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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079165
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/263 20060101AFI20240604BHJP
   E06B 5/16 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E06B3/263 F
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191934
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】松本 滉司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅也
【テーマコード(参考)】
2E014
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BA02
2E014BB01
2E014BD01
2E239CA06
2E239CA23
2E239CA26
2E239CA30
2E239CA32
2E239CA45
2E239CA61
(57)【要約】
【課題】建具の障子が室外側から加熱されたときに、障子のパネルの室内側で、パネルの室内側面と下框の間に設けられるシール材の温度の上昇を抑制する。
【解決手段】建具1は、パネル10の室内側面13と下框20の間にシール材34が設けられた障子3を備えている。下框20は、シール材34の室内側に位置する中空部40を有している。建具1は、中空部40の内部に配置されて、中空部40から熱を受ける受熱部材50を備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの室内側面と下框の間にシール材が設けられた障子を備えた建具であって、
前記下框は、前記シール材の室内側に位置する中空部を有し、
前記中空部の内部に配置されて、前記中空部から熱を受ける受熱部材を備えた建具。
【請求項2】
請求項1に記載された建具において、
前記シール材は、前記パネルの室内側面と前記中空部の間に挟まれている建具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記下框は、前記下框の室外側の端部から前記中空部まで連続する金属部を有する建具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記中空部は、金属製の底面部と、前記底面部の上方に位置する金属製の上面部と、前記底面部と前記上面部の間に形成されて前記受熱部材が配置される内部空間と、前記底面部と前記上面部の間に設けられて前記内部空間の室外側の箇所と室内側の箇所を塞ぐ一対の断熱材と、を有する建具。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記下框に沿って配置されて前記下框の少なくとも室内側に位置する横枠を備え、
前記中空部は、前記横枠の上端部よりも下側の位置で、前記シール材と前記横枠の間に配置される建具。
【請求項6】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記中空部は、前記パネルの下面よりも上側の位置に配置される建具。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された建具において、
前記受熱部材の熱容量は、前記中空部の熱容量よりも大きい建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルと下框を有する障子を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の障子では、パネルと下框の間の箇所を止水するため、シール材がパネルと下框の間に設けられている。パネルの室内側では、シール材は、パネルの室内側面と下框の間に設けられて、パネルの室内側面と下框に接触する。また、このような建具の構造として、従来、ガラス障子の框と押縁により、ガラス溝を形成し、パネルであるガラス板をガラス溝に配置する断熱サッシのガラス板取付構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来の断熱サッシのガラス板取付構造では、シール材である目地材をガラス溝の空隙に充填して、ガラス板を框に取り付ける。ところが、火災等により、ガラス障子が室外側から加熱されたときには、ガラス板の室内側で、目地材がガラス板からの伝熱により加熱されて、目地材の温度が上昇する。目地材の温度によっては、目地材から可燃性のガスが発生して、可燃性のガス及び目地材が発炎することが懸念される。そのため、ガラス障子の防火性能の観点から、目地材の温度の上昇を抑制することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1-18292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、建具の障子が室外側から加熱されたときに、障子のパネルの室内側で、パネルの室内側面と下框の間に設けられるシール材の温度の上昇を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
パネルの室内側面と下框の間にシール材が設けられた障子を備えた建具であって、
前記下框は、前記シール材の室内側に位置する中空部を有し、
前記中空部の内部に配置されて、前記中空部から熱を受ける受熱部材を備えた建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建具の障子が室外側から加熱されたときに、障子のパネルの室内側で、パネルの室内側面と下框の間に設けられるシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の建具を示す正面図である。
図2】第1実施形態の建具を示す縦断面図である。
図3】第2実施形態の建具を示す正面図である。
図4】第2実施形態の建具を示す縦断面図である。
図5】第3実施形態の建具を示す正面図である。
図6】第3実施形態の建具を示す縦断面図である。
図7】第4実施形態の建具を示す正面図である。
図8】第4実施形態の建具を示す縦断面図である。
図9】第5実施形態の建具を示す正面図である。
図10】第5実施形態の建具を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の建具は、移動可能な障子を備えた建具であり、建物の外壁に設置される。以下では、建具が窓である場合を例にとり、建具の複数の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の建具1を示す正面図であり、建物に設置された建具1を室内側からみて示している。
図示のように、建具1は、建物の開口部に設置されて、建物の室内(屋内)と室外(屋外)の間に配置される。建物の開口部は、建物の外壁に形成されて、建具1により塞がれる。
【0011】
なお、建物に設置した建具1を正面からみたときに、上下となる方向が上下方向Rであり、左右となる方向が左右方向Sである。図1では、上下方向Rは鉛直方向であり、左右方向Sは水平方向である。室内外方向は、建物に設置した建具1における室内外方向(屋内外方向)である。また、室内外方向は、建物に設置した建具1を正面からみたときに、前後となる方向であり、図1では、左右方向Sに直交する水平方向である。このように、建具1に関する方向は、建物に設置した状態での方向で特定する。また、建具1に関して室内側、室外側とは、建物に設置した状態での室内側、室外側である。
【0012】
建具1は、段窓であり、上下方向Rにおいて互いに隣り合う上窓部1Aと下窓部1Bを備えている。上窓部1Aは、開閉可能な開閉窓部であり、建具1の上側部分に設けられて、下窓部1Bの上側に位置している。下窓部1Bは、開閉不能な固定窓部であり、建具1の下側部分に設けられて、上窓部1Aの下側に位置している。ここでは、上窓部1Aは、縦すべり出し窓部である。
【0013】
建具1は、建物の開口部に設置される枠体2と、上窓部1Aに設けられた障子3と、下窓部1Bに設けられたパネル体4を備えている。障子3とパネル体4は、それぞれ枠体2の内側の開口2A、2B(上開口2A、下開口2B)に配置されて、枠体2に保持されている。障子3は、方形状の開閉障子であり、枠体2の上開口2Aで、枠体2に開閉可能に連結されている。パネル体4は、方形状の固定パネル体であるとともに、ガラスパネル体(例えば、板ガラス、複層ガラス、又は、合わせガラス)であり、枠体2の下開口2Bで、枠体2に固定されている。枠体2の上開口2Aは、障子3により開閉され、枠体2の下開口2Bは、パネル体4により閉鎖されている。
【0014】
枠体2は、方形状の開口枠(窓枠)であり、互いに組み合わされた5つの枠5~8(上枠5、下枠6、一対の縦枠7、中横枠8)を有している。枠体2の枠5~8は、枠体2を構成する枠材であり、それぞれ押出成形により形成された金属製(ここでは、アルミニウム合金製)の形材からなる。枠体2は、枠5~8により、方形状の開口2A、2Bを形成している。上枠5、下枠6、及び、中横枠8は、横方向(左右方向S)に延びる横枠であり、一対の縦枠7は、縦方向(上下方向R)に延びる。
【0015】
上枠5と下枠6は、枠体2の上下の横枠(上横枠、下横枠)であり、枠体2の上部と下部に位置している。一対の縦枠7は、枠体2の左右の側枠であり、枠体2の左右の側部に位置している。上枠5、下枠6、及び、左右の縦枠7の端部同士が接続されて、枠5~7が枠組みされている。中横枠8は、上枠5と下枠6の間に位置する無目であり、左右の縦枠7に接続されて、枠体2の開口2A、2Bを上下に区画している。
【0016】
上開口2Aは、上枠5、左右の縦枠7、及び、中横枠8により形成され、障子3は、上枠5、左右の縦枠7、及び、中横枠8により囲まれる。下開口2Bは、下枠6、左右の縦枠7、及び、中横枠8により形成され、パネル体4は、下枠6、左右の縦枠7、及び、中横枠8により囲まれる。障子3は、中横枠8の上側に位置し、パネル体4は、中横枠8の下側に位置している。中横枠8は、障子3とパネル体4の間に配置され、障子3とパネル体4は、互いの間に中横枠8を挟んで隣り合う。
【0017】
図2は、第1実施形態の建具1を示す縦断面図であり、建具1の中横枠8の部分を拡大して示している。
図示のように、障子3は、連結機構9により、枠体2に移動可能(開閉可能)に連結されている。障子3の移動により、枠体2の上開口2Aが開閉される。また、障子3は、方形状の框体3Aと、框体3Aに保持されたパネル10を有している。框体3Aは、互いに組み合わされた4つの框(上框、下框20、一対の縦框)を有している(図2では、下框20のみを示す)。框体3Aの4つの框は、框体3Aを構成する框材であり、それぞれ押出成形により形成された金属製(ここでは、アルミニウム合金製)の形材からなる。
【0018】
上框と下框20は、框体3Aの上下の横框(上横框、下横框)であり、框体3Aの上部と下部に位置して、左右方向Sに延びる。一対の縦框は、框体3Aの左右の側框であり、框体の左右の側部に位置して、上下方向Rに延びる。上框、下框20、及び、左右の縦框の端部同士が接続されて、4つの框が枠組みされている。パネル10は、方形状のガラスパネル(例えば、板ガラス、複層ガラス、又は、合わせガラス)であり、框体3Aの内側の開口(框開口3B)に配置されて、上框、下框20、及び、一対の縦框のそれぞれにより保持されている。パネル10が框体3Aに固定されて、框開口3Bがパネル10により閉鎖されている。ここでは、障子3のパネル10とパネル体4は、複層ガラスである。
【0019】
障子3は、下框20に取り付けられた押縁30(下押縁)と、パネル10の室外側と室内側のそれぞれに設けられたバックアップ材31、32(室外側バックアップ材31、室内側バックアップ材32)及びシール材33、34(室外側シール材33、室内側シール材34)を有している。押縁30は、下框20からパネル10の室外側まで配置されて、パネル10の下面11の下側及びパネル10の室外側面12の室外側に位置している。パネル10の下面11は、パネル10における下側の面であり、下方に向けて配置されている。パネル10の室外側面12は、パネル10における室外側の面であり、室外側に向けて配置されている。また、パネル10の室内側面13は、パネル10における室内側の面であり、室内側に向けて配置されている。
【0020】
室外側バックアップ材31と室外側シール材33は、パネル10の室外側に位置して、パネル10の室外側面12と押縁30の間に設けられている。室外側バックアップ材31と室外側シール材33は、パネル10の室外側面12の下縁部に沿って押縁30の長手方向(左右方向S)に延び、パネル10の室外側面12と押縁30の間に挟まれる。室外側シール材33は、室外側バックアップ材31に受けられて、室外側バックアップ材31の上側に位置し、パネル10の室外側面12と押縁30に密着する。室外側シール材33により、パネル10の室外側面12と押縁30の間の箇所が止水される。
【0021】
室内側バックアップ材32と室内側シール材34は、パネル10の室内側に位置して、パネル10の室内側面13と下框20の間に設けられている。室内側バックアップ材32と室内側シール材34は、パネル10の室内側面13の下縁部に沿って下框20の長手方向(左右方向S)に延び、パネル10の室内側面13と下框20の間に挟まれる。室内側シール材34は、室内側バックアップ材32に受けられて、室内側バックアップ材32の上側に位置し、パネル10の室内側面13と下框20に密着する。室内側シール材34により、パネル10の室内側面13と下框20の間の箇所が止水される。
【0022】
建具1は、障子3の下框20に沿って配置される横枠(ここでは、枠体2の中横枠8)を備えている。障子3が閉じた状態で、中横枠8は、下框20の少なくとも室内側に位置しており、下框20は、連結機構9により、中横枠8に移動可能に連結されている。また、中横枠8は、障子3の下側、パネル体4の上側、障子3とパネル体4の室内側に位置して、障子3及びパネル体4を保持している。下框20は、障子3のパネル10と中横枠8の間に位置し、パネル10の下面11及び中横枠8に沿って配置されて、中横枠8の長手方向(左右方向S)に延びる。
【0023】
中横枠8は、見込み部8Aと、見込み部8Aの室内側に位置する室内側の見付け部8Bと、溝状の固定部8Cと、上方に突出する突壁部8Dを有している。見込み部8Aは、段部を有する屈曲形状に形成され、中横枠8の見込み方向(室内外方向T)に沿って配置されている。また、見込み部8Aは、上下方向Rにおいて、障子3の下框20とパネル体4の間に位置して、下框20とパネル体4のそれぞれと相対する。
【0024】
見付け部8Bは、見込み部8Aの室内側の端部に接続し、中横枠8の見付け方向(上下方向R)に沿って配置されている。固定部8Cは、見込み部8Aの下側に形成されて、下方に向かって開放されている。パネル体4(上縁部)は、固定溝部である固定部8Cに配置されて、固定部8Cに固定されている。突壁部8Dは、見付け部8Bの一部(上側部分)であり、下框20の室内側に位置している。見付け部8B及び突壁部8Dは、見付け部8Aから上方に突出して、パネル10及び室内側シール材34から室内側に離隔して配置される。見付け部8B及び突壁部8Dの室内側にはカバー8Eが装着されて、見付け部8B及び突壁部8Dがカバー8Eにより室内側において覆われている。
【0025】
下框20は、パネル10を保持する保持部21と、保持部21の室内側に位置する中空部40を有している。保持部21は、パネル10の下側から室内側まで配置されて、中空部40の一部(室外側の部分)を含み、パネル10の下面11の下側及びパネル10の室内側面13の室内側に位置している。下框20の室外側の端部22は、保持部21の室外側の端部である。押縁30は、保持部21に取り付けられており、押縁30と保持部21は、上方に向かって開放された溝部(保持溝部35)を形成する。パネル10(下縁部)は、保持溝部35に配置されるとともに、室内外方向Tにおいて、押縁30と保持部21の間に配置されて、押縁30及び保持部21により保持されている。
【0026】
保持部21は、下框20において室外側に位置する下框20の室外側部であり、中空部40は、下框20において室内側に位置する下框20の室内側部である。中空部40は、中空形状に形成されて、保持部21の室内側に連続して設けられている。また、中空部40は、下框20の長手方向に延び、下框20の長手方向の全体にわたって形成されている。中空部40は、パネル10及び室内側シール材34よりも室内側に位置しており、室内側シール材34は、室内外方向Tにおいて、パネル10の室内側面13と中空部40の間に設けられている。中空部40は、室内側シール材34から室内側に突出して、中横枠8の室外側に配置される。
【0027】
パネル10の室内側で、中空部40は、中横枠8の上端部8Fよりも下側の位置で、室内外方向Tにおいて、室内側シール材34と中横枠8(ここでは、見付け部8B及び突壁部8D)の間に配置される。中横枠8の上端部8Fは、見付け部8B及び突壁部8Dの上端部である。上下方向Rの位置をみたときに、下框20及び中空部40は、中横枠8の上端部8Fよりも上側の位置には配置されずに、中横枠8の上端部8Fよりも下側の位置にのみ配置される。中横枠8を室内外方向Tの室内側からみたときに、下框20及び中空部40は、中横枠8により遮蔽されて、中横枠8の室外側に隠される。
【0028】
中空部40は、底面部41と、底面部41の上方に位置する上面部42と、底面部41と上面部42の間に設けられた一対の壁部43、44(室外側壁部43、室内側壁部44)と、内部空間45を有している。底面部41と上面部42は、室内外方向Tに沿って配置され、上面部42は、底面部41から上方に離隔して配置される。中空部40及び上面部42は、上方において、框体3Aの框開口3Bに露出し、中空部40及び底面部41は、下方において、下框20と中横枠8の間に形成される空間に露出する。
【0029】
底面部41と上面部42は、上下方向Rにおいて互いに離隔し、一対の壁部43、44は、室内外方向Tにおいて互いに離隔する。一対の壁部43、44は、底面部41から上面部42まで上方に突出し、底面部41と上面部42に接続している。内部空間45は、底面部41、上面部42、及び、一対の壁部43、44により区画されて、底面部41と上面部42の間に形成されている。一対の壁部43、44は、内部空間45の室外側の箇所と室内側の箇所を塞ぐ。
【0030】
中空部40は、室内側シール材34に接触して、又は、室内側シール材34から室内側に離隔して、室内側シール材34の室内側に位置している。ここでは、中空部40は、室外側壁部43により、室内側シール材34に接触する。室内側シール材34は、パネル10の室内側面13と中空部40(室外側壁部43)の間に挟まれて、パネル10の室内側面13と中空部40に接触している。中空部40及び室内側シール材34は、パネル10の下面11及び室内側面13の下縁部よりも上側の位置にのみ配置されており、パネル10の下面11及び室内側面13の下縁部に対して上側に離隔した位置に設けられる。
【0031】
下框20は、金属で形成された金属部23を有している。金属部23は、金属製の下框材であり、下框20の少なくとも一部(一部、又は、全体)を構成する。金属部23は、下框20の室外側の端部22からパネル10の下方を通って中空部40まで連続し、中空部40の少なくとも一部を含む。ここでは、金属部23は、アルミニウム合金製のアルミニウム合金部であり、中空部40の全体を含む。そのため、下框20の全体である保持部21と中空部40が金属部23である。
【0032】
建具1は、下框20の中空部40の内部に配置された受熱部材50を備えている。受熱部材50は、中空部40の内部に収容されて、中空部40の内面に接触する。また、受熱部材50は、金属製の平板であり、ビスである固定具51により、中空部40に固定されている。受熱部材50は、下框20に沿って配置されて、下框20の長手方向に延びる。下框20の中空部40の熱は、中空部40から受熱部材50に伝わる。受熱部材50は、中空部40から伝熱されて、中空部40から熱を受け、中空部40から受けた熱をためる。
【0033】
中空部40の内部空間45は、受熱部材50を収容する中空部40の内部の空間(収容空間)である。受熱部材50は、内部空間45に配置されて、中空部40に囲まれる。底面部41と上面部42は、上下方向Rにおいて、互いの間に受熱部材50を挟んで相対し、室外側壁部43と室内側壁部44は、室内外方向Tにおいて、互いの間に受熱部材50を挟んで相対する。受熱部材50は、中空部40の内部(内部空間45)の底面及び底面部41に載置されて、底面及び底面部41に接触する。また、受熱部材50は、中空部40の内部で、上面部42から下方に離隔して配置されており、上面部42には接触しない。そのため、受熱部材50と上面部42の間には空所(空気層)が設けられている。
【0034】
受熱部材50は、下框20及び中空部40の金属(アルミニウム合金)とは異なる金属で形成されており、ここでは、鋼であるメッキ鋼板製である。そのため、受熱部材50の材料の比熱は、下框20及び中空部40の材料の比熱よりも小さい。しかしながら、受熱部材50の熱容量は、中空部40の熱容量よりも大きい。熱容量の値は、比熱に質量を掛け合わせた値である。受熱部材50の材料の比熱、中空部40の材料の比熱、及び、中空部40の質量に基づき、受熱部材50の質量を調整して、受熱部材50の熱容量を中空部40の熱容量よりも大きくする。
【0035】
火災等により、障子3が室外側から加熱されたときには、パネル10の室内側で、室内側シール材34がパネル10からの伝熱により加熱されて、室内側シール材34の温度が上昇する。その際、室内側シール材34の熱は、下框20の中空部40に伝わり、中空部40の熱は、受熱部材50に伝わる。中空部40から伝わる熱を受熱部材50が受けることで、室内側シール材34の熱が中空部40を通って受熱部材50まで伝わる。また、下框20が室外側から加熱されて、下框20の温度が上昇すると、下框20の熱が中空部40から受熱部材50に伝わり、受熱部材50が熱を受ける。その結果、中空部40及び室内側シール材34の温度の上昇が抑制される。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態の建具1では、障子3が室外側から加熱されたときに、パネル10の室内側で、パネル10の室内側面13と下框20の間に設けられる室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。これにより、室内側シール材34から可燃性のガスが発生するのを抑制できるとともに、室内側シール材34が発炎するのを抑制することができる。また、受熱部材50は、下框20を補強する補強部材でもある。そのため、受熱部材50により、温度の上昇に伴う下框20の変形を抑制することもできる。従って、障子3の防火性能を向上させることができる。
【0037】
室内側シール材34をパネル10の室内側面13と下框20の中空部40の間に挟むことで、室内側シール材34の熱を中空部40及び受熱部材50に効率よく伝えて、室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。受熱部材50は、下框20の金属部23である中空部40に接触する。下框20の金属部23の熱を中空部40内の受熱部材50により受けることで、下框20の金属部23及び室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。
【0038】
中横枠8の室外側に隠れる下框20では、下框20の見付け方向(上下方向R)の寸法が小さくなる傾向がある。その結果、下框20の放熱面積及び熱容量が小さくなり、下框20の温度が上昇し易くなる。これに対し、受熱部材50で熱を受けることで、中空部40及び下框20の温度の上昇が緩和される。そのため、中横枠8の室外側に隠れる下框20の中空部40及び室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。
【0039】
受熱部材50の熱容量を中空部40の熱容量よりも大きくすることで、受熱部材50にためられる熱量を増加させて、中空部40から受熱部材50に熱を安定して伝えることができる。また、受熱部材50により中空部40から熱を安定して受けて、中空部40及び室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。中空部40をパネル10の下面11よりも上側の位置に配置することで、パネル10の室内側で、中空部40からの放熱を確保して、中空部40及び室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。
【0040】
なお、障子3のシール材33、34は、不定形シーリング材からなるシール材(湿式のシール材)であり、不定形シーリング材が硬化して形成される。これに対し、シール材33、34は、予め成形されたシール材(乾式のシール材)であってもよい。受熱部材50は、下框20の長手方向の全体にわたって中空部40の内部に配置してもよく、下框20の長手方向の一部において中空部40の内部に配置してもよい。また、受熱部材50は、下框20の長手方向に延びる1つの部材であってもよく、下框20の長手方向に複数に分割された部材であってもよい。受熱部材50は、受熱機能に加えて、他の機能を有していてもよい。受熱部材50は、平板に限定されず、種々の形状に形成することができる。
【0041】
下框20の中空部40は、室内側シール材34から室内側に離隔していてもよい。この場合には、例えば、中空部40から室外側に張り出す張出部を設けて、張出部を室内側シール材34と接触させる。室内側シール材34から張出部を介して中空部40に熱を伝える。下框20は、金属部23のみからなる金属製の金属下框である。これに対し、下框20は、金属部23と金属以外の部分(例えば、合成樹脂製の樹脂部)を有する複合下框であってもよい。
【0042】
建具1の上窓部1Aと下窓部1Bのいずれを開閉窓部にしてもよく、例えば、上窓部1Aを固定窓部にして、下窓部1Bを開閉窓部にしてもよい。また、上窓部1Aと下窓部1Bの両方を開閉窓部にしてもよい。これに対し、建具1は、段窓に限定されず、障子3を備えた他の建具であってもよい。建具1の種類、建具1における下框20の位置等に対応して、下框20に沿って配置される横枠は、中横枠8以外の横枠(例えば、下横枠である下枠6)であってもよい。建具1の開閉窓部は、縦すべり出し窓部に限定されず、他の開閉窓部であってもよい。
【0043】
次に、他の実施形態の建具1について説明する。以下の各実施形態では、第1実施形態と同じ事項の説明は省略し、第1実施形態と相違する事項について主に説明する。また、以下の各実施形態に関し、第1実施形態の構成に相当する構成には、第1実施形態の構成と同じ名称を用いる。
【0044】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の建具1を示す正面図であり、図4は、第2実施形態の建具1を示す縦断面図である。
図示のように、第2実施形態の建具1では、上窓部1Aは、突き出し窓部である。ヒンジである連結機構9(図3図4では図示せず)により、障子3の上框が枠体2の上枠5に連結されている。
【0045】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の建具1を示す正面図であり、図6は、第3実施形態の建具1を示す縦断面図である。
図示のように、第3実施形態の建具1では、上窓部1Aは、外倒し窓部である。ヒンジである連結機構9により、障子3の下框20が枠体2の中横枠8に連結されている。
【0046】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態の建具1を示す正面図であり、図8は、第4実施形態の建具1を示す縦断面図である。
図示のように、第4実施形態の建具1では、中横枠8の見付け部8B及び突壁部8Dの室内側に、第1実施形態のカバー8Eが装着されていない。また、下框20の中空部40が、第1実施形態の下框20の中空部40と相違している。中空部40の室外側壁部43と室内側壁部44は、合成樹脂(ここでは、ウレタン樹脂)製の一対の断熱材46、47(室外側断熱材46、室内側断熱材47)である。そのため、中空部40は、金属製の底面部41と、底面部41の上方に位置する金属製の上面部42と、底面部41と上面部42の間に形成された内部空間45と、底面部41と上面部42の間に設けられた一対の断熱材46、47を有している。
【0047】
底面部41は、下框20の金属部23の一部であり、金属部23は、中空部40の中で底面部41のみを含む。金属部23は、下框20の室外側の端部22から中空部40の底面部41まで連続する。上面部42は、下框20の金属部23とは別の金属板部であり、底面部41及び金属部23から上方に離隔して配置されている。一対の断熱材46、47は、それぞれ底面部41と上面部42に密着して、底面部41と上面部42に接続する。受熱部材50は、内部空間45に配置され、一対の断熱材46、47は、内部空間45の室外側の箇所と室内側の箇所を塞ぐ。
【0048】
一対の断熱材46、47は、室内外方向Tにおいて、互いに離隔して、互いの間に受熱部材50を挟んで相対する。一対の断熱材46、47により、上面部42が底面部41から断熱されて、上面部42と底面部41の間の熱の移動が妨げられる。受熱部材50は、中空部40の内部で、上面部42及び一対の断熱材46、47には接触せず、底面部41にのみ接触する。そのため、受熱部材50と上面部42の間、及び、受熱部材50と断熱材46、47の間には、空気層が設けられている。
【0049】
室内側シール材34は、中空部40の上面部42の室外側に位置し、室内外方向Tにおいて、パネル10の室内側面13と上面部42の間に設けられている。また、室内側シール材34は、パネル10の室内側面13と上面部42の間に挟まれて、パネル10の室内側面13と上面部42に接触している。室内側シール材34は、底面部41から上方に離隔した位置に配置され、中空部40のうち、底面部41及び室外側断熱材46には接触せずに、上面部42にのみ接触する。障子3が室外側から加熱されたときには、中空部40の底面部41から一対の断熱材46、47及び上面部42に熱が伝わるのを妨げて、中空部40及び室内側シール材34の温度の上昇を抑制することができる。
【0050】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態の建具1を示す正面図であり、図10は、第5実施形態の建具1を示す縦断面図である。
図示のように、第5実施形態の建具1では、上窓部1Aは、突き出し窓部である。ヒンジである連結機構9(図9図10では図示せず)により、障子3の上框が枠体2の上枠5に連結されている。また、中横枠8の見付け部8B及び突壁部8Dの室内側に、第1実施形態のカバー8Eが装着されていない。下框20の中空部40は、第4実施形態の下框20の中空部40と同様に構成されており、一対の断熱材46、47を有している。
【0051】
以上のとおり、本実施形態では、以下の(1)~(7)に記載された建具を開示している。
【0052】
(1) パネルの室内側面と下框の間にシール材が設けられた障子を備えた建具であって、
前記下框は、前記シール材の室内側に位置する中空部を有し、
前記中空部の内部に配置されて、前記中空部から熱を受ける受熱部材を備えた建具。
(1)に記載された建具では、建具の障子が室外側から加熱されたときに、障子のパネルの室内側で、パネルの室内側面と下框の間に設けられるシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0053】
(2) (1)に記載された建具において、
前記シール材は、前記パネルの室内側面と前記中空部の間に挟まれている建具。
(2)に記載された建具では、シール材の熱を中空部及び受熱部材に効率よく伝えて、シール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0054】
(3) (1)又は(2)に記載された建具において、
前記下框は、前記下框の室外側の端部から前記中空部まで連続する金属部を有する建具。
(3)に記載された建具では、下框の金属部の熱を中空部内の受熱部材により受けて、下框の金属部及びシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0055】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載された建具において、
前記中空部は、金属製の底面部と、前記底面部の上方に位置する金属製の上面部と、前記底面部と前記上面部の間に形成されて前記受熱部材が配置される内部空間と、前記底面部と前記上面部の間に設けられて前記内部空間の室外側の箇所と室内側の箇所を塞ぐ一対の断熱材と、を有する建具。
(4)に記載された建具では、中空部の底面部から一対の断熱材及び上面部に熱が伝わるのを妨げて、中空部及びシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0056】
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載された建具において、
前記下框に沿って配置されて前記下框の少なくとも室内側に位置する横枠を備え、
前記中空部は、前記横枠の上端部よりも下側の位置で、前記シール材と前記横枠の間に配置される建具。
(5)に記載された建具では、横枠の室外側に隠れる下框の中空部及びシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0057】
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載された建具において、
前記中空部は、前記パネルの下面よりも上側の位置に配置される建具。
(6)に記載された建具では、パネルの室内側で、中空部からの放熱を確保して、中空部及びシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【0058】
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載された建具において、
前記受熱部材の熱容量は、前記中空部の熱容量よりも大きい建具。
(7)に記載された建具では、受熱部材により中空部から熱を安定して受けて、中空部及びシール材の温度の上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・建具、1A・・・上窓部、1B・・・下窓部、2・・・枠体、2A・・・上開口、2B・・・下開口、3・・・障子、3A・・・框体、3B・・・框開口、4・・・パネル体、5・・・上枠、6・・・下枠、7・・・縦枠、8・・・中横枠、8A・・・見込み部、8B・・・見付け部、8C・・・固定部、8D・・・突壁部、8E・・・カバー、8F・・・上端部、9・・・連結機構、10・・・パネル、11・・・下面、12・・・室外側面、13・・・室内側面、20・・・下框、21・・・保持部、22・・・端部、23・・・金属部、30・・・押縁、31・・・室外側バックアップ材、32・・・室内側バックアップ材、33・・・室外側シール材、34・・・室内側シール材、35・・・保持溝部、40・・・中空部、41・・・底面部、42・・・上面部、43・・・室外側壁部、44・・・室内側壁部、45・・・内部空間、46・・・室外側断熱材、47・・・室内側断熱材、50・・・受熱部材、51・・・固定具、R・・・上下方向、S・・・左右方向、T・・・室内外方向。
図1
図2
図3
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図6
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図8
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図10