(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079178
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240604BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20240604BHJP
B05B 11/10 20230101ALI20240604BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101E
B05B11/10 101E
F04B9/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191959
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】星野 真弥
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【テーマコード(参考)】
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD25
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC33
3H075DA02
3H075DA03
3H075DB13
3H075DB40
(57)【要約】
【課題】蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる吐出器を提供する。
【解決手段】吐出器5は、容器本体3の口部3aに装着される装着キャップ70と、装着キャップ70の内側に上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステム20、およびステム20を上方に向けて付勢する付勢部材55を有するポンプ10と、ステム20の上端に固定され、内容物を吐出する吐出口84aを有する吐出ヘッド80と、吐出ヘッド80に形成された雌ねじ83aに螺合する雄ねじ96aが形成された螺着筒部96を有し、吐出ヘッド80に螺着されることで下降した吐出ヘッド80およびステム20の上昇を規制する規制部材90と、規制部材90に螺着された状態で下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80を保持することで、雄ねじ96aおよび雌ねじ83aそれぞれのねじ面の接触面圧を低減する保持部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着される装着キャップと、
前記装着キャップの内側に上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステム、および前記ステムを上方に向けて付勢する付勢部材を有するポンプと、
前記ステムの上端に固定され、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに形成された雌ねじに螺合する雄ねじが形成された螺着筒部を有し、前記吐出ヘッドに螺着されることで下降した前記吐出ヘッドおよび前記ステムの上昇を規制する規制部材と、
前記規制部材に螺着された状態で下降端位置に位置する前記吐出ヘッドを保持することで、前記雄ねじおよび前記雌ねじそれぞれのねじ面の接触面圧を低減する保持部と、
を備える吐出器。
【請求項2】
前記保持部は、前記規制部材に設けられており、前記吐出ヘッドに設けられた被係合部にアンダーカット係合している、
請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記保持部は、前記雄ねじおよび前記雌ねじの一方のねじ面に突設され、前記雄ねじおよび前記雌ねじの他方のねじ面に接触する、
請求項1または請求項2に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、上方付勢状態で下方移動可能に貫設されたステムを有するポンプ部と、ポンプ部を容器本体の口部に装着させる装着キャップと、ステムの上端部に装着され、内容物を吐出する吐出孔が形成された吐出ヘッドと、下降端位置に位置する吐出ヘッドが着脱可能に装着され、吐出ヘッド及びステムの上方移動を規制する規制リングと、を備えた吐出器が知られている。
規制リングは、ポンプ部を構成するシリンダに一体的に組み合わされ、シリンダと共に装着キャップを介して容器本体の口部に装着されている。吐出ヘッドとは、規制リングに対してねじ結合によって装着されることで、下降端位置に位置している。
【0003】
吐出器を使用する場合には、吐出ヘッドを軸線回りに回転させることで、規制リングとのねじ結合を解除することができる。これにより、ステム及び吐出ヘッドを上方移動させて、上昇端位置に位置させることができる。これにより、これ以降、吐出ヘッドを押下げ操作することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記従来の吐出器では、例えば強度性、装飾性、光学性、機能性等の各種特性を付与するために、一般的に吐出ヘッド、装着キャップ及び規制リングに対して蒸着加工により蒸着膜を形成している場合が多い。この場合、吐出ヘッド、装着キャップ及び規制筒に対してそれらの外部から視認される外観部分の蒸着を行うため、規制筒の雄ねじ部に対しても蒸着膜が形成されてしまう。そのため、規制筒の雄ねじ部の摺接により、雄ねじ部に形成された蒸着膜が剥れてしまい易く、品質低下を招き易い。
【0006】
そこで本発明は、蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる吐出器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る吐出器は、容器本体の口部に装着される装着キャップと、
前記装着キャップの内側に上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステム、および前記ステムを上方に向けて付勢する付勢部材を有するポンプと、前記ステムの上端に固定され、内容物を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに形成された雌ねじに螺合する雄ねじが形成された螺着筒部を有し、前記吐出ヘッドに螺着されることで下降した前記吐出ヘッドおよび前記ステムの上昇を規制する規制部材と、前記規制部材に螺着された状態で下降端位置に位置する前記吐出ヘッドを保持することで、前記雄ねじおよび前記雌ねじそれぞれのねじ面の接触面圧を低減する保持部と、を備える。
【0008】
第1の態様によれば、少なくとも規制部材に蒸着膜が形成された構成において、吐出ヘッドが下降端位置にある状態で、規制部材の雄ねじに形成された蒸着膜が吐出ヘッドの雌ねじの摺接によって剥がれることを抑制できる。したがって、蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる吐出器を提供できる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る吐出器は、上記第1の態様に係る吐出器において、 前記保持部は、前記規制部材に設けられており、前記吐出ヘッドに設けられた被係合部にアンダーカット係合していてもよい。
【0010】
第2の態様によれば、吐出器の組立工程において、吐出ヘッドを規制部材に螺合させる過程で被係合部に保持部を乗り越えさせて、被係合部に保持部をアンダーカット係合させることできる。これにより、保持部は、規制部材に螺着された状態で下降端位置に位置する吐出ヘッドを保持できる。したがって、組立工程の複雑化を抑制しつつ、上記作用効果を奏する吐出器が得られる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る吐出器は、上記第1の態様または第2の態様に係る吐出器において、前記保持部は、前記雄ねじおよび前記雌ねじの一方のねじ面に突設され、前記雄ねじおよび前記雌ねじの他方のねじ面に接触していてもよい。
【0012】
第3の態様によれば、吐出器の組立工程において、吐出ヘッドを規制部材に螺合させる過程で保持部に雄ねじおよび雌ねじの他方のねじ山を乗り上げさせて、雄ねじおよび雌ねじそれぞれのねじ面の相互の接触面圧を低減させることができる。したがって、組立工程の複雑化を抑制しつつ、上記作用効果を奏する吐出器が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる吐出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の吐出器を示す図であって、吐出ヘッドおよびステムが下降端位置にある状態を示す吐出器の半断面図である。
【
図2】第1実施形態の吐出器を示す図であって、吐出ヘッドおよびステムが上昇端位置にある状態を示す吐出器の半断面図である。
【
図4】第2実施形態の吐出器を示す図であって、吐出ヘッドおよびステムが上昇端位置にある状態を示す吐出器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1から
図3に基づいて説明する。
図1に示すように、吐出容器1は、有底筒状の容器本体3と、容器本体3の口部3aに着脱可能に装着された吐出器5と、を備えている。容器本体3は、内容物を収容可能に構成されている。なお、内容物は、例えばシャンプーやボディソープ、化粧料等の液体である。
【0016】
吐出器5は、容器本体3の口部3aに装着される筒状の装着キャップ70と、装着キャップ70の内側に上方付勢状態で下方移動可能に配設されたステム20を有するポンプ10と、ステム20の上端部に固定され、内容物を吐出する吐出口84aを有する吐出ヘッド80と、下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80が螺着され、下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80およびステム20の上方移動を規制する規制部材90と、を備えている。
【0017】
ステム20および吐出ヘッド80は、未使用時等の段階では、
図1に示すように下降端位置P1に位置していると共に、吐出ヘッド80が後述する規制部材90に螺着によって保持されることで上昇移動が規制された状態とされている。一方、使用段階では、
図2に示すように吐出ヘッド80はステム20と共に上昇端位置P2に位置して、押下のための待機状態に移行する。
【0018】
なお、装着キャップ70およびステム20は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態ではこの共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿った吐出ヘッド80側を上側、容器本体3の底部側を下側という。また、容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
ポンプ10は、ステム20と、シリンダ30と、ピストン40と、下部弁体45と、閉塞部材50と、付勢部材55と、を備える。
シリンダ30は、上方に位置するもの程、外径が拡大する多段筒状に形成されている。具体的に、シリンダ30は、取付筒31、収容筒32、摺動筒33、および突出筒34が下方から上方に連なって形成されている。
【0020】
取付筒31には、吸上筒35が嵌合されている。吸上筒35は、下端開口が容器本体3の底部に近接する位置まで延設されている。
【0021】
摺動筒33の上部には、摺動筒33を径方向に貫通する導入孔33aが形成されている。摺動筒33の上端開口縁には、径方向の外側に向けてフランジ部36が突設されている。フランジ部36は、摺動筒33の全周にわたって形成されている。フランジ部36は、吐出器5が容器本体3に装着された状態において、口部3aの上端開口縁上にパッキン11を間に挟んで配置される。突出筒34は、フランジ部36から上方に延設されている。
【0022】
下部弁体45は、シリンダ30の収容筒32内に収容されている。具体的に、下部弁体45は、嵌合筒部46と、規制筒部47と、弁本体48と、を備えている。
【0023】
嵌合筒部46は、有頂筒状に形成されている。嵌合筒部46の周壁部は、シリンダ30の収容筒32の下部に嵌合されている。規制筒部47は、収容筒32内において、嵌合筒部46の頂壁部から上方に突設されている。また、規制筒部47は、嵌合筒部46の頂壁部から上方に延びているとともに容器軸Oを挟んで径方向に対向する一対の側板47aと、一対の側板47a同士を連結する中板47bと、一対の側板47a及び中板47bの各上端部に一体に連結された頂板47cと、を備えている。一対の側板47a及び中板47bは、容器軸O方向から見た平面視で全体形状がH状となるように形成されている。また、一対の側板47a及び中板47bは、上下方向の長さが互いに同等とされ、且つそれぞれの上下位置は互いに同等とされている。
【0024】
弁本体48は、嵌合筒部46の周壁部の内周面に、弾性変形可能な連結片49を介して連結された三点弁から構成されている。すなわち、弁本体48は、連結片49の弾性変形に応じて嵌合筒部46に対して上下方向に弾性変位可能に構成されている。弁本体48は、シリンダ30の収容筒32内において、収容筒32の下端開口縁に形成された環状に突出する弁座37に対して上方から着座する。
【0025】
弁本体48は、シリンダ30内の加圧時にシリンダ30の下端開口を閉塞する一方、シリンダ30内の減圧時にはシリンダ30の下端開口を開放する逆止弁として機能する。すなわち、弁本体48は、シリンダ30内の加圧時において、弁座37上に着座し、シリンダ30内に流入した内容物が収容筒32の下端開口を通じて容器本体3に戻ることを阻止する。一方、弁本体48は、シリンダ30内の減圧時において、弁座37から上昇し、収容筒32の下端開口を通じて容器本体3内の内容物をシリンダ30内に流入させる。
【0026】
ステム20は、筒状のステム本体21と、ステム本体21の下部に嵌合されたピストンガイド25と、を備えている。
【0027】
ピストンガイド25は、シリンダ30内をステム本体21とともに上下動可能に構成されている。具体的に、ピストンガイド25は、栓部26と、栓部26の上方に延設された装着部27と、を備えている。
【0028】
栓部26は、有頂筒状に形成されている。栓部26は、ピストンガイド25の上下動に伴って、シリンダ30の収容筒32と摺動筒33内との連通および遮断を切り替える。具体的に、
図1に示す吐出ヘッド80およびステム20の下降端位置P1において、栓部26の周壁部の下部は、収容筒32内に嵌合されている。これにより、収容筒32内と摺動筒33内との連通が上下方向で遮断される。一方、
図2に示す吐出ヘッド80およびステム20の上昇端位置P2において、栓部26の周壁部の下部は、収容筒32から上方に離脱する。これにより、収容筒32内と摺動筒33内とが連通する。
【0029】
装着部27は、周方向に間隔をあけて配置された複数の分割周壁と、複数の分割周壁における周方向の中央部から径方向の内側に向けて各別に突出するリブと、を備えている。分割周壁の外周面は、栓部26の周壁部に対して径方向の内側に位置している。各リブにおける径方向の内側端部同士は、軸線O上で互いに連結されている。リブは、分割周壁における上下方向の全域にわたって配設されている。装着部27は、周方向で隣り合う分割周壁同士の間を通じて、分割周壁の内外が連通している。なお、装着部27は、周方向の全周にわたって連続して延びる筒部に、筒部を径方向に貫通する貫通孔を有する構成であってもよい。
【0030】
ステム本体21は、シリンダ30の摺動筒33内にシリンダ30の上方から挿入されている。ステム本体21は、吐出器5が容器本体3に装着された状態において、口部3aの内側に配設される。ステム本体21は、シリンダ30内において、ピストンガイド25を介して付勢部材55により上方付勢状態で下方移動可能に構成されている。ステム本体21は、下筒部22と、下筒部22よりも小径に形成された上筒部23と、を備えている。
【0031】
下筒部22は、ピストンガイド25の装着部27の周囲を取り囲んでいる。下筒部22の内周面と装着部27(分割周壁)の外周面との間には、周方向の全体にわたって隙間が形成されている。下筒部22の上端開口縁には、径方向の内側に向けて段部24が形成されている。図示の例において、段部24は、上方に向かうに従って径方向の内側に向けて傾斜したテーパ状に形成されている。ただし、段部24は、軸線Oに対して直交する方向に突設されていてもよい。
【0032】
上筒部23は、段部24における径方向の内側端部(上端部)から上方に延設されている。上筒部23内の下部には、装着部27(分割周壁)が嵌合されている。また、上筒部23の内周面には、径方向の内側に向けて突出した規制突起23aが形成されており、装着部27の上端部に対して上方から接触している。
【0033】
ピストン40は、外筒および内筒が連結部によって連結された構成を有する。外筒は、上下方向の中央部から両側に向かうに従って外径が拡大している。外筒は、上下方向の両端部が摺動筒33の内周面上を上下方向に摺動可能に構成されている。内筒は、ステム本体21の下筒部22内に上下方向に摺動可能に嵌合されている。
【0034】
図2に示すように、ピストン40は、ステム20の上昇端位置P2において、外筒によってシリンダ30の導入孔33aを閉塞する。具体的には、外筒の上下方向の両端部が、摺動筒33の内周面のうち、導入孔33aに対して上下方向の両側に位置する部分に密接することによって、導入孔33aが閉塞される。
【0035】
図1に示すように、閉塞部材50は、シリンダ30内において、ピストン40の上方に位置する部分に配置されている。閉塞部材50は、軸線Oと同軸に配置された筒状に形成されている。閉塞部材50は、ステム本体21(上筒部23)の周囲を取り囲んでいる。具体的に、閉塞部材50は、シール筒51と、囲繞筒52と、を備えている。
【0036】
シール筒51は、上下方向の中央部から両側に向かうに従って外径が拡大している。シール筒51は、上下方向の両端部が摺動筒33の内周面上を上下方向に摺動可能に構成されている。
【0037】
シール筒51は、
図1に示す吐出ヘッド80およびステム20の下降端位置P1において、導入孔33aを閉塞している。具体的には、シール筒51の上下方向の両端部が、摺動筒33の内周面のうち、導入孔33aに対して上下方向の両側に位置する部分に密接することによって、導入孔33aが閉塞される。これにより、吐出容器1の流通時など、ステム20が下降端位置P1にあるときに、導入孔33aを通じた容器本体3内とシリンダ30内との連通が遮断される。一方、
図2に示す吐出ヘッド80およびステム20の上昇端位置P2において、シール筒51の下端部は、ピストン40の外筒の上端部に当接している。本実施形態において、シール筒51は、ステム本体21の段部24に上下方向で対向している。
【0038】
囲繞筒52は、シール筒51から上方に延在している。囲繞筒52は、シール筒51に対して縮径している。囲繞筒52の下端縁は、ステム本体21の段部24に上下方向で対向している。囲繞筒52は、シリンダ30の内周面とステム本体21(上筒部23)の外周面との隙間を通じて突出筒34よりも上方に突出している。なお、下降端位置P1において、囲繞筒52の上端縁はステム本体21の上端縁と同等の位置に配置されている。
【0039】
付勢部材55は、シリンダ30内において、ピストンガイド25と下部弁体45との間に介在している。付勢部材55は、例えばコイルスプリングで構成されている。付勢部材55は、収容筒32内で規制筒部47の周囲を取り囲んで配設されている。付勢部材55の下端は、嵌合筒部46の上面に支持されている。付勢部材55の上端は、栓部26の頂壁部に支持されている。これにより、付勢部材55は、ピストンガイド25を介してステム本体21を上方に向けて付勢している。すなわち、付勢部材55は、ステム20を上方に向けて付勢している。
【0040】
付勢部材55は、金属製であることが好ましい。本実施形態において、付勢部材55以外の構成部材は、樹脂材料により形成されている。なお、付勢部材55は、コイルスプリングに限定されず、他の付勢部材を用いることもできる。また、付勢部材55は、樹脂材料により形成されていてもよい。
【0041】
規制部材90は、シリンダ30の上端に装着されている。規制部材90は、基筒91と、連結フランジ92と、嵌合筒93と、外装筒94と、を備えている。また、基筒91は、回り止め筒95と、回り止め筒95の上方に連なる螺着筒部96と、を備えている。すなわち、本実施形態において、規制部材90は、シリンダ30とは別部材で形成され、シリンダ30の上端に固定されたリング状の部材で構成されている。規制部材90は、吐出器5が容器本体3に装着された状態において、吐出器5の外部に露呈する。規制部材90のうち少なくとも吐出器5の外部に露呈する箇所には蒸着膜が形成されている。吐出器5の外部に露呈する箇所は、螺着筒部96の外周面を含む。本実施形態では、規制部材90の外面に蒸着膜が形成されている。
【0042】
回り止め筒95は、軸線Oと同軸に配置されている。回り止め筒95は、シリンダ30の突出筒34内に挿入されている。回り止め筒95の外周面および突出筒34の内周面には、周方向に互いに係合してシリンダ30に対する規制部材90の相対回転を規制する回り止め部97が形成されている。なお、回り止め部97は、上下方向に延びるリブ同士、またはリブと溝とが互いに係合すること等によって構成されている。回り止め筒95は、上下方向において突出筒34の略全長にわたって形成されている。回り止め筒95は、閉塞部材50の周囲を取り囲んでいる。
【0043】
螺着筒部96は、回り止め筒95から上方に連なっている。具体的に、螺着筒部96は、軸線Oと同軸に配置されている。螺着筒部96の内周面は、回り止め筒95の内周面と面一に配置されている。螺着筒部96は、閉塞部材50を取り囲んでいるとともに、閉塞部材50およびステム20よりも上方に突出している。螺着筒部96の外周面には、雄ねじ96aが形成されている。本実施形態では、雄ねじ96aは2条ねじである。ただし雄ねじの条数は限定されない。以下では、雄ねじ96aのねじ山の上下方向を向く側面(ねじ山の斜面)を雄ねじ96aのねじ面と称する。
【0044】
連結フランジ92は、基筒91における上下方向の中央部(回り止め筒95と螺着筒部96との境界部分)から径方向の外側に張り出している。嵌合筒93は、連結フランジ92から下方に延在している。嵌合筒93内には、打栓等によってシリンダ30の突出筒34が嵌合されている。これにより、嵌合筒93は、突出筒34の周囲を取り囲んでいる。外装筒94は、連結フランジ92の外周縁から下方に延在している。外装筒94は、嵌合筒93の周囲を取り囲んでいる。
【0045】
装着キャップ70は、ポンプ10を容器本体3の口部3aに固定する。装着キャップ70は、有頂筒状に形成されている。装着キャップ70の天壁部71には、天壁部71を上下方向に貫通する挿通孔72が形成されている。挿通孔72内には、ポンプ10の突出筒34等が挿入されている。天壁部71は、シリンダ30のフランジ部36を口部3aとの間に挟んでいる。
【0046】
装着キャップ70の周壁部73は、天壁部71の外周縁から下方に延在している。周壁部73は、容器本体3の口部3aに着脱可能に螺着される。ただし、装着キャップ70は、例えばアンダーカット嵌合等、螺着以外の方法によって口部3aに装着されていてもよい。
【0047】
吐出ヘッド80は、吐出器5が容器本体3に装着された状態において、吐出器5の外部に露呈する。吐出ヘッド80の外面には蒸着膜が形成されている。吐出ヘッド80は、操作部81と、装着筒82と、連結筒83と、吐出筒84と、を備えている。操作部81は、有頂筒状に形成されている。
【0048】
装着筒82は、操作部81の天板部から下方に延在している。装着筒82は、軸線Oと同軸に配置されている。装着筒82の下部は、ステム本体21(上筒部23)内に打栓等によって嵌合されている。
【0049】
装着筒82のうち、ステム本体21よりも上方に位置する部分には、突出片85が形成されている。突出片85は、装着筒82から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に沿って延在している。図示の例では、突出片85は、少なくとも2つ設けられており、装着筒82から前方および後方それぞれに突出している。突出片85の上端は、操作部81の天板部に連なっている。突出片85の下端縁は、螺着筒部96の内側にある。突出片85の下端縁は、ステム本体21の上筒部23の上端縁に、上筒部23の上方から近接または当接している。すなわち、突出片85は、ステム20に対する吐出ヘッド80の下方移動を規制する。また、突出片85の下端縁は、囲繞筒52の上端縁に囲繞筒52の上方から近接または当接している。各突出片85には、被係合突起86(被係合部)が設けられている。被係合突起86は、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、規制部材90の螺着筒部96に径方向で対向する位置にある。被係合突起86は、突出片85の下端部から径方向の外側に突出している。
【0050】
連結筒83は、操作部81の天板部から下方に延在している。連結筒83は、装着筒82の周囲を取り囲んでいる。連結筒83の内周面には、螺着筒部96の雄ねじ96aに螺合する雌ねじ83aが形成されている。本実施形態では、雌ねじ83aは2条ねじである。ただし雌ねじの条数は限定されない。連結筒83は、
図1に示す下降端位置P1において、規制部材90の螺着筒部96に螺着されている。これにより、吐出ヘッド80は、規制部材90に螺着されることでステム20とともに上昇端位置P2から下降した状態で、規制部材90によって上昇を規制されている。連結筒83の下端縁は、規制部材90の連結フランジ92の上面に当接している。以下では、雌ねじ83aのねじ山の上下方向を向く側面(ねじ山の斜面)を雌ねじ83aのねじ面と称する。
【0051】
吐出筒84は、操作部81から前方に突出している。吐出筒84は、操作部81の周壁部および連結筒83を径方向に貫くように形成されている。また、図示の例では、吐出筒84は、前方の突出片85を貫通している。吐出筒84における径方向の内側開口部は、装着筒82内に連通している。吐出筒84における径方向の外側開口部は、装着筒82および吐出筒84を通じてステム本体21内に連通する吐出口84aを構成している。
【0052】
図3に示すように、吐出器5は、保持部15をさらに備える。保持部15は、規制部材90に設けられている。保持部15は、螺着筒部96に設けられている。保持部15は、螺着筒部96の内周面の上端部から径方向の内側に突出している。例えば、保持部15は、軸線Oの周囲を全周にわたって延びている。保持部15は、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、被係合突起86に上方からアンダーカット係合する。これにより、保持部15は、付勢部材55の付勢力に抗しつつ、規制部材90に螺着された状態で下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80を保持している。
【0053】
吐出器5において、例えば流通時には吐出ヘッド80が規制部材90に螺着することによって、吐出ヘッド80がステム20とともに下降端位置P1に保持されている。ここで、従来構成の吐出器では、吐出ヘッドが下降端位置にある状態で、吐出ヘッドの雌ねじのねじ山が規制部材の雄ねじのねじ山に下方から接触することで、吐出ヘッドの上昇が規制される。
【0054】
一方で本実施形態の吐出器5では、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、保持部15が規制部材90に対する吐出ヘッド80の上昇を規制するように、吐出ヘッド80を保持している。保持部15は、規制部材90の螺着筒部96の雄ねじ96a、吐出ヘッド80の連結筒83のおよび雌ねじ83aそれぞれのねじ面の相互の接触面圧を低減するように、付勢部材55の付勢力に抗しつつ吐出ヘッド80を保持している。例えば、保持部15は、雄ねじ96aのねじ山に対して下方に間隔をあけて雌ねじ83aのねじ山が位置するように、吐出ヘッド80を保持する。望ましくは、保持部15は、雄ねじ96aのねじ山と、雌ねじ83aのねじ山とが上下方向に相互に離間するように、吐出ヘッド80を保持する。例えば、吐出ヘッド80を規制部材90に対して締め込み方向に回転させ切った状態から僅かに緩み方向に逆回転させることで、吐出ヘッド80を下降端位置P1に保持したまま雄ねじ96aおよび雌ねじ83aのねじ山同士を互いに離間させることができる。
【0055】
以上により、本実施形態の吐出器5によれば、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、雄ねじ96aに形成された蒸着膜が雌ねじ83aの摺接によって剥がれることを抑制できる。もちろん、使用開始時に吐出ヘッド80が下降端位置P1から上昇端位置P2へ移行する際も雄ねじ96aに形成された蒸着膜が雌ねじ83aの摺接によって剥がれることを抑制できる。したがって、蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる。
【0056】
また、保持部15は、規制部材90に設けられており、吐出ヘッド80に設けられた被係合突起86にアンダーカット係合する。この構成によれば、吐出器5の組立工程において、吐出ヘッド80を規制部材90に螺合させる過程で被係合突起86に保持部15を乗り越えさせて、被係合突起86に保持部15をアンダーカット係合させることできる。これにより、保持部15は、規制部材90に螺着された状態で下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80を保持できる。したがって、組立工程の複雑化を抑制しつつ、上記作用効果を奏する吐出器5が得られる。
【0057】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図4および
図5に基づいて説明する。
第2実施形態は、主に保持部の構成が第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0058】
図4および
図5に示すように、吐出器105は、第1実施形態の保持部15に替えて、保持部115を備える。保持部115は、規制部材90の雄ねじ96aのねじ面に突設されている。保持部115は、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、雌ねじ83aのねじ面に接触する。保持部115は、雄ねじ96aのねじ山に対して雌ねじ83aのねじ山を、吐出ヘッド80に作用する付勢部材55の付勢力に抗するように押し下げる。これにより、保持部115は、付勢部材55の付勢力に抗しつつ、規制部材90に螺着された状態で下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80を保持している。
【0059】
本実施形態の吐出器105では、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、保持部115が規制部材90に対する吐出ヘッド80の上昇を規制するように、吐出ヘッド80を保持している。保持部115は、規制部材90の螺着筒部96の雄ねじ96a、吐出ヘッド80の連結筒83のおよび雌ねじ83aそれぞれのねじ面の相互の接触面圧を低減するように、付勢部材55の付勢力に抗しつつ吐出ヘッド80を保持している。例えば、保持部115は、雄ねじ96aのねじ山に対して下方に間隔をあけて雌ねじ83aのねじ山が位置するように、吐出ヘッド80を保持する。これにより、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で、雄ねじ96aに形成された蒸着膜が雌ねじ83aの摺接によって剥がれることを抑制できる。したがって、蒸着膜の剥がれによる品質低下を抑制できる。
【0060】
さらに本実施形態では、保持部115が雄ねじ96aのねじ面に突設されている。このため、吐出器105の組立工程において、吐出ヘッド80を規制部材90に螺合させる過程で保持部115に雌ねじ83aのねじ山を乗り上げさせて、雄ねじ96aおよび雌ねじ83aそれぞれのねじ面の相互の接触面圧を低減させることができる。したがって、組立工程の複雑化を抑制しつつ、上記作用効果を奏する吐出器105が得られる。
【0061】
なお、第2実施形態では、保持部115が雄ねじ96aのねじ面に突設されているが、保持部が雌ねじ83aのねじ面に突設されていてもよい。この場合、保持部は、吐出ヘッド80が下降端位置P1にある状態で雄ねじ96aのねじ面に接触し、雄ねじ96aのねじ山に対して雌ねじ83aのねじ山を、吐出ヘッド80に作用する付勢部材55の付勢力に抗するように押し下げる。これにより、保持部は、付勢部材55の付勢力に抗しつつ、規制部材90に螺着された状態で下降端位置P1に位置する吐出ヘッド80を保持できる。したがって、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、規制部材90がシリンダ30と別体で形成されているが、規制部材がシリンダと一体で形成されていてもよい。また、規制部材の形状は、必ずしもリング状でなくてもよく、適宜変更が可能である。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。例えば、吐出器は保持部15および保持部115の両方を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
3…容器本体 3a…口部 10…ポンプ 15,115…保持部 20…ステム 55…付勢部材 70…装着キャップ 80…吐出ヘッド 83a…雌ねじ 84a…吐出口 86…被係合突起(被係合部) 90…規制部材 96…螺着筒部 96a…雄ねじ P1…下降端位置