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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079062
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】貧配合コンクリート組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240604BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191772
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川城 翠
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅美
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB29
4G112PB31
4G112PC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】貧配合コンクリート組成物において、材料分離抵抗性に優れる添加剤を提供する。
【解決手段】水/水硬性粉体比が50%以上であるコンクリート組成物に用いられる添加剤であって、該添加剤は、下記式(1);

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基。(RO)は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10~200の数。xは、0~4。yは、0又は1。)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、構造単位(b)が全構造単位100質量%に対して35質量%以上で、重量平均分子量が、5000~30000である共重合体を含む貧配合コンクリート組成物用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水/水硬性粉体比が50%以上であるコンクリート組成物に用いられる添加剤であって、
該添加剤は、下記式(1);
下記式(1);
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(RO)は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10~200の数である。xは、0~4の数を表す。yは、0又は1を表す。)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、
該構造単位(b)の含有割合が全構造単位100質量%に対して35質量%以上であり、
重量平均分子量が、5000~30000である共重合体を含むことを特徴とする貧配合コンクリート組成物用添加剤。
【請求項2】
前記構造単位(b)の含有割合が全構造単位100質量%に対して70質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤。
【請求項3】
前記水硬性粉体がセメントを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤と、セメントと、骨材とを含むことを特徴とするコンクリート組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤と、セメントと、骨材とを混合する工程を含むことを特徴とするコンクリート組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貧配合コンクリート組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(メタ)アクリル酸等のポリカルボン酸の側鎖にポリアルキレングリコールを有するポリカルボン酸系共重合体は、その優れたセメント分散性能により、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。
このような共重合体を含むセメント混和剤は、減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。なお、減水剤としては、従来、ナフタレン系等の減水剤が使用されていたが、これに比べてポリカルボン酸系共重合体等の共重合体を主成分とするセメント添加剤は高い減水性能を発揮できるため、高性能AE減水剤として多くの使用実績を有するに至っている。
【0003】
ポリカルボン酸系共重合体に関して、例えば、特許文献1には、所定の構造の不飽和ポリアルキレングリコール系単量体に由来する繰り返し単位と所定の構造の不飽和カルボン酸系単量体に由来する繰り返し単位とを有するポリカルボン酸系共重合体を含んでなる超微粒子注入材組成物であって、該超微粒子注入材組成物は、粒径16μm以上の粒子量が10体積%以下である超微粒子セメントを含み、該超微粒子セメントは、高炉スラグ及び石膏を含む超微粒子注入材組成物が開示されている。
特許文献2には、所定の構造の不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)及び飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を有する共重合体(A)、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体(a)及びアルケニル基を有しない非重合性の(ポリ)アルキレングリコール(B)を所定の割合で含むセメント混和剤が開示されている。
また、特許文献3、4には、所定の構造のポリオキシアルキレン単量体と、所定の構造の不飽和カルボン酸単量体と、場合により水溶性で親水性の不飽和単量体とを含む単量体成分を所定の割合で重合させた櫛形ポリカルボキシレート共重合体を用いて、水和性セメント質組成物を低から中程度の範囲で可塑化させる方法や、水和可能なセメント質組成物中で低範囲ないし中範囲の減水を達成する方法が開示されている。
【0004】
土木・建築等において、水和熱による亀裂防止、経済性の観点から、水セメント比が高い、貧配合コンクリートが用いられることがある。貧配合コンクリートに用いられる分散剤に関して、特許文献5には、所定の構造の第1のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(1-a)、所定の構造の第2のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(1-b)、所定の構造の単量体(1-c)を、所定の重量比で共重合して得られる共重合体(イ)を含有する水硬性組成物用分散剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-238925号公報
【特許文献2】特開2003-171156号公報
【特許文献3】特表2017-531608号公報
【特許文献4】特表2019-514832号公報
【特許文献5】特開2003-002714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
貧配合コンクリートでは水の配合割合が高いため、組成物中の材料が分離しやすいという課題がある。上述のとおり、従来、貧配合コンクリート組成物に用いられるポリカルボン酸系共重合体が開発されているが、材料分離抵抗性の点において充分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、貧配合コンクリート組成物において、材料分離抵抗性に優れる添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、貧配合コンクリート組成物に用いることができる重合体について種々検討したところ、所定の構造のポリアルキレングリコール系単量体及び不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位を有し、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の含有割合及び重量平均分子量が所定の範囲である共重合体が、貧配合コンクリート組成物において、材料分離抵抗性に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕水/水硬性粉体比が50%以上であるコンクリート組成物に用いられる添加剤であって、
該添加剤は、下記式(1);
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(RO)は、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10~200の数である。xは、0~4の数を表す。yは、0又は1を表す。)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、該構造単位(b)の含有割合が全構造単位100質量%に対して35質量%以上であり、重量平均分子量が、5000~30000である共重合体を含むことを特徴とする貧配合コンクリート組成物用添加剤。
〔2〕上記構造単位(b)の含有割合が全構造単位100質量%に対して70質量%以下であることを特徴とする上記〔1〕に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤。
〔3〕上記水硬性粉体がセメントを含むことを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤と、セメントと、骨材とを含むことを特徴とするコンクリート組成物。
〔5〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の貧配合コンクリート組成物用添加剤と、セメントと、骨材とを混合する工程を含むことを特徴とするコンクリート組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤は、上述の構成よりなり、貧配合コンクリート組成物において、材料分離抵抗性に優れるため、貧配合コンクリート等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0012】
〔共重合体〕
本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤(以下、本発明の添加剤ともいう。)に含まれる共重合体(以下、本発明の共重合体ともいう。)は、上記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する。
なお、本発明において、単量体由来の構造単位とは、単量体の炭素-炭素二重結合(C=C)部分が単結合に置き換わって隣り合う炭素原子と結合を形成した構造(-C-C-)を意味する。本発明において、単量体由来の構造単位は単量体を重合することによって形成されたものに限定されず、重合反応以外の反応により形成されたものであってもよい。
【0013】
上記共重合体において、構造単位(b)の割合は、全構造単位100質量%に対して35質量%以上である。これにより、構造単位(a)が有する側鎖の数が所定量以下となり、セメント分散性が高くなりすぎず、好適な範囲となることにより、コンクリート組成物中の水を充分に抱え込み、材料分離を抑制することができる。
構造単位(b)の割合は80質量%以下であることが好ましい。これにより本発明の添加剤の添加量が少量であってもより充分に効果を発揮することができる。より好ましくは40~75質量%であり、更に好ましくは45~70質量%であり、特に好ましくは50~65質量%である。
本発明において、上記構造単位(b)の全構造単位100質量%に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応するナトリウム塩換算で計算するものとする。例えば、アクリル酸に由来する構造単位の質量割合は、対応するナトリウム塩であるアクリル酸ナトリウムに由来する構造単位の質量割合(質量%)として計算する。
【0014】
上記共重合体において、構造単位(a)の割合は、全構造単位100質量%に対して20~65質量%であることが好ましい。より好ましくは25~60質量%であり、更に好ましくは30~55質量%であり、特に好ましくは35~50質量%である。
【0015】
上記共重合体は、ポリアルキレングリコール系単量体(A)及び不飽和カルボン酸系単量体(B)以外のその他の単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
上記共重合体における構造単位(c)の割合は、全構造単位100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。
より好ましくは0~8質量%であり、更に好ましくは0~5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0016】
上記共重合体において、構造単位(a)の割合は、全構造単位100モル%に対して1~30モル%であることが好ましい。より好ましくは1~25モル%であり、更に好ましくは1~20モル%であり、一層好ましくは1~15モル%であり、特に好ましくは1~10モル%である。
【0017】
上記共重合体において、構造単位(b)の割合は、全構造単位100モル%に対して70~99モル%であることが好ましい。より好ましくは75~99モル%であり、更に好ましくは80~99モル%であり、一層好ましくは85~99モル%であり、特に好ましくは90~99モル%である。また、構造単位(b)の割合は、全構造単位100モル%に対して75モル%を超えることが好ましく、80モル%を超えることがより好ましく、85モル%を超えることが更に好ましく、90モル%を超えることが一層好ましい。
【0018】
上記共重合体において、構造単位(c)の割合は、全構造単位100モル%に対して0~10モル%であることが好ましい。より好ましくは0~5モル%であり、更に好ましくは0~1モル%であり、特に好ましくは0~0.1モル%である。
【0019】
上記共重合体は、重量平均分子量が5000~30000である。これにより、セメント分散性が高くなりすぎず、好適な範囲となることにより、コンクリート組成物中の水を充分に抱え込み、材料分離を抑制することができる。好ましくは5500~25000であり、より好ましくは6000~20000であり、更に特に好ましくは6500~18000であり、特に好ましくは7000~15000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
<ポリアルキレングリコール系単量体(A)>
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)(以下、単量体(A)ともいう。)は、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)において、R~Rは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。好ましくはR、Rが水素原子であって、Rが水素原子又はメチル基である。より好ましくは、R、Rが水素原子であって、Rがメチル基である。
【0021】
上記式(1)におけるRは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1~18の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が挙げられる。中でも、アルキル基(直鎖、分岐鎖又は環状)が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0022】
上記式(1)中、ROは、「同一又は異なって、」炭素数2~18のオキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するROのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記オキシアルキレン基の炭素数は2~18であることが好ましい。より好ましくは2~12であり、更に好ましくは2~8であり、特に好ましくは2~4である。
上記式(1)中、ROで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0023】
上記式(1)中、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、10~200である。nとしては好ましくは15~150であり、より好ましくは20~100であり、更に好ましくは25~90であり、一層好ましくは30~80であり、特に好ましくは35~70である。
【0024】
上記式(1)中、xは、0~4の数を表し、yは、0又は1を表す。
xは1~4であることが好ましい。yは0であることが好ましい。yが0である単量体(A)は安価であるため、低コストで本発明の共重合体を製造することができる。
yが0である場合、xは1~4であることが好ましく、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは2である。xが1~4である場合、Rはメチル基であることが好ましい。
上記yが1の場合には、xは0であることが好ましい。この場合、Rは水素原子、又は、メチル基であることがより好ましい。
【0025】
上記ポリアルキレングリコール系単量体(A)として具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性したアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール等の炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを10~200モル付加させた化合物及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性した化合物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを10~200モル付加させた化合物及びこれらの末端を炭素数1~30の炭化水素基で疎水変性した化合物が好ましい。より好ましくは炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを10~200モル付加させた化合物であり、更に好ましくは4-ヒドロキシブチル-1-モノビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール又は3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキサイドを付加させたものである。
【0026】
<不飽和カルボン酸系単量体(B)>
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)は、カルボキシル基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、下記式(2);
【0027】
【化2】
【0028】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、-(CHp1COOM(-(CHp1COOMは、-COOM又はその他の-(CHp1COOMと無水物を形成していてもよい)、-(CHp2(CO)q1-O-R、又は、-(CHp3CONR1011を表す。p1、p2、p3は、同一又は異なって、0~2の整数を表し、q1は、0又は1を表す。M及びMは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。R、R10、R11は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0029】
上記R、R、Rにおける炭素数1~10のアルキル基の炭素数として、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4である。炭素数1~10のアルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。上記R、R、Rのうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、より好ましくは少なくとも2つが水素原子である。上記R、R10、R11における炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、炭素数3~20の脂環式アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。上記M及びMにおける一価金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等が挙げられる。二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が挙げられる。三価金属原子としては、アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。上記M及びMとしては、水素原子又はアルカリ金属原子が好ましい。
【0030】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)として具体的には、下記の不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
【0031】
上記炭素数1~22のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール等が挙げられる。
【0032】
上記炭素数2~4のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
上記炭素数1~22のアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
【0034】
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)又は無水マレイン酸が好ましい。重合性向上の観点から、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)である。
【0035】
本発明の共重合体は、単量体(A)、(B)以外のその他の単量体(C)由来の構造単位(c)を有していてもよい。
その他の単量体(C)は、単量体(A)、(B)と共重合することができる限り特に制限されないが、例えば、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、1-アリルオキシ-3-ブトキシプロパン-2-オール等の水酸基含有エーテル類;N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。
【0036】
〔共重合体の製造方法〕
本発明の共重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。
重合反応による共重合体における各構造単位の割合は、反応原料として用いた各単量体の割合と高速液体クロマトグラフィーにより測定される単量体の残存量に基づいて算出することができる。
【0037】
上記共重合体の製造において、得られる重合体の分子量調整のために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0038】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
また、共重合体の分子量調整のためには、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0039】
上記連鎖移動剤の使用量は、適宜設定すればよいが、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
【0040】
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0041】
上記水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素とL-アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、低級アルコール、芳香族若しくは脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、又は、塊状重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水-低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0042】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、更により好ましくは10モル以下、特に好ましくは7モル以下、最も好ましくは5モル以下である。
【0043】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0044】
各単量体成分の反応容器への投入方法は特に限定されず、全量を反応容器に初期に一括投入する方法;全量を反応容器に分割又は連続投入する方法;一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法等が挙げられる。また、反応途中で各モノマーの反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、モノマー比が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
上記のようにして得られた各重合体は、そのままでも分散剤として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンが好適である。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。
【0045】
〔貧配合コンクリート組成物用添加剤〕
本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤は、本発明の共重合体を必須とするものであるが、上記共重合体を2種以上含んでいてもよく、上記共重合体と異なる共重合体を1種以上含んでいてもよい。
本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤は、上記共重合体のみからなる剤であってもよいし、また、上記共重合体だけでなく、必要に応じて更に他の成分や添加剤等を含む剤であってもよい。
【0046】
上記貧配合コンクリート組成物用添加剤はまた、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常使用される他のセメント分散剤や減水剤を更に含有していてもよく、複数の併用も可能である。他のセメント分散剤(減水剤)としては特に限定されず、例えば、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤(減水剤)や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)、分子中にリン酸基を有する各種リン酸系分散剤(減水剤)等が挙げられる。本発明の共重合体を他のセメント分散剤(減水剤)と併用する場合、他のセメント分散剤(減水剤)の含有量は、本発明の共重合体の含有量100質量%に対して1~50質量%であることが好ましく、より好ましくは1~40質量%である。
【0047】
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、分子中にスルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物を含むものであればよい。スルホン酸基又はスルホン酸の塩の基を有する化合物としては、分子中に芳香環を有するものであることが好ましい。
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤(減水剤);メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系分散剤(減水剤);アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系分散剤(減水剤);リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系減水剤;ポリスチレンスルホン酸塩系分散剤(減水剤)等が挙げられる。
上記スルホン酸系分散剤(減水剤)としては、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系分散剤(減水剤)及びリグニンスルホン酸塩系分散剤(減水剤)が好ましく、より好ましくは、リグニンスルホン酸塩系分散剤(減水剤)である。
【0048】
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)としては、不飽和カルボン酸系単量体と(ポリ)アルキレングリコール系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
不飽和カルボン酸系単量体としては、上述の単量体(B)と同様の単量体が挙げられる。
(ポリ)アルキレングリコール系単量体としては、具体的には例えば、炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加させた化合物及びこれらの末端疎水変性物や、不飽和カルボン酸系単量体と平均付加モル数1~300の(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物及びこれらの末端疎水変性物等が挙げられる。
【0049】
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、不飽和カルボン酸系単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100質量%に対して、35質量%未満であることが好ましい。より好ましくは1~30質量%であり、更に好ましくは1~25質量%である。
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構造単位の割合が、全構造単位100質量%に対して、65質量%以上であることが好ましい。より好ましくは70~99質量%であり、更に好ましくは75~99質量%である。
上記ポリカルボン酸系分散剤(減水剤)は、重量平均分子量が、5000~500000であることが好ましい。より好ましくは7000~200000であり、更に好ましくは8000~100000である。
【0050】
上記リン酸系分散剤(減水剤)としては、例えば、ポリアルキレングリコールを含むリン酸系重合体、リン酸系縮合物が挙げられる。
リン酸系重合体としては、(ポリ)アルキレングリコール系単量体とリン酸系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる重合体が好ましい。
上記リン酸系単量体としては、例えば、リン酸モノ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸エステル、リン酸ジ-{(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸}エステル、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。
リン酸系縮合物としては、例えば、リン酸エステルとアルデヒド化合物との縮合物が好適である。リン酸エステルとしては、リン酸類(塩であってもよい)と、水酸基含有化合物とのエステル化物であれば特に限定されず、1種又は2種以上を使用することができる。なお、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルのいずれであってもよい。
【0051】
また、本発明の添加剤は、例えば、水溶性高分子物質(ポリエチレングリコール等)、高分子エマルジョン、遅延剤(グルコン酸等のオキシカルボン酸類等)、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0052】
〔コンクリート組成物〕
本発明の添加剤は、貧配合コンクリート組成物に用いられるものである。
上記貧配合コンクリート組成物は、セメント等の水硬性粉体(水硬性材料)と、水と、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)等の骨材とを含むものであって、水と水硬性粉体との比(水/水硬性粉体比)が50%以上である組成物である。
上記水硬性粉体としては、セメント、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、石膏等が挙げられ、好ましくはセメントである。
上記水硬性粉体がセメントを含む形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
本発明の添加剤と、セメントと、骨材とを含むコンクリート組成物もまた、本発明の1つである。
【0053】
本発明の貧配合コンクリート組成物において、セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
本発明の貧配合コンクリート組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0054】
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0055】
上記貧配合コンクリート組成物は、水/水硬性粉体比が50%以上であればよいが、50~70%であることが好ましく、50~65%であることがより好ましく、55~65%であることがさらに好ましい。一方、水硬性粉体の質量は190~350kg/mであることが好ましく、210~340kg/mであることがより好ましく、230~330kg/mであることが更に好ましく、250~320kg/mであることが最も好ましい。
【0056】
上記貧配合コンクリート組成物において、本発明の添加剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分である共重合体(複数含む場合はその合計量)が、固形分換算で、水硬性粉体質量の全量100質量%に対して、0.005~10質量%となるように設定することが好ましい。0.005質量%以上とすることにより、本発明における性能をより充分に発揮することができ、10質量%以下とすることにより、本発明における性能を充分に発揮させつつ、経済性にも優れることとなる。より好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.02~3質量%である。
【0057】
本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤と、セメントと、骨材とを混合する工程を含むコンクリート組成物の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記コンクリート組成物の製造方法において、上記混合工程は、本発明の添加剤とセメントと、骨材と水とを混合することが好ましい。
上記混合工程で用いられる貧配合コンクリート組成物用添加剤、セメント、骨材の具体例及び好ましい例は、本発明の貧配合コンクリート組成物用添加剤、コンクリート組成物の項に述べたとおりである。また、上記貧配合コンクリート組成物用添加剤、セメント、水等の混合比は、上記コンクリート組成物における配合割合と同様である。
【0058】
なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
<固形分測定方法>
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【実施例0059】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0060】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
下記重合例において製造した共重合体の重量平均分子量は、以下の測定方法により測定した。
装置:Alliance(e2695)(Waters社製)
解析ソフト:Empower2プロフェッショナル+GPCオプション(Waters社製)
使用カラム:TSKguardcolumnsSWXL(内径:6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径:7.8mm×300mm)(いずれも東ソー社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製のポリエチレングリコール、Mp=255000、200000、107000、72750、44900、31400、21300、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
【0061】
<高速液体クロマトグラフィー(LC)>
下記重合例において反応原料として用いた各単量体の残存量を、以下の条件で測定し、共重合体の組成計算に使用した。
装置:Alliance 2695(Waters社製)
解析ソフト:Empowerプロフェッショナル(Waters社製)
カラム:Atlantis dC18 5μm(内径4.6mm×長さ250mm)×2本(Waters社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶媒:100mM酢酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルを6:4の比率で混合した溶液流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:30分
試料液注入量:100μL(試料濃度は1質量%)
【0062】
<流動性及び分離抵抗性>
室温が20℃±1℃、相対湿度が60%±5%の環境下、下記の表1に示した配合で、コンクリートを製造した。粗骨材(G)を強制二軸ミキサーに投入後、細骨材(S)、セメント(C)を投入し撹拌を開始した。共重合体水溶液、空気量調整剤及び水道水を混合した練り水(W)をミキサーの撹拌開始と同時に投入した。開始から120秒後にミキサーからコンクリートを排出した。なお、空気量調整剤は、コンクリートの空気量をJIS A 1128に準じて測定し、排出直後の空気量が4.5±1.0%になるように適宜配合量を調整して使用した。
(使用材料)
C:太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント(比重:3.16g/cm)G:青梅産硬質砕石(比重:2.65g/cm
S:掛川水系陸砂(比重:2.65g/cm)空気量調整剤:ポゾリス ソリューションズ社製マスターエア404、ポゾリス ソリューションズ社製マスターエア202
(1)流動性
JIS A 1150によって、コンクリートのスランプフロー値を測定した。
(2)分離抵抗性
混練後、ミキサーから平板(鋼板)上に排出したコンクリートをスコップで手早く練り返して直径が約50cmの塊にして静置し、混練開始から10分後に、静置したコンクリートの端から分離したモルタルが流れ出てくる度合いを以下の基準に従って評価した。
◎:コンクリートの端から流れ出たモルタルの端までの最大距離が10mm未満
〇:コンクリートの端から流れ出たモルタルの端までの最大距離が10mm以上20mm未満
△:コンクリートの端から流れ出たモルタルの端までの最大距離が20mm以上30mm未満
×:コンクリートの端から流れ出たモルタルの端までの最大距離が30mm以上
【0063】
【表1】
【0064】
〔重合例1〕
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素水溶液を投入した。次に、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(IPN-50)、アクリル酸(AA)および3-メルカプトプロピオン酸をそれぞれイオン交換水に溶解させた水溶液を4時間かけて、L-アスコルビン酸をイオン交換水に溶解させた水溶液を4.5時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とし、滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=6まで中和し、共重合体(1)を含む重合体水溶液を得た。
【0065】
〔重合例2~15〕
各重合例2~15につき、下記表2記載の各種のポリアルキレングリコール系単量体(A)と不飽和カルボン酸系単量体(B)を用いて重合例1に準じた方法で重合反応を行い、共重合体(2)~(15)のいずれかを含む各共重合体水溶液を其々得た。
【0066】
重合例1~15で得られた共重合体(1)~(15)における各構造単位の含有割合(仕上がり比)、重量平均分子量(Mw)を下記表2に示した。
【0067】
【表2】
表2における単量体の略号は以下のとおりである。
IPN-5:3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数5モル)
IPN-10:3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数10モル)
IPN-50:3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数50モル)
MLA-150:メタリルアルコールのエチレンオキシド付加体(平均付加モル数150モル)

PGM-25E:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数25モル)モノメタクリレート
PGM-40E:メトキシポリエチレングリコール(平均付加モル数40モル)モノメタクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
【0068】
<実施例1~11及び比較例1~4>
重合例1~15で得られた各共重合体(1)~(15)について上述の方法により流動性(フロー値)、分離抵抗性を評価した(当該評価は、使用した共重合体の種類に応じて下記表3に記載のように、実施例1~11又は比較例1~4と呼ぶ。)。当該評価結果を下記表3に示した。表中の「%/C」は、セメントに対する共重合体固形分の添加量(質量%)である。
【0069】
【表3】
【0070】
上記表3の結果より、実施例は比較例に対していずれもコンクリートの分離抵抗性が優れていることが示された。よって本発明の共重合体は、貧配合コンクリート組成物において材料分離抵抗性に優れるものであることが示唆される。