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特開2024-79114処理チャンバの洗浄方法および基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079114
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】処理チャンバの洗浄方法および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191850
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC03
5F157AC56
5F157BB23
5F157BB45
5F157BC34
5F157BE12
5F157CB14
5F157CB26
5F157CB27
5F157CC11
5F157DA21
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】開口が狭く奥行きの深い処理空間を有する超臨界処理チャンバでもその内部を効果的に洗浄することのできる技術を提供する。
【解決手段】この発明は、基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、処理空間内で基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置における、処理チャンバの洗浄方法である。本発明に係る処理チャンバの洗浄方法は、洗浄液を貯留した平皿状の容器を支持部により支持させ、支持部を処理空間に収容する工程と、処理空間を超臨界状態の処理流体で満たす工程と、処理流体を排出する工程とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置における、前記処理チャンバの洗浄方法であって、
洗浄液を貯留した平皿状の容器を前記支持部により支持させ、前記支持部を前記処理空間に収容する工程と、
前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たす工程と、
前記処理流体を排出する工程と
を備える、処理チャンバの洗浄方法。
【請求項2】
基板に処理液を供給して前記基板を処理する湿式処理装置、前記基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置、および、前記湿式処理装置から前記超臨界処理装置へ前記基板を搬送する搬送装置を備える基板処理システムにおける、前記処理チャンバの洗浄方法であって、
前記湿式処理装置により、平皿状の容器に洗浄液を貯留させる工程と、
前記搬送装置により前記容器を搬送し、前記支持部に支持させる工程と、
前記超臨界処理装置により、前記支持部を前記処理空間に収容し、前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たした後、前記処理流体を排出する工程と
を備える、処理チャンバの洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液は、前記基板が前記処理空間に収容されるときに前記基板に付着する液体と同種の液体を主成分とする、請求項1または2に記載の処理チャンバの洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液は水を含む、請求項1または2に記載の処理チャンバの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄液が予め加温されている、請求項1または2に記載の処理チャンバの洗浄方法。
【請求項6】
前記基板を処理するために前記処理流体を前記処理空間に供給するときの供給レシピを適用して、前記処理空間を前記処理流体で満たす、請求項1または2に記載の処理チャンバの洗浄方法。
【請求項7】
基板に処理液を供給して前記基板を処理する湿式処理装置と、
前記基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置と、
前記湿式処理装置から前記超臨界処理装置へ前記基板を搬送する搬送装置と、
前記湿式処理装置、前記超臨界処理装置および前記搬送装置を制御して、前記処理チャンバ内を洗浄する洗浄処理を実行させる制御部と
を備え、前記洗浄処理は、
前記湿式処理装置が、平皿状の容器に洗浄液を貯留させ、
前記搬送装置が前記容器を搬送して前記支持部に支持させ、
前記超臨界処理装置が、前記支持部を前記処理空間に収容し、前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たした後、前記処理流体を排出する、
ことにより実行される、基板処理システム。
【請求項8】
前記容器を一時的に保持するストッカを備える、請求項7に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部の処理空間に基板を収容して超臨界処理を行う超臨界装置の処理チャンバの内部を洗浄する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板の表面を各種の処理流体によって処理するものが含まれる。処理流体として薬液やリンス液などの液体を用いる処理は従来から広く行われているが、近年では超臨界流体を用いた処理も実用化されている。特に、表面に微細パターンが形成された基板の処理においては、液体に比べて表面張力が低い超臨界流体はパターンの隙間の奥まで入り込むため効率よく処理を行うことが可能であり、また乾燥時において表面張力に起因するパターン倒壊の発生リスクを低減することができる。
【0003】
例えば本願出願人が先に開示した特許文献1には、超臨界流体を用いて基板の乾燥処理を行う基板処理装置が記載されている。この基板処理装置では、処理対象の基板は平板状のトレイに載置された状態で超臨界処理チャンバに収容される。複数の金属ブロックを組み合わせて構成される超臨界処理チャンバは、側面に水平方向に延びるスリット状の開口を有し、該開口に連通して内部にトレイを収容する処理空間が形成されている。処理流体の使用量を少なくするために、処理空間のサイズはトレイの外形サイズより僅かに大きい程度に抑えられている。つまり、開口から見た処理空間は、上下方向に狭い一方で水平方向に長く、かつ奥行きの深い空間となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-163916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理を繰り返すにつれて処理チャンバ内に汚染物が付着することは不可避であり、したがって定期的に処理チャンバ内部を洗浄する必要がある。ただし、上記のように従来技術における処理空間はスリット状の開口を有する奥行きの深い空間であり、オペレータの手作業による洗浄は容易でない。上記従来技術の処理チャンバは複数のブロックから成っているため、分解して内部を清掃することは一応可能である。
【0006】
しかしながら、高圧に耐えるべく構成された各ブロックの重量は大きく、高い頻度で清掃を行うのに適しているとは言えない。このため、上記のように開口が狭く奥行きの深い処理空間を有する処理チャンバについても、高い頻度で効果的に洗浄することを可能とする技術が求められるが、そのような技術はこれまで確立されるに至っていない。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、開口が狭く奥行きの深い処理空間を有する超臨界処理チャンバであっても、その内部を効果的に洗浄することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置における、前記処理チャンバの洗浄方法である。この態様は、洗浄液を貯留した平皿状の容器を前記支持部により支持させ、前記支持部を前記処理空間に収容する工程と、前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たす工程と、前記処理流体を排出する工程とを備える。
【0009】
また、この発明の一の態様は、基板に処理液を供給して前記基板を処理する湿式処理装置、前記基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置、および、前記湿式処理装置から前記超臨界処理装置へ前記基板を搬送する搬送装置を備える基板処理システムにおける、前記処理チャンバの洗浄方法である。この態様は、前記湿式処理装置により、平皿状の容器に洗浄液を貯留させる工程と、前記搬送装置により前記容器を搬送し、前記支持部に支持させる工程と、前記超臨界処理装置により、前記支持部を前記処理空間に収容し、前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たした後、前記処理流体を排出する工程とを備える。
【0010】
また、この発明の一の態様は、基板に処理液を供給して前記基板を処理する湿式処理装置と、前記基板を支持した支持部を処理チャンバの処理空間に収容し、前記処理空間内で前記基板を超臨界状態の処理流体により処理する超臨界処理装置と、前記湿式処理装置から前記超臨界処理装置へ前記基板を搬送する搬送装置と、前記湿式処理装置、前記超臨界処理装置および前記搬送装置を制御して、前記処理チャンバ内を洗浄する洗浄処理を実行させる制御部とを備える基板処理システムである。ここで、前記洗浄処理は、前記湿式処理装置が、平皿状の容器に洗浄液を貯留させ、前記搬送装置が前記容器を搬送して前記支持部に支持させ、前記超臨界処理装置が、前記支持部を前記処理空間に収容し、前記処理空間を超臨界状態の前記処理流体で満たした後、前記処理流体を排出することにより実行される。
【0011】
このように構成された発明では、処理空間を満たす超臨界状態の処理流体により、高圧下の処理空間の全体に洗浄液が行き渡る。これにより、処理チャンバ内、より具体的には処理空間を形成する壁面を効果的に洗浄することができる。洗浄液は容器に貯留されており、本来は基板を支持する支持部が、基板を容器に置き換えた状態で処理チャンバ内に収容されることで、容器とともに洗浄液が処理空間に持ち込まれる。
【0012】
したがって、洗浄液を導入するための配管等を処理チャンバに接続する必要はなく、しかも洗浄液の組成についても任意に設定することができる。そのため、既存の処理チャンバをそのまま用いることができ、また洗浄液として、その目的や汚れの原因物質に応じた適宜の組成のものを利用することで、優れた洗浄効果を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明によれば、容器に貯留されて処理空間に持ち込まれる洗浄液を、超臨界状態の処理流体により処理空間全体に行き渡らせることで、処理チャンバ内部を効果的に洗浄することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用可能な基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2】この基板処理システムが実行する処理の概要を示すフローチャートである。
図3】湿式処理装置の構成例を示す図である。
図4】超臨界処理装置の構成を示す側面図である。
図5】処理チャンバに対する洗浄処理の内容を示すフローチャートである。
図6】洗浄液容器の構造および支持トレイとの寸法関係を示す図である。
図7】洗浄処理における動作を模式的に示す図である。
図8】洗浄処理における動作を模式的に示す図である。
図9】本発明を適用可能な基板処理システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明を適用可能な基板処理システムの概略構成を示す図である。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面が水平面に相当し、Z方向が鉛直方向に相当している。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0016】
この基板処理システム1は、例えば半導体ウエハなどの各種基板の上面に処理液を供給して基板を湿式処理し、その後基板を乾燥させるための処理システムであり、本発明に係る基板処理方法を実施するのに好適なシステム構成を有している。すなわち、基板処理装置1は、その主要構成として、湿式処理装置2、搬送装置3、超臨界処理装置4、容器ストッカ5および制御部9を備えている。
【0017】
湿式処理装置2、搬送装置3および超臨界処理装置4は、(+X)方向に沿ってこの順番に並んでいる。湿式処理装置2の主要部は処理室200の内部に収容されており、処理室200の(+X)側側面には、基板を出し入れするための開口(図示省略)が設けられ、該開口に対して開閉自在のシャッタ201が設けられている。一方、超臨界処理装置4の主要部は処理室400の内部に収容されており、処理室400の(-X)側側面には基板を出し入れするための開口(図示省略)が設けられるとともに、該開口に対して開閉自在のシャッタ401が設けられている。
【0018】
湿式処理装置2は、被処理基板を受け入れて所定の湿式処理を実行する。処理の内容は特に限定されない。搬送装置3は、湿式処理後の基板を湿式処理装置2から搬出して搬送し、超臨界処理装置4に搬入する。超臨界処理装置4は、搬入された基板に対し超臨界状態の処理流体を用いた乾燥処理(超臨界乾燥処理)を実行する。これらはクリーンルーム内に設置される。したがって、搬送装置3は清浄な大気雰囲気、大気圧下で基板Sを搬送することとなる。
【0019】
容器ストッカ5は、超臨界処理装置4の処理チャンバ内部を洗浄する際に使用される洗浄液容器50を保管する機能を有する。洗浄液容器50を用いた処理チャンバの洗浄処理については、後に詳述する。
【0020】
制御部9は、これらの各装置の動作を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御部9は、CPU91、メモリ92、ストレージ93、およびインターフェース94などを備えている。CPU91は、各種の制御プログラムを実行する。メモリ92は、処理データを一時的に記憶する。ストレージ93は、CPU91が実行する制御プログラムを記憶する。インターフェース94は、ユーザや外部装置と情報交換を行う。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し、装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0021】
CPU91が所定の制御プログラムを実行することにより、制御部9には、湿式処理装置2の動作を制御する湿式処理制御部95、搬送装置3の動作を制御する搬送制御部96、超臨界処理装置4の動作を制御する超臨界処理制御部97などの機能ブロックがソフトウェア的に実現される。なお、これらの機能ブロックの各々は、その少なくとも一部が専用ハードウェアにより構成されてもよい。
【0022】
本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。しかしながら、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また基板の形状についても各種のものを適用可能である。
【0023】
図2はこの基板処理システムにより実行される処理の概要を示すフローチャートである。この基板処理システム1は、処理対象の基板S(図3図4)を受け入れて、処理液を用いた湿式処理および超臨界処理流体を用いた超臨界乾燥処理を順番に実行する。具体的には以下の通りである。処理対象の基板Sは、基板処理システム1を構成する湿式処理装置2に収容される(ステップS101)。基板Sの搬入は、外部の搬送装置により直接行われてもよく、また外部の搬送手段から搬送装置3を介して搬入される態様でもよい。
【0024】
湿式処理装置2は、所定の処理液を用いて基板Sに対し湿式処理を施す(ステップS102)。その後、例えばIPA(イソプロピルアルコール)などの有機溶剤により液膜を表面に形成する液膜形成処理が行われる(ステップS103)。例えば基板Sの表面に微細パターンが形成されている場合、基板Sに残留付着している液体の表面張力によってパターンの倒壊が生じるおそれがある。また、不完全な乾燥によって基板Sの表面にウォーターマークが残留する場合がある。また、基板S表面が外気に触れることで酸化等の変質を生じる場合がある。このような問題を未然に回避するために、基板Sの表面(パターン形成面)を液体で覆った状態で搬送することがある。
【0025】
例えば処理液が水を主成分とするものである場合には、これより表面張力が低く、かつ基板に対する腐食性が低い液体、例えばIPAやアセトン等の有機溶剤により液膜を形成した状態で、搬送が実行される。すなわち、基板Sは、水平状態に支持され、かつその上面に液膜が形成された状態で、搬送装置3により、湿式処理装置2から搬出され(ステップS104)、さらに搬送されて最終的に超臨界処理装置4に搬入される(ステップS105)。
【0026】
超臨界処理装置4は、搬送されてきた基板Sに対し超臨界乾燥処理を施す(ステップS106)。超臨界状態の処理流体は表面張力が極めて低く流動性が高い。そのため、基板Sの表面に形成された微細パターンの内部まで入り込み、パターン内部の液体を置換する。例えば超臨界処理流体として二酸化炭素を用いた場合、有機溶剤を良く溶かすため、液膜を形成していた液体を効率よく置換し基板表面から除去することができる。
【0027】
超臨界処理流体は、液相を介することなく気化して排出される。基板Sに付着していた液体は超臨界処理流体により置換されて排出され、処理流体も排出されることで、乾燥状態の基板Sが得られる。この過程で気液界面が形成されないため、表面張力によるパターン倒壊が生じるのを回避することができる。処理後の基板Sは、搬送装置3により超臨界処理装置4から搬出され、後工程へ受け渡される(ステップS107)。後工程の内容は任意である。
【0028】
上記した一連の処理を実行するための基板処理システム1の各構成要素の構造につき、より具体的に説明する。
【0029】
搬送装置3には、図示を省略する伸縮・回動自在のアームの先端にハンド31が設けられたセンターロボット30が設けられる。破線矢印で示すように、センターロボット30はZ軸回りに回動自在となっている。ハンド31は基板の下面に部分的に当接することで基板を支持可能である。図1に点線で示すように、ハンド31はカバー32の内部に格納されており、必要に応じてカバー32から外部へ進出することで、湿式処理装置2、超臨界装置4および容器ストッカ5のそれぞれに対し進退移動自在となっている。これにより、湿式処理装置2および超臨界装置4のそれぞれに対して、基板の搬入および搬出を行うことができる。センターロボット30の動作は制御部9の搬送制御部96により制御される。
【0030】
また、センターロボット30は、搬送制御部96からの制御指令に応じて容器ストッカ5にアクセスして、容器ストッカ5から洗浄液容器50を搬出し、また容器ストッカ5へ洗浄液容器50を搬入する。
【0031】
この種のセンターロボットとしては、本願出願人が先に開示した特開2020-188228号公報に記載のものを好適に適用可能である。センターロボット31の具体的な構造については当該公報を参照することができるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0032】
図3は湿式処理装置の構成例を示す図である。より具体的には、図3は湿式処理装置2の全体構成を示す側面図である。この湿式処理装置2は、基板の上面に処理液を供給して基板を処理する装置である。湿式処理装置2の動作は、制御部9の湿式処理制御部95により制御される。
【0033】
湿式処理装置2は、基板Sの上面Saに処理液を供給して基板Sの表面処理や洗浄等の湿式処理を行う。この目的のために、湿式処理装置2は、処理室200の内部に、基板保持部21、スプラッシュガード22、処理液供給部23,24を備えている。これらの動作は制御部9に設けられる湿式処理制御部95より制御される。
【0034】
基板保持部21は、基板Sとほぼ同等の直径を有する円板状のスピンチャック211を有し、スピンチャック211の周縁部には複数のチャックピン212が設けられている。チャックピン212が基板Sの周縁部に当接して基板Sを支持することにより、スピンチャック211はその上面から離間させた状態で基板Sを水平姿勢に保持することができる。
【0035】
スピンチャック211はその下面中央部から下向きに延びる回転支軸213により上面が水平となるように支持されている。回転支軸213は処理チャンバ200の底部に取り付けられた回転機構214により回転自在に支持されている。回転機構214は図示しない回転モータを内蔵しており、制御部9からの制御指令に応じて回転モータが回転することで、回転支軸213に直結されたスピンチャック211が1点鎖線で示す鉛直軸周りに回転する。図2においては上下方向が鉛直方向である。これにより、基板Sが水平姿勢のまま鉛直軸周りに回転される。
【0036】
基板保持部21を側方から取り囲むように、スプラッシュガード22が設けられる。スプラッシュガード22は、スピンチャック211の周縁部を覆うように設けられた概略筒状のカップ221と、カップ221の外周部の下方に設けられた液受け部222とを有している。カップ221は制御部9からの制御指令に応じて昇降する。カップ221は、図3に実線で示すようにカップ221の上端部がスピンチャック211に保持された基板Sの周縁部よりも下方まで下降した下方位置と、図3に点線で示すようにカップ221の上端部が基板Sの周縁部よりも上方に位置する上方位置との間で昇降移動する。
【0037】
図3に実線で示すようにカップ221が下方位置にあるときには、スピンチャック211に保持される基板Sがカップ221外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック211への基板Sの搬入および搬出時にカップ221が障害となることが防止される。
【0038】
また、図3に点線で示すようにカップ221が上方位置にあるときには、スピンチャック211に保持される基板Sの周縁部を取り囲むことになる。これにより、後述する液供給時に基板Sの周縁部から振り切られる処理液が処理室200内に飛散することが防止され、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部から振り切られる処理液の液滴はカップ221の内壁に付着して下方へ流下し、カップ221の下方に配置された液受け部222により集められて回収される。複数の処理液を個別に回収するために、複数段のカップが同心に設けられてもよい。
【0039】
処理液供給部23は、処理室200の底部に固定されたベース231に対し回動自在に設けられた回動支軸232から水平に伸びるアーム233の先端に、ノズル234が取り付けられた構造を有している。回動支軸232が制御部9からの制御指令に応じて回動することによりアーム233が揺動する。これにより、アーム233先端のノズル234が、基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、基板S上方の処理位置との間を移動する。
【0040】
ノズル234は処理液供給源238に接続されており、処理液供給源238から適宜の処理液が送出されると、ノズル234から基板Sに向けて処理液が吐出される。スピンチャック211が比較的低速で回転することで基板Sを回転させながら、基板Sの回転中心の上方に位置決めされたノズル234から処理液を供給することで、基板Sの上面Saが処理液により処理される。処理液としては、現像液、エッチング液、洗浄液、リンス液等の各種の機能を有する液体を用いることができ、その組成は任意である。また複数種の処理液が組み合わされて処理が実行されてもよい。
【0041】
もう1組の処理液供給部24も、上記した第1の処理液供給部23と対応する構成を有している。すなわち、第2の処理液供給部24は、ベース241、回動支軸242、アーム243、ノズル244等を有しており、これらの構成は、第1の処理液供給部23において対応するものと同等である。回動支軸242が制御部9からの制御指令に応じて回動することによりアーム243が揺動する。アーム243先端のノズル244は、基板Sの上面Saに対して、処理液供給源248から送出される処理液を供給する。
【0042】
この湿式処理装置2において、第2の処理液供給部24は、湿式処理後の基板Sに対して乾燥防止用の液膜を形成する目的に使用される。すなわち、湿式処理後の基板Sは超臨界処理装置4に搬送されて超臨界乾燥処理を受けるが、搬送の間に基板Sの表面が露出して酸化したり、表面に形成された微細パターンが倒壊したりするのを防止するために、基板Sは表面がパドル状液膜で覆われた状態で搬送される。
【0043】
液膜を構成する液体としては、湿式処理に用いられる処理液の主成分である水よりも表面張力の小さい物質、例えばイソプロピルアルコール(IPA)またはアセトンなどの有機溶媒が用いられる。
【0044】
ここでは、湿式処理装置2に2組の処理液供給部が設けられているが、処理液供給部の設置数やその構造、機能についてはこれに限定されるものではない。例えば、処理液供給部は1組のみであってもよく、また3組以上設けられてもよい。また、1つの処理液供給部が複数のノズルを備えてもよい。例えば1つのアームの先端に複数のノズルが設けられてもよい。また、上記のようにノズルが所定の位置に位置決めされた状態で処理液を吐出する態様のみでなく、例えば基板Sの上面Saに沿ってノズルが走査移動しながら処理液を吐出する態様が含まれてもよい。また、気体を吐出するノズルを有する気体供給部がさらに備えられてもよい。また処理液供給部に設けられた複数のノズルのうち少なくとも1つが気体を吐出する態様であってもよい。
【0045】
図4は超臨界処理装置の構成を示す側面図である。超臨界処理装置4は、湿式処理後の基板Sに対し超臨界状態の処理流体を用いた乾燥処理を施す装置である。より具体的には、超臨界処理装置4は、湿式処理後の基板Sを受け入れて、超臨界状態の処理流体によって基板Sに残留する液体を置換した後、処理流体を排出することで、最終的に基板Sを乾燥状態に至らせるための装置である。
【0046】
超臨界処理装置4は、処理室400内に設けられた処理ユニット41および移載ユニット43と、供給ユニット45とを備えている。処理ユニット41は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものである。移載ユニット43は、搬送装置3により搬送されてくる湿式処理後の基板Sを受け取って処理ユニット41に搬入し、また処理後の基板Sを処理ユニット41から搬送装置3に受け渡す。供給ユニット45は、処理に必要な化学物質、動力およびエネルギー等を、処理ユニット41および移載ユニット43に供給する。これらの動作は制御部9、特に超臨界処理制御部97により制御される。
【0047】
処理ユニット41は、台座411の上に処理チャンバ412が取り付けられた構造を有している。処理チャンバ412は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって処理空間SPを構成している。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ412の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口421が形成されている。開口421を介して、処理空間SPと外部空間とが連通している。処理空間SPの断面形状は、開口421の開口形状と概ね同じである。すなわち、処理空間SPは、X方向に長くZ方向に短い断面形状を有し、Y方向に延びる空洞である。
【0048】
処理チャンバ412の(-Y)側側面には、開口421を閉塞するように蓋部材413が設けられている。蓋部材413が処理チャンバ412の開口421を閉塞することにより、気密性の処理容器が構成される。これにより、内部の処理空間SPで基板Sに対する高圧下での処理が可能となる。蓋部材413の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ415が水平姿勢で取り付けられている。支持トレイ415の上面は、基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材413は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0049】
蓋部材413は、供給ユニット45に設けられた進退機構453により、処理チャンバ412に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構453は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有している。このような直動機構が蓋部材413をY方向に移動させる。進退機構453は制御部9からの制御指令に応じて動作する。
【0050】
蓋部材413が(-Y)方向に移動することにより処理チャンバ412から離間し、点線で示すように支持トレイ415が処理空間SPから開口421を介して外部へ引き出されると、支持トレイ415へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ415への基板Sの載置、および支持トレイ415に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材413が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ415は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ415に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ415とともに処理空間SPに搬入される。
【0051】
蓋部材413が(+Y)方向に移動し開口421を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。蓋部材413の(+Y)側側面と処理チャンバ412の(-Y)側側面との間にはシール部材422が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。シール部材422は例えばゴム製である。また、図示しないロック機構により、蓋部材413は処理チャンバ412に対して固定される。このように、蓋部材413は、開口421を閉塞して処理空間SPを密閉する閉塞状態(実線)と、開口421から大きく離間して基板Sの出し入れが可能となる離間状態(点線)との間で切り替えられる。
【0052】
処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。この実施形態では、供給ユニット45に設けられた流体供給部457が、処理流体として、超臨界処理に利用可能な物質の処理流体、例えば二酸化炭素を送出し、さらに処理流体を処理チャンバ412内で加圧することで超臨界状態に至らせる。処理流体は気体または液体の状態で処理ユニット41に供給される。二酸化炭素は、比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。二酸化炭素が超臨界状態となる臨界点は、気圧(臨界圧力)が7.38MPa、温度(臨界温度)が31.1℃である。
【0053】
処理流体が処理空間SPに充填され、処理空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、処理空間SPは超臨界状態の処理流体で満たされる。こうして基板Sが処理チャンバ412内で超臨界流体により処理される。供給ユニット45には流体回収部455が設けられており、処理後の流体は流体回収部455により回収される。流体供給部457および流体回収部455は、超臨界処理制御部97により制御されている。
【0054】
処理空間SPは、支持トレイ415およびこれに支持される基板Sを受け入れ可能な形状および容積を有している。すなわち、処理空間SPは、水平方向には支持トレイ415の幅よりも広く、鉛直方向には支持トレイ415の高さよりも大きい概略矩形の断面形状と、支持トレイ415を受け入れ可能な奥行きとを有している。このように処理空間SPは支持トレイ415および基板Sを受け入れるだけの形状および容積を有している。ただし、支持トレイ415および基板Sと、処理空間SPの内壁面との間の隙間は僅かである。したがって、処理空間SPを充填するために必要な処理流体の量は比較的少なくて済む。
【0055】
流体供給部457は、基板Sの(+Y)側端部よりもさらに(+Y)側で、処理空間SPに対して処理流体を供給する。一方、流体回収部55は、基板Sの(-Y)側端部よりもさらに(-Y)側で、処理空間SPのうち基板Sよりも上方の空間および支持トレイ415よりも下方の空間を流通してくる処理流体を排出する。これにより、処理空間SP内では、基板Sの上方と支持トレイ415の下方とのそれぞれに、(+Y)側から(-Y)側に向かう処理流体の層流が形成されることになる。
【0056】
制御部9の超臨界処理制御部97は、図示しない検出部の検出結果に基づいて処理空間SP内の圧力および温度を特定し、その結果に基づき流体供給部457および流体回収部455を制御する。これにより、処理空間SPへの処理流体の供給および処理空間SPからの処理流体の排出が適切に管理され、処理空間SP内の圧力および温度が予め定められた処理レシピに応じて調整される。
【0057】
移載ユニット43は、搬送機構3と支持トレイ415との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット43は、本体431と、昇降部材433と、ベース部材435と、複数のリフトピン437とを備えている。昇降部材433はZ方向に延びる柱状の部材であり、図示しない支持機構により、本体431に対してZ方向に移動自在に支持されている。昇降部材433の上部には、略水平の上面を有するベース部材435が取り付けられている。ベース部材435の上面から上向きに、複数のリフトピン437が立設されている。リフトピン437の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを水平姿勢で安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン437が設けられることが望ましい。
【0058】
昇降部材433は、供給ユニット45に設けられた昇降機構451により昇降移動可能となっている。具体的には、昇降機構451は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が昇降部材433をZ方向に移動させる。昇降機構451は制御部9からの制御指令に応じて動作する。
【0059】
昇降部材433の昇降によりベース部材435が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン437が上下動する。これにより、移載ユニット43と支持トレイ415との間での基板Sの受け渡しが実現される。より具体的には、図4に点線で示すように、支持トレイ415がチャンバ外へ引き出された状態で基板Sが受け渡される。この目的のために、支持トレイ415にはリフトピン437を挿通させるための貫通孔417が設けられている。ベース部材435が上昇すると、リフトピン437の上端は貫通孔417を通して支持トレイ415の上面よりも上方に到達する。この状態で、センターロボット30により搬送されてくる基板Sが、センターロボット30のハンド31からリフトピン437に受け渡される。リフトピン437が下降することにより、基板Sはリフトピン437から支持トレイ415へ受け渡される。基板Sの搬出は、上記と逆の手順により行うことができる。
【0060】
処理空間SPの寸法の一例は次の通りである。例えば基板Sが直径300ミリメートルまでの半導体ウエハである場合、開口高さは20ないし30ミリメートル、開口幅は300ミリメートルより少し大きな値、処理空間SPの奥行きは400ミリメートル程度とすることができる。
【0061】
処理空間SPについては、処理を繰り返すことにより内部に汚れが蓄積してくるため、定期的な清掃が必要である。このように開口の幅が広く高さが小さく、かつ奥行きの深い処理空間SPを清掃することは容易でない。そこで、この実施形態では、物理的な清掃に代えて、処理空間SPへ外部から洗浄液を導入して処理チャンバ412の内部、より具体的には処理空間SPを構成する処理チャンバ412の内壁面の洗浄を行う。
【0062】
図5は処理チャンバに対する洗浄処理の内容を示すフローチャートである。この実施形態の洗浄処理では、洗浄処理のために用意された洗浄液容器(以下、単に「容器」という場合がある)50が、センターロボット30により、容器ストッカ5から湿式処理装置2へ移送される(ステップS201)。湿式処理装置2は、搬入された洗浄液容器50に対し適宜の洗浄液を供給する(ステップS202)。こうして洗浄液を貯留した洗浄液容器50は、センターロボット30により湿式処理装置2から搬出され(ステップS203)、超臨界処理装置4の処理チャンバ412に搬入される(ステップS204)。
【0063】
処理空間SPが密閉された後、処理空間SPに対し、流体供給部457から処理流体が供給され、処理流体は処理空間SP内で超臨界状態となる。これにより、表面張力の低下した処理流体に洗浄液が溶け込み、洗浄液は高圧下の処理空間SP内に広く行き渡る。その結果、処理空間SPを構成する処理チャンバ412の内壁面が効果的に洗浄される(ステップS205)。本明細書では、このように洗浄液が導入された処理空間SPを超臨界状態の処理流体で満たすことにより処理チャンバ412内部を洗浄する処理を、「超臨界洗浄処理」と称することがある。
【0064】
処理空間SPを超臨界処理流体で満たす状態を一定期間継続した後、処理流体は処理空間SPから排出され流体回収部455により回収される。このとき、処理チャンバ412の内壁面から離脱した汚染物および洗浄液も処理流体とともに排出され、これにより処理チャンバ412内部が清浄化される。蓋部材413が(-Y)方向へ移動することで洗浄液容器50が外部へ引き出され、センターロボット30が洗浄液容器50を取り出して容器ストッカ5へ戻すことにより(ステップS206)、洗浄処理は終了する。
【0065】
超臨界洗浄処理における処理流体(二酸化炭素)の供給および排出の態様、すなわち給排レシピについては、例えば基板Sに対する超臨界乾燥処理における給排レシピと同様とすることができる。こうすることで、洗浄処理のための特別な給排レシピを用意する必要はなくなる。例えば、気相または液相で処理空間SPに導入された処理流体が処理空間SP内で加圧されて超臨界状態に至る供給レシピと、処理空間SPを減圧して処理流体を超臨界状態から気相に相変化させて排出する排出レシピとを組み合わせた給排レシピを適用することができる。
【0066】
なお、超臨界乾燥処理では、搬入時に基板Sに付着している液体を処理流体で置換し処理空間SP外へ排出する必要があることから、超臨界状態が維持される期間は比較的長く設定される。一方、超臨界洗浄処理ではこの期間はより短くてもよい。また、超臨界乾燥処理では、基板Sに形成された微細パターンの倒壊を防止するため、処理流体は超臨界状態から液相を介することなく気化するよう排出レシピが設定されるが、超臨界洗浄処理ではパターン倒壊の問題を考慮する必要がない。したがって、例えば処理流体が液相の状態で排出されてもよい。このようにすると、処理後の汚染物を含んだ洗浄液を液相の処理流体とともに効率的に排出することができる。
【0067】
図6は洗浄液容器の構造および支持トレイとの寸法関係を示す図である。図6(a)に示すように、洗浄液容器50は、概略円盤状の外形を有し、平坦な底面51の外周部が上向きに延びて側壁面52をなす平皿状の容器である。この底面51および側壁面52に囲まれた空間が、洗浄液を貯留するための貯留空間として機能する。つまり、洗浄処理においては、洗浄液が洗浄液容器50の貯留空間に貯留された状態で処理空間SPに搬入される。
【0068】
平板状の部材、例えば基板Sに液膜を形成することによっても洗浄液の搬入は可能であるが、このような専用の容器を用いることで、より大量の洗浄液を確実に処理空間SPに持ち込むことができ、これにより洗浄効果を高めることができる。また、洗浄のために基板が消費されることを回避できる。また、洗浄液の組成に応じた材料で容器を形成することができる。
【0069】
洗浄液容器50の外径は、基板Sの外径(例えば直径300ミリメートル)とほぼ同じである。また高さは基板Sの厚さよりは少し大きく、かつ処理空間SPに支障なく収容できる寸法であり、例えば1ないし2ミリメートル程度とすることができる。洗浄液容器50の素材としては、樹脂材料、ガラス、ステンレス鋼等を用いることができるほか、例えば上記厚みに切り出されたシリコンウェハを切削加工して用いることも可能である。
【0070】
図6(a)に示すように、支持トレイ415の上面には、基板Sを水平姿勢で収容可能な平面サイズを有する凹部415aが形成されている。また、凹部415aの周縁部には、基板Sを凹部415aの上面から離間した状態で保持するための支持ピン416が複数(この事例では3個)配設されている。したがって、支持トレイ415に基板Sが載置されるとき、図3(b)左欄の上面図および断面図に示すように、基板Sは、支持ピン416の上面に当接することで凹部415aの上面から僅かに離間した状態で、凹部415aの内部に収容され水平姿勢に支持される。
【0071】
洗浄処理では、基板Sに代えて洗浄液容器50が支持トレイ415に載置される。洗浄容器50の側壁面52のうち支持ピン416の配設位置に対応する位置には、切り欠き部53が設けられることが好ましい。そして、図6(b)右欄の上面図および断面図に示すように、切り欠き部53を支持ピン416の位置に対応させて洗浄液容器50を支持トレイ415に載置することで、洗浄液容器50の底面を凹部415aの上面に当接させた状態で凹部415aに収容することができる。このような構造により、処理空間SPに収容可能な範囲で洗浄液容器50の高さを最大化して、より多くの洗浄液を貯留することが可能となる。
【0072】
以下では、上記した洗浄処理の一連の流れにおける装置各部の動作について、図7および図8を参照して説明する。図7は洗浄処理における湿式処理装置およびセンターロボットの動作を模式的に示す図であり、図8は洗浄処理における超臨界処理装置およびセンターロボットの動作を模式的に示す図である。
【0073】
洗浄処理のステップS201では、図7(a)に示すように、センターロボット30のハンド31が、空の洗浄液容器50を保持して搬送し、湿式処理装置2のスピンチャック211に載置する。洗浄液容器50が基板Sとほぼ同じ直径を有しているため、洗浄液容器50は、スピンチャック211の外周部に設けられたチャックピン212によって支持される。
【0074】
この状態から、図7(b)に示すように、処理液供給部の1つ(この例では第1の処理液供給部23)が作動し、ノズル234が洗浄液容器50の上方に移動してくる。そして、図7(c)に示すように、ノズル234から洗浄液Lcが吐出され、洗浄液容器50の貯留空間に貯留される(ステップS202)。所定量の洗浄液が注入された後、洗浄液容器50は、図7(d)に示すように、再びセンターロボット30のハンド31によって支持されつつ湿式処理装置2から搬出される(ステップS203)。なおここでは、湿式処理の場合と同様に、処理の進行に伴いスプラッシュガード22のカップ221が昇降しているが、カップ221は下方位置に位置決めされた状態であってもよい。
【0075】
センターロボット30は、洗浄液容器50を超臨界処理装置4に搬送する。そして、図8(a)および(b)に示すように、洗浄液容器50はハンド31からリフトピン437に受け渡される。図8(c)に示すように、リフトピン437が下降することで洗浄液容器50は支持トレイ415に載置され、蓋部材413が(+Y)方向に移動することで、洗浄液容器50は支持トレイ415とともに処理空間SPに収容される。このようにして、洗浄液Lcは処理チャンバ412内の処理空間SPに搬入される(ステップS204)。そして、処理空間SPに処理流体が供給され超臨界状態となることで、処理チャンバ412内部の洗浄が実現される(ステップS205)。なお、図8では簡略化のため、支持トレイ415の平坦な上面に容器50が載置されるように示されているが、実際には、図6(a)に示すように支持トレイ415上面に設けられた凹部415aに容器50が収容される。
【0076】
ここでは、湿式処理装置2において第1の処理液供給部23から洗浄液Lcが供給されるものとしたが、洗浄液Lcを供給することに特化された処理液供給部が別途設けられてもよい。また、1つのまたは複数の処理液供給源から複数種の液体が供給され、これらが洗浄液容器50内で混合されることで洗浄液として機能するように構成されてもよい。
【0077】
洗浄液としては、処理流体(この例では二酸化炭素)に溶け込んで洗浄作用を発揮する各種のものを用いることができる。例えば、処理空間SPに残留する有機物を除去する目的には、各種の有機溶剤、例えばIPAやアセトン等を用いることができる。例えば洗浄液Lcを超臨界乾燥処理において基板Sに形成される液膜を構成する液体と同種の液体を主成分とするものとすれば、洗浄液容器50に洗浄液Lcを注入するために新たな配管や供給源を湿式処理装置2に設ける必要はない。
【0078】
洗浄処理は処理空間SPに基板が存在しない状態で実行されるから、基板の存在下では使用することのできない液体を導入することが可能である。例えば洗浄液として水を主成分とするものを用いた場合には、水と二酸化炭素との混合によって生じる炭酸が弱酸性を示すため、水溶性の汚染物質のほか、アルカリ性を示す金属等の無機物を洗浄除去する効果を奏する。処理空間SPに各種の流体を供給する配管に水が残留すると腐食の原因となり得る。このため、一般的には、水を供給するための配管を処理チャンバ412に接続することは必ずしも好ましいことではない。しかしながら、この実施形態では洗浄液が配管を経由せず容器50に貯留された状態で処理空間SPに搬入されるため、腐食の問題を考えることなく洗浄液の組成を選定することが可能である。
【0079】
洗浄効果を高めるために、洗浄液には界面活性剤等の添加剤が添加されてもよい。また、同じ目的のために、洗浄液は適宜の液温まで加温されたものであってもよい。洗浄液容器50への洗浄液の注入は、湿式処理装置2で行われる必要は必ずしもない。ただし、基板Sを処理するために各種の処理液を供給する機能が付与された湿式処理装置2を用いれば、容器50に貯留される洗浄液Lcの組成や液温を精密に調整することが可能であり、良好かつ安定した洗浄効果を得ることが可能となる。
【0080】
洗浄処理は、複数枚の基板Sに対して順次処理が行われる間に、所定の間隔をおいて定期的に実行されることが好ましい。例えば基板Sの処理枚数が規定値に達する度毎に、洗浄処理を実行することができる。また、処理対象となる基板Sの種類が変更されるときに、それに先立って実行するようにしてもよい。
【0081】
なお、上記実施形態の基板処理システム1は、湿式処理装置2と超臨界処理装置4とをそれぞれ1基ずつ備えるものである。しかしながら、他の基板処理システムでは、これらをそれぞれ複数備えるものもある。そのような基板処理システムにも本発明を適用することが可能である。
【0082】
図9は本発明を適用可能な基板処理システムの他の構成例を示す図である。この基板処理システム12は、2基の湿式処理装置2A,2Bと、2基の超臨界処理装置4A,4Bとを備えるものである。なお、これらがさらにZ方向に多段積みされていてもよい。
【0083】
2基の湿式処理装置2A,2Bは、いずれも上記した湿式処理装置2と同様の構成を有している。また、2基の超臨界処理装置4A,4Bは、いずれも上記した超臨界処理装置4と同様の構成を有している。そして、これらに取り囲まれた空間に、センターロボット30が設けられている。これらの構成および機能については、上記実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0084】
これらの処理装置の(-X)方向側には、インデクサ部6が設けられている。インデクサ部6は、基板Sを収容するための格納容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部61と、この容器保持部61に保持された格納容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板を格納容器Cに収納したりするためのインデクサロボット62とを備えている。各格納容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0085】
インデクサロボット62は、装置筐体に固定されたベース部621と、ベース部621に対し鉛直軸周りに回動可能に設けられた多関節アーム622と、多関節アーム622の先端に取り付けられたハンド623とを備える。ハンド623はその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0086】
この基板処理システム12では、格納容器Cに収容された未処理の基板Sがインデクサロボット62により取り出され、インデクサロボット62は基板Sをセンターロボット30に受け渡す。基板Sに対する処理については上記した通りであるが、湿式処理装置および超臨界処理装置がそれぞれ複数あることから、センターロボット30のアクセス先は必要に応じて変化する。
【0087】
処理後の基板Sはセンターロボット30からインデクサロボット62に受け渡され、インデクサロボット62は基板Sを格納容器Cに収容する。このようにして、格納容器Cに保持された基板Sが順次処理される。
【0088】
センターロボット30の(+X)側に容器ストッカ5Aが設けられ、洗浄液容器50はこの容器ストッカ5Aに保管されている。そして、必要に応じて洗浄処理が実行されるときには、センターロボット30が容器ストッカ5Aから洗浄液容器50を取り出し、上記と同様に、湿式処理装置2A等および超臨界処理装置4A等へ順次搬送する。洗浄液容器50は1つだけ設けられてもよく、また複数設けられてもよい。例えば、湿式処理装置と超臨界処理装置との組の数と同数の洗浄液容器50が用意されてもよい。また、これらの装置が多段積みされているとき、その段数と同数の洗浄液容器50が用意されてもよい。
【0089】
以上説明したように、上記実施形態においては、湿式処理装置2、搬送装置3(センターロボット30)、超臨界処理装置4、容器ストッカ5および制御部9を備える基板処理システム1と、湿式処理装置2A,2B、センターロボット30、超臨界処理装置4A,4B、洗浄液ストッカ5Aおよび制御部9を備える基板処理システム12とが、それぞれ本発明の「基板処理システム」に相当している。また、洗浄液容器50が本発明の「容器」として、また容器ストッカ5,5Aが本発明の「ストッカ」として、それぞれ機能している。また、支持トレイ415が本発明の「支持部」として機能している。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の洗浄処理では、1種類の洗浄液を用いた超臨界洗浄処理が1回実行される。しかしながら、必要に応じて、同種の洗浄液を用いた複数回の超臨界洗浄処理が実行されてもよく、また洗浄液の種類を異ならせて複数回の超臨界洗浄処理が実行されてもよい。さらに、超臨界洗浄処理の前または後に、適宜の前工程または後工程が追加されてもよい。
【0091】
また、上記した超臨界処理装置4の処理チャンバ412はその側面に水平方向を長手方向とするスリット状開口を有するものである。しかしながら、本発明に係る洗浄処理は、このような処理チャンバの構造や開口形状に限定されず、種々のものに対して適用可能である。例えば、比較的大きな開口を有し手作業による清掃作業が可能な処理チャンバに対しても、本発明の洗浄方法を適用することが可能である。
【0092】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【0093】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る処理チャンバの洗浄方法では、洗浄液は、基板が処理空間に収容されるときに基板に付着する液体と同種の液体を主成分とすることができる。このような液体としては、処理流体によく溶け込むものが選定されているから、洗浄液についても同種の液体を用いることで、処理空間の全体に洗浄液を行き渡らせて、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0094】
また例えば、洗浄液として水を含むものとした場合には、水溶性の汚染物質を効果的に除去することができる。特に処理流体が二酸化炭素である場合には、水と二酸化炭素との混合により生じる炭酸が弱酸性を示すため、アルカリ性の汚れに対して優れた洗浄効果が得られる。
【0095】
また例えば、洗浄液が予め加温されていてもよい。これにより、さらに洗浄効果を高めることが可能である。
【0096】
また例えば、基板を処理するために処理流体を処理空間に供給するときの供給レシピを適用して、処理空間を処理流体で満たすように構成されてもよい。このようにすれば、処理チャンバの洗浄を目的とする特別なレシピを準備する必要はない。つまり、基板に対し超臨界処理を実行するのと同じプロセスで、処理チャンバ内の洗浄を実現することができる。
【0097】
また、本発明に係る基板処理システムでは、容器を一時的に保持するストッカが備えられてもよい。基板に対する処理を実行する際には、洗浄液を貯留する容器は必要とされない。これを保管するためのストッカを設けておくことで、搬送装置が容器を保持しておく必要はなくなり、基板に対する処理と処理チャンバの洗浄とを両立させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明は、超臨界処理チャンバ内で基板を処理する基板処理技術全般に適用することができる。特に、半導体基板等の基板を超臨界流体によって乾燥させる基板乾燥処理を実行するための超臨界処理チャンバの内部を洗浄する目的に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,12 基板処理システム
2,2A,2B 湿式処理装置
3 搬送装置
4,4A,4B 超臨界処理装置
5,5A 容器ストッカ(ストッカ)
9 制御部
30 搬送ロボット
31 ハンド
50 洗浄液容器(容器)
412 処理チャンバ
415 支持トレイ(支持部)
S 基板
SP 処理空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9