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特開2024-79164半導体装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079164
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/768 20060101AFI20240604BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240604BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/90 B
H01L29/50 B
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 655A
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191933
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】須澤 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】下沢 慎
【テーマコード(参考)】
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4M104AA01
4M104AA03
4M104BB14
4M104BB25
4M104DD37
4M104DD43
4M104DD84
4M104FF17
4M104FF18
4M104GG15
5F033JJ18
5F033JJ19
5F033JJ27
5F033JJ33
5F033NN07
5F033PP06
5F033PP15
5F033QQ09
5F033QQ11
5F033XX02
(57)【要約】
【課題】コンタクトプラグの埋込不良を防止することができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】深さ方向に層間絶縁膜3を貫通するコンタクトホール3aの底部は、コンタクトホール3aの形成時のオーバーエッチングにより半導体基板1のおもて面1bに形成された凹部1aで構成される。コンタクトホール3aの内部に、チタン膜4および窒化チタン膜5を順に積層してなるバリアメタルを介してタングステン膜7が埋め込まれている。熱処理によってチタン膜4をシリサイド化してチタンシリサイド膜6を形成する際にコンタクトホール3aの底部上の部分で窒化チタン膜5が沈下するが、当該窒化チタン膜5の沈下後においても、窒化チタン膜5のコンタクトホール3aの底部上における上面5aは、半導体基板1のおもて面1aよりも上方に所定高さt1だけ高い位置にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1主面側に設けられた所定の素子構造と、
前記半導体基板の第1主面上に設けられ、前記素子構造を覆う層間絶縁膜と、
深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面に達し、前記半導体基板の第1主面に形成された凹部で底部が構成されて前記素子構造の一部を露出するコンタクトホールと、
前記コンタクトホールの内壁に沿って設けられた、チタン膜および窒化チタン膜を順に積層してなるバリアメタルと、
前記半導体基板の前記凹部の内壁に沿って設けられたチタンシリサイド膜と、
前記コンタクトホールの内部において前記バリアメタルの上に設けられ、前記コンタクトホールに埋め込まれたタングステン膜と、
前記層間絶縁膜および前記タングステン膜の上に設けられた、アルミニウムを含む金属電極と、
を備え、
前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面の高さ位置は、前記半導体基板の第1主面よりも前記金属電極側に位置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板の第1主面から前記金属電極側に前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面までの高さは10nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記コンタクトホールの底部コーナーにおいて前記窒化チタン膜の上面に凹みを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板の第1主面側に所定の素子構造を形成する第1工程と、
前記半導体基板の第1主面上に、前記素子構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程と、
深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面に凹部を形成し、前記層間絶縁膜の上面から前記半導体基板に達して前記凹部で底部が構成され前記素子構造の一部を露出するコンタクトホールを形成する第3工程と、
前記コンタクトホールの内壁に沿って、バリアメタルとして、チタン膜および窒化チタン膜を順に形成する第4工程と、
熱処理により前記チタン膜と前記半導体基板とを反応させて、前記凹部の内壁に沿ってチタンシリサイド膜を形成する第5工程と、
化学気相成長法により、前記コンタクトホールの内部において前記バリアメタルの上にタングステン膜を堆積して、前記コンタクトホールを前記タングステン膜で埋める第6工程と、
前記層間絶縁膜および前記タングステン膜の上に、アルミニウムを含む金属電極を形成する第7工程と、
を含み、
前記第5工程では、前記熱処理によって前記コンタクトホールの底部上の部分で前記チタン膜の体積が減少して、前記コンタクトホールの底部上の部分で前記窒化チタン膜が沈下し、
前記熱処理による前記窒化チタン膜の沈下後においても、前記窒化チタン膜の前記コンタクトホールの底部上における上面の高さ位置を前記半導体基板の第1主面よりも上方に高い位置で維持することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程では、前記窒化チタン膜の前記バリアメタルとしての所定厚さに、前記熱処理によって前記窒化チタン膜が沈下し深さ方向へ移動する距離を加算した厚さで、前記窒化チタン膜を堆積することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第5工程の後、前記半導体基板の第1主面から上方に前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面までの高さが10nm以上であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程では、前記凹部の深さを、前記第4工程で前記コンタクトホールの底部上に堆積される前記窒化チタン膜の厚さ未満にすることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程では、前記凹部の深さを、前記第4工程で前記コンタクトホールの底部上に堆積される前記窒化チタン膜と、前記第5工程で前記半導体基板と反応せずに前記コンタクトホールの底部上に残る前記チタン膜の厚さと、の総厚さ未満にすることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、層間絶縁膜のコンタクトホールにコンタクトプラグ(半導体基板の所定電位を外部へ引き出すための引出電極部)を形成する方法として、スパッタリングまたは化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりバリアメタルとしてチタン(Ti)膜および窒化チタン(TiN)膜をこの順に積層し、CVD法によりコンタクトホールの内部において窒化チタン膜上にタングステン(W)膜を埋め込む方法が公知である(例えば、下記特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-223218号公報
【特許文献2】特開2021-034400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、コンタクトホールの形成時に、半導体基板のおもて面に、コンタクトホールの底部を構成する所定深さの凹部が形成される。その後、チタン膜をシリサイド化した際に窒化チタン膜が下方へ移動(沈下)し、半導体基板と層間絶縁膜との界面の高さ位置でバリアメタルに亀裂が入って段切れ(分断)が発生する。上記特許文献2には、バリアメタルの段切れを防止する方法について言及されていない。
【0005】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、コンタクトプラグの埋込不良を防止することができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体基板の第1主面側に、所定の素子構造が設けられている。前記半導体基板の第1主面上に、前記素子構造を覆う層間絶縁膜が設けられている。コンタクトホールは、深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面に達する。前記コンタクトホールは、前記半導体基板の第1主面に形成された凹部で底部が構成されて前記素子構造の一部を露出する。前記コンタクトホールの内壁に沿って、バリアメタルが設けられている。
【0007】
前記バリアメタルは、チタン膜および窒化チタン膜を順に積層してなる。前記半導体基板の前記凹部の内壁に沿って、チタンシリサイド膜が設けられている。タングステン膜は、前記コンタクトホールの内部において前記バリアメタルの上に設けられ、前記コンタクトホールに埋め込まれている。前記層間絶縁膜および前記タングステン膜の上に、アルミニウムを含む金属電極が設けられている。前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面の高さ位置は、前記半導体基板の第1主面よりも前記金属電極側に位置する。
【0008】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板の第1主面から前記金属電極側に前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面までの高さは10nm以上であることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記コンタクトホールの底部コーナーにおいて前記窒化チタン膜の上面に凹みを有することを特徴とする。
【0010】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。半導体基板の第1主面側に所定の素子構造を形成する第1工程を行う。前記半導体基板の第1主面上に、前記素子構造を覆う層間絶縁膜を形成する第2工程を行う。深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面に凹部を形成し、前記層間絶縁膜の上面から前記半導体基板に達して前記凹部で底部が構成され前記素子構造の一部を露出するコンタクトホールを形成する第3工程を行う。前記コンタクトホールの内壁に沿って、バリアメタルとして、チタン膜および窒化チタン膜を順に形成する第4工程を行う。熱処理により前記チタン膜と前記半導体基板とを反応させて、前記凹部の内壁に沿ってチタンシリサイド膜を形成する第5工程を行う。
【0011】
化学気相成長法により、前記コンタクトホールの内部において前記バリアメタルの上にタングステン膜を堆積して、前記コンタクトホールを前記タングステン膜で埋める第6工程を行う。前記層間絶縁膜および前記タングステン膜の上に、アルミニウムを含む金属電極を形成する第7工程を行う。前記第5工程では、前記熱処理によって前記コンタクトホールの底部上の部分で前記チタン膜の体積が減少して、前記コンタクトホールの底部上の部分で前記窒化チタン膜が沈下する。前記熱処理による前記窒化チタン膜の沈下後においても、前記窒化チタン膜の前記コンタクトホールの底部上における上面の高さ位置を前記半導体基板の第1主面よりも上方に高い位置で維持する。
【0012】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第4工程では、前記窒化チタン膜の前記バリアメタルとしての所定厚さに、前記熱処理によって前記窒化チタン膜が沈下し深さ方向へ移動する距離を加算した厚さで、前記窒化チタン膜を堆積することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第5工程の後、前記半導体基板の第1主面から上方に前記コンタクトホールの底部上における前記窒化チタン膜の上面までの高さが10nm以上であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3工程では、前記凹部の深さを、前記第4工程で前記コンタクトホールの底部上に堆積される前記窒化チタン膜の厚さ未満にすることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第3工程では、前記凹部の深さを、前記第4工程で前記コンタクトホールの底部上に堆積される前記窒化チタン膜と、前記第5工程で前記半導体基板と反応せずに前記コンタクトホールの底部上に残る前記チタン膜の厚さと、の総厚さ未満にすることを特徴とする。
【0016】
上述した発明によれば、第5工程の熱処理後も層間絶縁膜の側面に沿って堆積されたバリアメタルと、半導体基板の凹部の内壁に沿って堆積されたバリアメタルと、が接触した状態が維持され、バリアメタルの段切れが発生しない。このため、その後のタングステン膜の堆積時にソースガスとして用いる六フッ化タングステン(WF6)ガスにチタン膜が曝されない。これによって、タングステン膜の堆積時にチタン膜がエッチングされないため、コンタクトホール内にボイドは発生しない。また、上述した発明によれば、追加工程なしに、第5工程の熱処理後においてもコンタクトホールの底部上における窒化チタン膜の上面を、半導体基板のおもて面よりも上方に高い位置で維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、コンタクトプラグの埋込不良を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図1B】実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図2図1A,1Bのコンタクトプラグを拡大して示す断面図である。
図3図1A,1Bのコンタクトプラグの別例を拡大して示す断面図である。
図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図7】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図8】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
図9】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
図10】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
図11】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
図12】実験例のRTA後のコンタクトホールの底部コーナー近傍を観察した状態を模式的に示す断面図である。
図13】従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図14】従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図15】従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図16】従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図17】従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
本実施の形態の課題としては、バリアメタルの段切れを発生させないことで、コンタクトプラグの埋込不良を防止することが挙げられる。その理由は、バリアメタルの段切れが発生すると、化学気相成長(CVD)法によりコンタクトホールにタングステン膜を埋め込む際にソースガスとして用いるWF6ガスがバリアメタルの段切れ箇所から侵入し、WF6ガスによってチタン膜が当該段切れ箇所に露出する端部(分断面)からエッチングされていくからである(後述する図16参照)。また、WF6ガスによってバリアメタルの段切れ箇所から半導体基板がエッチングされる虞があるからである。
【0021】
CVD法によるタングステン膜の堆積時に生じるWF6ガスによるチタン膜のエッチングの反応式は、WF6(ガス)+3Ti(チタン膜)→2W(タングステン膜)+3TiF4(ガス)である。チタン膜は、TiF4ガスに変換されてCVD装置のチャンバー(処理炉)外へ排出される。チタン膜がエッチングされると、層間絶縁膜と窒化チタン膜との間にボイド(空洞)が発生する。このボイドの発生により窒化チタン膜がバリアメタルの段切れ箇所からコンタクトホールの中心側へ捲れ上がってしまい、コンタクトホールにタングステン膜を十分に埋め込むことができない。
【0022】
これによって、コンタクトプラグと半導体基板とのコンタクト抵抗(接触抵抗)が高くなるか、またはコンタクトプラグと半導体基板とを接続できないなど、コンタクトプラグの埋込不良が起きる。例えば、CVD法によるタングステン膜の堆積時に処理炉にWF6ガスを流入する前に、窒化チタン膜の表面にシラン(SiH4)ガスを蒸着させることで、その後流入されたWF6ガスがバリアメタルの段切れ箇所へ侵入しなくなり、チタン膜のエッチングが防止されるが、SiH4ガスを長時間流入する工程が増えてスループットが低下してしまう。本実施の形態は、このような課題を解消するものである。
【0023】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を例に説明する。図1A,1Bは、実施の形態1にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。図1Aには、n+型エミッタ領域13を通って第2方向Yに平行な断面における断面構造を示す。図1Bには、p++型コンタクト領域20を通って第2方向Yに平行な断面における断面構造を示す。図2は、図1A,1Bのコンタクトプラグを拡大して示す断面図である。図3は、図1A,1Bのコンタクトプラグの別例を拡大して示す断面図である。図1A,1B,2,3では、チタン膜4を太線で示す(図5~7,9~11においても同様)。図2,3では、n+型エミッタ領域13およびp++型コンタクト領域20を図示省略する(図5~11においても同様)。
【0024】
図1A,1Bに示す実施の形態1にかかる半導体装置10は、半導体基板(半導体チップ)1のおもて面(第1主面)1b側に、一般的なMOSゲート(金属-酸化膜-半導体(Metal Oxide Semiconductor)の3層構造からなる絶縁ゲート)と、半導体基板1に電気的に接続されて半導体基板1の所定電位を引き出すコンタクトプラグ(引出電極部)8と、を備えた縦型IGBTである。ここでは、半導体基板1がシリコン(Si)を半導体材料とするインゴットから切り出されたn-型のバルク基板である場合を例に説明する。
【0025】
半導体基板1は、例えば、シリコンよりもバンドギャップの広い炭化珪素(SiC)等の半導体を半導体材料としてもよい。半導体基板1がシリコンよりもバンドギャップの広い半導体材料からなる場合、後述するp+型コレクタ領域18となるp+型の出発基板(バルク基板)上に後述するn型FS領域17、後述するn-型ドリフト領域11および後述するp型ベース領域12となる各半導体層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板や、これらの領域をすべてエピタキシャル成長させたエピタキシャル基板であってもよい。
【0026】
MOSゲートは、p型ベース領域12、n+型エミッタ領域13、ゲートトレンチ14、ゲート絶縁膜15およびゲート電極16で構成されるトレンチゲート構造である。1つのMOSゲートで、IGBTの1つの単位セル(素子の構成単位)が構成される。IGBTの複数の単位セルは、例えば、半導体基板1のおもて面1bに平行な第1方向Xにストライプ状に延在する。IGBTの複数の単位セルは、半導体基板1のおもて面1bに平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yに隣接して配置されている。n-型ドリフト領域11は、半導体基板1の内部に設けられている。p型ベース領域12、n+型エミッタ領域13、p++型コンタクト領域20、後述するn型FS領域17および後述するp+型コレクタ領域18はイオン注入によって形成された拡散領域であり、n-型の半導体基板1のうち、これらの拡散領域を除く部分がn-型ドリフト領域11である。
【0027】
p型ベース領域12は、半導体基板1のおもて面1bとn-型ドリフト領域11との間に、n-型ドリフト領域11に接して設けられている。n+型エミッタ領域13およびp++型コンタクト領域20は、半導体基板1のおもて面1bとp型ベース領域12との間に、それぞれp型ベース領域12およびチタンシリサイド膜6に接して選択的に設けられている。n+型エミッタ領域13とp++型コンタクト領域20とは、互いに隣り合うゲートトレンチ14間において、第1方向Xに交互に繰り返し隣接して設けられている。p++型コンタクト領域20の深さは、例えばn+型エミッタ領域13の深さと略同じである。略同じ深さとは、製造プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ深さであることを意味する。
【0028】
++型コンタクト領域20は設けられていなくてもよい。この場合、p++型コンタクト領域20に代えて、p型ベース領域12が第1方向Xに隣り合うn+型エミッタ領域13間において半導体基板1のおもて面1bまで達してチタンシリサイド膜6に接する。n-型ドリフト領域11、p型ベース領域12、n+型エミッタ領域13およびp++型コンタクト領域20は、第2方向Yに互いに隣り合う両ゲートトレンチ14の側壁まで延在して、当該両ゲートトレンチ14の側壁のゲート絶縁膜15に接する。n-型ドリフト領域11、p型ベース領域12、n+型エミッタ領域13およびp++型コンタクト領域20は、ゲートトレンチ14の側壁のゲート絶縁膜15を介してゲート電極16に対向する。
【0029】
ゲートトレンチ14は、深さ方向Zに半導体基板1のおもて面1bからn+型エミッタ領域13およびp型ベース領域12を貫通してn-型ドリフト領域11の内部で終端している。ゲートトレンチ14は、例えば第1方向Xにストライプ状に延在する。ゲートトレンチ14の内部に、ゲート絶縁膜15を介して例えばポリシリコン(poly-Si)等からなるゲート電極16が設けられている。ゲート絶縁膜15は、ゲートトレンチ14の内壁から半導体基板1のおもて面1b上へ延在して、半導体基板1のおもて面1bの全面を覆っていてもよい。半導体基板1のおもて面1bの全面に、ゲート電極16を覆うように、BPSG(Boro Phospho Silicate Glass)等の層間絶縁膜3が設けられている。半導体基板1のおもて面1bと層間絶縁膜3との間に、ゲート絶縁膜15等による酸化膜2が介在してもよい。
【0030】
層間絶縁膜3は、後述するバリアメタル、後述するコンタクトプラグ8およびエミッタ電極9と、ゲート電極16と、を電気的に絶縁する。深さ方向Zに層間絶縁膜3および酸化膜2を貫通するコンタクトホール3aが設けられている。コンタクトホール3aの形成時に層間絶縁膜3および酸化膜2の総厚さよりも深くオーバーエッチングされることで、半導体基板1のおもて面1bに、ゲートトレンチ14と離れて所定深さd1の凹部1aが形成されている。半導体基板1のおもて面1bは、凹部1aにおいて半導体基板1の裏面(第2主面)側へ凹んだ状態となっている。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aは、コンタクトホール3aの底部を構成する。
【0031】
すなわち、コンタクトホール3aは、層間絶縁膜3および酸化膜2の側面と当該側面に連続する凹部1aの側壁とを側壁とし、半導体基板1の内部で底部が終端している。コンタクトホール3aの底部は、凹部1aの底部で構成される。コンタクトホール3aは、半導体基板1のおもて面1bに略垂直な側壁を有する略矩形状の断面形状であってもよいし、半導体基板1のおもて面1bから離れるにしたがって幅を広くしたテーパー(台形)状の断面形状であってもよい。コンタクトホール3aの底部(凹部1aの底部)の幅は、コンタクトホール3aの側壁に後述するようにスパッタリングによって窒化チタン膜5を形成可能な例えば0.2μm以上程度である。
【0032】
半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの深さd1は、凹部1aの底部上における後述するチタン膜4の堆積時(すなわち後述するRTA前)の厚さよりも深く、例えば20nmを超える。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁(側壁および底部)の全面に、第1方向Xにn+型エミッタ領域13とp++型コンタクト領域20とが交互に繰り返し露出されている。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁に、n+型エミッタ領域13が選択的に露出されていてもよい。コンタクトホール3aの内壁(側壁および底部)に沿ってバリアメタルが設けられている。バリアメタルは、チタン(Ti)膜4および窒化チタン(TiN)膜5をこの順に積層した金属積層膜である。
【0033】
バリアメタルは、バリアメタルを挟んで対向するエミッタ電極9と半導体基板1と間での原子拡散や相互反応を防止する機能を有する。また、バリアメタルは、バリアメタルであるチタン膜4やその下層の半導体基板1が後述するタングステン膜7の堆積時にCVD装置のチャンバー(処理炉)に導入するガスに曝されることを防止する機能を有する。チタン膜4および窒化チタン膜5は、それぞれ後述するようにスパッタリングにより堆積され、半導体基板1のおもて面1bに対して傾斜が大きい部分(コンタクトホール3aの側壁)や、コンタクトホール3aの底部で厚さが薄くなる傾向にあり、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で所定機能を発揮する上で問題ない厚さに適宜調整される。
【0034】
チタン膜4は、コンタクトホール3aの側壁に沿って設けられ、コンタクトホール3aの側壁全面を覆う。窒化チタン膜5は、コンタクトホール3aの内壁に沿って設けられ、チタン膜4の上面全面を覆うとともに、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁全面を覆う。チタン膜4の端部(エミッタ電極9との接触部)は、コンタクトホール3aの側壁上で終端している。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aと窒化チタン膜5との間に、後述するRTA時にシリサイド化されなかったチタン膜4が残っていてもよい。この場合、凹部1aの底部上においてチタン膜4の上面(チタン膜4と窒化チタン膜5との界面)は、半導体基板1のおもて面1bよりも下方(半導体基板1の裏面側)に位置する。チタン膜4の厚さは、例えば20nm以下である。
【0035】
窒化チタン膜5は、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁全面で後述するチタンシリサイド膜6に接する。窒化チタン膜5の端部(エミッタ電極9との接触部)は、チタン膜4の上で終端している。凹部1aの底部上における窒化チタン膜5の上面(タングステン膜7との接触面)5aは、半導体基板1のおもて面1bよりも上方(エミッタ電極9側)に位置する(図2,3参照)。半導体基板1のおもて面1bから上方にコンタクトホール3aの底部(凹部1aの底部)上における窒化チタン膜5の上面5aまでの高さt1は0nmよりも高く、好ましくは例えば10nm以上であることがよい。コンタクトホール3aの底部コーナー(側壁と底部の境界)近傍において窒化チタン膜5の上面5aに、窒化チタン膜5を貫通しない深さの凹み5bを有してもよい(図3参照)。
【0036】
半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁とn+型エミッタ領域13およびp++型コンタクト領域20との間において、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁の表面領域の全域にチタンシリサイド(Tiシリサイド)膜6が設けられている。チタンシリサイド膜6は、チタン膜4の、半導体基板1に接触する部分の少なくとも一部が半導体基板1とシリサイド化されてなる。チタンシリサイド膜6は、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁に沿って当該凹部1aの内壁の表面領域に設けられ、p++型コンタクト領域20、n+型エミッタ領域13およびp型ベース領域12に電気的に接続されている。チタンシリサイド膜6によって、コンタクトプラグ8と半導体基板1とが低抵抗なオーミック接触となる。
【0037】
コンタクトホール3aの内部において窒化チタン膜5の上に、タングステン(W)膜7が設けられている。コンタクトホール3aの内部は、タングステン膜7で完全に埋め込まれている。これらチタン膜4、窒化チタン膜5およびタングステン膜7でコンタクトプラグ8が構成される。コンタクトプラグ8の上面(エミッタ電極9との界面)は、層間絶縁膜3の上面(エミッタ電極9との界面)と同じ高さ位置か、層間絶縁膜3の上面よりも半導体基板1側に位置する。コンタクトプラグ8の上面は、第2方向Yの略中央で半導体基板1側に凹んでいてもよい。
【0038】
コンタクトプラグ8が層間絶縁膜3の上面よりも上方へ突出しないことで、エミッタ電極9が平坦化される。また、コンタクトプラグ8を埋め込み性の高いタングステン膜7で構成することによって、コンタクトホールのアスペクト比を高くすることができる。コンタクトプラグ8のアスペクト比を高くするほど、素子構造の加工パターンを微細化でき、半導体装置10の小型化が可能となる。コンタクトプラグ8のアスペクト比とは、コンタクトプラグ8の幅(≒コンタクトホール3aの上部の開口幅)に対するコンタクトプラグ8の高さの比率(=コンタクトプラグ8の高さ/コンタクトプラグ8の幅)である。
【0039】
層間絶縁膜3およびコンタクトプラグ8の上には、半導体基板1のおもて面1bの表(ひょう)面電極としてエミッタ電極(金属電極)9が設けられている。エミッタ電極9は、例えばアルミニウム層またはアルミニウムシリコン(AlSi)等のアルミニウム(Al)合金層である。エミッタ電極9は、コンタクトプラグ8およびチタンシリサイド膜6を介して半導体基板1に電気的に接続されている。半導体基板1の裏面とn-型ドリフト領域11との間に、n-型ドリフト領域11に接してn型フィールドストップ(FS:Feild Stop)領域17が設けられている。半導体基板1の裏面とn型FS領域17との間に、p+型コレクタ領域18が設けられている。半導体基板1の裏面の全面に、半導体基板1の裏面の表面電極として、p+型コレクタ領域18に接するコレクタ電極19が設けられている。
【0040】
次に、実施の形態1にかかる半導体装置10の製造方法について説明する。図4~7は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図4~7には、図1A,1Bのコンタクトプラグ8近傍を示し、半導体基板1の内部の各部を図示省略する。半導体基板1の内部の図示省略する各部の構成は図1A,1Bと同様である。まず、n-型ドリフト領域11となるn-型の半導体基板(半導体ウエハ)1を用意する。次に、半導体基板1のおもて面1b側にMOSゲートの各部(素子構造)を形成する(第1工程)。MOSゲートの各部とは、p型ベース領域12、n+型エミッタ領域13、p++型コンタクト領域20、ゲートトレンチ14、酸化膜2(ゲート絶縁膜15)およびゲート電極16である(図1A,1B参照)。
【0041】
次に、図4に示すように、CVD法により、半導体基板1のおもて面1bの全面に、層間絶縁膜3を形成し、層間絶縁膜3でゲート電極16を覆う(第2工程)。これによって、半導体基板1上には、酸化膜2および層間絶縁膜3がこの順に積層された状態となる。次に、フォトリソグラフィおよび例えばドライエッチングにより、深さ方向Zに層間絶縁膜3および酸化膜2を貫通して半導体基板1に達するコンタクトホール3aを形成する(第3工程)。半導体ウェハ面内でエッチングレート(エッチング深さ)にばらつきがあるため、層間絶縁膜3および酸化膜2の総厚さよりも深くオーバーエッチングして、コンタクトホール3aを層間絶縁膜3および酸化膜2を確実に貫通させて半導体基板1のおもて面1bに到達させる。
【0042】
このオーバーエッチングにより半導体基板1のコンタクトホール3aに露出する部分が除去され、半導体基板1のおもて面1bに、コンタクトホール3aの底部を構成する所定深さd1の凹部1aが形成される。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの深さd1は、従来方法のオーバーエッチングにより半導体基板101のおもて面101bに形成される凹部101aの深さd101(図13参照)と同程度であってもよく、例えば20nmを超える。凹部1aの側壁は、コンタクトホール3aの側壁に露出する層間絶縁膜3および酸化膜2の側面に段差なく連続する。半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁の全面に、第1方向Xにn+型エミッタ領域13とp++型コンタクト領域20とが交互に繰り返し露出される。
【0043】
次に、図5に示すように、スパッタリングにより、コンタクトホール3aの内壁(すなわち、層間絶縁膜3および酸化膜2の側面、および、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁)および層間絶縁膜3の上面(半導体基板1のおもて面1bに平行な露出面)に沿って、バリアメタルとなるチタン膜4および窒化チタン膜5をこの順に堆積(形成)する(第4工程)。コンタクトホール3aの底部(凹部1aの底部)上におけるチタン膜4の厚さは、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの深さd1よりも薄い。このため、コンタクトホール3aの底部上におけるチタン膜4の上面(窒化チタン膜5との接触面)は、半導体基板1のおもて面1bよりも半導体基板1の裏面側(下方)に位置する。
【0044】
また、窒化チタン膜5は、後のRTAによってコンタクトホール3aの底部上の部分で厚さを維持したまま沈下(下方へ移動)する。このため、RTA後においてもコンタクトホール3aの底部(凹部1aの底部)上における窒化チタン膜5の上面5aが半導体基板1のおもて面1bよりも上方に位置するように窒化チタン膜5を厚く堆積する。すなわち、このとき窒化チタン膜5に必要な厚さは、窒化チタン膜5のバリアメタルとしての機能が得られる程度の一般的な所定厚さに、チタン膜4のシリサイド化によって窒化チタン膜5が沈下して深さ方向Zへ移動する距離を加算した厚さであり、半導体装置10の設計時に検証等を行って予め取得する。スパッタリング時の窒化チタン膜5のコンタクトホール3aの底部に堆積された部分の厚さは、予め取得したスパッタリング時の窒化チタン膜5の面内の厚さの傾向から、窒化チタン膜5の層間絶縁膜3の上面に堆積された部分の厚さを確認することで算出可能である。
【0045】
次に、図6に示すように、高速熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)により、半導体基板1中のシリコン原子とチタン膜4中のチタン原子とを反応させて、チタン膜4の、半導体基板1に接触する部分(凹部1aの内壁に沿って堆積された部分)の少なくとも一部をシリサイド化することで、半導体基板1のおもて面1bの凹部1aの内壁の表面領域にチタンシリサイド膜6を形成する(第5工程)。このとき、チタン膜4が半導体基板1とのシリサイド反応に伴って半導体基板1に食われた厚さ(シリサイド化した厚さ)分だけ、凹部1aの底部上のチタン膜4の体積が減少する。このため、チタン膜4は、凹部1aの底部上で、体積が減少した分だけ厚さが薄くなって下方へ後退するか、または消失する。
【0046】
また、チタン膜4は、凹部1aの側壁においても半導体基板1とシリサイド反応し、凹部1aの側壁と直交して凹部1aの中心から離れる横方向にも後退する。図6には、凹部1aの内壁に沿って堆積されたチタン膜4がすべてシリサイド化されて消失した状態を示している。チタンシリサイド膜6の厚さは、チタン膜4のシリサイド化した厚さの2倍程度である。凹部1aの底部上のチタン膜4が下方へ後退(または消失)することで、窒化チタン膜5は凹部1aの底部上の部分で厚さを維持したまま沈下する。凹部1aの底部上における窒化チタン膜5の上面5aは窒化チタン膜5の沈下に伴ってRTA前と比べて下方へ移動するが、上述したように窒化チタン膜5の堆積時の厚さを適宜設定することで、RTA後においても凹部1aの底部上における窒化チタン膜5の上面5aは半導体基板1のおもて面1bよりも上方に所定高さt1だけ高い位置で維持される。
【0047】
層間絶縁膜3および酸化膜2上のチタン膜4はシリサイド化しないため、層間絶縁膜3および酸化膜2上のバリアメタル(チタン膜4および窒化チタン膜5)は移動しない。上述したようには凹部1aの内壁に沿った部分で窒化チタン膜5が沈下するが、凹部1aの底部上における窒化チタン膜5の上面5aが半導体基板1のおもて面1bよりも上方に高い位置で維持されることで、層間絶縁膜3および酸化膜2の側面に沿って堆積されたバリアメタルと、半導体基板1の凹部1aの内壁に沿って堆積されたバリアメタルと、が接触した状態が維持される。このため、従来方法のようなバリアメタルの段切れ(分断:図15参照)は発生しない。また、このRTAによって窒化チタン膜5中の窒化していない未反応のチタンが窒化される。
【0048】
次に、図7に示すように、ソースガスとして六フッ化タングステン(WF6)ガスを用いて、CVD法により、層間絶縁膜3の上面およびコンタクトホール3aの内部において窒化チタン膜5上にタングステン膜7を堆積する(第6工程)。上述したようにバリアメタルの段切れが発生していないことで、コンタクトホール3aの内壁の全面が最表面の窒化チタン膜5で覆われているため、チタン膜4や半導体基板1はWF6ガスに曝されない。したがって、コンタクトホール3aをタングステン膜7で完全に埋め込むことができ、層間絶縁膜3および酸化膜2と窒化チタン膜5との間にボイド(図15,16のボイド112に相当)を含まない良好なコンタクトプラグ8を形成することができる。
【0049】
また、上述したようにチタン膜4のシリサイド化時に窒化チタン膜5の凹部1aの内壁に沿った部分が沈下することで、窒化チタン膜5は、コンタクトホール3aの底部コーナー近傍で材料強度が低くなる。このため、窒化チタン膜5上にタングステン膜7が堆積されたときに、コンタクトホール3aの底部コーナー近傍において窒化チタン膜5の上面5aに、窒化チタン膜5を貫通しない深さの凹み5bが生じてもよい(図3参照)。この窒化チタン膜5の上面5aの凹み5bは、例えば、窒化チタン膜5の上面5aからコンタクトホール3aの底部コーナー(凹部1aの側壁と底部との境界)へ向かうにしたがって幅を狭くした略三角形の断面形状を有する。
【0050】
次に、タングステン膜7、窒化チタン膜5およびチタン膜4をエッチバックして、層間絶縁膜3の上面を露出させ、コンタクトプラグ8となる部分をコンタクトホール3aの内部に残す。コンタクトプラグ8は、層間絶縁膜3の上面よりも下方に位置するまでエッチバックされてもよい。次に、層間絶縁膜3およびコンタクトプラグ8の上にエミッタ電極9を形成する(第7工程)。次に、半導体基板1の裏面側に、一般的な方法によりn型FS領域17、p+型コレクタ領域18およびコレクタ電極19を形成する。その後、半導体ウェハをチップ状に個片化することで、図1A,1Bの半導体装置10が完成する。
【0051】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、コンタクトホールにチタン膜および窒化チタン膜をこの順に堆積してなるバリアメタルを介してタングステン膜を埋め込んだコンタクトプラグを備える。コンタクトホールの底部(コンタクトホールの形成時のオーバーエッチングにより半導体基板のおもて面に形成された凹部の底部)上における窒化チタン膜の上面が半導体基板のおもて面よりも上方に位置する。コンタクトホールの底部上における窒化チタン膜の上面を半導体基板のおもて面よりも上方に位置させるには、窒化チタン膜のスパッタリング時に、窒化チタン膜のバリアメタルとしての所定厚さに、チタン膜のシリサイド化のためのRTAによる窒化チタン膜の沈下による深さ方向Zの移動距離を加算した厚さで、窒化チタン膜を厚く堆積する。
【0052】
このようにRTA時の窒化チタン膜の沈下を考慮して窒化チタン膜を厚く堆積することで、追加工程なしに、RTA後においてもコンタクトホールの底部上における窒化チタン膜の上面が半導体基板のおもて面よりも上方に高い位置で維持される。これによって、層間絶縁膜および酸化膜の側面に沿って堆積されたバリアメタルと、半導体基板の凹部の内壁に沿って堆積されたバリアメタルと、が接触した状態が維持され、バリアメタルの段切れが発生しないため、タングステン膜の堆積時にソースガスとして用いるWF6ガスにチタン膜が曝されない。したがって、タングステン膜の堆積時にチタン膜がエッチングされないため、コンタクトホール内にボイドは発生しない。このため、コンタクトプラグの埋込不良を防止することができ、半導体基板との電気的接続性の良好なコンタクトプラグが得られる。また、追加工程を必要としないため、WF6ガスの導入前にシラン(SiH4)ガスを流入することでチタン膜のエッチングを防止する従来方法と比べて、スループットが向上する。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。図8~11は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法が実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法(図2~7参照)と異なる点は、コンタクトホール23aの形成時のオーバーエッチングによる半導体基板1のエッチング量を小さくして、半導体基板1のおもて面1bに形成されてコンタクトホール23aの底部を構成する凹部21aの深さd21を浅くした点である。実施の形態2にかかる半導体装置は、半導体基板1のおもて面1bの凹部21aの深さd21を浅くしたことで異なる構成以外は実施の形態1(図1A,1B参照)と同様である。
【0054】
具体的には、図8に示すように、実施の形態1と同様に、半導体基板1のおもて面側に、酸化膜2を含む所定の素子構造と、層間絶縁膜3と、形成する。次に、フォトリソグラフィおよび例えばドライエッチングにより、深さ方向Zに層間絶縁膜3および酸化膜2を貫通して半導体基板1に達するコンタクトホール23aを形成する。その際、コンタクトホール23aの底部においてオーバーエッチングされる半導体基板1のシリコンエッチング量を小さくして、当該オーバーエッチングにより半導体基板1のおもて面1bに形成されてコンタクトホール23aの底部を構成する凹部21aの深さd21を浅くする。
【0055】
半導体ウェハ面内でエッチングレートにばらつきがあるため、すべてのコンタクトホール3aで層間絶縁膜3および酸化膜2を確実に貫通させようとすると、エッチング量を可能な限り小さくしても半導体基板1がオーバーエッチングされ、半導体基板1のおもて面1bに凹部21aが形成される。凹部21aの深さd21は、窒化チタン膜25の厚さ(RTAによって凹部21aの底部上にシリサイド化されずにチタン膜24が残る場合は、当該チタン膜24の残部と窒化チタン膜25との総厚さ)未満であり、具体的には例えば10nm以下程度である。凹部21aの深さd21は、半導体装置10の設計時に検証等を行って予め取得する。
【0056】
次に、図9に示すように、スパッタリングにより、コンタクトホール23aの内壁および層間絶縁膜3の上面に沿って、チタン膜24および窒化チタン膜25をこの順に堆積する。チタン膜24の厚さは、例えば、実施の形態1のチタン膜4と同様である。凹部21aの底部上におけるチタン膜24の上面は、半導体基板1のおもて面1bよりも上方に位置してもよい。凹部21aの底部上における窒化チタン膜25の上面25aが実施の形態1と同様にRTA後に半導体基板1のおもて面1bよりも上方に位置すればよく、窒化チタン膜25の厚さは従来方法(図13~16参照)と同様にバリアメタルとしての機能が得られる程度の一般的な所定厚さであってもよい。
【0057】
次に、図10に示すように、実施の形態1と同様に、RTAにより、半導体基板1中のシリコン原子とチタン膜24中のチタン原子とを反応させて、半導体基板1のおもて面1bの凹部21aの内壁に沿って当該凹部21aの内壁の表面領域にチタンシリサイド膜26を形成する。このとき、実施の形態1と同様にチタン膜24のシリサイド化により半導体基板1のおもて面1bの凹部21aの底部上において窒化チタン膜25が沈下するが、当該凹部21aの深さd21が浅いことで、実施の形態1と同様に、RTA後においても凹部21aの底部上における窒化チタン膜25の上面25aは半導体基板1のおもて面1bよりも上方に所定高さt21だけ高い位置で維持される。このため、バリアメタルの段切れは発生しない。
【0058】
次に、図11に示すように、実施の形態1と同様に、ソースガスとしてWF6ガスを用いて、CVD法により、層間絶縁膜3の上面およびコンタクトホール23aの内部において窒化チタン膜25上にタングステン膜(不図示)を堆積する。上述したようにバリアメタルの段切れが発生していないことで、コンタクトホール23aの内壁の全面が最表面の窒化チタン膜25で覆われているため、実施の形態1と同様にチタン膜24や半導体基板1はWF6ガスに曝されない。コンタクトホール23aの底部コーナー近傍において窒化チタン膜25の上面25aに、実施の形態1(図3参照)と同様に窒化チタン膜25を貫通しない深さの凹み(不図示)が生じてもよい。
【0059】
その後、実施の形態1と同様に、タングステン膜、窒化チタン膜25およびチタン膜24のコンタクトプラグとなる部分をコンタクトホール23aの内部に残すエッチング工程以降の工程を順に行うことで、半導体装置が完成する。
【0060】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、コンタクトホールの形成時のオーバーエッチングによるコンタクトホールの底部での半導体基板のエッチング量を小さくして、半導体基板のおもてに形成されてコンタクトホールの底部を構成する凹部の深さを例えば10nm以下程度と浅くすることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
(実験例)
RTAによるバリアメタルの段切れの発生の有無を検証した。図12は、実験例のRTA後のコンタクトホールの底部コーナー近傍を観察した状態を模式的に示す断面図である。これらの試料について、コンタクトホール33aの内壁に沿ってチタン(Ti)膜34および窒化チタン(TiN)膜35をこの順に堆積してなるバリアメタルを形成した後、RTAによってチタン膜34をシリサイド化してチタンシリサイド(Tiシリサイド)膜36を形成した3つの試料をそれぞれ図12(a)~12(c)に示す。これらの試料は、コンタクトホール33aの形成時のオーバーエッチングにより半導体基板31のおもて面31bに形成されてコンタクトホール33aの底部を構成する凹部31aを略同じ深さとし、かつチタン膜34を略同じ厚さとして、窒化チタン膜35を異なる厚さで堆積している。
【0062】
図12では、RTA後に凹部31aの底部(コンタクトホール33aの底部)上における窒化チタン膜35の上面35a(以下、TiN上面とする)の高さ位置について、半導体基板31のおもて面31bと層間絶縁膜33との界面(以下、Si界面とする)を基準(=0)として、Si界面よりも下方に位置する場合を負(TiN上面-Si界面<0:図12(a))とし、Si界面と同じ高さ位置である場合をゼロ(TiN上面-Si界面=0:図12(b))とし、Si界面よりも上方に位置する場合を正(TiN上面-Si界面>0:図12(c))としている。図12(c)の試料が上述した実施の形態1,2にかかる半導体装置の製造方法(図4~11参照)に相当する。
【0063】
図12(a),12(b)に示す結果より、TiN上面-Si界面≦0である場合、Si界面の高さ位置近傍41a,41bでバリアメタル(チタン膜34および窒化チタン膜35)に亀裂が入り、バリアメタルの段切れが発生することが確認された。また、TiN上面が下方に移動するほどバリアメタルの亀裂が大きくなり(図12(b))、その後、CVDによってコンタクトホール33a内にタングステン膜を埋め込んだときにチタン膜34がエッチングされることが確認された。一方、図12(c)に示す結果より、TiN上面-Si界面>0であれば、Si界面の高さ位置近傍41cにおいてもバリアメタルはつながっており、バリアメタルの段切れが発生しないことが確認された。
【0064】
(従来例)
比較として、上記特許文献1に相当する従来の半導体装置(以下、従来例とする)の製造方法について説明する。図13~17は、従来の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図13~17には、層間絶縁膜103のコンタクトホール103a付近を拡大して示す。また、図13~17では、チタン膜104を太線で示す。まず、図13に示すように、シリコンを半導体材料とする半導体基板101のおもて面101b側に所定の素子構造(不図示)を形成する。次に、半導体基板101のおもて面101bの全面に、BPSG等の層間絶縁膜103を形成して、層間絶縁膜103によって所定の素子構造を覆う。
【0065】
例えば、所定の素子構造としてMOSゲート構造を形成した場合、半導体基板101のおもて面101b上にゲート絶縁膜となる酸化膜102を介して層間絶縁膜103が形成され、層間絶縁膜103によってゲート電極(不図示)が覆われる。次に、フォトリソグラフィおよびドライエッチングにより、深さ方向に層間絶縁膜103の表面(上面)から層間絶縁膜103および酸化膜102を貫通して半導体基板101に達するコンタクトホール103aを形成する。このとき、層間絶縁膜103および酸化膜102の総厚さよりも深くオーバーエッチングして、コンタクトホール103aを層間絶縁膜103および酸化膜102を確実に貫通させて半導体基板101のおもて面101bに到達させる。
【0066】
次に、図14に示すように、コンタクトホール103aの側壁(層間絶縁膜103および酸化膜102の側面)、半導体基板101のコンタクトホール103aに露出してコンタクトホール103aの底部を構成する部分の表面上、および層間絶縁膜103の上面に沿って、チタン膜104および窒化チタン膜105をこの順に堆積する。チタン膜104および窒化チタン膜105は、それぞれバリアメタルとしての機能が得られる程度の一般的な所定厚さを有する。次に、図15に示すように、RTAによりチタン膜104をシリサイド化して、コンタクトホール103aの内部において半導体基板101のおもて面101bの表面領域にチタンシリサイド膜106を形成する。
【0067】
次に、図16,17に示すように、ソースガスとしてWF6ガスを用いて、CVD法によりタングステン膜107を堆積して、タングステン膜107でコンタクトホール103aを埋め込む。これによって、コンタクトホール103aの内部において窒化チタン膜105の上にタングステン膜107が埋め込まれる。次に、タングステン膜107、窒化チタン膜105およびチタン膜104をエッチバックして、コンタクトプラグ108となる部分をコンタクトホール103aの内部に残す。その後、層間絶縁膜103の上面およびコンタクトプラグ108の上面にアルミニウムを含む表面電極(不図示)を形成することで、従来例が完成する。
【0068】
この従来例や上記特許文献1では、次の問題が起きることが発明者の鋭意研究により判明した。コンタクトホール103aの形成時、コンタクトホール103aを層間絶縁膜103および酸化膜102を確実に貫通させて半導体基板101のおもて面101bに到達させるために、層間絶縁膜103および酸化膜102の総厚さよりも深くオーバーエッチングする。または、コンタクトホール103aの形成時に半導体基板101に生じたエッチングダメージを除去するために、半導体基板101のコンタクトホール103aに露出する部分をさらにエッチングする。
【0069】
コンタクトホール103aの形成時のオーバーエッチングまたはコンタクトホール103aの形成時に生じたエッチングダメージを除去するためのエッチングによって、コンタクトホール103aに露出する部分で半導体基板101がエッチングされ、半導体基板101のおもて面101bに所定深さd101の凹部101aが形成される。半導体基板101のおもて面101bは、凹部101aにおいて半導体基板101の裏面側(下方)へ凹んだ状態となっている。半導体基板101のおもて面101bの凹部101aは、コンタクトホール103aの底部を構成する。
【0070】
半導体ウェハ面内でエッチングレート(エッチング深さ)にばらつきがあるため、すべてのコンタクトホール103aで層間絶縁膜103および酸化膜102を確実に貫通させると、一般的に半導体基板101のおもて面101bの凹部101aの深さd101は20nmを超える。このため、チタン膜104のシリサイド化のためのRTAによって窒化チタン膜105が下方へ移動(沈下)することで、コンタクトホール103aの底部上における窒化チタン膜105の上面105aが半導体基板101のおもて面101bよりも下方へ低い位置に移動することが確認された。
【0071】
RTAによって窒化チタン膜105が沈下するのは、チタン膜104が半導体基板101とのシリサイド反応によって半導体基板101に食われた厚さ(シリサイド化した厚さ)分だけ、凹部101aの底部(コンタクトホール103aの底部)上の部分でチタン膜104の体積が減少するからである。ここでは、半導体基板101のおもて面101bの凹部101aの底部上における窒化チタン膜105の上面105aが、RTA前(図14)に半導体基板101のおもて面101bと同じ高さ位置であり、RTA後(図15)に深さd111だけ下方へ低い位置に移動した状態を示している。
【0072】
具体的には、チタン膜104は、RTAによってシリサイド化され、凹部101aの底部上において、体積が減少した分だけ厚さが薄くなって下方へ後退するか、または消失する。また、チタン膜104は、凹部101aの側壁においても半導体基板101とシリサイド反応し、凹部101aの側壁と直交して凹部101aの中心から離れる横方向にも後退する。窒化チタン膜105は、RTAによる凹部101aの底部上でのチタン膜104の後退に伴って、凹部101aの底部上の部分で厚さを維持したまま下方(層間絶縁膜103および酸化膜102の側面に沿って堆積されたバリアメタルから離れる方向)へ移動(沈下)する。
【0073】
層間絶縁膜103および酸化膜102上のチタン膜104はシリサイド化しないため、層間絶縁膜103および酸化膜102上のバリアメタル(チタン膜104および窒化チタン膜105)は移動せず、RTA後もRTA前と同じ位置を維持する。チタン膜104のシリサイド化のためのRTAによって半導体基板101の凹部101aの底部上のバリアメタルのみが移動するため、層間絶縁膜103および酸化膜102の側面に沿って堆積されたバリアメタルと、半導体基板101の凹部101aの内壁に沿って堆積されたバリアメタルと、の間に亀裂が入り、バリアメタルの段切れ(分断)が発生する。
【0074】
凹部101aの内壁に沿って堆積されたチタン膜104がすべてシリサイド化された場合、チタン膜104の段切れとは、チタン膜104とチタンシリサイド膜106とが分断されたことを意味する。その後、CVD法によりコンタクトホール103aにタングステン膜107を埋め込む際にソースガスとして用いるWF6ガスがバリアメタルの段切れ箇所111から侵入し、WF6ガスによってチタン膜104が段切れ箇所111に露出する端部(分断面)からエッチングされていく(図16参照)。また、WF6ガスによってバリアメタルの段切れ箇所111から半導体基板101がエッチングされる(不図示)。
【0075】
上述したように、CVD法によるタングステン膜107の堆積時に生じるWF6ガスによるチタン膜104のエッチングの反応式は、WF6(ガス)+3Ti(チタン膜104)→2W(タングステン膜107)+3TiF4(ガス)である。チタン膜104は、TiF4ガスに変換されてCVD装置のチャンバー(処理炉)外へ排出される。チタン膜104がエッチングされると、層間絶縁膜103および酸化膜102と窒化チタン膜105との間にボイド(空洞)112が発生する(図16,17参照)。図17には、ボイド112が発生したコンタクトプラグ108を観察した状態を模式的に示している。
【0076】
層間絶縁膜103および酸化膜102と窒化チタン膜105との間にボイド112が発生すると、窒化チタン膜105が段切れ箇所111からコンタクトホール103aの中心側へ捲れ上がってしまい、コンタクトホール103aにタングステン膜107を十分に埋め込むことができない。これによって、コンタクトプラグ108と半導体基板101との接触面積が小さくなるため、コンタクトプラグ108と半導体基板101とのコンタクト抵抗(接触抵抗)が高くなるか、またはコンタクトプラグ108と半導体基板101とを接続できないなど、コンタクトプラグ108の埋込不良が起きる。
【0077】
例えばCVD法によるタングステン膜107の堆積時に処理炉にWF6ガスを流入する前にSiH4ガスを流入して、窒化チタン膜105の表面にSiH4ガスを蒸着させることで、その後流入されたWF6ガスがバリアメタルの段切れ箇所111へ侵入しなくなり、チタン膜104のエッチングが防止されるが、SiH4ガスを長時間流入する工程が増えてスループットが低下する。上記特許文献2では、タングステン膜を堆積する前にチタン膜を改質することで、WF6ガスによってチタン膜がエッチングされることを防止しているが、バリアメタルの段切れを防止する方法については言及されていない。
【0078】
一方、上述したように、実施例(図12(c)参照)においては、TiN上面-Si界面>0とすることで、Si界面(半導体基板31のおもて面31bと層間絶縁膜33との界面)の高さ位置近傍41cにおいてもバリアメタルはつながっており、バリアメタルの段切れが発生しない。このようにバリアメタルの段切れを防止することで、コンタクトプラグの埋込不良を防止することができる。
【0079】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、コンタクトプラグを備えた様々な半導体装置に適用可能である。このため、本発明は、例えば、トレンチゲート構造に代えてプレーナゲート構造に適用してもよいし、IGBTに代えてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)に適用してもよい。また、本発明は、半導体基板のおもて面のみに主電極となる表(ひょう)面電極を有する横型半導体装置にも適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1,31 半導体基板
1a,21a,31a 半導体基板のおもて面の凹部
1b,31b 半導体基板のおもて面
2 酸化膜
3,33 層間絶縁膜
3a,23a,33a 層間絶縁膜のコンタクトホール
4,24,34 チタン膜
5,25.35 窒化チタン膜
5a,25a,35a 窒化チタン膜の上面
5b 窒化チタン膜の上面の凹み
6,26,36 チタンシリサイド膜
7 タングステン膜
8 コンタクトプラグ
9 エミッタ電極
10 半導体装置
11 n-型ドリフト領域
12 p型ベース領域
13 n+型エミッタ領域
14 ゲートトレンチ
15 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
17 n型FS領域
18 p+型コレクタ領域
19 コレクタ電極
20 p++型コンタクト領域
t1,t21 半導体基板のおもて面から上方にコンタクトホールの底部(凹部の底部)上における窒化チタン膜の上面までの高さ
d1,d21 半導体基板のおもて面の凹部の深さ
X 半導体基板のおもて面に平行な第1方向
Y 半導体基板のおもて面に平行でかつ第1方向と直交する第2方向
Z 深さ方向
図1A
図1B
図2
図3
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図5
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