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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079097
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240604BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191824
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】関 崇朗
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081FA00
3L081FC01
3L081HA09
3L211BA01
3L211DA82
(57)【要約】
【課題】フィンの操作性を向上した風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、一の方向とその反対の他の方向とに回動可能に配置され、回動により風向を調整するフィン10を備える。フィン10の一の方向への回動時と、他の方向への回動時と、で生じるフィン10の回動の摩擦抵抗力が異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向とその反対の他の方向とに回動可能に配置され、回動により風向を調整するフィンを備える風向調整装置であって、
前記フィンの前記一の方向への回動時と、前記他の方向への回動時と、で生じる前記フィンの回動の摩擦抵抗力が異なる
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
フィンには、回動軸線とは異なる位置に操作力が発生する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
軟質材により構成されフィンの回動により被摺接部と摺接して摺動抵抗を発生させるスペーサを備える
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項4】
スペーサは、フィンとケース体との少なくとも一方に設定され、前記フィンの回動により前記フィンと前記ケース体との他方と摺接して摺動抵抗を発生させる
ことを特徴とする請求項3記載の風向調整装置。
【請求項5】
スペーサは、フィンの一方向への回動時と他方向への回動時とで変形の仕方が異なることによりそれぞれ異なる摺動抵抗を生じさせる
ことを特徴とする請求項3または4記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動により風向を調整するフィンを備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置において、回動により風向を調整するフィンの回動軸と回動軸を受ける軸穴との嵌め合いによる摩擦から風向操作時に操作力を得るものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この構成では、フィンをいずれの方向に回動させても同じ操作力を発揮することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-203072号公報 (第3-6頁、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばフィンが上下方向に風向を調整する場合、つまりフィンが上下方向に回動するものである場合、操作力にフィンの自重が加わる。このような構成において、一方(上方向)への回動時と他方(下方向)への回動時とで発生する操作力に差を生じにくくすることが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、フィンの操作性を向上した風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、一の方向とその反対の他の方向とに回動可能に配置され、回動により風向を調整するフィンを備える風向調整装置であって、前記フィンの前記一の方向への回動時と、前記他の方向への回動時と、で生じる前記フィンの回動の摩擦抵抗力が異なるものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、フィンには、回動軸線とは異なる位置に操作力が発生するものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、軟質材により構成されフィンの回動により被摺接部と摺接して摺動抵抗を発生させるスペーサを備えるものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項3記載の風向調整装置において、スペーサは、フィンとケース体との少なくとも一方に設定され、前記フィンの回動により前記フィンと前記ケース体との他方と摺接して摺動抵抗を発生させるものである。
【0011】
請求項5記載の風向調整装置は、請求項3または4記載の風向調整装置において、スペーサは、フィンの一方向への回動時と他方向への回動時とで変形の仕方が異なることによりそれぞれ異なる摺動抵抗を生じさせるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の風向調整装置によれば、例えばフィンの自重により発生する一方向への回動の操作力と他方向への回動時の操作力との差異を、それぞれの回動方向で異なる摩擦抵抗力によって軽減できるので、フィンの操作性を向上できる。
【0013】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、デザインの自由度を向上できる。
【0014】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、スペーサの硬度を制御することにより、摺動抵抗及び摩擦抵抗力を容易に制御できる。
【0015】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項3記載の風向調整装置の効果に加えて、摩擦抵抗力を発生させる機構を容易に構成できる。
【0016】
請求項5記載の風向調整装置によれば、請求項3または4記載の風向調整装置の効果に加えて、スペーサの形状を設定することで摺動抵抗及び摩擦抵抗力を容易に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置の一部を示し、(a)はその斜視図、(b)はその側面図である。
図2】同上風向調整装置のスペーサを示す斜視図であり、(a)はその一例を示し、(b)は他の例を示す。
図3】(a)は同上風向調整装置のフィンを一方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示す側面図、(b)は同上フィンを他方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示す側面図である。
図4】同上風向調整装置の斜視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置のスペーサを示す斜視図であり、(a)はその一例を示し、(b)は他の例を示す。
図6】(a)は同上風向調整装置のフィンを一方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示す側面図、(b)は同上フィンを他方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示す側面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態の一部を示す断面図であり、(a)は同上風向調整装置のフィンを一方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示し、(b)は同上フィンを他方向に回動させた状態でのスペーサと被摺接部との摺接状態を示す。
図8】本発明の第4の実施の形態の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1(a)及び図4において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0020】
風向調整装置1は、ケース体3を備える。ケース体3は、ダクトとも呼ばれる。ケース体3は、筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース体3は、前後方向に筒状に形成されている。図示される例では、ケース体3は、角筒状に形成されている。ケース体3により、内部に通気路5が囲まれている。ケース体3の中心軸に平行な方向が通気路5の通気方向である。本実施の形態において、通気路5の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路5において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0021】
ケース体3は、通気路5の通気方向に所定長を有する。本実施の形態において、ケース体3は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置1は、横型の薄型に形成されている。ケース体3の後端部に、通気路5に空気すなわち空調風を受け入れる受入口6が形成され、ケース体3の前端部に、通気路5から空調風を排出する吹出口7が形成されている。受入口6と吹出口7との間にこれらを連通する通気路5が形成されている。受入口6から吹出口7へと空調風が通過する。受入口6及び吹出口7は、それぞれ横長となっている。なお、ケース体3は、一体的に形成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0022】
ケース体3の内部、すなわち通気路5には、フィン10が配置されている。フィン10は、ルーバなどとも呼ばれ、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて吹出口7から吹き出される空調風の風向を調整する。フィン10は、一主面及び他主面が整流面となる板状に形成されている。フィン10は、回動部11を有する。回動部11が、ケース体3に形成された回動受け部12に回動可能に保持される。そして、フィン10は、ケース体3または通気路5の短手方向、本実施の形態では上下方向に回動することで、風向をケース体3または通気路5の短手方向である上下方向に調整する。つまり、本実施の形態において、フィン10は、左右に回動部11を有し、各回動部11がケース体3の左右両側部に形成された回動受け部12に回動可能に保持され、左右に整流面を有して左右方向に回動可能となっている。本実施の形態では、図1(b)に示すように、各回動部11は、長手方向である左右方向から見たときのフィン10の重心位置Gとなる前後方向の中央部に対し前側に偏っており、特に図示される例では、フィン10の前端部近傍に位置する。図4に示す回動部11と回動受け部12とは、一方が軸部、他方が穴部または凹部である。本実施の形態においては、回動部11が軸部、回動受け部12が丸穴状の穴部または凹部である。
【0023】
本実施の形態では、フィン10は、吹出口7に臨んで位置する。フィン10は、単数でも複数でもよい。本実施の形態では、フィン10はケース体3の短手方向に一つ配置されている。
【0024】
好ましくは、フィン10には操作部15が配置され、フィン10の回動が、操作部15により乗員などの使用者が直接操作可能となっている。操作部15は、操作摘みであり、操作部15の操作方向にフィン10が回動可能である。図示される例では、操作部15は、フィン10とともに上下方向に移動可能であり、この上下方向への移動によりフィン10を上下方向に回動させるようになっている。操作部15は、吹出口7から露出している。本実施の形態において、操作部15は、左右方向に長手状の薄型に形成されている。
【0025】
なお、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、フィン10に対して後側つまり上流側に、単数または複数の上流側フィンが設けられていてもよい。例えば、上流側フィンは、フィン10の回動方向に対して交差または直交する方向に回動可能に配置されている。つまり、本実施の形態の場合、上流側フィンとしては、上下方向に回動軸線を有して左右方向に回動可能なものが用いられる。上流側フィンの回動は、操作部15をフィン10の長手方向に移動させることに連動して操作されるようにしてもよい。操作部15は必須の構成ではない。
【0026】
さらに、ケース体3の内部、すなわち通気路5には、ケース体3に対して回動することでその回動に応じて通気路5を開閉するシャットバルブが設けられていてもよい。
【0027】
そして、本実施の形態の風向調整装置1のように、フィン10を上下方向に回動させる構成の場合、フィン10の重心位置G(図1(b))の軸線上に回動部11がないと、フィン10には回動の操作力に対して自重が影響を与え、フィン10自体が回転力を持つ。すなわち、フィン10の重心位置G(図1(b))を下方に回動させる場合には、フィン10の自重によって回動の操作力がアシストされるため、回動操作が相対的に軽くなり、フィン10の重心位置G(図1(b))を上方に回動させる場合には、フィン10を自重に抗して持ち上げる力が必要になるため、回動操作が相対的に重くなる。特に、回動部11が、フィン10の重心位置Gに対して離れているほど、自重によってフィン10に大きなモーメントが加わる。そのため、フィン10の回動の操作力に上下方向で大きな差異が生じ、良好な操作感を得ることが困難になる場合がある。
【0028】
そこで、本実施の形態では、フィン10の一の方向への回動時と他の方向への回動時とで生じる回動の摩擦抵抗力を異ならせることにより、自重によるフィン10の操作力の不均一を解消している。図示される例では、フィン10は、上方向への回動時の摩擦抵抗力に対し、下方向への回動時の摩擦抵抗力を大きく設定することで、フィン10の自重により生じる操作力の差異を相殺するように構成されている。
【0029】
フィン10の回動に対する摩擦抵抗力は、フィン10の回動部11とは異なる位置に付与される。そのため、フィン10の操作力が、回動軸線(回動部11)とは異なる位置に発生する。例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施の形態では、風向調整装置1は、フィン10の回動に対して摩擦抵抗力を付与する抵抗発生部材であるスペーサ20を備える。
【0030】
スペーサ20は、軟質材及び/または弾性部材により形成されている。スペーサ20は、フィン10の回動により被摺接部と摺接して摺動抵抗を発生させるものである。スペーサ20は、フィン10とケース体3側との少なくとも一方に設けられ、フィン10とケース体3側との他方に設けられた被摺接部に対して、フィン10の回動により摺接する。
【0031】
本実施の形態において、スペーサ20は、フィン10に形成された取付部22に取り付けられている。スペーサ20は、フィン10の回動により動く任意の位置に設けられていてよいが、本実施の形態では、フィン10の上流側である後部に配置されている。すなわち、取付部22は、フィン10の後部に位置する。したがって、スペーサ20は、回動部11から離れた位置に配置される。スペーサ20は、取付部22に取り付けられた状態でフィン10の外殻から少なくとも一部が後部に突出している。
【0032】
スペーサ20が摺接する被摺接部は、ケース体3側に設けられている。本実施の形態において、被摺接部は、ケース体3内の側部に位置する構造部24に設定されている。構造部24は、上下方向に延び、左右方向に小さく形成されていて、通気路5を通過する空調風の流れに影響を与えにくく形成されている。構造部24の前部に、被摺接部25が形成されている。被摺接部25は、フィン10の回動軸線を中心とする円弧面状に形成されている。
【0033】
被摺接部25に対し、スペーサ20の後端部20aが摺接可能となっている。つまり、本実施の形態では、スペーサ20の後端部20aがスペーサ20の摺接端部である。そして、フィン10の一方向への回動時と他方向への回動時とで摺動抵抗すなわち摩擦抵抗力が異なるように設定される。本実施の形態では、フィン10の重心位置Gを上方への回動させる時の摺動抵抗及び摩擦抵抗力が、フィン10の重心位置Gを下方へ回動させる時の摺動抵抗及び摩擦抵抗力より大きくなるように設定されている。
【0034】
一例として、図2(a)、あるいは図2(b)に示す例では、スペーサ20の後端部20aの被摺接部25(図1(a)及び図1(b))に摺接する摺接面積を上側と下側とで異ならせることにより、フィン10の上方への回動と下方への回動とでスペーサ20の下方への変形と上方への変形とを異ならせている。例えば、図2(a)に示す例では、スペーサ20の後端部20aの上側がフィン10(図1(a)及び図1(b))の長手方向である左右方向に相対的に短く、つまり摺接面積が小さく、下側が左右方向に相対的に長く、つまり摺接面積が大きくなるように、スペーサ20が後方から見て台形状に形成されている。また、図2(b)に示す例では、スペーサ20の後端部20aの上側に台形形状または三角形状の切り込みを単数または複数有するように、つまりスペーサ20の後端部20aの上側よりも下側の摺接面積が大きくなるように、スペーサ20が後方から見て単数または複数の台形状または三角形状の山形形状を有するように形成されている。そこで、図1(b)に示すフィン10により空調風を上方に配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を下方へ回動させるとき(図3(a))には、スペーサ20の後端部20aが被摺接部25との摺接により相対的に上方に湾曲する。このとき、スペーサ20の後端部20aの下側は被摺接部25への摺接面積が大きいことで、摺動抵抗、つまり摩擦抵抗力が大きくなる。他方、フィン10により空調風を下方に配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を上方へ回動させるとき(図3(b))には、スペーサ20の後端部20aが被摺接部25との摺接により相対的に下方に湾曲する。このとき、スペーサ20の後端部20aの上側は被摺接部25への摺接面積が小さいことで、摺動抵抗、つまり摩擦抵抗力が小さくなる。
【0035】
このように、第1の実施の形態によれば、フィン10の一の方向への回動時と他の方向への回動時とで生じるフィン10の回動の摩擦抵抗力を異ならせることで、例えばフィン10の自重により発生する一方向への回動の操作力と他方向への回動時の操作力との差異を、それぞれの回動方向で異なる摩擦抵抗力によって軽減できるので、フィン10の操作性を向上できる。
【0036】
フィン10には、回動軸線(回動部11)とは異なる位置に操作力が発生するので、回動軸線(回動部11)に操作力を発生させる構造と比較して、デザインの自由度を向上できる。
【0037】
また、フィン10の回動により被摺接部25と摺接して摺動抵抗を発生させるスペーサ20を軟質材により構成することで、スペーサ20の硬度を制御することにより、摺動抵抗及び摩擦抵抗力を容易に制御できる。
【0038】
しかも、スペーサ20が回動部11から離れて位置し、回動部11に対して遠方の位置で操作力が発生する機構であるため、スペーサ20として、より低硬度の軟質材を低負荷で使用可能となるので、スペーサ20の耐久性の向上や操作フィーリングの向上、及び、スペーサ20の被摺接部25への固着の低減などが期待できる。
【0039】
スペーサ20をフィン10とケース体3との少なくとも一方に設定し、フィン10の回動によりフィン10とケース体3との他方に対してスペーサ20が摺接して摺動抵抗を発生させるので、摩擦抵抗力を発生させる機構を容易に構成できる。
【0040】
また、スペーサ20は、被摺接部25に対する摺接面積をフィン10の回動の一方向と他方向とで異ならせることにより摺動抵抗を異ならせているので、スペーサ20の形状の設定によって被摺接部25に対する摺動抵抗を容易に制御できる。
【0041】
次に、第2の実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
本実施の形態では、スペーサ20が、フィン10の一方向への回動時と他方向への回動時とで変形の仕方が異なる、つまりスペーサ20の変形に方向性を持たせることにより、摺動抵抗及び摩擦抵抗力が異なるように設定されている。本実施の形態では、フィン10の上方向への回動時の摺動抵抗及び摩擦抵抗力が、フィン10の下方向への回動時の摺動抵抗及び摩擦抵抗力より大きくなるように設定されている。
【0043】
例えば、図5(a)、あるいは図5(b)に示す例では、スペーサ20の後端部20aの被摺接部25(図6(a)及び図6(b))の被摺接部25に向かう角度を上側と下側とで変えることにより、フィン10の上方への回動と下方への回動とでスペーサ20の下方への変形と上方への変形とのしやすさを異ならせている。例えば、スペーサ20の後端部20aの上側の角部が下側に対して前側に位置するように、後端面が傾斜状に形成されている。すなわち、スペーサ20の後端部20aは、上側が被摺接部25に対して下方に向かって傾斜状であり、下側が被摺接部25に対して直交する方向となっている。そこで、フィン10により空調風を上方へ配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を下方へ回動させるとき(図6(a))には、スペーサ20の後端部20aの下側が被摺接部25に対して直交方向に当接していることで変形しにくい(変形の逆目となる)ため、摺動抵抗が大きくなる。他方、フィン10により空調風を下方へ配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を上方へ回動させるとき(図6(b))には、スペーサ20の後端部20aの上側が被摺接部25に対し前方に傾斜していることで変形しやすい(変形の順目となる)ため、摺動抵抗が小さくなる。
【0044】
このように、フィン10の一の方向への回動時と他の方向への回動時とで生じるフィン10の回動の摩擦抵抗力が異なるなど、第1の実施の形態と同様の構成を有することで、フィン10の操作性を向上できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
また、スペーサ20は、フィン10の一方向への回動時と他方向への回動時とで変形の仕方が異なることによりそれぞれ異なる摺動抵抗を生じさせるため、スペーサ20の形状を設定することで摺動抵抗及び摩擦抵抗力を容易に制御できる。
【0046】
さらに、図7に示す第3の実施の形態のように、取付部22において、被摺接部25との摺接によるスペーサ20の変形を規制する開口縁部の形状を、上部と下部とで異ならせることにより、フィン10の上方への回動と下方への回動とでスペーサ20の下方への変形のしやすさと上方への変形のしやすさとを異ならせていてもよい。例えば、取付部22の上側の開口縁部22aの少なくとも一部が、下側の開口縁部22bよりも曲率が大きくなるように、つまり急峻に湾曲されるように形成されている。図示される例では、上側の開口縁部22aは直角状に湾曲されているのに対し、下側の開口縁部22bは円弧状に湾曲されている。そこで、フィン10により空調風を上方へ配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を下方へ回動させるとき(図7(a))には、スペーサ20の後端部20aが被摺接部25との摺接により相対的に上方に湾曲する。このとき、スペーサ20の後端部20aは開口縁部22aに当接するので、その変形が規制されてしなりにくい(変形の逆目となる)ため、摺動抵抗すなわち摩擦抵抗力が大きくなる。他方、フィン10により空調風を下方へ配風する場合、つまりフィン10の重心位置Gまたは後端部を上方へ回動させるとき(図7(b))には、スペーサ20の後端部20aが被摺接部25との摺接により相対的に下方に湾曲する。このとき、スペーサ20の後端部20aが開口縁部22bに沿って大きく湾曲可能で、しなりやすい(変形の順目となる)ため、その変形が規制されにくく、摺動抵抗すなわち摩擦抵抗力が小さくなる。
【0047】
このように、フィン10の一の方向への回動時と他の方向への回動時とで生じるフィン10の回動の摩擦抵抗力が異なるなど、各実施の形態と同様の構成を有することで、フィン10の操作性を向上できるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、図8に示す第4の実施の形態のように、スペーサ20は、フィン10の長手方向の一端部、つまり左右少なくともいずれかの側部に配置してもよい。この場合には、構造部24及び被摺接部25もスペーサ20の長手方向の一端部に対向する位置に配置することで、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0049】
なお、上記の各実施の形態の構成は、それぞれ任意に組み合わせて用いてよい。
【0050】
また、フィン10を上下方向に回動させるものについて説明したが、フィン10の一方向への回動時と他方向への回動時とで操作力が異なる任意の風向調整装置1に適用可能である。
【0051】
さらに、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 風向調整装置
3 ケース体
10 フィン
20 スペーサ
25 被摺接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8