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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079147
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240604BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240604BHJP
   B05B 11/10 20230101ALI20240604BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101Z
B05B11/10 101Z
F04B9/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191900
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【テーマコード(参考)】
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084EB01
3E084FA09
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD25
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC36
3H075DA02
3H075DA03
3H075DB13
3H075DB40
(57)【要約】
【課題】使用開始時における押下ヘッドの回転操作性を向上すること。
【解決手段】ステム2を有するポンプ機構3と、ポンプ機構を容器本体Aの口部A1に装着する装着キャップ4と、吐出孔5が形成された押下ヘッド6とを備え、ポンプ機構は、シリンダ30に一体的に組み合わされると共に下降端位置P1での押下ヘッドの上昇を規制する規制部材60を備え、規制部材は、押下ヘッドに形成された雌ねじ部85が螺合する雄ねじ部115が外周面に形成された規制筒111を有する規制筒本体100と、規制筒を径方向の外側から囲む外郭筒101と、を備え、外郭筒は規制筒本体に対して別体に形成されていると共に、規制筒本体に対して相対回転不能に組み合わされている吐出器1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムを有し、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるポンプ機構と、
前記ポンプ機構を前記容器本体の口部に装着する装着キャップと、
前記ステムの上端部に装着されると共に、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、を備え、
前記ポンプ機構は、該ポンプ機構のシリンダに一体的に組み合わされると共に、前記押下ヘッド及び前記ステムの下降端位置での前記押下ヘッド及び前記ステムの上昇を規制する規制部材を備え、
前記規制部材は、
前記押下ヘッドに形成された雌ねじ部が螺合する雄ねじ部が外周面に形成された規制筒を有する規制筒本体と、
前記規制筒を径方向の外側から囲むと共に、前記装着キャップよりも上方に配置された外郭筒と、を備え、
前記外郭筒は、前記規制筒本体に対して別体に形成されていると共に、前記規制筒本体に対して相対回転不能に組み合わされていることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器において、
前記規制筒本体は、
前記シリンダに装着される外嵌筒と、
前記外嵌筒を径方向の外側から囲む囲繞筒と、
前記外嵌筒と前記囲繞筒とを全周にわたって径方向に繋ぐ連結壁とを有し、
前記連結壁には、該連結壁を貫通すると共に、周方向に間隔をあけて配置された係止孔が形成され、
前記外郭筒は、前記係止孔内に配置され、前記係止孔に対して周方向に係止された係止突起を備え、前記囲繞筒に装着されている、吐出器。
【請求項3】
請求項2に記載の吐出器において、
前記係止孔は、周方向に沿った周幅が前記係止突起の周方向に沿った周幅よりも大きく形成され、前記規制筒と前記外郭筒との間に入り込んだ流体を外部に排出する排出孔とし機能し、
前記係止突起は、前記係止孔のうち周方向の一方側に位置する第1周端縁に対して係止された第1係止突起と、前記係止孔のうち周方向の他方側に位置する第2周端縁に対して係止された第2係止突起と、を備えている、吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステムを有するポンプ部と、ポンプ部を容器本体の口部に装着させる装着キャップと、ステムの上端部に装着され、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、下降端位置に位置する押下ヘッドが着脱可能に装着され、押下ヘッド及びステムの上方移動を規制する規制リングと、を備えた吐出器が知られている。
規制リングは、ポンプ部を構成するシリンダに一体的に組み合わされ、シリンダと共に装着キャップを介して容器本体の口部に装着されている。押下ヘッドは、規制リングに対してねじ結合によって装着されることで下降端位置に位置している。
【0003】
吐出器を使用する場合には、押下ヘッドを軸線回りに回転させることで、規制リングとのねじ結合を解除することができる。これにより、ステム及び押下ヘッドを上方移動させて、上昇端位置に位置させることができる。これにより、これ以降、押下ヘッドを押下げ操作することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-64673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記従来の吐出器では、例えば強度性、装飾性、光学性、機能性等の各種特性を付与するために、押下ヘッド、装着キャップ及び規制リングに対して蒸着加工により各種の蒸着膜を形成している場合が多い。この場合、押下ヘッド、装着キャップ及び規制筒のうち、一般的に外部から視認される外観部分に蒸着を行うため、規制筒の雄ねじ部に対しても蒸着膜が形成されてしまう。
そのため、互いに螺合する規制筒の雄ねじ部と押下ヘッドの雌ねじ部との間において、ねじ結合の食いつきによる摩擦抵抗に加えて、蒸着膜による摩擦抵抗が加わるため、押下ヘッドを回転操作する際の回転トルクが高くなり易い。従って、吐出器を使用する際の押下ヘッドの回転操作性が悪く、改善の余地があった。
さらには、規制筒の雄ねじ部に形成された蒸着膜が擦れることによって、該蒸着膜が剥れてしまう場合があり、品質低下を招き易い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、使用開始時における押下ヘッドの回転操作性を向上することができる吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムを有し、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるポンプ機構と、前記ポンプ機構を前記容器本体の口部に装着する装着キャップと、前記ステムの上端部に装着されると共に、内容物を吐出する吐出孔が形成された押下ヘッドと、を備え、前記ポンプ機構は、該ポンプ機構のシリンダに一体的に組み合わされると共に、前記押下ヘッド及び前記ステムの下降端位置での前記押下ヘッド及び前記ステムの上昇を規制する規制部材を備え、前記規制部材は、前記押下ヘッドに形成された雌ねじ部が螺合する雄ねじ部が外周面に形成された規制筒を有する規制筒本体と、前記規制筒を径方向の外側から囲むと共に、前記装着キャップよりも上方に配置された外郭筒と、を備え、前記外郭筒は、前記規制筒本体に対して別体に形成されていると共に、前記規制筒本体に対して相対回転不能に組み合わされていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吐出器によれば、使用するにあたって、下降端位置に位置する押下ヘッドを規制部材に対して回転させ、押下ヘッドに形成された雌ねじ部と規制筒に形成された雄ねじ部との螺合を解除する。これにより、ステムに加わる上方付勢力によって、ステム及び押下ヘッドを上昇させることができ、上昇端位置に位置させることができる。そのため、これ以降、押下ヘッドを押下げ操作することができ、押下げ操作に伴ってポンプ機構を作動させて内容物が吐出することができる。
【0009】
ところで規制部材は、規制筒を径方向の外側から囲む外郭筒を備えている。そのため、ステム及び押下ヘッドを上昇端位置に位置させた際に、外郭筒を利用して、規制筒の外周面に形成された雄ねじ部を外側から囲んで隠すことができる。従って、外部から雄ねじ部を見え難くすることができ、デザイン性を向上することができる。
【0010】
特に、吐出器の組立前段階において、規制部材単品に対して蒸着膜を形成する蒸着作業を行う際、規制筒本体とは別体に形成された外郭筒を規制筒本体から取り外し、外郭筒だけに蒸着膜を形成することができる。これにより、雄ねじ部に蒸着膜を形成することなく、外部から視認される外郭筒だけに蒸着膜を形成して、各種の特性を付与することができる。従って、押下ヘッドが下降端位置に位置しているときに、蒸着膜が形成されていない雄ねじ部と、従来通り蒸着膜が形成されていない雌ねじ部とを螺合させることができる。そのため、雄ねじ部と雌ねじ部との間の摩擦抵抗を低減することができ、強い力を要することなく押下ヘッドをスムーズに回転させて、上昇端位置に位置させることができる。従って、使用開始時における押下ヘッドの回転操作性を向上することができる。
さらに、雄ねじ部に蒸着膜が形成されていないため、蒸着膜による擦れが生じることがなく、蒸着膜が意図せずに剥れてしまう等の不都合が生じることがない。従って、吐出器の品質を維持することが可能である。
【0011】
さらに外郭筒は、規制筒本体に対して相対回転不能に組み合わされているので、例えば容器本体内に内容物を充填した後、容器本体の口部に吐出器の組み付けを行う際に、外郭筒を把持しながら装着キャップのねじ込み操作を行うことも可能である。従って、外郭筒を利用して多様の組み付けを行うことができ、製造効率の向上に貢献することができる。
【0012】
(2)前記規制筒本体は、前記シリンダに装着される外嵌筒と、前記外嵌筒を径方向の外側から囲む囲繞筒と、前記外嵌筒と前記囲繞筒とを全周にわたって径方向に繋ぐ連結壁とを有しても良い。前記連結壁には、該連結壁を貫通すると共に、周方向に間隔をあけて配置された係止孔が形成されても良い。前記外郭筒は、前記係止孔内に配置され、前記係止孔に対して周方向に係止された係止突起を備え、前記囲繞筒に装着されても良い。
【0013】
この場合には、係止孔内に係止突起を係止させた状態で外郭筒を囲繞筒に装着することで、規制筒本体に対して外郭筒を組み合わせることができる。特に、係止孔に対して係止突起を周方向に係止させているので、外郭筒の回り止めを適切に行うことができ、規制筒本体に対して外郭筒を相対回転不能に確実に組み合わせることができる。
【0014】
(3)前記係止孔は、周方向に沿った周幅が前記係止突起の周方向に沿った周幅よりも大きく形成され、前記規制筒と前記外郭筒との間に入り込んだ流体を外部に排出する排出孔とし機能しても良い。前記係止突起は、前記係止孔のうち周方向の一方側に位置する第1周端縁に対して係止された第1係止突起と、前記係止孔のうち周方向の他方側に位置する第2周端縁に対して係止された第2係止突起と、を備えても良い。
【0015】
この場合には、係止孔を排出孔として利用できるので、例えば製造時に規制部材単品、或いは吐出器全体に徐冷用のシャワー水(冷却水)等をかけたとしても、規制筒と外郭筒との間にシャワー水等を溜めることなく、排出することができる。従って、カビ等の発生を防止することができる。なお、吐出器の使用時に、内容物を含め、何等かの流体が規制筒と外郭筒との間に入り込んだとしても、外部に適切に排出することができる。
さらに係止孔の第1周端縁に第1係止突起が係止し、且つ係止孔の第2周端縁に第2係止突起が係止しているので、周方向の一方側及び周方向の他方側のいずれに対しても、外郭筒の回り止めを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吐出器によれば、使用開始時における押下ヘッドの回転操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る吐出器の実施形態を示す半縦断面図である。
図2図1に示す押下ヘッドが下降端位置から上昇端位置に上昇した状態の吐出器の半縦断面図である。
図3図1に示す規制部材の周辺を拡大した状態を示す半縦断面図である。
図4図3に示すA-A線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム2を有するポンプ機構3と、図示しない内容物が収容された容器本体Aの口部A1にポンプ機構3を装着する装着キャップ4と、吐出孔5が形成された押下ヘッド6と、を備えている。
なお、吐出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂材料を用いた成形品とされている。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えばシャンプー、ボディソープ、化粧料等の液体内容物が挙げられる。
【0019】
容器本体A、装着キャップ4、ポンプ機構3及び押下ヘッド6は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿って容器本体Aから押下ヘッド6に向かう方向を上方、その反対を下方という。さらに軸線O方向から見た平面視において、軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0020】
本実施形態の吐出器1は、未使用段階では、図1に示すようにステム2及び押下ヘッド6が下降端位置P1に位置し、且つ押下ヘッド6が後述する規制部材60に螺着して保持されることで、装着キャップ4に対する押下ヘッド6の上方移動が規制されている。一方、使用段階では、図2に示すように、ステム2及び押下ヘッド6は上昇端位置P2に位置して、吐出操作のための待機状態を維持する。
【0021】
(容器本体)
図1に示すように、容器本体Aは、口部A1、肩部(不図示)、胴部(不図示)及び底部(不図示)が上方から順に連設された有底筒状に形成されている。容器本体Aの口部A1の外周面には、雄ねじ部A2が形成されている。
【0022】
(装着キャップ)
装着キャップ4は、容器本体Aの口部A1を径方向の外側から囲む装着筒10と、装着筒10の上端部から径方向の内側に向けて突出した環状のキャップ天壁11と、を備えた有頂筒状に形成されている。
キャップ天壁11の内側には、後述する突出筒33やステム2等が挿通されている。キャップ天壁11は、環状のパッキン12及び後述するシリンダ30のフランジ部31を挟んで容器本体Aの口部A1の上端開口縁上に配置されている。
【0023】
装着筒10の内周面には、容器本体Aの口部A1に形成された雄ねじ部A2に螺合する雌ねじ部13が形成されている。これにより、装着キャップ4は、雄ねじ部A2と雌ねじ部13とのねじ結合による螺着によって容器本体Aの口部A1に装着されている。
ただし、装着キャップ4の装着方法は、螺着に限定されるものではなく、例えば容器本体Aの口部A1に対して例えばアンダーカット嵌合によって装着されても構わない。なお、図示の例では、装着キャップ4の外周面には、ローレット加工等の滑り止め処理が施されている。
【0024】
(ポンプ機構)
図1及び図2に示すように、ポンプ機構3は、容器本体Aの口部A1内に挿入された状態で、装着キャップ4によって容器本体Aの口部A1の内側に保持されている。
ポンプ機構3は、上方付勢状態で下方移動可能に配設され、上端部に押下ヘッド6が装着される筒状のステム2と、ステム2の上下動に連係する筒状のピストン20と、ピストン20が内部に上下動可能に嵌合された筒状のシリンダ30と、ピストン20の内側に挿通され、ステム2の上下動に連係するピストンガイド40と、ステム2の上下動に連係して作動すると共に、シリンダ30内の圧力変化に応じてシリンダ30の下端開口部37を開閉する下部弁体50と、シリンダ30の上端部に装着されると共に、押下ヘッド6を下降端位置P1で保持する規制部材60と、を備えている。
【0025】
(シリンダ)
シリンダ30は、装着キャップ4の内側に配設され、パッキン12を介して容器本体Aの口部A1の上端開口縁上に配置される環状のフランジ部31と、フランジ部31の内周縁部から下方に向けて延びたシリンダ周壁32と、フランジ部31の内周縁部から上方に向けて延びた突出筒33と、シリンダ周壁32の下端縁から下方に向けてさらに延びた収容筒34と、収容筒34の下端縁から径方向の内側に向けて突出した環状の下弁座部35と、下弁座部35から下方に向けて延びた吸込み筒36と、を備えている。
【0026】
フランジ部31は、装着キャップ4のキャップ天壁11によって、容器本体Aの口部A1の上端開口縁との間に上下方向に挟まれている。
これにより、シリンダ30を含むポンプ機構3の全体は、装着キャップ4を介して容器本体Aの口部A1に装着されている。なお、シリンダ30は、容器本体Aの口部A1よりも下方に向けて延び、容器本体Aの内側に入り込んでいると共に、上方に向けて開口している。これにより、シリンダ周壁32の内側には、ステム2が上方から挿入されている。
【0027】
シリンダ周壁32には、装着キャップ4の内側に位置する部分に、該シリンダ周壁32を径方向に貫通する導入孔32aが形成されている。容器本体A内とシリンダ30内とは、導入孔32aを通じて連通可能とされている。
突出筒33は、例えばシリンダ周壁32よりも直径が大きい筒状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、突出筒33の直径はシリンダ周壁32の直径と同等であっても構わない。突出筒33の外周面には、径方向の外側に向けて突出した係合突起が形成されている。
【0028】
収容筒34は、例えばシリンダ周壁32よりも直径が小さい筒状に形成されている。収容筒34の内側には下部弁体50が収容されている。下弁座部35の内側は、シリンダ30における下端開口部37として機能し、シリンダ30内と容器本体A内とを連通させている。
吸込み筒36は、例えば収容筒34よりも直径が小さい筒状に形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、吸込み筒36の直径は収容筒34の直径と同等であっても構わない。吸込み筒36の内側には、容器本体A内の内容物を吸い上げる吸上チューブ38が嵌合されている。
【0029】
なお、吸上チューブ38は、ポンプ機構3とは別体とされ、下端開口が容器本体Aの底部に近接する位置まで延設延びている。特に吸上チューブ38をポンプ機構3と別体とすることで、例えば容器本体Aの仕様(サイズや種類等)に応じて最適な吸上チューブ38をポンプ機構3に取り付けることが可能とされている。
【0030】
(下部弁体)
下部弁体50は、収容筒34の内側に嵌合された嵌合筒51と、嵌合筒51よりも上方に位置する規制部52と、嵌合筒51の内側に配設され、シリンダ30の下端開口部37を開閉する弁本体53と、を備えている。
【0031】
規制部52は、軸線Oを挟んで径方向に対向する一対の側板と、一対の側板同士を連結する中板と、一対の側板及び中板の各上端部に一体に連結された頂板と、を備えている。
一対の側板及び中板は、軸線O方向から見た平面視で全体形状がH状となるように形成されている。また、一対の側板及び中板は、上下方向の長さが互いに同等とされ、且つそれぞれの上下位置は互いに同等とされている。
【0032】
弁本体53は、軸線Oと同軸に配置された円板状に形成され、下弁座部35に対して上方から離反可能に着座して、シリンダ30における下端開口部37を閉塞している。弁本体53の外周縁部と、嵌合筒51の内周面との間には、弁本体53を弾性変位可能に支持する複数の弾性連結片54が周方向に間隔をあけた状態で連結されている。
【0033】
上述のように構成された下部弁体50は、シリンダ30内の加圧時にシリンダ30の下端開口部37を弁本体53が閉塞すると共に、シリンダ30内の減圧時にシリンダ30の下端開口部37を弁本体53が開放する逆止弁として機能する。
これにより、シリンダ30内の加圧時に、シリンダ30内から容器本体A内への下端開口部37を通じた内容物の流出を規制することができると共に、シリンダ30内の減圧時に、容器本体A内からシリンダ30内への下端開口部37を通じた内容物の流入を許容することが可能とされている。
【0034】
(ピストンガイド)
ピストンガイド40は、有頂筒状の栓部41と、栓部41から上方に向けて突出した装着部42とを備え、シリンダ30内にステム2と共に上下動可能に配設されている。
【0035】
栓部41は、図1に示すような未使用段階において、シリンダ周壁32内と収容筒34内との連通を遮断している。具体的には、図1に示すように、押下ヘッド6及びステム2が下降端位置P1に位置している場合には、栓部41は下部弁体50の規制部52に対して上方から接触して、それ以上の下方移動が規制されている。さらに栓部41における周壁部の下端部は、収容筒34の内側に対して密に嵌合されている。これにより、シリンダ周壁32内と収容筒34内との連通を遮断することが可能とされている。
【0036】
これに対して、図2に示すように、押下ヘッド6及びステム2が上昇端位置P2に位置する場合には、栓部41が規制部52から離脱して収容筒34よりも上方に離れて位置する。これにより、シリンダ周壁32内と収容筒34内との連通を許容することが可能とされている。
【0037】
さらに図1に示すように、栓部41における周壁部には、径方向の外側に向けて突出する近接突起43が周方向に間隔をあけて複数形成されている。近接突起43の外周縁は、収容筒34よりも上方に位置し、且つシリンダ周壁32の内周面よりも径方向の内側に位置している。これにより、近接突起43は、押下ヘッド6及びステム2が下降端位置P1に位置している場合には、収容筒34とシリンダ周壁32との接続部分に対して上方から近接又は当接する。
【0038】
装着部42は、周方向に間隔をあけて配置された複数の分割周壁と、複数の分割周壁における周方向の中央部から径方向の内側に向けて各別に突出するリブと、を備えている。
分割周壁の外周面は、栓部41における周壁部よりも径方向の内側に位置している。各リブにおける径方向の内側端部同士は、軸線O上で互いに連結されている。リブは、分割周壁における上下方向の全域にわたって配設されている。
上述のように構成された装着部42は、周方向で隣り合う分割周壁同士の間を通じて分割周壁の内外が連通している。
【0039】
上述のように構成されたピストンガイド40と下部弁体50との間には、ステム2及びピストンガイド40を弾性復元力によって上方付勢すると共に、ステム2及びピストンガイド40の下方移動に伴って弾性変形するコイルばね70が配設されている。
具体的には、コイルばね70は、下部弁体50における規制部52を囲んだ状態で、ピストンガイド40における栓部41の頂壁部と、下部弁体50における嵌合筒51の頂壁部との間に配設されている。コイルばね70は、シリンダ30内に設けられ、ステム2の上下動に連係して作動(弾性変形)する。なお、コイルばね70としては、金属製であっても良いし、樹脂製であっても良い。
【0040】
(ステム)
ステム2は、ピストンガイド40の装着部42を径方向の外側から囲む下筒部2aと、下筒部2aよりも小径に形成された上筒部2bとを備え、ピストンガイド40を介して伝えられるコイルばね70からの弾性復元力によって、上方付勢状態で下方移動可能とされている。
【0041】
下筒部2aの内周面と装着部42の外周面との間には、周方向の全体に亘って環状の隙間が形成されている。下筒部2aと上筒部2bとの接続部分には、段部2cが形成されている。図示の例では、段部2cは上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びるテーパ状に形成されている。ただし、段部2cの形状は、この場合に限定されるものではなく、例えば軸線Oに対して直交する方向に突設されていても構わない。
【0042】
上筒部2bは、シリンダ30の突出筒33よりも上方に突出するように形成されている。上筒部2bにおける下側部分の内側には、ピストンガイド40の装着部42が下方から入り込んで嵌合されている。これにより、ピストンガイド40とステム2とは一体に組み合わされている。
【0043】
上筒部2bの内周面には、径方向の内側に向けて突出した規制突起2dが形成されている。規制突起2dは、装着部42の上端縁に対して上方から接触している。これにより、ステム2に対するピストンガイド40の上方移動を規制することができ、ピストンガイド40とステム2とを上下方向に互いに位置決めした状態で組み合わせることが可能とされている。さらに、コイルばね70からの上方付勢力を、ピストンガイド40を介してステム2に対して適切に伝えることが可能とされている。
【0044】
(ピストン)
ピストン20は、シリンダ周壁32の内周面に摺接する外筒21と、外筒21の内側に配設された内筒22と、外筒21と内筒22とを全周に亘って連結する環状の連結部23と、を備えている。
連結部23は、外筒21及び内筒22それぞれにおける上端部と下端部との間に位置する中間部同士を連結している。なお、内筒22は、ステム2における下筒部2a内に上下摺動可能に嵌合されている。
【0045】
このように構成されたピストン20は、図2に示すように、押下ヘッド6及びステム2が上昇端位置P2に位置したときに、外筒21を利用してシリンダ周壁32に形成された導入孔32aを閉塞することが可能とされている。
【0046】
(規制部材)
図1に示すように規制部材60は、突出筒33を利用してシリンダ30に一体的に組み合わされ、下降端位置P1で押下ヘッド6を保持することで押下ヘッド6及びステム2の上昇を規制する役割を果たしている。
【0047】
図1図4に示すように、規制部材60は、シリンダ30の突出筒33に一体的に組み合わされ、ステム2を径方向の外側から囲む規制筒本体100と、規制筒本体100をさらに径方向の外側から囲むと共に規制筒本体100に対して別体に形成された外郭筒101と、を備えている。
【0048】
規制筒本体100は、突出筒33に外嵌された外嵌筒110と、突出筒33の内側に嵌合されると共に突出筒33よりも上方に向けて突出した規制筒111と、外嵌筒110の上端部と規制筒111とを径方向に一体に連結する環状の連結環112と、外嵌筒110との間に所定の隙間をあけた状態で外嵌筒110を径方向の外側から囲む囲繞筒113と、外嵌筒110と囲繞筒113とを全周にわたって径方向に繋ぐ連結壁114と、を備えている。
【0049】
外嵌筒110は、突出筒33を径方向の外側から囲んでおり、例えば打栓等によって突出筒33に対して外嵌されている。図示の例では、外嵌筒110は、突出筒33側に形成された係合突起に対してアンダーカット嵌合されている。外嵌筒110の下端部は、シリンダ30のフランジ部31に対して上方から近接或いは接触していると共に、装着キャップ4のキャップ天壁11の内側に位置している。
【0050】
規制筒111は、突出筒33の内側に嵌合することに加えて、シリンダ周壁32の内側にも嵌合されている。なお、規制筒111は、シリンダ30に対する回り止めがされた状態で、突出筒33及びシリンダ周壁32の内側に嵌合している。規制筒111のうち突出筒33よりも上方に位置する部分の外周面には、雄ねじ部115が形成されている。
【0051】
囲繞筒113は、外嵌筒110のうちキャップ天壁11よりも上方に位置する部分を囲んでいる。そのため、囲繞筒113は、装着キャップ4よりも上方に配置されている。図示の例では、囲繞筒113は、上端開口縁が連結環112の上面に対して面一とされ、下端開口縁とキャップ天壁11との間に一定の隙間が確保されるように配置されている。
【0052】
連結壁114は、外嵌筒110のうちキャップ天壁11よりも上方に位置する部分の外周面と囲繞筒113の内周面との間を全周にわたって径方向に繋ぐように形成されている。さらに連結壁114には、該連結壁114を上下に貫通する係止孔116が周方向に間隔をあけて複数形成されている。図示の例では、係止孔116は、周方向に等間隔をあけて6つ形成されている。係止孔116のそれぞれは、軸線O方向から見た平面視で、周方向に延びる円弧状に形成されている。
【0053】
本実施形態では、係止孔116のうち周方向の一方側に位置する周端縁を第1周端縁116aと定義し、周方向の他方側に位置する周端縁を第2周端縁116bと定義する。第1周端縁116a及び第2周端縁116bは、例えば径方向に沿って延びるように形成され、且つ互いに周方向に向かい合うように配置されている。
このように、6つの係止孔116のそれぞれは、第1周端縁116a及び第2周端縁116bを有している。
【0054】
外郭筒101は、規制筒本体100のうち、少なくとも雄ねじ部115が形成された規制筒111を径方向の外側から囲む筒状に形成されていると共に、規制筒本体100に対して相対回転不能に組み合わされている。
外郭筒101は、規制筒111よりも径方向の外側に間隔をあけて配置されると共に、規制筒111を径方向の外側から全周にわたって囲む上部外郭筒120と、囲繞筒113を径方向の外側から全周にわたって囲む下部外郭筒121と、上部外郭筒120の下端部と下部外郭筒121の上端部とを径方向に連結する環状の連結リング122と、を備えている。
従って、外郭筒101の全体は、直径が2段階に変化した2段筒状に形成されている。さらに外郭筒101は、装着キャップ4よりも上方に配置されている。
【0055】
上部外郭筒120は、外径が外嵌筒110の外径と同径の筒状に形成されている。上部外郭筒120は規制筒111よりも上方に突出するように形成されている。これにより、上部外郭筒120の上端部は、規制筒111の上端部よりも上方に位置している。なお、上部外郭筒120の下端部は、連結環112よりも上方に位置している。
【0056】
なお、上部外郭筒120の上端部における内周面に、径方向の内側に向けて突出した突起部を形成しても構わない。突起部としては、例えば上部外郭筒120の全周にわたって連続して延びる環状に形成される。そして、押下ヘッド6が下降端位置P1に位置しているときに(図1参照)、後述する雌ねじ筒82に対して径方向の外側から突起部を近接或いは接触させる。これにより、突起部を利用して、上部外郭筒120と雌ねじ筒82との間に形成される隙間を隠すことができ、外観性を向上することができる。
【0057】
下部外郭筒121は、囲繞筒113の外周面に例えばアンダーカット嵌合によって装着されている。連結リング122は、囲繞筒113の上端開口縁に対して上方から接触している。これにより、外郭筒101の全体を上下方向に位置決めした状態で規制筒本体100に対して組み合わせることが可能とされている。
【0058】
連結リング122には、下方に向けて突出すると共に、連結壁114に形成された係止孔116内に配置される係止突起123が形成されている。係止突起123は、連結リング122のうち係止孔116の上方に位置する部分から下方に向けて延びるように形成されていると共に、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
具体的には係止突起123は、1つの係止孔116内に2つの係止突起123が配置されるように、周方向に間隔をあけて形成されている。従って、係止突起123は合計12個形成されている。係止突起123のそれぞれは、径方向の一定の厚みを有し、且つ該厚みよりも上下方向に沿った長さ及び周方向に沿った長さの方が長い凸リブ状に形成されている。
【0059】
本実施形態では、1つの係止孔116内に配置される2つの係止突起123のうちの一方を第1係止突起123aと定義し、他方を第2係止突起123bとして定義する。第1係止突起123aは、係止孔116における第1周端縁116aに対して周方向に係止している。第2係止突起123bは、係止孔116における第2周端縁116bに対して周方向に係止している。
これにより、外郭筒101の全体は、第1係止突起123a及び第2係止突起123bを利用して、周方向の一方側及び他方側のいずれに対しても回り止めがされている。そのため、外郭筒101は、規制筒本体100に対して軸線O回りに相対回転不能に組み合わされている。
【0060】
なお、本実施形態では、係止孔116内において、囲繞筒113の内周面から径方向の内側に向かって突出する補助突起124が形成されている。補助突起124は、各係止孔116内に2つ配置され、上下方向に延びる縦リブ状に形成されている。
1つの係止孔116内に形成された2つの補助突起124のうち、一方の補助突起124は、第1周端縁116aとの間に第1係止突起123aを周方向に挟むように、第1係止突起123aに近接して配置されている。他方の補助突起124は、第2周端縁116bとの間に第2係止突起123bを周方向に挟むように、第2係止突起123bに近接して配置されている。
これにより、第1係止突起123a及び第2係止突起123bは、周方向に適切に位置決めされ、第1周端縁116a及び第2周端縁116bに対する係止状態が維持される。ただし、補助突起124は、必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0061】
上述した係止孔116は、周方向に沿った周幅が、係止突起123の周方向に周幅よりも十分大きく形成されている。
従って、係止孔116のうち、第1係止突起123aと第2係止突起123bとの間に位置する部分は、規制筒111と上部外郭筒120との間の空間と、外嵌筒110と囲繞筒113との間の空間とを連通させ、規制筒111と上部外郭筒120との間に入り込んだ流体を外部に排出する排出孔としての役割を果たしている。
【0062】
(押下ヘッド)
図1及び図2に示すように、押下ヘッド6は、有頂筒状の操作部80と、操作部80における天板部から下方に向けて延びる嵌合筒81と、天板部から下方に向けて延びると共に、嵌合筒81を径方向の外側から囲む雌ねじ筒82と、先端に吐出孔5が形成された吐出筒83と、を備えている。
【0063】
嵌合筒81は、下端部側がステム2における上筒部2b内に嵌合されている。嵌合筒81のうちステム2よりも上方に位置する部分には、径方向の外側に向けて突出すると共に、上下方向に延びた縦長の突起片84が形成されている。突起片84の下端縁は、上筒部2bの上端開口縁に上方から当接している。これにより、ステム2に対して押下ヘッド6を上下方向に位置決めした状態で組み合わせることが可能とされている。
【0064】
雌ねじ筒82の内周面には、規制筒111の雄ねじ部115に螺合する雌ねじ部85が形成されている。雌ねじ筒82は、押下ヘッド6及びステム2が下降端位置P1に位置しているときに、雄ねじ部115が形成された規制筒111に螺着される。これにより、押下ヘッド6及びステム2は、下降端位置P1で保持される。
【0065】
吐出筒83は、操作部80における周壁部及び雌ねじ筒82を径方向に貫くように形成されていると共に、嵌合筒81内に連通している。これにより、吐出孔5は嵌合筒81内を通じてステム2内に連通している。
【0066】
さらに本実施形態の吐出器1は、押下ヘッド6が下降端位置P1に位置しているときに、規制部材60における規制筒111及びシリンダ周壁32それぞれの内周面と、ステム2における上筒部2bの外周面との間に配設され、シリンダ周壁32の導入孔32aを閉塞する閉塞筒90を備えている。
【0067】
(閉塞筒)
図1図3に示すように閉塞筒90は、シリンダ周壁32内に摺動可能に嵌合されたシール筒部91を備えている。シール筒部91は、図2に示すように押下ヘッド6及びステム2が上昇端位置P2に位置したときに、導入孔32aよりも上方に位置した状態でシリンダ周壁32の内周面に接触する。この際、シール筒部91の下端開口縁と、ピストン20の外筒21の上端開口縁とは上下方向に互いに接触する。
これに対して、図1に示すように、押下ヘッド6及びステム2が下降端位置P1に位置し、押下ヘッド6が規制筒111に螺着された状態では、シール筒部91はシリンダ周壁32の導入孔32aを閉塞する。
なお、ステム2の外周面と閉塞筒90の内周面との間には、外部とシリンダ30内とを連通する導入通路93(図3参照)が形成されている。
【0068】
(吐出器の作用)
次に、上述のように構成された吐出器1を使用して、内容物を吐出する場合について説明する。
吐出器1を使用するにあたって、まず押下ヘッド6及びステム2を図1に示す下降端位置P1から図2に示す上昇端位置P2に移行させる。具体的には、下降端位置P1に位置する押下ヘッド6を、規制部材60に対して軸線O回りに回転させ、押下ヘッド6に形成された雌ねじ部85と規制筒111に形成された雄ねじ部115との螺着を解除する。
規制部材60に対する押下ヘッド6の螺着を解除する過程において、押下ヘッド6、ステム2及びピストンガイド40が、シリンダ30に対して上昇し、ピストンガイド40の栓部41がシリンダ30の収容筒34から外れ、シリンダ周壁32内と収容筒34内とが連通する。
【0069】
そして、規制部材60に対する押下ヘッド6の螺着が外れると、コイルばね70の上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストンガイド40、ステム2及び押下ヘッド6が一体に上昇する。この過程において、ピストンガイド40における栓部41が、ピストン20の内筒22の下端部に下方から接触することで、ピストンガイド40と共にピストン20が上昇する。
【0070】
これにより、シリンダ30内が減圧されるので、下部弁体50における弁本体53が下弁座部35から離反して下端開口部37を開放する。そのため、容器本体A内の内容物を、吸上チューブ38及び下端開口部37を通じてシリンダ30内に流入させることができる。また、ピストン20の外筒21が、閉塞筒90におけるシール筒部91に下方から接触するので、閉塞筒90を上昇させることができる。これにより、閉塞筒90のシール筒部91を導入孔32aよりも上方に移動させることができると共に、外筒21を利用して導入孔32aを閉塞することができる。
【0071】
以上のことから、図2に示すように、ステム2及び押下ヘッド6を上昇端位置P2に移動させて、押下ヘッド6を吐出操作可能な待機状態に移行させることができる。
そして押下ヘッド6を上昇端位置P2に移行させた後、内容物を吐出する場合には、押下ヘッド6を押下げ操作して、ステム2及びピストンガイド40を下方移動させる。すると、ピストンガイド40の栓部41がピストン20の内筒22から下方に離間するので、シリンダ30内とステム2内とを連通させることができる。また、ステム2の下端部をピストン20の連結部23に上方から接触させることができる。
【0072】
これにより、ステム2及びピストンガイド40のさらなる下方移動に伴ってピストン20を下方移動させることができる。そのため、シリンダ30内を加圧することができ、ピストン20を導入孔32aから下方に離間させつつ、シリンダ30内の内容物をステム2内に流入させることができる。
その結果、ステム2内の内容物を、押下ヘッド6の嵌合筒81内及び吐出筒83内を通じて吐出孔5から外部に吐出することができる。
【0073】
内容物の吐出後、押下ヘッド6の押下げを解除すると、上述した上昇端位置P2への移行時と同様に、コイルばね70による上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストンガイド40、ピストン20、ステム2及び押下ヘッド6が上方に向けて復元移動する。これにより、シリンダ30内が減圧されて、弁本体53が下弁座部35から離反して下端開口部37を開放する。従って、容器本体A内の内容物を、吸上チューブ38及び下端開口部37を通じてシリンダ30内に流入させることができる。そのため、次回の押下ヘッド6の押下げ操作による内容物の吐出操作に備えることができる。
【0074】
特に本実施形態の吐出器1は、規制部材60が、雄ねじ部115が形成された規制筒111を径方向の外側から囲む外郭筒101を備えている。そのため、図2に示すように、ステム2及び押下ヘッド6を上昇端位置P2に位置させた際に、外郭筒101を利用して規制筒111の外周面に形成された雄ねじ部115を外側から囲んで隠すことができる。従って、外部から雄ねじ部115を見え難くすることができ、デザイン性を向上することができる。しかも、外郭筒101が規制筒111よりも上方に突出しているため、外郭筒101を利用して、より一層外部から雄ねじ部115を見え難くすることができる。
【0075】
特に、吐出器1の組立前段階において、規制部材60単品に対して蒸着膜を形成する蒸着作業を行う際、規制筒本体100とは別体に形成された外郭筒101だけに蒸着膜を形成することができる。これにより、雄ねじ部115に蒸着膜を形成することなく、外部から視認される外郭筒101だけに蒸着膜を形成して、各種の特性を付与することができる。
従って、押下ヘッド6が下降端位置P1に位置しているときに、蒸着膜が形成されていない雄ねじ部115と、従来通り蒸着膜が形成されていない雌ねじ部85とを螺合させることができる。そのため、雄ねじ部115と雌ねじ部85との間の摩擦抵抗を従来に比べて低減することができ、強い力を要することなく押下ヘッド6をスムーズに回転させて、上昇端位置P2に位置させることができる。従って、使用開始時における押下ヘッド6の回転操作性を向上することができる。
【0076】
さらに、雄ねじ部115に蒸着膜が形成されていないため、蒸着膜による擦れが生じることがなく、蒸着膜が意図せずに剥れてしまう等の不都合が生じることがない。従って、吐出器1の品質を維持することが可能である。
【0077】
さらに外郭筒101は、規制筒本体100に対して相対回転不能に組み合わされているので、例えば容器本体A内に内容物を充填した後、容器本体Aの口部A1に吐出器1の組み付けを行う際に、外郭筒101を把持しながら装着キャップ4のねじ込み操作を行うことも可能である。従って、外郭筒101を利用して多様の組み付けを行うことができ、製造効率の向上に貢献することができる。
【0078】
特に、係止孔116に対して係止突起123を周方向に係止させているので、外郭筒101の回り止めを適切に行うことができ、規制筒本体100に対して外郭筒101を相対回転不能に確実に組み合わせることができる。具体的には、係止孔116の第1周端縁116aに第1係止突起123aを係止させ、且つ係止孔116の第2周端縁116bに第2係止突起123bを係止させるので、周方向の一方側及び周方向の他方側のいずれに対しても外郭筒101の回り止めを行うことができる。
【0079】
さらに係止孔116を排出孔として利用できるので、例えば製造時に規制部材60単品、或いは吐出器1全体に徐冷用のシャワー水(冷却水)等をかけたとしても、規制筒111と外郭筒101との間にシャワー水等を溜めることなく、図3に示す矢印Wの如く排出することができる。従って、カビ等の発生を防止することができる。
さらに吐出器1の使用時に、内容物を含め、何等かの流体が規制筒111と外郭筒101との間に入り込んだとしても、排出孔を利用して外部に適切に排出することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0081】
例えば、ポンプ機構3としては上述の構成に限定されるものではなく、押下ヘッド6の押下げ操作によって内容物を吐出することができれば、その他のポンプ機構3を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0082】
A…容器本体
A1…容器本体の口部
P1…下降端位置
P2…上昇端位置
R…セット空間
1…吐出器
2…ステム
3…ポンプ機構
4…装着キャップ
5…吐出孔
6…押下ヘッド
30…シリンダ
60…規制部材
85…雌ねじ部
100…規制筒本体
101…外郭筒
110…外嵌筒
111…規制筒
113…囲繞筒
114…連結壁
115…雄ねじ部
116…係止孔
116a…第1周端縁
116b…第2周端縁
123…係止突起
123a…第1係止突起
123b…第2係止突起
図1
図2
図3
図4