(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079162
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 251/48 20060101AFI20240604BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240604BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C07D251/48 CSP
C08L23/00
C08K5/3477
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191930
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】廣田 真之
(72)【発明者】
【氏名】片倉 陽加
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002BB121
4J002BB213
4J002EU186
4J002FA042
(57)【要約】 (修正有)
【課題】例えば、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物である。
(式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、メチル基又はビニル基を表し、R
1及びR
2が結合してベンゼン環を形成してもよい。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、メチル基又はビニル基を表し、R
1及びR
2が結合してベンゼン環を形成してもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項3】
フィラーを含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラーが、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記フィラーがセルロースナノファイバーである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
酸変性ポリプロピレンを含む、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の樹脂組成物を含む添加剤。
【請求項8】
前記添加剤が、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤又は相溶性向上剤である、請求項7に記載の添加剤。
【請求項9】
請求項2又は3に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む、ガラス繊維強化プラスチック。
【請求項10】
請求項2又は3に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む、ウッドプラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン樹脂に各種添加剤を配合することによって、樹脂成形体の様々な性能を向上させることが知られている。例えば、ポリオレフィン樹脂に混合し難い成分を均一に混合させる添加剤として、相溶化剤が用いられている。例えば、ポリプロピレンやポリエチレンなどの汎用樹脂と木質との相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィンが広く使用されている。そして、これまで相溶化能に優れた様々な酸変性ポリオレフィンが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィンを熱減成して得られる1000炭素当り1ないし10個の末端二重結合を有する数平均分子量800ないし20,000の低分子量ポリオレフィンの該二重結合にラジカル発生剤の不存在下、熱的に不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を酸変性低分子量ポリオレフィンの重量に基づいて0.1ないし10%付加させてなる酸価0.5ないし60の酸変性低分子量ポリオレフィンからなることを特徴とする樹脂用添加剤が提案されている。このような樹脂用添加剤の市販品の代表例としては、ユーメックス(三洋化成工業(株)製)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂用添加剤は、樹脂とフィラー等との相溶化能に優れ、樹脂成形体の表面の滑らかさが向上する一方で、樹脂成形体の弾性率、機械強度、又は耐衝撃性が低下する場合があり、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、例えば、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として有用な新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として有用な新規化合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の形態を含む。
[1]
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、メチル基又はビニル基を表し、R
1及びR
2が結合してベンゼン環を形成してもよい。)
[2]
[1]に記載の化合物とポリオレフィン樹脂とを含む樹脂組成物。
[3]
フィラーを含む、[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記フィラーが、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維、からなる群より選択される少なくとも1種である、[3]に記載の樹脂組成物。
[5]
前記フィラーがセルロースナノファイバーである、[3]に記載の樹脂組成物。
[6]
酸変性ポリプロピレンを含む、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[7]
[2]又は[3]に記載の樹脂組成物を含む添加剤。
[8]
前記添加剤が、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤又は相溶性向上剤である、[7]に記載の添加剤。
[9]
[2]又は[3]に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む、ガラス繊維強化プラスチック。
[10]
[2]又は[3]に記載の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む、ウッドプラスチック。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として有用な新規化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】合成例1で得られた化合物のNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
<新規化合物>
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【化2】
(式(1)中、R
1及びR
2は、各々独立して、水素原子、メチル基又はビニル基を表し、R
1及びR
2が結合してベンゼン環を形成してもよい。)
本実施形態の化合物は、例えば、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として用いた場合に、得られる樹脂成形体の各種性能(例えば、弾性率、機械強度及び耐衝撃性等)を向上させることができる。
【0012】
本実施形態において、上記式(1)で表される化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1-1)~(1~6)で表される化合物が挙げられる。本実施形態の化合物は、このような構造であることにより、例えば、ポリオレフィン樹脂に対する添加剤として用いた場合に、得られる樹脂成形体の各種性能(例えば、弾性率、機械強度及び耐衝撃性等)を一層向上させることができる傾向にある。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0013】
なお、本実施形態の化合物は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)装置を使用して同定することができる。
【0014】
[新規化合物の製造方法]
本実施形態の化合物を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、アミンと酸無水物とを反応させてアミック酸を得る方法に準じて製造する方法が挙げられる。アミック酸を得る方法としては、具体的には、特に限定されないが、例えば、非特許文献1:「Soft Matter (2015),11(32),p6386-6392」に記載の合成法、非特許文献2:「Journal of Macromolecular Science, Part A: Pure and Applied Chemistry (2014),51(2),p134-143」に記載の合成法、非特許文献3:「Advanced Synthesis & Catalysis (2016), 358(13),p2041-2046」に記載の合成法、非特許文献4:「Organic Letters (2011),13(5),p892-895」に記載の合成法が挙げられる。
なお、非特許文献1では、低分子量のアミック酸が溶剤中、温度応答性ゲルを形成することについて報告がなされているが、熱可塑性樹脂中での効果については何ら検討されていない。
【0015】
[アミン]
本実施形態の化合物を製造する際に用いるアミンとしては、特に限定されないが、例えば、ベンゾグアナミンが挙げられる。
【0016】
[酸無水物]
本実施形態の化合物を製造する際に用いる酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、メチルコハク酸無水物、エテニルコハク酸無水物、無水シトラコン酸が挙げられる。
【0017】
[反応条件]
アミンと酸無水物との反応温度は、0℃~120℃であることが好ましく、60℃~100℃であることがより好ましい。また、アミンと酸無水物との反応圧力は、常圧であることがより好ましい。また、アミンと酸無水物との反応時間は、0.1時間~120時間であることが好ましく、3時間~72時間であることがより好ましい。また、アミンと酸無水物との反応は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、アミンと酸無水物との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」とも記す)、4-メチル-2-ペンタノン(以下「MIBK」とも記す)、ジメチルスルホオキシド、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンが挙げられる。
【0018】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、上述の化合物とポリオレフィン樹脂とを含む。本実施形態の樹脂組成物は、このような構成とすることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に向上させることができる傾向にある。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物において、上述の化合物の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより好ましく、1質量部~5質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、上述の化合物の含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0020】
なお、本実施形態において、上述の化合物の含有量は、溶融混練する際の仕込み比に対応する。
【0021】
[ポリオレフィン樹脂]
本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレンとの共重合体、プロピレンとその他の単量体との共重合体、又は、エチレンとその他の単量体との共重合体であることが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンであることがより好ましく、ポリプロピレンであることが特に好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなポリオレフィン樹脂を含むことにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。その他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、シクロオレフィンが挙げられる。
【0022】
なお、本実施形態において、ポリオレフィン樹脂は、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)装置や赤外分光光度計を使用して同定することができる。
【0023】
本実施形態の樹脂組成物において、ポリオレフィン樹脂の含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、1質量部~99質量部であることが好ましく、5質量部~98質量部であることがより好ましく、10質量部~95質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂の含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0024】
なお、本実施形態において、ポリオレフィン樹脂の含有量は、溶融混練時の仕込み比により算出することができる。
【0025】
[フィラー]
本実施形態の樹脂組成物は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーとしては、セルロース繊維、顔料、木粉及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、セルロース繊維、木粉であることがより好ましく、セルロース繊維であることがさらに好ましく、セルロースナノファイバーであることが特に好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、このようなフィラーを含むことにより、樹脂成形体とした場合の機械強度を一層向上させることができる傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物は、フィラーを含む場合、アミック酸が芳香族性を有するアミック酸(以下「芳香族アミック酸」とも記す)であると、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。なお、本実施形態において、セルロースナノファイバーとは、繊維幅が概ね1ナノメートルから数百ナノメートルのセルロース繊維である。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物において、フィラーの含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1質量部~95質量部であることが好ましく、1質量部~90質量部であることがより好ましく、3質量部~75質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、フィラーの含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0027】
なお、本実施形態において、フィラーは、赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)、元素分析などにより同定することができ、フィラーの含有量は、仕込み比により算出することができる。
【0028】
[酸変性ポリプロピレン]
本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンを含むことが好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンを含むことにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む場合、酸変性ポリプロピレン樹脂と共に芳香族アミック酸を併用して含有させると、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に顕著に一層向上させることができる傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む場合、酸変性ポリプロピレン樹脂と共に芳香族性を有しないアミック酸(以下「脂肪族アミック酸」とも記す)を併用して含有させると、樹脂成形体の弾性率及び機械強度を良好に維持しつつ、樹脂成形体の耐衝撃性を顕著に一層向上させることができる傾向にある。
【0029】
酸変性ポリプロピレンとしては、特に限定されないが、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、が挙げられる。中でも、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。酸変性ポリプロピレンの市販品としては、特に限定されないが、例えば、ユーメックス(三洋化成工業(株)製)、リケエイドMG-400P(理研ビタミン(株)製)が挙げられる。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物において、酸変性ポリプロピレンの含有量は、樹脂組成物全体100質量部に対して、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、1質量部~20質量部であることがより好ましく、1質量部~10質量部であることがさらに好ましい。本実施形態の樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレンの含有量が前記範囲であることにより、樹脂成形体とした場合の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能を総合的に更に一層向上させることができる傾向にある。
【0031】
なお、本実施形態において、酸変性ポリプロピレンは、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)及び赤外分光光度計、酸価(JIS K 2510)により同定することができ、酸変性ポリプロピレンの含有量は、仕込み比により算出することができる。
【0032】
[その他の添加剤]
本実施形態の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤や難燃剤、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0033】
<用途>
本実施形態の添加剤は、上述の樹脂組成物を含む。本実施形態の添加剤は、強度向上剤、弾性率向上剤、耐衝撃性向上剤又は相溶性向上剤であることが好ましい。
【0034】
また、本実施形態のガラス繊維強化プラスチックは、上述の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとしてガラス繊維を含む。本実施形態のガラス繊維強化プラスチックにおいて、上述の樹脂組成物の含有量は、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~85質量%であることがより好ましく、10質量%~80質量%であることがさらに好ましい。なお、該樹脂組成物に含まれるフィラーとしてのガラス繊維の含有量は上述したとおりである。
【0035】
本実施形態のウッドプラスチックは、上述の樹脂組成物を含み、該樹脂組成物がフィラーとして木粉を含む。本実施形態のウッドプラスチックにおいて、上述の樹脂組成物の含有量は、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~85質量%であることがより好ましく、10質量%~80質量%であることがさらに好ましい。また、本実施形態のウッドプラスチックにおいて、木粉の含有量は、0.1質量%~90質量%であることが好ましく、1質量%~85質量%であることがより好ましく、10質量%~80質量%であることがさらに好ましい。なお、該樹脂組成物に含まれるフィラーとしての木粉の含有量は上述したとおりである。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を用いて、本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
[新規化合物の合成]
新規化合物を以下のとおり合成した。
【0038】
[原料]
無水コハク酸:富士フイルム和光純薬(株) 和光特級
エタノール:富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
ベンゾグアナミン:東京化成工業(株)>99.0%(HPLC)
4-メチル-2-ペンタノン(以下「MIBK」とも記す):富士フイルム和光純薬(株) 試薬特級
【0039】
[合成例1]
下記式(A-1)で表される新規化合物(以下「BGSc-Am」とも記す、分子量:287.28)を以下のとおり合成した。
【化9】
500mLのナス型フラスコにおいて、窒素雰囲気下、無水コハク酸62.5g(0.625mol)と、MIBK 500mLを投入し、溶解した。その後、前記フラスコに、ベンゾグアナミン46.8g(0.25mol)を投入し、前記フラスコ中の溶液を95℃で72時間攪拌して反応を行った。反応後、反応液を放冷することで白色の析出物を確認し、濾別を行って濾物を得た。1000mLのナス型フラスコに、得られた濾物及びエタノールを投入し、フラスコ中の溶液を室温で7時間攪拌後、再度濾別したところ、目的物(50.1g)が得られた。得られた目的物についてプロトン核磁気共鳴(
1H-NMR)装置を使用して定性分析したところ、以下のとおり、上記式(A-1)で表される新規化合物(BGSc-Am)であることを確認した。また、当該NMRチャートを
図1に示す。
1H-NMR(300MHz,DMSO-d
6):(δ =2.51(t,2H),2.93(t,2H),7.39(s,1H),7.43―7.61(m,4H), 8.31(m,2H),10.32(s,1H),12.02―12.35(br,1H))
【0040】
また、各種物性の測定方法及び使用した原料を下記に示す。
【0041】
[物性測定]
(アイゾット衝撃強度(ノッチ付き))
後述の実施例及び比較例で得られた短冊状試験片を用いて、ISO 180に準じて、アイゾット衝撃強度(耐衝撃値(J/m2)を測定した。
【0042】
(曲げ強さ及び曲げ弾性率)
後述の実施例及び比較例で得られた短冊状試験片を用いて、ISO 178に準じて曲げ強さ(強度(MPa))及び曲げ弾性率(弾性率(MPa))を測定した。
【0043】
[原料]
(1)ポリプロピレン樹脂(以下「PP」とも記す):プライムポリマー(株)製「プライムポリプロ J105G」
(2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(以下「PP-MAH」とも記す):三洋化成工業株式会社製「ユーメックス1010」
(3)セルロース繊維:植物由来のパルプ(化学修飾されていない)シートを2mm×5mm角程度のチップ状に裁断したもの、平均繊維径:約40μm、平均繊維長:1mm以上
【0044】
[実施例1]
二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/時間の条件で、表1に示すとおり、原料のポリオレフィン樹脂として、PP(プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ J105G」)を99質量部、及び、添加剤として、上記合成した新規化合物であるBGSc-Amを1質量部混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」を用いて、シリンダー温度:210℃、金型温度:40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2~3及び比較例1~2]
原料の種類及び量を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1に示すとおり、比較例1及び2の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)に、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加すると、樹脂成形体の弾性率及び強度が低下してしまうことがわかった。一方、表1に示すとおり、比較例1及び実施例1~3の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)に、新規化合物(BGSc-Am)を添加すると、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。
【0048】
[実施例4]
二軸押出機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「Process11」)を用いて、温度200℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量約500g/時間の条件で、表2に示すとおり、原料のポリオレフィン樹脂として、PP(プライムポリマー(株)製、「プライムポリプロ J105G」)を86.7質量部、セルロース繊維を10質量部、及び、添加剤として、上記合成した新規化合物であるBGSc-Amを3.3質量部混練し、ペレット状の樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「HAAKE MiniJet Pro」を用いて、シリンダー温度:210℃、金型温度:40℃の条件で射出成形し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0049】
[実施例5及び比較例3~5]
原料の種類及び量を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例4と同様の方法でペレット状の樹脂組成物を調製し、短冊状試験片(樹脂成形体)を得た。得られた試験片を用いて上記方法のとおり各種物性の測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表2に示すとおり、比較例3~5及び実施例4の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、新規化合物(BGSc-Am)を添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)を添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。また、比較例5及び実施例5の結果から、ポリオレフィン樹脂(PP)及びセルロース繊維を含む樹脂組成物に、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)と共に新規化合物(BGSc-Am)を混合して添加すると、従来の添加剤である酸変性ポリプロピレン樹脂(PP-MAH)だけを単独で添加した場合に比べて、樹脂成形体の弾性率、機械強度及び耐衝撃性の3つの性能が総合的に向上することがわかった。