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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079119
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/04 20060101AFI20240604BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20240604BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240604BHJP
   F16L 59/12 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F16L59/04
H01M10/658
H01M10/625
F16L59/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191855
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直己
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB12
3H036AB23
3H036AB24
3H036AC03
3H036AD09
3H036AE07
3H036AE13
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】電池の通常時や異常時における熱伝達抑制性能や、電池セル間からの脱落するのを抑える保持能力に優れ、更には電池セル間の間隔が変わっても熱伝達抑制性能を低下させることなく対応可能な熱伝達抑制シート、及び該熱伝達抑制シートを有する組電池を提供する。
【解決手段】熱伝達抑制シート1は、無機粒子を含む基材10の表面に、収縮性の有機材料を含む層を有し、断面形状において少なくとも一部が湾曲しており、かつ、湾曲している部分において、内弧面5の表面における面方向の収縮量が、外弧面6の表面における面方向の収縮量よりも多くなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子を含む基材の表面に、収縮性の有機材料を含む層を有し、断面形状において少なくとも一部が湾曲しており、かつ、
前記湾曲している部分において、内弧面の表面における面方向の収縮量が、外弧面の表面における面方向の収縮量よりも多い、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0.04kPaでの値が0.4~7.8mmである、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
【請求項3】
該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0Paにおける前記A値の値をAとし、
押圧力400kPaで1回押圧したときの前記A値をAとするとき、
下記(2)式で定義されるA値回復率が80%以上である、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
A値回復率[%]=(A/A)×100・・・(2)
【請求項4】
該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0Pa時の前記A値が1~21.2mmである、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
【請求項5】
該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値が0になる押圧力が0.04~2.4kPaである、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
【請求項6】
前記湾曲している部分が、該熱伝達抑制シートの断面の二軸以上の方向に存在する、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記内弧面の表面における有機材料の量が、前記外弧面の表面における有機材料の量よりも多い、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記内弧面の表面における有機材料と、前記外弧面の表面における有機材料とが同量であり、かつ、前記内弧面の表面における有機材料の収縮率が、前記外弧面の表面における有機材料の収縮率よりも大きい、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記内弧面の表面における有機材料の架橋度が、前記外弧面の表面における有機材料の架橋度よりも高い、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項10】
前記内弧面の表面及び前記外弧面の表面に収縮性のシートが添着され、かつ、前記シートの添着量が、前記内弧面の表面側が前記外弧面の表面側よりも多い、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項11】
前記内弧面の表面に収縮性のシートが添着されている、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項12】
複数の電池セルと、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートとを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達抑制シート、及び該熱伝達抑制シートを有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる熱伝達抑制シートが用いられている。
【0003】
また、近年では、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源として、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0004】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、高容量かつ高出力が可能な電池において、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合(すなわち、「異常時」の場合)、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記のような組電池の分野においても、熱暴走を起こした電池セルから隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖を防ぐために、電池セル間に介在させる種々の熱伝達抑制シートが提案されている。
例えば、特許文献1には、繊維シートと、ナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルとを含む複合層を有する熱伝達抑制シートが提案されている。
特許文献2には、セラミック系無機繊維と、波長1μm以上の光に対する屈折率が異なる2種類の無機粉体を配合してなる熱伝達抑制シートが提案されている。
特許文献3には、鉱物系粉体及び難燃剤の少なくとも一方と、熱硬化性樹脂や熱可塑性エラストマー、ゴムから選択されるマトリックス樹脂とを含む熱伝達抑制シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-204708号公報
【特許文献2】特開2003-202099号公報
【特許文献3】特開2018-206605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようにナノシリカが主体の熱伝達抑制シートでは、高温域の熱伝導率が高く、異常時で高温になっている電池セルから隣接する電池セルへと熱が伝播する可能性がある。
特許文献2のように、波長1μm以上の光に対する屈折率が異なる2種類の無機粉体を含む熱伝達抑制シートでは、高温域の熱伝導率を低くすることができるが、電池セルの高容量化に伴って異常時の電池セルの温度が高くなっているため、更なる高熱伝達抑制化が求められている。
特許文献3の熱伝達抑制シートでは、鉱物系粉体及びや難燃剤を保持するために、マトリックス樹脂を使用しているが、このようなマトリックス樹脂は、高温になった際に溶融してしまい、電池セルの熱暴走時に熱伝達抑制シートの形状を保持できなくなるおそれがある。また、このような熱伝達抑制シートにおいては、熱伝達抑制効果を高めるために、無機粉体を含有することが多いが、無機粉体を良好に保持すること(すなわち、粉落ちを抑制すること)も求められる。
【0008】
更には、いずれの特許文献の熱伝達抑制シートも扁平の板状であり、厚さ方向に圧縮されて電池セル間に装着されたとしても、充放電による電池セルの膨張・収縮や振動等により電池セル間から脱落するおそれがある。また、扁平な板状であるため、熱伝達抑制シートの全面が電池セルの表面に密着しており、熱伝達抑制性能は、シート厚や配合材料など熱伝達抑制シートに固有のものとなり、それ以上の熱伝達抑制性能は期待できない。
【0009】
また、扁平の熱伝達抑制シートでは、電池セル間の間隔が変わると、それに合わせて熱伝達抑制シートの厚さを変えて対処することになるため、汎用性が低い。更には、例えば、電池セル間の間隔が狭くなると、薄い熱伝達抑制シートを使用せざるを得ず、熱伝達抑制性能に劣るようになる。
【0010】
そこで本発明は、電池の通常時や異常時における熱伝達抑制性能に優れるとともに、電池セル間からの脱落を抑える保持能力に優れ、更には電池セル間の間隔が変わっても熱伝達抑制性能を低下させることなく対応可能な熱伝達抑制シート、及び該熱伝達抑制シートを有する組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、本発明に係る下記[1]の熱伝達抑制シートにより達成される。
【0012】
[1] 無機粒子を含む基材の表面に、収縮性の有機材料を含む層を有し、断面形状において少なくとも一部が湾曲しており、かつ、
前記湾曲している部分において、内弧面の表面における面方向の収縮量が、外弧面の表面における面方向の収縮量よりも多い、熱伝達抑制シート。
【0013】
また、本発明の熱伝達抑制シートは、下記[2]~[11]であることが好ましい。
【0014】
[2] 該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0.04kPaでの値が0.4~7.8mmである、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
[3] 該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0Paにおける前記A値の値をAとし、
押圧力400kPaで1回押圧したときの前記A値をAとするとき、
下記(2)式で定義されるA値回復率が80%以上である、[1]又は[2]に記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
A値回復率[%]=(A/A)×100・・・(2)
[4] 該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値の、押圧力0Pa時の前記A値が1~21.2mmである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
[5] 該熱伝達抑制シートを凹状にして平面に置き、前記平面に対して垂直方向に押圧する押圧治具の押圧面と、該熱伝達抑制シートの前記外弧面との最大距離をGとし、
該熱伝達抑制シートの全厚をDとするとき、
下記(1)式で定義され、25℃におけるA値が0になる押圧力が0.04~2.4kPaである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
A値[mm]=G-D・・・(1)
[6] 前記湾曲している部分が、該熱伝達抑制シートの断面の二軸以上の方向に存在する、[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[7] 前記内弧面の表面における有機材料の量が、前記外弧面の表面における有機材料の量よりも多い、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[8] 前記内弧面の表面における有機材料と、前記外弧面の表面における有機材料とが同量であり、かつ、前記内弧面の表面における有機材料の収縮率が、前記外弧面の表面における有機材料の収縮率よりも大きい、[1]~[7]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[9] 前記内弧面の表面における有機材料の架橋度が、前記外弧面の表面における有機材料の架橋度よりも高い、[1]~[8]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[10] 前記内弧面の表面及び前記外弧面の表面に収縮性のシートが添着され、かつ、前記シートの添着量が、前記内弧面の表面側が前記外弧面の表面側よりも多い、[1]~[9]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
[11] 前記内弧面の表面に収縮性のシートが添着されている、[1]~[10]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0015】
上記の目的は、本発明に係る下記[12]の組電池により達成される。
【0016】
[12] 複数の電池セルと、[1]~[11]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートとを有し、前記複数の電池セルが直列又は並列に接続された、組電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱伝達抑制シートは、その断面形状において少なくとも一部が湾曲しており、この湾曲している部分が弧状を呈している。また、厚さ方向に弾性的に変形し、元の形状に回復するため、電池セル間に装着された際に、電池セルを押圧する作用が、扁平の熱伝達抑制シートに比べて大きくなり、充放電に伴う電池セルの膨張・収縮や振動等による電池セル間からの脱落を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の熱伝達抑制シートは、電池セル間に装着したときに、電池セルとの間で、扁平の熱伝達抑制シートのように全面ではなく、点状又は線状に電池セルの表面と当接するため、電池セルとの間に空間が形成され、電池セルが高温になったときの放熱性が高まる。
【0019】
更には、電池セル間の間隔が変わった場合、扁平の熱伝達抑制シートでは厚さを変えなければならないが、本発明の熱伝達抑制シートは、弧状で、弾性的に変形可能であるため、一つの熱伝達抑制シートでも様々な電池セル間の間隔に対応可能で、汎用性が高い。
また、電池セル間の間隔が狭い場合、扁平の熱伝達抑制シートでは、シート厚が薄くなるため熱伝達抑制性能が低下するが、本発明の熱伝達抑制シートは厚さ方向にシート全体が弾性的に変形するため、熱伝達抑制シートの厚さを維持したままとなり、熱伝達抑制性能が低下することもない。
【0020】
本発明の組電池は、電池セル間から熱伝達抑制シートが脱落することが抑えられるとともに、熱伝達抑制シートと電池セルとの間に形成される隙間による放熱効果が加味されて熱伝達抑制性能に優れたものとなり、電池セルの熱暴走の被害をより低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の熱伝達抑制シートの一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の熱伝達抑制シートの他の例を示す断面図であるとともに、電池セル間に装着した状態を示す図である。
図3図3は、A値を求める際に使用する押圧治具を示す模式図である。
図4図4は、基材の第1実施形態を示す模式的に示す断面図である。
図5図5は、基材の第2実施形態を示す模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の熱伝達抑制シートを有する組電池を模式的に示す断面図である。
図7図7は、実施例で作製した熱伝達抑制シートについて、押圧力と変位量との関係を示すグラフである。
図8図8は、実施例で作製した熱伝達抑制シートについて、押圧力0.04kPaにおける変位量を示すグラフである。
図9図9(A)及び(B)は、本発明の熱伝達抑制シートを積層して使用する例を、図2に準じて示す断面図である。
図10図10(A)及び(B)は、本発明の熱伝達抑制シートを積層して使用する他の例を、図2に準じて示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は、熱伝達抑制シートを、無機粒子を含む基材の断面形状において、少なくとも一部が湾曲した弧状にすることにより、厚さ方向に沿ってシート全体が弾性的に変形し、元の弧状に回復することが、上記課題を解決するために有効であることを見出した。
【0023】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本願明細書においては、フィルム、膜(メンブレン)、箔、など、その厚みによらずいずれも「シート」と解釈されるものとし、また、不織布など開口を有する膜状物もまた「シート」に含まれるものとする。
【0024】
[熱伝達抑制シート]
図1は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート1を示す斜視図であり、平面(図示せず)に載置した状態を示している。また、熱伝達抑制シート1は、後述される押圧力が負荷されない状態、すなわち「押圧力0Pa」の外観を示している。図示されるように、熱伝達抑制シート1は、その厚み方向における断面形状において、少なくとも一部(ただし、図1の例では全部)が湾曲して弧状を呈している。湾曲形状は、図示の例では、熱伝達抑制シート1の中央部1Aから全ての周縁部1Bに向かって漸次高くなるように放射状に、すなわち二軸以上の方向に湾曲している。また、図2に示すように、熱伝達抑制シート1の中央部から両端に向かって漸次高くなるように、一方向に湾曲していてもよい。
【0025】
このような弧状の熱伝達抑制シート1とするには、湾曲している部分において、内弧面5(図中、基材10の上面)の表面における面方向の収縮量が、外弧面6(図中、基材10の下面)の表面における面方向の収縮量よりも多くする。
【0026】
具体的には、例えばその一例として、無機粒子を含む基材10の表面に収縮性の有機材料からなる層(図示せず)を形成する。その際に、基材10の一方の面と他方の面とで、有機材料の量を異なるようにする。図1に示すように、中央部1Aが低く、周縁部1Bが高い凹状の熱伝達抑制シート1では、曲げ中心点と対向する側の内弧面5における有機材料の量を、他方の側の外弧面6における有機材料の量よりも多くする。
【0027】
有機材料の量を外弧面6よりも内弧面5において多くするには、熱伝達抑制シート1を作製する際に、有機材料を含む塗布液を、外弧面6よりも内弧面5の方に厚く塗工し、硬化させるとよい。あるいは、内弧面5の表面に塗工する塗布液における有機材料の濃度を、外弧面6の表面に塗工する塗布液における有機材料の濃度よりも高くしてもよい。この硬化の際に、内弧面5の収縮量が外弧面6の収縮量よりも大きくなり、図示されるような内弧面側に湾曲した熱伝達抑制シート1が得られる。また、有機材料を含む塗布液を、内弧面5のみに塗布し、硬化させてもよい。
【0028】
また、湾曲している部分において、内弧面5の表面における面方向の収縮量が、外弧面6の表面における面方向の収縮量よりも多くするにあたり、上記例以外に、内弧面5と外弧面6とで、有機材料を含む塗布液の塗布量を同じ(すなわち、同量)にすることもでき、その際に、内弧面5の塗布液における有機材料それ自身の収縮率を、外弧面6の塗布液における有機材料それ自身の収縮率よりも大きくする。具体的に、内弧面5の塗布液における有機材料の種類と、外弧面6の塗布液における有機材料の種類を異ならせるものであって、内弧面5の塗布液に用いる有機材料として、外弧面6の塗布液に用いる有機材料よりも収縮率が高いものを用いる。
【0029】
あるいは、湾曲している部分において、内弧面5の表面における面方向の収縮量が、外弧面6の表面における面方向の収縮量よりも多くするにあたり、上記例以外に、内弧面5と外弧面6とで、同一の有機材料を用いることもできる。その際に、内弧面5の表面における有機材料の架橋度を、外弧面6の表面における有機材料の架橋度よりも高くしてもよい。例えば、有機材料が熱収縮性の場合、外弧面6側よりも、内弧面5側で加熱温度を高くしたり、また、加熱時間を多くすればよい。
【0030】
また、上記した有機材料を含む塗布液を塗工する方法の他にも、有機材料を含むシートを基材10の表面に付設してもよい。その際、内弧面5に、外弧面6よりも厚いシートを付設し(すなわち、シートの添着量が、内弧面5の表面側が外弧面6の表面側よりも多い)、シートを収縮させることにより、図示されるような内弧面側に湾曲した熱伝達抑制シート1が得られる。また、シートを、内弧面5のみに付設してもよい。
【0031】
このように、塗布液、あるいはシートに用いる収縮性が異なる有機材料の種類を内弧面5、外弧面6によって使い分けたり、一つの面内で部分的に使い分けてもよい。
【0032】
塗布液あるいはシートを接着させる接着層に用いる有機材料としては、特に制限はないが、具体的にはポリイミド、ポリカーボネート、PET、p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、架橋ポリエチレン、難燃クロロプレンゴム、ポリビニルデンフロライド、硬質塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PCTEF、PVDF、硬質PCV、難燃性PET、ポリスチレン、ポリエーテルサルホン、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、AS、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、EVA、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸セルロース、PVC、PVdC、ポリアセタール等を用いることができる。
また、収縮方法は、熱硬化やUV硬化など樹脂に応じて行われる。
【0033】
中でも、粘着性が高く、電池セルからの脱落をより防げることから、ポリビニルアルコールが好ましい。また、ポリビニルアルコールは、ハンドリング性にも優れることから、好ましい。
【0034】
なお、塗布液あるいはシートは、基材10の表面や裏面の全面にわたり塗工あるいは付設してもよいが、湾曲させる方向に沿って筋状や帯状にすることもできる。
【0035】
また、弧状の熱伝達抑制シート1は、上方から全面にわたり垂直方向に押圧力を受けると、厚さはそのままで、周縁部1Bが図中の左右両方向に押し広げられた形状に、シート全体として弾性的に変形し、押圧力を解くと元の形状に復元する。ここで、図2は、熱伝達抑制シート1を電池セル201間に装着した状態を示す断面図であるが、熱伝達抑制シート1は、弧状を維持したまま電池セル201間に存在しており、電池セル201との間に隙間15が形成される。この隙間15により、電池セル201の放熱性がよくなり、電池セル201が高温になったときに、熱伝達抑制性能に優れるようになる。更には、熱伝達抑制シート1は、元の曲率の弧状に復元する作用を有しており、電池セル間に装着した際に両側の電池セル201の各表面を押圧する力が強く、電池セル201間から脱落し難くなり、装着時の保持力に優れたものとなる。しかも、表面にポリビニルアルコールのような粘着性の有機材料からなる層を有する場合には、より脱落し難く、保持力がより高まる。
【0036】
このような変形と復元とを、バランスよく、良好に実現するために、熱伝達抑制シート1の反り量を示す指標となる、下記のA値を特定の範囲にするとよい。
【0037】
A値を求めるには、図3に示す押圧治具100を用いる。図示される押圧治具100は、載置台60に熱伝達抑制シート1を凹状にして載置し、押圧部材70で熱伝達抑制シート1を挟み、押圧部材70により上方から垂直にシート全体を押圧する構成となっている(図中、押圧力を「F」で示す。)。そして、熱伝達抑制シート1の外弧面6と、押圧部材70の押圧面70aとの最大距離をGとし、熱伝達抑制シート1の全厚をDとするとき、A値を下記(1)で定義する。なお、A値は、25℃における値であり、以降の説明でもA値は25℃での値である。
A値[mm]=G-D・・・(1)
【0038】
本実施形態では、熱伝達抑制シート1は、押圧力0Pa、すなわち押圧力が負荷されない場合に、A値が21.2mmを超えると、湾曲の曲率が大きすぎて生産が困難になるおそれがある。また、例えば、熱伝達抑制シート1を生産後に保管場所に搬送したり、保管場所から電池セルへの装着場所に搬送する場合、熱伝達抑制シート1を吸着搬送するのが一般的であるが、その時の搬送性も悪くなるおそれがある。搬送性については、押圧力0PaにおけるA値が小さいほど良好であり、大きくなるほど低下する。特に、押圧力0PaにおけるA値が11.75mmを超えると、搬送性の低下が大きくなる。
【0039】
なお、押圧力0PaにおけるA値が1.0mm未満では、扁平の熱伝達抑制シートとほぼ同じになり、後述するような弧状とする効果が得られない。そのため、熱伝達抑制シート1の押圧力0PaにおけるA値は、1.0mm~21.2mmとすることが好ましい。
【0040】
また、押圧力0.04kPaにおけるA値が0.4~7.8mmとなることが好ましい。上記A値の下限は、好ましくは0.43mm、より好ましくは0.431mmである。また、上記A値の上限は、好ましくは7.75mm、より好ましくは7.749mmである。
さらに、上記A値は、0.4~5.6mmとなることがより好ましく、生産性や搬送性に加えて、放熱性や保持力の向上効果がバランスよく、良好に得られる。また、これらの効果は、押圧力0.04kPaにおけるA値が0.4~4.5mmの範囲で更に良好に得られる。
【0041】
同様に、放熱性や保持力の向上効果から、押圧力0PaにおけるA値も、その上限が21.22mmであることが好ましく、15.53mmであることがより好ましく、11.75mmであることが更に好ましい。
【0042】
また、熱伝達抑制シート1は、弧状を保持する観点から、シート全体が扁平になるまでの最大荷重、すなわちA値が0になる押圧力が0.04~2.4kPaであることが好ましい、なお、形状回復性を考慮すると、A値が0になる押圧力が0.04~1.2kPaがより好ましい。
【0043】
電池セル201は、充放電に伴って膨張・収縮を繰り返すため、熱伝達抑制シート1も弧状となる形状に復元することが好ましい。そこで、製造直後の熱伝達抑制シート1の、押圧力0PaにおけるA値の値をAとし、押圧力400kPaで1回押圧したときのA値をAとするとき、下記(2)式で定義されるA値回復率が80%以上であることが好ましい。
A値回復率[%]=(A/A)×100・・・(2)
【0044】
A値回復率は高いほど好ましく、90%以上がより好ましく、95.9~99.9%が更に好ましい。
【0045】
本発明の熱伝達抑制シート1は、このように弧状を呈することを特徴とするものであるが、より優れた熱伝達抑制性能を得るために、基材10を下記に示す実施形態とすることが好ましい。
【0046】
《第1実施形態》
図4は、基材10の第1実施形態を模式的に示す断面図である。基材10は、少なくとも無機粒子を含むが、無機繊維を更に含むことが好ましい。図示されるように、好ましくは、無機粒子及び無機繊維の両方を含む場合において、無機繊維は、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31で構成され、無機粒子は、第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21とで構成され、これらが複雑に絡み合って存在する。
【0047】
〔第1の無機粒子20〕
<第1の無機粒子の粒度分布>
本実施形態において、第1の無機粒子20は、D50が1μm以上100μm以下であるとともに、D90のD10に対する比(D90/D10)が10以上1000以下である粒度分布を有することが好ましい。なお、上記D10、D50及びD90とは、レーザー回折・散乱法によって測定される第1の無機粒子20の体積基準の累積分布において、小粒径側からそれぞれ累積10%、50%及び90%の粒径を表す。
【0048】
電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において優れた断熱性を有する断熱シートを得るという観点から、D50は、1μm以上100μm以下とし、3μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。D90/D10については、10以上1000以下とし、15以上500以下が好ましく、20以上300以下がより好ましい。
D10は、0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.4μm以下がより好ましく、0.6μm以上1.3μm以下がさらに好ましい。D90は、15μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、25μm以上50μm以下がさらに好ましい。
【0049】
第1の無機粒子20の粒子径と、第1の無機粒子20が反射する放射熱の温度には密接な関連性があり、上記の粒度分布を有する第1の無機粒子20は、通常使用時における25℃付近から800℃付近まで幅広い温度の放射熱を反射することができる。また、第1の無機粒子20のうち、例えば、粒径が10μm以上であるような無機粒子が多量に存在すると、断熱シート全体に第1の無機粒子20を配置することは難しくなる。
本実施形態においては、上記のように広い粒度分布を有する第1の無機粒子20を採用しており、更に、ナノ粒子からなる第2の無機粒子21が含有されているため、断熱シート全体に第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21が分散される。したがって、放射熱が効率的に反射されるとともに、伝導伝熱及び対流伝熱が抑制され、熱の伝播を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の第1の無機粒子20は、レーザー回折・散乱法によって測定される体積基準の累積分布において、粒子径が3μm以上10μm以下の第1の無機粒子が、第1の無機粒子全質量に対して、10%以上80%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましく、30%以上50%以下であることがさらに好ましい。特に、粒子径が3μm以上10μm以下の無機粒子は、所望の波長を有する放射熱を反射しやすいため、粒子径が3μm以上10μm以下である第1の無機粒子20の、第1の無機粒子20全質量に対する含有量が、上記範囲内であると、より一層放射伝熱を抑制することができる。したがって、このような第1の無機粒子20を含む断熱シートは、通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において、高い熱伝達抑制性能(断熱性)を有するものとなる。
【0051】
<第1の無機粒子の粒子径>
第1の無機粒子20の粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の熱伝達抑制性能を得ることができる。したがって、第1の無機粒子20の粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0052】
<第1の無機粒子20の粒子間の平均距離>
基材10において、粒子径が5μm以上100μm以下である第1の無機粒子20間の平均距離が、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、1μm以上600μm以下であることがより好ましく、10μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
また、粒子径が5μm未満の第1の無機粒子20間の平均距離は、0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.05μm以上70μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
粒子径が5μm以上100μm以下である第1の無機粒子20間の平均距離、及び粒子径が5μm以下の第1の無機粒子20間の平均距離が上記の範囲にあり、第1の無機粒子20間に第2の無機粒子21が配置されていると、大径の第1の無機粒子20同士の隙間に、小径の第2の無機粒子21が入り込む。これにより、基材10は、より緻密な構造となり、熱伝達抑制性能をより一層向上させることができる。ここで、粒子径が5μm以上100μm以下の第1の無機粒子20間の平均距離は、電子顕微鏡で基材10を観察し、粒子径が5μm以上100μm以下の第1の無機粒子20間の距離を5か所測定した平均値である。また、粒子径が5μm以下の第1の無機粒子20間の平均距離は、電子顕微鏡で基材10を観察し、粒子径が5μm以下の第1の無機粒子20間の距離を40か所測定した平均値である。
【0054】
なお、「粒子径」とは、ある1つの粒子全体の大きさのことであり、粒子が単結晶の場合には一次粒子径を意味するし、凝集体の場合には二次粒子径を意味する。また、平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均を取ることにより求めることができる。
【0055】
<第1の無機粒子20の屈折率>
第1の無機粒子20は、屈折率が高いほど熱線をよく反射し、結果として放射伝熱の抑制効果を向上させることができるが、屈折率が高い材料ほど、コストが上昇する可能性がある。したがって、第1の無機粒子20の屈折率は1.5以上3.0以下が好ましく、2.0以上2.9以下であることがより好ましい。また、コスト面及び性能面を考慮すると、第1の無機粒子20の屈折率は、2.3以上2.8以下であることがさらに好ましい。
【0056】
<第1の無機粒子20の形状>
また、第1の無機粒子20の形状についても特に限定されないが、通常の粒子形状の他に、中空粒子や多孔質粒子が含まれていてもよい。中空粒子としては、後述する無機バルーンが挙げられる。
【0057】
続いて、第1の無機粒子20として使用することができる粒子の材質について、以下で詳細に説明する。
【0058】
<第1の無機粒子20の材質>
なお、第1の無機粒子20として、単一の材質の第1の無機粒子20を使用してもよいし、2種以上の材質の第1の無機粒子20を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制性能が互いに異なる第1の無機粒子20を併用すると、電池セル201などの発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。ただし、2種以上の無機粒子が含有されている場合に、平均一次粒子径が上記範囲内であるものを第1の無機粒子20とする。
【0059】
第1の無機粒子20の材質は特に限定されないが、熱伝達抑制性能の観点から、第1の無機粒子20は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなることが好ましい。これらのうち、酸化物粒子を含むことがより好ましく、ガラス転移点が1000℃以上であることが、より好ましい。
【0060】
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、第1の無機粒子20として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において放射伝熱を抑制することができる。そのため、第1の無機粒子20として酸化物粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子としては、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子及びアルミナ粒子から選択された少なくとも1種を使用することが好ましい。すなわち、第1の無機粒子20として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、チタニア粒子は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ放射熱を遮る効果が高いため、第1の無機粒子20としてチタニアを用いることが最も好ましい。
【0061】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、電池セル201などの発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により熱伝達抑制作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0062】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、熱伝達抑制材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0063】
なお、後述するように本発明の組電池は熱伝達抑制シート1を有するが、熱暴走を起こした電池セル201では、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、第1の無機粒子20は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セル2011の急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0064】
また、第1の無機粒子20として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、基材10の中心付近にある第1の無機粒子20(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、基材10の中心付近の第1の無機粒子20が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0065】
<第1の無機粒子20の含有量>
上述のとおり、粒度分布が上記範囲である第1の無機粒子20を含むが、第1の無機粒子20の含有量が、基材10の全質量に対して1.5質量%以上であると、放射伝熱を抑制する効果を得ることができる。したがって、第1の無機粒子20の含有量は、基材101の全質量に対して1.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。
一方、第1の無機粒子20の含有量が、基材10の全質量に対して45質量%以下であると、後述する第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31の含有量を確保することができる。したがって、第1の無機粒子20の含有量は、基材10の全質量に対して45質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
〔第2の無機粒子21〕
<第2の無機粒子21の形状>
(ナノ粒子)
第2の無機粒子21は、ナノ粒子が好ましい。ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、ナノ粒子からなる第2の無機粒子21が基材101に含まれることにより、第1の無機粒子20や第2の無機粒子21の間の空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた熱伝達抑制性能を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる。また、大径である第1の無機粒子20同士の隙間に、ナノ粒子である第2の無機粒子21が入り込むと、より緻密な構造となり、基材10の強度をより向上させることができる。
【0067】
また、基材10は、平均一次粒子径が小さいナノ粒子からなる第2の無機粒子21を含んでいるため、電池セル201の熱暴走に伴う膨張によって基材10が圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、基材10の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0068】
なお、ナノ粒子からなる第2の無機粒子21としては、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。第1の無機粒子20と同様に、第2の無機粒子21は、熱伝達抑制性能の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなることが好ましく、酸化物粒子を含むことがより好ましい。例えば、シリカナノ粒子は、低密度であるため、伝導伝熱を抑制する効果を有している。また、シリカナノ粒子には微細な空隙が分散して存在しているため、対流伝熱も抑制する効果を有している。さらに、シリカナノ粒子は、熱伝達抑制性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。
【0069】
さらに、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1g/cm程度であるため、例えば、熱伝達抑制シート1の両側に配置された電池セル201が熱膨張し、大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、熱伝達抑制性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0070】
<第2の無機粒子21の平均一次粒子径>
第2の無機粒子21の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い熱伝達抑制性能を得ることができる。
【0071】
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、基材10における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、熱伝達抑制性能をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、基材10の熱伝達抑制性能を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0072】
<第2の無機粒子21の含有量比>
幅広い温度領域において熱伝達抑制性能を向上させるために、基材10が所定の粒度分布を有する第1の無機粒子20を含むものとしているが、第2の無機粒子21に対して第1の無機粒子20の添加量が少量であっても、熱の放射伝熱を抑制する効果を得ることができる。また、第2の無機粒子21によって、熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制する効果を得るためには、第2の無機粒子21の第1の無機粒子20に対する添加量を増加させた方が好ましい。
【0073】
なお、第2の無機粒子21はナノ粒子であるため、かさ密度が低く(0.1g/cm程度)、第1の無機粒子20は第2の無機粒子21より平均粒子径が大きいため、空隙が少ない。したがって、第1の無機粒子20のかさ密度は、第2の無機粒子21の10倍以上となる。第1の無機粒子20として、例えばチタニアを選択した場合には、第1の無機粒子20のかさ密度は、第2の無機粒子21の40倍程度(4g/cm程度)となる。このため、体積比で表した場合は(質量比で表した場合と比べ)第1の無機粒子20の比率はごく少量となるが、第1の無機粒子20は輻射伝熱を抑える効果を有し、ごく少量でも有効に機能する。このように、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との質量比は、通常温度から500℃以上の高温度までの領域における熱伝達抑制性能に大きく影響するため、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との質量比を適切に調整することが好ましい。
【0074】
第2の無機粒子21の含有量が、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して、40質量%以上であると、第2の無機粒子21が体積の大部分を占有するようになり、基材10における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制し、圧縮されても熱伝達抑制性能が高くなる。
また、第2の無機粒子21の含有量は、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して、50質量%以上であることがさらに好ましい。第2の無機粒子21の含有量が、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して50質量%以上であると、第2の無機粒子21がさらに体積の大部分を占有するようになり、基材10における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制し、熱伝達抑制性能が更に高くなる。
【0075】
一方、第2の無機粒子21の含有量が、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して95質量%以下であると、第1の無機粒子20の含有量は5質量%以上となり、第1の無機粒子20による輻射熱の遮蔽効果を発揮できるようになる。このため、500℃以上の高温度領域において、基材10における熱の放射伝熱を抑制し、熱伝達抑制性能を発揮することができる。
また、第2の無機粒子21の含有量は、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して、90質量%以下であることがさらに好ましい。第2の無機粒子21の含有量が、第2の無機粒子21と第1の無機粒子20との合計質量に対して、90質量%以下であると、第1の無機粒子20の含有量は10質量%以上となり、第1の無機粒子20による放射熱の遮蔽効果をさらに発揮できるようになる。このため、500℃以上の高温度領域において、基材10における熱の放射伝熱を抑制し、更に圧縮されても熱伝達抑制性能を発揮することができる。
【0076】
上述のとおり、チタニアは放射熱を遮る効果が高く、シリカナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、基材10に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた熱伝達抑制性能を維持することができる。したがって、第1の無機粒子20としてチタニアを使用し、第2の無機粒子21としてシリカナノ粒子を使用することが最も好ましい。
【0077】
<第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の合計の含有量>
第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の含有量の合計が、基材10の全質量に対して30質量%未満であると、第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21による熱伝達抑制性能を十分に得ることができない。したがって、第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の含有量の合計は、基材10の全質量に対して30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0078】
一方、第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の含有量の合計が、基材10の全質量に対して90質量%を超えると、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31の合計の含有量が10質量%未満となり、高温時の機械的強度が低下し、所望の形状保持性を得ることができない。したがって、第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の含有量の合計は、基材10の全質量に対して90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0079】
〔無機繊維〕
無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト、ムライト繊維等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0080】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、熱伝達抑制性能が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0081】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、基材10の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより連続した空隙が生じやすくなるので熱伝達抑制性の低下を招くおそれがある。
【0082】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して熱伝達抑制性能の低下を招くおそれがあり、また、基材10の成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0083】
なお、無機繊維は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0084】
〔他の配合材料〕
基材10には、上記第1の無機粒子20、第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31の他に、必要に応じて、他の無機繊維、有機繊維、有機バインダ等の結合材、着色剤等を含有させることができる。これらはいずれも基材10の補強や成形性の向上等を目的とする上で有用であり、基材10の全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0085】
基材10は、熱伝達抑制性能をより一層高める成分として、第1の無機粒子20の他に、無機バルーンを含んでいてもよいし、第1の無機粒子20の一部として、無機バルーンを含んでいてもよい。
【0086】
(無機バルーン)
基材10が、第1の無機粒子20の他の無機粒子として、無機バルーンを含有する場合に、基材10の全質量に対し、40質量%以下の無機バルーンを含んでいてもよい。無機バルーンとは、粒子内部に空間を有する中空構造を有する粒子を意味する。
基材10に40質量%以下の範囲で無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、基材10における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、熱伝達抑制性をより一層向上させることができる。
【0087】
基材10の全質量に対する無機バルーンの質量は、30質量%以下であることがより好ましい。なお、無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0088】
無機バルーンを含む場合、無機バルーンの平均粒子径が適切に調整されていると、電池セル201が熱膨張して、基材10に対して圧縮応力が加わった場合であっても、密度の変化が熱伝達抑制性能に対して与える影響を低減することができる。
すなわち、無機バルーンの平均粒子径が1μm以上100μm以下であると、基材10における第1の無機粒子20の密度が変化しても、熱伝達抑制性能が低下することをより一層抑制することができる。また、無機バルーンの平均粒子径は、3μm以上70μm以下であることがより好ましい。
【0089】
基材10が、他の配合材料として有機繊維を含む場合に、有機繊維としては、セルロースファイバ等を使用することができる。
【0090】
他の無機粒子としては、マイカ、マイクロポーラス粒子、熱膨張性無機材料、含水多孔質体、エアロゲル及び無機水和物粒子を使用することができる。熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。含水多孔質体としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられる。また、有機粒子としては、中空ポリスチレン粒子等を使用することができる。
上記含水多孔質体を複数種類組み合わせて用いることも好ましい。また上記含水多孔質体をより多く含む層を表面に設けることも、温度上昇の抑制のために好ましい。
【0091】
(結合材)
基材10は、結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、熱伝達抑制シート1としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。結合材とは、第1の無機粒子20を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。
【0092】
なお、バインダとしては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
【0093】
繊維としては、有機繊維、無機繊維などが利用できる。有機繊維としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。無機繊維としては特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、グラスウール、及びロックウール等を使用することが好ましい。
【0094】
一方、結合材は上記第2の無機粒子21と比較して、熱伝導性が高いため、基材10に対流伝熱が発生しない程度に形成された空隙部に結合材が存在すると、第2の無機粒子21が対流伝熱及び伝導伝熱を抑制するのを妨げてしまう。したがって、結合材の含有量は、基材10の全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。結合材の含有量は、基材10の全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0095】
(基材10の厚さ)
基材10の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。基材10の厚さが上記範囲内であると、充分な機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
【0096】
(基材10の熱伝導率)
基材10の熱伝導率は、800℃のとき、0.020W/mK以上1.000W/mK以下であることが好ましく、0.030W/mK以上0.600W/mK以下であることがより好ましく、0.040W/mK以上0.400W/mK以下であることがさらに好ましい。また、熱伝導率は、500℃のとき、0.010W/mK以上0.600W/mK以下であることが好ましく、0.020W/mK以上0.400W/mK以下であることがより好ましく、0.030W/mK以上0.300W/mK以下であることがさらに好ましい。上述の熱伝導率を有することにより、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域において優れた熱伝達抑制性能を有する。
【0097】
<基材10の製造方法>
基材10の製造方法には制限はないが、第1の無機粒子20、第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31を含む基材材料を、湿式抄造法、乾式成形法、又は湿式成形法により型成形して製造しても、押出成形法により製造してもよい。以下に、それぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。
【0098】
(湿式抄造法による基材10の製造方法)
湿式抄造法では、まず、第1の無機粒子20、第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31と、必要に応じて結合材とを水中で混合し、撹拌機で撹拌することにより、混合液を調製する。その後、得られた混合液を、底面に濾過用の平面メッシュが形成された成形器に流し込み、メッシュを介して混合液を脱水することにより、湿潤シートを作製する。その後、得られた湿潤シートを加熱するとともに加圧することにより、基材10を得ることができる。なお、加熱及び加圧工程の前に、湿潤シートに熱風を通気させて、シートを乾燥する通気乾燥処理を実施してもよいが、この通気乾燥処理を実施せず、湿潤した状態で加熱及び加圧してもよい。また、湿式成形法を用いる場合には、有機バインダとして、カチオン化デンプンやアクリル樹脂を選択することができる。
【0099】
(乾式プレス成形法による基材10の製造方法)
乾式成形法では、まず、第1の無機粒子20、第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31と、必要に応じて結合材とを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入する。そして、混合機に投入された材料を充分に混合した後、箱型の型内に混合物を投入し、プレスすることにより基材10を得ることができる。プレス時には、必要に応じて加熱してもよい。
【0100】
上記プレス圧は、0.98MPa以上9.80MPa以下の範囲であることが好ましい。プレス圧が0.98MPa未満であると、得られる基材10において、強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度の圧縮によって加工性が低下したり、更に、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、熱伝達抑制性能が低下するおそれがある。
【0101】
また、乾式プレス成形法を用いる場合には、有機バインダとして、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinylacetate copolymer)を使用することが好ましいが、乾式プレス成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0102】
(押出成形法による基材10の製造方法)
押出成形法では、まず、第1の無機粒子20、第2の無機粒子21、第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31と、必要に応じて結合材とを混合したものに水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用い、断面が矩形のスリット状のノズルから押出しさらに乾燥させることにより、基材10を得ることができる。結合材の有機バインダとしては、メチルセルロース及び水溶性セルロースエーテル等を使用することが好ましいが、押出成形法を用いる場合に一般的に使用される有機バインダであれば、特に限定されずに使用することができる。
【0103】
《第2実施形態》
図5は、基材10の第2実施形態を模式的に示す断面図であるが、基材10は、下記(A)~(C)の構成を満足する。
(A)無機粒子25(上記第1の無機粒子20及び上記第2の無機粒子21に対応)は、一様に分散する。
(B)第1の無機繊維23は、一様に分散するとともにシートの主面に対して平行な一方向に配向されている。
(C)第2の無機繊維24は、第1の無機繊維23と交絡して3次元ウエッブ構造を形成している。
【0104】
なお、無機粒子25とは、第1実施形態における第1の無機粒子20と、第2の無機粒子21と、を含むが、図5では無機粒子25として記載している。また、第1実施形態と同様に、無機粒子25に含まれる第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21の合計の含有量、並びに第1の無機粒子の粒度分布は、上述のとおり規定されている。
【0105】
図5に示すように、基材10の内弧面5及び外弧面6に対して平行な一方向に、第1の無機繊維23が層状に配向している。また、第1の無機繊維23が、第2の無機繊維24と交絡して3次元ウエッブ構造を形成している。それとともに、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24との間の空間に、無機粒子25が一様に広がって保持されている。無機粒子25、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24は、いずれも耐熱性の材料である。また、粒子間、粒子と繊維との間、繊維間に微小な空間が無数に形成され、空気による熱伝達抑制性能も加味されるため、熱伝達抑制性能に優れる。
【0106】
なお、「一方向に配向している」とは、第1の無機繊維23がすべてその方向に向いている必要はなく、特定の一方向に第1の無機繊維23が並ぶ傾向が強ければよい。また、第1の無機繊維23が特定の方向に配向していることは、目視による確認で判断できるが、繊維の判別が難しい場合には、当該方向の曲げ強度を測定し、他の方向より5%以上大きくなっていることで確認することができる。
【0107】
また、無機粒子25及び第1の無機繊維23が「一様に分散する」とは、無機粒子25や第1の無機繊維23が極端に偏在することなく、全体的に広がっている様子を示す。
【0108】
第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24の材質、形状、平均繊維径並びに平均繊維長については、第1実施形態における第1の無機繊維30及び第2の無機繊維31と同様である。また、無機粒子25に含まれる第1の無機粒子及び第2の無機粒子の材質、形状及び粒子径についても、第1実施形態における第1の無機粒子20及び第2の無機粒子21と同様である。
【0109】
このように構成された第2実施形態においても、無機粒子25に含まれる第1の無機粒子及び第2の無機粒子の合計の含有量、並びに第1の無機粒子の粒度分布が上述のとおり規定されているため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態においては、基材10の内部で、第1の無機繊維23が内弧面5や外弧面6に対して平行な一方向に配向しながら一様に分散しているので、シート内での熱伝達抑制性能や放熱性が優れるとともに均一となり、電池セル201からの発熱を効果的に放熱できる。
【0110】
そのため、電池セル201が熱暴走を起こした場合でも、隣接する電池セル201への熱を遮断して連鎖を防ぐことができる。また、第1の無機繊維23と第2の無機繊維24とが交絡して3次元ウエッブ構造を形成するとともに、第2の無機繊維24が、第1の無機繊維と第1の無機繊維とをつなぐ伝熱パスとして機能する。すなわち、第2の無機繊維24により、基材10の厚さ方向に伝えられた熱が、第1の無機繊維23により内弧面5や外弧面6に平行な方向に伝わり、放熱することができる。さらに、3次元ウエッブ構造になることによって強度的に優れたものとなる。
【0111】
(第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24の熱伝導率)
第2実施形態における熱伝達抑制シート32は熱伝達抑制性能に優れるほど好ましく、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24はともに熱伝導率が低いことが好ましい。しかし、第2の無機繊維24は、層状に配向している第1の無機繊維同士をつなぐ伝熱パスになるため、第1の無機繊維23よりも熱伝導率が高いことが好ましい。そのため、熱伝達抑制性能を考慮して、第2の無機繊維24の熱伝導率は41[W/m・K]以下であることが好ましい。
【0112】
(無機粒子25、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24の各含有量)
第2実施形態においては、無機粒子25の全体の含有量は、基材10の全質量に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。無機粒子25の含有量は、より好ましくは、40質量%以上70質量%以下であり、50質量%以上60質量%以下である。
また、第1の無機繊維23と第2の無機繊維24との合計含有量は、基材10の全質量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。第1の無機繊維23と第2の無機繊維24と合計含有量は、より好ましくは、10質量%以上25質量%以下であり、15質量%以上20質量%以下である。
このような含有量にすることにより、無機粒子25による吸熱・熱伝達抑制性能、第1の無機繊維23による保形性や押圧力耐性、抗風圧性、第2の無機繊維24による伝熱パス作用や無機粒子25の保持能力がバランスよく発現される。
【0113】
<基材10の製造方法>
基材10の製造方法としては、まず、第1の無機粒子及び第2の無機粒子を含む無機粒子25、第1の無機繊維23及び他の配合材料を所定の割合で水に加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用い、断面が矩形のスリット状のノズルから押出して第1部材を得る。この第1部材は、シート状の湿潤物であり、第1の無機繊維23が一方向に配向し、繊維間に無機粒子25が保持されている。
【0114】
また、無機粒子25、第2の無機繊維24及び他の配合材料を所定の割合で乾式混合し、平板状にプレス成形することで、第2部材を得る。この第2部材は、シート状で、第2の無機繊維24がランダムに存在し、繊維間に無機粒子25が保持されている。
【0115】
そして、第1部材と第2部材とを複数、交互に積層して全体をプレス成形し、乾燥することで基材10が得られる。プレス成形の際に、第2部材中にランダムに存在している第2の無機繊維24が、湿潤状態にある第1部材に入り込んで、第1の無機繊維23と絡み合う。そして、乾燥することにより、このような状態が維持されて熱伝達抑制シート32となる。
【0116】
(基材10の厚さ)
基材10の厚さは特に限定されないが、0.05mm以上6.0mm以下の範囲にあることが好ましい。基材10の厚さが0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1.0mm以上であると、充分な機械的強度を熱伝達抑制シートに付与することができる。一方、基材10の厚さが6.0mm以下、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、更に好ましくは3.0mm以下であると、良好な組付け性を得ることができる。
【0117】
[組電池]
図6に示したように、組電池200は、複数の電池セル201と、上記の熱伝達抑制シート1とを有しており、複数の電池セル201が直列又は並列に接続されたものである。そして、複数の電池セル201の隙間に上記の熱伝達抑制シート1が介在している。
【0118】
なお、組電池200は、図6の構成に限定されず、熱伝達抑制シート1を、電池セル間のみでなく、電池セル201と電池ケース210との間に配置したり、電池ケース210の内面に貼り付けてもよい。
【0119】
このように構成された組電池200においては、電池セル201間から熱伝達抑制シート1が脱落することが抑えられるとともに、熱伝達抑制シート1と電池セル201との間に形成される隙間による放熱効果が加味されて熱伝達抑制性能に優れたものとなり、電池セル201の熱暴走の被害をより低く抑えることができる。
【0120】
したがって、例えば、組電池200は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セル201が発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。また、熱伝達抑制シート1を、電池セル201と電池ケース210との間に配置することにより、新たに熱伝達抑制材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池200を構成することができる。
【実施例0121】
以下、実施例を挙げて、本発明の熱伝達抑制シート1を更に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0122】
第1の無機粒子としてシリカナノ粒子、第2の無機粒子としてチタニア粒子とを用い、これらを無機繊維に加え、有機バインダとともに混合したものに水を加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製し、得られたペーストを、押出成形機を用い、断面が矩形のスリット状のノズルから押出して、更に乾燥して、表1のサンプルNo.1~10で示すような、基材厚み及び密度がそれぞれ異なる無機シートからなる基材を計10種類作製した。なお、表1で示す「基材(無機シート)の仕様」中の「厚み」は、いずれも基材作製時の狙い値(mm)である。
【0123】
続いて、作製したサンプルNo.1~9の基材については、基材の一方の表面において、それぞれ表1に記載の厚みによるホットメルトシート(接着層)を介して、いずれも厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製シートを添着させ、更に、熱収縮させて熱伝達抑制シートとした(表1中、「基材にシートを接着する場合」を参照)。
【0124】
また、作製したサンプルNo.10の基材については、基材の一方の表面において、上記PETシート及びホットメルトシートを添着させる代わりに、ポリビニルアルコール(PVA)を25μmの厚みになるようコートし、更に、熱収縮させて熱伝達抑制シートとした(表1中、「基材にコートを塗布する場合」を参照)。
【0125】
また、サンプルNo.1~10のすべての熱伝達抑制シートは、図2に示すように、断面形状において、両周縁方向に湾曲した弧状であり、また、表1中の「「基材+PETシート及びホットメルトシート」又は「基材+PVAコート層」の物性」に示すように、両端内の間隔(幅)が100mmで、それと直交する部分(長さ)が50mmである。
【0126】
なお、表1に示す「「基材+PETシート及びホットメルトシート」又は「基材+PVAコート層」の物性」中の「厚み」は、いずれも実測値(mm)である。また、この「厚み」は、サンプルNo.1~9については、「基材+PETシート及びホットメルトシート」の合計厚みを意味し、また、サンプルNo.10については、「基材+PVAコート層」の合計厚みを意味する。
【0127】
ここで、無機シートからなる基材は、PETシートなどのように寸法精度よく作製することが困難であるため、上記のとおり、表1で示す「基材(無機シート)の仕様」中の「厚み」は、いずれも基材作製時の狙い値として記載していることから、表1において、「「基材+PETシート及びホットメルトシート」又は「基材+PVAコート層」の物性」中の「厚み」(実測値)は、「基材(無機シート)の仕様」中の「厚み」(狙い値)に対して、「基材にシートを接着する場合」には、PETシート及びホットメルトシートの合計厚みを加えた値、また、「基材にコートを塗布する場合」には、PVAコート層の厚みを加えた値と一致しない。
【0128】
このようにして作製した、サンプルNo.1~10の熱伝達抑制シートについて、図3に示す構成の押圧治具を用いて押圧力と、押圧方向の変位量(=G)との関係を調べた。結果を図7に示す。また、押圧力0.04kPaにおける変位量を求めた。結果を図8に示す。なお、図7及び図8におけるNo.1~No.10は、それぞれ表1の「サンプルNo」に対応している。図7に示すように、いずれの熱伝達抑制シートも、押圧力が高まるのにつれて変位量が徐々に増しているが、ある押圧力を超えると、押圧力が高まっても変位量が変わらない変曲点(図中に○で示す)が現れる。この変曲点における変位量が、A値に相当する。
【0129】
また、表1に、作製したサンプルNo.1~10の熱伝達抑制シートの仕様と、変位量とを示す。また、製造直後の熱伝達抑制シートのA値(=A)と、押圧力400kPaで1回押圧した時のA値(=A)とを測定してA値回復率を求めた。A値回復率を表1に併記する。
【0130】
なお、A値が21.2mmを超える熱伝達抑制シートの作製を試みたが、他の熱伝達抑制シートと同じ方法では作製が困難であり、押圧力と変位量との関係や、A値、A値回復率を測定していない。すなわち、押圧力0PaにおけるA値としては、21.2mmが最大となる。
【0131】
【表1】
【0132】
いずれの熱伝達抑制シートも、変曲点が現れる変位量が1.0mm以上であり、押圧力0PaにおけるA値として1.0mm以上が好ましい。また、上記したように、製造面からは、押圧力0PaにおけるA値が21.2mm以下であることが好ましい。更には、弾性変形・復元性や強度などからは、小さい押圧力も変位量が大きくなることは好ましくないことから、変曲点が現れる範囲も、押圧力が小さく、変位量も少ない範囲が好ましく、押圧力0PaにおけるA値は1.0~7.5mmが好ましいといえる。
【0133】
また、いずれの熱伝達抑制シートも、押圧力が0.04kPa以上で現れており、図8に示すように、押圧力0.04kPaでみると、その最小変位量が0.431mmである。よって、押圧力0.04kPaにおけるA値の最小値は0.431mmといえ、押圧力0PaにおけるA値の下限は0.4mm、好ましくは0.43mm、より好ましくは0.431mmである。また、図8に示すように、押圧力0.04kPaでみると、その最大変位量が7.749mmである。よって、押圧力0.04kPaにおけるA値の最大値は7.75mmといえ、押圧力0PaにおけるA値の上限は7.8mm、好ましくは7.75mm、より好ましくは7.749mmである。
【0134】
更には、いずれの熱伝達抑制シートも、変曲点が、押圧力0.04kPa以上で、2.4kPa以下の範囲に現れており、扁平になるA値、すなわちA値が0になる押圧力が0.04~2.4kPaが好ましい。
【0135】
加えて、いずれの熱伝達抑制シートも、95%を超えるA値回復率を実現している。
【0136】
以上のとおり、本発明の各実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は、上記内容に限定されることはなく、適宜変更可能である。例えば、上記は熱伝達抑制シート1を単一で使用しているが、熱伝達抑制シート2を複数積層して用いることもできる。
【0137】
例えば、図9(A)は、熱伝達抑制シート1を2枚、それぞれの湾曲している方向を同一方向にして積層した状態を、図2に準じて示している。即ち、一方の熱伝達抑制シート1の内弧面5が、他方の熱伝達抑制シート1の外弧面6と対面するように、積層している。これにより、一方の熱伝達抑制シート1の内弧面5と他方の熱伝達抑制シート1の外弧面6との間に新たな隙間15が形成され、断熱性能により優れるようになる。
【0138】
また、図9(B)に示すように、熱伝達抑制シート1を2枚、それぞれの湾曲している方向を同一方向にして積層する場合、一方の熱伝達抑制シート1の内弧面5と他方の熱伝達抑制シート1の外弧面6とを面接触させてもよい。これにより、図2に示すように単一の湾曲している方向への押圧力に対する耐力が高くなる。
【0139】
2枚の熱伝達抑制シート1を積層する場合、湾曲している方向が互いに異なるようにすることもできる。図10(A)に示すように、2枚の熱伝達抑制シート1を、それぞれの内弧面5が電池セル201と対向し、中央部1Aにて、それぞれの外弧面6同士が当接して、全体が略X字状の断面形状を呈するように積層している。電池セル201は、外周面の長手方向の中央部分が膨張しやすいため、それに対応する熱伝達抑制シート1の中央部1Aが2倍に厚くなるため、高強度となる。
【0140】
また、図10(B)に示すように、2枚の熱伝達抑制シート1を、それぞれの内弧面5同士が対面するように、全体が略O字状の断面形状を呈するように積層してもよい。上記したように、電池セル201は、外周面の長手方向の中央部分が膨張しやすいため、それに対応する熱伝達抑制シート1の中央部1Aでの膨張吸収性能が高まる。
【符号の説明】
【0141】
1 熱伝達抑制シート
1A 中央部
1B 周縁部
5 内弧面
6 外弧面
10 基材
15 隙間
20 第1の無機粒子
21 第2の無機粒子
23,30 第1の無機繊維
24,31 第2の無機繊維
25 無機粒子
100 押圧治具
100a 押圧面
200 組電池
201 電池セル
210 電池ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10