(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079161
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240604BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240604BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240604BHJP
C08L 97/02 20060101ALI20240604BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240604BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/09
C08L1/02
C08L97/02
C08K7/14
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191929
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】片倉 陽加
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB01X
4J002AH00X
4J002BB01W
4J002BB21Y
4J002DL007
4J002EF066
4J002EF096
4J002EF106
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD206
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物において、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上させる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとその他の単量体との共重合体、又は、エチレンとその他の単量体との共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
フィラーを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラーが、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フィラーがセルロースナノファイバーである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記アミック酸の分子量が3000以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記アミック酸の官能基数が1から5である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
酸変性ポリプロピレンを含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記アミック酸が芳香族アミック酸である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む添加剤。
【請求項11】
前記添加剤が、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤、密着性向上剤又は相溶性向上剤である、請求項10に記載の添加剤。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む、ガラス繊維強化プラスチック。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む、ウッドプラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン樹脂に各種添加剤を配合することによって、樹脂成形体の様々な性能を向上させることが知られている。例えば、ポリオレフィン樹脂に混合し難い成分を均一に混合させる添加剤として、相溶化剤が用いられている。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどの汎用樹脂と木質との相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィンが広く使用されている。そして、これまで相溶化能に優れた様々な酸変性ポリオレフィンが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィンを熱減成して得られる1000炭素当り1ないし10個の末端二重結合を有する数平均分子量800ないし20,000の低分子量ポリオレフィンの該二重結合にラジカル発生剤の不存在下、熱的に不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を酸変性低分子量ポリオレフィンの重量に基づいて0.1ないし10%付加させてなる酸価0.5ないし60の酸変性低分子量ポリオレフィンからなることを特徴とする樹脂用添加剤が提案されている。このような樹脂用添加剤の市販品の代表例としては、ユーメックス(三洋化成工業(株)製)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂用添加剤は、樹脂とフィラー等との相溶化能に優れ、樹脂成形体の表面の滑らかさが向上する一方で、樹脂成形体の弾性率、機械強度、又は耐衝撃性が低下する場合があり、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物において、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上させる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物において、アミック酸を添加することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の形態を含む。
[1]
アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物。
[2]
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとその他の単量体との共重合体、又は、エチレンとその他の単量体との共重合体である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
フィラーを含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記フィラーが、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5]
前記フィラーがセルロースナノファイバーである、[3]に記載の樹脂組成物。
[6]
前記アミック酸の分子量が3000以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記アミック酸の官能基数が1から5である、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
酸変性ポリプロピレンを含む、[1]から[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記アミック酸が芳香族アミック酸である、[3]に記載の樹脂組成物。
[10]
[1]から[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む添加剤。
[11]
前記添加剤が、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤、密着性向上剤又は相溶性向上剤である、[10]に記載の添加剤。
[12]
[1]から[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む、ガラス繊維強化プラスチック。
[13]
[1]から[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む、ウッドプラスチック。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物において、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上させる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、合成例1で得られたアミック酸のNMRスペクトルである。
【
図2】
図2は、合成例2で得られたアミック酸のNMRスペクトルである。
【
図3】
図3は、合成例3で得られたアミック酸のNMRスペクトルである。
【
図4】
図4は、合成例4で得られたアミック酸のNMRスペクトルである。
【
図5】
図5は、合成例6で得られたアミック酸のNMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、アミック酸とポリオレフィン樹脂とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、このような構成とすることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上させることができる。
【0012】
[アミック酸]
本実施形態において、アミック酸とは、アミド酸とも呼ばれており、アミンとカルボン酸無水物とから得られる反応物を意味する。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物に含まれるアミック酸としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)、(2)、(2)'及び(3)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
(式(1)中、R
1は、フェニル基、ナフチル基、下記式(1-1)で表される基、又は下記式(1-2)で表される基を表し、R
2及びR
3は、各々独立して、水素原子、メチル基、又はビニル基を表し、R
2及びR
3が結合してベンゼン環を形成してもよい。)
【化2】
【化3】
【0014】
【化4】
(式(2)及び(2)'中、R
21及びR
22は、各々独立して、フェニル基、又はナフチル基を表し、R
23は、下記式(2-1)で表される基、下記式(2-2)で表される基、下記式(2-3)で表される基、下記式(2-4)で表される基、又は下記式(2-5)で表される基を表す。)
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0015】
【化10】
(式(2)中、R
31、R
32、R
33及びR
34は、各々独立して、水素原子、メチル基、ビニル基を表し、R
31及びR
32が結合してベンゼン環を形成してもよく、R
33及びR
34が結合してベンゼン環を形成してもよく、R
35は、炭素数2~12のアルキレン基、下記式(3-1)で表される基、下記式(3-2)で表される基、下記式(3-3)で表される基、下記式(3-4)で表される基、又は下記式(3-5)で表される基を表す。)
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0016】
本実施形態において、上記式(1)で表される化合物は、下記式(1-A)で表される化合物又は下記式(1-B)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に一層向上させることができる傾向にある。
【化16】
【化17】
(式(1-A)及び(1-B)中、R
1は、式(1)中のR
1と同義である。)
【0017】
本実施形態において、上記式(1-A)で表される化合物は、下記式(1-A-1)で表される化合物、又は、下記式(1-A-2)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができ、特に耐衝撃性が顕著に向上する傾向にある。
【化18】
【化19】
【0018】
本実施形態において、上記式(1-B)で表される化合物は、下記式(1-B-1)で表される化合物、又は、下記式(1-B-2)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【化20】
【化21】
【0019】
本実施形態において、上記式(2)で表される化合物は、下記式(2-A)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に一層向上させることができる傾向にある。
【化22】
(式(2-A)中、R
21及びR
22は、式(2)中のR
21及びR
22と同義である。)
【0020】
本実施形態において、上記式(2-A)で表される化合物は、下記式(2-A-1)で表される化合物、下記式(2-A-2)で表される化合物、又は、下記式(2-A-3)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができ、特に耐衝撃性が顕著に向上する傾向にある。
【化23】
【化24】
【化25】
【0021】
本実施形態において、上記式(2)'で表される化合物は、下記式(2-A)'で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に一層向上させることができる傾向にある。
【化26】
(式(2-A)'中、R
21及びR
22は、式(2)'中のR
21及びR
22と同義である。)
【0022】
本実施形態において、上記式(2-A)'で表される化合物は、下記式(2-A-1)'で表される化合物、下記式(2-A-2)'で表される化合物、又は、下記式(2-A-3)'で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができ、特に耐衝撃性が顕著に向上する傾向にある。
【化27】
【化28】
【化29】
【0023】
本実施形態において、上記式(3)で表される化合物は、下記式(3-A)で表される化合物又は下記式(3-B)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に一層向上させることができる傾向にある。
【化30】
【化31】
(式(3-A)及び(3-B)中、R
35は、式(3)中のR
35と同義である。)
【0024】
本実施形態において、上記式(3-A)で表される化合物は、下記式(3-A-1)で表される化合物、又は、下記式(3-A-2)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができ、特に耐衝撃性が顕著に向上する傾向にある。
【化32】
【化33】
【0025】
本実施形態において、上記式(3-B)で表される化合物は、下記式(3-B-1)で表される化合物、又は、下記式(3-B-2)で表される化合物であることが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなアミック酸を含有することによる、樹脂成形体であり、弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができており、特に耐衝撃性が顕著に向上する傾向にある。これは、成型時の溶融状態でアミック酸がイミド骨格に化学変化すると推定され、そのイミド骨格の強度に由来して、物理的な特性を向上したと考えられる。
【化34】
【化35】
【0026】
本実施形態において、アミック酸の分子量は、3000以下であることが好ましく、100~2000であることがより好ましく、200~1000であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、アミック酸の分子量が前記範囲であると、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
なお、低分子量のアミック酸については、例えば、非特許文献1:「Zhong,Di-Chang;Liao,Lie-Qiang;Wang,Ke-Jun;Liu,Hui-Jin;Luo,Xu-Zhong、Soft Matter (2015),11(32),p6386-6392」に記載されており、非特許文献1では、低分子量のアミック酸が溶剤中、温度応答性ゲルを形成することについて報告がなされているが、熱可塑性樹脂中での効果については何ら検討されていない。
【0027】
本実施形態において、アミック酸の官能基数は、1から5であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、アミック酸の官能基数が前記範囲であると、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0028】
なお、本実施形態において、アミック酸は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)装置を使用して同定することができる。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物において、アミック酸の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、アミック酸の含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0030】
なお、本実施形態において、アミック酸の含有量は、溶融混練時の仕込み比により算出することができる。
【0031】
[アミック酸の製造方法]
本実施形態において、アミック酸を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、アミンと酸無水物とを反応させる方法が挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、非特許文献1:「Soft Matter (2015),11(32),p6386-6392」に記載の合成法、非特許文献2:「Journal of Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry (2014),51(2),p134-143」に記載の合成法、非特許文献3:「Advanced Synthesis & Catalysis (2016), 358(13),p2041-2046」に記載の合成法、非特許文献4:「Organic Letters (2011),13(5),p892-895」に記載の合成法によってアミック酸を製造することができる。
【0032】
[アミン]
アミック酸を製造する際に用いるアミンとしては、特に限定されないが、例えば、アニリン、1-ナフチルアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,10-デカンジアミン、ベンゾグアナミン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(以下「BAF」とも記す)、L(-)-フェニルアラニン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸ナトリウム、プロリン、チロシン、トリプトファン、リシンなどが挙げられる。
【0033】
[酸無水物]
アミック酸を製造する際に用いる酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、ピロメリット酸無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-ビフタル酸無水物、4,4'-オキシジフタル酸無水物、スルホニルジフタル酸無水物が挙げられる。
【0034】
[反応条件]
アミンと酸無水物との反応温度は、0~120℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。また、アミンと酸無水物との反応圧力は、常圧であることが好ましい。また、アミンと酸無水物との反応時間は、0.1~120時間であることが好ましく、3~72時間であることがより好ましい。また、アミンと酸無水物との反応は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、アミンと酸無水物との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」とも記す)、4-メチル-2-ペンタノン(以下「MIBK」とも記す)、ジメチルスルホオキシド、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンが挙げられる。
【0035】
[ポリオレフィン樹脂]
本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとその他の単量体との共重合体、又は、エチレンとその他の単量体との共重合体であることが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンであることがより好ましく、ポリプロピレンであることが特に好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなポリオレフィン樹脂を含むことにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。その他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、シクロオレフィンが挙げられる。
【0036】
なお、本実施形態において、ポリオレフィン樹脂は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)装置や赤外分光光度計を使用して同定することができる。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、1~99質量部であることが好ましく、5~98質量部であることがより好ましく、10~95質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂の含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0038】
なお、本実施形態において、ポリオレフィン樹脂の含有量は、溶融混練時の仕込み比により算出することができる。
【0039】
[フィラー]
本実施形態の樹脂組成物は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーとしては、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、セルロース繊維、木粉であることがより好ましく、セルロース繊維であることがさらに好ましく、セルロースナノファイバーであることが特に好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなフィラーを含むことにより、樹脂成形体とした場合の機械強度を一層向上させることができる傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物は、フィラーを含む場合、アミック酸が芳香族性を有するアミック酸(以下「芳香族アミック酸」とも記す)であると、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
なお、本実施形態において、セルロースナノファイバーとは、繊維幅が概ね1ナノメートルから数百ナノメートルのセルロース繊維である。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物において、フィラーの含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1~95質量部であることが好ましく、1~90質量部であることがより好ましく、3~75質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、フィラーの含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0041】
なお、本実施形態において、フィラーは、赤外分光光度計やNMR、元素分析などにより同定することができ、フィラーの含有量は、仕込み比により算出することができる。
【0042】
[酸変性ポリプロピレン]
本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンを含むことが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンを含むことにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む場合、酸変性ポリプロピレン樹脂と共に芳香族アミック酸を併用して含有させると、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に顕著に一層向上させることができる傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む場合、酸変性ポリプロピレン樹脂と共に芳香族性を有しないアミック酸(以下「脂肪族アミック酸」とも記す)を併用して含有させると、樹脂成形体の弾性率及び機械強度を良好に維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性を顕著に一層向上させることができる傾向にある。
上述した効果を発現するメカニズムは明らかではないが本発明者らは以下のとおり推定している。酸変性ポリプロピレンが、例えば、セルロース等のフィラーと樹脂との界面を相溶化して樹脂成形体の物理強度を高めているのに対し、本アミック酸では、アミック酸がイミド化することにより樹脂そのものの物理強度を高めていると考えられる。すなわち、アミック酸は、酸変性ポリプロピレンとは、相互作用部分が異なるため、相乗効果を発現していると推定している。
【0043】
酸変性ポリプロピレンとしては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。酸変性ポリプロピレンの市販品としては、特に限定されないが、例えば、ユーメックス(三洋化成工業(株)製)、リケエイドMG-400P(理研ビタミン(株)製)が挙げられる。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物において、酸変性ポリプロピレンの含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~10質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンの含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0045】
なお、本実施形態において、酸変性ポリプロピレンは、NMRと赤外分光光度計、酸価(JIS K 2510)により同定することができ、酸変性ポリプロピレンの含有量は、仕込み比により算出することができる。
【0046】
[その他の添加剤]
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤や難燃剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0047】
<用途>
本実施形態の添加剤は、上述の樹脂組成物を含む。本実施形態の添加剤は、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤、密着性向上剤又は相溶性向上剤であることが好ましい。
【0048】
また、本実施形態のガラス繊維強化プラスチックは、上述の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む。本実施形態のガラス繊維強化プラスチックにおいて、上述の樹脂組成物の含有量は、1~90質量%であることが好ましく、5~85質量%であることがより好ましく、10~80質量%であることがさらに好ましい。
なお、該樹脂組成物に含まれるフィラーとしてのガラス繊維の含有量は上述したとおりである。
また、本実施形態のガラス繊維強化プラスチックにおいて、上述の樹脂組成物以外に他の成分を含んでいてもよい。
【0049】
本実施形態のウッドプラスチックは、上述の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む。本実施形態のウッドプラスチックにおいて、上述の樹脂組成物の含有量は、1~90質量%であることが好ましく、5~85質量%であることがより好ましく、10~80質量%であることがさらに好ましい。また、本実施形態のウッドプラスチックにおいて、木粉の含有量は、0.1~90質量%であることが好ましく、1~85質量%であることがより好ましく、10~80質量%であることがさらに好ましい。
なお、該樹脂組成物に含まれるフィラーとしての木粉の含有量は上述したとおりである。
また、本実施形態のウッドプラスチックにおいて、上述の樹脂組成物以外に他の成分を含んでいてもよい。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例を用いて、本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
[添加剤の合成]
実施例で用いた各添加剤を以下のとおり合成した。
【0052】
[原料]
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(以下「BAF」とも記す):大阪ガスケミカル(株)製
無水フタル酸:富士フイルム和光純薬(株) 和光特級
無水コハク酸:富士フイルム和光純薬(株) 和光特級
ピロメリット酸無水物:富士フイルム和光純薬(株) 85.0+% (NMR)
ピロメリット酸:東京化成工業(株) >98.0%(T)
N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」とも記す):富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
酢酸エチル:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
1,10-デカンジアミン:東京化成工業(株) >98.0%(GC)(T)
ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」とも記す):富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
メタノール:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
アセトン:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
エタノール:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
ヘキサン:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
1,5-ジアミノペンタン:東京化成工業(株) >98.0%(T)
2-プロパノール(以下「IPA」とも記す):富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
1-ナフチルアミン:東京化成工業(株)>99.0%(GC)(T)
アニリン:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
ベンゾグアナミン:東京化成工業(株)>99.0%(HPLC)
4-メチル-2-ペンタノン(以下「MIBK」とも記す):富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
L(-)-フェニルアラニン:富士フイルム和光純薬(株) 和光特級
【0053】
[合成例1]
下記式(A-1)で表されるアミック酸(以下「BAF-Am」とも記す、分子量:644.1、CAS:457922-90-6)を以下のとおり合成した。
【化36】
BAF 81.3g(0.233mol)と、無水フタル酸69.1g(0.467mol)とを1Lナス型フラスコに投入した。前記フラスコにおいて、窒素雰囲気下、DMF 420mLを水浴で冷却しながら加えた。前記フラスコ中の溶液を25℃で一晩攪拌して反応を行った。反応後、反応液に酢酸エチルとイオン交換水とを加え、抽出操作を行って有機相を得た。得られた有機相を50℃で減圧濃縮することで、目的物(148g)を得た。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-1)で表されるアミック酸(BAF-Am)であることを確認した。当該NMRスペクトルを
図1に示す。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =7.11―7.14(d,4H),7.31―7.66(m,16H), 7.93-7.95(m,4H),10.36(s,2H),12.50―13.30(br,2H)
【0054】
[合成例2]
下記式(A-2)で表されるアミック酸(以下「DASc-Am」とも記す、分子量:372.46、CAS:1938057-46-5)を「Soft Matter (2015),11(32),p6386-6392」に記載の合成法に沿って以下のとおり合成した。
【化37】
500mLのナス型フラスコにおいて、窒素雰囲気下、無水コハク酸33.4g(0.333mol)とDMF 200mLを投入し、溶解した。その後、前記フラスコに、1,10-デカンジアミン17.0g(0.167mol)を投入し、前記フラスコ中の溶液を25℃で一晩攪拌して反応を行った。反応後、析出物の濾別を行い、200mLのメタノールで1回洗浄し、200mLのアセトンで1回洗浄し、100mLのヘキサンで1回洗浄したところ、目的物(45.1g)が得られた。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-2)で表されるアミック酸(DASc-Am)であることを確認した。当該NMRスペクトルを
図2に示す。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =1.24(m,12H),1.35―1.39(m,4H),2.26―2.31(m,4H)、2.38―2.43(m,4H),2.98―3.04(m,4H),7.78(m,2H)
【0055】
[合成例3]
下記式(A-3)で表されるアミック酸(以下「PASc-Am」とも記す、分子量:302.15)を以下のとおり合成した。
【化38】
500mLのナス型フラスコにおいて、窒素雰囲気下、無水コハク酸33.4g(0.333mol)とDMF 200mLとを投入し溶解した。その後、前記フラスコに、1,5-ジアミノペンタン28.7g(0.167mol)を投入し、前記フラスコ中の溶液を25℃で一晩攪拌して反応を行った。反応後、析出物の濾別を行い、200mLの蒸留水で1回洗浄し、200mLのイソプロピルアルコールで1回洗浄し、100mLのヘキサンで1回洗浄し、その後50℃にて24時間乾燥したところ、目的物(58.1g)が得られた。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-3)で表されるアミック酸(PASc-Am)であることを確認した。当該NMRスペクトルを
図3に示す。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =1.26-1.27(m,2H),1.35-1.39(m,4H),δ =2.26-2.31(m,4H), δ =2.38-2.43(m,4H), 2.97-3.02(m,4H) 7.81(s,2H)
【0056】
[合成例4]
下記式(A-4)で表されるアミック酸(以下「NAPTet-Am」とも記す、分子量:504.13、CAS:1094213-38-3、501647-82-1混合物)を「Journal of Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry (2014),51(2),p134-143」に記載の合成法に沿って以下のとおり合成した。
【化39】
ピロメリット酸無水物25.4g(0.117mol)とDMF 140mLとを1Lナス型フラスコに投入した。前記フラスコにおいて、窒素雰囲気下、1-ナフチルアミン33.4g(0.233mol)を水浴で冷却しながら加えた。前記フラスコ中の溶液を25℃で一晩攪拌して反応を行った。反応後、反応液に酢酸エチルとイオン交換水とを加えたところ、薄黄色の固体が析出したため濾別した。濾別した固体を、メタノール200mLで2回洗浄し、ヘキサンで1回洗浄したところ、目的物(45.2g)が得られた。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-4)で表されるアミック酸(NAPTet-Am)であることを確認した。当該NMRスペクトルを
図4に示す。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =7.54-7.60(m,6H),7.80-7.87(m,4H),7.95-8.02(m,3H),8.25(m,2H), 8.44(s,1H)、10.65(s,2H)、13.24-13.96(br、2H)
【0057】
[合成例5]
下記式(A-5)で表されるアミック酸(以下「BGSc-Am」とも記す、分子量:287.28)を以下のとおり合成した。
【化40】
500mLのナス型フラスコにおいて、窒素雰囲気下、無水コハク酸62.5g(0.625mol)と、MIBK 500mLを投入し、溶解した。その後、前記フラスコに、ベンゾグアナミン46.8g(0.25mol)を投入し、前記フラスコ中の溶液を95℃で72時間攪拌して反応を行った。反応後、反応液を放冷することで白色の析出物を確認し、濾別を行って濾物を得た。1000mLのナス型フラスコに、得られた濾物及びエタノールを投入し、フラスコ中の溶液を室温で7時間攪拌後、再度濾別したところ、目的物(50.1g)が得られた。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-5)で表されるアミック酸(BGSc-Am)であることを確認した。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =2.51(t,2H),2.93(t,2H),7.39(s,1H),7.43-7.61(m,4H), 8.31(m,2H),10.32(s,1H),12.02-12.35(br,1H)
【0058】
[合成例6]
下記式(A-6)及び式(A-6)'で表されるアミック酸(以下「AniTET-Am」とも記す、分子量:404.12、CAS:60684-14-2、16724-05-3混合物)を「Organic Letters (2011), 13(5),p892-895」に記載の合成法に沿って合成した。
【化41】
得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-6)及び式(A-6)'で表されるアミック酸(AniTET-Am)であることを確認した。当該NMRスペクトルを
図5に示す。なお、NMRスペクトル測定より上記式(A-6)及び式(A-6)'の比率は約50/50であった。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):δ =7.09―7.15(m,2H),7.34―7.40(m,4H),7.69―7.72(m,4H),7.73(s、0.5)、7.99(s,1H), 8.35(s,0.5H),10.52―10.55(m,2H),13.54(br、2H)
【0059】
また、各種物性の測定方法及び使用した原料を下記に示す。
【0060】
[物性測定]
(アイゾット衝撃強度(ノッチ付き))
後述の実施例及び比較例で得られた短冊状試験片を用いて、ISO 180に準じて、アイゾット衝撃強度(耐衝撃値(J/m2)を測定した。
【0061】
(曲げ強さ及び曲げ弾性率)
後述の実施例及び比較例で得られた短冊状試験片を用いて、ISO 178に準じて曲げ強さ(強度(MPa))及び曲げ弾性率(弾性率(MPa))を測定した。
【0062】
[原料]
(1)ポリプロピレン樹脂(以下「PP」とも記す):プライムポリマー(株)製「プライムポリプロ J105G」
(2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(以下「PP-MAH」とも記す):三洋化成工業株式会社製「ユーメックス1010」
(3)セルロース繊維:植物由来のパルプ(化学修飾されていない)シートを2mm×5mm角程度のチップ状に裁断したもの、平均繊維径:約40μm、平均繊維長:1mm以上
【0063】
[実施例1]
二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/時間の条件で、表1に示すとおり、原料として、ポリオレフィン樹脂であるPP(プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ J105G」)を97質量部、及び、添加剤のアミック酸であるDASc-Amを3質量部混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」を用いて、シリンダー温度:210℃、金型温度:40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0064】
[実施例2~6及び比較例1~2]
原料の種類及び量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1に示すとおり、比較例1及び2の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)に、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加すると、樹脂成形体の弾性率及び強度が低下してしまうことがわかった。一方、表1に示すとおり、比較例1及び実施例1~6の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)に、各アミック酸(BGSc-Am、BAF-Am、NAPTet-Am、AniTET-Am、PASc-A、DASc-Am)を添加すると、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。
【0067】
[実施例7]
二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/時間の条件で、表2に示すとおり、原料として、ポリオレフィン樹脂であるPP(プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ J105G」)を86.7質量部、セルロース繊維を10質量部、及び、添加剤のアミック酸であるBGSc-Amを3.3質量部混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」を用いて、シリンダー温度:210℃、金型温度:40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0068】
[実施例8~19及び比較例3~5]
原料の種類及び量を表2~7に示すとおりに変更した以外は、実施例7と同様の方法でペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表2~7に示す。
【0069】
【0070】
表2に示すとおり、比較例3及び実施例7~9の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、芳香族性を有する各アミック酸(BGSc-Am、BAF-Am、NAPTet-Am)を添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。特に、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、アミック酸であるBAF-Amを添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の耐衝撃性が顕著に向上することがわかった。
【0071】
【0072】
表3に示すとおり、比較例3及び実施例10~11の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、芳香族性の無い各アミック酸(PASc-A、DASc-Am)を添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率及び機械強度が良好な性能を維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性が一層向上することがわかった。
【0073】
【0074】
表4に示すとおり、比較例4及び実施例12の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、アミック酸であるBAF-Amを添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の機械強度が良好な性能を維持しつつ、樹脂成形体の弾性率及び耐衝撃性が一層向上することがわかった。また、比較例4及び実施例13の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、アミック酸であるBAF-Amを少量添加しても、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率及び機械強度が良好な性能を維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性が一層向上することがわかった。
【0075】
【0076】
表5に示すとおり、比較例5及び実施例14~16の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)と共に芳香族性を有する各アミック酸(BGSc-Am、BAF-Am、NAPTet-Am)を混合して添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)だけを単独で添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。特に、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)と共にアミック酸であるBAF-Amを混合して添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率及び機械強度が顕著に向上することがわかった。一般的に耐衝撃性とトレードオフの関係である弾性率及び機械強度とが同時に向上することは驚くべき効果である。
【0077】
【0078】
表6に示すとおり、比較例5及び実施例17~18の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、芳香族性の無い各アミック酸(PASc-A、DASc-Am)を添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率及び機械強度が良好な性能を維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性が極めて顕著に向上することがわかった。
【0079】
【0080】
表7に示すとおり、比較例4及び実施例19の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、芳香族性を有するアミック酸(BAF-Am)を添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率及び機械強度が良好な性能を維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性が極めて顕著に向上することがわかった。
本発明の樹脂組成物は、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に優れ、ガラス繊維強化プラスチック、ウッドプラスチック、ホットメルト接着剤等に有用であり、産業上の利用可能性がある。