IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

<>
  • 特開-吐出器 図1
  • 特開-吐出器 図2
  • 特開-吐出器 図3
  • 特開-吐出器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079175
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20240604BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20240604BHJP
   B05B 11/10 20230101ALI20240604BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101Q
B05B11/00 101G
B05B11/10 101G
B05B11/10 101Q
F04B9/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191952
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【テーマコード(参考)】
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA02
3E084DB12
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD26
3H075AA01
3H075BB03
3H075BB22
3H075CC26
3H075CC27
3H075DA03
3H075DA04
3H075DA09
3H075DB13
3H075DB14
3H075DB40
(57)【要約】
【課題】容器本体内の内容液をシリンダ部内に円滑に導入することができる吐出器を提供する。
【解決手段】吐出器(1)は、正立時導入口(63a)および倒立時導入口(63b)を有する正倒立用ユニット(13)を備え、正倒立用ユニットには、内容液導入口(21f)、正立時導入口、および倒立時導入口に連通可能な中継口(64c)と、倒立時導入口と中継口との連通を遮断する第1の切替弁(61)と、正立時導入口と中継口との連通を遮断する第2の切替弁(62)と、が備えられ、吐出器の正立時には、正立時導入口から中継口を介して内容液導入口まで延びる第1流路部が形成され、吐出器の倒立時には、倒立時導入口から中継口を介して内容液導入口まで延びる第2流路部(82)が形成され、第1流路部における流路断面積の最小値と第2流路部における流路断面積の最小値との少なくとも一方は、0.6mm以上、1.0mm以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容される容器本体の口部に装着される吐出器であって、
シリンダ部の内容積の増加による内圧減少により、前記容器本体内の内容液が、前記シリンダ部に形成された内容液導入口を通して前記シリンダ部内に導入されるとともに、前記シリンダ部の内容積の減少による内圧上昇により、前記シリンダ部内の内容液を送り出すポンプと、
前記ポンプにより送り出された内容液が吐出される吐出口を有する吐出ヘッドと、
前記吐出器の正立時に前記容器本体内の内容液を前記シリンダ部の内容液導入口に導入可能な正立時導入口、および前記吐出器の倒立時に前記容器本体内の内容液を前記内容液導入口に導入可能な倒立時導入口を有する正倒立用ユニットと、
を備え、
前記正倒立用ユニットには、
前記内容液導入口、前記正立時導入口、および前記倒立時導入口に連通可能な中継口と、
前記吐出器の正立時に、前記倒立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、
前記吐出器の倒立時に、前記正立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、が備えられ、
前記吐出器の正立時には、前記正立時導入口から前記中継口を介して前記内容液導入口まで延びる第1流路部が形成され、
前記吐出器の倒立時には、前記倒立時導入口から前記中継口を介して前記内容液導入口まで延びる第2流路部が形成され、
前記第1流路部における流路断面積の最小値と前記第2流路部における流路断面積の最小値との少なくとも一方は、0.6mm以上、1.0mm以下である、吐出器。
【請求項2】
前記第1流路部および前記第2流路部の少なくとも一方において、流路断面積が最小値となる部分は、前記中継口であり、
前記中継口における流路断面積は、0.6mm以上、1.0mm以下である、請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記中継口は、1つのみ形成されている、請求項2に記載の吐出器。
【請求項4】
前記正倒立用ユニットは、
前記正立時導入口および前記倒立時導入口が形成された外筒部材と、
前記外筒部材の径方向の内側に位置する内筒部材と、
を備え、
前記内筒部材には、
前記中継口と、
前記吐出器の正立時に、前記第1の切替弁が接触する第1弁座部と、
前記吐出器の倒立時に、前記第2の切替弁が接触する第2弁座部と、
が形成され、
前記内筒部材のうち前記第1弁座部と前記第2弁座部との間に位置する部分は、外径が小さくなる括れ部であり、
前記中継口は、前記括れ部に形成されている、請求項2または3に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出器のシリンダ部に取付けられる正倒立用ユニットとして、吐出器の正立時に、容器本体内の内容液をシリンダ部の内容液導入口に導入可能な正立時導入口と、吐出器の倒立時に、容器本体内の内容液を内容液導入口に導入可能な倒立時導入口と、内容液導入口、正立時導入口、および倒立時導入口に連通可能な中継口と、吐出器の正立時に、正立時弁座に当接して、倒立時導入口と中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、吐出器の倒立時に、倒立時弁座に当接して、正立時導入口と中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、を備える構成が知られている。
この正倒立用ユニットでは、吐出器の正立時に、容器本体内とシリンダ部の内容液導入口とが、正立時導入口および中継口を通して連通し、吐出器の倒立時に、容器本体内と内容液導入口とが、倒立時導入口および中継口を通して連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-47355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の正倒立用ユニットでは、吐出器の正立時に、容器本体内の内容液が、シリンダ部の内容液導入口に導入される際、第2の切替弁が、内容液の液流に乗って倒立時弁座に向けて接近し、かつシリンダ部内の減圧が中継口を通して第2の切替弁に及ぼされることで、第2の切替弁が、倒立時弁座に押し当てられるおそれがある。
一方、吐出器の倒立時には、容器本体内の内容液が、内容液導入口に導入される際、第1の切替弁が、内容液の液流に乗って正立時弁座に向けて接近し、かつシリンダ部内の減圧が中継口を通して第1の切替弁に及ぼされることで、第1の切替弁が、正立時弁座に押し当てられるおそれがある。
以上より、容器本体内の内容液をシリンダ部内に円滑に導入することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、容器本体内の内容液をシリンダ部内に円滑に導入することができる吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出器における一つの態様は、内容液が収容される容器本体の口部に装着される吐出器であって、シリンダ部の内容積の増加による内圧減少により、前記容器本体内の内容液が、前記シリンダ部に形成された内容液導入口を通して前記シリンダ部内に導入されるとともに、前記シリンダ部の内容積の減少による内圧上昇により、前記シリンダ部内の内容液を送り出すポンプと、前記ポンプにより送り出された内容液が吐出される吐出口を有する吐出ヘッドと、前記吐出器の正立時に前記容器本体内の内容液を前記シリンダ部の内容液導入口に導入可能な正立時導入口、および前記吐出器の倒立時に前記容器本体内の内容液を前記内容液導入口に導入可能な倒立時導入口を有する正倒立用ユニットと、を備え、前記正倒立用ユニットには、前記内容液導入口、前記正立時導入口、および前記倒立時導入口に連通可能な中継口と、前記吐出器の正立時に、前記倒立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第1の切替弁と、前記吐出器の倒立時に、前記正立時導入口と前記中継口との連通を遮断する第2の切替弁と、が備えられ、前記吐出器の正立時には、前記正立時導入口から前記中継口を介して前記内容液導入口まで延びる第1流路部が形成され、前記吐出器の倒立時には、前記倒立時導入口から前記中継口を介して前記内容液導入口まで延びる第2流路部が形成され、前記第1流路部における流路断面積の最小値と前記第2流路部における流路断面積の最小値との少なくとも一方は、0.6mm以上、1.0mm以下である。
【0007】
本発明の吐出器における一つの態様によれば、第1流路部における流路断面積の最小値と第2流路部における流路断面積の最小値との少なくとも一方は、0.6mm以上、1.0mm以下である。そのため、少なくとも一方の流路部において最小となる流路断面積を好適に小さくできる。これにより、少なくとも一方の流路部内を流れる内容液の流量を好適に小さくでき、容器本体内から少なくとも一方の流路部内に吸い上げられる内容液の勢いを好適に減少させることができる。したがって、少なくとも一方の流路部内を流れる内容液によって第1の切替弁と第2の切替弁との少なくとも一方の切替弁が大きく押し上げられることを抑制でき、少なくとも一方の流路部内に内容液が流れることによって生じる少なくとも一方の切替弁の移動量を好適に小さくできる。そのため、少なくとも一方の切替弁が内容液によって押し上げられて弁座に到達することを抑制でき、少なくとも一方の切替弁が弁座に押し当てられること、および少なくとも一方の切替弁が弁座に貼り付くことを好適に抑制できる。これにより、容器本体内の内容液をシリンダ部内に円滑に導入することができる。また、少なくとも一方の流路部において最小となる流路断面積の値を上記の数値範囲にすることで、少なくとも一方の切替弁が弁座に押し当てられること、および少なくとも一方の切替弁が弁座に貼り付くことを好適に抑制できるため、例えば、少なくとも一方の切替弁と弁座との間の距離を大きくする必要がなく、正倒立用ユニットが上下方向に大きくなることを抑制できる。
【0008】
また、少なくとも一方の流路部における流路断面積の最小値が0.6mm以上であるため、少なくとも一方の流路部において最小となる流路断面積が小さくなり過ぎることを抑制できる。これにより、少なくとも一方の流路部内を流れて容器本体内からシリンダ部内に導入される内容液の流量が少なくなり過ぎることを抑制できる。したがって、シリンダ部の内容積の増加による内圧減少に伴ってシリンダ部内に吸い込まれる内容液の流量が少なくなり過ぎることを抑制でき、吐出ヘッドが押される前の位置に戻るまでの時間が増大することを抑制できる。そのため、吐出器の操作性および使用性が悪くなることを好適に抑制できる。
【0009】
前記第1流路部および前記第2流路部の少なくとも一方において、流路断面積が最小値となる部分は、前記中継口であり、前記中継口における流路断面積は、0.6mm以上、1.0mm以下である構成としてもよい。
この構成によれば、正倒立用ユニットに形成する中継口の流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下に調整することで、上述したように、少なくとも一方の切替弁が弁座に押し当てられること、および少なくとも一方の切替弁が弁座に貼り付くことを容易かつ好適に抑制できる。また、中継口は第1流路部の一部と第2流路部の一部とをそれぞれ形成しているため、中継口における流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下とすることで、正立時および倒立時のいずれの場合においても、上述したようにして、容器本体内の内容液を主シリンダ内に円滑に導入することができる。
【0010】
前記中継口は、1つのみ形成されている構成としてもよい。
この構成によれば、中継口が複数形成される場合に比べて、中継口における流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下にしやすい。
【0011】
前記正倒立用ユニットは、前記正立時導入口および前記倒立時導入口が形成された外筒部材と、前記外筒部材の径方向の内側に位置する内筒部材と、を備え、前記内筒部材には、前記中継口と、前記吐出器の正立時に、前記第1の切替弁が接触する第1弁座部と、前記吐出器の倒立時に、前記第2の切替弁が接触する第2弁座部と、が形成され、前記内筒部材のうち前記第1弁座部と前記第2弁座部との間に位置する部分は、外径が小さくなる括れ部であり、前記中継口は、前記括れ部に形成されている構成としてもよい。
この構成によれば、中継口によって、第1流路部の一部と第2流路部の一部とのそれぞれを容易かつ好適に構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、容器本体内の内容液をシリンダ部内に円滑に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の吐出器を示す縦断面図である。
図2】一実施形態の吐出器を示す縦断面図であって、内容液の吐出時の状態を示す図である。
図3】一実施形態の正倒立用ユニットを示す縦断面図であって、吐出器の正立時における正倒立用ユニットの状態を示す図である。
図4】一実施形態の正倒立用ユニットを示す縦断面図であって、吐出器の倒立時における正倒立用ユニットの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器を説明する。
本実施形態に係る吐出器1は、図1に示されるように、ポンプ11と、吐出ヘッド12と、正倒立用ユニット13と、装着キャップ14と、を備え、内容液が収容される容器本体Wの口部W1に装着される。
【0015】
装着キャップ14は、装着筒部14aと、ヘッド案内筒14bと、を備えている。装着筒部14aは口部W1に装着される。ヘッド案内筒14bは、装着筒部14aから上方に向けて延びている。
【0016】
ポンプ11は、主シリンダ(シリンダ部)21と、副シリンダ22と、プランジャ23と、付勢部材24と、を備え、主シリンダ21の内容積の増加による内圧減少により、容器本体W内の内容液が、内容液導入口21fを通して主シリンダ21内に導入されるとともに、主シリンダ21の内容積の減少による内圧上昇により、主シリンダ21内の内容液を吐出ヘッド12に送り出す。
【0017】
主シリンダ21、副シリンダ22、およびプランジャ23は、共通軸と同軸に配設されている。
以下、前記共通軸を軸線Oといい、軸線O方向に沿って吐出ヘッド12側を上側といい、軸線O方向に沿って正倒立用ユニット13側を下側といい、軸線Oに沿う方向を上下方向という。上下方向から見て軸線Oに交差する方向を径方向といい、上下方向から見て軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
主シリンダ21は、大径部21aと、小径部21bと、弁筒部21cと、フランジ部21dと、を備えている。大径部21a、小径部21b、および弁筒部21cは、上方から下方に向けてこの順に設けられている。
【0019】
大径部21aには、大径部21aを径方向に貫通する圧逃がし孔31および連絡孔32が形成されている。圧逃がし孔31および連絡孔32それぞれの周方向の位置は互いに同じである。圧逃がし孔31は、大径部21aの下端部に形成され、連絡孔32よりも下方に位置している。圧逃がし孔31は、容器本体W内に開口し、容器本体W内と連通している。
小径部21bの下端部の内周面には、圧逃がし溝33が形成されている。圧逃がし溝33は、周方向の全長に亘って延びている。なお、圧逃がし溝33は、周方向に間欠的に設けられていてもよい。
【0020】
弁筒部21cには、径方向の内側に向けて突出し、下方に向かうに従い縮径した弁座部21eが形成されている。弁座部21eの下端開口は、容器本体W内の内容液が主シリンダ21内に導入される内容液導入口21fとなっている。弁座部21eの上面に、ボール弁34が上方に向けて離反自在に載置されている。ボール弁34は、主シリンダ21内の加圧時に容器本体W内と主シリンダ21内との連通を遮断する一方、主シリンダ21内の減圧時に容器本体W内と主シリンダ21内とを連通させる逆止弁である。
【0021】
フランジ部21dは、大径部21aの上端部から径方向の外側に張り出している。フランジ部21dは、装着筒部14aの上端部内に嵌合されている。これにより、主シリンダ21は、装着キャップ14に取り付けられている。フランジ部21dは、口部W1の上端開口縁に載置される。
【0022】
主シリンダ21には、弁部材66が取り付けられている。弁部材66は、軸線Oと同軸に配置され、上下方向の両側に開口する円筒状である。弁部材66は、主シリンダ21における大径部21aの径方向の外側に位置し、大径部21aを囲んでいる。弁部材66は、大径部21aを囲む円筒状の筒状部66aと、筒状部66aの上端部から径方向の外側に突出するフランジ部66cと、を備えている。
【0023】
筒状部66aは、容器本体Wの口部W1内に挿入されている。筒状部66aの外周面は、口部W1内の空間に露出している。筒状部66aは、連絡孔32を径方向の外側から覆っている。筒状部66aの内周面と大径部21aの外周面との間には隙間が設けられている。
筒状部66aの下端部は、大径部21aの外周面に離反可能に接触する弁部66bである。弁部66bは、大径部21aの外周面のうち連絡孔32よりも下方で、圧逃がし孔31よりも上方に位置する部分に接触している。弁部66bは、筒状部66aの内周面と大径部21aの外周面との間の圧力が上昇した際に、大径部21aの外周面から離反する。これにより、弁部66bは、主シリンダ21と筒状部66aとの径方向の隙間から容器本体W内へと向かう流体の流れを許容する。一方、容器本体W内の圧力が上昇した際には、弁部66bが大径部21aの外周面に押し付けられる向きの力を受けるため、弁部66bは、大径部21aの外周面から離反しない。これにより、弁部66bは、容器本体W内から主シリンダ21と筒状部66aとの径方向の隙間へと向かう流体の流れを遮断する。
【0024】
副シリンダ22は、主シリンダ21に対して上方付勢状態で下方移動可能に配置されている。副シリンダ22は、主シリンダ21の上端開口から上方に突出している。副シリンダ22の内部は、主シリンダ21の内部に連通している。
副シリンダ22は、シール筒22aと、ストローク規制部22bと、嵌合筒22cと、を備えている。
【0025】
シール筒22aは、軸線Oと同軸に配置されている。シール筒22aの下部は、大径部21a内に挿入されている。シール筒22aの下端部は、副シリンダ22が主シリンダ21に対して上下動する際、大径部21aの内周面を上下方向に摺動する。シール筒22aは、図2に示すように、吐出ヘッド12が押し下げられ、下降端位置に位置したときに、大径部21aの内周面との間に隙間を設けた状態で、連絡孔32を径方向の内側から覆う。
ストローク規制部22bは、シール筒22aの上端部から径方向の外側に張り出している。ストローク規制部22bの内周部分は、上方に向けて突となるように湾曲している。
嵌合筒22cは、ストローク規制部22bの外周縁部から上方に延びている。
【0026】
吐出ヘッド12が押し下げられた状態において、吐出ヘッド12およびヘッド案内筒14b間の隙間、ストローク規制部22bおよびフランジ部21d間の隙間、主シリンダ21の内周面および副シリンダ22の外周面間の隙間、連絡孔32、並びに主シリンダ21の外周面および弁部材66の内周面間の隙間は、容器本体W内と外部とを連通する外気導入路を構成する。
【0027】
プランジャ23は、主シリンダ21および副シリンダ22それぞれの内側に、主シリンダ21および副シリンダ22を上下方向に縦断するように設けられている。
プランジャ23は、軸弁部材41と、連結部42と、主ピストン43と、副ピストン44と、を備えている。
【0028】
軸弁部材41は、円柱状に形成され、軸線Oと同軸に配置されている。軸弁部材41の上下両端部は、先端部に向かうに従い先細るテーパ状に形成されている。
連結部42は、軸弁部材41における上下方向の中間部から径方向の外側に張り出している。連結部42には、連通流路42aが形成されている。連通流路42aは、連結部42を上下方向に貫通するとともに、周方向に間隔をあけて複数形成されている。連通流路42aは、主シリンダ21内と副シリンダ22内とを連通している。
【0029】
主ピストン43は、連結部42から下方に延びている。主ピストン43は、軸弁部材41の上下動に伴い、主シリンダ21(小径部21b)の内周面を上下方向に摺動する。
副ピストン44は、連結部42から上方に延びる摺動筒45に設けられている。副ピストン44は、摺動筒45の上端部から径方向の外側に連なっている。副ピストン44は、ストローク規制部22bの上方に配置されている。すなわち、ストローク規制部22bは、プランジャ23の下方移動に伴い、副ピストン44が上方から当接することで、副シリンダ22に対するプランジャ23の下方移動を規制する。副ピストン44のうち、副シリンダ22内の圧力を上下方向に受ける面の面積(受圧面積)は、主ピストン43のうち主シリンダ21内の圧力を上下方向に受ける面の面積(受圧面積)よりも大きい。
【0030】
付勢部材24は、主シリンダ21内に設けられ、プランジャ23および副シリンダ22を上方付勢状態で下方移動可能に支持している。付勢部材24は、コイルスプリングとされ、軸線Oと同軸に配設されている。付勢部材24の上端部は、連結部42の下面に当接し、付勢部材24の下端部は、弁筒部21cの内周面のうち、弁座部21eより上方に位置する部分から径方向の内側に向けて突出し、上方を向く段部に当接している。
【0031】
吐出ヘッド12は、ポンプ11により送り出された内容液が吐出される吐出口51aを有している。吐出ヘッド12は、副シリンダ22の上端部(嵌合筒22c)に装着されている。吐出ヘッド12は、ヘッド本体51と、副シリンダ蓋52と、を備えている。
【0032】
ヘッド本体51は、有頂筒状に形成され、軸線Oと同軸に配設されている。ヘッド本体51内に、嵌合筒22cが嵌合されている。ヘッド本体51における周壁の下端部は、ヘッド案内筒14b内に挿入されている。
吐出口51aは、ヘッド本体51の周壁に形成され、径方向の外側に向けて開口している。
【0033】
副シリンダ蓋52は、有頂筒状に形成され、軸線Oと同軸に配設されている。副シリンダ蓋52は、ヘッド本体51および副シリンダ22に連結されている。
副シリンダ蓋52の周壁52eは、嵌合筒22c内に嵌合されている。
副シリンダ蓋52の頂壁52aは、環状に形成され、軸線Oと同軸に配設されている。頂壁52a内は、プランジャ23の上下動に伴い、軸弁部材41の上端部によって開閉される。
【0034】
頂壁52aには、上筒部52cおよび下筒部52dが形成されている。
上筒部52cは、頂壁52aから上方に延びるとともに、軸線Oと同軸に配設されている。上筒部52cは、ヘッド本体51内に嵌め込まれている。
下筒部52dは、頂壁52aから下方に延びるとともに、軸線Oと同軸に配設されている。下筒部52dは、軸弁部材41と摺動筒45との間に挿入されている。下筒部52dの内周面と軸弁部材41の外周面との間、および下筒部52dの外周面と摺動筒45の内周面との間には、それぞれ隙間が設けられている。
【0035】
正倒立用ユニット13は、主シリンダ21に装着されている。正倒立用ユニット13は、図3に示すように、第1の切替弁61と、第2の切替弁62と、外筒部材63と、内筒部材64と、流路形成部材65と、を備えている。外筒部材63、および内筒部材64は、軸線Oと同軸に配設されている。
【0036】
外筒部材63は、主シリンダ21に外装されている。外筒部材63は、吐出器1の正立時に容器本体W内の内容液を主シリンダ21の内容液導入口21fに導入可能な正立時導入口63aと、吐出器1の倒立時に容器本体W内の内容液を内容液導入口21fに導入可能な倒立時導入口63bと、を有する。
正立時導入口63a、および倒立時導入口63bは、容器本体W内に開口する。倒立時導入口63bは、吐出器1の正立時に、正立時導入口63aよりも上方に位置している。倒立時導入口63bは、容器本体Wの口部W1の内側(口部W1の上端と下端との間)に配置される。なお、倒立時導入口63bは、容器本体Wの口部W1よりも下方に位置していてもよい。
【0037】
外筒部材63は、下方に向かうに従って段階的に縮径する多段筒状に形成されている。外筒部材63は、上方から下方に向けて、第1外筒部71と、第2外筒部72と、第3外筒部73と、第4外筒部74と、がこの順に連ねられて構成されている。
【0038】
第1外筒部71は、主シリンダ21の小径部21bに外嵌されている。第1外筒部71の下端部は、主シリンダ21の下端部よりも下方に位置している。図1に示すように、第1外筒部71の上端部は、主シリンダ21の大径部21aよりも下方に位置する。第1外筒部71の上端部における外周面には、径方向の外側に突出するフランジ部75が形成されている。第1外筒部71の上端部における内周面と小径部21bの外周面との径方向の間に、倒立時導入口63bが形成されている。本実施形態において倒立時導入口63bは、上方に開口している。
【0039】
図3に示すように、第1外筒部71の内周面には、小径部21bの外周面との間に倒立時導入口63bに連通する流路を画成する複数のリブ71aが、周方向に間隔をあけて形成されている。リブ71aは、小径部21bの外周面に当接し、上下方向に延びている。
第2外筒部72内に、内筒部材64が収容されている。
第3外筒部73の下端部の内周面に、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる弁体支持部73aが形成されている。第3外筒部73の下端開口が、正立時導入口63aとなっている。
第4外筒部74内に、吸引筒67の上端部が嵌合されている。吸引筒67の下端部は、容器本体Wの底部に位置している。吸引筒67を通して正立時導入口63aが容器本体W内に連通している。
【0040】
第2の切替弁62は、弁体支持部73aの上方に配置されている。第2の切替弁62は、例えばボール弁であり、弁体支持部73aの内周面に対して上方に離反自在に当接している。
【0041】
内筒部材64は、正立時導入口63aに連通する下端開口64aと、倒立時導入口63bに連通する上端開口64bと、内容液導入口21f、正立時導入口63a、および倒立時導入口63bに連通可能な中継口64cと、を有する。中継口64cは、内容液導入口21f、正立時導入口63a、および倒立時導入口63bに、互いに異なる流路を通して各別に連通している。
【0042】
内筒部材64は、上下方向の中間部分が径方向の内側に括れた瓢箪状に形成されている。内筒部材64は、上方から下方に向けて、第1内筒部76と、第2内筒部(括れ部)77と、第3内筒部78と、がこの順に連ねられて構成されている。
【0043】
第1内筒部76の上端開口が、内筒部材64の上端開口64bとなっている。第1内筒部76の外周面と第2外筒部72の内周面との間には、周方向に延びる環状の隙間が設けられている。第1内筒部76の下端部の内周面には、下方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる正立時弁座(第1弁座部)64dが形成されている。
第1の切替弁61は、吐出器1の正立時に、倒立時導入口63bと中継口64cとの連通を遮断する。第1の切替弁61は、正立時弁座64dの上方に配置されている。第1の切替弁61は、例えば、ボール弁であり、正立時弁座64dの内周面に対して上方に離反自在に当接している。本実施形態において正立時弁座64dは、吐出器1の正立時に、第1の切替弁61が接触する第1弁座部である。
【0044】
図4に示すように、吐出器1の倒立時において、第1の切替弁61は、後述する支持リブ69cに支持され、正立時弁座64dから離れて配置される。吐出器1の倒立時において、支持リブ69cに支持された状態の第1の切替弁61と正立時弁座64dとの間の上下方向の距離は、6.0mmである。なお、第1の切替弁61と正立時弁座64dとの間の上下方向の距離とは、支持リブ69cに支持された状態の第1の切替弁61が正立時弁座64dと接触する位置まで移動する際における上下方向の移動距離に等しい。
【0045】
第2内筒部77は、内筒部材64のうち正立時弁座64dと後述する倒立時弁座64eとの間に位置する部分である。第2内筒部77は、内筒部材64の括れ部分を構成している。つまり、第2内筒部77は、外径が小さくなる括れ部である。第2内筒部77の外径は、第1内筒部76の外径および第3内筒部78の外径よりも小さい。第2内筒部77の内径は、第1内筒部76の内径および第3内筒部78の内径よりも小さい。第2内筒部77には、径方向に貫通する中継口64cが形成されている。中継口64cは、第2内筒部77の内周面から外周面までを貫通し、第2内筒部77の外周面と第2外筒部72の内周面との隙間と、第2内筒部77の内部と、を連通している。本実施形態において中継口64cは、1つのみ形成されている。
【0046】
第3内筒部78の下端開口が、内筒部材64の下端開口64aとなっている。第3内筒部78は、外筒部材63の第2外筒部72の下端部内に嵌合されている。第3内筒部78の上端部の内周面には、上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる倒立時弁座(第2弁座部)64eが形成されている。本実施形態において倒立時弁座64eは、吐出器1の倒立時に第2の切替弁62が接触する第2弁座部である。
【0047】
第2の切替弁62は、倒立時弁座64eの下方に配置されている。第2の切替弁62は、倒立時弁座64eの内周面に対して下方から当接可能に配設されている。第2の切替弁62は、吐出器1の倒立時に、正立時導入口63aと中継口64cとの連通を遮断する。
倒立時弁座64eには、第2の切替弁62の貼り付きを防止する貼り付き防止部64fが形成されている。貼り付き防止部64fとしては、倒立時弁座64eの内周面に放射状に設けられた溝またはリブを例示できるが、第2の切替弁62の貼り付きを防止できる凹凸があれば適宜変更してもよい。
【0048】
流路形成部材65は、有底筒状に形成され、主シリンダ21の下端部に外嵌されている。流路形成部材65は、第1外筒部71の下部内に挿入されている。流路形成部材65の外周面と第1外筒部71の内周面との間には、周方向に延びる環状の隙間が設けられている。流路形成部材65の底壁部に、内筒部材64の上端部が連結されている。流路形成部材65には、主シリンダ21の内容液導入口21fと中継口64cとを連通する共通流路68が形成されている。
【0049】
流路形成部材65の底壁部に、栓部65bと、シール筒部65cと、共通流路68と、が形成されている。
栓部65bは、流路形成部材65の底壁部から上下方向の両側に突出し、内筒部材64の上端開口64b内に嵌合されている。栓部65bには、径方向に延び流路形成部材65の外周面に開口する横穴69aと、上下方向に延び横穴69aと第1内筒部76内と連通する縦穴69bと、が形成されている。縦穴69bの内周面には、径方向の内側に向けて突出し、吐出器1の倒立時に、第1の切替弁61を支持する支持リブ69cが形成されている。
【0050】
共通流路68は、流路形成部材65の底壁部において、栓部65bから離れた部分を上下方向に貫き、流路形成部材65内に開口している。共通流路68は、第1内筒部76の上端開口縁に向けて開口している。
シール筒部65cは、流路形成部材65の底壁部の外周縁部から、下方に向けて突出し、第1外筒部71の下端部内に嵌合されている。シール筒部65c内に、第1内筒部76の上端部が挿入されている。シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間に、周方向に延びる環状の隙間が形成されている。
ここで、第1内筒部76の上端開口縁は、流路形成部材65の底壁部の下面から下方に離れており、シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間の環状の隙間は、共通流路68に連通している。
【0051】
図3に示すように、吐出器1の正立時には、正立時導入口63aから中継口64cを介して内容液導入口21fまで延びる第1流路部81が形成される。本実施形態において第1流路部81の内部は、正立時導入口63aと、第3外筒部73の内側と、第3内筒部78の内側と、第2内筒部77の内側と、中継口64cと、第2外筒部72の内周面と第2内筒部77の外周面との間の隙間と、第2外筒部72の内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、流路形成部材65の底壁部の下面と第1内筒部76の上端開口縁との間の隙間と、共通流路68と、流路形成部材65の内側と、内容液導入口21fと、によって形成されている。
【0052】
吐出器1の正立時において第1流路部81内には、正立時導入口63aから内容液導入口21fまで内容液が流れる。本実施形態の吐出器1の正立時において、第1流路部81内を流れる内容液は、正立時導入口63aから、第3外筒部73の内側と、第3内筒部78の内側と、第2内筒部77の内側と、中継口64cと、第2外筒部72の内周面と第2内筒部77の外周面との間の隙間と、第2外筒部72の内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、流路形成部材65の底壁部の下面と第1内筒部76の上端開口縁との間の隙間と、共通流路68と、流路形成部材65の内側と、をこの順に流れて、内容液導入口21f内に流入する。
【0053】
本実施形態の第1流路部81における流路断面積は、中継口64cにおいて最小となる。中継口64cにおける流路断面積は、0.6mm以上、1.0mm以下である。つまり、第1流路部81における流路断面積の最小値は、0.6mm以上、1.0mm以下である。
なお、本明細書において“流路部の或る部分における流路断面積”とは、或る部分が1つのみ形成されている場合には1つの或る部分における流路断面積であり、或る部分が複数形成されている場合には複数の或る部分における流路断面積を足し合わせた総面積である。本実施形態における当該流路部は、第1流路部81と第2流路部82とを含む。具体的に、本実施形態において中継口64cは1つのみ形成されているため、中継口64cにおける流路断面積は、1つの中継口64cにおける流路断面積である。一方、例えば中継口64cが複数形成されている場合には、中継口64cにおける流路断面積は、複数の中継口64cにおける流路断面積を足し合わせた総面積である。
また、例えば、2つの筒状部分同士の径方向の隙間がリブなどによって周方向に仕切られて複数の流路が形成されている場合には、当該2つの筒状部分同士の径方向の隙間における流路断面積は、リブなどによって周方向に仕切られた複数の流路における流路断面積を足し合わせた総面積である。
【0054】
また、例えば、流路部が途中で複数の流路に分岐して下流側において再び合流する場合、当該流路部のうち複数の流路に分岐している部分における流路断面積は、当該複数の流路における流路断面積を足し合わせた総面積である。このように、流路部が途中で複数の流路に分岐して下流側において再び合流する場合、複数の流路に分岐する部分においては複数の流路における流路断面積の合計値を、分岐せず1つの流路で形成されている部分においては1つの流路における流路断面積の値を、それぞれ比較した上で、最も小さい値となる部分が、当該流路部における流路断面積が最小値となる部分である。
【0055】
図4に示すように、吐出器1の倒立時には、倒立時導入口63bから中継口64cを介して内容液導入口21fまで延びる第2流路部82が形成される。本実施形態において第2流路部82は、倒立時導入口63bと、小径部21bの外周面と第1外筒部71の内周面との隙間と、流路形成部材65の外周面と第1外筒部71の内周面との隙間と、横穴69aと、縦穴69bと、第1内筒部76の内側と、第2内筒部77の内側と、中継口64cと、第2外筒部72の内周面と第2内筒部77の外周面との間の隙間と、第2外筒部72の内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、流路形成部材65の底壁部の下面と第1内筒部76の上端開口縁との間の隙間と、共通流路68と、流路形成部材65の内側と、内容液導入口21fと、によって形成されている。
【0056】
吐出器1の倒立時において第2流路部82内には、倒立時導入口63bから内容液導入口21fまで内容液が流れる。本実施形態の吐出器1の倒立時において、第2流路部82内を流れる内容液は、倒立時導入口63bから、小径部21bの外周面と第1外筒部71の内周面との隙間と、流路形成部材65の外周面と第1外筒部71の内周面との隙間と、横穴69aと、縦穴69bと、第1内筒部76の内側と、第2内筒部77の内側と、中継口64cと、第2外筒部72の内周面と第2内筒部77の外周面との間の隙間と、第2外筒部72の内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、シール筒部65cの内周面と第1内筒部76の外周面との間の隙間と、流路形成部材65の底壁部の下面と第1内筒部76の上端開口縁との間の隙間と、共通流路68と、流路形成部材65の内側と、をこの順に流れて、内容液導入口21f内に流入する。
本実施形態の第2流路部82における流路断面積は、中継口64cにおいて最小となる。上述したように、中継口64cにおける流路断面積は、0.6mm以上、1.0mm以下である。つまり、第2流路部82における流路断面積の最小値は、0.6mm以上、1.0mm以下である。
【0057】
次に、吐出器1の作用を説明する。
吐出ヘッド12を押し下げると、副シリンダ22、プランジャ23が吐出ヘッド12とともに、付勢部材24の付勢力に抗して押し下げられる。この際、主ピストン43が小径部21bの内周面を下方に向けて摺動し、主シリンダ21の内容積が減少することで、主シリンダ21内が加圧される。主シリンダ21の内圧上昇により、主シリンダ21内のボール弁34が主シリンダ21内と容器本体W内との連通を遮断する。これにより、主シリンダ21内で加圧された内容液が連通流路42aを通して副シリンダ22内に流入する。その結果、副シリンダ22内が加圧される。
【0058】
吐出ヘッド12が下降する過程において、主シリンダ21内の圧力と副シリンダ22内の圧力は同等になる。しかし、副ピストン44の受圧面積が主ピストン43の受圧面積よりも大きいため、副シリンダ22内の内容液からプランジャ23が下向きに受ける力は、主シリンダ21内の内容液からプランジャ23が上向きに受ける力よりも大きくなる。そして、プランジャ23が下向きに受ける力が、付勢部材24の上方付勢力よりも大きくなると、プランジャ23が副シリンダ22に対して下降する。これにより、軸弁部材41が、副シリンダ蓋52の頂壁52a内を開放し、副シリンダ22内と吐出口51aとが連通する。したがって、副シリンダ22内で蓄圧された内容液が、吐出ヘッド12内を流通した後、吐出口51aを通して外部に吐出される。
【0059】
吐出ヘッド12が下降し、主シリンダ21内の内容液が吐出ヘッド12に送り出される際、シール筒22aの下端部が、主シリンダ21の連絡孔32に到達するまでは、主シリンダ21の上部内の空気が、連絡孔32、および主シリンダ21の外周面と弁部材66の内周面との隙間を通して容器本体W内に流出する。
【0060】
図2に示すように、吐出ヘッド12が下降端位置まで押し下げられると、主ピストン43の下端部は圧逃がし溝33と径方向に向かい合う。すると、主ピストン43は、主シリンダ21(小径部21b)の内周面から離間する。そのため、主ピストン43と主シリンダ21との間に隙間が形成され、主シリンダ21内が圧逃がし孔31を通じて容器本体W内に連通する。これにより、主シリンダ21内の内容液の少なくとも一部および主シリンダ21内の空気が、容器本体W内に流出する。その結果、主シリンダ21内の残圧が開放される。
【0061】
吐出ヘッド12の押し下げを解除すると、付勢部材24の上方付勢力によってプランジャ23が副シリンダ22および吐出ヘッド12とともに上昇し、軸弁部材41の上端部が副シリンダ蓋52の頂壁52aの内周縁部に当接することで、副シリンダ22内と吐出口51aとの連通が遮断される。
【0062】
プランジャ23が上昇する過程において、主ピストン43が小径部21bの内周面を摺動することで、主シリンダ21の内容積(主シリンダ21とプランジャ23とで囲まれた部分の容積)が増加して、主シリンダ21内が減圧される。主シリンダ21の内圧減少により、ボール弁34が弁座部21eの上面から上方に離反し、内容液導入口21fが開放され、第1流路部81のうち内容液導入口21fから中継口64cに至る流路が減圧状態になる。
【0063】
第1流路部81のうち内容液導入口21fから中継口64cに至る流路が減圧状態になると、吐出器1の正立時では、第1の切替弁61が正立時弁座64dに密接し、倒立時導入口63bと中継口64cとの連通が遮断されているため、中継口64cおよび第2内筒部77内を通して第3内筒部78内が減圧される。第3内筒部78内が減圧されると、第2の切替弁62が弁体支持部73aから上方に離反し、正立時導入口63aが開放される。これにより、正立時導入口63aから内容液導入口21fまで延びる第1流路部81が形成され、第1流路部81および吸引筒67内を介して、容器本体W内の内容液が主シリンダ21内に吸い上げられる。この際、第1の切替弁61が、倒立時導入口63bと中継口64cとの連通を遮断しているため、容器本体Wのヘッドスペースの空気が、倒立時導入口63bに吸い込まれることはない。
以上のように、吐出器1の正立時においては、第1流路部81によって正立時導入口63aと内容液導入口21fとが連通した状態になり、かつ、第1の切替弁61によって第2流路部82が遮断される。
【0064】
ここで、吐出ヘッド12を押し下げると、図2に示すように、シール筒22aの下端部が、主シリンダ21の連絡孔32を下方に超えることで、上述した外気導入路(段落0026参照)によって、容器本体W内と外部とが連通される。この状態で、吐出ヘッド12が上昇し、容器本体W内の内容液が主シリンダ21内に供給されて、容器本体W内が負圧になると、外気が、当該外気導入路を流れて、連絡孔32から容器本体W内に流入し、容器本体W内の負圧が解消される。
【0065】
一方、吐出器1の倒立時には、図4に示すように、第1の切替弁61が自重により正立時弁座64dから離反して、倒立時導入口63bと中継口64cとが連通し、かつ第2の切替弁62が自重により倒立時弁座64eに密接して、正立時導入口63aと中継口64cとの連通を遮断する。これにより、第2流路部82によって倒立時導入口63bと内容液導入口21fとが連通した状態になり、かつ、第2の切替弁62によって第1流路部81が遮断される。この状態で、内容液の吐出後に吐出ヘッド12が復元移動すると、前述した吐出器1の正立時と同様に、ボール弁34が弁座部21eから離反して内容液導入口21fが開放され、第2流路部82のうち内容液導入口21fから中継口64cに至る流路が減圧状態になることから、第2流路部82のうち中継口64cから倒立時導入口63bに至る流路も減圧状態になる。
【0066】
第2流路部82が減圧状態になると、吐出器1の倒立時では、容器本体W内の内容液が、倒立時導入口63bから第2流路部82内に流入し、第2流路部82内を流れて内容液導入口21fに導入される。この際、第2の切替弁62が、正立時導入口63aと中継口64cとの連通を遮断しているため、倒立姿勢にある容器本体Wの底部内の空気が、容器本体Wの底部内に開口している吸引筒67内に流入することはない。
【0067】
ここで、図2に示すように、吐出ヘッド12を押し下げた状態に保つと、上述した外気導入路によって容器本体W内と外部とが連通された状態で、副シリンダ22内の蓄圧が、吐出口51aを通して解消され、軸弁部材41の上端部が、副シリンダ蓋52の頂壁52a内を再び閉塞する。
この状態で、主シリンダ21内、および正倒立用ユニット13内に内容液が満たされておらず、かつ吐出器1および容器本体Wが倒立姿勢であっても、連絡孔32と容器本体W内との連通が弁部材66の弁部66bによって遮断されるため、容器本体W内の内容液が、外気導入路を通して外部に漏出することがない。
【0068】
本実施形態によれば、吐出器1の倒立時には、倒立時導入口63bから中継口64cを介して内容液導入口21fまで延びる第2流路部82が形成される。第2流路部82における流路断面積の最小値は、0.6mm以上、1.0mm以下である。そのため、第2流路部82において最小となる流路断面積を好適に小さくできる。これにより、吐出器1の倒立時において、第2流路部82内を流れる内容液の流量を好適に小さくでき、容器本体W内から第2流路部82内に吸い上げられる内容液の勢いを好適に減少させることができる。したがって、第2流路部82内を流れる内容液によって第1の切替弁61が大きく押し上げられることを抑制でき、第2流路部82内に内容液が流れることによって生じる第1の切替弁61の移動量を好適に小さくできる。そのため、第1の切替弁61が内容液によって押し上げられて正立時弁座64dに到達することを抑制でき、第1の切替弁61が正立時弁座64dに押し当てられること、および第1の切替弁61が正立時弁座64dに貼り付くことを好適に抑制できる。これにより、吐出器1の倒立時において容器本体W内の内容液を主シリンダ21内に円滑に導入することができる。また、第2流路部82において最小となる流路断面積の値を上記の数値範囲にすることで、第1の切替弁61が正立時弁座64dに押し当てられること、および第1の切替弁61が正立時弁座64dに貼り付くことを好適に抑制できるため、例えば、吐出器1の倒立時において第1の切替弁61と正立時弁座64dとの間の距離を大きくする必要がなく、正倒立用ユニット13が上下方向に大きくなることを抑制できる。
【0069】
また、第2流路部82における流路断面積の最小値が0.6mm以上であるため、第2流路部82において最小となる流路断面積が小さくなり過ぎることを抑制できる。これにより、第2流路部82内を流れて容器本体W内から主シリンダ21内に導入される内容液の流量が少なくなり過ぎることを抑制できる。したがって、主シリンダ21の内容積の増加による内圧減少に伴って主シリンダ21内に吸い込まれる内容液の流量が少なくなり過ぎることを抑制でき、付勢部材24による上方付勢によって吐出ヘッド12が押される前の位置に戻るまでの時間が増大することを抑制できる。そのため、吐出器1の操作性および使用性が悪くなることを好適に抑制できる。
【0070】
また、本実施形態によれば、吐出器1の正立時には、正立時導入口63aから中継口64cを介して内容液導入口21fまで延びる第1流路部81が形成される。第1流路部81における流路断面積の最小値は、0.6mm以上、1.0mm以下である。そのため、吐出器1の正立時において、第2の切替弁62に対して、上述した倒立時における第1の切替弁61と同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、倒立時弁座64eに形成された溝またはリブなどの貼り付き防止部64fによって、第2の切替弁62が倒立時弁座64eに貼り付くことが防止されている。つまり、倒立時弁座64eに形成された溝またはリブなどの貼り付き防止部64fが形成されていれば、第1流路部81における流路断面積の最小値が0.6mm以上、1.0mm以下の範囲内になくても、吐出器1の正立時において第2の切替弁62が倒立時弁座64eに貼り付くことを抑制できる。
【0072】
ここで、例えば、正立時弁座64dにも倒立時弁座64eと同様に溝またはリブなどの貼り付き防止部を形成することで、吐出器1の倒立時において正立時弁座64dに第1の切替弁61が貼り付くことを抑制することも考えられる。しかしながら、この場合には、吐出器1を正立させた状態においてプライミングを行う際に、正立時弁座64dに形成された貼り付き防止部における溝またはリブの隙間から空気が抜けてプライミングを行いにくい場合がある。これに対して、本実施形態によれば、上述したように、正立時弁座64dに溝またはリブなどの貼り付き防止部を形成することなく、吐出器1の倒立時において正立時弁座64dに第1の切替弁61が貼り付くことを抑制できる。これにより、プライミングを好適に行うことを可能にしつつ、吐出器1の倒立時に容器本体W内の内容液を主シリンダ21内に円滑に導入することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、第2流路部82において、流路断面積が最小値となる部分は、中継口64cであり、中継口64cにおける流路断面積は、0.6mm以上、1.0mm以下である。そのため、正倒立用ユニット13に形成する中継口64cの流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下に調整することで、上述したように、第1の切替弁61が正立時弁座64dに押し当てられること、および第1の切替弁61が正立時弁座64dに貼り付くことを容易かつ好適に抑制できる。また、中継口64cは第1流路部81の一部と第2流路部82の一部とをそれぞれ形成しているため、中継口64cにおける流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下とすることで、正立時および倒立時のいずれの場合においても、上述したようにして、容器本体W内の内容液を主シリンダ21内に円滑に導入することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、中継口64cは、1つのみ形成されている。そのため、中継口64cが複数形成される場合に比べて、中継口64cにおける流路断面積を0.6mm以上、1.0mm以下にしやすい。
【0075】
また、本実施形態によれば、正倒立用ユニット13は、正立時導入口63aおよび倒立時導入口63bが形成された外筒部材63と、外筒部材63の径方向の内側に位置する内筒部材64と、を備える。内筒部材64には、中継口64cと、吐出器1の正立時に、第1の切替弁61が接触する正立時弁座64dと、吐出器1の倒立時に、第2の切替弁が接触する倒立時弁座64eと、が形成されている。内筒部材64のうち正立時弁座64dと倒立時弁座64eとの間に位置する部分は、外径が小さくなる第2内筒部77である。中継口64cは、第2内筒部77に形成されている。そのため、中継口64cによって、第1流路部81の一部と第2流路部82の一部とのそれぞれを容易かつ好適に構成することができる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
第1流路部における流路断面積の最小値と第2流路部における流路断面積の最小値とは、少なくとも一方が0.6mm以上、1.0mm以下であればよい。つまり、第1流路部における流路断面積の最小値が0.6mm以上、1.0mm以下であれば、第2流路部における流路断面積の最小値が0.6mm未満または1.0mmより大きくてもよい。また、第2流路部における流路断面積の最小値が0.6mm以上、1.0mm以下であれば、第1流路部における流路断面積の最小値が0.6mm未満または1.0mmより大きくてもよい。第1流路部および第2流路部のそれぞれにおいて、流路断面積が最小値となる部分は、いずれの部分であってもよい。例えば、第1流路部および第2流路部のそれぞれにおいて、内容液導入口における流路断面積が最小となってもよい。この場合、内容液導入口における流路断面積が0.6mm以上、1.0mm以下となる。
中継口の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。中継口の形状は、特に限定されない。中継口は、正倒立用ユニットのいずれの部分に形成されてもよい。
【0077】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…吐出器、11…ポンプ、12…吐出ヘッド、13…正倒立用ユニット、21…主シリンダ(シリンダ部)、21f…内容液導入口、51a…吐出口、61…第1の切替弁、62…第2の切替弁、63…外筒部材、63a…正立時導入口、63b…倒立時導入口、64…内筒部材、64c…中継口、64d…正立時弁座(第1弁座部)、64e…倒立時弁座(第2弁座部)、77…第2内筒部(括れ部)、81…第1流路部、82…第2流路部、W…容器本体、W1…口部
図1
図2
図3
図4