(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079179
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】米含有樹脂組成物の製造方法およびその成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 5/00 20060101AFI20240604BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240604BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240604BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20240604BHJP
B29B 7/46 20060101ALI20240604BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08L5/00
C08L101/00
C08L23/06
C08L23/12
B29B7/46
B29B9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191960
(22)【出願日】2022-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 大坪研一監修、米の機能性食品化と新規利用技術・高度加工技術の開発 -食糧,食品素材,機能性食品,工業原料,医薬品原料としての米-、株式会社テクノシステム、第503~510頁、2022年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】522261525
【氏名又は名称】株式会社バイオマスレジンホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和久
【テーマコード(参考)】
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F201AA01
4F201AA04
4F201AA11
4F201AR06
4F201BA01
4F201BC01
4F201BC37
4F201BD04
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK26
4F201BK36
4F201BK73
4F201BL08
4F201BL43
4J002AB001
4J002BB032
4J002BB122
(57)【要約】
【課題】目的とする品質に適合する米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができる新規な製造方法を提供する。
【解決手段】米と樹脂とを混練する混練工程を有し、前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルを定めるものである、米含有樹脂組成物の製造方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と樹脂とを混練する混練工程を有し、
前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、
前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルを定めるものである、米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記混練工程において、前記米のアルカリ崩壊試験の崩壊度レベルに応じて、混練する製造条件を選定する工程を有する、請求項1に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記製造条件として、前記樹脂と前記米とを混練する混練温度を選定する、請求項2に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記製造条件として、前記樹脂と前記米とを混練する際の水の添加量を選定する、請求項2に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂は、MFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリエチレンおよびMFR(230℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリプロピレンからなる群より選択される、請求項1または2に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記米は、前記崩壊度レベルが5以上の米が選択される、請求項1または2に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法によって米含有樹脂組成物を得て、前記米含有樹脂組成物を成形品に成形することを有する、米含有樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記成形が、射出成形を含む、請求項7に記載の米含有樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米含有樹脂組成物の製造方法およびその成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、天然由来の澱粉、米、木粉、竹粉、紙粉といったバイオマス材料を配合した樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
樹脂に配合するバイオマス材料として、例えば、特許文献1では、米、あるいは、少なくとも有意量の米を含有するセルロース、リグノセルロース及びデンプンなどを使用する知見が、特許文献2では、木粉を使用する知見が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-89535号公報
【特許文献2】特開2020-158606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、バイオマス材料として米を使用した樹脂組成物(以下、「米含有樹脂組成物」)の成形品は、用いた米により米含有樹脂組成物の成形品において品質のばらつきを生じることを見出した。また、品質のばらつきを抑えるため、米含有樹脂組成物を得る際の製造条件を都度調整しようとすると生産性が低下するという問題もあった。
【0006】
よって、本発明が解決しようとする課題は、目的とする品質に適合する米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができる新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った。その結果、米含有樹脂組成物の原料である米に特定のアルカリ崩壊試験を行うことにより、その米の崩壊度レベルと、米および樹脂の相溶性との間で相関性を示すことを見出した(以下、この相関性を「本発明の関係」と称する)。そして、この知見に基づき、上記米含有樹脂組成物を得る際に、特定のアルカリ崩壊試験を米に行い、アルカリ崩壊試験による崩壊度レベルを識別した米を原料として用いることにより、米および樹脂の相溶性を推測することができ、これにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。さらに、本発明者らは、この知見に基づき、当該米の崩壊度レベルに応じて、米と樹脂とを混練する製造条件を選定する工程を有することにより、目的とする品質に適合しつつ、省エネルギー化が可能な米含有樹脂組成物の製造方法を見出した。
【0008】
すなわち、上記の課題を解決するための、本発明の一態様に係る製造方法は、米と樹脂とを混練する混練工程を有し、前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルを定めるものである、米含有樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、目的とする品質に適合する米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができる新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアルカリ崩壊試験の評価基準を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る米含有樹脂組成物の製造装置を示す斜視図である。
【
図5】米含有樹脂組成物の製造装置を構成する第1収容部の第1収容空間を示す図である。
【
図6】
図2の米含有樹脂組成物の製造装置を構成する第1収容部の第1収容空間に配置された複数の回転部材について示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る米含有樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】実施例に係る米含有樹脂組成物の評価について示す画像である。
【
図9】実施例3、5および9の米含有樹脂組成物より得られたフィルムの画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、使用方法および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。本明細書に記載される実施の形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施の形態とすることができる。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
本発明者らは、これまで、米をバイオマス材料として使用した場合に、異なる外観の成形品(米含有樹脂組成物)が得られることがあり、品質がばらつくという課題を見出していた。また、品質のばらつきを抑えるため、米含有樹脂組成物を得る際の製造条件を都度調整しようとすると生産性が低下するという問題もあった。そこで、品質がばらつく原因について鋭意検討を行った。
【0014】
米は、品種、産地、収穫時期による米の新鮮さなど、様々な要素により品質が多種多様である。米含有樹脂組成物を製造する際、樹脂に混練する米は、樹脂との相溶性が求められる。米の特性評価のひとつとして、アルカリ水溶液に対する米の溶解性を評価するアルカリ崩壊試験が知られている。そこで、本発明者らは、米のアルカリ崩壊試験により米と樹脂との相溶性を評価することを検討した。しかしながら、米のアルカリ崩壊試験において短い試験時間で評価を行うために、アルカリ水溶液の濃度を高くすると、評価精度が低下し、米の崩壊度レベルが同程度の米を用いた米含有樹脂組成物であっても、米含有樹脂組成物またはその成形品の品質が異なる場合があることを知見した。そこで、本発明者らは、米と樹脂との相溶性と相関性を有する米のアルカリ崩壊試験の条件について鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、ある特定の条件下の米のアルカリ崩壊試験において、米の崩壊度レベルが、米と樹脂との相溶性に相関することを見出した。これにより、米含有樹脂組成物を得る際の米においてアルカリ崩壊試験を行うことにより、その米と樹脂との相溶性を推測できる。さらに、米の崩壊度レベルにより、米と樹脂との相溶性が推測されることにより、その相溶性に応じて製造条件を選定することができること(すなわち、「本発明の関係」の存在)を見出した。これにより、米含有樹脂組成物を得る際の製造条件を都度調整する必要がなく、米の崩壊度レベルに応じた製造条件を予め定めておくことができる。そうして、米含有樹脂組成物を製造する際には、得られた米の崩壊度レベルに応じて、予め定められた製造条件を選定すればよい。
【0015】
よって、本発明者らは、米に対して特定のアルカリ崩壊試験を行うことによって、米の崩壊度レベルに応じて製造条件を選定することができ、品質がばらつかず、目的とする品質に適合した米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができることを見出した。なお、この米の崩壊度レベルと、製造条件との関係(すなわち、「本発明の関係」)は、特定のアルカリ崩壊試験により評価された崩壊度レベルの異なる複数の米を原料として用いて、種々の製造条件で予備実験を行い、その関係性を求めておくことが可能である。また、このような方法によって別途求めておいた「本発明の関係」を入手可能である場合には、これを用いて本形態に係る製造方法を実施することも可能である。この場合、本形態に係る製造方法は、「本発明の関係」を求めることを含まない。本発明の関係は、樹脂の種類に基づき求めることが好ましい。
【0016】
以上のように、本発明の一態様の米含有樹脂組成物の製造方法は、米と樹脂とを混練する混練工程を有し、前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルが定められるものである。このようなアルカリ崩壊試験を米に対して行うことで、得られる米の崩壊度レベルが、米と樹脂との相溶性に相関性を有するものである。これにより、米の崩壊度レベルに応じた製造条件を検討することができ、目的とする品質(例えば、外観)に適合した米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができる。
【0017】
また、本発明の一態様の米含有樹脂組成物の製造方法は、前記米のアルカリ崩壊試験の崩壊度レベルに応じて、混練する製造条件を選定する工程をさらに含む。すなわち、本発明の他の態様では、アルカリ崩壊試験により米の崩壊度レベルを評価し、前記米の崩壊度レベルに応じて、米と樹脂とを混練する製造条件を選定し、前記製造条件下で前記米と前記樹脂とを混練する混練工程を有し、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルを定めるものである、米含有樹脂組成物の製造方法が提供される。これにより、本発明の関係に基づき予め定められた製造条件の中から米の崩壊度レベルに応じた製造条件を選定することができ、品質のばらつきがなく、生産性を向上させることができる。
【0018】
ここで、製造条件としては、米と樹脂とを混練させる際の水の存在割合(水の添加量)、混練温度(混練部温度)、混練撹拌数(混練回転数)などが挙げられる。例えば、凝集がない外観を目的とする場合、米と樹脂とが十分に相溶している必要がある。そのような場合は、本発明の関係に照らし合わせて、製造条件を選定する。なお、凝集がない外観を目的とする場合、米の崩壊度レベルが高いこと(例えば、3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であること)が好ましい。米の崩壊度レベルが高いほど、製造条件を緩和する方向にすることができ、これにより省エネルギー化が可能となる。凝集がない外観を目的とする場合で、米の崩壊度レベルが低い米(例えば、崩壊度レベルが2の米)を用いると、エネルギーを多く使う製造条件を選定することになる。よって、後述の製造条件では、崩壊度レベルが低い米は、外観において凝集が存在してもよい品質の製品の原料として検討しているが、本発明はこれに制限されない。崩壊度レベルが低い米を凝集がない外観の品質の製品の原料とする場合は、後述する好ましい製造条件よりも添加する水の含有量を増加したり、混練温度を上げたり、混練撹拌数を上げたり等の対応をすればよい。後述の製造条件では、生産能力が150kg/hrとなるような条件に着目しているが、これに制限されない。
【0019】
[米含有樹脂組成物]
本実施形態に係る製造方法により生成される米含有樹脂組成物は、米と、樹脂(好適にはポリプロピレンまたはポリエチレン)とを含み、必要に応じて、相溶化剤等の添加剤を含む。
【0020】
〈米〉
米含有樹脂組成物に用いられる米としては、米粒の形状を有するものである。米粒の形状としては、例えば、粒子サイズ(平均サイズ)として、長さ4~6mm(好ましくは4.5~5.5mm)、幅2~4mm(好ましくは2.0~3.0mm)、厚さ1~3mm(好ましくは1.5~2.5mm)が好ましい。米は、粒が均等なものを用いても不均等なものを用いてもよいが、米粒の平均サイズが上記範囲であるものが好ましい。米は、β構造(結晶構造)である、精米、古米、吟醸米、砕米等が好適である。米は、単独の銘柄であってもよく、2種以上の銘柄を混合したもの(ブレンド米)であってもよい。
【0021】
〈樹脂〉
米含有樹脂組成物に用いられる樹脂としては、ポリプロピレン(PP)系重合体、ポリエチレン(PE)系重合体およびこれらの共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系重合体としては、ポリプロピレン(PP)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-アクリル酸エチル共重合体、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等のプロピレン系の共重合体が挙げられる。ポリエチレン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-無水マレイン酸共重合体等のエチレン系の共重合体が挙げられる。また、樹脂は、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体であってもよい。中でも、融点とメルトテンションとの観点で、ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好適である。一実施形態において、樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレンおよびポリエチレンであるのが好ましく、メタロセン系ポリプロピレン、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンであるのがより好ましい。ここで、本発明の一実施形態において、LLDPEは、密度0.89~0.925の直鎖状ポリエチレンコポリマーである(JIS K6899-1:2000)。本発明の一実施形態において、LLDPEは、分岐鎖10~30を有する。LLDPEを構成するαオレフィンとして、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン等が好適である。
【0022】
一実施形態において、樹脂としては、MFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリエチレンおよびMFR(230℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリプロピレンから選択されるのが好ましい。ポリエチレンのMFR(190℃・2.16kgf)は、0.1~50(g/10min)が好ましく、0.2~40(g/10min)がより好ましく、0.3~35(g/10min)がさらに好ましく、0.5~30(g/10min)が特に好ましく、0.8~25(g/10min)が最も好ましい。ポリプロピレンのMFR(230℃・2.16kgf)は、1~90(g/10min)が好ましく、5~80(g/10min)がより好ましく、10~70(g/10min)がさらに好ましく、15~65(g/10min)が特に好ましく、18~60(g/10min)が最も好ましい。一実施形態において、1~20(g/10min)のポリエチレンおよびMFR(230℃・2.16kgf)が10~50(g/10min)のポリプロピレンから選択されるのが好ましい。
【0023】
米含有樹脂組成物は、品質として凝集が低減された外観が要求される場合がある。そのような場合、アルカリ崩壊試験による崩壊度レベルが特定の範囲以上の米を用いるのが好ましい。米のアルカリ崩壊試験による崩壊レベルについては後述するが、凝集が低減された外観を製造する形態としては、崩壊度レベルが3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。さらには、凝集が低減された外観を製造する形態において、樹脂の種類により崩壊度レベルを選定することができる。具体的には、凝集が低減された外観を製造する形態としては、樹脂としてMFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(好ましくは0.1~50、より好ましくは1~20)(g/10min)のポリエチレンを用いる場合、後述する崩壊度レベルが3以上(すなわち、3以上10以下)の米を原料として用いればよく、樹脂としてMFR(230℃・2.16kgf)が0.1~100(好ましくは1~90、より好ましくは10~50)(g/10min)のポリプロピレンを用いる場合、後述する崩壊度レベルが5以上(すなわち、5以上10以下の)の米を原料として用いればよい。すなわち、凝集が低減された外観を製造する形態としては、崩壊度レベルが3以上5未満の場合、MFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(好ましくは0.1~50、より好ましくは1~20)(g/10min)のポリエチレンを選定することができ、崩壊度レベルが5以上の場合(すなわち、5以上10以下の場合)、MFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(好ましくは0.1~50、より好ましくは1~20)(g/10min)のポリエチレンおよびMFR(230℃・2.16kgf)が0.1~100(好ましくは1~90、より好ましくは10~50)(g/10min)のポリプロピレンからなる群より1種以上を選定することができる。
【0024】
MFRは、樹脂の流動性を評価するものであり、MFRが大きいほど、樹脂の流動性が高い。本明細書中、MFRは、メルトインデクサ(株式会社立山科学ハイテクノロジーズ)を用い、JIS K7210(2014)に準拠し、ポリエチレンは190℃・2.16kgfの条件下で測定して得られた値であり、ポリプロピレンは230℃・2.16kgfの条件下で得られた値である。
【0025】
〈相溶化剤〉
相溶化剤は、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸またはその誘導体が用いられる。飽和カルボン酸としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フタル酸、フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水アジピン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を使用することができる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂を使用することができる。これは、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体と、ラジカル発生剤とを溶媒の存在下または不存在下に加熱混合することにより得られる。
【0026】
相溶化剤は市販品を用いてもよく、具体的には、リケエイドMG-440P(理研ビタミン株式会社製)、MG-441P(理研ビタミン株式会社製)、MG-250P(理研ビタミン株式会社製)、ユーメックス1001(株式会社三洋化成製)等が挙げられる。
【0027】
これら相溶化剤のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、米含有樹脂組成物中の水分は、2000質量ppm以下、1000質量ppm以下、あるいは、500質量ppm以下である。かかる水分の量は、カールフィッシャー水分測定装置における電量滴定方法で測定される値を言うものとする。
【0029】
本発明の一実施形態において、米含有樹脂組成物のMFR(メルトフローレート(190℃・10.0kgf))は、1~50(g/10min)、1~45(g/10min)、1~40(g/10min)、あるいは、1~30(g/10min)である。また、樹脂がポリプロピレンの場合、米含有樹脂組成物のMFR(メルトフローレート(190℃・10.0kgf))は、1~50(g/10min)、1~45(g/10min)、2~40(g/10min)、あるいは、3~30(g/10min)であってもよい。樹脂がポリエチレンの場合、米含有樹脂組成物のMFR(メルトフローレート(190℃・10.0kgf))は、1(g/10min)以上10(g/10min)未満、1~6(g/10min)、1~5(g/10min)、2~6(g/10min)、あるいは、3.0~5.5(g/10min)であってもおおむね良好である。
【0030】
[米含有樹脂組成物の製造方法]
本発明の一態様の米含有樹脂組成物の製造方法は、米と樹脂とを混練する混練工程を有し、前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルが定められるものである。かかる態様によれば、目的とする品質に適合した米含有樹脂組成物またはその成形品を製造することができる。
【0031】
〈アルカリ崩壊試験〉
アルカリ崩壊試験は、米の溶解性を評価する試験である。本発明では、米にアルカリ崩壊試験を行うことで、米と樹脂との相溶性を推測することができる。これにより、米と樹脂とを混練する製造条件とを選定する指標とすることができる。以下、アルカリ崩壊試験について説明する。
【0032】
まず、水酸化カリウム水溶液に浸すための米を用意する。米の種類は、米含有樹脂組成物の欄で述べたものが用いられる。
【0033】
続いて、用意した米を、水酸化カリウム水溶液に浸漬する。水酸化カリウム水溶液は所定の容器内に用意され、これに米を投入することで米が浸漬される。
【0034】
米の浸漬に用いる容器は、水酸化カリウム水溶液中に浸漬される米の様子を観察するために適した形状を有することが好ましく、例えば、平底円筒型または丸底試験管の透明な容器であることが好ましい。平底円筒型の容器を使用する場合、容器の底面の直径は、10mm~30mmであることが好ましく、15mm~20mmであることがより好ましい。丸底円筒型の容器を使用する場合、容器の直径は、10mm~30mmであることが好ましく、15mm~20mmであることがより好ましい。容器の材質は、強アルカリ性に耐性を有していれば特に制限されないが、ガラスまたはプラスチックであることが好ましい。
【0035】
米の浸漬に用いられる水酸化カリウム水溶液は、0.5~3質量%水酸化カリウム水溶液である。水酸化カリウム水溶液中の水酸化カリウム濃度は、0.5~2.5質量%であることが好ましく、1~2.5質量%であることがより好ましく、1~2質量%であることがさらに好ましい。水酸化カリウム水溶液の1つの容器当たりにおける使用量は、5~20mLであることが好ましく、8~15mLであることがより好ましく、8~12mLであることがさらに好ましく、10mLであることが特に好ましい。
【0036】
また、1つの容器で水酸化カリウム水溶液に浸漬する米の粒数は、観察の容易さの観点から1~10粒であることが好ましく、1~5粒であることがより好ましく、2~4粒であることさらに好ましく、3粒であることが最も好ましい。また、1つの容器で水酸化カリウム水溶液に浸漬する米は、0.01~0.1gであることが好ましく、0.02~0.08gであることがより好ましく、0.03~0.07gであることがさらに好ましい。一実施形態において、1つの容器で水酸化カリウム水溶液に浸漬する米は、1~5粒かつ0.02~0.08g、2~4粒かつ0.03~0.07g、または3粒かつ0.05gである。
【0037】
アルカリ崩壊試験に用いられる米と水酸化カリウム水溶液とは、米の質量(g)/水酸化カリウム水溶液の体積(mL)として、0.0001~0.1g/mLであるのが好ましく、0.0005~0.05/mLであるのがより好ましく、0.001~0.01/mLであるのがより好ましく、0.002~0.008/mLであるのがより好ましく、0.005g/1mLであるのが特に好ましい。
【0038】
続いて、米を水酸化カリウム水溶液に浸漬した状態で、15~35時間放置することにより、崩壊した米が得られる。
【0039】
米の水酸化カリウム水溶液への浸漬時間は、16時間~32時間であることが好ましく、18時間~30時間であることがより好ましく、20時間~28時間であることがさらに好ましく、およそ24時間であることが最も好ましい。
【0040】
米を浸漬する温度は、好ましくは5~25℃であり、より好ましくは10~25℃であり、さらに好ましくは15~25℃である。
【0041】
アルカリ崩壊試験は、製造に用いる原料である米からサンプリングして行う。アルカリ崩壊試験は、1つのロットの米に対して1回でもよいが、例えば、好ましくは2~10回、より好ましくは3~9回、さらに好ましくは3~6回、アルカリ崩壊試験を行い、その平均の崩壊度レベルを算出するのが好ましい。これにより、続く工程の製造条件の選定がより正確に実施できる。また、米からのサンプリングは、1箇所から行ってもよいし、複数箇所から行ってもよいが、ブレンド米の場合は複数箇所から行うことが好ましい。特に、ブレンド米の場合、3回サンプリングを行い、1つのサンプリング試料において3回のアルカリ崩壊試験を行うことが好ましい。
【0042】
よって、一実施形態において、アルカリ崩壊試験は、1.5質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を25℃で、24時間浸漬した場合の米の溶解の程度により崩壊度レベルを定めるものである。
【0043】
上述のアルカリ崩壊試験を経た米について、所定の基準に基づき、崩壊度レベルを算出する。所定の基準について、
図1を用いて、米の崩壊度レベルについてより具体的に説明する。
図1は、10段階で評価された米の崩壊の程度を米の画像で示している。
図1において、10段階評価は1~10で表されており、その1~10が崩壊の程度を示す崩壊度レベルである。
【0044】
図1の米の画像に示すように、1から10への順で、米が水に膨潤・溶解していき、米の崩壊が進む。崩壊度レベルが1~3である場合は米の膨潤が段階的に進んでいる状態、崩壊度レベルが4である場合は米の膨潤がピークに達した状態、崩壊度レベルが5~9である場合は膨潤のピークを越えて米の溶解が段階的に進んでいる状態、崩壊度レベルが10である場合は全ての米が溶解した状態をそれぞれ示している。これらの崩壊の程度は、アルカリ崩壊試験を行った容器内の状態(米の状態および水溶液の状態)を観察し、米の原型がある(残っている)か、濃白濁領域があるか、薄白濁領域があるか、半透明領域があるか、を基準として判断している。
【0045】
なお、上記基準において、「米の原型がある(下記表1中の「原型の米」)」とは、米の輪郭(形状)が残っている状態であり、例えば、米の輪郭が元の米の輪郭よりも小さくなっていた場合であっても、米の輪郭が確認できた場合は「米の原型がある」として評価する。また、上記基準において、「濃白濁領域」および「薄白濁領域」とは、米が膨潤している状態を示しており、米の膨潤が進むにつれて、「濃白濁領域」から「薄白濁領域」へと変化していく。「半透明領域」とは、米が溶解した状態を示しており、半透明のゼリー状となった状態である。なお、試験に用いた水酸化カリウム水溶液の量、米の量、容器サイズにもよるが、上記「米の原型」、「濃白濁領域」、「薄白濁領域」、「半透明領域」の他に、アルカリ崩壊試験を行った容器内には、用いた水酸化カリウム水溶液の領域(透明領域)が存在しうる。本発明では、「米の原型」の有無、「濃白濁領域」と「薄白濁領域」との存在比、「薄白濁領域」と「半透明領域」との存在比に基づき、崩壊度レベルを1~10に評価する。
【0046】
表1には、各崩壊度レベルを判断する際に、アルカリ崩壊試験を行った容器内で観察される領域を表している。各項目(領域)において「○」とされている場合、その項目(領域)と判断されるものが観察されることを示す。例えば、崩壊度レベル1では、透明領域と、米粒の原型と、濃白濁領域とが観察されている。ただし、表1の各項目(領域)において特に記載がない(「○」の表記がない)場合であってもそれらの領域が観察されることを制限するものではない。下記表における各項目(領域)の記載は、崩壊度レベルを判断するために主として基準とするものを例示している。
【0047】
表2には、各崩壊度レベルを判断する際に、判断する基準を説明したものである。これら表1および表2の判断基準は、
図1にも示したものである。
【0048】
【0049】
【0050】
ここで、評価基準にある「濃白濁領域」と「薄白濁領域」と「半透明領域」とは、目視で色調により判断でき、目視により「濃白濁領域」と「薄白濁領域」と「半透明領域」との各面積を比較することにより、評価基準にある面積比「濃白濁領域/薄白濁領域」と、「薄白濁領域/半透明領域」とが算出できる。また、例えば、アルカリ崩壊試験を行った容器の輝度ヒストグラムに基づき、輝度により「濃白濁領域」と「薄白濁領域」とを区別することもできる。
【0051】
アルカリ崩壊試験を行った容器の輝度ヒストグラムは、特に制限されないが、以下の方法により取得できる。
【0052】
まず、アルカリ崩壊試験を行った容器を透過光または拡散光を用いて、容器の天面または底面から、デジタルカメラ等によって撮影する。得られたアルカリ崩壊試験を行った容器の画像を、解析ソフト(例えば、フリーソフトのImageJ)を用いて、輝度ヒストグラムに変換する。輝度ヒストグラムは、画像を構成する各ピクセルの輝度を、輝度0から輝度255の256階調に振り分け、横軸を輝度、縦軸をピクセル数(画素数とも呼ぶ)とすることにより得られる。
【0053】
256階調の輝度を横軸にとったピクセル数基準の輝度ヒストグラムを輝度に基づいて、「濃白濁領域」、「薄白濁領域」、ならびに「半透明領域」に相当する第1~第3の3区間に分割する。この際、3区間に分割する前に、輝度が最も低い所定の区間を排除してもよい。例えば、輝度ヒストグラムを3個の区間に分割する前に0階調~34階調の区間を削除し、その後35階調~255階調を第1区間、第2区間及び第3区間に分割してもよい。このとき、各区間に含まれる階調の数が、できるだけ均等になるように分割することが好ましい。ここで、透過光を用いた場合、「濃白濁領域」が第1区間であり、「薄白濁領域」が第2区間であり、ならびに「半透明領域」が第3区間である。一方、拡散光を用いた場合、「濃白濁領域」が第3区間であり、「薄白濁領域」が第2区間であり、ならびに「半透明領域」が第1区間である。
【0054】
一実施形態において、輝度ヒストグラムから輝度が最も低い0階調~34階調の区間を排除し、さらにヒストグラムの輝度を基準に、35階調~107階調の第1区間と、108階調~181階調の第2区間と、182階調~255階調の第3区間と、の3つの区間に分割する。このとき、それぞれの区間における合計ピクセル数に基づき、輝度比「濃白濁領域/薄白濁領域」、「薄白濁領域/半透明領域」が算出できる。
【0055】
なお、本発明において、上記した評価基準による崩壊度レベルを算出する方法だけでなく、崩壊度レベルを算出する方法として、
図1に示す米の画像に基づき、崩壊度レベルを算出する方法であってもよい。具体的には、
図1に示す米の画像と、所定時間経過後(すなわち、15~35時間経過後)のアルカリ崩壊試験を行った容器内の状態とを目視で比較し、所定時間経過後のアルカリ崩壊試験を行った容器内の状態が
図1に示す米の画像(各崩壊度レベルの米の画像)のどの段階であるかを判断して崩壊度レベルを算出してもよい。この場合、評価基準を参考にすることで、
図1に示す米の画像の各崩壊度レベルの状態が理解しやすくなり、アルカリ崩壊試験を行った容器内の状態がより正確に判断できる。
【0056】
以上のように、所定の時間、水酸化カリウム水溶液に浸漬した米の状態を上記評価基準に従い評価し、米の崩壊度レベルを算出する。これにより、アルカリ崩壊試験による崩壊度レベルが識別された米を米含有樹脂組成物の原料として用いることができる。
【0057】
〈混練工程〉
次に、アルカリ崩壊試験を行ったことにより崩壊度レベルが識別された米を用いて、米と、樹脂と、必要に応じて相溶化剤と、を混練する混練工程を行う。ここで、混練工程は、崩壊度レベルに応じて製造条件を選定するのが好ましい。よって、一実施形態によれば、本発明の米含有樹脂組成物の製造方法は、混練工程において、米のアルカリ崩壊試験の崩壊度レベルに応じて、混練する製造条件を選定する選定工程をさらに含む。すなわち、製造条件は、崩壊度レベルに基づき、樹脂と米とを混練する製造条件を選定する。
【0058】
まず、本発明の米が製造される装置の好ましい実施形態について説明する。本発明の米含有樹脂組成物の製造方法においては、二軸混練装置が好ましく用いられる。
【0059】
〈製造装置〉
(二軸混練装置100)
上述した材料(米および樹脂および、必要に応じて相溶化剤)の混練は二軸混練装置100によって行われる。二軸混練装置100は、米含有樹脂組成物の製造装置に相当する。二軸混練装置100は、
図2~
図6に示すように第1収容部10と、投入部20と、回転部30(
図6参照)と、脱水部50と、第1脱気部60と、第2脱気部70と、排出部80と、冷却部90と、切断部110と、を有する。
【0060】
なお、二軸混練装置100の説明にあたり、図面には直交座標系を表記している。Xは後述する回転部30の回転軸の延在する方向であり、長手方向Xとする。Yは長手方向Xと交差する第1収容部10の幅方向に相当し、幅方向Yとする。Zは長手方向Xおよび幅方向Yと交差する方向であり、高さ方向Zとする。以下、詳述する。
【0061】
(第1収容部10)
第1収容部10は、米と、樹脂と、必要に応じて相溶化剤と、を含む材料を、水とともに収容する第1収容空間S1(
図5参照)を形成する。第1収容部10は、二軸混練装置100を設置する空間の長手方向Xに延在するように長尺に構成している。
【0062】
第1収容部10は、回転部30を構成する複数の回転部材31、32、33、34、35、36、37、38、39、41、42を収容する第1収容空間S1を形成するように構成している(
図6参照)。
図5に示すように、第1収容部10によって形成される第1収容空間S1は投入部20の直下から第2脱気部70と接続される部位まで一続きになるように構成している。第1収容空間S1は、本実施形態において回転部30の回転部材の回転軸を二軸設けるように、断面の内周部分を、2つの円弧を合わせたような形状に構成している。第1収容部10には第1収容空間S1の温度を調整するためのヒーター等の加熱装置(図示省略)を設けることができる。上述したヒーターは第1収容部10の第1収容空間S1の長手方向Xにおいて後述する回転部材の特定の区間毎に温度を調整できるように例えば長手方向Xに複数配置することができる。
【0063】
(投入部)
投入部20は、
図2に示すように第1収容空間S1に上述した材料と水とを投入可能なホッパーを備える。投入部20のホッパーは、上述した米、樹脂(必要に応じて相溶化剤)および水を投入できるように漏斗状に形成している。
【0064】
(回転部)
回転部30は、第1収容空間S1において回転可能に配置される。回転部30は、複数の回転部材31~39、41、42を長手方向Xに平行な方向を回転軸として回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材31~39、41、42は、
図6に示すように幅方向Yに沿って2軸並べて設けている。回転部材31は、本明細書において第1スクリュー、回転部材32は第1パドル、回転部材33は第2スクリュー、回転部材34は第2パドル、回転部材35は第4スクリュー、回転部材41は第6スクリュー、回転部材42は第7スクリューに相当する。以下に各々の回転部材について詳述する。
【0065】
(回転部材31)
回転部材31は、第1収容部10の第1収容空間S1において投入部20のホッパーの直下に配置している。回転部材31は、スクリューを形成するように構成している。本明細書において回転部材31が配置される第1収容空間S1の部位は材料と水とが投入される材料投入部と称する。
【0066】
(回転部材32、33)
回転部材32は、
図6に示すように第1収容空間S1の回転部材31よりも下流側において回転部材31に隣接して設けている。回転部材32は、板状部材を回転軸に沿って並べて配置するように構成している。回転部材32は、回転部材31と回転部材33との間に配置している。
【0067】
回転部材33は、第1収容空間S1の回転部材32よりも下流側において回転部材32に隣接して設けている。回転部材33は、回転部材31と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の溝を浅く形成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の径方向における最外周と最内周の差が大きくなるように構成している。回転部材33は、回転部材31と最外周の大きさが同等で、最内周が回転部材31よりも小さくなるように構成している。回転部材32、33が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された樹脂を溶解させる樹脂溶解部と称することができる。
【0068】
(回転部材34)
回転部材34は、回転部材32と同様に板状部材を回転軸に沿って複数並べるように配置しており、第1収容空間S1において回転部材33よりも回転軸の下流側に配置するように構成している。回転部材34は、
図6において板状部材の板厚が一種類となるように図示しているが、一種類でなくてもよい。回転部材34は、回転部材32よりも薄く形成することによってせん断応力をより発揮させて材料を分散させるとともに均一な撹拌を行うように構成している。回転部材34が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された材料を混練する混練部と称することができる。回転部材33と回転部材34との境界近傍には、上述した材料に加えられた水等の気液成分を排出するために脱水部50を接続するように構成している。詳細は後述する。
【0069】
(回転部材35)
回転部材35は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側において回転部材34に隣接して設けている。回転部材35は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材35は、螺旋の溝の深さが回転部材33と同等になるように構成している。回転部材35は、第1収容空間S1において混練された材料を脱気する第1脱気部60と接続される。詳しくは後述する。
【0070】
(回転部材36~39)
回転部材36、37は、第1収容空間S1の回転部材35の下流側において回転部材35に隣接して設けている。回転部材36、37は、回転部材32と同様に板状部材を並べるように構成している。回転部材36、37には起伏の小さい螺旋を形成しており、回転部材36と回転部材37の螺旋の回転方向は異なるように構成している。
【0071】
回転部材38、39は、第1収容空間S1の回転部材37よりも下流側において回転部材37に隣接して設けている。回転部材38、39は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成している。回転部材38、39のスクリューは螺旋の溝の深さを回転部材33と同様に構成している。回転部材38と回転部材39は螺旋の回転方向が逆転するように構成している。
【0072】
このように回転部材36、38と回転部材37、39の螺旋の回転方向を逆転させることによって、回転部材35から送られる材料は回転部材37、39で回転軸の上流側に一時的に押し返されるようにしたうえで下流側に移動する。これにより、材料が回転部材36~39に比較的長く滞留し、材料の密度が向上するように圧縮が行われる。回転部材36~39が配置される第1収容空間S1の部位は材料の圧縮を行う圧縮部と称することができる。
【0073】
(回転部材41、42)
回転部材41は、第1収容空間S1の回転部材35、39よりも下流側において回転部材39に隣接して設けている。回転部材42は、第1収容空間S1の回転部材41よりも下流側において回転部材41に隣接して設けている。回転部材41、42は、回転部材33と同様にスクリューを形成するように構成しており、回転部材42は回転部材41よりも螺旋のピッチが短くなるように構成している。回転部材41、42は第1収容空間S1に収容された材料の脱気を行う第2脱気部70と接続される。
【0074】
(脱水部50)
脱水部50は、第1収容部10で混練される材料から発生する水分等の気液成分を排出(脱水)するように構成している。脱水部50は、
図6に示すように回転部材33と回転部材34との境界近傍において回転部材33、34の回転軸と交差する方向から第1収容部10に接続している。第1収容空間S1における回転部材33と回転部材34の境界付近では、少なくとも混練の際の第1収容空間S1の内部圧力が飽和蒸気圧となるように構成できる。
【0075】
脱水部50は、
図6に示すようにスクリュー51(第3スクリューに相当)と、第2収容部52と、駆動部53と、を備える。スクリュー51は、回転部材31~39、41、42と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部53は、スクリュー51を回転させるモーターを備えるように構成している。第2収容部52は、
図6に示すように第1収容部10と接続され、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を設けた筐体などを備える。第2収容部52は、第2収容空間S2から第1収容空間S1で発生した水分を排出する。第2収容部52には第1収容空間S1で発生した水分を排出可能な開口部(図示省略)を設けている。開口部は、第2収容部52の上部等に設けることができる。
【0076】
(第1脱気部60)
第1脱気部60は、第1収容部10において回転部材35が配置される近傍に接続するように構成している。第1脱気部60は、
図6に示すようにスクリュー61(第5スクリューに相当)と、第3収容部62と、駆動部63と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部63は、脱水部50と同様にスクリュー61を回転駆動させるモーターなどを備えるように構成している。第3収容部62は、回転部材35の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を設けた筐体などを備える。第3収容部62は、第3収容空間S3を介して第1収容空間S1で発生した気液成分を吸引可能な真空ポンプなどと接続している。
【0077】
(第2脱気部70)
第2脱気部70は、第1収容部10において回転部材41が配置される近傍において接続するように構成している。第2脱気部70は、
図6に示すようにスクリュー71(第8スクリューに相当)と、第4収容部72と、駆動部73と、を、備える。スクリュー71は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部73は、第1脱気部60と同様にスクリュー71を回転駆動させるモーターなどを備えるように構成している。第4収容部72は、回転部材41の近傍で第1収容部10と接続され、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を設けた筐体などを備える。第4収容部72は、第4収容空間S4を介して第1収容空間S1で発生した気液成分を吸引可能な真空ポンプなどと接続している。なお、第2収容部52、第3収容部62、第4収容部72は、
図6において便宜上、簡略化して図示している。
【0078】
(排出部80)
排出部80は、
図2等に示すように第1収容部10の下流側における外側に隣接して設けている。排出部80は、第1収容部10の第1収容空間S1において脱気された材料を紐状に形成するために設けられる。排出部80は、本実施形態において第1収容部10の長手方向Xにおける端部であって第1収容部10の第1収容空間S1と外部とを繋ぐ部位に設けた複数の穴形状を設けた部材を備えるように構成している。排出部80は、第1収容部10に配置された回転部材31~39、41、42などと同様にヒーターなどの加熱装置を設けることによって加温することができる。
【0079】
(冷却部90)
冷却部90は、第1収容部10から排出された紐状の材料を冷却するために設けられる。冷却部90は、
図2に示すようにコンベヤー91と、液体供給部92と、気体供給部93と、を備える。
【0080】
コンベヤー91は、排出部80に隣接して設けている。コンベヤー91は、
図3に示すように排出部80から排出された材料を切断部110まで搬送するように構成している。コンベヤー91は、本実施形態において
図3に示すように長手方向Xから高さ方向Zの正の方向に向かって傾斜した斜め方向に沿って延在するように構成している。ただし、コンベヤー91の延在方向は一例であって材料を切断部110に搬送できれば、コンベヤーの具体的な搬送方向は
図3等に限定されない。
【0081】
液体供給部92は、コンベヤー91上で搬送される材料に比較的温度の低い冷却水を供給するように構成している。液体供給部92は、ホース等によって冷却水の供給源と接続された噴射ノズルをコンベヤー91の搬送方向に複数配置することによって構成している。
【0082】
気体供給部93は、所定の温度に調整された空気等の気体をコンベヤー91上で搬送される材料に供給するように構成している。気体供給部93は、不図示のダクトと、ダクトに接続され、気体をコンベヤー91上の材料に向けて噴射可能なブロワーを備えるように構成している。
【0083】
(切断部110)
切断部110は、排出部80から排出され、冷却部90において冷却された材料を所定の長さにて切断するように構成している。切断部110は、
図2に示すように材料を送る送りローラー111と、送られた材料を切断する刃物を備えた切断ローラー112と、を備えることができる。また、冷却された材料は、乾燥を行うチャンバー等の設備(乾燥部と呼ぶことができる)において乾燥工程を実施することができる。
【0084】
〈製造条件〉
次に、本実施形態に係る米含有樹脂組成物の製造方法における製造条件について説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る米含有樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。
【0085】
まず、本発明の製造方法では、原料として用いる米のアルカリ崩壊試験が行われる(ST-X)。アルカリ崩壊試験については上述したため、省略する。
【0086】
次に、米のアルカリ崩壊試験による崩壊度レベルに応じて、下記の製造条件から、目的とする品質に適合するように、製造条件を選定する(ST-Y)。米のアルカリ崩壊試験により米の崩壊度レベルが確定した後、二軸混練装置100を用いて、米含有樹脂組成物を製造する。ここで、本発明では、米の崩壊度レベルに応じて製造条件を選定するのが好ましく、米の崩壊度レベルに応じて、原料として用いる樹脂の種類に基づき、製造条件を選定するのがさらに好ましい。すなわち、一実施形態において、製造条件は、崩壊度レベルと、用いる樹脂の種類とに基づき、樹脂と米とを混練する製造条件を選定する。
【0087】
本発明の製造方法において、米の崩壊度レベルに応じて製造条件を選定するが、例えば、米の崩壊度レベルにより目的とする品質の原料として適しているかどうかを判定してもよい。例えば、目的とする品質の原料として不適であると判断される場合、その米を原料として用いないとする判断をしてもよい。米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合、例えば、米のアルカリ崩壊度が3以上であるのが好ましく、4以上であるのがより好ましく、5以上であるのがさらに好ましい。例えば、樹脂の原料としてポリエチレンを用いる場合、米のアルカリ崩壊度が3以上であるのが好ましく、4以上であるのがより好ましく、5以上であるのがさらに好ましい。例えば、樹脂の原料としてポリプロピレンを用いる場合、米のアルカリ崩壊度が4以上であるのが好ましく、5以上であるのがより好ましく、6以上であるのがさらに好ましい。一実施形態によれば、米は、前記崩壊度レベルが5以上の米が選択される。
【0088】
二軸混練装置100では投入部20のホッパーから米、上述した樹脂および水、必要に応じて相溶化剤が投入される(ST1)。この時点で第1収容部10の第1収容空間S1に配置された回転部材31~39、41、42は所定の温度に加温した状態に設定することができる。
【0089】
ここで、米および樹脂は、米含有樹脂組成物の構成成分であるため、米および樹脂の投入量が、それぞれ、米含有樹脂組成物中の米および樹脂の含有量となる。米の投入量(絶乾重量)は、米含有樹脂組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは20~90質量%であり、特に好ましくは30~82質量%であり、さらに好ましくは40~80質量%であり、特に好ましくは45~78質量%であり、最も好ましくは50~75質量%である。樹脂の投入量は、米含有樹脂組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは10~80質量%であり、特に好ましくは10~70質量%であり、さらに好ましくは12~65質量%であり、特に好ましくは15~60質量%であり、最も好ましくは20~55質量%である。相溶化剤の投入量は、米含有樹脂組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1~20質量%であり、特に好ましく0.5~15質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%であり、特に好ましくは1.5~8質量%であり、最も好ましくは2~6質量%である。
【0090】
ここで、投入される水の量は、米の質量(100質量%)に対して0.1~25質量%とすることができる。樹脂種がポリプロピレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5~23質量%であり、特に好ましくは1~22質量%であり、さらに好ましくは3~20質量%であり、特に好ましくは7~18質量%であり、最も好ましくは5~15質量%である。樹脂種がポリエチレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5~23質量%であり、特に好ましくは0.8~20質量%であり、さらに好ましくは1~18質量%であり、特に好ましくは2~15質量%であり、最も好ましくは3~10質量%である。
【0091】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、8~15質量%(好ましくは10~15質量%)であり、米の崩壊度レベルが6以10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、5~12質量%(好ましくは6~10質量%)である。
【0092】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、1~15質量%(好ましくは5~15質量%)であり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、1~10質量%(好ましくは3~5質量%)である。
【0093】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリプロピレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが5以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが5以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、10~15質量%であり、米の崩壊度レベルが6以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、5~10質量%である。
【0094】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリエチレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが4以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが4以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、5~10質量%であり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、水の投入量は、米の質量(100質量%)に対して、3~5質量%である。
【0095】
以上のように、一実施形態によれば、米の崩壊度レベルに応じて、製造条件として、樹脂と米とを混練する際の水の添加量が選定される。すなわち、一実施形態において、米の崩壊度レベルに応じて選定される製造条件として、樹脂と米とを混練する際の水の添加量を選定する。
【0096】
次に、投入部20のホッパーから投入された樹脂と水とは回転部材31に送られて樹脂溶解部に相当する回転部材32、33に搬送される。第1収容空間S1の樹脂溶解部の近傍は約200℃に加温された状態において回転部材32、33によって上述した材料が水分と混合され、溶解する(ST2)。この際に材料に含まれる米は加温された状態で水と混合されることにより、アルファ化が開始される。
【0097】
そして、材料は混練部に相当する回転部材34へと送られ、混練が行われる(ST3)。混練部に相当する回転部材34では、上述のように回転部材34が樹脂溶解部に相当する回転部材32よりも薄く構成されることによって材料の分散と撹拌が促進される。回転部材34を通過した材料はさらに回転部材35に送られる。
【0098】
また、材料が回転部材33から回転部材34へ送られる際に材料に含まれる水分は脱水部50によって脱水される。このとき、スクリュー51が脱水部50の入り口付近で回転することによって材料の固形成分は第1収容空間S1に残ったまま下流側に送られ、水分等の気液成分が第2収容部52の開口部からある程度排出される。
【0099】
ここで、回転部材34において、材料(詳しくは、米および樹脂、必要に応じて相溶化剤)が加温される温度(すなわち、混練時の混練部温度)は、120~250℃であるのが好ましい。樹脂種がポリプロピレンの場合、混練時の混練部温度は、130~230℃であるのが好ましく、140~220℃であるのがより好ましく、145~210℃であるのがさらに好ましく、150~205℃であるのが特に好ましく、155℃以上200℃未満であるのが最も好ましい。樹脂種がポリエチレンの場合、混練時の混練部温度は、130~220℃であるのが好ましく、140~210℃であるのがより好ましく、150~205℃であるのがさらに好ましく、160~200℃であるのが特に好ましく、180℃超え195℃であるのが最も好ましい。
【0100】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、150~220℃(好ましくは175℃超え210℃以下、より好ましくは180~200℃)であり、米の崩壊度レベルが6以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、120~200℃(好ましくは130℃以上180℃未満、より好ましくは150~175℃)である。
【0101】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、160~220℃(好ましくは175~200℃、より好ましくは180~195℃)であり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、120℃以上180℃未満(好ましくは140℃以上180℃未満、より好ましくは150~175℃)である。
【0102】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリプロピレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが5以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが5以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、150~220℃(好ましくは175℃超え200℃、より好ましくは180~190℃)であり、米の崩壊度レベルが6以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、120~200℃(好ましくは130℃以上180℃未満、より好ましくは150~175℃)である。
【0103】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリエチレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが4以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが4以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、160~220℃(好ましくは175~200℃、より好ましくは180~195℃)であり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、120℃以上180℃未満(好ましくは140℃以上180℃未満、より好ましくは150~175℃)である。
【0104】
以上のように、一実施形態によれば、米の崩壊度レベルに応じて、製造条件として、樹脂と米とを混練する混練温度が選定される。すなわち、一実施形態において、米の崩壊度レベルに応じて選定される製造条件として、樹脂と米とを混練する混練温度を選定する。
【0105】
また、回転部材34において、材料(詳しくは、米および樹脂、必要に応じて相溶化剤)が混練される回転数(すなわち、混練部の混練回転数)は、200~400rpmであるのが好ましく、220~350rpmであるのがより好ましい。樹脂種がポリプロピレンの場合、混練部の混練回転数は、200~400rpmであるのが好ましく、240~380rpmであるのがより好ましく、250~350rpmであるのがさらに好ましく、280~340rpmであるのが特に好ましく、300~330rpmであるのが最も好ましい。樹脂種がポリエチレンの場合、混練部の混練回転数は、200~400rpmであるのが好ましく、210~360rpmであるのがより好ましく、220~350rpmであるのがさらに好ましく、230~320rpmであるのが特に好ましく、260~310rpmであるのが最も好ましい。
【0106】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練回転数は、230~320rpm(好ましくは250~310rpm)であり、米の崩壊度レベルが6以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、280~350rpm(好ましくは300rpm~330rpmである。
【0107】
一実施形態において、米の崩壊度レベルが1以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練回転数は、200~300rpm(好ましくは210~280rpm)であり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、260~350rpm(好ましくは270~340rpm)である。
【0108】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリプロピレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが5以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが5以上6未満で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練回転数は、250~320rpm(好ましくは290~310rpm)であり、米の崩壊度レベルが6以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリプロピレンの場合、混練部の混練部温度は、280~350rpm(好ましくは290rpm~340rpmである。
【0109】
一実施形態においては、米含有樹脂組成物の外観を品質として重要視する場合がある。このとき、樹脂としてポリエチレンを用いる場合、米の崩壊度レベルが4以上であることが好ましい。この実施形態において、米の崩壊度レベルが4以上7未満で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練回転数は、230~270rpmであり、米の崩壊度レベルが7以上10以下で、原料として用いる樹脂がポリエチレンの場合、混練部の混練部温度は、250~350rpm(好ましくは270~340rpm)である。
【0110】
以上のように、一実施形態によれば、米の崩壊度レベルに応じて、製造条件として、樹脂と米とを混練する混練回転数が選定される。すなわち、一実施形態において、米の崩壊度レベルに応じて選定される製造条件として、樹脂と米とを混練する混練回転数を選定する。
【0111】
回転部材35では、材料が回転部材35によって下流側に送られつつ、第1脱気部60によって材料の気液成分がさらに排出される(ST4)。第1脱気部60は、ポンプ等に接続されて材料の気液成分が吸引される一方で、スクリュー61によって材料の固形成分は第1収容空間S1に残り、圧縮部に相当する回転部材36~39に送られる。
【0112】
圧縮部に相当する回転部材36~39では回転部材37、39の位置において材料が上流側に送り戻されたうえで下流側に送られることによって、材料の密度が高くなるように圧縮の工程が行われる(ST5)。
【0113】
回転部材36~39を通過した材料は、回転部材41、42において排出部80に向けてさらに送られる。第2脱気部70では、ピッチの異なる回転部材41、42のうち、回転部材41の位置においてポンプ等によって材料の気液成分がさらに吸引されて脱気される(ST6)。材料は、回転部材42によって回転部材41よりも送り速度が上昇しつつ、排出部80において複数の紐形状になって第1収容空間S1の外部に排出される。
【0114】
冷却部90では、紐状の材料がコンベヤー91によって切断部110に向けて搬送される。この間に材料は、液体供給部92によって冷却水を吹きかけられて冷却され、その後、気体供給部93において冷却風に曝されることによって冷却される(ST7)。
【0115】
冷却部90を経た紐状の材料は、送りローラー111によって搬送され、切断ローラー112によって所定の長さに切断される(ST8)。切断部110によって切断された材料は平面状に引き延ばし、乾燥工程(ST9)を経ることによって、米含有樹脂組成物を上述したレジ袋等に好適に成形可能な形状に形成することができる。
【0116】
本実施形態に係る米含有樹脂組成物の製造方法は、米と樹脂とを含む材料を投入された水の存在下で混練する。
【0117】
また、上述した材料は相溶化剤を含む。これにより、米や樹脂などの材料を均一に混合することを促進できる。
【0118】
また、米は製造工程においてアルファ化するように構成している。これにより、米を上述した樹脂と混合して米含有樹脂組成物を生成(製造)することができる。
【0119】
また、混練は二軸混練装置100を用いることによって、上述した米を含む材料を混練して樹脂組成物を生成(製造)することができる。
【0120】
また、二軸混練装置100は脱水を行う脱水部50を備える。これにより、米から樹脂組成物を生成(製造)する場合に不要な水分などの気液成分を取り除くことができる。
【0121】
また、脱水部50では飽和蒸気圧下において脱水を行うように構成している。そのため、米に大量の水分を投入しても不要な水分等の気液成分を取り除くことができる。
【0122】
また、二軸混練装置100は2つの脱気部として第1脱気部60と第2脱気部70を備えるように構成している。そのため、比較的量の多い水を用いて米と樹脂の混練を行った際に、第1脱気部60と第2脱気部70を用いることによって樹脂組成物に不要な水分等の気液成分を取り除くことができる。
【0123】
また、二軸混練装置100は第1収容部10と、投入部20と、回転部30と、を有する。第1収容部10は材料と水を収容可能な第1収容空間S1を形成する。投入部20は第1収容空間S1において材料および水を投入可能に構成している。回転部30は、第1収容空間S1において回転可能に配置され、複数の回転部材31~39、41、42を回転部材31~39、41、42の回転軸に沿って並べて配置している。回転部30は、回転部材31~39、41、42が回転する回転軸を2軸設けている。回転部材31~39、41、42は、螺旋形状を備え、投入部20の直下に配置された回転部材31と、回転部材31よりも回転軸の下流側に配置され、回転部材31よりも螺旋の溝が浅く形成された回転部材33を備える。このように構成することによって、米が通常、二軸混練装置ではスクリューによって下流側に送り難くても、回転部材31によって米を下流側に送るようにして混練を行うことによって米含有樹脂組成物を生成(製造)することができる。
【0124】
また、回転部材31~39、41、42は、回転部材31と回転部材33の間に配置され、板状部材を回転軸に並べて配置した回転部材32と、回転部材33よりも回転軸の下流側に配置される板状の回転部材34と、を備える。回転部材33と回転部材34の近傍には、脱水部50を接続している。脱水部50は、スクリュー51と、第2収容部52と、を備える。スクリュー51は、回転軸と交差する幅方向Yに平行な方向を回転軸として回転し、対となるように構成している。第2収容部52は、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を備えるとともに第1収容部10と接続され第1収容空間S1で発生した水分を排出可能な開口部を設けている。このように構成することによって、材料に含まれる固形成分を第1収容部10の第1収容空間S1に残しつつ、材料に含まれる不要な水分等の気液成分を取り除くことができる。
【0125】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側に設けられる回転部材35を備える。回転部材35の近傍には、第1脱気部60を接続している。第1脱気部60は、スクリュー61と、第3収容部62と、を備える。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第3収容部62は、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプなどと接続される。このように構成することによって、脱水部50と同様に材料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、材料に含まれる不要な気液成分をさらに排出するようにできる。
【0126】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材35よりも下流側に設けられる回転部材41と、回転部材41に隣接して設けられる回転部材42と、を備える。回転部材41の近傍には、第2脱気部70を接続している。第2脱気部70は、スクリュー71と、第4収容部72と、を備える。スクリュー71は、回転部材41の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第4収容部72は、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプと接続される。このように構成することによって、第1脱気部60と同様に材料の固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、材料の不要な気液成分をさらに排出することができる。また、第2脱気部70を回転部材42ではなく、螺旋のピッチが比較的大きい回転部材41の近傍で接続することによって、不要な気液成分を第1収容空間S1から排出し易くすることができる。
【0127】
上述した本発明の製造方法によれば、崩壊度レベルに応じた製造条件が予め選定できるため、製造時に調整することがなく、ばらつきなく、高い品質の米含有樹脂組成物を製造することができる。例えば、目的の品質が凝集物が低減され、外観が向上した米含有樹脂組成物であれば、そのような製造条件を検討または選定すればよい。また、崩壊度レベルに応じた製造条件により余分な時間、エネルギーを消費することが回避でき、生産性を高めることができる。ここで、米含有樹脂組成物の生産能力が140kg/h(好ましくは150kg/h)を超えていれば、生産性が十分確保されており、先産性が高いと評価できる。本発明の製造方法によれば、米含有樹脂組成物の生産能力は、好ましくは140kg/hを超え、より好ましくは150kg/hを超え、さらに好ましくは155kg/h以上であり、特に好ましくは160kg/h以上である。
【0128】
<成形品の製造方法>
本発明の一態様は、上記の製造方法によって樹脂組成物を得、当該樹脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法である。当該樹脂組成物を成形することにより、湾曲部や凹凸部を有する複雑な形状の成形品を成形することが容易となる。
【0129】
成形を行う際の温度は、得られる成形品の退色抑制と強度とを両立する観点から、120~190℃であることが好ましく、140~180℃であることが好適である。
【0130】
本発明の一実施形態に係る成形品の用途としては、例えば、電子機器や家電製品などの筐体、補強材、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品、日用雑貨品、等が挙げられる。
【0131】
本発明の一実施形態において、成形は、ブロー成形、射出成形などの種々の方法が挙げられる。
【0132】
本発明の米含有樹脂組成物の製造方法によれば、目的とする品質の米含有樹脂組成物またはその成形品を得ることができる。ここで、目的とする品質としては、外観が挙げられる。本発明においては、用途に応じた品質(外観)で製造できればよく、外観評価において粒が存在していても問題はない。成形品において外観に生じる粒は米から由来しているため、例えば、バイオマス材料であることを外観から表現することができる。
【0133】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0134】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0135】
[1]米と樹脂とを混練する混練工程を有し、前記米は、アルカリ崩壊試験により崩壊度レベルが識別された米であり、前記アルカリ崩壊試験は、0.5~3質量%濃度の水酸化カリウム水溶液に、米を5~25℃で、15~35時間浸漬した場合の米の溶解の程度により前記崩壊度レベルを定めるものである、米含有樹脂組成物の製造方法。
【0136】
[2]前記混練工程において、前記米のアルカリ崩壊試験の崩壊度レベルに応じて、混練する製造条件を選定する工程を有する、上記[1]に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【0137】
[3]前記製造条件として、前記樹脂と前記米とを混練する混練温度を選定する、上記[2]に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【0138】
[4]前記製造条件として、前記樹脂と前記米とを混練する際の水の添加量を選定する、上記[2]または[3]に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【0139】
[5]前記樹脂は、MFR(190℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリエチレンおよびMFR(230℃・2.16kgf)が0.1~100(g/10min)のポリプロピレンからなる群より選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【0140】
[6]前記米は、前記崩壊度レベルが5以上の米が選択される、上記[1]~[5]に記載の米含有樹脂組成物の製造方法。
【0141】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法によって米含有樹脂組成物を得て、前記米含有樹脂組成物を成形品に成形することを有する、米含有樹脂成形品の製造方法。
【0142】
[8]前記成形が、射出成形を含む、上記[7]に記載の米含有樹脂成形品の製造方法。
【実施例0143】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
次に本発明に係る米含有樹脂組成物の性能について実験を行ったので、以下に説明する。
【0145】
以下の材料を用いて、米含有樹脂組成物を製造した。なお、ブレンド米とは、複数の銘柄を混合したものである。用いた米は、平均サイズが、長さ4.5~5.5mm、幅2.0~3.0mm、厚さ1.5~2.5mmである。
(1)米
・中白米A(精米、ブレンド米、粒が不均等)
・中白米B(精米、ブレンド米、粒が不均等)
・中白米C(精米、ブレンド米、粒が不均等)
・中白米D(精米、ブレンド米、粒が不均等)
・ひすい米(精米、ブレンド米、粒が不均等)
・キヌヒカリ(精米、単一品種、粒が均等)
・ひとめぼれ(精米、単一品種、粒が均等)
(2)樹脂
・ポリプロプレン(PP)ウインテックWSX-03(日本ポリプロ株式会社製)
・ポリエチレン(PE):エボリューSP4030(株式会社プライムポリマー)
(3)相溶化剤
・製品名リケエイドMG-441P(理研ビタミン株式会社製)。
【0146】
各米について、下記の方法にしたがってアルカリ崩壊試験を行い、崩壊度レベルを評価した。なお、各米について3回ずつアルカリ崩壊試験を行い、崩壊度レベルの平均値を算出した。算出した崩壊度レベルは、表3および表4に示す。
【0147】
[アルカリ崩壊試験A]
10mLの1.5質量%のKOH水溶液と、3粒かつ0.05gの米とを、透明ガラス製丸底試験管(直径18mm)に入れ、25℃で24時間、静置した。その後、試験管の中の米粒の状態について、目視で確認し、
図1に記載の基準(詳しくは、上記表1および表2)に従って評価を行った。
【0148】
[実施例1~19]
表3および4に記載された種類および量の米と樹脂と相溶化剤とを、表3および4に記載の条件で下記装置を用いて、米含有樹脂組成物を製造した。なお、表3、表4において、米、樹脂および相溶化剤は、米含有樹脂組成物(100質量%)に対する含有量(質量%)で示し、水は、米(100質量%)に対する含有量(質量%)で示した。
【0149】
米含有樹脂組成物を製造した装置としては、同方向に回転する二軸混練装置100または第1脱気部60と第2脱気部70を備えない真空脱気装置を使用した。回転部材のL/Dは50とした。回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニーディングブロック比率)は25%とした。また、蒸留水は投入部20のホッパーからチューブポンプを用いて第1収容空間S1に供給した。
【0150】
回転部材31~33、35~39、41、42の回転数は、280rpmとした。また、混練部に相当する回転部材34の回転数は、表3および4に記載の混練回転数とした。そして、第1収容空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を160℃、混練部に相当する部位を表3および4に記載の混練部温度に加温した。また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を180℃、圧縮部に相当する部位を190℃、排出部80を190℃に加温した。
【0151】
本実験では、原料として用いた樹脂および下記実験により得られた米含有樹脂組成物のMFR(g/10min)を算出した。なお、MFR(g/10min)は、ポリエチレンは190℃・2.16kgfの条件、ポリプロピレンは230℃・2.16kgfの条件、米含有樹脂組成物は190℃・10.0kgfの条件で(g/10min)は、メルトインデクサを用いて、JIS K7210(2014)に準拠し測定して得られた値である。
【0152】
また、得られた米含有樹脂組成物(成形品)の外観評価を行った。外観評価は、切断部110から送られた米含有樹脂組成物を170℃でホットプレスによる熱圧成形にて平面状に引き延ばして得られたフィルム状の米含有樹脂組成物を目視で観察し、フィルム状の米含有樹脂組成物に含まれる凝集の有無と、透明粒の有無とを目視で下記基準に従って評価を行った。凝集は、フィルム上で不透明の粒、塊またはムラとなっている領域であり、透明粒とは、フィルム上で透明であるが、粒、塊またはムラとなっている領域を意味する。参考として、
図8における右側の(a)の画像が凝集および透明粒が観察されないフィルムであり、(b)の画像が凝集および透明粒が観察されたフィルムである。また、
図9は、写真左側から順に、実施例3、5および9の米含有樹脂組成物より得られたフィルムの画像である。
【0153】
[凝集の評価基準]
A:粒(塊、ムラ領域)なし
B:1~10個
C:11~20個
D:21~30個
E:31個以上。
[透明粒の評価基準]
A:粒(塊、ムラ領域)なし
B:1~10個
C:11~20個
D:21~30個
E:31個以上。
【0154】
本発明においては、用途に応じた品質(外観)で製造できればよく、外観評価において粒が存在していても問題はない。粒がない外観を目的の品質とする場合、上記評価において、凝集は、D評価までが製品として許容されるレベルであり、透明粒は、D評価までが製品として許容されるレベルである。
【0155】
【0156】
【0157】
以上のように、米含有樹脂組成物に含まれる原料の樹脂がポリプロピレンの場合、特定のアルカリ崩壊試験により得られた崩壊度レベルが5以上であれば、生産性が高く、良好な品質(外観)の米含有樹脂組成物が得られることがわかる。また、米含有樹脂組成物に含まれる原料の樹脂がポリエチレンの場合、特定のアルカリ崩壊試験により得られた崩壊度レベルが3以上であれば、生産性が高く、良好な品質の米含有樹脂組成物が得られることがわかる。これにより、アルカリ崩壊試験による崩壊度レベルに応じて、樹脂の種類に基づき、製造条件を選定できることがわかった。