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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079087
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】火災警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240604BHJP
   G08B 17/107 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G08B17/00 A
G08B17/00 D
G08B17/107 C
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191808
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小玉 隆広
(72)【発明者】
【氏名】片岡 洋子
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AC18
5C085BA33
5C085CA13
5C085CA15
5C085CA16
5C085CA25
5C085CA28
5C085DA16
5C085EA31
5G405AA01
5G405AB02
5G405AD02
5G405AD06
5G405AD07
5G405AD09
5G405CA13
5G405CA16
5G405CA21
5G405CA23
5G405CA35
5G405CA39
5G405DA21
5G405EA31
(57)【要約】
【課題】火災警報器が寿命を迎えたことにユーザが気付かず、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が発生しにくくする手段を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る火災警報器は、監視領域内で火災が発生した場合、その火災を検知して、監視領域内のユーザにその火災の発生を、音及び光により通知する。火災警報器は、十分に短い時間間隔で、自装置が備えるセンサ、スピーカ、バッテリ等の点検対象が正常に動作しているか点検を行う。その際、火災警報器は、点検対象の状態(劣化度、汚れ度等)を判定する。そして、火災警報器は、判定した点検対象の状態に基づき、自装置の機器寿命の残存時間を推定し、ユーザに対し、音又は光で、推定した残存時間に応じた通知を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理を行うデータ処理手段と
監視領域内の物理量を測定する測定手段と、
音及び光の少なくとも一方を発して通知を行う通知手段と、
前記データ処理手段、前記測定手段、及び、前記通知手段に電力を供給する電力供給手段と
を備え、
前記測定手段が測定した物理量を示す測定結果データに基づき前記データ処理手段が前記監視領域内における火災の有無を判定し、前記データ処理手段が火災有りと判定した場合、前記通知手段が通知を行う火災警報器であって、
前記データ処理手段は、前記測定手段、前記通知手段、及び、前記電力供給手段の1以上を点検対象とし、前記点検対象から得られたデータに基づき前記点検対象の状態を判定し、判定した前記点検対象の状態に基づき前記火災警報器の機器寿命の残存時間を推定し、
前記通知手段は、前記データ処理手段が推定した前記残存時間に応じた通知を行う
火災警報器。
【請求項2】
前記火災警報器の既使用時間を計時する計時手段を備え、
前記データ処理手段は、前記点検対象の状態に加えて、前記計時手段が計時した前記既使用時間に基づき、前記火災警報器の機器寿命の残存時間を推定する
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項3】
前記通知手段は、前記データ処理手段が推定した前記残存時間を通知する
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項4】
前記通知手段は、前記データ処理手段が推定した前記残存時間に応じた態様の通知を行う
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項5】
前記通知手段は、前記データ処理手段が推定した前記残存時間に応じた頻度で通知を行う
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項6】
前記データ処理手段が判定した前記点検対象の状態を示す点検結果データを順次記憶する記憶手段を備え、
前記データ処理手段は、前記記憶手段が記憶している前記点検結果データが示す前記点検対象の状態の経時変化に基づき、前記火災警報器の機器寿命の残存時間を推定する
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項7】
前記データ処理手段は、前記点検対象から得られたデータに基づき判定した前記点検対象の状態が、前記火災警報器に対するユーザの保守作業を要する状態であるか否かを判定し、
前記通知手段は、前記データ処理手段が前記保守作業を要する状態であると判定した場合、保守作業を促す通知を行う
請求項1に記載の火災警報器。
【請求項8】
前記データ処理手段が判定した前記点検対象の状態を示す点検結果データを順次記憶する記憶手段を備え、
前記データ処理手段は、ユーザにより保守作業が行われた時点を特定し、特定した保守作業が行われた時点の前後における前記点検結果データが示す前記点検対象の状態の経時変化に基づき、前記火災警報器の機器寿命の残存時間を推定する
請求項7に記載の火災警報器。
【請求項9】
前記火災警報器とは異なる装置に、前記データ処理手段が推定した前記残存時間に応じた通知を示す通知データを送信する送信手段を備える
請求項1に記載の火災警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の監視領域内において火災が発生した場合、その火災を検知し、監視領域内にいる人に音や光によって火災の発生を通知する火災警報器が普及している。
【0003】
例えば、住宅用の火災警報器の機器寿命は、概ね10年と言われている。機器寿命が尽きた後も火災警報器を使い続けると、ユーザが気付かない間に火災警報器が電池切れ等により正常動作しなくなり、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が生じる危険がある。
【0004】
上記の不都合を回避するために、機器寿命の残存時間に関する情報をユーザに通知する機能を備えた火災警報器が提案されている。例えば、特許文献1には、ユーザが点検スイッチを押すと自装置の動作を点検し、点検の結果が正常であれば、自装置の使用経過時間に関する情報を音声出力する火災警報器が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の火災警報器によれば、ユーザは、火災警報器の点検ボタンを押すことで、その火災警報器の使用経過時間を知ることができる。従って、そのユーザは、例えば、火災警報器から音声で通知された使用経過時間を、その火災警報器の一般的な機器寿命(例えば10年)から差し引くことで、その火災警報器の機器寿命の残存時間を知ることができる。その結果、ユーザは、火災警報器が寿命を迎える前に、その火災警報器の保守部品を交換したり、火災警報器自体を交換したりすることで、火災が発生した場合に火災警報器によりその火災が検知されない、という不都合を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-224844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、例えば、住宅用の火災警報器の機器寿命は、概ね10年と言われている。ただし、実際の耐用年数は、その火災警報器の置かれている環境によって変化する。例えば、通常の環境下よりも低温下もしくは高温下の環境において、センサや電池の劣化が早まる可能性が懸念される。また、空気中に埃が多い環境下においては、一般的に、火災警報器の内部への埃の付着が火災警報器の異常動作や誤った警報鳴動を引き起こし、火災警報器の寿命が短くなる。
【0008】
従って、火災警報器が環境の影響を受けて一般的な機器寿命を迎える前に電池切れ等が生じていることにユーザが気付かず、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が生じる危険がある。
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、火災警報器が正常に動作できない状態にあることにユーザが気付かず、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が発生しにくくする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、データ処理を行うデータ処理手段と監視領域内の物理量を測定する測定手段と、音及び光の少なくとも一方を発して通知を行う通知手段と、前記データ処理手段、前記測定手段、及び、前記通知手段に電力を供給する電力供給手段とを備え、前記測定手段が測定した物理量を示す測定結果データに基づき前記データ処理手段が前記監視領域内における火災の有無を判定し、前記データ処理手段が火災有りと判定した場合、前記通知手段が通知を行う火災警報器であって、前記データ処理手段は、前記測定手段、前記通知手段、及び、前記電力供給手段の1以上を点検対象とし、前記点検対象から得られたデータに基づき前記点検対象の状態を判定し、判定した前記点検対象の状態に基づき前記火災警報器の機器寿命の残存時間を推定し、前記通知手段は、前記データ処理手段が推定した前記残存時間に応じた通知を行う火災警報器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、火災警報器の状態に応じて推定される機器寿命の残存時間に応じた通知が行われる。その結果、火災警報器が寿命を迎えたことにユーザが気付かず、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る火災警報器が使用される状況を模式的に示した図。
図2】一実施形態に係る火災警報器1の構成例を示した図。
図3】一実施形態に係る火災警報器が自装置の機器寿命の残存時間を推定する方法の一例を説明するためのグラフ。
図4】一変形例に係る火災警報器が自装置の機器寿命の残存時間を推定する方法の一例を説明するためのグラフ。
図5】一変形例に係る火災警報器が汚れ度の経時変化を推定する方法の一例を説明するためのグラフ。
図6】一変形例に係る火災警報器が使用される状況を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る火災警報器1が使用される状況を模式的に示した図である。火災警報器1は、監視領域M内に配置され、監視領域M内において火災が発生した場合、その火災を検知し、音及び光を発して監視領域M内にいる人に火災の発生を通知する。
【0014】
本実施形態において、火災警報器1は住宅用の火災警報器であるものとする。すなわち、監視領域Mは住宅内の空間である。住宅用の火災警報器として現在、普及しているものとして、周囲の空気の温度を測定して火災を検知する熱式と、周囲の空気中の煙を検知することにより火災を検知する煙式があるが、火災警報器1が火災を検知する方式は熱式、煙式、その他の方式、それらの2以上の組合せ、のいずれであってもよい。以下、例として、火災警報器1は煙式であるものとする。
【0015】
図2は、火災警報器1の構成例を示した図である。火災警報器1は、以下の構成部を備える。
プロセッサ11:各種データ処理を行う。プロセッサ11はデータ処理手段の一例を構成する。
センサ12:発光部と受光部とA/D(Analog to Digital)変換器を備え、発光部により照射した光の空気中の粒子(煙を含む)における散乱光を受光部により受光し、受光した光の光量に応じた信号をデジタルデータに変換してプロセッサ11に出力する。センサ12が出力するデータ(以下、「センサ出力データ」という)はプロセッサ11により煙の濃度(物理量の一例)の測定に用いられる。プロセッサ11とともに測定手段の一例を構成する。
スピーカ13:プロセッサ11の指示に従い、音を発して通知を行う。プロセッサ11とともに通知手段の一例を構成する。
インジケータ14:プロセッサ11の指示に従い、光を発して通知を行う。プロセッサ11とともに通知手段の一例を構成する。
マイク15:周囲の音を拾音する。マイク15が拾音した音は、スピーカ13の点検に用いられる。
メモリ16:各種データを記憶する。記憶手段の一例である。
クロック17:現在時刻を計時する。クロック17が計時した現在時刻を示す信号は、プロセッサ11により火災警報器1の既使用時間、すなわち、火災警報器1の使用開始時刻から現在時刻までの経過時間の計時に用いられる。プロセッサ11とともに計時手段の一例を構成する。
ボタン18:ユーザによる押下操作を受けて、押下されている間、プロセッサ11に信号を出力する。例えば、火災発生時にスピーカ13から発音される警告音をユーザが停止する場合等に、ユーザにより押下される。
バッテリ19:火災警報器1の他の構成部に対し、それらが動作するための電力を供給する。電力供給手段の一例を構成する。
電圧測定器10:バッテリ19から供給される電力の電圧を測定する。電圧測定器10が測定した電圧は、バッテリ19の点検に用いられる。
【0016】
以上が火災警報器1の構成の説明である。ただし、以下にインジケータ14について補足する。
【0017】
インジケータ14は、例えば、1以上のLED(Light Emitting Diode)を備える。インジケータ14の方式としては、例えば以下があるが、これらに限られない。
(a)1つのセグメントを1つの色で発光する方式。点灯、様々な速さでの点滅、という異なる態様で発光できる。
(b)1つのセグメントを複数の色で発光する方式。例えば、赤黄緑の3色で発光する場合、赤点灯、様々な速さでの赤点滅、黄点灯、様々な速さでの黄点滅、緑点灯、様々な速さでの緑点滅、という異なる態様で発光できる。
(c)複数のセグメントの各々を1つの色で発光する方式。複数のセグメントの各々を、点灯、様々な速さでの点滅、という異なる態様で発光できる。なお、複数のセグメントの各々の色が同じ方式と、それらが異なる方式がある。例えば、7セグメントLEDインジケータは、複数のセグメントの各々の色が同じ方式の一例である。
(d)複数のセグメントの各々を複数の色で発光する方式。複数のセグメントの各々を、異なる色での点灯、異なる色での様々な速さでの点滅、という異なる態様で発光できる。
【0018】
以下、例として、インジケータ14は上記(b)の形式のインジケータであるものとする。なお、インジケータ14は、ボタン18と一体に構成されていてもよい。その場合、例えば、ボタン18が半透明な部材で作られ、その部材の背後に配置されたインジケータ14が発光する光がボタン18を透過してユーザに視認できるように構成されればよい。
【0019】
<1.火災検知動作>
以下に、火災警報器1が行う火災検知のための動作を説明する。センサ12は、十分に短い所定時間間隔でセンサ出力データをプロセッサ11に出力する。プロセッサ11は、センサ12から出力されるセンサ出力データを順次、メモリ16に記憶させる。
【0020】
プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数のセンサ出力データを読み出し、読み出したセンサ出力データ(測定結果データの一例)が示す散乱光の光量がメモリ16に記憶されているデータが示す火災検知用の条件を満たすか否かを判定することによって、監視領域Mの火災の有無を判定する。
【0021】
プロセッサ11は、火災有り、と判定した場合、メモリ16から火災警報用の音声波形データを読み出し、読み出した音声波形データをD/A(Digital to Analog)変換した音信号をスピーカ13に出力する。スピーカ13は、プロセッサ11から出力される音信号に応じた音を発音する。この場合、スピーカ13が発音する音は、例えば、「火災が発生しました。」といった音声である。
【0022】
また、プロセッサ11は、火災有り、と判定した場合、インジケータ14に対し、火災発生に応じた所定の態様での発光を指示する。インジケータ14は、プロセッサ11からの指示に応じた態様で発光する。この場合、インジケータ14は、例えば、速い速度での赤点滅を行う。
【0023】
プロセッサ11は、火災有り、と判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまでの間、上述したスピーカ13に対する音信号の出力を繰り返す。すなわち、スピーカ13はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば「火災が発生しました。」といった音声の発音を繰り返す。
【0024】
また、プロセッサ11は、火災有り、と判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われると、インジケータ14に対し発光の停止を指示する。すなわち、インジケータ14はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば速い速度での赤点滅を継続する。
【0025】
以上が、火災警報器1が行う火災検知のための動作である。
【0026】
<2.点検動作>
火災警報器1は、自装置の状態を点検する機能を備えている。具体的には、火災警報器1のデータ処理手段は、自装置の測定手段、通知手段、及び、電力供給手段の1以上を点検対象とし、それらの点検対象から得られたデータに基づき、それらの点検対象の状態を判定する。
【0027】
以下に、火災警報器1が点検対象の状態を判定するための動作を説明する。火災警報器1は、例えば、以下の3つの判定を行う。
(1)センサ12(測定手段の一例)が出力するセンサ出力データ(点検対象から得られたデータの一例)に基づき、センサ12の状態を判定する。
(2)スピーカ13(通知手段の一例)が発音する音をマイク15で拾音した音(点検対象から得られたデータの一例)に基づき、スピーカ13の状態を判定する。
(3)バッテリ19(電力供給手段の一例)から供給される電力の電圧(点検対象から得られたデータの一例)に基づき、バッテリ19の状態を判定する。
【0028】
<2-1.センサの点検動作>
センサ12の状態は、例えば、(ア)センサ12が備える発光素子や受光素子の劣化、(イ)発光部や受光部に対する汚れの付着、(ウ)発光部及び受光部の収容空間を形成する壁の内側に対する汚れの付着、という要因によって変化する。(ア)の場合、一般的に、センサ12が出力するセンサ出力データが示す値が全体的に小さくなったり、センサ出力データが示す値が異常値を示す頻度が高くなったりする。(イ)の場合、一般的に、センサ12が出力するセンサ出力データが示す値が全体的に小さくなる。(ウ)の場合、一般的に、センサ12が出力するセンサ出力データが示す値が全体的に大きくなる。
【0029】
メモリ16には、上記の(ア)~(ウ)を総合的に考慮して作成された、センサ12の劣化度判定用の条件を示すデータと、センサ12の汚れ度判定用の条件を示すデータが記憶されている。
【0030】
プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数のセンサ出力データを読み出し、読み出したセンサ出力データが示す値と、メモリ16に記憶されているデータが示すセンサ12の劣化度判定用の条件とに基づき、センサ12の劣化度(点検対象の状態の一例)を、例えば0から100までの数値(数値が大きい方が劣化度が高い)で判定し、判定の結果を示すセンサ劣化度データ(点検結果データの一例)を順次、メモリ16に記憶させる。
【0031】
また、プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数のセンサ出力データを読み出し、読み出したセンサ出力データが示す値と、メモリ16に記憶されているデータが示すセンサ12の汚れ度判定用の条件とに基づき、センサ12の汚れ度(点検対象の状態の一例)を、例えば1から100までの数値(数値が大きい方が汚れ度が高い)で判定し、判定の結果を示すセンサ汚れ度データ(点検結果データの一例)を順次、メモリ16に記憶させる。
【0032】
なお、センサ出力データが示す値が継続的に実質的にゼロとなった場合、プロセッサ11はセンサ12を故障と判定する。
【0033】
<2-2.スピーカの点検動作>
プロセッサ11は、スピーカ13の状態を判定するために、十分に短い所定時間間隔でスピーカ13に小さい音量の試験音の音信号を短時間出力し、その試験音をスピーカ13に発音させ、その際、マイク15が拾音した音を表す音信号をA/D変換した試験音拾音データを順次、メモリ16に記憶させる。
【0034】
スピーカ13は、例えば、(ア)スピーカ13が備える振動板等の劣化、(イ)スピーカ13が備える振動板等に対する汚れの付着、という要因によって変化する。(ア)と(イ)の程度に応じて、マイク15が拾音する音の波形が異なる。
【0035】
メモリ16には、スピーカ13の劣化度判定用のリファレンス波形を表すデータと、スピーカ13の汚れ度判定用のリファレンス波形を表すデータが記憶されている。
【0036】
プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数の試験音拾音データを読み出し、読み出した試験音拾音データが表す波形と、メモリ16に記憶されているデータが表すスピーカ13の劣化度判定用のリファレンス波形に基づき、スピーカ13の劣化度(点検対象の状態の一例)を、例えば1から100までの数値(数値が大きい方が劣化度が高い)で判定し、判定の結果を示すスピーカ劣化度データ(点検結果データの一例)を順次、メモリ16に記憶させる。
【0037】
また、プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数の試験音拾音データを読み出し、読み出した試験音拾音データが表す波形と、メモリ16に記憶されているデータが表すスピーカ13の汚れ度判定用のリファレンス波形に基づき、スピーカ13の汚れ度(点検対象の状態の一例)を、例えば1から100までの数値(数値が大きい方が汚れ度が高い)で判定し、判定の結果を示すスピーカ汚れ度データ(点検結果データの一例)を順次、メモリ16に記憶させる。
【0038】
なお、試験音拾音データが示す値が継続的に実質的にゼロとなった場合、プロセッサ11はスピーカ13を故障と判定する。
【0039】
<2-3.バッテリの点検動作>
プロセッサ11は、バッテリ19の状態を判定するために、十分に短い所定時間間隔で電圧測定器10からバッテリ19の供給する電力の電圧を示す電圧データを取得し、取得した電圧データを順次、メモリ16に記憶させる。
【0040】
バッテリ19は、一般的に、電池残量が少なくなる程、供給する電力の電圧が低下する。従って、メモリ16には、バッテリ19の電圧と電池残量の対応関係を示すデータが記憶されている。
【0041】
プロセッサ11は、十分に短い所定時間間隔でメモリ16から、例えば、直近の過去の所定数の電圧データを読み出し、読み出した電圧データが示す電圧に対応する電池残量(点検対象の状態の一例)を、メモリ16に記憶されているデータが示す電圧と電池残量の対応関係に従い判定し、判定の結果を示す電池残量データ(点検結果データの一例)を順次、メモリ16に記憶させる。
【0042】
<2-4.点検結果の通知動作>
(センサの故障時の通知動作)
プロセッサ11は、センサ12を故障と判定した場合、メモリ16からセンサ故障通知用の音声波形データを読み出し、読み出した音声波形データをD/A(Digital to Analog)変換した音信号をスピーカ13に出力する。スピーカ13は、プロセッサ11から出力される音信号に応じた音を発音する。この場合、スピーカ13が発音する音は、例えば、「センサが故障しました。機器を交換して下さい。」といった音声である。
【0043】
また、プロセッサ11は、センサ12を故障と判定した場合、インジケータ14に対し、センサ故障に応じた所定の態様での発光を指示する。インジケータ14は、プロセッサ11からの指示に応じた態様で発光する。この場合、インジケータ14は、例えば、所定のパターンでの赤点滅(例えば、1秒間隔での3回の点滅と3秒間の消灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す)を行う。
【0044】
プロセッサ11は、センサ12を故障と判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまでの間、上述したスピーカ13に対する音信号の出力を、例えば1時間おきに繰り返す。すなわち、スピーカ13はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば「センサが故障しました。機器を交換して下さい。」といった音声の発音を、1時間おきに繰り返す。
【0045】
また、プロセッサ11は、センサ12を故障と判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われると、インジケータ14に対し発光の停止を指示する。すなわち、インジケータ14はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば1秒間隔での3回の点滅と3秒間の消灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
【0046】
(スピーカの故障時の通知動作)
プロセッサ11は、スピーカ13を故障と判定した場合、インジケータ14に対し、スピーカ故障に応じた所定の態様での発光を指示する。インジケータ14は、プロセッサ11からの指示に応じた態様で発光する。この場合、インジケータ14は、例えば、所定のパターンでの赤点滅(例えば、1秒間隔での3回の点滅と3秒間の点灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す)を行う。
【0047】
プロセッサ11は、スピーカ13を故障と判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われると、インジケータ14に対し発光の停止を指示する。すなわち、インジケータ14はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば1秒間隔での3回の点滅と3秒間の点灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
【0048】
(その他の通知動作)
プロセッサ11は、以下の(A)~(E)のいずれかの場合、それらの場合に応じた通知用の音声波形データを読み出し、読み出した音声波形データをD/A(Digital to Analog)変換した音信号をスピーカ13に出力する。
【0049】
(A)センサ12の劣化度が所定の閾値以上(例えば、80以上)である場合
(B)センサ12の汚れ度が所定の閾値以上(例えば、80以上)である場合
(C)スピーカ13の劣化度が所定の閾値以上(例えば、80以上)である場合
(D)スピーカ13の汚れ度が所定の閾値以上(例えば、80以上)である場合
(E)バッテリ19の電池残量が所定の閾値以下(例えば、20%以下)である場合
【0050】
スピーカ13は、プロセッサ11から出力される音信号に応じた音を発音する。例えば、上記の(A)~(E)の各々の場合、スピーカ13が発音する音は、例えば以下のような音声である。
【0051】
(A)「センサが劣化しています。機器を交換して下さい。」
(B)「センサが汚れています。機器を清掃して下さい。」
(C)「スピーカが劣化しています。機器を交換して下さい。」
(D)「スピーカが汚れています。機器を清掃して下さい。」
(E)「電池残量が少なくなっています。機器を交換して下さい。」
【0052】
また、プロセッサ11は、上記の(A)~(E)のいずれかの場合、インジケータ14に対し、それらの場合に応じた所定の態様での発光を指示する。例えば、上記の(A)~(E)の各々の場合、インジケータ14は、例えば以下のような態様で発光する。
【0053】
(A)2秒間隔での3回の点滅と6秒間の消灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
(B)2秒間隔での2回の点滅と4秒間の消灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
(C)2秒間隔での3回の点滅と6秒間の点灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
(D)2秒間隔での2回の点滅と4秒間の点灯とを1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
(E)2秒間隔の点滅を1分間継続する処理を、1時間おきに繰り返す。
【0054】
プロセッサ11は、上記の(A)~(E)のいずれかと判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまでの間、上述したスピーカ13に対する音信号の出力を、例えば1時間おきに繰り返す。すなわち、スピーカ13はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば「センサが劣化しています。機器を交換して下さい。」等の音声の発音を、例えば1時間おきに繰り返す。
【0055】
また、プロセッサ11は、上記の(A)~(E)のいずれかと判定した後、ユーザによりボタン18に対する押下操作が行われると、インジケータ14に対し発光の停止を指示する。すなわち、インジケータ14はユーザによりボタン18に対する押下操作が行われるまで、例えば2秒間隔での3回の点滅と6秒間の消灯とを1分間継続する、といった一定のパターンでの点灯又は点滅の動作を、例えば1時間おきに繰り返す。
【0056】
(通知動作のインターバル)
上述のいずれかの通知を行った後、ユーザがボタン18を押下してその通知を停止した場合、プロセッサ11は所定時間が経過するまで、同じ通知のための処理は行わない。その際、故障の場合と、劣化、汚れ、又は、電池残量低下の場合で、プロセッサ11が同じ通知のための処理を行うまでの時間間隔を異ならせてもよい。さらに、劣化、汚れ、又は、電池残量低下の通知に関しては、劣化度又は汚れ度の高低、又は、電池残量の多少に応じて、プロセッサ11が同じ通知のための処理を行うまでの時間間隔を異ならせてもよい。
【0057】
以上が、火災警報器1が行う点検のための動作である。
【0058】
<3.機器寿命の残存時間の推定動作>
火災警報器1は、自装置の機器寿命の残存時間を推定する機能を備えている。具体的には、火災警報器1のデータ処理手段は、上述した点検動作において判定した点検対象の状態に基づき、火災警報器1の機器寿命の残存時間を推定する。
【0059】
なお、火災警報器の機器寿命の残存時間とは、現時点からその火災警報器が寿命を迎える、すなわち、正常に動作しなくなり、使用できなくなるまでの時間(単位は、時間、日、週、月、年、それらの組合せ等のいずれであってもよい)を意味する。以下、火災警報器の機器寿命の残存時間を「残存寿命」という。
【0060】
以下に、火災警報器1が行う残存寿命を推定するための動作を説明する。図3は、火災警報器1のデータ処理手段が火災警報器1の残存寿命を推定する方法の一例を説明するためのグラフである。図3(A)~(E)のグラフの横軸はいずれも、火災警報器1の使用開始時点Taからの経過時間を示している。
【0061】
時点Tzは火災警報器1の仕様上の機器寿命(例えば、10年間)に基づき推定される、火災警報器1が寿命を迎えると推定される時点(以下、「推定寿命到来時点」という)である。以下、時点Tzを、後述の他のパラメータを基準とする推定寿命到来時点と区別するために、仕様基準の推定寿命到来時点Tzという。
【0062】
時点Tcは現時点である。従って、使用開始時点Taから現時点Tcまでの時間が、火災警報器1の既使用時間となる。
【0063】
従来技術においては、多くの場合、火災警報器1の実際の状態に関係なく、現時点Tcから仕様基準の推定寿命到来時点Tzまでの時間が火災警報器1の残存寿命とみなされている。
【0064】
図3(A)~(E)のグラフの縦軸は、以下のとおりである。
(A)センサ12の劣化度
(B)センサ12の汚れ度
(C)スピーカ13の劣化度
(D)スピーカ13の汚れ度
(E)バッテリ19の電池残量
【0065】
図3(A)~(E)のグラフのうち実線で描かれている部分、すなわち、使用開始時点Taから現時点Tcまでの部分は、各々、メモリ16に記憶されているセンサ劣化度データ、センサ汚れ度データ、スピーカ劣化度データ、スピーカ汚れ度データ、バッテリ電池残量データが表す各判定結果の経時変化を示すグラフである。
【0066】
図3(A)~(E)のグラフのうち破線で描かれている部分、すなわち、現時点Tc以降の部分は、各々、プロセッサ11が実線部分を外挿して推定した将来における値である。
【0067】
例えば、図3(A)のグラフを例とすれば、プロセッサ11は、メモリ16からセンサ劣化度データを読み出し、それらのデータが表す使用開始時点Taから現時点Tcまでのセンサ12の劣化度の経時変化を近似する近似曲線を、例えば最小二乗法等の既知の手法により算出する。図3(A)の破線部分は、そのように算出された近似曲線のうち現時点Tc以降に応じた部分を示している。プロセッサ11は、センサ12の汚れ度、スピーカ13の劣化度、スピーカ13の汚れ度、及び、バッテリ19の電池残量に関しても同様に近似曲線を算出する。
【0068】
続いて、プロセッサ11は、上記のように算出した近似曲線が示す縦軸の値が、5種のパラメータ、すなわち、センサ12の劣化度、センサ12の汚れ度、スピーカ13の劣化度、スピーカ13の汚れ度、及び、バッテリ19の電池残量の各々に応じた所定の閾値(図3(A)~(E)の横方向の破線が示す値)に達する時点を特定する。以下、それらの時点を以下のように呼ぶ。
【0069】
Tb1:センサ劣化度基準の推定寿命到来時点
Tb2:センサ汚れ度基準の推定寿命到来時点
Tb3:スピーカ劣化度基準の推定寿命到来時点
Tb4:スピーカ汚れ度基準の推定寿命到来時点
Tb5:電池残量基準の推定寿命到来時点
【0070】
プロセッサ11は、上記の5つのパラメータの各々に応じた推定寿命到来時点と、仕様基準の推定寿命到来時点Tzのうち、最も早い時点を、現時点における火災警報器1の推定寿命到来時点と推定する。例えば、図3の例では、センサ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb2が現時点における火災警報器1の推定寿命到来時点と推定される。
【0071】
プロセッサ11は、現時点Tcから、上記のように推定した現時点における火災警報器1の推定寿命到来時点までの時間を、現時点における火災警報器1の残存寿命と推定する。
【0072】
火災警報器1は、上記のように推定した残存寿命が所定の閾値以下である場合、その残存寿命に応じた頻度で、残存寿命に応じた通知を行う。
【0073】
プロセッサ11は、例えば以下のような頻度で、残存寿命を通知する音声をスピーカ13に出力する。なお、プロセッサ11は、例えば日中の時間帯に、スピーカ13に対する音声の出力を行う。
【0074】
残存寿命が6ヶ月以上1年未満:1週間に1回
残存寿命が1ヶ月以上6ヶ月未満:1日に1回
残存寿命が1ヶ月未満:1時間に1回
【0075】
なお、プロセッサ11は、例えば、残存寿命を発声した音声を既知の音声合成技術により生成し、メモリ16から残存寿命通知用の音声波形データを読み出し、読み出した音声波形データが表す音声と合成により生成した残存寿命を発声した音声とを繋ぎ合わせて、残存寿命を通知する音声を生成する。そのように生成され、スピーカ13により発音される音声は、例えば、「この製品の推定交換時期は、XX年XX月後です。」といったものである。スピーカ13は、プロセッサ11から出力される音声を発音する。
【0076】
なお、プロセッサ11は、残存寿命の通知においては、上記のような音声を所定回数(例えば、3回)、スピーカ13に出力した後、音声の出力を停止する。従って、ユーザは、残存寿命の通知を停止させるためにボタン18の押下を行う必要はない。
【0077】
また、プロセッサ11は、インジケータ14に対し、例えば以下のような態様で、残存寿命に応じた発光を指示する。
【0078】
残存寿命が6ヶ月以上1年未満:3秒間隔で緑点滅
残存寿命が1ヶ月以上6ヶ月未満:3秒間隔で黄点滅
残存寿命が1ヶ月未満:3秒間隔で赤点滅
【0079】
インジケータ14は、プロセッサ11から指示された態様で点滅を行う。この点滅は、例えば、ユーザがボタン18を押下しても停止されない。
【0080】
以上が、火災警報器1が行う、残存寿命を推定するための動作(及び、推定した残存寿命を通知するための動作)である。
【0081】
上述した火災警報器1によれば、ユーザは、環境等の影響を受けて変化する火災警報器1の実際の状態に応じて推定された、火災警報器1の残存寿命を知ることができる。従って、火災警報器1が正常に動作できない状態にあることにユーザが気付かず、火災が発生した場合にその火災が検知されない、という不都合が発生しにくい。
【0082】
[変形例]
上述した実施形態に係る火災警報器1は様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、これらの変形例の2以上が適宜組み合わされてもよい。
【0083】
(1)点検対象は、上述したものに限られない。例えば、火災警報器1がインジケータ14の発光する光を検知するための受光センサを備え、受光センサの出力信号に基づき、プロセッサ11がインジケータ14の劣化度や汚れ度を判定してもよい。
【0084】
(2)火災警報器1の電源はバッテリに限られず、商用電源等であってもよい。
【0085】
(3)スピーカ13が発する音は、上述した実施形態の説明において例示したものに限られない。他の様々な音声メッセージが採用されてもよいし、音声に代えて、もしくは加えて、ブザー音等が発音されてもよい。
【0086】
(4)インジケータ14の発する光の態様は、上述した実施形態の説明において例示したものに限られない。
【0087】
(5)残存寿命を推定する方法は、上述した実施形態の説明において例示したものに限られない。
【0088】
具体的には、上述した実施形態において、火災警報器1は、点検結果データが示すセンサ12等の状態の経時変化に基づき火災警報器1の寿命到来時点を推定し、現時点から推定した寿命到来時点までを残存寿命として推定するものとした。
【0089】
これに代えて、例えば、火災警報器1がメモリ16に予め、既使用時間とその既使用時間が経過した時点におけるセンサ12の劣化度等のパラメータとの組合せと、その組合せに応じた残存寿命との対応関係を示すデータ(例えば、対応表、もしくは、関係式を示すデータ)を記憶しておき、現時点におけるセンサ12の劣化度等のパラメータに応じた残存寿命を、メモリ16に記憶している対応関係を示すデータに従い特定し、そのように特定した残存寿命を、現時点における残存寿命として推定する方法が採用されてもよい。
【0090】
(6)上述した実施形態において、プロセッサ11は、センサ12又はスピーカ13の汚れ度が、火災警報器1に対するユーザの清掃作業(保守作業の一例)を要する状態であるか否かを判定し、清掃作業を要する状態であると判定された場合、スピーカ13とインジケータ14は、プロセッサ11の指示に従い、清掃作業を促す通知を行う。火災警報器1がユーザに対し促す保守作業の種類は清掃作業に限られない。例えば、火災警報器1のバッテリ19の交換がユーザにより可能であれば、火災警報器1が、バッテリ19の電池残量が所定の閾値以下になった場合に、ユーザに電池交換(保守作業の一例)を促す通知を行ってもよい。
【0091】
(7)プロセッサ11が、ユーザにより保守作業(清掃作業等)が行われた時点を特定し、特定した保守作業が行われた時点の前後における点検結果データが示す点検対象(センサ12、スピーカ13等)の状態の経時変化に基づき、火災警報器1の残存寿命の推定が行われてもよい。
【0092】
図4は、この変形例においてプロセッサ11が残存寿命を推定する方法の一例を説明するための図である。図4(A)~(E)は、図3(A)~(E)に対応するグラフである。ただし、図4においては、時点Tdにおいて、ユーザにより火災警報器1に対する清掃作業が行われている。そのため、図4(B)(D)に示されるように、センサ12とスピーカ13の汚れ度が非連続的に低下している。プロセッサ11は、この非連続的な汚れ度の低下が生じた時点Tdを、ユーザにより清掃作業が行われた時点と特定する。
【0093】
続いて、プロセッサ11は、センサ12とスピーカ13の各々に関し、時点Tdより前の汚れ度の経時変化に応じた近似曲線を用いて、時点Td以降の汚れ度の経時変化を推定する。
【0094】
図5は、プロセッサ11が、時点Tdより前の汚れ度の経時変化に応じた近似曲線を用いて、時点Td以降の汚れ度の経時変化を推定する方法の一例を説明するためのグラフである。図5は、図4(B)のグラフと同じものである。
【0095】
プロセッサ11は、時点Td以前の点検結果データが示す汚れ度を近似した近似曲線Cのうち、時点Tdにおける汚れ度と同じ汚れ度であった過去の時点Te以降の部分を、時点Teから時点Tdまでの時間だけ時間方向(横軸方向)に移動した近似曲線Dを、時点Td以降の汚れ度を示す近似曲線とする。これにより、清掃作業前には時点Tb2であったセンサ汚れ度基準の推定寿命到来時点が、清掃作業後には時点Tb2’に変化する。
【0096】
プロセッサ11は、スピーカ13の汚れ度に関しても、上述したセンサ12に関する処理と同様の処理を行い、清掃作業後のスピーカ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb4’を推定する。
【0097】
プロセッサ11は、清掃作業前に推定していたセンサ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb2及びスピーカ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb4に代えて、清掃作業後に推定したセンサ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb2’及びスピーカ汚れ度基準の推定寿命到来時点Tb4’を用いて、現時点における火災警報器1の残存寿命を推定する。
【0098】
図4の例では、ユーザの清掃作業により、火災警報器1の残存寿命は延びて、仕様基準の推定寿命到来時点Tzまで使用できる見込みとなっている。
【0099】
(8)火災警報器1が、自装置とは異なる装置に、プロセッサ11が推定した火災警報器1の残存寿命に応じた通知を示す通知データを送信する送信手段を備えてもよい。
【0100】
図6は、この変形例において、火災警報器1が使用される状況を模式的に示した図である。この変形例において、監視領域M内には無線アクセスポイント2が配置されており、ユーザが使用する端末装置3は無線アクセスポイント2を介して火災警報器1と無線によるデータ通信を行う。無線アクセスポイント2は、例えばWi-Fi(登録商標)規格等の通信規格に従い同じLAN(Local Network)内の通信装置間の無線通信を中継する装置である。
【0101】
火災警報器1は、無線アクセスポイント2を介して端末装置3と通信を行う無線通信IF(Interface)を備える。この無線通信IFは、プロセッサ11の制御下で動作する。従って、無線通信IFは、プロセッサ11とともに通信手段の一例を構成する。
【0102】
火災警報器1は、例えば、上述した実施形態においてスピーカ13が音声によりユーザに対し通知を行うタイミングで、その通知と同様の内容を示す通知データを生成し、その通知データを無線アクセスポイント2経由で端末装置3に送信する。端末装置3は、火災警報器1から受信した通知データが示す通知の内容を表示、音声の発音等によりユーザに通知する。
【0103】
なお、無線アクセスポイント2がインターネットに接続するルータ機能を備えているか、もしくは、無線アクセスポイント2が外付のルータに接続されており、端末装置3が、例えば移動体通信網に接続可能である場合、火災警報器1がインターネットを介して通知データを端末装置3に送信してもよい。その場合、ユーザは、監視領域M内にいないときにも、火災警報器1からの通知を受けることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…火災警報器、2…無線アクセスポイント、3…端末装置、10…電圧測定器、11…プロセッサ、12…センサ、13…スピーカ、14…インジケータ、15…マイク、16…メモリ、17…クロック、18…ボタン、19…バッテリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6