(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079172
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】撮像システム、その制御方法、及びピッキングシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191944
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真太郎
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS08
3C707KT01
3C707KT06
3C707KV08
3C707KV11
3C707LW12
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でモーションブラーを低減することの可能な撮像システム、その制御方法、及びピッキングシステムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る撮像システムは、撮像部と、受光した光を屈折させる屈折部と、移動する対象物から進行した光が屈折部によって撮像部に向かって屈折するように、屈折部の方向を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部と、
受光した光を屈折させる屈折部と、
移動する対象物から進行した光が前記屈折部によって前記撮像部に向かって屈折するように、前記屈折部の方向を制御する制御部と、を備える撮像システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記対象物の移動速度に同期させて、前記屈折部の方向を制御する、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記屈折部は、プリズムを備える、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記プリズムは、入射面と、前記入射面に対して傾斜した出射面とを有する、請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記撮像部は、所定領域の波長の光に対する感度が、前記所定領域以外の波長の光に対する感度より高い、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記撮像部は、モノクロカメラである、請求項5に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記対象物に対して照明光を発する照明部、を更に備える、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記制御部によって制御される前記屈折部の駆動部と、前記対象物を搬送する搬送部の駆動部とを、連動させる連動部を更に備える、請求項1に記載の撮像システム。
【請求項9】
撮像部と、受光した光を屈折させる屈折部と、を備える撮像システムの制御方法であって、
移動する対象物から進行した光が前記屈折部によって前記撮像部に向かって屈折するように、前記屈折部の方向を制御するステップを含む、制御方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の撮像システムと、
前記撮像部が生成する画像に基づいて前記対象物の位置情報を算出する算出部と、
前記位置情報に基づいて、前記対象物のピッキングを行うピッキングロボットと、
を備えるピッキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム、その制御方法、及びピッキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FA(Factory Automation)において、コンベア上を搬送される物体を撮像装置により撮像し、その撮像により得られた画像等に基づいてワーク(対象物)の位置を把握するとともに、ロボットを用いてワークをピッキングし、次の工程へ搬送するなどの動作が実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワークはコンベアによって移動するため、ワークの移動速度が上がるほど、撮像装置においてモーションブラーが発生し易くなるため、ロボットによるワークのピッキングが困難となり得る。このため、例えば、高フレームレートのカメラを用いることが考えられるが、フレーム間隔が短いため、十分な露光量を確保するための高出力な照明装置が必要となる。また、ロボットアームの構造及びその動作軌道等に基づいて事前に学習を行った学習モデルに基づいて、モーションブラーの影響を推定することも可能であるが、コンベアの速度はワークの種類によっても変わり得るため、そのたびに学習を行うことは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成でモーションブラーを低減することの可能な撮像システム、その制御方法、及びピッキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る撮像システムは、撮像部と、受光した光を屈折させる屈折部と、移動する対象物から進行した光が屈折部によって撮像部に向かって屈折するように、屈折部の方向を制御する制御部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、制御部により、対象物から進行した光が屈折部によって撮像部に向かって屈折するように、屈折部の方向が制御される。このため、撮像部が生成する画像において、対象物は常に一定方向から観察された像として当該画像に含まれることとなり、撮像部が生成する画像におけるモーションブラーが低減される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でモーションブラーを低減することの可能な撮像システム、その制御方法、及びピッキングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る搬送システム1の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る搬送システム1の制御構成を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置60が実行する屈折部20の駆動処理の一例を示す動作フローである。
【
図4A】プリズム制御部620によるウェッジプリズム21の回転の制御について説明するための図である。
【
図4B】プリズム制御部620によるウェッジプリズム21の回転の制御について説明するための図である。
【
図4C】プリズム制御部620によるウェッジプリズム21の回転の制御について説明するための図である。
【
図5】ウェッジプリズム21の回転速度について説明するための図である。
【
図6】コンベア10及び屈折部20が連動する構成の一例を示す模式図である。
【
図7】コンベア10及び屈折部20が連動する構成の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。(なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。)
【0011】
(1)構成
図1は、本実施形態に係る搬送システム1の構成の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る搬送システム1の制御構成を示す模式図である。
【0012】
搬送システム1は、例えば、コンベア10と、屈折部20と、撮像部30と、照明部40と、ピッキングロボット50と、制御装置60とを含む。搬送システム1は、例えば、製品等の任意の対象物(以下、「ワークW」と称す。)をコンベア10上で搬送するとともに、ピッキングロボット50によってワークWをピッキングして次工程へ移動させるためのピッキングシステムとして構成される。しかしながら、搬送システム1は、ピッキング以外の所定の作業を行うロボットを備えた他のシステムとして構成されてもよい。
【0013】
制御装置60は、例えば、EtherCAT(登録商標)、EtherNet/IP(登録商標)、DeviceNet(登録商標)、CompoNet(登録商標)などのフィールドネットワークによって、屈折部20、撮像部30、照明部40、及びピッキングロボット50等と接続され、これらを制御する。
【0014】
<制御装置60>
制御装置60は、例えば、PLC(プログラマブルコントローラ)等の任意のコンピュータである。
図1に示すとおり、制御装置60は、主たるハードウェア構成として、プロセッサ61と、主メモリ62と、フラッシュメモリ63と、入出力インタフェース(I/F)64とを含む。
【0015】
プロセッサ61は、各種プログラムに記述された命令を順に実行する演算部であり、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)などで構成される。
【0016】
主メモリ62は、プロセッサ61がプログラムを実行する際のワーク領域を提供する記憶装置である。主メモリ62としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。
【0017】
フラッシュメモリ63は、プロセッサ61で実行される各種プログラムを格納する。フラッシュメモリ63としては、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性のメモリが用いられる。本実施形態に係る各種プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体(非一時的な記憶媒体を含む)に記憶された状態で提供されてもよいし、通信ネットワークを介して取得されてもよい。
【0018】
入出力I/F64は、制御装置60とは離れた位置に配置される機能ユニットや他の制御装置との間でデータをやり取りするフィールドネットワーク上のデータ伝送を管理する。このようなフィールドネットワークとしては、特に限定されないが、例えば、EtherCAT(登録商標)、EtherNet/IP(登録商標)、DeviceNet(登録商標)、CompoNet(登録商標)などの定周期ネットワークが採用されてもよい。
【0019】
制御装置60においては、主メモリ62に記憶された各種のプログラムをプロセッサ61が実行することで、搬送システム1を統括的に制御するための各種の機能部が実現される。当該機能部は、例えば、
図2に示すとおり、コンベア制御部610と、移動量取得部611と、プリズム制御部620と、回転量取得部621と、撮像制御部630と、照明制御部640と、ロボット制御部650と、記憶部660とを含む。
【0020】
<コンベア10>
コンベア10は、例えば、
図1に示すとおり、両端に配置された一組のコンベア駆動部11、11と、当該一組のコンベア駆動部11、11の周囲に巻き回されたベルト12とを含む。
【0021】
コンベア駆動部11は、例えば、モータ100と、制御装置60のコンベア制御部610から供給される制御信号に基づいてモータ100を回転駆動するモータドライバ101とを含む。モータ100は、ベルト12が一組のコンベア駆動部11、11の周囲を回転可能となるように、当該ベルト12に接続される。モータドライバ101は、モータ100と電気的に接続されており、制御装置60からの指令に応答してモータ100の回転数などを制御するとともに、現在のモータ100の回転数などの情報を制御装置60に供給する。
【0022】
ベルト12は、モータ100の回転に伴って、コンベア駆動部11の周囲を回転する。これにより、ベルト12上に載置されたワークWは、コンベア10上を移動する。コンベア10は、更に、ベルト12と機械的に接続されたエンコーダ102を含む。エンコーダ102は、ベルト12の移動量を検出し、検出結果を制御装置60の移動量取得部611に供給する。移動量取得部611が取得するベルト12の移動量は、例えば、ベルト12の移動距離や移動速度等であってよい。移動量取得部611は、取得したベルト12の移動量を、例えば、記憶部660に格納してもよい。
【0023】
<屈折部20>
屈折部20は、例えば、受光した光を屈折させる部材であり、ウェッジプリズム21と、ウェッジプリズム21を回転駆動するためのプリズム駆動部22とを含む。屈折部20は、例えば、コンベア10の上方、且つ撮像部30の下方に配置される。なお、屈折部20は、撮像部30の一部として構成されてもよい。
【0024】
ウェッジプリズム21は、所定の角度θで互いに傾斜した入射面21aと出射面21bとを有する、ガラスや樹脂等で形成されたプリズムである。ウェッジプリズム21に向かって進行する光L1は、入射面21aから入射する際にウェッジプリズム21の厚みが増加する方向へ屈折して、光L2としてウェッジプリズム21内を進行する。そして、光L2は、出射面21bから出射する際にウェッジプリズム21の厚みが減少する方向へ屈折して、光L3として進行する。なお、本実施形態に係る屈折部20は、ウェッジプリズム21に限らず、入射面と出射面とが互いに略平行な平面板として構成されたプリズムを有してもよい。
【0025】
プリズム駆動部22は、例えば、モータ200と、制御装置60のプリズム制御部620から供給される制御信号に基づいてモータ200を回転駆動するモータドライバ201とを含む。モータ200は、ウェッジプリズム21が回転するように、当該ウェッジプリズム21に接続される。モータドライバ201は、モータ200と電気的に接続されており、制御装置60からの指令に応答してモータ200の回転数などを制御するとともに、現在のモータ200の回転数などの情報を制御装置60に供給する。屈折部20は、更に、ウェッジプリズム21と機械的に接続されたエンコーダ202を含む。エンコーダ202は、ウェッジプリズム21の回転量を検出し、検出結果を制御装置60の回転量取得部621に供給する。回転量取得部621が取得するウェッジプリズム21の回転量は、例えば、ウェッジプリズム21が回転した角度や回転の速度(角速度)等であってよい。回転量取得部621は、取得したウェッジプリズム21の回転量を、例えば、記憶部660に格納してもよい。
【0026】
<撮像部30>
コンベア10の上方には、撮像部30が配置されている。撮像部30は、制御装置60の撮像制御部630から供給される制御信号に基づいて、コンベア10上を搬送されるワークWを撮像することにより画像を生成し、制御装置60に供給する。特に、撮像部30は、ワークWから進行し且つウェッジプリズム21を介して撮像部30に到達した光に基づいて、撮像を行うことが可能である。
【0027】
撮像部30は、例えば、動画や静止画を画像として生成可能なCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等の撮像素子を有するカメラであってもよいし、対象物(障害物)までの距離を計測できる深度センサであってもよい。当該深度センサの方式は特に限定されず、例えば、ステレオ方式、ToF(Time Of Flight)方式、及び構造化照明方式等であってよい。撮像部30は、例えば、ウェッジプリズム21の回転量に基づいて、画像を補正してもよい。
【0028】
撮像部30は、単色光カメラ(モノクロカメラ)として構成されてもよく、所定領域の波長の光に対する感度が、前記所定領域以外の波長の光に対する感度より高くなるように構成されてもよい。具体的には、撮像部30が有する撮像素子は、所定領域の波長の光に対する感度が、当該所定領域以外の波長の光に対する感度より高くてもよい。本実施形態においては、ワークWから進行した光は屈折部を介して撮像部30に到達するが、光の波長により屈折率には微差があり、色収差が生じ得る。撮像部30を、所定領域の波長の光に対する感度が、前記所定領域以外の波長の光に対する感度より高くなるように構成することにより、このような色収差の影響を低減することが可能となる。
【0029】
<照明部40>
照明部40は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)等の光源を有しており、撮像部30の近傍に配置されている。照明部40は、制御装置60の照明制御部640から供給される制御信号に基づいて、照明光をコンベア10やワークWに向けて照射する。これにより、撮像部30によるワークWの撮像を補助することが可能となる。
【0030】
照明部40は、所定の波長領域の光(例えば、単色光)のみを発光可能に構成されてもよい。具体的には、照明部40が有するLED等の光源は、所定の波長領域の光を発する光源のみであってよい。本実施形態においては、ワークWから進行した光は屈折部を介して撮像部30に到達するが、光の波長により屈折率には微差があり、色収差が生じ得る。照明部40を所定の波長領域の光(例えば、単色光)のみを発光可能に構成することにより、このような色収差の影響を低減することが可能となる。
【0031】
<ピッキングロボット50>
ピッキングロボット50は、例えば、コンベア10の終端付近に配置されており、制御装置60のロボット制御部650から供給される制御信号に基づいて、コンベア10上を搬送されたワークWをピッキングすることが可能に構成される。
【0032】
ピッキングロボット50は、例えば、垂直多関節ロボットであり、複数のリンク51と、複数のジョイント52と、エンドエフェクタ53とを含む。リンク51は、剛性を有する長尺の部材から構成されている。ジョイント52は、2つのリンク同士を、例えば、ロボット制御部650から供給される制御信号に応じて駆動する直列弾性アクチュエータ等によって、互いに回動可能に接続する。エンドエフェクタ53は、一端に位置するリンク51の先端に取り付けられている。エンドエフェクタ53は、例えば、ロボット制御部650から供給される制御信号に応じて駆動するアクチュエータによって開閉する複数の可動プレートによって、ワークWを挟んで把持可能に構成されてもよい。
【0033】
ロボット制御部650は、所定の条件が満たされるか否かを判定し、当該ピッキング条件が満たされると判定した場合に、コンベア10上を搬送されたワークWをピッキングするようにピッキングロボット50を制御してもよい。ロボット制御部650は、例えば、撮像部30が生成した画像を解析して、画像に含まれるワークWが特定の種類のものである(例えば、特定の形状、色、模様等を有する、良品/不良品である等)と判定した場合に、当該ワークWをピッキングするようにピッキングロボット50を制御してもよい。また、ロボット制御部650は、例えば、撮像部30が生成した画像を解析して、ワークWの位置を判定し、ワークWが所定の位置に到達したと判定した場合に、当該ワークWをピッキングするようにピッキングロボット50を制御してもよい。また、ロボット制御部650は、例えば、移動量取得部611が取得したベルト12の移動量や、回転量取得部621が取得したウェッジプリズム21の回転量に基づいて、ワークWの位置を判定してもよい。これらワークWの種類や位置の判別手法は、特に限定されないが、例えば、機械学習済みの学習モデルを用いた手法や、パターンマッチング等の周知のアルゴリズムを用いた手法であってもよい。本実施形態では、モーションブラーが低減されるため、ロボット制御部650による当該判定の精度が向上する。
【0034】
(2)動作処理
図3は、本実施形態に係る制御装置60が実行する屈折部20の駆動処理の一例を示す動作フローである。
【0035】
(S11)まず、制御装置60は、ウェッジプリズム21を初期方向にセットする処理を実行する。具体的には、まず、回転量取得部621は、エンコーダ202から供給される検知信号を取得することにより、ウェッジプリズム21の現在の角度を取得する。次に、プリズム制御部620は、ウェッジプリズム21の現在の角度と、所定の初期方向におけるウェッジプリズム21の角度との差分を算出する。ここで、所定の初期方向は、特に限定されないが、例えば、ワークWが後述するステップS12で規定する所定位置にある場合に、ワークWから進行した光がウェッジプリズム21で屈折して撮像部30に進行する方向であってよい。次に、プリズム制御部620は、モータドライバ201に、算出された当該差分の角度だけ回転することを指令する制御信号を供給する。これにより、モータドライバ201がモータ200を所定角度だけ回転駆動し、ウェッジプリズム21が初期方向にセットされる。
【0036】
(S12)次に、プリズム制御部620は、ワークWが所定位置に到来したか否かを判定する。ここで、所定位置は、特に限定されないが、例えば、コンベア10上の一端の近傍に任意に設定された位置であってよい。ワークWは、例えば、先行する他の工程から任意のロボットやコンベア等によって移動されて、コンベア10上の所定位置に載置されてもよい。ワークWが所定位置に到来したか否かの判定処理の手法は、特に限定されないが、例えば、撮像部30により生成される画像に対する画像処理の結果により判定する手法であってもよいし、不図示の光センサや磁気センサ等の任意のセンサにより、所定位置に到来したワークWを検出することによって判定する手法であってもよい。
【0037】
ワークWが所定位置に到来していないと判定された場合(S12;No)、プリズム制御部620は、ワークWが所定位置に到来したと判定するまで、当該判定処理を繰り返す。一方、ワークWが所定位置に到来したと判定された場合(S12;Yes)、処理はステップS13に進む。
【0038】
(S13)次に、プリズム制御部620は、プリズム駆動部22を制御することにより、ウェッジプリズム21の回転を開始する。
【0039】
ここで、
図4A~
図4Cを参照して、プリズム制御部620によるウェッジプリズム21の回転の制御について説明する。本実施形態に係る搬送システム1においては、制御装置60は、ワークWから進行した光がウェッジプリズム21によって撮像部30に向かって屈折するように、ウェッジプリズム21の方向を制御する。
【0040】
例えば、
図4Aでは、屈折部20のウェッジプリズム21は、制御装置60のプリズム制御部620がプリズム駆動部22を制御することにより、ウェッジプリズム21の方向が、ワークWから進行した光がウェッジプリズム21によって撮像部30に向かって屈折するような方向に制御されている。これにより、ワークWからウェッジプリズム21に向かって進行した光L1aは、入射面21aからウェッジプリズム21内に入射する際に屈折し、ウェッジプリズム21内を光L2aとして進行する。そして、光L2aは、出射面21bからウェッジプリズム21外に出射する際に、撮像部30の方向に屈折し、光L3aとして撮像部30に向かって進行する。このため、
図4Aにおいて、撮像部30が生成する画像におけるワークWの像は、ワークWの略真上から観察された像となる。
【0041】
次に、
図4Bに示すように、ワークWがベルト12上を、
図4Aに示す位置から距離m1だけ離れた位置に移動したものとする。この場合、制御装置60のプリズム制御部620は、プリズム駆動部22を制御することにより、ウェッジプリズム21を、ワークWから進行した光がウェッジプリズム21によって撮像部30に向かって屈折するような方向として、
図4Aに示す方向に対して所定の角度α1だけ異なる方向まで回転させる。これにより、ワークWからウェッジプリズム21に向かって進行した光L1bは、入射面21aからウェッジプリズム21内に入射する際に屈折し、ウェッジプリズム21内を光L2bとして進行する。そして、光L2aは、出射面21bからウェッジプリズム21外に出射する際に、撮像部30の方向に屈折し、光L3bとして撮像部30に向かって進行する。このため、
図4Bにおいても、撮像部30が生成する画像におけるワークWの像は、ワークWの略真上から観察された像となる。
【0042】
更に、
図4Cに示すように、ワークWがベルト12上を、
図4Aに示す位置から距離m2(>m1)だけ離れた位置に移動したものとする。この場合、制御装置60のプリズム制御部620は、プリズム駆動部22を駆動することにより、ウェッジプリズム21を、ワークWから進行した光がウェッジプリズム21によって撮像部30に向かって屈折するような方向として、
図4Aに示す位置と比較して所定の角度α2(>α1)だけ異なる方向まで回転させる。これにより、ワークWからウェッジプリズム21に向かって進行した光L1cは、入射面21aからウェッジプリズム21内に入射する際に屈折し、ウェッジプリズム21内を光L2cとして進行する。そして、光L2cは、出射面21bからウェッジプリズム21外に出射する際に、撮像部30の方向に屈折し、光L3cとして撮像部30に向かって進行する。このため、
図4Cにおいても、撮像部30が生成する画像におけるワークWの像は、ワークWの略真上から観察された像となる。
【0043】
更に、
図5を参照して、ウェッジプリズム21の回転速度について説明する。hを、ワークWとウェッジプリズム21との間の距離とする。なお、ウェッジプリズム21の回転による距離hの変化は、無視できる程小さいものとする。当該距離hについては、例えば、予めユーザにより入力された値や、任意のセンサによって測定された値として、記憶部660に記憶されていてもよい。
【0044】
tを、撮像部30における1フレームの撮像時間とし、fを、撮像部30におけるフレームレートとする。すなわち、t=1/fの関係が満たされる。当該撮像時間tやフレームレートfについては、例えば、予めユーザにより入力された値や、撮像制御部630が撮像部30から取得した値として、記憶部660に記憶されていてもよい。
【0045】
vを、コンベア10の速度(すなわち、ワークWの速度)とする。vは、例えば、移動量取得部611がエンコーダ102を介して取得したコンベア10の速度であってよい。コンベア10の速度vは、例えば、移動量取得部611が取得したコンベア10の移動量に基づいて算出され、記憶部660に記憶されていてもよい。
【0046】
コンベア制御部610は、上述した距離h、撮像時間t(又はフレームレートf)、及び距離hに基づいて、ワークWの移動前の光線とワークWの移動後の光線とがなす角度αを、α=arctan(vt/h)として算出する。そして、コンベア制御部610は、ウェッジプリズム21の回転速度が当該角度αを満たすように、ウェッジプリズム21の回転量を制御する。
【0047】
(S14)
図3に戻り、プリズム制御部620は、ウェッジプリズム21の回転を停止させるための条件(停止条件)が満たされるか否かを判定する。当該停止条件の内容は、特に限定されないが、例えば、ワークWが所定位置まで到来したこと、ウェッジプリズム21の回転が開始されてから所定時間が経過したこと等を含んでもよい。ワークWが所定位置に到来したか否かの判定処理の手法は、特に限定されないが、例えば、撮像部30により生成される画像に対する画像処理の結果により判定する手法であってもよいし、不図示の光センサや磁気センサ等の任意のセンサにより、所定位置に到来したワークWを検出することによって判定する手法であってもよい。
【0048】
停止条件が満たされていないと判定された場合(S14;No)、プリズム制御部620は、停止条件が満たされるまで、ウェッジプリズム21の回転を継続したまま、当該判定処理を繰り返す。一方、停止条件が満たされたと判定された場合(S14;Yes)、処理はステップS15に進む。
【0049】
(S15)次に、プリズム制御部620は、プリズム駆動部22を制御することにより、ウェッジプリズム21の回転を停止させる。その後、処理は再びステップS11に戻ってもよい。
【0050】
以上説明したとおり、本実施形態に係る搬送システム1においては、コンベア制御部610は、ワークWの移動速度に同期させて、ウェッジプリズム21の回転を制御可能である。これにより、撮像部30には屈折部20を介して常にワークWの一定方向(例えば、略真上)から進行する光が到達する。そのため、撮像部30が生成する画像において、ワークWは常に一定方向(例えば、略真上)から観察された像として当該画像に含まれることとなる。よって、撮像部30が生成する画像におけるモーションブラーが低減されるため、高フレームレートな撮像装置や高出力な照明装置が不要となる。また、コンベア10の移動速度に依存するモーションブラーを、学習モデルの学習なしで低減することが可能となる。
【0051】
(3)変形例
図6は、コンベア10及び屈折部20が連動する構成の一例を示す模式図である。搬送システム1は、コンベア10が有するコンベア駆動部11と、屈折部20が有するプリズム駆動部22とを連動させる連動部70を有してもよい。連動部70は、例えば、シャフト71と、シャフト71の一端及びコンベア駆動部11を動力伝達可能に接続するギヤ72と、シャフト71の他端及びプリズム駆動部22を動力伝達可能に接続するギヤ73とを含む。連動部70により、コンベア駆動部11の駆動力が、プリズム駆動部22に伝達される。これにより、コンベア10によるワークWの移動と、ウェッジプリズム21の回転とを、同期させることが可能となる。
【0052】
図7は、コンベア10及び屈折部20が連動する構成の他の一例を示す模式図である。搬送システム1は、コンベア10が有するコンベア駆動部11と、屈折部20が有するプリズム駆動部22とを連動させる連動部80を有してもよい。連動部80は、例えば、シャフト81と、シャフト81の一端及びコンベア駆動部11を動力伝達可能に接続するギヤ82と、シャフト81の他端及びプリズム駆動部22を動力伝達可能に接続するローラ83及びカム84とを含む。コンベア駆動部11の駆動力は、連動部80により、コンベア駆動部11の駆動力が、プリズム駆動部22に伝達される。これにより、コンベア10によるワークWの移動と、ウェッジプリズム21の回転とを、同期させることが可能となる。
【0053】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…搬送システム、10…コンベア、11…コンベア駆動部、12…ベルト、100…モータ、101…モータドライバ、102…エンコーダ、20…屈折部、21…ウェッジプリズム、22…プリズム駆動部、200…モータ、201…モータドライバ、202…エンコーダ、30…撮像部、40…照明部、50…ピッキングロボット、51…リンク、52…ジョイント、53…エンドエフェクタ、60…制御装置、61…プロセッサ、62…主メモリ、63…フラッシュメモリ、64…入出力I/F、610…コンベア制御部、611…移動量取得部、620…プリズム制御部、621…回転量取得部、630…撮像制御部、640…照明制御部、650…ロボット制御部、660…記憶部、70…連動部、71…シャフト、72、73…ギヤ、80…連動部、81…シャフト、82…ギヤ、83…ローラ、84…カム、W…ワーク