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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079063
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ロータ、回転電機、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
H02K1/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191774
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 篤司
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601DD01
5H601GA02
5H601GC02
5H601JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロータの重心が中心軸に対してずれることを抑制する回転電機および駆動装置を提供する。
【解決手段】ロータコアは、シャフトが軸方向に通される貫通孔30hと、貫通孔の径方向内縁部に設けられた突出部32と、貫通孔の径方向内縁部に周方向に間隔を空けて設けられた複数の凹部80と、を有する。軸方向に見て、中心軸Jから径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置された複数の仮想線S1を規定する。複数の凹部は、第1凹部81と、軸方向に見て仮想線と重なる第2凹部82と、を含む。第1凹部は、軸方向に見て、第1凹部に周方向に最も近い仮想線に対する周方向の配置関係が、第2凹部と重なる仮想線に対する第2凹部の周方向の配置関係と異なることと、軸方向に見て第2凹部と異なる形状を有することと、軸方向に見て第2凹部と異なる周方向の寸法を有することと、の少なくとも1つを満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータであって、
軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトに固定されたロータコアと、
を備え、
前記ロータコアは、
前記シャフトが軸方向に通される貫通孔と、
前記貫通孔の径方向内縁部に設けられ、径方向内側に突出する突出部と、
前記貫通孔の径方向内縁部に周方向に間隔を空けて設けられ、径方向外側に窪む複数の凹部と、
を有し、
軸方向に見て、前記中心軸から径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置され、かつ、前記突出部の数と前記凹部の数とを合わせた総数と同じ数の複数の仮想線を規定したとき、前記複数の仮想線のうちの1つは、軸方向に見て前記突出部の周方向の中心と重なり、
前記複数の凹部は、
第1凹部と、
軸方向に見て前記仮想線と重なる第2凹部と、
を含み、
前記第1凹部は、
軸方向に見て、前記第1凹部に周方向に最も近い前記仮想線に対する周方向の配置関係が、前記第2凹部と重なる前記仮想線に対する前記第2凹部の周方向の配置関係と異なることと、
軸方向に見て前記第2凹部と異なる形状を有することと、
軸方向に見て前記第2凹部と異なる周方向の寸法を有することと、
の少なくとも1つを満たす、ロータ。
【請求項2】
前記第1凹部は、軸方向に見て、前記仮想線と重なり、かつ、前記第1凹部を通る前記仮想線を挟んで非対称な形状を有する、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
軸方向に見て、前記第1凹部のうち前記仮想線よりも前記突出部に周方向に近い部分における周方向の寸法は、前記第1凹部のうち前記仮想線よりも前記突出部から周方向に遠い部分における周方向の寸法よりも大きい、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記第1凹部は、前記第2凹部よりも前記突出部に周方向に近い位置に配置されている、請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
前記複数の凹部のうち前記突出部と周方向に隣り合って配置された前記凹部は、前記第1凹部である、請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
前記複数の凹部は、軸方向に見て、互いに同じ形状である、請求項1に記載のロータ。
【請求項7】
前記第2凹部は、軸方向に見て前記第2凹部を通る前記仮想線を対称軸として線対称な形状である、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項8】
前記複数の凹部は、前記突出部と前記中心軸を径方向に挟んで反対側に配置された前記凹部を含み、
前記突出部と前記中心軸を径方向に挟んで反対側に配置された前記凹部は、前記第2凹部である、請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
前記ロータコアは、軸方向に積層された複数の板部材を有し、
前記板部材は、1つまたは複数ずつ所定角度で回転した状態で積層されており、
前記所定角度をφとし、前記仮想線の数をNとしたとき、φ=360[°]/Nを満たす、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項10】
周方向に間隔を空けて配置された複数の磁極部を備え、
前記突出部は、軸方向に見て、前記磁極部の周方向の中心を通り径方向に延びる磁極中心線と重なる位置に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項11】
前記貫通孔の径方向内縁部には、径方向外側に窪む一対の窪み部が設けられ、
前記一対の窪み部は、前記突出部を周方向に挟み、前記突出部と隣接して配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、
を備える、回転電機。
【請求項13】
請求項12に記載の回転電機と、
前記回転電機に接続されたギヤ機構と、
を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、回転電機、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸体に設けられたキー溝に対応する凸部を有するコア部を備えた回転電機用のコア部付軸体が知られている。例えば、特許文献1には、軸体を挟んで一対の凸部を有するコア部が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-81953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回転電機用のコア部付軸体においては、軸体に一対のキー溝を設ける必要があるため、軸体の製造コストが増大する恐れがある。これに対して、キー溝と凸部とを1つずつ設ける構成とすれば、軸体の製造コストが増大することを抑制できる。しかしながら、この場合には、キー溝と凸部とが設けられることによって、コア部付軸体の周方向の重量バランスが崩れて、コア部付軸体の重心がコア部付軸体の回転中心に対してずれる恐れがある。そのため、回転電機において、コア部付軸体が回転する際に、コア部付軸体の振動が大きくなり、騒音が生じる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、重心が中心軸に対してずれることを抑制できる構造を有するロータ、そのようなロータを備える回転電機、および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータであって、軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトに固定されたロータコアと、を備える。前記ロータコアは、前記シャフトが軸方向に通される貫通孔と、前記貫通孔の径方向内縁部に設けられ、径方向内側に突出する突出部と、前記貫通孔の径方向内縁部に周方向に間隔を空けて設けられ、径方向外側に窪む複数の凹部と、を有する。軸方向に見て、前記中心軸から径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置され、かつ、前記突出部の数と前記凹部の数とを合わせた総数と同じ数の複数の仮想線を規定したとき、前記複数の仮想線のうちの1つは、軸方向に見て前記突出部の周方向の中心と重なる。前記複数の凹部は、第1凹部と、軸方向に見て前記仮想線と重なる第2凹部と、を含む。前記第1凹部は、軸方向に見て、前記第1凹部に周方向に最も近い前記仮想線に対する周方向の配置関係が、前記第2凹部と重なる前記仮想線に対する前記第2凹部の周方向の配置関係と異なることと、軸方向に見て前記第2凹部と異なる形状を有することと、軸方向に見て前記第2凹部と異なる周方向の寸法を有することと、の少なくとも1つを満たす。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上記のロータと、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、を備える。
【0008】
本発明の駆動装置の一つの態様は、上記の回転電機と、前記回転電機に接続されたギヤ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、回転電機および駆動装置において、ロータの重心が中心軸に対してずれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態における駆動装置を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態におけるロータを示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態におけるロータコアの一部を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態における積層体を示す断面図である。
図5図5は、第2実施形態におけるロータコアの一部を示す断面図である。
図6図6は、第3実施形態におけるロータコアの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0012】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0013】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0014】
適宜図に示す中心軸Jは、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸Jは、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、つまり中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。以下の実施形態においては、左側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼び、右側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0015】
適宜図に示す矢印θは、周方向を示している。以下の説明においては、周方向のうち右側(-Y側)から見て中心軸Jを中心として時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち右側から見て中心軸Jを中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸73を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。図1に示すように、駆動装置100は、回転電機60と、回転電機60に接続されたギヤ機構70と、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容するハウジング63と、を備える。本実施形態において回転電機60は、モータである。
【0017】
ハウジング63は、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容している。ハウジング63は、回転電機60を内部に収容するモータハウジング63aと、ギヤ機構70を内部に収容するギヤハウジング63bと、を有する。モータハウジング63aは、ギヤハウジング63bの軸方向他方側(-Y側)に繋がっている。モータハウジング63aは、周壁部63cと、隔壁部63dと、蓋部63eと、を有する。周壁部63cと隔壁部63dとは、例えば、同一の単一部材の一部である。蓋部63eは、例えば、周壁部63cおよび隔壁部63dとは別体である。
【0018】
周壁部63cは、中心軸Jを囲み、軸方向他方側(-Y側)に開口する筒状である。隔壁部63dは、周壁部63cの軸方向一方側(+Y側)の端部に繋がっている。隔壁部63dは、モータハウジング63aの内部とギヤハウジング63bの内部とを軸方向に隔てている。隔壁部63dは、モータハウジング63aの内部とギヤハウジング63bの内部とを繋ぐ隔壁開口63fを有する。隔壁部63dには、ベアリング64aが保持されている。蓋部63eは、周壁部63cの軸方向他方側の端部に固定されている。蓋部63eは、周壁部63cの軸方向他方側の開口を塞いでいる。蓋部63eには、ベアリング64bが保持されている。
【0019】
ギヤハウジング63bは、オイルOを内部に収容している。オイルOは、ギヤハウジング63b内の下部領域に貯留されている。オイルOは、後述する流路90内を循環する。オイルOは、回転電機60を冷却する冷媒として使用される。また、オイルOは、ギヤ機構70に対して潤滑油として使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0020】
ギヤ機構70は、回転電機60に接続され、後述するロータ10の回転を車両の車軸73に伝達する。本実施形態のギヤ機構70は、回転電機60に接続された減速装置71と、減速装置71に接続された差動装置72と、を有する。差動装置72は、リングギヤ72aを有する。リングギヤ72aには、回転電機60から出力されるトルクが減速装置71を介して伝えられる。リングギヤ72aの下側の端部は、ギヤハウジング63b内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ72aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置71および差動装置72に潤滑油として供給される。
【0021】
回転電機60は、中心軸Jを中心として回転可能なロータ10と、ロータ10と径方向に隙間を介して対向するステータ61と、を備える。本実施形態においてステータ61は、ロータ10の径方向外側に位置する。ステータ61は、ステータコア61aと、ステータコア61aに取り付けられたコイルアセンブリ61bと、を有する。コイルアセンブリ61bは、ステータコア61aに取り付けられた複数のコイル61cを有する。図示は省略するが、コイルアセンブリ61bは、各コイル61cを結束する結束部材などを有してもよいし、各コイル61c同士を繋ぐ渡り線を有してもよい。コイルアセンブリ61bは、ステータコア61aよりも軸方向に突出するコイルエンド61d,61eを有する。
【0022】
図2に示すように、ロータ10は、シャフト20と、ロータコア30と、複数のマグネット40と、を備える。図1に示すように、シャフト20は、中心軸Jを中心として軸方向に延びている。シャフト20の軸方向一方側(+Y側)の端部は、ギヤハウジング63b内に突出している。図2に示すように、本実施形態においてシャフト20は、中心軸Jを中心とする円筒状の中空シャフトである。シャフト20は、シャフト20の外周面から径方向内側に窪む溝部21を有する。図示は省略するが、溝部21は、軸方向に延びている。本実施形態において溝部21は、1つのみ設けられている。図1に示すように、シャフト20には、シャフト20の内部とシャフト20の外部とを繋ぐ孔部22が設けられている。孔部22は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。
【0023】
図2に示すように、ロータコア30は、シャフト20の外周面に固定されている。ロータコア30は、中心軸Jを中心とする略円柱状である。ロータコア30は、ロータコア30を軸方向に貫通する貫通孔30hを有する。貫通孔30hの内部には、中心軸Jが通っている。本実施形態において貫通孔30hは、中心軸Jを中心とする略円形状の孔である。貫通孔30hには、シャフト20が軸方向に通されている。貫通孔30hの内周面は、シャフト20の外周面に固定されている。貫通孔30h内には、例えば、シャフト20が圧入されている。
【0024】
貫通孔30hの径方向内側面は、支持面30iを有する。支持面30iは、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする円弧状に延びる面である。支持面30iは、周方向に間隔を空けて複数設けられている。本実施形態において支持面30iは、4つ設けられている。複数の支持面30iは、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする同一円上に配置されている。複数の支持面30iは、シャフト20の外周面に接触している。
【0025】
ロータコア30は、磁性体製である。図1に示すように、ロータコア30は、軸方向に積層された複数の板部材30aを有する。板部材30aは、板面が軸方向を向く板状の部材である。板部材30aは、中心軸Jを中心とする略円板状である。板部材30aの材料は、所定方向に圧延されて作られた圧延鋼材である。板部材30aの材料は、例えば、電磁鋼板である。
【0026】
板部材30aは、1つまたは複数ずつ所定角度で周方向に回転した状態で積層されている。つまり、本実施形態において複数の板部材30aは、転積されている。本実施形態において板部材30aが転積される所定角度は、90°である。このように複数の板部材30aが転積されることで、複数の板部材30aは、圧延方向が互いに異なる方向となる2つ以上の板部材30aを含む。板部材30aにおける圧延方向は、板部材30aの材料である圧延鋼材が圧延された方向である。
【0027】
図示は省略するが、ロータコア30は、軸方向に並ぶ複数のコアピース部を有する。各コアピース部のそれぞれは、板部材30aが軸方向に複数積層されて構成されている。図示は省略するが、軸方向に隣り合う少なくとも1組のコアピース部同士の間には、略円板状のプレートが設けられている。
【0028】
図2に示すように、ロータコア30は、周方向に並んで配置された複数のマグネット保持部31を有する。複数のマグネット保持部31は、ロータコア30のうち径方向外側部分に設けられている。複数のマグネット保持部31は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。本実施形態においてマグネット保持部31は、8つ設けられている。
【0029】
複数のマグネット保持部31は、周方向に互いに隣り合う一対の第1マグネット穴51a,51bを有する。つまり、ロータコア30は、一対の第1マグネット穴51a,51bを有する。このように、本実施形態において各マグネット保持部31には、一対の第1マグネット穴51a,51bの合計2つのマグネット穴がそれぞれ設けられている。本実施形態において一対の第1マグネット穴51a,51bは、ロータコア30を軸方向に貫通している。なお、一対の第1マグネット穴51a,51bは、軸方向の端部に底部を有する穴であってもよい。
【0030】
各マグネット保持部31における2つのマグネット穴内には、それぞれマグネット40が1つずつ配置されている。マグネット40の種類は、特に限定されない。マグネット40は、例えば、ネオジム磁石であってもよいし、フェライト磁石であってもよい。マグネット40は、例えば、軸方向に長い直方体状である。マグネット40は、例えば、ロータコア30の軸方向一端部から軸方向他端部まで延びている。
【0031】
複数のマグネット40は、一対の第1マグネット穴51a,51b内にそれぞれ配置された一対の第1マグネット41a,41bを含む。各マグネット40は、各マグネット穴内にそれぞれ固定されている。各マグネット40の各マグネット穴内への固定方法は、特に限定されない。例えば、各マグネットは、ロータコア30の一部がカシメられることによって各マグネット穴内に固定されてもよいし、各マグネット穴内のうちマグネット40が配置された部分以外の部分に充填された樹脂によって各マグネット穴内に固定されていてもよいし、各マグネット穴内のうちマグネット40が配置された部分以外の部分に配置された発泡シートによって各マグネット穴内に固定されていてもよい。
【0032】
1つのマグネット保持部31と、1つのマグネット保持部31に設けられた複数のマグネット穴内に配置された複数のマグネット40と、によって磁極部10Pが構成されている。磁極部10Pは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に複数配置されている。つまり、ロータ10は、周方向に間隔を空けて配置された複数の磁極部10Pを備える。本実施形態において磁極部10Pは、8つ設けられている。複数の磁極部10Pは、ロータコア30の外周面における磁極がN極の磁極部10Nと、ロータコア30の外周面における磁極がS極の磁極部10Sと、を複数ずつ含む。本実施形態において磁極部10Nと磁極部10Sとは、4つずつ設けられている。4つの磁極部10Nと4つの磁極部10Sとは、周方向に沿って交互に配置されている。各磁極部10Pの構成は、ロータコア30の外周面の磁極が異なる点および周方向位置が異なる点を除いて、同様の構成である。
【0033】
磁極部10Pにおいて、第1マグネット穴51aと第1マグネット穴51bとは、磁極中心線Ldを周方向に挟んで配置されている。磁極中心線Ldは、一対の第1マグネット穴51a,51b同士の間における周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線である。磁極中心線Ldは、磁極部10Pの周方向の中心を通っている。磁極部10Pの周方向の中心は、マグネット保持部31の周方向の中心である。磁極中心線Ldは、磁極部10Pごとに設けられる。磁極中心線Ldは、軸方向に見て、ロータ10のd軸上を通っている。磁極中心線Ldが延びる方向は、ロータ10のd軸方向である。第1マグネット穴51aと第1マグネット穴51bとは、軸方向に見て、磁極中心線Ldを対称軸として線対称に配置されている。
【0034】
一対の第1マグネット穴51a,51bは、軸方向に見て、径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びている。つまり、第1マグネット穴51aと第1マグネット穴51bとの間の周方向の距離は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って大きくなっている。一対の第1マグネット穴51a,51bは、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って周方向に広がるV字形状に沿って配置されている。一対の第1マグネット穴51a,51bに配置された一対の第1マグネット41a,41bは、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って周方向に広がるV字形状に沿って配置されている。
【0035】
図3に示すように、ロータコア30は、貫通孔30hの径方向内縁部に設けられた突出部32を有する。突出部32は、径方向内側に突出している。突出部32の径方向内側の端部は、支持面30iよりも径方向内側に位置する。図示は省略するが、突出部32は、軸方向に延びている。本実施形態において突出部32は、貫通孔30hの径方向内縁部に1つのみ設けられている。突出部32は、軸方向に見て、略矩形状である。突出部32の径方向内側の面は、径方向と直交している。突出部32は、軸方向に見て、磁極部10Pの周方向の中心を通り径方向に延びる磁極中心線Ldと重なる位置に配置されている。そのため、ロータコア30のうち、磁極部10Pにおけるマグネット40の径方向内側に位置する部分の強度を突出部32によって向上させることができる。これにより、磁極部10Pにおいてマグネット40をより安定して保持しやすくできる。本実施形態において突出部32の周方向の中心は、軸方向に見て、1つの磁極部10Pにおける磁極中心線Ldと重なっている。
【0036】
図2に示すように、突出部32は、溝部21に嵌め合わされている。これにより、シャフト20とロータコア30とが周方向に互いに引っ掛かり合い、シャフト20とロータコア30とが互いに周方向に相対回転することが抑制されている。
【0037】
図3に示すように、突出部32の周方向両側には、それぞれ窪み部34が設けられている。一対の窪み部34は、貫通孔30hの径方向内縁部に設けられ、径方向外側に窪んでいる。一対の窪み部34は、支持面30iから径方向外側に窪んでいる。本実施形態では、軸方向に見て、一対の窪み部34の内縁は、径方向外側に凸となる向きに湾曲する曲線状である。一対の窪み部34は、突出部32を周方向に挟み、突出部32と隣接して配置されている。
【0038】
上記のような一対の窪み部34が設けられることで、シャフト20を貫通孔30h内に圧入する際にシャフト20に生じる応力の一部をシャフト20のうち一対の窪み部34と径方向に対向する部分において逃がすことができる。したがって、シャフト20を貫通孔30h内に圧入しやすくできる。また、一対の窪み部34を突出部32の周方向両側に隣接して配置することで、突出部32の径方向外側の端部が接続される貫通孔30hの内縁部分を、窪み部34の内縁にすることができる。これにより、軸方向に見たときの窪み部34の内縁の形状を湾曲した形状にすることで、突出部32の径方向外側の端部を貫通孔30hの内縁に滑らかに繋げやすい。したがって、突出部32に生じた応力を、突出部32の径方向外側の端部と窪み部34の内縁との接続部分において分散して受けやすい。
【0039】
ロータコア30は、貫通孔30hの径方向内縁部に周方向に間隔を空けて設けられた複数の凹部80を有する。複数の凹部80は、径方向外側に窪んでいる。本実施形態において複数の凹部80は、支持面30iから径方向外側に窪んでいる。本実施形態において支持面30iは、貫通孔30hの径方向内縁部において、周方向に隣り合う凹部80同士の間と、凹部80と窪み部34との周方向の間と、にそれぞれ設けられている。複数の凹部80は、例えば、ロータコア30の軸方向の全体に亘って設けられている。なお、複数の凹部80は、ロータコア30の軸方向の一部のみに設けられてもよい。
【0040】
複数の凹部80は、軸方向に見て、周方向に延びる略円弧状である。本実施形態において複数の凹部80は、軸方向に見て、互いに同じ形状である。そのため、例えば、後述する積層体130の一部を金型などによって削り取って凹部80を作る場合に、1種類の金型によって複数の凹部80を作ることができる。これにより、複数の凹部80を作るために複数種類の金型を容易する必要がなく、ロータ10の製造コストを低減できる。
【0041】
なお、本明細書において「軸方向に見て或る2つの凹部の形状が互いに同じである」とは、軸方向に見たときの或る2つの凹部の形が互いに同じであればよく、軸方向に見たときの或る2つの凹部の大きさが互いに異なっていてもよい。「軸方向に見たときの凹部の大きさ」とは、軸方向と直交する断面における凹部の内部の面積である。「軸方向と直交する断面における凹部の内部の面積」とは、軸方向と直交する断面においてシャフトの外周面と凹部の内縁とで囲まれた領域の面積である。本実施形態では、軸方向に見て、複数の凹部80の大きさは、互いに同じである。言い換えれば、軸方向と直交する断面においてシャフト20の外周面と各凹部80の内縁とで囲まれた領域の面積は、互いに同じである。
【0042】
複数の凹部80は、第1凹部81と、第2凹部82と、を含む。本実施形態において、凹部80は、2つの第1凹部81と1つの第2凹部82との合計3つ設けられている。2つの第1凹部81は、第1凹部81aと、第1凹部81bと、を含む。2つの第1凹部81a,81bは、1つの第2凹部82を周方向に挟んで配置されている。第2凹部82は、中心軸Jを径方向に挟んで突出部32と反対側に位置する。つまり、複数の凹部80は、突出部32と中心軸Jを径方向に挟んで反対側に配置された凹部80を含み、当該凹部80は、第2凹部82である。
【0043】
本実施形態においては、軸方向に見て、中心軸Jから径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置され、かつ、突出部32の数と凹部80の数とを合わせた総数と同じ数の複数の仮想線S1を規定する。本実施形態において突出部32の数は1つであり、凹部80の数は3つである。突出部32の数と凹部80の数とを合わせた総数は、4つである。したがって、本実施形態において仮想線S1は、仮想線S1aと仮想線S1bと仮想線S1cと仮想線S1dとの合計4つ設けられている。4つの仮想線S1a,S1b,S1c,S1dは、周方向に90°ずつ間隔を空けて等間隔に配置されている。仮想線S1aは、軸方向に見て突出部32の周方向の中心と重なる仮想線S1である。本実施形態において仮想線S1aは、軸方向に見て突出部32と重なる磁極中心線Ldと重なる位置に配置されている。
【0044】
仮想線S1bは、仮想線S1aの周方向一方側(+θ側)に90°の間隔を空けて隣り合って配置されている。仮想線S1cは、仮想線S1bの周方向一方側に90°の間隔を空けて隣り合って配置されている。仮想線S1dは、仮想線S1cの周方向一方側に90°の間隔を空けて隣り合って配置されている。仮想線S1aと仮想線S1cとは、軸方向に見て、同一直線上に配置されている。仮想線S1bと仮想線S1dとは、軸方向に見て、同一直線上に配置されている。仮想線S1a,S1cと仮想線S1b,S1dとは、互いに直交する方向に延びている。仮想線S1b,S1c,S1dも、軸方向に見て、それぞれ互いに異なる磁極部10Pにおける磁極中心線Ldと重なる位置に配置されている。
【0045】
本実施形態において各仮想線S1b,S1c,S1dは、軸方向に見て、複数の凹部80のそれぞれと重なっている。仮想線S1bは、軸方向に見て、第1凹部81aと重なっている。仮想線S1cは、軸方向に見て、第2凹部82と重なっている。仮想線S1dは、軸方向見て、第1凹部81bと重なっている。つまり、第1凹部81および第2凹部82は、軸方向に見て、それぞれ仮想線S1と重なっている。第1凹部81aに周方向に最も近い仮想線S1は、仮想線S1bである。第1凹部81bに周方向に最も近い仮想線S1は、仮想線S1dである。第2凹部82に周方向に最も近い仮想線S1は、仮想線S1cである。
【0046】
第2凹部82は、軸方向に見て、周方向に延びている。軸方向に見て、第2凹部82の内縁は、径方向外側に凸となる向きに湾曲する曲線状である。第2凹部82の周方向の中心は、軸方向に見て、仮想線S1cと重なっている。第2凹部82は、軸方向に見て第2凹部82を通る仮想線S1cを対称軸として線対称な形状である。
【0047】
第1凹部81a,81bは、軸方向に見て、周方向に延びている。軸方向に見て、第1凹部81a,81bの内縁は、径方向外側に凸となる向きに湾曲する曲線状である。軸方向に見て、第1凹部81a,81bの形状は、第2凹部82の形状と同じである。軸方向に見て、第1凹部81a,81bの周方向の寸法L1は、第2凹部82の周方向の寸法L2と同じである。各寸法L1,L2は、突出部32と一対の窪み部34とを含む部分の周方向の寸法L3以上である。本実施形態において各寸法L1,L2は、突出部32と一対の窪み部34とを含む部分の周方向の寸法L3よりも大きい。
【0048】
第1凹部81の内部の空間体積は、第2凹部82の内部の空間体積と同じである。なお、本明細書において“凹部の内部の空間体積”とは、シャフトの外周面と凹部の内面とで囲まれた空間の体積である。本実施形態において第1凹部81の内部の空間体積は、シャフト20の外周面と第1凹部81の内面とで囲まれた空間の体積である。第2凹部82の内部の空間体積は、シャフト20の外周面と第2凹部82の内面とで囲まれた空間の体積である。
【0049】
第1凹部81aと第1凹部81bとは、中心軸Jを径方向に挟んで配置されている。第1凹部81aは、突出部32の周方向一方側(+θ側)に間隔を空けて配置されている。第1凹部81bは、突出部32の周方向他方側(-θ側)に間隔を空けて配置されている。第1凹部81aと第1凹部81bとは、突出部32および一対の窪み部34を周方向に挟んで配置されている。本実施形態において第1凹部81aと第1凹部81bとは、軸方向に見て、仮想線S1a,S1cを対称軸として線対称に配置されている。そのため、以下の説明においては、第1凹部81aと線対称に配置される点を除いて同様の構成について、第1凹部81bの説明を省略する場合がある。
【0050】
第1凹部81aの周方向の中心は、仮想線S1bに対して周方向他方側(-θ側)にずれて配置されている。第1凹部81bの周方向の中心は、仮想線S1dに対して周方向一方側(+θ側)にずれて配置されている。つまり、第1凹部81a,81bは、軸方向に見て、第1凹部81a,81bに周方向に最も近い仮想線S1b,S1dに対する周方向の配置関係が、第2凹部82と重なる仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と異なることを満たす。そのため、仮想線S1b,S1dに対する第1凹部81a,81bの周方向の配置関係が仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と同じ場合に比べて、第1凹部81a,81bを、突出部32が設けられたことによるロータ10の周方向の重量バランス変化を相殺する位置に配置しやすい。これにより、貫通孔30hの径方向内縁部に突出部32を1つのみ設けても、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることを抑制できる。したがって、ロータ10が回転する際に、ロータ10が振動することを抑制でき、騒音が生じることを抑制できる。また、突出部32が嵌め合わされる溝部21の数を1つにできるため、シャフト20の製造コストが増大することを抑制できる。
【0051】
なお、「仮想線S1b,S1dに対する第1凹部81a,81bの周方向の配置関係が仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と同じ場合」とは、本実施形態では、軸方向に見て、第1凹部81a,81bの周方向の中心が第2凹部82と同様に仮想線S1b,S1dと重なる場合である。本実施形態では、仮に第1凹部81a,81bがこのように配置されると、ロータコア30のうち仮想線S1b,S1dよりも突出部32が設けられる側に位置する部分における重量が、ロータコア30のうち仮想線S1b,S1dよりも第2凹部82が設けられる側に位置する部分における重量よりも大きくなり、ロータ10の重心が中心軸Jに対して突出部32に近づく側にずれることとなる。
【0052】
本実施形態において第1凹部81a,81bは、軸方向に見て、第1凹部81a,81bを通る仮想線S1b,S1dを挟んで非対称な形状を有する。そのため、ロータコア30のうち仮想線S1b,S1dを挟んだ周方向一方側の部分と周方向他方側の部分とで、第1凹部81a,81bが設けられることによる重量変化を好適に異ならせやすい。これにより、例えば、第1凹部81a,81bのうち仮想線S1b,S1dよりも突出部32に周方向に近い側の部分における内部の空間体積を、第1凹部81a,81bのうち仮想線S1b,S1dよりも突出部32から周方向に遠い側の部分における内部の空間体積より大きくすることで、突出部32が設けられたことによるロータコア30の周方向の重量バランス変化をより相殺しやすくできる。したがって、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることをより抑制できる。
【0053】
なお、本明細書において「凹部が仮想線を挟んで非対称な形状を有する」とは、軸方向に見て、凹部のうち仮想線よりも周方向一方側に位置する部分の形状と、凹部のうち仮想線よりも周方向他方側に位置する部分の形状とが、互いに仮想線を対称軸とした線対称となる形状でなければよい。
【0054】
第1凹部81aは、第1部分81cと、第2部分81dと、を有する。第1部分81cは、第1凹部81aのうち仮想線S1bよりも周方向において突出部32に近い側(-θ側)に位置する部分である。第2部分81dは、第1凹部81aのうち仮想線S1bよりも周方向において突出部32から遠い側(+θ側)に位置する部分である。第1部分81cの周方向の寸法L1cは、第2部分81dの周方向の寸法L1dよりも大きい。つまり、軸方向に見て、第1凹部81aのうち仮想線S1bよりも突出部32に周方向に近い第1部分81cにおける周方向の寸法L1cは、第1凹部81aのうち仮想線S1bよりも突出部32から周方向に遠い第2部分81dにおける周方向の寸法L1dよりも大きい。そのため、第1部分81cを設けることによって、ロータコア30のうち突出部32に周方向に近い部分の重量を減少させやすい。これにより、突出部32が設けられることで増加する突出部32に近い部分の重量を、第1部分81cによって好適に減少させることができる。したがって、ロータ10の周方向の重量バランスが崩れることをより好適に抑制でき、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることをより好適に抑制できる。
【0055】
軸方向に見て、第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも突出部32に周方向に近い部分における周方向の寸法は、第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも突出部32から周方向に遠い部分における周方向の寸法よりも大きい。第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも突出部32に周方向に近い部分は、第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも周方向一方側(+θ側)に位置する部分である。第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも突出部32から周方向に遠い部分は、第1凹部81bのうち仮想線S1dよりも周方向他方側(-θ側)に位置する部分である。
【0056】
本実施形態において第1凹部81は、第2凹部82よりも突出部32に周方向に近い位置に配置されている。そのため、仮想線S1b,S1dに対する第1凹部81の周方向の配置関係を仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と異ならせることで、ロータコア30のうち突出部32に近い部分の重量をより変化させやすくできる。これにより、突出部32が設けられることで生じたロータコア30の一部の重量変化を、第1凹部81を設けることによって、より相殺しやすくできる。したがって、ロータ10の周方向の重量バランスが崩れることをより抑制でき、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることをより抑制できる。
【0057】
本実施形態において複数の凹部80のうち突出部32と周方向に隣り合って配置された凹部80は、第1凹部81である。そのため、仮想線S1b,S1dに対する第1凹部81の周方向の配置関係を仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と異ならせることで、ロータコア30のうち突出部32に近い部分の重量をより好適に変化させやすくできる。これにより、突出部32が設けられることで生じたロータコア30の一部の重量変化を、第1凹部81を設けることによって、より好適に相殺しやすくできる。したがって、ロータ10の周方向のバランスが崩れることをより好適に抑制でき、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることをより好適に抑制できる。
【0058】
上述したように、本実施形態において第2凹部82は、軸方向に見て第2凹部82を通る仮想線S1cを対称軸として線対称な形状である。そのため、第2凹部82を設けてもロータコア30の周方向の重量バランスが崩れにくくできる。また、本実施形態において、突出部32と中心軸Jを径方向に挟んで反対側に配置された凹部80は、第2凹部82である。そのため、仮想線S1cを周方向に挟んだ両側において第2凹部82を設けたことによるロータコア30の重量のアンバランスが生じることを抑制しつつ、突出部32と径方向の反対側に位置するロータコア30の部分の重量を、第2凹部82を設けることで減少させることができる。これにより、ロータ10の周方向の重量バランスが崩れることをより抑制でき、ロータ10の重心が中心軸Jに対してずれることをより好適に抑制できる。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態では、各凹部80を周方向の位置が異なる点を除いて同一の構成としつつ、凹部80のうちの一部、すなわち第1凹部81を、突出部32に対して周方向に近づけて偏らせて配置することで、突出部32を設けたことによるロータ10の周方向の重量バランス変化を相殺している。
【0060】
本実施形態において凹部80は、図4に示す積層体130における突出部132および一対の窪み部134を、金型を用いたプレス加工などによって削り取ることによって作られる。図4に示す積層体130は、複数の板部材130aが軸方向に積層されて構成されている。板部材130aは、凹部80の一部が設けられていない点を除いて、板部材30aと同様の構成である。複数の板部材130aは、互いに同一の形状を有する。
【0061】
積層体130の貫通孔130hの径方向内縁部には、突出部32に加えて、3つの突出部132が設けられている。3つの突出部132は、軸方向に見て、各仮想線S1b,S1c,S1dとそれぞれ重なる位置に配置されている。軸方向に見て、3つの突出部132の周方向の中心は、各仮想線S1b,S1c,S1dとそれぞれ重なっている。3つの突出部132の形状は、突出部32の形状と同様である。突出部132は、周方向の位置が異なる点を除いて突出部32と同様の構成である。
【0062】
各仮想線S1b,S1c,S1dに対する各突出部132の周方向の配置関係は、仮想線S1aに対する突出部32の周方向の配置関係と同じである。4つの突出部32,132は、周方向に90°ずつ間隔を空けて等間隔に配置されている。貫通孔130hの径方向内縁部には、各突出部132の周方向両側に位置する一対の窪み部134がそれぞれ設けられている。一対の窪み部134は、突出部132に対して設けられている点を除いて、一対の窪み部34と同様の構成である。
【0063】
貫通孔130hは、径方向内縁部に凹部80の代わりに突出部132および窪み部134が設けられている点を除いて、貫通孔30hと同様の構成である。積層体130は、貫通孔130hの径方向内縁部に凹部80の代わりに突出部132および窪み部134が設けられている点を除いて、ロータコア30と同様の構成である。
【0064】
ロータコア30を製造する作業者等は、積層体130のうち各突出部132および各一対の窪み部134が設けられた部分を金型で軸方向に打ち抜いて削り取り、各突出部132および各一対の窪み部134が設けられていた部分にそれぞれ凹部80を作る。これにより、凹部80を有するロータコア30が作られる。
【0065】
なお、本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置などを含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0066】
上述したようにロータコア30を構成する複数の板部材30aは、所定角度で転積されている。つまり、積層体130を構成する複数の板部材130aも所定角度で転積されている。本実施形態において板部材130aを積層する作業者等は、板部材130aを1つまたは複数ずつ積層する度に、当該1つまたは複数の板部材130aを、前回積層された板部材130aに対して中心軸J回りに90°回転させて積層する。板部材130aは、中心軸J回りにN回対称となる形状である。板部材130aが転積される所定角度をφとしたとき、N=360[°]/φを満たす。つまり、本実施形態において板部材130aは、中心軸J回りに4回対称となる形状である。そのため、複数の板部材130aの形状を互いに同一としつつ、複数の板部材130aを所定角度φで転積して、突出部32,132および窪み部34,134を有する積層体130を作ることができる。
【0067】
上記のようにして積層体130を作る場合、突出部32が1つ作られ、突出部132は(N-1)個作られることとなる。積層体130のうち各突出部132が設けられた部分には、それぞれ凹部80が作られるため、ロータコア30に設けられる凹部80の数も(N-1)個となる。つまり、ロータコア30において突出部32の数と凹部80の数とを合わせた総数は、N個となる。上述したように仮想線S1の数は突出部32の数と凹部80の数とを合わせた総数と同じため、仮想線S1の数もN個となる。したがって、本実施形態では、ロータコア30を構成する板部材30aが転積される所定角度をφとし、仮想線S1の数をNとしたとき、φ=360[°]/Nを満たす。この関係を満たすことで、同一形状の板部材130aを転積して積層体130を作り、複数の突出部132が作られた部分を削り取ることで複数の凹部80を作る製造方法を採用することが可能となる。これにより、転積された複数の板部材30aを有するロータコア30に突出部32と複数の凹部80とを設ける場合であっても、積層体130を製造する際に転積する板部材130aの形状を互いに同一形状とすることができる。したがって、板部材130aを母材から打ち抜いて作るための金型を1種類にすることができ、ロータ10の製造コストが増大することを抑制できる。
【0068】
図示は省略するが、ロータコア30は、上述した第1マグネット穴51a,51bおよび貫通孔30hとは異なる穴部を有してもよい。この場合、当該穴部は、例えば、軸方向に見て、周方向に隣り合うマグネット保持部31同士の間における周方向の中心を通り径方向に延びる磁極間中心線Lqと重なる位置に設けられる。当該穴部を設けることで、ロータコア30を軽量化できる。磁極間中心線Lqは、軸方向に見て、ロータ10のq軸上を通っている。磁極間中心線Lqが延びる方向は、ロータ10のq軸方向である。磁極間中心線Lqは、マグネット保持部31同士の間ごとに設けられている。磁極中心線Ldが延びる方向と磁極間中心線Lqが延びる方向とは、互いに交差する方向である。磁極中心線Ldと磁極間中心線Lqとは、周方向に沿って交互に設けられる。
【0069】
上記の穴部は、ロータコア30を軸方向に貫通する孔とすることができる。なお、当該穴部は、軸方向に底部を有する穴であってもよい。当該穴部は、例えば、周方向に間隔を空けて複数設けられる。当該穴部は、例えば、8つ設けることができる。当該各穴部は、例えば、周方向に隣り合うマグネット保持部31同士の間の径方向内側にそれぞれ配置される。当該各穴部は、例えば、周方向に隣り合うマグネット保持部31のうち一方のマグネット保持部31における第1マグネット穴51aと他方のマグネット保持部31における第1マグネット穴51bとの径方向内側に位置する。
【0070】
上記の穴部は、例えば、軸方向に見て、径方向外側に凸となる角丸の略三角形状とすることができる。軸方向に見て、当該穴部の周方向の中心には、例えば、磁極間中心線Lqが通っている。当該穴部は、例えば、軸方向に見て、当該穴部を通る磁極間中心線Lqを対称軸として線対称な形状である。
【0071】
図1に示すように、本実施形態において駆動装置100には、冷媒としてのオイルOが流れる流路90が設けられている。本実施形態において流路90は、ギヤハウジング63b内に貯留されたオイルOをロータ10およびステータ61へと供給するための流路である。流路90には、ポンプ96と、クーラ97と、が設けられている。流路90は、第1流路部91と、第2流路部92と、第3流路部93と、第4流路部94と、第5流路部95と、を有する。
【0072】
第1流路部91、第2流路部92、および第3流路部93は、例えば、ギヤハウジング63bの壁部に設けられている。第1流路部91は、ギヤハウジング63bの内部のうちオイルOが貯留されている部分とポンプ96とを繋いでいる。第2流路部92は、ポンプ96とクーラ97とを繋いでいる。第3流路部93は、クーラ97と第4流路部94とを繋いでいる。本実施形態において第3流路部93は、第4流路部94の軸方向一方側(+Y側)の端部、すなわち第4流路部94の上流側部分に繋がっている。
【0073】
本実施形態において第4流路部94は、軸方向に延びる管状である。言い換えれば、本実施形態において第4流路部94は、軸方向に延びるパイプである。第4流路部94の軸方向両端部は、モータハウジング63aに支持されている。第4流路部94の軸方向一方側(+Y側)の端部は、例えば、隔壁部63dに支持されている。第4流路部94の軸方向他方側(-Y側)の端部は、例えば、蓋部63eに支持されている。第4流路部94は、ステータ61の径方向外側に位置する。本実施形態において第4流路部94は、ステータ61の上側に位置する。
【0074】
第4流路部94は、ステータ61にオイルOを供給する供給口94aを有する。本実施形態において供給口94aは、第4流路部94内に流入したオイルOの一部を第4流路部94の外部に噴射させる噴射口である。供給口94aは、第4流路部94の壁部を内周面から外周面まで貫通する孔によって構成されている。供給口94aは、第4流路部94に複数設けられている。
【0075】
第5流路部95は、第4流路部94と中空のシャフト20の内部とを繋いでいる。より詳細には、第5流路部95は、第4流路部94の軸方向他方側(-Y側)の端部とシャフト20の軸方向他方側の端部とを繋いでいる。本実施形態において第5流路部95は、蓋部63eに設けられている。
【0076】
図1に示すように、ポンプ96が駆動されると、ギヤハウジング63b内に貯留されたオイルOが第1流路部91を通って吸い上げられ、第2流路部92を通ってクーラ97内に流入する。クーラ97内に流入したオイルOは、クーラ97内で冷却された後、第3流路部93を通って、第4流路部94へと流れる。第4流路部94内に流入したオイルOの一部は、供給口94aから噴射されて、ステータ61に供給される。第4流路部94内に流入したオイルOの他の一部は、第5流路部95を通ってシャフト20の内部に流入する。
【0077】
第5流路部95からシャフト20の内部に流入したオイルOは、シャフト20内を軸方向の軸方向一方側向き(+Y側向き)に流れる。シャフト20の内部を流れるオイルOの一部は、シャフト20の孔部22から、上述したコアピース部同士の間に配置されたプレートに設けられた溝内に流入する。当該溝内に流入したオイルOは、径方向外側に流れて、上述した図示しない穴部内に流入する。当該穴部内に流入したオイルOは、軸方向に流れ、図1に示すようにロータコア30の軸方向端部からステータ61に向かって径方向外側に飛散する。
【0078】
シャフト20の内部を流れるオイルOの他の一部は、シャフト20の軸方向一方側の開口からギヤハウジング63bの内部に排出され、再びギヤハウジング63b内に貯留される。供給口94aおよび上述した図示しない穴部からステータ61に供給されたオイルOは、下側に落下して、モータハウジング63a内の下部領域に溜まる。モータハウジング63a内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁部63dに設けられた隔壁開口63fを介してギヤハウジング63b内に戻る。
【0079】
以下、上述した第1実施形態とは異なる実施形態について説明する。以下の各実施形態の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。また、以下の各実施形態において説明を省略した構成としては、矛盾しない範囲内において、上述した第1実施形態と同様の構成を採用できる。
【0080】
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態におけるロータ210のロータコア230において、貫通孔230hの径方向内縁部には、3つの凹部280が設けられている。3つの凹部280は、2つの第1凹部281と、1つの第2凹部82と、を含む。2つの第1凹部281は、第1凹部281aと、第1凹部281bと、を含む。第1凹部281aは、軸方向に見て仮想線S1bと重なっている。第1凹部281bは、軸方向に見て仮想線S1dと重なっている。第1凹部281aの周方向の中心は、軸方向に見て、仮想線S1bと重なっている。第1凹部281bの周方向の中心は、軸方向に見て、仮想線S1dと重なっている。つまり、本実施形態においては、軸方向に見て、第1凹部281に周方向に最も近い仮想線S1b,S1dに対する第1凹部281の周方向の配置関係は、第2凹部82と重なる仮想線S1cに対する第2凹部82の周方向の配置関係と同じである。
【0081】
本実施形態において第1凹部281の周方向の寸法は、第2凹部82の周方向の寸法と同じである。第1凹部281aのうち仮想線S1bよりも周方向において突出部32に近い側(-θ側)に位置する第1部分281cにおける周方向の寸法は、第1凹部281aのうち仮想線S1bよりも周方向において突出部32から遠い側(+θ側)に位置する第2部分281dにおける周方向の寸法と同じである。第1部分281cは、第2部分281dよりも径方向外側に窪んでいる。第1凹部281aは、軸方向に見て、第1凹部281aを通る仮想線S1bを挟んで非対称な形状を有する。第1部分281cの内部の空間体積は、第2部分281dの内部の空間体積よりも大きい。本実施形態において第1凹部281の内部の空間体積は、第2凹部82の内部の空間体積よりも大きい。
【0082】
軸方向に見て、第1凹部281aの形状は、第2凹部82の形状と異なっている。また、軸方向に見て、第1凹部281bの形状は、仮想線S1a,S1cを挟んで対称に配置されていることを除いて第1凹部281aの形状と同様であり、第2凹部82の形状と異なっている。つまり、本実施形態において第1凹部281は、軸方向に見て第2凹部82と異なる形状を有することを満たす。このように第1凹部281の形状を第2凹部82の形状と異ならせることで、第1凹部281を、突出部32が設けられたことによるロータ10の周方向の重量バランス変化を相殺する形状としやすい。これにより、貫通孔230hの径方向内縁部に突出部32を設けても、ロータ210の重心が中心軸Jに対してずれることを抑制できる。したがって、ロータ210が回転する際に、ロータ210が振動することを抑制でき、騒音が生じることを抑制できる。
【0083】
本実施形態では、第1凹部281のうち突出部32に周方向に近い側の第1部分281cを第1凹部281のうち突出部32から周方向に遠い側の第2部分281dよりも径方向外側に窪ませることで、第1凹部281のうち突出部32に近い部分に設けられた部分内の空間体積を大きくできる。これにより、突出部32が設けられたことによるロータコア230の周方向の重量バランス変化を、第1凹部281を設けることによって好適に相殺しやすくできる。したがって、ロータ210の重心が中心軸Jに対してずれることをより抑制できる。
【0084】
以上のように、上述した第1実施形態では第1凹部81を突出部32に近づける向きに周方向にずらすことで突出部32が設けられたことによるロータコア30の重量変化を相殺していたのに対して、本実施形態では、第1凹部281のうち突出部32に周方向に近い部分を径方向外側に広げて内部の空間体積を大きくすることで、突出部32が設けられたことによるロータコア230の重量変化を相殺している。
【0085】
貫通孔230hのその他の構成は、第1実施形態の貫通孔30hのその他の構成と同様である。ロータコア230のその他の構成は、第1実施形態のロータコア30のその他の構成と同様である。
【0086】
<第3実施形態>
図6に示すように、本実施形態においては、軸方向に見て、中心軸Jから径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置され、かつ、突出部32の数と凹部380の数とを合わせた総数と同じ数の複数の仮想線S2を規定して、説明を行う。本実施形態において突出部32の数は1つであり、凹部380の数は7つである。したがって、本実施形態において複数の仮想線S2は、仮想線S2a~S2hの合計8つ設けられている。8つの仮想線S2a~S2hは、周方向に45°ずつ間隔を空けて配置されている。仮想線S2aは、軸方向に見て突出部32の周方向の中心と重なる仮想線S2である。仮想線S2bと仮想線S2cと仮想線S2dと仮想線S2eと仮想線S2fと仮想線S2gと仮想線S2hとは、仮想線S2aから周方向一方側(+θ側)に向かってこの順に互いに45°の間隔を空けて配置されている。本実施形態においてロータコア330を構成する板部材が転積される所定角度は、45°である。
【0087】
各凹部380は、軸方向に見て、各仮想線S2b~S2hのそれぞれと重なっている。複数の凹部380は、第1凹部381と、第2凹部382と、を含む。第1凹部381は、2つ設けられている。第2凹部382は、5つ設けられている。2つの第1凹部381は、突出部32を周方向に挟み、それぞれ突出部32と周方向に隣り合って配置された凹部380である。一方の第1凹部381は、軸方向に見て仮想線S2bと重なっている。他方の第1凹部381は、軸方向に見て仮想線S2hと重なっている。各第1凹部381の周方向の中心は、軸方向に見て、仮想線S2b,S2hとそれぞれ重なっている。
【0088】
5つの第2凹部382は、軸方向に見て、5つの仮想線S2c,S2d,S2e,S2f,S2gとそれぞれ重なっている。各第2凹部382の周方向の中心は、軸方向に見て、仮想線S2c,S2d,S2e,S2f,S2gとそれぞれ重なっている。本実施形態において、軸方向に見て、第1凹部381の形状と第2凹部382の形状とは、相似形状であり、互いに同じ形状である。軸方向に見て、第1凹部381の形状および第2凹部382の形状は、例えば、第1実施形態の凹部80の形状と同じである。
【0089】
本実施形態において第1凹部381の内部の空間体積は、第2凹部382の内部の空間体積よりも大きい。軸方向に見て、第1凹部381の大きさは、第2凹部382の大きさよりも大きい。第1凹部381の径方向の寸法は、第2凹部382の径方向の寸法よりも大きい。第1凹部381の周方向の寸法は、第2凹部382の周方向の寸法よりも大きい。つまり、本実施形態において第1凹部381は、軸方向に見て第2凹部382と異なる周方向の寸法を有することを満たす。そのため、第1凹部381の周方向の寸法を、突出部32が設けられたことによるロータ310の周方向の重量バランス変化を相殺する寸法としやすい。これにより、貫通孔330hの径方向内縁部に突出部32を設けても、ロータ310の重心が中心軸Jに対してずれることを抑制できる。したがって、ロータ310が回転する際に、ロータ310が振動することを抑制でき、騒音が生じることを抑制できる。
【0090】
以上のように、本実施形態では、突出部32と共に周方向に等間隔に配置された複数の凹部380のうち突出部32の周方向両側に隣り合って配置される2つの凹部380を第1凹部381として、他の凹部380よりも周方向の寸法を大きくすることで、突出部32が設けられたことによるロータコア330の重量変化を好適に相殺している。また、本実施形態では、軸方向に見て、第1凹部381の形状を第2凹部382の形状と同じにしつつ、第1凹部381の大きさを第2凹部382よりも大きくすることで、突出部32が設けられたことによるロータコア330の重量変化を好適に相殺している。
【0091】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。第1凹部は、軸方向に見て、第1凹部に周方向に最も近い仮想線に対する周方向の配置関係が、第2凹部と重なる仮想線に対する第2凹部の周方向の配置関係と異なることと、軸方向に見て第2凹部と異なる形状を有することと、軸方向に見て第2凹部と異なる周方向の寸法を有することと、の少なくとも1つを満たせばよい。第1凹部は、当該3つの条件のうちいずれか2つを満たしてもよいし、3つ全てを満たしてもよい。また、第1凹部が複数含まれる場合、複数の第1凹部は、上記3つの条件のうちの満たす条件が互いに異なる2つ以上の第1凹部を含んでもよい。第1凹部は、軸方向に見て、規定された仮想線と重ならなくてもよい。第1凹部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。第1凹部の形状は、特に限定されない。
【0092】
第2凹部の形状は、特に限定されない。第2凹部は、軸方向に見て仮想線と重なっていれば、仮想線に対してどのように配置されてもよい。第2凹部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。第1凹部と第2凹部との周方向の並び方は、特に限定されない。
【0093】
ロータコアが軸方向に積層された複数の板部材を有する場合、複数の板部材は、どのような所定角度で転積されていてもよい。当該所定角度をφとし、仮想線の数をNとしたとき、φ=360[°]/Nを満たさなくてもよい。この場合、例えば、φ>360[°]/Nを満たしてもよい。複数の板部材は、転積されていなくてもよい。
【0094】
貫通孔の径方向内縁部に設けられる突出部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。突出部の周方向位置は、特に限定されない。突出部は、軸方向に見て、磁極部の周方向の中心を通り径方向に延びる磁極中心線と重ならなくてもよい。突出部は、軸方向に見て、上述した実施形態の磁極間中心線Lqと重なってもよい。突出部の周方向両側には窪み部が設けられなくてもよい。
【0095】
ロータコアに固定されるマグネットの配置およびマグネットの数は、特に限定されない。例えば、上述した実施形態における一対の第1マグネット穴51a,51bおよび一対の第1マグネット41a,41bに加えて、第1マグネット穴51a,51bの径方向外側に位置する第2マグネット穴と、当該第2マグネット穴内に配置される第2マグネットと、が設けられてもよい。この場合、第2マグネット穴および第2マグネットは、例えば、各磁極部において、軸方向に見て磁極中心線Ldを周方向に挟んで一対ずつ設けられてもよい。この場合、一対の第2マグネット穴および一対の第2マグネットは、軸方向に見て、径方向内側から径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離れる方向に延びてもよい。より詳細には、一対の第2マグネット穴および一対の第2マグネットは、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って周方向に広がるV字形状に沿って配置されてもよい。このように、ロータの各磁極部においては、軸方向に見てV字形状に沿って配置された一対のマグネットが径方向に並んで二対設けられてもよい。なお、第2マグネット穴および第2マグネットは、各磁極部に1つずつ設けられ、軸方向に見て、磁極中心線Ldと直交する方向に延びてもよい。この場合、ロータの各磁極部において、一対の第1マグネットと1つの第2マグネットとが、軸方向に見て、∇形状に沿って配置されてもよい。
【0096】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、車両以外の機器に搭載されてもよい。本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機、および駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。
【0097】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸を中心として回転可能なロータであって、軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトに固定されたロータコアと、を備え、前記ロータコアは、前記シャフトが軸方向に通される貫通孔と、前記貫通孔の径方向内縁部に設けられ、径方向内側に突出する突出部と、前記貫通孔の径方向内縁部に周方向に間隔を空けて設けられ、径方向外側に窪む複数の凹部と、を有し、軸方向に見て、前記中心軸から径方向外側に延び、周方向に等間隔に配置され、かつ、前記突出部の数と前記凹部の数とを合わせた総数と同じ数の複数の仮想線を規定したとき、前記複数の仮想線のうちの1つは、軸方向に見て前記突出部の周方向の中心と重なり、前記複数の凹部は、第1凹部と、軸方向に見て前記仮想線と重なる第2凹部と、を含み、前記第1凹部は、軸方向に見て、前記第1凹部に周方向に最も近い前記仮想線に対する周方向の配置関係が、前記第2凹部と重なる前記仮想線に対する前記第2凹部の周方向の配置関係と異なることと、軸方向に見て前記第2凹部と異なる形状を有することと、軸方向に見て前記第2凹部と異なる周方向の寸法を有することと、少なくとも1つを満たす、ロータ。
(2) 前記第1凹部は、軸方向に見て、前記仮想線と重なり、かつ、前記第1凹部を通る前記仮想線を挟んで非対称な形状を有する、(1)に記載のロータ。
(3) 軸方向に見て、前記第1凹部のうち前記仮想線よりも前記突出部に周方向に近い部分における周方向の寸法は、前記第1凹部のうち前記仮想線よりも前記突出部から周方向に遠い部分における周方向の寸法よりも大きい、(2)に記載のロータ。
(4) 前記第1凹部は、前記第2凹部よりも前記突出部に周方向に近い位置に配置されている、(1)から(3)のいずれか一項に記載のロータ。
(5) 前記複数の凹部のうち前記突出部と周方向に隣り合って配置された前記凹部は、前記第1凹部である、(1)から(4)のいずれか一項に記載のロータ。
(6) 前記複数の凹部は、軸方向に見て、互いに同じ形状である、(1)から(5)のいずれか一項に記載のロータ。
(7) 前記第2凹部は、軸方向に見て前記第2凹部を通る前記仮想線を対称軸として線対称な形状である、(1)から(6)のいずれか一項に記載のロータ。
(8) 前記複数の凹部は、前記突出部と前記中心軸を径方向に挟んで反対側に配置された前記凹部を含み、前記突出部と前記中心軸を径方向に挟んで反対側に配置された前記凹部は、前記第2凹部である、(7)に記載のロータ。
(9) 前記ロータコアは、軸方向に積層された複数の板部材を有し、前記板部材は、1つまたは複数ずつ所定角度で回転した状態で積層されており、前記所定角度をφとし、前記仮想線の数をNとしたとき、φ=360[°]/Nを満たす、(1)から(8)のいずれか一項に記載のロータ。
(10) 周方向に間隔を空けて配置された複数の磁極部を備え、前記突出部は、軸方向に見て、前記磁極部の周方向の中心を通り径方向に延びる磁極中心線と重なる位置に配置されている、(1)から(9)のいずれか一項に記載のロータ。
(11) 前記貫通孔の径方向内縁部には、径方向外側に窪む一対の窪み部が設けられ、前記一対の窪み部は、前記突出部を周方向に挟み、前記突出部と隣接して配置されている、(1)から(10)のいずれか一項に記載のロータ。
(12) (1)から(11)のいずれか一項に記載のロータと、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、を備える、回転電機。
(13) (12)に記載の回転電機と、前記回転電機に接続されたギヤ機構と、を備える、駆動装置。
【0098】
以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0099】
10,210,310…ロータ、10N,10P,10S…磁極部、20…シャフト、30,230,330…ロータコア、30a…板部材、30h,230h,330h…貫通孔、32…突出部、34…窪み部、60…回転電機、61…ステータ、70…ギヤ機構、80,280,380…凹部、81,81a,81b,281,281a,281b,381…第1凹部、82,382…第2凹部、100…駆動装置、J…中心軸、Ld…磁極中心線、S1,S1a,S1b,S1c,S1d,S2,S2a,S2b,S2c,S2d,S2e,S2f,S2g,S2h…仮想線、φ…所定角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6