリコメンド機能がONに設定されている場合(ステップS605:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS608へ進む。一方、第2のリコメンド機能がOFFに設定されている場合(ステップS605:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS607へ進む。
【0045】
ラジオ制御部13は、第1のリコメンド機能を有効にしたUI表示処理を行う(ステップS606)。本工程の詳細は、
図7を用いて後述する。本工程が終了した後、ラジオ制御部13の処理は、ステップS609へ進む。
【0046】
ラジオ制御部13は、第1および第2のリコメンド機能を無効にしたUI表示処理を行う(ステップS607)。この場合は、例えば、
図3(a)や
図3(b)に示すようなUI画面の構成により、受信したラジオ信号に基づいて、サービスの一覧表示が行われる。本工程が終了した後、ラジオ制御部13の処理はステップS609へ進む。
【0047】
ラジオ制御部13は、第2のリコメンド機能を有効にしたUI表示処理を行う(ステップS608)。本工程の詳細は、
図8を用いて後述する。本工程が終了した後、ラジオ制御部13の処理は、ステップS609へ進む。
【0048】
ラジオ制御部13は、UI部15を介して、新たなサービスの選局をユーザから受け付けたか否かを判定する(ステップS609)。新たなサービスの選局を受け付けた場合(ステップS609:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS610へ進む。一方、新たなサービスの選局を受け付けていない場合(ステップS609:NO)、本処理フローを終了する。なお、新たなサービスの選局を受け付けていない場合でも、現在選局中のサービスがある場合にはそのまま継続して出力を行ってよい。また、本工程が終了した場合、ユーザの停止指示等が行われるまで、本処理フローを継続してよい。
【0049】
ラジオ制御部13は、ユーザにより選局されたサービスへの出力を切り替えるように、メインチューナ11に指示を行う(ステップS610)。切り替えが完了した際には、メインチューナ11からは選局中のサービスの情報が取得される。また、補助チューナ12からは選局可能なサービスの情報が新たに取得される。そして、新たなサービスの選局に伴って、ユーザの履歴データが更新されることとなる。そして、本処理フローを終了する。また、本工程が終了した場合、ユーザの停止指示等が行われるまで、本処理フローを継続してよい。
【0050】
(UI表示処理:第1のリコメンド機能)
図7は、
図6の処理フローのうちのステップS606の工程の詳細な処理を説明するためのフローチャートである。
【0051】
ラジオ制御部13は、ユーザの履歴データを参照し、ユーザ嗜好情報を取得する(ステップS701)。例えば、ユーザが選局したサービスのジャンルの選択回数や、選局していた時間の総時間などに基づいて、ユーザの好みのサービスやジャンルを参照する。なお、ユーザ嗜好情報として、履歴データにより予め統計値などが算出され、適宜更新される構成であってよい。
【0052】
ラジオ制御部13は、
図6のステップS601にて取得したデータに、ユーザが過去に選局したサービスが含まれるか否かを判定する(ステップS702)。過去に選局したサービスが含まれる場合(ステップS702:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS703へ進む。一方、過去に選局したサービスが含まれない場合(ステップS702:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS704へ進む。
【0053】
ラジオ制御部13は、取得したデータの中から、ユーザが過去に選局したサービスを抽出し、リコメンドリストの最上位に表示されるように設定する(ステップS703)。このとき、リコメンドリストは初期化された上でサービスの設定が行われてよい。また、過去に選局したサービスが複数ある場合には、選局頻度の高いものから、所定の数だけ抽出して設定してもよい。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS704へ進む。
【0054】
ラジオ制御部13は、ユーザが受信エリアの狭いサービスを好んで選局する傾向があるか否かを判定する(ステップS704)。ここで本実施の形態に係る受信エリアの広狭の判断について、
図5を用いて説明する。
図5に示すように、サービス情報500のネットワーク局情報503には、サービスID505が含まれる。このサービスID505に着目すると、1つのサービス(1つの元サービスID501)に対して多くのサービスID505が対応付けられているほど、ネットワーク局が多いとして扱うことができる。すなわち、当該1つのサービスを受信可能な受信エリアが広いものとして扱うことができる。逆に少ないほど、受信エリアは狭いものとして扱うことができる。本実施の形態では、この情報を指標として用いて、あるサービスに対する受信エリアの広狭を判断する。なお、受信エリアの広狭を判定する際のネットワーク局の数は、全てのネットワーク局の総数を用いてもよいし、デジタルラジオに対応するタイプ504の値が「DAB」のみの数を用いてもよい。
【0055】
なお、受信エリアの広狭を判定するための情報は、上記の情報に限定するものではなく、他の情報を用いてもよい。例えば、
図5に示すように、サービス情報500のネットワーク局情報503には、誤り訂正情報507が含まれる。誤り訂正情報507により、誤り訂正に用いられる規格が特定できるため、その規格がより信頼性の高い規格であれば、より受信エリアが広いものとして扱ってもよい。更には、ラジオ信号の信号レベルのレベルが高い、距離減衰が少ないなど、ラジオ信号の送受信に係る情報を組み合わせて受信エリアの広狭を判定してもよい。
【0056】
したがって、ユーザの履歴データにて示されるサービス情報の統計から、ユーザが選局する傾向の高いサービスの受信エリアの広狭を算出することができる。また、受信エリアの広狭は、サービスの人気を特定するための指標として利用可能である。なお、受信エリアの狭いサービスを好むか否かは、過去の選局したサービスのうちの直近のいくつかに基づいて判定してもよいし、全ての選局の結果に基づいて判定してもよい。もしくは、受信エリアの広いサービスの選局履歴と、受信エリアの狭いサービスの選局履歴との比率に基づいて判定してもよい。受信エリアの狭いサービスを好んで選局する傾向がある場合(ステップS704:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS705へ進む。受信エリアの狭いサービスを好んで選局しない傾向がある場合(ステップS704:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS710へ進む。
【0057】
ラジオ制御部13は、リコメンドリストに設定した過去のサービスの数を第1の数に制限する(ステップS705)。第1の数は予め規定されていてよく、例えば、「4」などが設定されてよい。なお、ステップS703にてリコメンドリストに設定した、過去に選局したサービスが第1の数よりも少ない場合には、制限する処理が省略されてよい。
【0058】
ラジオ制御部13は、ユーザの履歴データに基づいて、ユーザの選局頻度が最も高いジャンルを選択する(ステップS706)。
【0059】
ラジオ制御部13は、受信したラジオ信号に基づくデータの中から、ステップS706にて選択したジャンルのサービスを抽出する(ステップS707)。
【0060】
ラジオ制御部13は、ステップS707にて抽出したサービスに対し、国営放送/民間放送のうちユーザが選局することが多い方が上位になるようにソートする(ステップS708)。ここでの判定には、過去に選択したサービスの情報に基づいて、ユーザが選局する傾向の高い放送主体を特定し、これに基づいてソート基準を決定してよい。
【0061】
ラジオ制御部13は、ステップS708にてソートしたサービスすべてをリコメンドリストに設定する(ステップS709)。このとき、ソートしたサービスは、すでに最上位に設定しているサービスに続けて設定される。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS718へ進む。
【0062】
ラジオ制御部13は、リコメンドリストに設定した過去のサービスの数を第2の数に制限する(ステップS710)。第2の数は予め規定されていてよく、ステップS705にて用いた第1の数よりも小さい数とする。例えば、第2の数は、「2」などが設定されてよい。なお、ステップS703にてリコメンドリストに設定した、過去に選局したサービスが第2の数よりも少ない場合には、制限する処理が省略されてよい。
【0063】
ラジオ制御部13は、ユーザの履歴データに基づいて、ユーザの選局頻度が最も高いジャンルを選択する(ステップS711)。
【0064】
ラジオ制御部13は、受信したラジオ信号に基づくデータの中から、ステップS711にて選択したジャンルのサービスを抽出する(ステップS712)。
【0065】
ラジオ制御部13は、ステップS712にて抽出したサービスを受信エリアが広い順にソートし、上位の所定数のサービスを抽出する(ステップS713)。受信エリアの広狭は、上述した手法と同様にサービスごとに算出することで特定されてよい。
【0066】
ラジオ制御部13は、ステップS713にて抽出したサービスに対し、国営放送/民間放送のうちユーザが選局することが多い方が上位になるようにソートする(ステップS714)。ここでの判定には、過去に選択したサービスの情報に基づいて、ユーザが選局する傾向の高い放送主体を特定し、これに基づいてソート基準を決定してよい。
【0067】
ラジオ制御部13は、ステップS714にてソートしたサービスすべてをリコメンドリストに設定する(ステップS715)。このとき、ソートしたサービスは、すでに最上位に設定しているサービスに続けて設定される。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS716へ進む。
【0068】
ラジオ制御部13は、リコメンドリストにおけるサービスの設定数が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS716)。閾値は、予め規定されていてもよいし、ユーザが任意に設定可能であってもよい。設定数が閾値を超えた場合(ステップS716:YES)、ラジオ制御部13の処理はステップS718へ進む。一方、設定数が閾値を超えていない場合(ステップS716:NO)、ラジオ制御部13の処理はステップS717へ進む。
【0069】
ラジオ制御部13は、現在選局しているジャンルの次に、ユーザの選局頻度が高いジャンルを選択する(ステップS717)。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS712へ戻り、リコメンドリストへのサービスの設定数が閾値に達するまで処理を繰り返す。
【0070】
ラジオ制御部13は、リコメンドリストを、UI部15を介して表示させる(ステップS718)。そして、本処理フローを終了し、
図6の処理へ戻る。
【0071】
(UI表示処理:第2のリコメンド機能)
図8は、
図6の処理フローのうちのS608の工程の詳細な処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図8では、推奨するサービスを抽出する際に、複数の基準に基づく処理が同時並行的に行われる例を示すが、これらの処理は順番に行われてもよい。本実施の形態では、ユーザ嗜好に基づくリコメンド、サービス数に基づくリコメンド、および所定のジャンルからのリコメンドの3つの基準に基づいてリコメンドするサービスを抽出する。なお、3つの基準に限定するものではなく、これらのうちの2つの基準が用いられてもよいし、4以上の基準が用いられてもよい。
【0072】
ラジオ制御部13は、ユーザの履歴データを参照し、ユーザが過去に選局したサービスのジャンルの中から、選択頻度の高い1または複数のジャンルを選択する(ステップS801)。例えば、ユーザが選局したサービスのジャンルの選択回数や、選局していた時間の総時間などに基づいて、ユーザ嗜好のジャンルを選択する。ここでの履歴データは、予め統計値などが算出され、適宜更新されるような構成であってよい。ここで選択されるジャンルの数は、過去に選択したジャンルの選択回数が一定値を超えたすべてのジャンルであってもよいし、最も選択頻度の高いジャンルであってもよい。
【0073】
ラジオ制御部13は、
図6のステップS601にて取得したデータから、ステップS801にて選択したジャンルに対応するサービスを抽出する(ステップS802)。
【0074】
ラジオ制御部13は、ステップS802にて抽出したサービスを、受信エリアが広い順にソートし、そのうちの上位の所定数を抽出する(ステップS803)。ここでの所定数は、予め設定されていてよい。また、受信エリアの広狭に関する情報は、上述したように、サービス情報に基づいて統計的に算出されてよい。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS807へ進む。
【0075】
ラジオ制御部13は、
図6のステップS601にて取得したデータにおいて、最もサービス数の多いジャンルを特定する(ステップS804)。
【0076】
ラジオ制御部13は、ステップS804にて特定したジャンルのサービスを所定数、抽出する。ここでの抽出は、例えば、予め規定されたソート順に並べてそのうちの上位のサービスを抽出してもよいし、ランダムで抽出してもよい(ステップS805)。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS807へ進む。
【0077】
ラジオ制御部13は、
図6のステップS601にて取得したデータから所定のジャンルのサービスを所定数、抽出する(ステップS806)。所定のジャンルは、例えば、車両の現在地に基づいて特定される地域の情報(旅行情報、観光情報、天気情報など)を提供するようなジャンルであってよい。なお、ステップS801、ステップS804、ステップS806にて選局されるジャンルはそれぞれ異なるように制御されてもよいし、重複を許可するように制御されてもよい。そして、ラジオ制御部13の処理は、ステップS807へ進む。
【0078】
ラジオ制御部13は、ステップS803、ステップS805、およびステップS806にて抽出されたサービスを統合して、リコメンドリストに設定する(ステップS807)。ここでのリコメンドリストへの設定順は、ユーザが設定可能であってもよいし、予めソート順が規定されていてもよい。
【0079】
ラジオ制御部13は、ステップS807にて設定したリコメンドリストを、UI部15を介して表示させる(ステップS718)。そして、本処理フローを終了し、
図6の処理へ戻る。
【0080】
(リコメンドリスト表示例)
図9は、本実施の形態に係るリコメンドリストの表示例を示す図である。
図9(a)の例は、
図7にて示した第1のリコメンド機能において、ステップS705~ステップS709にてリコメンドリスト900が生成された場合の表示例を示す。最上位に4つ(ステップS705の第1の数に相当)のサービス901が示されており、これは、過去にユーザが選局したサービスに相当する。また、サービス902は、ユーザの履歴データに基づいて、ユーザ嗜好に沿ったジャンルから抽出されたサービスを示す。このうち、サービス903は国営放送のサービスであり、サービス904は民間放送のサービスである。ここでは、ユーザが民間放送よりも国営放送を選局する傾向がある場合の例を示す。また、
図9(a)の例では、リコメンドリスト900に計10のサービスが示されているが、画面を切り替える(スクロール等)ことにより、更なるサービスが表示されてよい。
【0081】
図9(b)は、
図7に示した第1のリコメンド機能において、ステップS710~ステップS717にてリコメンドリスト910が生成された場合の表示例を示す。最上位に2つ(ステップS710の第2の数に相当)のサービス911が示されており、これは、過去にユーザが選局したサービスに相当する。また、サービス912は、過去のユーザの履歴データに基づいて、最も選択されたジャンルから抽出されたサービスを示す。このうち、サービス913は国営放送のサービスであり、サービス914は民間放送のサービスである。同様に、サービス915は、ユーザの履歴データに基づいて、ユーザ嗜好に沿って2番目に選択されたジャンルから抽出されたサービスを示す。このうち、サービス916は国営放送のサービスであり、サービス917は民間放送のサービスである。ここでは、ユーザが民間放送よりも国営放送を選局する傾向がある場合の例を示す。本実施の形態では、ジャンルごとに4つ(ステップS713の所定の数に相当)のサービスを抽出している。また、
図9(b)の例では、リコメンドリスト910に計10のサービスが示されているが、これをリコメンドリストの上限値(ステップS716の閾値に相当)として用いている。
【0082】
図9(c)は、
図8に示した第2のリコメンド機能によりリコメンドリスト920が生成された場合の表示例を示す。最上位に4つ(ステップS803の所定の数に相当)のサービス921が示されており、これは、
図8のステップS801~ステップS803の処理にて抽出されたサービスに対応する。サービス921のうち、サービス922とサービス923はそれぞれ異なるジャンルのサービスであり、ここでは2つのジャンルを対象として抽出されている。また、サービス924は、移動先の代表的なサービスを示し、ステップS804~ステップS805の処理にて抽出されたサービスに対応する。ここでは、4つ(ステップS805の所定の数に対応)のサービスが示されている。サービス905は、所定のジャンル(ここでは、旅行に関するジャンル)のサービスを示し、
図8のステップS806の処理にて抽出された1つ(ステップS806の所定の数に対応)のサービスに対応する。
【0083】
(UI表示の変形例)
上記の例では、一覧形式のUI画面の表示例を示した。しかし、その他の表示形式であってもよい。以下に他の表示形式の例を示す。
【0084】
図10は、ユーザ嗜好に基づいて特定されたサービスを1つのみ提示する場合のUI画面の表示例を示す。ここで提示される1つのサービスは、上記の手法により生成されたリコメンドリストの最上位に位置するサービスであってよい。
図10(a)に示すように、車両400が、位置(1)→位置(2)→位置(3)の順に移動を行っており、それぞれの位置において選局可能なサービスが変遷しているものとする。この場合、
図10(b)に示すように、UI画面1000では、現在、サービスA1001を選局している最中において、位置(1)の時点では、ユーザ嗜好等により、サービスB1002が提示される。この場合、操作ボタン15aを介してユーザが提示されたサービスB1002へ切り替え指示を行った場合には、サービスB1002へ切り替えられる。
【0085】
同様に、UI画面1010では、現在、サービスB1011を選局している最中において、位置(2)の時点では、ユーザ嗜好等により、サービスC1012が提示される。この場合、操作ボタン15aを介してユーザが提示されたサービスC1012へ切り替え指示を行った場合には、サービスC1012へ切り替えられる。更に、UI画面1020では、現在、サービスC1021を選局している最中において、位置(3)の時点では、ユーザ嗜好等により、サービスD1022が提示される。この場合、操作ボタン15aを介してユーザが提示されたサービスD1022へ切り替え指示を行った場合には、サービスD1022へ切り替えられる。
【0086】
図11は、ユーザ嗜好に基づいて特定されたサービスをポップアップ画面にて表示する場合のUI画面の表示例を示す。ここで提示される1つのサービスは、上記の手法により生成されたリコメンドリストの最上位に位置するサービスであってよい。
図11(a)に示すように、UI画面1100には、現在選局中のサービスA1101と、予めユーザが設定したサービスのリスト1102が表示されている。そして、
図11(b)に示すように、任意のタイミングにて、ユーザ嗜好に基づいてサービスが抽出され、ポップアップ画面1110にて推奨されるサービスB1111が表示される。ユーザは、推奨されたサービスへの切り替えを希望しない場合には、キャンセルボタン1112を指示することで、ポップアップ画面1110を非表示にし、現在選局中のサービスを継続して利用することが可能である。なお、ポップアップ画面1110は、表示してから一定の時間が経過した場合や、推奨しているサービスが選局できなくなった場合には、非表示に切り替えられてもよい。
【0087】
以上、本実施の形態により、車載ラジオ装置(例えば、1)は、ラジオ信号を受信するアンテナ(例えば、10)と、ユーザのサービスの選局履歴に基づいて、当該ユーザの嗜好情報を導出する導出部(例えば、13、210、211)と、アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスそれぞれに対して、受信エリアの広さを示す情報を算出する算出部(例えば、13、210、212)と、嗜好情報と受信エリアの広さを示す情報とに基づいて、アンテナにて受信しているラジオ信号にて選局可能な複数のサービスの中から推奨する1または複数のサービスを抽出する抽出部(例えば、13、210、213)と、抽出部にて抽出した1または複数のサービスを、画面を介して提示する表示制御部(例えば、15、205)と、を有する。これにより、サービスの選局において、簡易な構成にて、ユーザの選局の負荷を低減させつつ、ユーザ嗜好のサービスの候補を提示することが可能となる。特に、ユーザ嗜好のサービスを、ラジオ信号としてブロードキャストされた情報に基づいて提示しており、インターネット接続などの追加の設備等は不要となり、簡易な構成とすることができる。
【0088】
また、受信エリアの広さを示す情報は、同じサービスを放送するネットワーク局の数に基づく。これにより、ラジオ信号のブロードキャスト情報のみに基づいて、サービスの受信エリアの広さを予測することが可能となる。
【0089】
また、受信エリアの広さを示す情報は、同じサービスを放送する際に用いる誤り訂正の情報に基づく。これにより、ラジオ信号のブロードキャスト情報のみに基づいて、サービスの受信エリアの広さを予測することが可能となる。
【0090】
また、嗜好情報は、ユーザの選局履歴にて示されるサービスのジャンル、受信エリア、および放送主体の情報の少なくとも1つに基づいて導出される。これにより、サービスを選局する際のユーザの嗜好を様々な基準に基づいて、導出することが可能となる。
【0091】
また、車載ラジオ装置が搭載されている車両の位置情報を取得する位置情報取得部(例えば、13、16、202)を更に有し、抽出部は、車両の現在の位置に基づいて、サービスを抽出する基準を切り替える。これにより、車載ラジオ装置の位置に応じて、ユーザに提示するサービスの候補の基準を切り替えることが可能となる。
【0092】
また、基準は、ユーザの選局履歴にて選局の頻度が高いジャンル、現在受信しているラジオ信号にて選局可能なサービスのうちの最もサービス数が多いジャンル、および、所定のジャンル、のうちの少なくともいずれかに基づく。これにより、車載ラジオ装置の位置に応じて、ユーザに提示するサービスの候補の基準として、ユーザの嗜好に基づくジャンル、訪問先の人気ジャンル、および訪問時に有用な情報を提供するジャンルを用いて抽出したサービスをユーザに提示することが可能となる。
【0093】
また、抽出部は、ユーザの嗜好情報に基づいて、画面に表示させるサービスの上限の数を切り替える。これにより、車載ラジオ装置の位置に応じて、ユーザに提示するサービスの候補の上限数を切り替えることが可能となり、候補の視認性を維持することが可能となる。
【0094】
また、抽出部は更に、抽出した1または複数のサービスを、ユーザの選局履歴により特定される、当該ユーザが選局を行う頻度の高い放送主体が上位になるようにソートして画面に設定する。これにより、例えば、国営放送か民間放送かに基づいて、ユーザが選択する傾向の高いサービスを優先的に提示することが可能となる。
【0095】
<その他の実施形態>
上記の実施の形態において、ユーザ嗜好のジャンルに基づいて、サービスを抽出する例を示した。しかしこれに限定するものではなく、例えば、ラジオ信号の音質に係る情報(受信の強度、Codec、ビットレートなど)やそのほかの情報に基づいて、リコメンドリストを生成してもよい。また、リコメンドリストを表示する際に、サービスの名称のみではなく、サービス内で用いられている楽曲などの情報を提示してもよい。
【0096】
また、UI画面のリコメンドリストにおいて表示可能なサービスの数によっては、ユーザが普段選局しないジャンルのサービスを、一定の確率や割合で抽出して表示させるような構成であってもよい。
【0097】
また、
図6のステップS606、ステップS607、ステップS608の各工程においてリコメンドリストを生成する際には、現在選局しているサービスを除いて生成してよい。また、現在選局しているサービスのジャンルに基づいて、リコメンドリストの上位に配置するサービスを決定してもよい。
【0098】
また、上述した1以上の実施の形態の機能を実現するためのプログラムおよびアプリケーションを、ネットワークまたは記憶媒体などを用いてシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0099】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0100】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、車載ラジオ装置、およびサービスの選局候補提示方法として有用である。
として有用である。
【符号の説明】
【0102】
1…車載ラジオ装置
10…アンテナ
11…メインチューナ
12…補助チューナ
13…ラジオ制御部
14…記憶部
15…UI(User Interface)部
16…IF(Interface)部
17…スピーカ
201…データ取得部
202…位置情報取得部
203…指示受付部
204…表示制御部
210…リコメンド生成部
211…ユーザ嗜好学習部
212…受信エリア算出部
213…リコメンドリスト生成部