(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079089
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240604BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/107 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191810
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達彦
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085BA33
5C085CA30
5C085FA09
5G405AA01
5G405AB02
5G405CA60
5G405FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検煙室では発光部と受光部の間に遮光壁が突出しているために阻害され易い検煙室での外気の流れを阻害しにくい煙感知器を提供する。
【解決手段】発光素子及び受光素子1と、発光素子と受光素子の間に位置する遮光壁114とが設けられ、内部に流入した煙を検知する検煙室111と、検煙室と連通し、外部から外気Aが導入される煙導入部と、煙導入部と検煙室とを連通させる開口部121と、を備えた煙感知器であって、煙導入部から検煙室へは、外気が回転しながら開口部を通過して導入され、回転の中心が遮光壁から水平方向に離れる方向に位置する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部および受光部と、前記発光部と前記受光部の間に位置する遮光壁とが設けられた、内部に流入した煙を検知する検煙室と、
前記検煙室と連通し、外部から外気が導入される煙導入部と、
前記煙導入部と前記検煙室とを連通させる開口部と、
を備えた煙感知器において、
前記煙導入部から前記検煙室へは、外気が回転しながら前記開口部を通過して導入され、前記回転の中心が前記遮光壁から水平方向に離れる方向に位置することを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記煙導入部には、前記開口部へ向かって突出する丘状部が設けられ、
前記丘状部の頂部は、前記遮光壁から水平方向に離れる方向に偏心していることを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記丘状部の底面は、前記頂部から偏心していないことを特徴とする請求項2に記載された煙感知器。
【請求項4】
前記煙導入部には、屈曲した複数のラビリンス板が設けられ、
前記ラビリンス板は、前記遮光壁に遠い側に設けられた前記ラビリンス板は、前記遮光壁から近い側に設けられた前記ラビリンス板よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載された煙感知器。
【請求項5】
前記開口部は、前記検煙室の中心からみて前記遮光壁から水平方向に離れる方向に偏心していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載された煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙を光学的に感知する光電式煙感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室を備えたホテルの客室や居室の浴室ドアに近い場所等、湯気の発生源に近い場所に煙感知器を設置すると、内部に侵入した湯気が検煙室に達し、非火災報が生じる可能性があった。また、埃の多い倉庫等に煙感知器を設置すると、内部に侵入した埃が検煙室に達し、非火災報が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-67067号公報
【特許文献2】特開2020-135780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような非火災報へ対応する煙感知器として、特許文献1には、検煙室と煙導入部が上下に分かれた二段式遮光構造の煙感知器が記載されている。特許文献1の煙感知器では、導煙経路を上下方向に長くすることで、進入した外気に含まれる湯気や埃による誤感知を防ぎ、非火災報を低減している。一方、スペースが限られたホテルの客室や居室のような空間や、天井の低い倉庫等に煙感知器を設置する場合には、室内や倉庫内等への突出が小さい薄型にすることが望ましい。しかし、特許文献1の煙感知器は上記のように導煙経路を上下方向に長くして誤感知を抑制する構造であるため、薄型化することが難しい。そこで、特許文献2では、検煙室へ向かって突出する丘状部を設けることにより、煙感知器を薄型化すると共に煙の誤検知を抑制している。
【0005】
図1に、従来の丘状部を有した煙感知器5の分解斜視図を示す。煙感知器5を天井に設置した場合、上から光学台51、光学台カバー52、煙導入カバー53の順に位置して組み合わされるようにして、外気を取り入れ煙を検出する構造が開示されている。
【0006】
このような従来の煙感知器5では、
図2、
図3に示すように、複数のラビリンス板532の間から進入する外気Aが丘状部531の斜面531bに沿って螺旋状に回転しながら丘状部531の斜面を上昇し、湯気や埃等と分流されながら検煙室511の内部に到達する。しかしながら、検煙室511の内部には、発光素子512の光を受光素子513が直接受光し検出しないように遮光壁514が内方へ突出して設けられることにより、外気Aが矢印のように旋回する流れの障害になっている。
【0007】
また、
図3に示すように、外気Aは、丘状部531の斜面531bに沿って旋回しながら螺旋状に上昇し、開口部521を通って検煙室511に達する。そのため、火災による煙はこの長い導煙経路により消失しない。一方で、湯気や埃は煙に比べて重いため検煙室511に達するまでに消失したり、落下したりするので湯気や埃による誤検知を抑制される。
【0008】
本発明は、検煙室で外気の流れが発光部と受光部の間に位置する遮光壁によって阻害されにくく、検煙室に外気が到達しやすい煙感知器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における煙感知器は、発光部および受光部と、前記発光部と前記受光部の間に位置する遮光壁とが設けられた、内部に流入した煙を検知する検煙室と、前記検煙室と連通し、外部から外気が導入される煙導入部と、前記煙導入部と前記検煙室とを連通させる開口部と、を備えた煙感知器であって、前記煙導入部から前記検煙室へは、外気が回転しながら前記開口部を通過して導入され、前記回転の中心が前記遮光壁から水平方向に離れる方向に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検煙室での外気の流れが、発光部と受光部の間に位置する遮光壁により阻害されにくく、検煙室に外気が到達しやすい煙感知器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】従来の煙感知器における外気の流れを示す図。
【
図4】本発明の実施例1における煙感知器の分解斜視図。
【
図5】本発明の実施例1における煙感知器の断面図。
【
図7】本発明の実施例1における光学台と光学台カバーの下面図。
【
図11】本発明の実施例4における光学台と光学台カバーの下面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願において、上下方向は煙感知器を水平な天井へ設置した状態での上下で示す。
【実施例0013】
図4は、本発明の実施例1における煙感知器1の分解斜視図である。防虫網等の構成は省略している。
図4は、斜め上方から煙感知器1を見た分解斜視図となっている。上方から、光学台11、光学台カバー12、煙導入カバー13が示されている。煙感知器1は、
図4で示す光学台11、光学台カバー12、煙導入カバー13を備える。
【0014】
光学台カバー12は、中心近傍に開口部121を備えている。煙導入カバー13の中心は盛り上がって丘状部131となっている。丘状部131は、開口部121へ向かって突出している。丘状部131の周囲は、同じ形状で同じ大きさの複数のラビリンス板132で囲まれている。複数のラビリンス板132は屈曲しており、側方からの光を遮断するためのラビリンス構造を形成する。
【0015】
図5に、煙感知器1の断面を示す。煙感知器1は、光学台11、光学台カバー12、煙導入カバー13が組み合わされている。実施例1の煙感知器1は、従来の煙感知器5と同様に、内部に流入した煙を検知する検煙室111と、煙を導入する煙導入部が上下に分かれた二段式遮光構造を有している。
【0016】
煙感知器1には、
図5に直線矢印で示すように、外部から外気Aが導入される。
図5に示す天井への取り付け状態において、光学台カバー12の上側で検煙壁115に囲まれた領域が検煙室111となっており、光学台カバー12の下側から煙導入カバー13におけるカバー板133までの、外部から外気Aが導入される部分が煙導入部である。
【0017】
煙感知器1は、内部に流入した煙を検知する検煙室111と、煙を導入する煙導入部が上下に分かれた二段式遮光構造を有している。煙導入部は、開口部121により検煙室111と連通している。複数のラビリンス板132の各々はL字状に屈曲している。そして、検煙室111は、煙導入カバー13の複数のラビリンス板132と、複数のラビリンス板132が取り付けられたカバー板133により、外部光が遮光される。
【0018】
光学台11では、
図5、
図6に示すように、検煙壁115で囲まれた検煙室111の一部に、発光素子112から発する光を受光素子113が直接受光し検出しないように、遮光壁114を設けている。そして、検煙室111の下方は、光学台カバー12の開口部121となっている。開口部121の下方には、煙導入カバー13の丘状部131が設けられている。丘状部131の最上部は、平面の頂部131aとなっている。実施例1では、丘状部131の高さ、つまりカバー板133から頂部131aまでの高さは、外気を検煙室111まで導入させるのに充分な高さとなるよう、ラビリンス板132と同一または同程度の高さとなるように形成される。なお、後述の実施例の丘状部の高さも同様に形成される。しかし、必ずしも丘状部の高さをラビリンス板と同程度の高さにしなくてもよい。
【0019】
図1、3に示した従来例の煙感知器5における頂部531aと比べて、実施例1の頂部131aは、
図5に矢印Bで示すように、検煙室111における遮光壁114から水平方向に離れる方向に偏心している。丘状部131の底面131cの中心の位置は、従来例の煙感知器5と同様に、光学台11の検煙壁115の内側である検煙室111の中心と略同じ位置である。そのため、
図5に示す斜面131bは左側が右側よりも緩やかであり、左右の傾斜角度が非対称となっている。
【0020】
外部から導入された外気Aは、複数のラビリンス板132の間を通ることにより、回転するように方向が変えられる。そして、
図5に曲線矢印で示すように、丘状部131の斜面131bを沿うように回転しながら上昇して、検煙室111に入る。実施例1では、矢印Bで示すように、頂部131aが検煙室111における遮光壁114から水平方向に離れる方向に偏心している。そのため、回転する外気Aが
図5のように右側から検煙室111に入るため、検煙室111の左側にある遮光壁114によって外気Aの流れが阻害されにくく、外気Aを検煙室111へ円滑に導煙することができる。
【0021】
図6に、
図4、5で示した実施例1の光学台11の下面図を示す。検煙室111は、光学台11の略円筒状の検煙壁115に囲まれている。そして、略円筒状の検煙壁115に設けられた発光素子室112aには発光部である発光素子112が、受光素子室113aには受光部である受光素子113が収容される。光学台11では、検煙室111の周囲に、内側方向に向かって発光素子112と受光素子113が設けられている。また、検煙室111において、発光素子112と受光素子113の間に遮光壁114が設けられている。さらに、遮光壁114に対向する位置には、検煙壁115の内側に、斜め方向に突出した襞である壁面襞115aが設けられている。
【0022】
煙感知器1は、発光素子112から送出された光の散乱光を受光素子113で受光して煙を検出する。遮光壁114は、発光素子112からの光を受光素子113が直接検出しない位置に設けられている。また、検煙室111の内側は黒色であり、光を反射せずに吸収するようになっているが、検煙壁115から検煙室111の内側方向の壁面、つまり検煙壁115の内周壁に、複数の突起からなる壁面襞115aを設けることで、検煙壁115で光が反射することをより抑えている。
【0023】
図6に、遮光壁114が延在する中心線を点線で示す。検煙壁115は、実施例1においては略円形をなす検煙室111の外周となる壁部である。発光素子室112aと受光素子室113aの部分が検煙室111の内側へ突出しているが、点線と交差する場所は内側へ突出していない。点線は、検煙室111を形成する、内側への突出を除いた、略円形の直径をも示している。遮光壁114は検煙壁115から点線に沿って検煙室111の中心Cの方向へ延びている。
【0024】
実施例1では、検煙室111に入る外気Aは
図6に矢印で示すように、光学台11の下面図においては時計回りに、回転する。この外気Aの回転の中心は丘状部131の頂部131aの位置に依存するため、矢印Bで示すように、遮光壁114から水平方向に離れる方向に偏心している。これにより、外気Aは、回転しながら遮光壁114に干渉しにくい位置で検煙室111に入り、遮光壁114が外気Aの流れの障害になりにくい。なお、発光素子112、受光素子113、遮光壁114と対向する側の検煙壁115の内側は、発光素子112の光の反射を抑制するために壁面襞115aを有している。壁面襞115aは、頂点が外気Aの流れの下流の方向へ向けて突出しており、外気Aが近づいても流れの障害となりにくい。
【0025】
実施例1では、外気Aの中心が偏心する方向は、
図6に示した点線に沿う方向であり、遮光壁114が延在する方向である。そして、外気Aの中心は、遮光壁114が延在する方向へ向けて、点線の中心である検煙室111の中心Cから偏心している。
【0026】
図7に、実施例1における光学台11と光学台カバー12の下面図を示す。光学台11の下に光学台カバー12を取り付けて下方から見た図である。光学台カバー12には、開口部121が設けられている。
図7では、開口部121の内側に、上方に位置する検煙室111が見えている。そして、検煙室111の中には、遮光壁114等の光学台11の構成が見えている。実施例1における光学台11および光学台カバー12は、従来の光学台51および光学台カバー52と同じものである。
【0027】
図7にも、遮光壁114が延在する中心線を点線で示す。開口部121は、発光素子室112aと受光素子室113aの部分が直線となって内側へ突出して、突出部121aを形成している。しかし、2箇所に設けられた突出部121aは点線と重なっておらず、開口部121は、点線のある場所で内側へ突出していない。
【0028】
図7に示す点線は、開口部121の周囲を形成する、突出部121aを除いた円の直径をも示している。この円は、検煙壁115の円よりも若干小さい。また
図7のこの円は、検煙壁115の円の中心Cを中心とする。そして、遮光壁114は検煙壁115から点線に沿って開口部121の中心Cの方向へ延びており、実施例1では、外気Aの中心が偏心する方向は、点線に沿う方向であり、遮光壁114が延在する方向である。
【0029】
なお、実施例1においては、上方または下方から見て、検煙室111および開口部121の中心Cは、光学台11、光学台カバー12、煙導入カバー13の中心と同じである。
【0030】
開口部121は、遮光壁114に近い方向で突出部121aにより狭くなっているが、外気Aは、前述のとおり、丘状部131の頂部131aに向かって上昇し検煙室111に到達するため、矢印Bの方向にずれた位置で開口部121を通過する。そのため、突出部121aは検煙室111への外気Aの導入に際し、障害とならない。
【0031】
図8に、実施例1における煙導入カバー13を示す。
図8(a)は上面図であり、
図8(b)は側断面図である。
図8(a)に示すように、煙導入カバー13には複数のラビリンス板132が形成されている。また、複数のラビリンス板132の内側には丘状部131が設けられている。
図8(b)は、組み立てられた煙感知器1において、
図6、7に示す点線とその延長線に沿って煙導入カバー13を縦に切断した側断面図である。
図8(b)に示すように、丘状部131と複数のラビリンス板132は、カバー板133の上に形成されている。丘状部131は、円盤状の頂部131a、頂部131aよりも大きい円盤状の底面131c、頂部131aの周囲と底面131cの周囲を繋ぐ斜面131bを有している。底面131cはカバー板133に接しており、丘状部131とカバー板133は一体に形成されている。
【0032】
ラビリンス板132は屈曲することにより外部光を遮断しているが、煙導入カバー13において、ラビリンス板132の内側の端部は、煙導入カバー13の中心からずれた方向を向いている。ラビリンス板132の端部が中心を向かない方向で設けられることで、煙導入部において、複数のラビリンス板132の間から内側に入った外気Aは、丘状部131の斜面131bに対して斜めに当たる。そのため、円滑にラビリンス板132の内側の外気Aを、斜面131bに沿って回転させながら、検煙室111の方向へ到達させることができる。
【0033】
実施例1の丘状部131は、
図8(a)(b)に示すように、頂部131aの中心が底面131cの中心から矢印Bの方向へずれている。そして、底面131cの周囲から頂部131aの周囲に接続する斜面131bは、位置により底面131cとの角度が異なる。丘状部131の上記の構成により、斜面131bに沿って上昇する外気Aは、矢印Bの方向へずれた位置で検煙室111に導煙される。実施例1において、
図8(a)に示す煙導入カバー13の上面図では、外気Aは丘状部131の周りを反時計回りに回転する。光学台11の下面図である
図6では、外気Aは時計回りに回転することになる。
【0034】
そして、頂部131aと底面131cの中心のずれにより、
図6に示すように、外気Aの回転の中心は遮光壁114から水平に離間する方向へ偏心する。そのため、外気Aの流れは検煙室111の内部で大きく乱れることなく、円滑に流れて、非火災報を抑制しつつ火災を早期に検出することができる。
実施例2の煙導入カバー23における丘状部231では、底面231cの周囲から頂部231aの周囲に接続する斜面231bは、位置により底面231cとの角度が変わらない。そのため、外気Aの回転および上昇は、実施例1の煙導入カバー13よりも円滑に行われる。