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  • 特開-洗浄用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079142
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 9/02 20060101AFI20240604BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240604BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C11D9/02
A61K8/36
A61Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191893
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大作 香奈恵
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 須美子
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC422
4C083AC432
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE07
4C083EE10
4H003AB03
4H003BA01
4H003CA02
4H003DA01
4H003DA02
4H003DA05
4H003DB01
4H003DC02
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】石けんカスが発生しにくい新規な洗浄用組成物を提供する。
【解決手段】脂肪酸石けんを含む洗浄用組成物であって、前記脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、不飽和脂肪酸と、炭素数12以上の飽和脂肪酸と、を含み、前記脂肪酸組成における、不飽和脂肪酸含有量が22質量%以上であり、かつ、炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量が65質量%以下である、洗浄用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸石けんを含む洗浄用組成物であって、
前記脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、不飽和脂肪酸と、炭素数12以上の飽和脂肪酸と、を含み、
前記脂肪酸組成における、不飽和脂肪酸含有量が22質量%以上であり、かつ、炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量が65質量%以下である、洗浄用組成物。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸が、エルシン酸を含む、請求項1に記載の洗浄用組成物。
【請求項3】
液体状である、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸を含み、
前記脂肪酸組成における、リノール酸含有量が3質量%以上23質量%以下である、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項5】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸とオレイン酸とを含み、
前記リノール酸と、前記オレイン酸と、の質量比が、1:1~1:6である、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として炭素数10~14の飽和脂肪酸を含み、
前記脂肪酸組成における、炭素数10~14の飽和脂肪酸含有量が60質量%以下である、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸組成における、炭素数8~10の飽和脂肪酸含有量が6質量%以上である、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。
【請求項8】
石油系界面活性剤及び/又はキレート剤を実質的に含まないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の洗浄用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石けんカスが発生しにくい洗浄用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸石けんは古くから使用されている洗浄剤であり、植物油脂のケン化や、脂肪酸と水酸化カリウムや水酸化ナトリウムとの中和反応により作製されている。
ケン化により得られた脂肪酸カリウムおよび脂肪酸ナトリウムは、皮膚、毛髪などの身体や、衣類および食器などの生活雑貨の洗浄に用いられるが、生活に使用される水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属と反応し、脂肪酸カルシウム塩や脂肪酸マグネシウム塩などの水に不溶な物質となる。脂肪酸カルシウム塩や脂肪酸マグネシウム塩(石けんカス)は毛髪にきしみ感を生じさせたり、濃色の衣類に白く斑点として現れるなど、家庭での通常使用において問題が生じたりしていた。
従来その対策として、保湿剤やキレート剤の添加により、毛髪のきしみ感の抑制、衣類の白色化の低減などが実施されてきた。また近年は自然由来成分を使用し添加物を最小限に抑えた製品を好む消費者が増えていることから、石油由来成分や添加物を使用せずに上記問題を解決する方法が求められている。
【0003】
また、従来、上記課題を解決する手段として、脂肪酸塩に加え、アルキルポリグリコシド、有機酸塩および/または無機酸塩を含有する液体洗浄剤組成物(特許文献1)や、炭素数8~22の脂肪酸又はそのナトリウム塩に加え、アルキルエーテルカルボン酸又はその塩を含有する枠練り石けん組成物(特許文献2)、オレイン酸ナトリウム及び/又はカリウム塩を含む水添加型の消火剤(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-035808号公報
【特許文献2】特許5427966号公報
【特許文献3】特許5388260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記先行技術があるところ、本発明が解決しようとする課題は、石けんカスが発生しにくい新規な洗浄用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、脂肪酸石けんを含む洗浄用組成物であって、前記脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、不飽和脂肪酸と、炭素数12以上の飽和脂肪酸と、を含み、前記脂肪酸組成における、不飽和脂肪酸含有量が22質量%以上であり、かつ、炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量が65質量%以下である、洗浄用組成物である。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくい。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記不飽和脂肪酸が、エルシン酸を含む。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくい。
【0008】
本発明の好ましい形態では、液体状である。
このような洗浄用組成物は、取り扱いしやすい。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記不飽和脂肪酸が、リノール酸を含み、前記脂肪酸組成における、リノール酸含有量が3質量%以上23質量%以下である。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくく、かつ酸化安定性に優れる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記不飽和脂肪酸が、リノール酸とオレイン酸とを含み、前記リノール酸と、前記オレイン酸と、の質量比が、1:1~1:6である。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくい。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として炭素数10~14の飽和脂肪酸を含み、前記脂肪酸組成における、炭素数10~14の飽和脂肪酸含有量が60質量%以下である。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくい。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記脂肪酸組成における、炭素数8~10の飽和脂肪酸含有量が6質量%以上である。
このような洗浄用組成物は、石けんカスが発生しにくい。
【0013】
本発明の好ましい形態では、石油系界面活性剤及び/又はキレート剤を実質的に含まない。
このような洗浄用組成物は、肌の弱い人でも使用ができ、容易に生分解する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石けんカスが発生しにくい洗浄用組成物を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態では、石けんカスが発生しにくく、かつ酸化しにくい洗浄用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】洗濯評価値の基準を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、脂肪酸石けんを含む洗浄用組成物である。
そして、本発明に含まれる脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、不飽和脂肪酸と、炭素数12以上の飽和脂肪酸と、を含み、前記脂肪酸組成における、不飽和脂肪酸含有量が22質量%以上であり、かつ、炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量が65質量%以下であることを特徴とする。
【0017】
以下、本発明の洗浄用組成物に含まれる、脂肪酸石けんの脂肪酸組成について、好ましい形態を説明する。
【0018】
本発明において脂肪酸石けんは、脂肪酸と塩基とから生成される。
脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ゾーマリン酸、リノール酸、リノレン酸、アラミン酸、ガドレン酸、ベヘニン酸、エルシン酸、リグノセリン酸、セラコレイン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸、リシノレイン酸、等が挙げられる。
また、これらの脂肪酸を含有する天然油脂由来の混合脂肪酸であってもよい。
【0019】
前記脂肪酸と反応して石けんを生成する塩基としては、特に限定されないが、好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。
【0020】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、好ましくは脂肪酸カリウム及び/又は脂肪酸ナトリウムである。
【0021】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、不飽和脂肪酸と炭素数12以上の飽和脂肪酸を含む。
【0022】
不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルシン酸等の単価不飽和脂肪酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ピノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸、等が挙げられる。
【0023】
炭素数12以上の飽和脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、等が挙げられる。
【0024】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、前記炭素数12以上の飽和脂肪酸以外の飽和脂肪酸を含んでいても良い。
前記炭素数12以上の飽和脂肪酸以外の飽和脂肪酸としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪酸組成における不飽和脂肪酸含有量は、22質量%以上であり、かつ炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量は65質量%以下である。
【0026】
前記脂肪酸組成における不飽和脂肪酸含有量は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、特に好ましくは55質量%以上である。
また、前記脂肪酸組成における不飽和脂肪酸含有量は、好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは60質量%以下である。
【0027】
前記脂肪酸組成における炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量は、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは35質量%以下である。
また、前記脂肪酸組成における炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量は、好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは25質量%以上である。
【0028】
前記脂肪酸組成における前記炭素数12以上の飽和脂肪酸と前記不飽和脂肪酸との合計含有量は、好ましくは80質量%以上かつ、質量比が1:4~1:0.25である。より好ましくは1:3~1:0.33であり、特に好ましくは1:2~1:0.5である。
【0029】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、好ましくは炭素数8~10の飽和脂肪酸を含む。
前記脂肪酸組成における炭素数8~10の飽和脂肪酸含有量は、好ましくは6質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。
また、前記脂肪酸組成における炭素数8~10の飽和脂肪酸含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
炭素数8~10の飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、好ましくはリノール酸とオレイン酸とを含む。
前記リノール酸と、前記オレイン酸との質量比は、好ましくは1:1~1:6である。より好ましくは1:1~1:5、特に好ましくは1:1~1:4である。
【0031】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、好ましくはエルシン酸を含む。
前記脂肪酸組成におけるエルシン酸含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。
【0032】
前記脂肪酸組成におけるリノール酸含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。
また、前記脂肪酸組成におけるリノール酸含有量は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは23質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以下である。
【0033】
前記脂肪酸組成におけるオレイン酸含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。
また、脂肪酸組成におけるオレイン酸含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下であり、特に好ましくは40質量%以下である。
【0034】
本発明の洗浄用組成物における脂肪酸石けんは、脂肪酸組成として、好ましくは炭素数10~14の飽和脂肪酸を含む。
前記脂肪酸組成における炭素数10~14の飽和脂肪酸含有量は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
また、脂肪酸組成における炭素数10~14の飽和脂肪酸含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。
炭素数10~14の飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
【0035】
また、本発明において脂肪酸石けんは、本発明の脂肪酸含有量を満たす範囲で、脂肪酸を中和、もしくは油脂をケン化したものであることが好ましい。
【0036】
本発明において、油脂として、動植物油を用いることが好ましい。本発明において、動植物油とは、動植物に由来する天然油脂及びこのような天然油脂から得られる加工油脂のことであり、例えば、大豆油、菜種油、米油、コメヌカ油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、菜種油、コーン油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ひまし油、オリーブ油、ツバキ油、アルガン油、バオバブ油、マカデミアナッツ油、アーモンド油、ローズヒップ油、MCT、魚油、牛脂、豚脂、乳脂等の天然油脂、これらの分別、水素添加、エステル交換等による改質油脂、これらの混合物等を例示できる。これらの油脂は、精製したもの、未精製のもの共に使用できるが、精製されたものの方が好ましい。
また、本発明において、上記油脂から選ばれる1又は2以上を用いることが好ましい。
【0037】
本発明において、油脂として、パーム油、パーム核オレイン、ヤシ油、MCT、ハイオレイックヒマワリ油、極度硬化ハイエルシン菜種油、ハイエルシン菜種油、ひまし油、コメヌカ油から選ばれる1又は2以上を用いることがより好ましい。
【0038】
本発明において、全油脂中のパーム核オレイン含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
また、全油脂中のパーム核油オレイン含有量は、好ましくは70質量%以下、60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0039】
本発明において、全油脂中のMCT含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、全油脂中のMCT含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0040】
本発明において、全油脂中のハイオレイックヒマワリ油含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、本発明において、全油脂中のハイオレイックヒマワリ油含有量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0041】
本発明において、全油脂中のハイエルシン菜種油含有量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、全油脂中のハイエルシン菜種油含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0042】
本発明において、全油脂中のコメヌカ油含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、全油脂中のコメヌカ油含有量は、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0043】
本発明において、油脂として、パーム核オレイン及びハイオレイックヒマワリ油を組み合わせて用いることが好ましい。全油脂中のパーム核オレインとハイオレイックヒマワリ油の含有量比(質量%)は、好ましくは1:0.5~1:10であり、より好ましくは1:0.5~1:6、さらに好ましくは1:0.5~1:3である。
【0044】
本発明において、油脂として、パーム核オレイン及びコメヌカ油を組み合わせて用いることが好ましい。全油脂中のパーム核オレインとコメヌカ油の含有量比(質量%)は、好ましくは1:0.5~1:10であり、より好ましくは1:0.5~1:6、さらに好ましくは1:0.5~1:3である。
【0045】
本発明において、油脂として、パーム核オレイン及びハイエルシン菜種油を組み合わせて用いることが好ましい。全油脂中のパーム核オレインとハイエルシン菜種油の含有量比(質量%)は好ましくは1:1~1:10であり、より好ましくは1:2~1:8、さらに好ましくは1:4~1:6である。
【0046】
本発明において、油脂として、パーム核オレイン、ハイオレイックヒマワリ油及びハイエルシン菜種油を組み合わせて用いることが好ましい。
また、油脂としてパーム核オレイン、コメヌカ油及びハイエルシン菜種油を組み合わせて用いることが好ましい。
【0047】
油脂や洗浄用組成物の脂肪酸組成は、例えば、基準油脂分析法(暫15-2003、脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に則ってキャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
【0048】
本発明の洗浄用組成物に対して、前記脂肪酸石けんの含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
また、本発明の洗浄用組成物に対して、前記脂肪酸石けんの含有量は、好ましくは42質量%以下であり、より好ましくは38質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0049】
以下、本発明の洗浄用組成物のより好ましい形態を説明する。
【0050】
本発明の洗浄用組成物は、好ましくは液体状である。この場合、本発明の洗浄用組成物中に水を含むことが好ましい。
水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水など、いずれも用いることができる。なかでもイオン交換水が好適である。
【0051】
本発明の洗浄用組成物全量に対して、水の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0052】
本発明の洗浄用組成物が水を含む場合、脂肪酸石けんと水の含有量比は、1:1.5~1:3.5であることが好ましい。より好ましくは、1:1.75~1:3.25であり、さらに好ましくは、1:2~1:3である。
【0053】
本発明の洗浄用組成物中に、石油系界面活性剤及び/又はキレート剤を実質的に含まないことが好ましい。
本発明でいう「実質的に含まない」とは、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでいても良いことを意味するものである。
【0054】
洗浄用組成物中の石油系界面活性剤及び/又はキレート剤含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0055】
石油系界面活性剤には、皮膚に刺激反応を誘発しやすく、肌荒れの原因が指摘されるものも存在する。このため、肌に触れる可能性がある洗浄用組成物においては、石油系界面活性剤を含有することなく、肌荒れしにくく、かつ使用感に優れる製品を求める消費者も少なくない。
そのため、本発明において、石油系界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0056】
従来、石けんカスの発生を抑制するために、キレート剤が用いられてきた。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチドロン酸、ペテント酸5Na等が挙げられるが、これらは生分解性の悪さなど、環境への負荷が問題視されてきた。そのため、本発明において、キレート剤を実質的に含まないことが好ましい。
また、L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム等の生分解性のキレート剤が知られているが、石けん成分とL-グルタミン酸二酢酸四ナトリウムを混合すると常温でもゲル化してしまう欠点がある。こうした問題を発生させないためにも、本発明において、キレート剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0057】
本発明の洗浄用組成物は、本発明の効果を損なわないことを条件として、任意成分として、当技術分野において既知の香料、pH調整剤、増粘剤、防腐剤などを含んでもよい。これらは、二種以上を併用してもよい。任意成分の含有量は、本発明の効果を損なわないことを条件として、特に限定されず、必要に応じて調節することができる。
【0058】
香料としては、天然由来であることが好ましく、例えば、ヒノキチオール、ラベンダー油、ペパーミント油、オレンジ油、イランイラン油、フランキンセンス油、ローレル油、ローズウッド油、ゼラニウム油、ローズ油、ハッカ油、ネロリ油、カモミール油、グレープフルーツ油、ジンジャー油、ティーツリー油、ユーカリ油、セージ油、サイプレス油、サンダルウッド油、ジャスミン油、タイム油、マジョラム油、レモン油、クローブ油、カルダモン油、シダーウッド油、シナモン油、パイン油、パチュリ油、パルマローザ油、フェンネル油、プチグレン油、ベルガモット油、マンダリンオレンジ油、ミルラ油、レモングラス油、ジュニパーベリー油、ベチバー油、ユズ油、アニス油、スペアミント油、ラヴィンサラ油、プチグレン油などが挙げられる。
【0059】
pH調整剤としては、当技術分野において既知の任意の無機酸、有機酸、無塩基、有機塩基を使用することができる。有機酸が好ましく、例えば、クエン酸、乳酸、酪酸、グリコール酸、クエン酸Naなどが挙げられる。
増粘剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えばキサンタンガム、カラギーナン、グァガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、クインスシード、デキストラン、ヒアルロン酸、アルギン酸Na、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、寒天、などが挙げられる。
防腐剤としては、当技術分野において既知の任意のものを使用することができ、例えばヒノキチオール、フェネチルアルコール、チャエキス、乳酸桿菌/ダイコン根発酵液、乳酸桿菌/ワサビ根発酵エキス、シロヤナギ樹皮エキス、酸化銀、カプリルヒドロキサム酸、カプリリルグリコール、プロパンジオール、ペンタンジオール、ブチレングリコール、カワラヨモギエキス、チョウジエキス、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0060】
本発明の洗浄用組成物の適用対象は、特に限定されないが、衣類等の繊維製品、頭髪、肌、食器、浴室、浴槽等が挙げられる。
本発明の洗浄用組成物の適用対象は、好ましくは繊維製品であり、繊維製品としては、特に限定されないが、例えば、シャツ、ズボン、下着、ハンカチ、布団、カーテン等が挙げられる。
【実施例0061】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。実施例中、各成分の配合量について、単位は質量%である。また、炭素数nの脂肪酸のことを、Cnと表記する(例えば、炭素数8のカプリル酸をC8と表記する)。
【0062】
[油脂の精製]
(パーム核オレイン)
パーム核オレインの原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0063】
(ヤシ油)
ヤシ油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0064】
(MCT)
パーム核油又はヤシ油から、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールのみを精製することにより得た。
【0065】
(パーム油)
パーム油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0066】
(ハイオレイックヒマワリ油)
ハイオレイックヒマワリ油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0067】
(極度硬化ハイエルシン菜種油)
極度硬化ハイエルシン菜種油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0068】
(ハイエルシン菜種油)
ハイエルシン菜種油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0069】
(ヒマシ油)
ヒマシ油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0070】
(コーン油)
コーン油の原料を、脱色、脱臭することにより得た。
【0071】
(コメヌカ脂肪酸)
コメヌカ油から得られた脂肪酸を精製することにより得た。
【0072】
[製法]
水50~70質量%に、油脂又は脂肪酸20~35質量%を混合した後、水酸化カリウム10~20質量%を加えて、100℃±4℃の温度下でケン化させた。
その後、反応物を水で希釈し、各実施例に供する洗浄用組成物を用意した(ここで、洗浄用組成物における脂肪酸カリウムが本発明における脂肪酸石けんに相当)。
ここで、各実施例に用いた油脂又は脂肪酸は、表1に示すものである。
【0073】
また、各実施例に用いた洗浄用組成物における脂肪酸石けんの脂肪酸組成を表2に示す。
ここで、脂肪酸組成は、基準油脂分析法(暫15-2003、脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法))に準じて測定した。
ガスクロマトグラフィー装置は、島津製作所(株)製、GC-2010型を用い、カラムは、SUPELCO社製、SP-2560を用いた。
脂肪酸石けん中の脂肪酸組成において、リシノール酸(C18-1+OH)含有量のみ、ひまし油の脂肪酸組成の文献値(リシノール酸含有量:87.2%、引用元:油脂化学便覧 改訂三版)を用いて計算を行った。
【0074】
[評価]
上記製法により得られた洗浄用組成物を表2に示す試験に供し、洗浄用組成物の性質を評価した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
[評価方法]
<石けんカス段階評価>
1.5±0.15kgの黒色の衣類と、上記製法により得られた洗浄用組成物を、水38Lに対し、石けん純分が54.75gになるように、洗濯機(日立製 ビートウォッシュ BW-DV80E)に投入し、水道水(硬度:65~75)を使用して洗濯した。
具体的には、洗濯推奨使用量の3倍の濃度である、石けん純分54.75gの洗浄用組成物を、衣類の評価にばらつきが生じないよう3Lの水に均一に分散させた後、衣類に含水させ、洗濯機に投入した。その後、水量38L、すすぎ回数2回、おしゃれ着(デリケート)コースで洗濯した。
その後、洗濯した衣類を自然乾燥させ、翌日の衣類への白色化度合いを、洗浄用組成物の製造を専門とする評価者4名が目視にて評価した。白色化度合いを洗濯評価値として判定し、以下に示す基準で評価した。評価基準の数値は、図1を用いて決定した。洗濯評価値が低いほど、衣類への石けんカスの付着が少ないことを示している。
(評価基準)
◎:1~4
〇:5~6
×:7~10
【0078】
なお、上記試験において、洗浄用組成物の製造を専門とする評価者4名による評価結果の平均を求め、洗濯評価値とした。
【0079】
[洗浄力試験]
汚染布として、湿式人工汚染布(JIS規格 一般財団法人洗濯科学協会 湿式人工汚染布 JISC9606)を用いた。
洗浄液として、200mLビーカーに水道水100mLを入れ、上記製法により得られた洗浄用組成物を、水1Lに対し、石けん純分で0.48gになるように加え、攪拌して調整したものを用いた。
前記洗浄液が入ったビーカーに、前記汚染布を投入し、スリーワンモーター(HEIDON製BL-3000)を用いて10分間攪拌した。攪拌終了後、洗浄液から汚染布を取り出し、1分間の脱水処理を行った後、アイロンにて乾燥させた。
洗浄前の汚染布、洗浄後の汚染布及び基準布(ここでいう基準布とは、汚染布を人工的に汚染処理する前の清浄布のこと)について、それぞれ反射率を色差計(コニカミノルタ製)で測定し、以下に示す式によって洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄後の汚染布の反射率-洗浄前の汚染布の反射率)/(基準布の反射率-洗浄前の汚染布の反射率)×100
汚染布の洗浄率を求め、以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:15%以上
〇:10%以上15%未満
△:5%以上10%未満
×:5%未満
【0080】
[酸化安定性(酸化難易度)]
本明細書において酸化安定性の指標として下記「酸化難易度」を用いた。
脂肪酸石けん中の不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)含量にそれぞれ特定の係数(一価不飽和脂肪酸…0.89、二価不飽和脂肪酸…21、三価不飽和脂肪酸…39)を掛けた数値の和をその洗浄用組成物の酸化難易度とした(参考文献:福沢健治、寺尾純二、脂質過酸化実験法、廣川書店)。
例…オレイン酸46.2%、リノール酸8.7%、リノレン酸0%の場合。
(酸化難易度)=(0.89×46.2)+(21×8.7)+(39×0)=224
上記より求めた酸化難易度をもとに、以下のように酸化安定性を評価した。
(酸化難易度)
◎:~200
〇:201~400
△:401~600
×:601~
【0081】
[考察]
表2に示す通り、脂肪酸石けんの脂肪酸組成における、不飽和脂肪酸含有量が22質量%以上であり、かつ、炭素数12以上の飽和脂肪酸含有量が65質量%以下である洗浄用組成物(以下、洗浄用組成物Aと呼ぶ。)を用いて製造した洗浄剤は、石けんカスの発生を抑制できることがわかった。また、さらに脂肪酸組成としてエルシン酸を含む洗浄用組成物A(以下、洗浄用組成物Bと呼ぶ。)を用いて製造した洗浄剤は、石けんカスの発生をより抑制できることがわかった。
【0082】
また、実施例1~5と比較例1との比較から、脂肪酸組成としてリノール酸含有量が3質量%以上23質量%以下である、洗浄用組成物AまたはBを用いて製造した洗浄剤は、石けんカスの発生を抑制でき、さらに酸化難易度が低いことがわかった。
【0083】
また、脂肪酸組成としてリノール酸とオレイン酸とを含み、リノール酸と、オレイン酸との質量比が、1:1~1:6である洗浄用組成物AまたはBを用いて製造した洗浄剤は、石けんカスの発生を抑制できることがわかった。
【0084】
また、脂肪酸組成として炭素数10~14の飽和脂肪酸含有量が60質量%以下である、洗浄用組成物AまたはBを用いて製造した洗浄剤は、石けんカスの発生を抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の洗浄用組成物は、浴用石けんや洗髪用石けん、洗顔用石けん、手洗い用石けんに応用することができる。

図1