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  • 特開-エアバッグ 図1
  • 特開-エアバッグ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079096
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20240604BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191823
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智貴
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB01
3D054CC04
3D054CC35
3D054DD09
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で被保護物を適切に保護できるエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ1は、ガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部15を備える。エアバッグ本体部15は、乗員側に位置する第一基布部20と、乗員とは反対側に位置する第二基布部21と、第一基布部20の一部と第二基布部21の一部とが乗員とは反対側に屈曲された状態で保持され、エアバッグ本体部15の中央部側の主室26と端縁部側の副室27とを形成する屈曲部30と、主室26から副室27へのガスの流入を許容する連通部35と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備え、
前記エアバッグ本体部は、
被保護物側に位置する第一基布部と、
前記被保護物とは反対側に位置する第二基布部と、
前記第一基布部の一部と前記第二基布部の一部とが前記被保護物とは反対側に屈曲された状態で保持され、前記エアバッグ本体部の中心部側の主室と端縁部側の副室とを形成する屈曲部と、
前記主室から前記副室へのガスの流入を許容する連通部と、を有する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
屈曲部は、複数形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
複数の屈曲部は、互いに並んで形成されている
ことを特徴とする請求項2記載のエアバッグ。
【請求項4】
副室は、ガスが導入された膨張状態で、エアバッグ本体部の端縁部を含んで第一基布部側へと折り返された状態で保持される
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項5】
第一基布部と第二基布部とは、屈曲部において互いに縫着されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備えるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のハンドルであるステアリングホイールに備えられるエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、扁平な袋状をなすエアバッグ、このエアバッグを覆うカバー体、及びガスを供給するインフレータなどを備えている。そして、このエアバッグは、通常時は、所定の方法で小さく折り畳まれてカバー体の内側に収納され、センサが衝突の衝撃を検出した状態で、インフレータからガスを供給してエアバッグを膨張させ、この膨張の圧力によりカバー体を破断してエアバッグを突出させ、エアバッグを乗員の前方に膨張展開させて、乗員に加わる衝撃を緩和する。
【0003】
このようなエアバッグにおいて、乗員拘束面部の乗員肩部に相当する箇所に突出部を形成し、乗員の肩部を拘束することで乗員胸部に加わる過剰な力を抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-296980号公報 (第3-6頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のエアバッグの場合、複雑な形状の基布を用いて突出部を形成している。そこで、より簡素な形状として製造コストを抑制することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡易な構成で被保護物を適切に保護できるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグは、ガスの導入により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備え、前記エアバッグ本体部は、被保護物側に位置する第一基布部と、前記被保護物とは反対側に位置する第二基布部と、前記第一基布部の一部と前記第二基布部の一部とが前記被保護物とは反対側に屈曲された状態で保持され、前記エアバッグ本体部の中心部側の主室と端縁部側の副室とを形成する屈曲部と、前記主室から前記副室へのガスの流入を許容する連通部と、を有するものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、屈曲部は、複数形成されているものである。
【0009】
請求項3記載のエアバッグは、請求項2記載のエアバッグにおいて、複数の屈曲部は、互いに並んで形成されているものである。
【0010】
請求項4記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、副室は、ガスが導入された膨張状態で、エアバッグ本体部の端縁部を含んで第一基布部側へと折り返された状態で保持されるものである。
【0011】
請求項5記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、第一基布部と第二基布部とは、屈曲部において互いに縫着されているものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のエアバッグによれば、ガスが流入した副室が屈曲部を起点として被保護物側に屈曲し、主室に対して被保護物側に突出して主室よりも先に被保護物の中央部分以外を拘束し、その後副室よりも反被保護物側にある主室により被保護物の中央部分を拘束する展開特性とすることができるため、複雑な形状の基布などを用いない簡易な構成で、被保護物の中央部分に対し、エアバッグ本体部から過剰な押圧力が加わることを抑制でき、被保護物を適切に保護できる。
【0013】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、簡易な構成で、エアバッグ本体部の膨張時に屈曲部から副室を容易に被保護物側に屈曲させることができる。
【0014】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項2記載のエアバッグの効果に加えて、簡易な構成で、エアバッグ本体部の膨張時に屈曲部から副室をより容易に被保護物側に屈曲させることができる。
【0015】
請求項4記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、副室が被保護物の中央部分以外の部分を主室よりも先に拘束する突出部となり、被保護物を適切に保護できる。
【0016】
請求項5記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部に主室と副室とを形成する屈曲部を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態のエアバッグの膨張前の状態を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のI-I相当位置の断面図である。
図2】同上エアバッグの膨張状態を示し、(a)はその正面図、(b)は(a)のII-II相当位置の断面図である。
図3】同上エアバッグによる被保護物の拘束状態を示し、(a)はその側面図、(b)は上方から示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図3(a)及び図3(b)において、1はエアバッグを示す。エアバッグ1は、エアバッグ装置2を構成し、このエアバッグ装置2は、本実施の形態において、車両としての自動車のハンドルであるステアリングホイール3に装着され、被保護物である乗員Aを衝突の衝撃から保護する運転席用エアバッグ装置(DAB)である。なお、乗員Aについては、乗員を模したダミーで示している。
【0020】
ステアリングホイール3は、グリップ部あるいはリング部とも呼ばれる把持部としての円環状をなすリム部5の内側にボス部を有し、リム部5とボス部とがスポーク部により連結されて構成されて、操向用シャフトすなわちステアリングシャフト8に取り付けられている。ステアリングシャフト8は、フロントガラス10の下方にあるインストルメントパネル11に設けられたステアリングコラム12に取り付けられている。なお、ステアリングホイール3は、通常、傾斜したステアリングシャフト8に取り付けられ、傾斜した状態で用いられるものであるが、以下、上下方向については、ステアリングシャフト8に交差または直交する方向を基準として、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側とし、前後方向、及び、左右方向については、運転席に着座した乗員Aの視点を基準とし、矢印FR方向を前側、矢印RR方向を後側、矢印L方向を左側、矢印R方向を右側として説明する。つまり、エアバッグ装置2が取り付けられた乗員A側は、後側、手前側、あるいは表側であり、反乗員側すなわち乗員A側の反対側は、前側、車体側、あるいは裏側である。
【0021】
エアバッグ装置2は、エアバッグモジュールとも呼ばれる。本実施の形態において、エアバッグ装置2は、ステアリングホイール3のボス部に取り付けられるケース体としてのベースプレートと、乗員側の意匠面を構成するカバー体と、それらに取り付けられるエアバッグ1及びインフレータなどから構成されている。
【0022】
ベースプレートは、例えば乗員A側が開口された箱状などに形成されている。ベースプレートの底部にインフレータ及びエアバッグ1が取り付けられ、これらインフレータ及び折り畳まれたエアバッグ1を覆って、ベースプレートにカバー体が取り付けられる。
【0023】
また、インフレータは、ハーネスの先端部のコネクタが接続され、このハーネスを介して、インフレータの動作を制御する図示しない制御装置と電気的に接続される。
【0024】
カバー体は、例えば軟質の合成樹脂などにて形成され、背面側に破断予定部であるテアラインが所定形状に設けられており、エアバッグ1の膨張圧力によってこのテアラインから破断することで所定の扉を形成して開口部を開放し、エアバッグ1を乗員A側へと膨出させるようになっている。
【0025】
そして、図1(a)及び図1(b)に示すエアバッグ1は、ガスが導入されて膨張展開する袋状のエアバッグ本体部15を備える。その他に、エアバッグ1には、エアバッグ本体部15に導入されたガスを整流する整流体(インナパネル)、導入されたガスによる膨張圧力に対してエアバッグ本体部15を補強するための補強布(パッチ)、及び/または、エアバッグ本体部15の膨張形状を規制する規制部材(テザー)などが備えられていてもよい。そして、エアバッグ1は、所定の折り畳み方法によって所定の形状に小さく折り畳まれた状態でベースプレートとカバー体との間に収容される。
【0026】
エアバッグ本体部15は、概略として、正面から見て円形状をなすように膨張展開する。エアバッグ本体部15の膨張状態での外形は、ステアリングホイール3(リム部)の外形よりも大きい。
【0027】
このエアバッグ本体部15は、外殻パネルを構成する第一基布部20及び乗員に対向しない第二基布部21を備えている。これら第一基布部20及び第二基布部21は、本実施の形態において、互いに異なる基布により形成されて、外周端縁部全体が縫製部などの接合部22によって互いに接合されているが、これに限らず、例えば連なった基布により形成され、外周端縁部の一部が接合部22によって互いに固着されている構成でもよい。
【0028】
第一基布部20は、乗員側に対向して配置される乗員側パネル(乗員拘束面部)である。また、第二基布部21は、ステアリングホイール3側に対向して配置される反乗員側パネル(非乗員拘束面部)である。本実施の形態において、第一基布部20及び第二基布部21は、それぞれ外形が略等しく形成されている。第一基布部20及び第二基布部21の外形は、上側が略円形状であり、例えば下側の両側部が上側の円形状に連なる仮想円に対して外方に突出している。
【0029】
第一基布部20には、必要に応じて、排気用のベントホールが開口されていてもよい。
【0030】
第二基布部21には、インフレータを取り付けるための取付開口部が中心部に形成されている。取付開口部が、インフレータから噴出されたガスをエアバッグ本体部15内に導入するガス導入部として機能する。
【0031】
第一基布部20と第二基布部21とは、接合部22に沿って外周端縁部が縫合などにより接合されたのちに反転され、扁平な袋状の外殻パネルを構成する。
【0032】
そして、エアバッグ本体部15には、仕切り部25が形成されている。仕切り部25は、エアバッグ本体部15の内部を、ガス導入部すなわち取付開口部に直接連通する主室26と、主室26と連通する副室27と、に仕切る。仕切り部25は、単数でも複数でもよいが、本実施の形態では、仕切り部25は、エアバッグ本体部15において、下側の左右両側部、すなわちアナログ時計の8時方向及び4時方向に設定されている。つまり、一つの主室26と、二つの副室27と、がエアバッグ本体部15に形成されている。
【0033】
図3(a)及び図3(b)に示すように、主室26は、エアバッグ本体部15の中心部側に位置して、膨張状態で乗員Aの頭部から胸部ないし腹部に亘る部分、つまり乗員Aの幅方向の中央部分を前側から保護する部分である。図2(a)及び図2(b)に示すように、主室26は、副室27よりも面積及び容積が大きく形成されており、正面から見て略円形状を呈する。
【0034】
また、図3(a)及び図3(b)に示すように、副室27は、エアバッグ本体部15の端縁部側、例えば主室26の下側の左右両側部に位置して、乗員Aの肩部SH、つまり乗員Aの幅方向の両側部分を前側から保護する部分である。本実施の形態において、副室27は、主室26に対して左右両側部に位置する。また、ガスが導入された膨張状態で、副室27は、主室26に対して後方に突出して位置する突出部となっている。つまり、膨張状態の副室27の後端部は、膨張状態の主室26の後端部よりも後方に位置する。副室27は、ガスが導入された膨張状態で、仕切り部25を起点として、エアバッグ本体部15の外周端縁部を含んで第一基布部20側へと折り返された状態に屈曲されて保持される。そのため、図2(a)及び図2(b)に示すように、副室27は、第一基布部20と第二基布部21とが乗員A(図3(a))側つまり後側に面するように膨張する。
【0035】
各仕切り部25は、屈曲部30からなる。屈曲部30は、第一基布部20の一部と第二基布部21の一部とが互いに重ねられて反乗員側すなわち第二基布部21側である前側に屈曲されて突出した状態で保持されている。屈曲部30は、線状に延びている。屈曲部30は、例えば上側から下側へと徐々に幅方向の中央部側に傾斜する。屈曲部30は、非膨張状態のエアバッグ本体部15において、第一基布部20の一部と第二基布部21の一部とを一体的に摘んで形成されている。
【0036】
屈曲部30における第一基布部20と第二基布部21との屈曲量は、互いに略等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。また、例えば第一基布部20と第二基布部21とを、外周端縁部が揃った状態で接合部22により接合しつつ、第一基布部20と第二基布部21との重なりを少しずらして、第一基布部20と第二基布部21との撓み量が異なるように形成されていてもよい。
【0037】
各仕切り部25において、屈曲部30は単数でも複数でもよい。本実施の形態において、一つの仕切り部25につき、屈曲部30が左右方向に互いに離れて一対形成されている。図示される例では、屈曲部30,30は、互いに並んで位置し、並列状態、例えば平行または略平行となっている。これに限らず、屈曲部30,30は、一方を直線状とし、他方を緩やかな円弧状などの曲線状とするなどの構成でもよい。
【0038】
屈曲部30は、第一基布部20と第二基布部21とを接合する屈曲接合部31により、屈曲状態を保持するように形成されている。図示される例では、屈曲接合部31は、屈曲部30の先端部、つまり前端部の位置を接合している。屈曲接合部31は、例えば第一基布部20と第二基布部21とを縫製により互いに接合している。つまり、本実施の形態において、屈曲接合部31は、第一基布部20と第二基布部21とを共縫いしている。なお、屈曲接合部31としては、縫製の他にも、例えば接着剤など、任意の接合手段を用いてもよい。
【0039】
そして、本実施の形態では、仕切り部25により、主室26と副室27とを連通する連通部35が形成される。図示される例では、仕切り部25が、屈曲部30の両端部において屈曲接合部31が接合部22に対して離れていることにより、すなわち仕切り部25の両端部と接合部22との間で第一基布部20と第二基布部21とが接合されていない非接合部となっていることで連通部35がそれぞれ形成されている。すなわち、連通部35は、エアバッグ本体部15の外周端縁部に位置する。これに限らず、連通部35は、仕切り部25の一方の端部と接合部22との間に形成されていてもよいし、例えば屈曲接合部31を、屈曲部30において隙間を空けながら断続的に形成することにより、それらの隙間を連通部35としてもよい。
【0040】
そして、上記のエアバッグ1の製造工程は、予め形成した第一基布部20と第二基布部21との外周端縁部を接合部22で縫い合わせ、取付開口部から第一基布部20を引き出して表裏を反転させる。
【0041】
この状態で、第一基布部20と第二基布部21とを第二基布部21側から一体的に摘んで第二基布部21側に屈曲させ、その先端部を屈曲接合部31にて共縫いして屈曲状態を保持した屈曲部30を形成する。
【0042】
また、エアバッグ装置2の組み立ての際は、まず、エアバッグ1の取付開口部にリテーナを挿入し、このエアバッグ1を、インフレータとともにベースプレートに組み付ける。このインフレータの組み付け作業の前後に、エアバッグ1を所定の形状に折り畳み、上側からカバー体を被せて嵌合して、エアバッグ装置2を組み立てる。エアバッグ装置2は、ベースプレートをステアリングホイール3のボス部の芯金に固定して、ステアリングホイール3に装着する。
【0043】
そして、エアバッグ装置2を備えた自動車に衝突の衝撃が加わると、図示しない制御装置によりインフレータが起動され、インフレータからエアバッグ1のエアバッグ本体部15の主室26内に急速にガスが噴射され、主室26を膨張展開させるとともに、主室26から連通部35を介して副室27に流入し、副室27も膨張展開させる。そこで、エアバッグ1は、カバー体のテアラインに膨張圧力を作用させ、カバー体をテアラインに沿って扉状に破断して突出口を形成し、この突出口を介して膨出し、乗員Aの前方に所定の形状に膨出する。
【0044】
このとき、エアバッグ本体部15は、反乗員A側に屈曲する屈曲部30を有するため、図2(a)及び図2(b)に示すように、副室27が仕切り部25(屈曲部30)を起点としてエアバッグ本体部15の端縁部を含んで主室26の後側下部の左右両側部に重なるように折り返された状態で乗員A側に突出する突出部として展開することで、図3(a)及び図3(b)に示すように、主室26よりも先に副室27において第一基布部20及び第二基布部21が乗員Aの両肩部SHを拘束し、続いて主室26において第一基布部20が乗員Aの中央部分つまり頭部から胸部ないし腹部に亘る範囲を拘束し、乗員に加わる衝撃を緩和する。そこで、乗員Aの頭部から胸部ないし腹部に亘る範囲に対し、エアバッグ本体部15から加わる過剰な力を抑制し、乗員Aの保護に好ましい展開特性が実現される。
【0045】
このように、第一基布部20の一部と第二基布部21の一部とを乗員Aとは反対側に屈曲した状態で屈曲部30として保持し、屈曲部30によってエアバッグ本体部15に仕切られた中心部側の主室26から端縁部側の副室27へ連通部35からガスの流入を許容することで、ガスが流入した副室27が屈曲部30を起点として乗員A側に屈曲し、主室26に対して乗員A側に突出して主室26よりも先に乗員Aの頭部や胸部、腹部などの中央部分以外、本実施の形態では肩部SHを拘束し、その後副室27よりも反乗員A側にある主室26により乗員Aの中央部分を拘束する展開特性とすることができる。そのため、複雑な形状の基布や縫製などを用いない簡易な構成で、乗員Aの中央部分に対し、エアバッグ本体部15から過剰な押圧力が加わることを抑制でき、つまり乗員Aの中央部分の障害値を抑制でき、乗員Aを適切に保護できる。
【0046】
屈曲部30を複数形成しているため、簡易な構成で、エアバッグ本体部15の膨張時に屈曲部30から副室27を容易に乗員A側に屈曲させることができる。
【0047】
複数の屈曲部30を互いに並んで形成することで、簡易な構成で、エアバッグ本体部15の膨張時に屈曲部30から副室27をより容易に乗員A側に屈曲させることができる。
【0048】
副室27が、ガスが導入された膨張状態で、エアバッグ本体部15の端縁部を含んで第一基布部20側へと折り返された状態で保持されるため、副室27が乗員Aの中央部分以外の部分を主室26よりも先に拘束する突出部となり、乗員Aを適切に保護できる。
【0049】
第一基布部20と第二基布部21とを屈曲部30において互いに縫着することで、エアバッグ本体部15に主室26と副室27とを形成する屈曲部30を容易に形成できる。
【0050】
なお、上記の一実施の形態において、仕切り部25及び副室27は、下側の左右両側部に限らず、上側の左右両側部に形成してもよいし、下側の左右両側部及び上側の左右両側部にそれぞれ形成してもよい。
【0051】
また、仕切り部25及び副室27は、複数に限らず、一つでもよい。仕切り部25及び副室27を一つ形成する場合には、例えば左右方向の中央部の下部、つまりアナログ時計の6時方向などに設定することで、一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
エアバッグ1は、運転席用のものに限らず、助手席用のエアバッグ(PAB)、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ、あるいはニーエアバッグなど、任意のエアバッグに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば運転席用のエアバッグ装置に備えられるエアバッグとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 エアバッグ
15 エアバッグ本体部
20 第一基布部
21 第二基布部
26 主室
27 副室
30 屈曲部
35 連通部
A 被保護物である乗員
図1
図2
図3