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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079173
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】欠陥検査システム及び欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240604BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/60 321Y
G01N21/956 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191945
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 薫
(72)【発明者】
【氏名】梅田 雅通
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051AC21
2G051CA04
2G051CB01
2G051EB09
2G051ED08
2G051ED11
(57)【要約】
【課題】被検査体の欠陥の有無をダイ単位で検査する欠陥検査システム等を提供する。
【解決手段】欠陥検査システム100は、ダイD1が半導体ウェハW1に接合された被検査体T1に対し、超音波またはX線を照射して検査対象画像を取得する画像生成部3aと、ダイD1が半導体ウェハW1に適切に接合された画像を示す基準画像と、取得した検査対象画像を比較して欠陥領域を検出する欠陥検出部3bと、ダイD1のデザイン情報を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する欠陥分類部3cと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイが半導体ウェハに接合された被検査体に対し、超音波またはX線を照射して検査対象画像を取得する検査画像取得部と、
ダイが半導体ウェハに適切に接合された画像を示す基準画像と、取得した検査対象画像を比較して欠陥領域を検出する欠陥領域検出部と、
ダイのデザイン情報を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する欠陥分析部と、を備える欠陥検査システム。
【請求項2】
前記デザイン情報は、ダイが半導体ウェハに適切に接合された状態におけるダイの位置、ダイの形状、ダイの回路パターン、ダイ内の輝度値、のうちのいずれかを含む請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項3】
前記ダイ単位の欠陥は、ダイと半導体ウェハの接合ミスに起因する欠陥である請求項2に記載の欠陥検査システム。
【請求項4】
前記ダイ単位の欠陥は、半導体ウェハにおいてダイが欠けている、ダイが歪んだ状態で半導体ウェハに接合されている、ダイの一部が半導体ウェハに接合されていない、ダイが半導体ウェハから浮いた状態で接合されている、ダイと半導体ウェハの間に空隙がある、ダイと半導体ウェハの間に異物が存在する、半導体ウェハにおけるダイの接合位置が適切でない、のうちのいずれかを含む請求項2に記載の欠陥検査システム。
【請求項5】
前記欠陥分析部は、前記ダイ単位の欠陥の他に、ボイドまたはクラックに起因する欠陥の有無を判断する請求項3に記載の欠陥検査システム。
【請求項6】
前記欠陥分析部は、前記ダイ単位の欠陥の他に、ボイドまたはクラックに起因する欠陥の有無を判断する請求項4に記載の欠陥検査システム。
【請求項7】
前記欠陥分析部は、前記デザイン情報が含むいずれかの情報について、前記基準画像と前記検査対象画像の一致率が閾値を超えるか否かで欠陥の有無を判断する請求項2に記載の欠陥検査システム。
【請求項8】
前記被検査体は、半導体ウェハの表面に形成された電極と、ダイの表面に形成された電極を接合したHybrid Bonding半導体ウェハである請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項9】
前記ダイは、ICチップであることである請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項10】
ダイが半導体ウェハに接合された被検査体に対し、超音波またはX線を照射して検査対象画像を取得する検査画像取得処理と、
ダイが半導体ウェハに適切に接合された画像を示す基準画像と、取得した検査対象画像を比較して欠陥領域を検出する欠陥領域検出処理と、
ダイのデザイン情報を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する欠陥分析処理と、を含む欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査体の画像に基づいて欠陥の有無を検査する技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1には、「被検査体の画像と基準画像との明るさを照合して欠陥確度を算出し、算出した欠陥確度と作成した多値のマスクとを比較して欠陥を検出する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-72501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、規則的に配列された複数のダイが半導体ウェハに接合されたものを被検査体とした場合、特許文献1に記載の技術では、ダイ単位で欠陥の有無を検査することが困難であり、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、被検査体の欠陥の有無をダイ単位で検査する欠陥検査システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る欠陥検査システムは、ダイが半導体ウェハに接合された被検査体に対し、超音波またはX線を照射して検査対象画像を取得する検査画像取得部と、ダイが半導体ウェハに適切に接合された画像を示す基準画像と、取得した検査対象画像を比較して欠陥領域を検出する欠陥領域検出部と、ダイのデザイン情報を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する欠陥分析部と、を備えることとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被検査体の欠陥の有無をダイ単位で検査する欠陥検査システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る欠陥検査システムの説明図である。
図2】第1実施形態に係る欠陥検査システムの構成図である。
図3】第1実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、被検査体の欠陥の種類を示す説明図である。
図4】第1実施形態に係る欠陥検査システムにおける被検査体の接合面の画像の例である。
図5A】第1実施形態に係る欠陥検査システムで用いられる基準画像の一例を示す画像である。
図5B】第1実施形態に係る欠陥検査システムで用いられるダイデザイン情報の一例を示す画像である。
図6】第1実施形態に係る欠陥検査システムの処理に関するフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る欠陥検査システムにおける欠陥の種類ごとの画像の例である。
図8】第1実施形態に係る欠陥検査システムにおける被検査体の欠陥の検出結果を示す画像の例である。
図9】第1実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、ダイ欠陥の一種である接合不完全の場合の検出結果に関する説明図である。
図10】第2実施形態に係る欠陥検査システムの説明図である。
図11】第2実施形態に係る欠陥検査システムが備える画像処理部の処理に関する説明図である。
図12】第3実施形態に係る欠陥検査システムにおける被検査体の平面図である。
図13】第3実施形態に係る欠陥検査システムが備える画像処理部の処理に関する説明図である。
図14】比較例において、基準画像及びダイ画像の画素ごとの輝度を比較した場合の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
図1は、第1実施形態に係る欠陥検査システム100の説明図である。
図1に示す欠陥検査システム100は、被検査体T1の欠陥の有無を検査するシステムである。また、欠陥検査システム100は、被検査体T1に欠陥がある場合には、その欠陥の種類を特定する機能も有している。第1実施形態では、一例として、所定に配列された複数のダイD1が半導体ウェハW1に接合(Die-to-Wafer接合)された構成の被検査体T1の欠陥検査について説明する。なお、「ダイ」とは、所定の回路が形成されたチップ状の半導体である。
【0010】
図1に示す被検査体T1は、半導体ウェハW1の表面に形成された電極と、ダイD1の表面に形成された電極を接合したHybrid Bonding半導体ウェハである。このようなHybrid Bonding半導体ウェハは、半導体ウェハW1の表面の銅電極と、ダイD1の表面の銅電極と、を対向させた状態で加熱することで形成される。図1の例では、円板状の半導体ウェハW1の表面に矩形状の複数のダイD1が縦・横に配列された状態で接合されている。半導体ウェハW1及びダイD1のそれぞれの銅電極の部分はわずかに凹んでいるが、半導体ウェハW1とダイD1とを圧着した状態で加熱すると、銅電極が熱膨張し、さらに相互拡散して接合される。このように、半導体ウェハW1とダイD1とを接合することで回路の高集積化を図る手法をハイブリッド接合(Hybrid Bonding)という。
【0011】
なお、半導体ウェハW1に接合される多数のダイD1の中には、半導体ウェハW1の表面に対して傾いた状態で接合されたものや、たわんだ状態で接合されたものが存在する可能性もある。また、半導体ウェハW1において接合されているべき箇所にダイD1が存在しないといったこともあり得る。そこで、第1実施形態では、このようなダイ単位での欠陥(「ダイ欠陥」という)の種類を欠陥検査システム100が特定するようにしている。
【0012】
図1に示すように、欠陥検査システム100は、検出部1と、A/D変換器2と、画像処理部3と、制御部4と、を備えている。検出部1は、被検査体T1に超音波を照射し、その反射波に基づいて所定の反射強度信号を生成する。図1に示すように、検出部1は、超音波プローブ1aと、探傷器1bと、を備えている。超音波プローブ1aは、探傷器1bからのパルス信号に基づいて、被検査体T1に超音波を照射し、さらに、被検査体T1からの反射波を受信する。
【0013】
被検査体T1の内部を伝搬する超音波は、音響インピーダンスが異なる境界面で反射する。また、被検査体T1の欠陥の有無で反射波の強度に違いが生じるため、反射強度信号を画像化することで、被検査体T1の欠陥を顕在化できる。特にダイD1と半導体ウェハW1との接合面に空隙が存在する箇所では超音波の大部分が反射するため、ダイD1の剥離等の欠陥を高感度で検出できる。
【0014】
探傷器1bは、超音波プローブ1aにパルス信号を出力することで、超音波プローブ1aから被検査体T1に向けて超音波を照射させる。また、探傷器1bは、超音波プローブ1aで受信された反射波を所定の反射強度信号に変換する。
【0015】
A/D変換器2は、探傷器1bから入力される反射強度信号(アナログ信号)を所定の波形データ(デジタル信号)に変換する。画像処理部3は、A/D変換器2から入力される波形データに基づいて、被検査体T1の欠陥の有無を検査し、欠陥の種類を特定する。図1に示すように、画像処理部3は、画像生成部3a(検査画像取得部)と、欠陥検出部3b(欠陥領域検出部)と、欠陥分類部3c(欠陥分析部)と、を備えている。
【0016】
画像生成部3aは、A/D変換器2から入力される波形データに基づいて、被検査体T1の接合面の画像データを生成する。具体的には、画像生成部3aは、波形データから反射強度の最大値を抽出し、さらに、所定の輝度値に変換することで、被検査体T1の接合面の画像データを生成する。すなわち、画像生成部3a(検査画像取得部)は、ダイD1が半導体ウェハW1に接合された被検査体T1に対し、超音波(またはX線)を照射して検査対象画像を取得する。
【0017】
欠陥検出部3b(欠陥領域検出部)は、ダイD1が半導体ウェハW1に適切に接合された画像を示す基準画像と、取得した検査対象画像を比較して欠陥領域を検出する。
欠陥分類部3c(欠陥分析部)は、ダイD1のダイデザイン情報(デザイン情報)を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する。また、欠陥分類部3cは、欠陥の種類に関するデータや接合面の観察用画像を生成し、これらのデータを制御部4に出力する。
【0018】
制御部4は、例えば、マイクロコンピュータであり、揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)と、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)と、所定の演算を行うCPU(Central Processing Unit)と、を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。制御部4は、欠陥分類部3cから出力されるデータを表示装置8(図2参照)に表示させる他、検出部1やA/D変換器2や画像処理部3を制御する機能を有している。
【0019】
図2は、欠陥検査システム100の構成図である。
図2に示す検出部1は、前記した超音波プローブ1aや探傷器1bの他に、スキャナ台1cと、水槽1dと、スキャナ1eと、ホルダ1fと、を備えている。スキャナ台1cは、水槽1dやスキャナ1eが載置される水平方向の基台である。水槽1dは、被検査体T1を水(図2に破線で水面を図示)に浸漬させるための容器であり、スキャナ台1cに設置されている。水槽1dの底には被検査体T1が載置され、さらに、被検査体T1よりも高い所定位置まで水が貯留されている。水は、超音波プローブ1aから被検査体T1に向けて超音波を伝搬させるための媒体である。被検査体T1には、前記したように、半導体ウェハW1(図1参照)に複数のダイD1(図1参照)が接合されたものが用いられる。
【0020】
スキャナ1eは、超音波プローブ1aをx軸・y軸・z軸の方向に移動させるための機器であり、水槽1dを跨いだ状態でスキャナ台1cに設置されている。ホルダ1fは、超音波プローブ1aを把持するものである。そして、スキャナ1eによって、超音波プローブ1aをx軸・y軸の方向(水平方向)に移動させながら所定の測定範囲で超音波を照射させるようになっている。その結果、所定の測定範囲における二次元の画像データ(被検査体T1の接合面の画像データ)が画像生成部3aで生成される。
【0021】
検出部1は、前記した構成の他、パラメータ設定部3dを備えている。パラメータ設定部3dは、ユーザによる入力装置(図示せず)を介した操作で入力される測定条件等のパラメータをデータベース6から読み出し、このパラメータを欠陥検出部3bや欠陥分類部3cに出力する。
【0022】
欠陥検査システム100は、さらに、メカニカルコントローラ5と、データベース6と、記憶部7と、表示装置8と、を備えている。メカニカルコントローラ5は、スキャナ1eをx軸・y軸・z軸の方向に移動させる。データベース6には、被検査体T1の欠陥を検査する際の測定条件等のパラメータが格納されている。
【0023】
記憶部7には、画像処理部3や制御部4の処理結果が格納される。例えば、画像処理部3で検出された欠陥の種類が、欠陥の画像データに対応付けて記憶部7に格納される。表示装置8には、画像処理部3や制御部4の処理結果が所定に表示される。例えば、被検査体T1の欠陥の画像や数の他、欠陥の位置や寸法が表示装置8に表示される。
【0024】
図3は、被検査体T1の欠陥の種類を示す説明図である。
なお、図3の紙面左端には、半導体ウェハW1にダイD1が正しく接合された状態を示している。被検査体T1の欠陥の種類は、ダイ欠陥と、ランダム欠陥と、に大別される。「ダイ欠陥」とは、ダイD1と半導体ウェハW1の接合ミスに起因して、ダイ単位で発生する欠陥である。このような「ダイ欠陥」の例として、図3には、「ダイなし」の欠陥F1と、「ダイ浮き」の欠陥F2と、「接合不完全ダイ」の欠陥F3と、「ダイたわみ」の欠陥F4と、を示している。
【0025】
「ダイなし」の欠陥F1とは、半導体ウェハW1においてダイD1が欠けている場合の欠陥である。つまり、「ダイなし」の欠陥F1とは、ダイD1が半導体ウェハW1における本来の位置に存在していない場合の欠陥である。「ダイ浮き」の欠陥F2とは、ダイD1が半導体ウェハW1から浮いた状態で接合されている場合の欠陥である。「接合不完全」の欠陥F3とは、ダイD1の一部が半導体ウェハW1に接合されていない場合や、半導体ウェハW1におけるダイD1の接合位置が適切でない場合の他、ダイD1と半導体ウェハW1の間に空隙があるといった場合の欠陥である。なお、半導体ウェハW1の表面に対してダイD1の少なくとも一部が傾いた状態で接合されている場合も「接合不完全」の欠陥F3に含まれる。「ダイたわみ」の欠陥F4とは、ダイD1がたわんだ状態(歪んだ状態)で半導体ウェハW1に接合されている場合の欠陥である。その他、ダイDと半導体ウェハW1の間に異物が存在するといった種類のダイ欠陥も特定可能である。これらのダイ欠陥は、Die-to-Wafer接合に特有のダイ単位で発生する接合欠陥である。
【0026】
また、前記した「ランダム欠陥」とは、半導体ウェハW1とダイD1との間にランダムに生じ得る欠陥である。このような「ランダム欠陥」の例として、図3には、「ボイド」の欠陥F5と、「クラック」の欠陥F6と、を示している。「ボイド」の欠陥F5は、複数のダイD1に亘って生じるような比較的大きな空隙である。「クラック」の欠陥F6は、半導体ウェハW1とダイD1との接合面に生じる微小な空隙である。これら2種類の欠陥(ランダム欠陥)は、Die-to-Wafer接合以外の他の接合形態でも生じ得るが、Die-to-Wafer接合でも生じることがある。欠陥分類部3c(欠陥分析部:図1参照)は、ダイ単位の欠陥の他に、ボイドまたはクラックに起因する欠陥(ランダム欠陥)の有無を判断する機能も有している。
【0027】
図4は、被検査体T1の接合面の画像の例である。
図4の例では、複数の矩形状のダイD1が縦・横に配列された状態で、円板状の半導体ウェハW1に接合された場合の接合面の画像を示している。図4の破線枠K1で囲まれた領域が1つのダイD1に対応している。なお、1枚の半導体ウェハW1に接合される複数のダイD1の回路構造は、それぞれ、同一であるものとする。図4の例では、白色の矩形状の領域の他、円形状や楕円形状、三角形状の領域が存在している。これらの領域の位置・大きさ・形状・輝度の他、ダイD1の回路パターンに基づいて、欠陥の種類が特定されるようになっている。
【0028】
図5Aは、基準画像の一例を示す画像である。
なお、図5Aでは、ダイD1(図4参照)の回路パターンを簡略化して示している。図5Aに示す「基準画像」とは、ダイD1が半導体ウェハW1に適切に接合された状態の部分的な画像である。なお、被検査体T1の画像(図4参照)に基づく統計的処理によって、基準画像が生成されるようにしてもよい。このような統計的処理として、例えば、統計特徴量であるμ_brightnessを用いた手法が挙げられる。
【0029】
μ_brightnessを用いる場合、欠陥検査システム100は、被検査体T1の画像に含まれる複数のダイ画像の各画素の位置(x,y)について、以下の式(1)の演算を行う。なお、「ダイ画像」とは、被検査体T1に含まれる1つのダイD1に対応する領域(ダイ領域)の画像である。例えば、図4の破線枠K1で囲まれた部分的な画像が「ダイ画像」である。式(1)に含まれるd1(x,y)~dN(x,y)は、それぞれのダイ画像における位置(x,y)の輝度値である。また、「maxCounter」とは、輝度値d1(x,y)~dN(x,y)に基づいて最頻輝度値を求める際に用いられるフィルタである。欠陥検査システム100は、ダイ画像における位置(x,y)での最頻輝度値に基づいて、基準画像G(x,y)を生成する。
【0030】
【数1】
【0031】
このような基準画像G(x,y)のデータは、欠陥検査においてダイ画像と基準画像とを比較する際に用いられる。基準画像G(x,y)のデータは、ダイD1の種類に対応付けて、データベース6(図2参照)に格納される。
【0032】
図5Bは、ダイデザイン情報の一例を示す画像である。
「ダイデザイン情報」とは、1つのダイD1(図4参照)に対応するダイ領域の位置・形状・輝度の他、ダイ領域のパターン構造情報を含むデータである。ここで、ダイ領域の「位置」とは、被検査体T1の画像(図4参照)を縦方向・横方向に所定の画素数ごとに区切った場合の1つの画像(図5Bの画像)に対するダイ領域(図5Bの破線枠K1内の領域)の相対的な位置を示すデータである。被検査体T1の画像(図4参照)からダイD1をひとつずつ規則的に切り出した画像の中にダイD1以外の部分も含まれることがあるため、ダイ領域の相対的な「位置」を特定するようにしている。
【0033】
ダイデザイン情報に含まれるダイ領域の「形状」とは、図5Bに示す破線枠K1の形状である。また、ダイデザイン情報に含まれる「パターン構造情報」とは、ダイ領域の回路パターンを示す情報である。このようなパターン構造情報として、例えば、ダイD1の設計データが用いられる。なお、基準画像(図5A参照)のテクスチャ特徴に基づいて、パターン構造情報が生成されるようにしてもよい。このようなテクスチャ特徴には、基準画像に含まれる所定のパターンの密度や向きの他、パターンピッチ、パターン輝度値等が含まれる。
【0034】
その他、ダイ領域のパターン構造情報が所定の輝度勾配符号で表されるようにしてもよい。すなわち、基準画像やダイ画像の各画素について、周囲の8近傍の画素で輝度勾配が最大になる方向を探索することで、0~16の5bitの輝度勾配符号が生成されるようにしてもよい。つまり、ダイD1の回路パターンが5bitの符号で表されたものが、輝度勾配符号である。このようなパターン構造情報を含むダイデザイン情報は、被検査体T1の欠陥検査の際に用いられる。
【0035】
図6は、欠陥検査システム100の処理に関するフローチャートである(適宜、図1も参照)。
なお、図6の「START」時には、被検査体T1に超音波が照射された場合の画像データ(検査対象画像)が画像生成部3aによって生成されているものとする(検査画像取得処理)。
ステップS101において欠陥検査システム100は、被検査体T1の画像からダイD1ごとの画像を切り出す。例えば、欠陥検査システム100は、図4に示す被検査体T1の画像を縦方向・横方向で所定の画素数ごとに区切ることで、ダイD1がひとつずつ含まれる矩形状の画像を切り出す。このような矩形状の画像には、ダイD1の識別情報が対応付けられている。
【0036】
ステップS102において欠陥検査システム100は、被検査体T1に含まれる複数のダイD1のうちの一つを選択する。
ステップS103において欠陥検査システム100は、ステップS102で選択したダイD1を含む画像からダイ画像を抽出する。前記したように、「ダイ画像」とは、1つのダイD1に対応するダイ領域の画像である。
【0037】
ステップS104において欠陥検査システム100は、欠陥検出部3bによって、ダイ画像から欠陥領域を検出する。すなわち、欠陥検査システム100は、所定の基準画像と検査対象画像とを比較して欠陥領域を検出する(欠陥領域検出処理)。これによって、ダイ画像において基準画像の画素とは輝度が異なるひとまとまりの画素の集合が所定の欠陥領域として検出される。
【0038】
ステップS105において欠陥検査システム100は、パターン構造情報を抽出する。例えば、欠陥検査システム100は、ステップS103で抽出したダイ画像のテクスチャ特徴を所定の輝度勾配符号で表すことで、ダイ画像のパターン構造情報を抽出する。同様にして、基準画像(図5A参照)のパターン構造情報も抽出される。
【0039】
ステップS106において欠陥検査システム100は、基準画像に対するダイ画像のパターン一致率(一致率)が所定値P0よりも高いか否かを判定する。なお、「パターン一致率」とは、ダイ画像の回路パターンが基準画像の回路パターンに一致している度合いを示す数値である。例えば、基準画像及びダイ画像において、相互に対応する位置の輝度勾配符号が一致しているか否かに基づいて、パターン一致率が算出される。
【0040】
ステップS106においてパターン一致率が所定値P0よりも高い場合(S106:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS107に進む。
ステップS107において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、「欠陥なし」と判定する。つまり、欠陥検査システム100は、ステップS102で選択したダイD1に関しては、半導体ウェハW1との接合面に欠陥が存在しないと判定する。
【0041】
また、ステップS106においてパターン一致率が所定値P0以下である場合(S106:No)、図6では省略しているが、ダイD1と半導体ウェハW1の接合面に何らかの欠陥があると欠陥分類部3cが判定し、ステップS108の処理に進む。
ステップS108において欠陥検査システム100は、基準画像に対するダイ画像のパターン一致率が所定値P1(第1所定値)未満であるか否かを判定する。なお、所定値P1は、パターン一致率の閾値であり、ステップS106で用いられる所定値P0よりも低い閾値として予め設定されている。
【0042】
ステップS108において、基準画像に対するダイ画像のパターン一致率が所定値P1未満である場合(S108:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS109に進む。
ステップS109において欠陥検査システム100は、ダイ画像の輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M1(第2所定値)よりも高いか否かを判定する。なお、「輪郭一致率」とは、2つの形状の輪郭の位置が略一致している度合いを示す数値である。
【0043】
例えば、図7に示す「ダイなし」の画像では、破線枠K1内の画素の略全てが黒色になっている。また、例えば、図7に示す「ダイ浮き」の画像では、破線枠K1内の画素の略全てが白色になっている。このように、ダイ画像において隣り合う画素同士の輝度差が所定値以下になっている領域が「輝度平坦領域」である。なお、「輝度平坦領域」は、ダイD1と半導体ウェハW1との接合面における欠陥領域に略一致している。
【0044】
図6のステップS109において、ダイ画像の輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M1よりも高い場合(S109:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS110に進む。
ステップS110において欠陥検査システム100は、ダイ画像に含まれる欠陥領域(輝度平坦領域)の平均輝度が所定値L1(第3所定値)未満であるか否かを判定する。欠陥領域の平均輝度が所定値L1未満である場合(S110:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS111に進む。
【0045】
ステップS111において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類が「ダイなし」であると判定する。このように、欠陥分類部3cは、ダイD1の正常な回路パターンに対するダイ画像の回路パターンのパターン一致率(一致率)が所定値P1(第1所定値)未満である場合において(S108:Yes)、さらに次の条件が満たされるときには、欠陥の種類が「ダイなし」であると判定する。すなわち、ダイ画像の輝度平坦領域の輪郭と当該ダイ画像の輪郭との輪郭一致率が所定値M1(第2所定値)よりも高く(S109:Yes)、さらに、欠陥領域の平均輝度が所定値L1(第3所定値)未満であるとき(S110:Yes)、欠陥分類部3cは、ダイD1が半導体ウェハW1における本来の位置に存在していない(つまり、「ダイなし」である)と判定する(S111)。
【0046】
図7は、欠陥の種類ごとの画像の例である。
図7に示す「ダイなし」では、接合されるべき位置にダイD1が存在せず、超音波を反射させるような接合面も存在しないため、結果的にダイ領域の画像の略全域が黒くなっている。なお、「ダイなし」や「ダイ浮き」では、いずれも輪郭一致率(図6のS109)が「1」に近い値になるが、欠陥領域の平均輝度が異なっている(図6のS110)。
【0047】
図6のステップS110において、欠陥領域の輝度平均値が所定値L1以上である場合(S110:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS112に進む。
ステップS112において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類が「ダイ浮き」であると判定する。つまり、欠陥分類部3cは、ダイD1の大部分が半導体ウェハW1から浮いた状態であると判定する。図7に示す「ダイ浮き」では、ダイD1と半導体ウェハW1との間に空隙が存在するため、この空隙の界面で超音波が反射する。その結果、ダイ領域の画像の略全域が白色(又は灰色)になる。
【0048】
また、図6のステップS109において、輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M1以下である場合(S109:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS113に進む。
ステップS113において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類が「接合不完全」であると判定する。つまり、欠陥分類部3cは、半導体ウェハW1に対するダイD1の接合が不完全であると判定する。図7の紙面右上の「接合不完全」では、破線枠K1内の隅部の接合が不完全であるため、隅部の三角形状の部分の画素が白色になっている。また、図7の紙面左下の別の「接合不完全」では、破線枠K1内の左端付近の接合が不完全であるため、この部分の画素が灰色(図7ではドット表示)になっている。
【0049】
また、図6のステップS108において、パターン一致率が所定値P1以上である場合(S108:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS114に進む。
ステップS114において欠陥検査システム100は、ダイ画像の輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M2(第4所定値)よりも高いか否かを判定する。なお、所定値M2は、「接合不完全」(図7参照)や「ダイたわみ」(図7参照)といったダイ欠陥と、それ以外のランダム欠陥と、を区別するための輪郭一致率の閾値であり、ステップS109の所定値M1よりも低い値として予め設定されている。
【0050】
ステップS114において、ダイ画像の輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M2よりも高い場合(S114:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS115に進む。
ステップS115において欠陥検査システム100は、欠陥領域(輝度平坦領域)の形状が矩形状であるか否かを判定する。欠陥領域の形状が矩形状である場合(S115:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS116に進む。
【0051】
ステップS116において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類が「ダイたわみ」であると判定する。すなわち、欠陥分類部3cは、ダイD1の正常な回路パターンに対するダイ画像の回路パターンのパターン一致率(一致率)が所定値P1(第1所定値)以上である場合において(S108:No)、さらに次の条件が満たされるときには、欠陥の種類が「ダイたわみ」であると判定する。すなわち、ダイ画像の輝度平坦領域の輪郭と当該ダイ画像の輪郭との輪郭一致率が所定値M2(第4所定値)よりも高く(S114:Yes)、さらに、欠陥領域の形状が矩形状であるとき(S115:Yes)、欠陥分類部3cは、ダイD1がたわんだ状態で半導体ウェハW1に接合されていると判定する(S116)。図7には特に示していないが、ダイD1が縦方向又は横方向にたわんだ場合には、ダイ画像における欠陥領域が矩形状になることが多い。
【0052】
また、ステップS115において欠陥領域が矩形状でない場合(S115:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS115に進む。
ステップS115において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類が「接合不完全」であると判定する。例えば、図7の紙面右下の「混在」では、欠陥領域A1の縁の一部が円弧状になっており、また、残りの縁が破線枠K(ダイ領域の輪郭)の一部に略一致している。したがって、欠陥領域A1については、欠陥の種類が「接合不完全」であると判定される。
【0053】
また、図6のステップS114において、ダイ画像の輝度平坦領域とダイ領域との輪郭一致率が所定値M2以下である場合(S114:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS117に進む。
ステップS117において欠陥検査システム100は、欠陥分類部3cによって、欠陥の種類は「ランダム欠陥」であると判定する。つまり、欠陥分類部3cは、ダイD1と半導体ウェハW1との接合面に所定のランダム欠陥が存在すると判定する。図7に示す「ボイド」では、ダイ画像において円形状のボイドの部分が白色になっている。また、図7の「混在」では、欠陥領域A2を含むようにボイドが複数のダイに亘って存在している。
【0054】
なお、図6では省略しているが、ダイ画像の中に複数の欠陥領域が存在している場合には、それぞれの欠陥領域ごとに欠陥の種類が特定される。また、ダイD1のデザイン情報を参照して欠陥領域を分析することで、ダイ単位の欠陥の有無を判断する「欠陥分析処理」は、図6のステップS105~S117の処理を含んで構成されている。このような「欠陥分析処理」は、欠陥分類部3c(図1参照)によって行われる。
【0055】
図6のステップS107、S111、S112、S113、S116、又はステップS117の処理を行った後、欠陥検査システム100の処理はステップS118に進む。ステップS118において欠陥検査システム100は、検査結果を記憶する。すなわち、欠陥検査システム100は、ステップS102で選択したダイD1の識別情報に、このダイD1に関する欠陥の種類等を対応付けて、記憶部7(図2参照)に格納する。
【0056】
次に、ステップS119において欠陥検査システム100は、未検査の他のダイD1が存在するか否かを判定する。未検査の他のダイD1が存在する場合(S119:Yes)、欠陥検査システム100の処理はステップS102に戻る。また、ステップS119において未検査の他のダイD1が存在しない場合(S119:No)、欠陥検査システム100の処理はステップS120に進む。
【0057】
ステップS120において欠陥検査システム100は、制御部4によって、検査結果を表示装置8(図2参照)に表示させる。例えば、制御部4は、欠陥の種類を示す所定のラベルを欠陥ごとに付与し、色分け等の識別可能な表示方法で所定の欠陥用画像を被検査体T1の画像に重ねて表示させる。
【0058】
図8は、被検査体の欠陥の検出結果を示す画像の例である。
なお、図4に示す被検査体T1の画像を用いた場合の検査結果の表示例が、図8の画像である。図8の例では、「ダイなし」の欠陥F1の欠陥用画像が矩形状の白色で表示されている。また、「ダイ浮き」の欠陥F2の欠陥用画像が斜線入りの矩形で表示されている。また、「接合不完全」の欠陥F3や「ダイたわみ」の欠陥F4の他、「ボイド」の欠陥F5や「クラック」の欠陥F6が識別可能に所定に表示されている。このように、制御部4は、欠陥分類部3cの処理結果に基づいて、被検査体T1の画像における欠陥領域の位置に、当該欠陥領域の欠陥の種類に対応付けられた所定の欠陥用画像を重ねて表示させる。このような画像を見ることで、被検査体T1のどの箇所にどの種類の欠陥が生じているかをユーザが一目で把握できる。これらの欠陥の分類結果は、ダイD1及び半導体ウェハW1を加熱する際の温度条件といったプロセス条件の変更に適宜に反映される。
【0059】
図14は、比較例において、基準画像及びダイ画像の画素ごとの輝度を比較した場合の結果を示す説明図である。
なお、図14では、基準画像に対する輝度差が比較的小さい画素をドットで示している。また、基準画像に対して輝度が高い画素(欠陥として認識された箇所)を白色で示している他、基準画像に対して輝度が低い画素(欠陥として認識された箇所)を黒色で示している。図14の紙面上側の比較例では、欠陥領域の輝度が基準画像の回路パターンの輝度と同等であるため、回路パターンの部分が欠陥として検出されていない。また、図14の紙面下側の比較例では、回路パターンに対応する箇所で基準画像との輝度差が大きくなるため、回路パターン以外の部分が欠陥として検出されていない。このように、画素ごとの輝度を単に比較する方法では、「接合不完全」や「ダイなし」といったダイ単位の欠陥の検出が困難になる。
【0060】
これに対して第1実施形態では、ダイデザイン情報の他、欠陥領域の位置・大きさ・形状・輝度に基づいて、ダイ単位での欠陥の種類を分類するようにしている。これによって、「ダイなし」や「ダイ浮き」、「ダイたわみ」、「接合不完全」といったダイ単位の欠陥を高精度に検出できる。
【0061】
図9は、ダイ欠陥の一種である接合不完全の場合の検出結果に関する説明図である。
図9に示すように、基準画像からパターン構造情報が抽出されるとともに、ダイ画像(接合不完全の場合)から別のパターン構造情報が抽出される。図9の例では、破線枠K1内(ダイ領域内)でのパターン構造情報の一致率が略0%になるため、「ダイ欠陥あり」と判定される。さらに、ダイ画像から抽出された輝度平坦領域(白色の領域)とダイ領域との比較に基づいて、右下の隅部の形状が一致していないと判定され、「接合不完全」であると判定される。
【0062】
<効果>
第1実施形態によれば、被検査体T1に超音波を照射した場合の画像データに基づいて、欠陥検査システム100がダイ単位で欠陥の種類を特定するようにしている。これによって、例えば、Die-to-Wafer接合に特有のダイ欠陥の種類を特定できるため、検査結果に基づいて、管理者がプロセス条件を適宜に変更できる。したがって、プロセス条件の早期改善につなげることができるため、半導体製品を量産する際の歩留りの向上を図ることができる。
【0063】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、欠陥検出部3Ab(図10参照)が、ダイ単位の欠陥領域を検出する第1欠陥検出部31b(図10参照)と、ランダム欠陥を検出する第2欠陥検出部32b(図10参照)と、を備える点が第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0064】
図10は、第2実施形態に係る欠陥検査システム100Aの説明図である。
図10に示すように、画像処理部3Aは、画像生成部3aと、欠陥検出部3Abと、欠陥分類部3Acと、を備えている。また、欠陥検出部3Abは、ダイD1ごとに欠陥領域を検出する第1欠陥検出部31bと、被検査体T1のランダム欠陥を検出する第2欠陥検出部32bと、を有している。
【0065】
なお、第1欠陥検出部31bの処理は、第1実施形態の欠陥検出部3b(図1参照)の処理と同様である。すなわち、第1欠陥検出部31bは、ダイデザイン情報の他、欠陥領域の位置・大きさ・形状・輝度に基づいて、欠陥領域をダイごとに特定する。第2欠陥検出部32bは、基準画像とダイ画像との画素ごとの輝度の比較に基づいて、ボイドやクラックといったランダム欠陥を検出する。
【0066】
図11は、画像処理部の処理に関する説明図である(適宜、図10も参照)。
まず、画像処理部3Aは、被検査体T1に超音波を照射した場合の反射強度信号に基づき、画像生成部3aによって、被検査体T1の画像を生成する。そして、画像処理部3Aは、複数のダイD1のダイ画像を抽出し、さらにダイ画像を整列させる。具体的には、画像処理部3Aは、n個のダイ画像G1,G2,・・・,Gnにおいて、位置が対応している画素の座標値が共通となるようにする。
【0067】
そして、画像処理部3Aは、ダイ画像の画素ごとに特徴統合を行う(S201)。ここで、「特徴統合」とは、n個のダイ画像G1,G2,・・・,Gnにおいて、位置が対応しているn個の画素の代表値(例えば、輝度平均値や輝度中央値)を算出する処理である。このような特徴統合の処理が、ダイ画像に含まれる全て画素について行われることで、基準画像が生成される。
【0068】
また、画像処理部3Aは、図11に示す多値マスクを生成する。多値マスクとは、画像の特徴に基づいて画素ごとに設定される動的閾値であり、所定の統計処理に基づいて設定される。そして、画像処理部3Aは、被検査体T1に含まれるダイ画像G1,G2,・・・,Gnの他、前記した基準画像や多値マスクに基づく統合比較によって、欠陥検査を行う(S202)。具体的には、画像処理部3Aは、第2欠陥検出部32b(図10参照)によって、n個のダイ画像のそれぞれを基準画像と比較する。そして、画像処理部3Aは、動的閾値である多値マスクに基づいて、被検査体T1の欠陥を検出する。これによって、第1実施形態の構成では検出されないような微小な欠陥(ボイドやクラック等のランダム欠陥)を検出できる。第2欠陥検出部32b(図10参照)の検出結果は、制御部4(図10参照)によって、表示装置8(図2参照)に所定に表示される。
【0069】
また、画像処理部3Aは、第1欠陥検出部31b(図10参照)や欠陥分類部3c(図10参照)によって、被検査体T1におけるダイD1ごとの欠陥検査も併せて行う。これによって、被検査体T1におけるダイ欠陥も検出できる。なお、ダイ欠陥を検出する処理については、第1実施形態(図6参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0070】
<効果>
第2実施形態によれば、画像処理部3Aは、第1欠陥検出部31bによって主にダイ欠陥を検出するとともに、第2欠陥検出部32bによってランダム欠陥を検出する。これによって、ダイ欠陥の他、微小なボイドやクラックといったランダム欠陥を高精度に検出できる。
【0071】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、IC(Integrated Circuit)トレイ91(図12参照)に載置された複数のICパッケージ92(図12参照)を被検査体T2(図12参照)とする点が、第1実施形態とは異なっている。また、第3実施形態は、所定の検査レシピやトレイマトリックス情報に基づいて欠陥検査が行われる点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他(超音波を用いる点や、欠陥検査システム100の全体的な構成等:図1図2参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0072】
図12は、第3実施形態に係る欠陥検査システムにおける被検査体T2の平面図である。
図12に示すように、被検査体T2は、ICトレイ91に複数のICパッケージ92(ダイであるICチップ)が載置された構成になっている。ICトレイ91には、縦方向・横方向に複数のポケット(符号は図示せず)が設けられている。それぞれのポケットには、ICパッケージ92が1つずつ載置されている。ICパッケージ92は、所定の集積回路が形成されたシリコン半導体がパッケージに収容された構成の電子部品である。このような被検査体T2に超音波が照射されることで、被検査体T2の画像が生成される。
【0073】
図13は、画像処理部の処理に関する説明図である(適宜、図12も参照)。
図13に示すように、被検査体T2の画像(ICパッケージ画像)の他、検査レシピやトレイマトリックス情報に基づいて、欠陥検査が行われる。検査レシピには、被検査体T2の画像におけるICパッケージ92の縦方向・横方向の長さ(画素数)の他、隣り合うICパッケージ92の縦方向・横方向の間隔(画素数)や、正常なICパッケージ92の画像に関する情報が含まれている。トレイマトリックス情報には、それぞれのICパッケージ92の種類や型番や識別情報が含まれている。
【0074】
なお、ICトレイ91に載置される複数のICパッケージ92の種類が全て同一である必要は特になく、異なる種類のものが混在していてもよい。欠陥検査システム100(図1参照)は、ICトレイ91の各ポケットに載置されている複数のICパッケージ92を種類ごとにグルーピングする(S301)。
【0075】
そして、欠陥検出部3b(図1参照)は、共通のグループに属するICパッケージ92の画像を収集し(S302)、欠陥検出を行う(S303)。欠陥分類部3c(図1参照)は、所定の欠陥領域における欠陥の種類をICパッケージ92ごとに特定する。これによって、1つのICトレイ91に異なる種類のICパッケージ92が混在している場合でも、欠陥検査を適切に行うことができる。なお、被検査体T2の欠陥の種類としては、パッケージの中にICが入っていない「IC抜け」や、あるべき箇所にICパッケージが載置されていない「パッケージなし」といったものが挙げられる。図13のステップS302,S303の処理は、ICパッケージ92のグループごとに行われる。
【0076】
<効果>
第3実施形態によれば、ICトレイ91に載置された複数のICパッケージ92の欠陥を適切に検査できる。また、1枚のICトレイ91に異なる種類のICパッケージ92が混在している場合でも、それぞれの種類のICパッケージ92の欠陥検査を個別に行うことができる。
【0077】
≪変形例≫
以上、本発明に係る欠陥検査システム100,100Aについて各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、被検査体T1に超音波が照射されることで、被検査体T1の画像が生成される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、被検査体T1にX線が照射された場合のX線透過量に基づいて、被検査体T1の画像が生成されるようにしてもよい。この場合における画像処理部3(図1参照)の処理内容は、第1実施形態や第2実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0078】
また、第1実施形態では、ダイD1の設計データに基づいてダイデザイン情報が作成される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、入力装置(図示せず)を介したユーザの操作に基づいて、ダイデザイン情報が作成されるようにしてもよい。また、被検査体T1の接合面の超音波画像に基づいて、ダイデザイン情報が生成されるようにしてもよい。その他、半導体ウェハW1とダイD1の貼合せ直後の被検査体T1を光学式の顕微鏡(図示せず)で撮像し、その光学画像に基づいて、ダイデザイン情報が生成されるようにしてもよい。
また、第1実施形態では、ダイD1が半導体ウェハW1に適切に接合された状態におけるダイD1の位置、ダイD1の形状、ダイD1の回路パターン、及びダイD1内の輝度値がダイデザイン情報(デザイン情報)に含まれる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、ダイD1が半導体ウェハW1に適切に接合された状態におけるダイD1の位置、ダイD1の形状、ダイD1の回路パターン、ダイD1内の輝度値、のうちのいずれかがダイデザイン情報(デザイン情報)に含まれるようにしてもよい。この場合において、欠陥分類部3c(欠陥分析部)は、ダイデザイン情報(デザイン情報)が含むいずれかの情報について、基準画像と検査対象画像の一致率が閾値を超えるか否かで欠陥の有無を判断する。前記した「一致率」として、例えば、ダイD1の位置に関する一致率や、ダイD1の形状の一致率の他、ダイD1の回路パターンの一致率、画像中のダイD1内の輝度値の一致率といったものが適宜に用いられる。
【0079】
また、各実施形態では、欠陥の種類ごとの特徴が予め設定されている場合について説明したが、これに限らない。例えば、教示-学習型の深層学習に基づいて、欠陥の種類ごとの特徴が学習されるようにしてもよい。
また、第1、第2実施形態では、半導体ウェハW1に接合される複数のダイD1の回路構造が共通である場合について説明したが、これに限らない。すなわち、複数のダイD1とは異なる回路構成の別のダイが半導体ウェハW1に混在していてもよい。この場合には、同種類のダイD1ごとに欠陥検査が行われるものとする。
【0080】
また、欠陥の種類を判別する処理は、各実施形態で挙げたものに限定されない。例えば、欠陥領域における欠陥の種類がランダム欠陥である場合において、当該欠陥領域の平均輝度が第5所定値未満であるとき、ランダム欠陥は、ダイD1の回路パターンの欠損であると欠陥分類部3c(図1参照)が判定するようにしてもよい。ダイD1の回路パターンが欠損している箇所では超音波がほとんど反射せず、画像上の輝度が低くなるからである。
【0081】
また、欠陥領域における欠陥の種類がランダム欠陥である場合において、当該欠陥領域の平均輝度が第5所定値以上であるとき、ランダム欠陥は、ボイド又はクラックであると欠陥分類部3c(図1参照)が判定するようにしてもよい。半導体ウェハW1とダイD1との間の空隙(ボイドやクラック)の界面で超音波が反射し、画像上の輝度が比較的高くなるからである。この場合において、ダイ画像の輪郭を構成している辺のうち、ボイド又はクラックに重なっている辺を介して隣り合う他のダイのダイ画像についても、欠陥分類部3c(図1参照)がボイド又はクラックの有無を判定するようにしてもよい。これによって、被検査体T1におけるボイドやクラックの見落しを抑制できる。
【0082】
また、第1、第2実施形態では、Die-to-Waferの接合で被検査体が形成される場合について説明したが、これに限らない。例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical)ウェハといった多層構造の基板にも、第1、第2実施形態を適用できる。
また、第3実施形態では、ICトレイ91(図12参照)のポケットにICパッケージ92(ダイであるICチップ:図12参照)がひとつずつ載置された構成の被検査体T2の欠陥検査について説明したが、これに限らない。例えば、ストリップ基板(図示せず)におけるICパッケージ(ダイであるICチップ)の欠陥検査にも、第3実施形態を適用できる。その他、所定の電子部品が板状体に載置されるような構成のさまざまな被検査体の欠陥検査にも、第3実施形態を適用できる。
【0083】
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせ、図6のステップS108においてパターン一致率が所定値P1以下である場合(S108:No)、第2実施形態の統合比較の処理(図11のS202)が行われるようにしてもよい。また、ダイ欠陥が検出されなかったダイ画像について、統合比較の処理(図11のS202)が行われるようにしてもよい。
【0084】
また、欠陥検査システム100,100Aが実行するプログラム(欠陥検査方法等のプログラム)は、通信回線を介して提供することもできる他、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
また、実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0085】
1 検出部
2 A/D変換器
3,3A 画像処理部
3a 画像生成部(検査画像取得部)
3b,3Ab 欠陥検出部(欠陥領域検出部)
3c 欠陥分類部(欠陥分析部)
4 制御部
31b 第1欠陥検出部
32b 第2欠陥検出部
91 ICトレイ
92 ICパッケージ(ダイ、ICチップ)
100,100A 欠陥検査システム
D1 ダイ
T1,T2 被検査体
W1 半導体ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14