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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079188
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20240604BHJP
   F28F 1/30 20060101ALI20240604BHJP
   F28D 1/053 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
F28F1/32 U
F28F1/30 C
F28F1/32 L
F28D1/053 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191982
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220217
【氏名又は名称】東京ラヂエーター製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉光 真幸
(72)【発明者】
【氏名】大高 厳
(72)【発明者】
【氏名】原田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】生井 一憲
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA17
3L103AA37
3L103BB12
3L103CC01
3L103CC22
3L103DD08
3L103DD34
(57)【要約】
【課題】熱交換性能の向上と通気抵抗の低減を両立した熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明の熱交換器(ラジエータ1)におけるフィン13は、複数のチューブ11と接触する接触部21と、接触部21同士の間をつなぐ整流面部22とを備え、整流面部22は、空気が全体的に流れる方向に延びるように形成されており、整流面部22の幅方向の端部が接触部21であり、平面22aに挟まれた領域における幅方向の両側には、整流面部22に垂直な方向に突出する整流凸条部22bが長手方向に複数設けられており、平面22aに挟まれた領域における幅方向の中央部22cは、整流凸条部22bよりも突出する高さが低く形成されており、整流凸条部22bは、幅方向の外側から中央部22cに向かって、空気が全体的に流れる方向に傾いて形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能な複数のチューブと、複数の前記チューブの間に設けられ、複数の前記チューブと交互に接触するフィンと、を有し、
前記フィンは、前記チューブと接触する複数の接触部と、前記接触部同士の間をつなぐ整流面部とを備え、
前記整流面部は、空気が全体的に流れる方向に延びるように形成されており、
前記整流面部の幅方向の端部が前記接触部であり、
前記整流面部の幅方向の両端部には、長手方向に延びる平面が設けられていて、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の両側には、前記整流面部に垂直な方向に突出する整流凸条部が前記長手方向に複数設けられており、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の中央部は、前記整流凸条部よりも突出する高さが低く形成されており、
前記整流凸条部は、幅方向の外側から前記中央部に向かって、空気が全体的に流れる方向に傾いて形成されている、
熱交換器。
【請求項2】
前記整流凸条部は、直線状に設けられている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記中央部の両側に設けられる前記整流凸条部は、同一曲率半径の円弧状に形成されている、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記整流凸条部の曲率半径は3mm以上10mm以下である、
請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記整流凸条部が空気の全体的な進行方向に対して傾く傾斜角度は50度以上80度以下である、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記中央部が前記整流面部の幅方向に対して占める割合は0%よりも大きく50%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用熱交換器では、通常、フィンの一面にルーバーを設けて、空気と液体との熱交換を促進させる。しかしながら、産業機械等に使用される熱交換器では、使用される環境によって、機械内部に吸引された埃等がルーバーに目詰まりすることがあるため、フィンの面から突出する凸部を設けて、熱交換の促進を図ることがある。
この一例として、特許文献1のような、フィンの一面に空気の整流に供する整流凸部を設けて、熱交換を促進させる熱交換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-017465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
整流凸部を設ける熱交換器においては、ルーバーを設ける熱交換器と比較して、熱交換性能が低いことが知られている。また、熱交換器のフィンの表面形状は、熱交換器の通気抵抗に関連する。熱交換器においては、通気抵抗を低減することが望ましい。
【0005】
本発明は、熱交換性能を向上しつつ、通気抵抗を低減した熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る熱交換器は、
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能な複数のチューブと、複数の前記チューブの間に設けられ、複数の前記チューブと交互に接触するフィンと、を有し、
前記フィンは、複数の前記チューブと接触する接触部と、前記接触部同士の間をつなぐ整流面部とを備え、
前記整流面部は、空気が全体的に流れる方向に延びるように形成されており、
前記整流面部の幅方向の端部が前記接触部であり、
前記整流面部の幅方向の両端部には、長手方向に延びる平面が設けられていて、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の両側には、前記整流面部に垂直な方向に突出する整流凸条部が前記長手方向に複数設けられており、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の中央部は、前記整流凸条部よりも突出する高さが低く形成されており、
前記整流凸条部は、幅方向の外側から前記中央部に向かって、空気が全体的に流れる方向に傾いて形成されている。
【0007】
本発明によれば、熱交換性能を向上しつつ、通気抵抗を低減した熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るラジエータの斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るコア部の部分拡大図である。
図3図3は、整流面部の平面図である。
図4図4は、フィンを空気が全体的に流れる方向から見た図である。
図5図5は、比較例1に係る整流面部を示す図である。
図6図6は、比較例2に係る整流面部を示す図である。
図7図7は、本実施形態のラジエータと比較例1および比較例2に係る解析1を示す図である。
図8図8は、解析2の解析結果を示している。
図9図9は、解析3の解析結果を示している。
図10図10は変形例1に係る整流面部を示す図である。
図11図11は、変形例2に係る整流面部を示す図である。
図12図12は、変形例2に係る整流面部を図11のXII方向から見た図である。
図13図13は、変形例3に係る整流面部を示す図である。
図14図14は、変形例3に係る整流面部を図13のXIV方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。以降に説明する図中に示した符号Uは上方向を示す。符号Dは下方向を示す。符号Fは前方向を示す。符号Bは後方向を示す。符号Lは左方向を示す。符号Rは右方向を示す。なお、ラジエータを車両に取り付けたときにこれらの方向が車両について設定される各々の方向と一致するとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係るラジエータ1の斜視図である。図2は、本実施形態に係るコア部10の部分拡大図である。なお、ラジエータ1は熱交換器の一例である。図1および図2に示すように、ラジエータ1は一対の第一タンク2および第二タンク3とコア部10を有する。第一タンク2および第二タンク3は、冷却対象の液体(以後、クーラント液と呼ぶ)を内部で溜めることが可能に構成されている。第一タンク2および第二タンク3は、コア部10を左右に挟むように接続して配置されている。コア部10と接続する第一タンク2および第二タンク3の面は開口している。
【0012】
第一タンク2は、内燃機関、電気自動車用バッテリー、燃料電池スタック等の発熱機器を介して温められたクーラント液を溜めることができる。第一タンク2は、温められたクーラント液を内部に導入する導入口2aが設けられている。
【0013】
第二タンク3は、コア部10で冷却されたクーラント液を溜めることができる。第二タンク3は、冷却されたクーラント液を排出する排出口3aが設けられている。冷却されたクーラント液は、再び発熱機器に循環される。
【0014】
コア部10は、クーラント液と空気との間で熱交換を行うことで、クーラント液を冷却する。コア部10は、チューブ11と、エンドプレート12と、フィン13と、を備える。
チューブ11は、左右方向に延びる中空部材であり、その断面は前後方向に扁平である(図2参照)。コア部10には、複数のチューブ11が、上下方向に整列して配置されている。
【0015】
エンドプレート12は、コア部10の左右両端に設けられている。チューブ11は、コア部10の両端に設けられた一対のエンドプレート12の開口部に挿入されることで、コア部10の内部に支持されている。エンドプレート12の開口部は、チューブ11の断面形状に対応している。
【0016】
エンドプレート12の開口にチューブ11が挿入された状態で、コア部10と第一タンク2とがエンドプレート12を介して接合されることで、第一タンク2とチューブ11を液密に接続することができる。エンドプレート12の開口部にチューブ11が挿入された状態で、コア部10と第二タンク3とがエンドプレート12を介して接合されることで、第二タンク3とチューブ11を液密に接続することができる。
【0017】
クーラント液は、チューブ11の内部を通って、第一タンク2から第二タンク3に向かって送られる。クーラント液を冷却する空気は、隣り合う2つのチューブ11と一対のエンドプレート12とで区画される空間を通過する。
【0018】
図2に示すように、フィン13は、複数のチューブ11の間の空間に設けられている。換言すれば、チューブ11とフィン13は上下方向に交互に配列されている。フィンは前後方向に延びるように設けられている。フィン13は、2つのチューブ11間を流れる空気の流れを乱流にすることで、コア部10における空気とクーラント液との間の熱交換を促進させる。
【0019】
フィン13は、上下のチューブ11に対して交互に接触する複数の接触部21と、接触部21同士の間をつなぐ略平面の整流面部22とを備える。図3は、整流面部22の平面図である。なお、空気は後方向に向かって全体的に流れる。整流面部22の幅方向の両端は、接触部21である。整流面部22は、幅方向の両側に長手方向(前後方向)に延びる平面22aを備える。整流面部22において該平面22aに挟まれた領域には、複数の整流凸条部22bが形成されている。
【0020】
本実施形態においては、整流凸条部22bは円弧を成している。整流凸条部22bにおける円弧の曲率半径は3mm以上10mm以下であることが望ましい。整流面部22の幅方向の中央の領域である中央部22cは、幅方向において整流凸条部22bに挟まれた領域となっており、整流凸条部22bが突出する高さよりも低く形成されている。本実施形態における中央部22cの高さは平面22aと同じ高さである。このため、整流凸条部22bは中央部22cによって分断された形状となっている。整流面部22の幅方向において、中央部22cが占める割合は0%よりも大きく50%以下であってもよい。
また、整流凸条部22bは、空気が全体的に流れる方向(後方向)において、整流面部22の外側から中央部22cに向かうように傾いて形成されている。整流凸条部22bの中央部22c側の端部が、空気が全体的に流れる方向に対して傾く傾斜角度θは、50度以上80度以下であってもよい。なお、整流凸条部が直線ではないとき、傾斜角度θは、整流凸条部の2つの端点を結んだ直線が、空気が全体的に流れる方向に対して傾く角度である。例えば、本実施形態において整流凸条部22bは円弧状に形成されている。このとき、傾斜角度θは、端点22b1、22b2を結んだ直線(整流凸条部22bの弦)と空気が全体的に流れる方向とが成す角度である。
【0021】
次に、本実施形態の整流面部22における空気の流れについて、図3および図4を用いて説明する。図3は、整流面部22の平面図である。図4は、フィン13を空気が全体的に流れる方向から見た図である。なお、図3および図4における白矢印は空気の流れを表しており、図3における白矢印Iは図4における白矢印Iに、図3における白矢印IIは図4における白矢印IIに、図3における白矢印IIIは図4における白矢印IIIに、それぞれ対応している。
【0022】
チューブ11内を流れるクーラント液とフィン13を流れる空気との熱交換は、特に接触部21で促進される。このため、フィンを流れる空気はなるべく接触部21に近い領域(例えば平面22a)を流れることが望ましく、フィンの幅方向の中央部22cを流れる空気を外側へ向かわせるために、整流凸条部22bが設けられている。
【0023】
フィン13の中央部22cを流れる空気は、整流凸条部22bに衝突すると、整流面部22の中央部22cに向かいつつ、整流凸条部22bが突出する方向にはね上げられるように流れる(白矢印I)。しかしながら、図4に示すように、整流面部22の中央部22cに向かった空気は互いに衝突するので、整流面部22の外側に向かう。
【0024】
整流面部22の外側に向かう空気の流れは次第に接触部21に近い領域(平面22a)に到達する(白矢印II)。接触部21に近い領域に到達した空気は接触部21に沿って流れる(白矢印III)。換言すると、図4に示す方向から見ると、白矢印I~IIIで例示したように、空気は渦(旋回流)を形成しながら流れる。このように、本実施形態の整流凸条部22bを設けることで、白矢印I~IIIに示すような旋回流が発生し、これにより、フィン13を流れる空気をフィンの中央部22cからフィン13の外側へ向かわせることができる。
【0025】
本実施形態のラジエータ1において、整流凸条部22bが、整流面部22における幅方向の中央部22cに向かって空気の全体的な進行方向に傾いて形成されているので、フィン13の中央部22cの空気を外側(平面22a側)へ向かわせることができる。これにより、チューブ11と接触する接触部21付近で空気の流速が速くなる。したがって、接触部21を介して行われるチューブ11内の液体とフィン13を通る空気との間の熱交換がより促進される。
また、整流面部22における幅方向の中央部22cは、整流凸条部22bよりも低く形成されている。このとき、整流面部22の長手方向から見たときの(すなわち図4に示される)整流面部22の断面積を小さくできるので、通気抵抗を低減できる。
【0026】
本実施形態の整流凸条部22bは円弧状に形成されている。整流凸条部22bが円弧状に形成されることで、1つあたりの整流凸条部22bの放熱性能が高くなることが確認された。このため、ラジエータ1において必要な放熱性能を発揮するために必要な整流凸条部22bの個数は低減される。これにより、整流面部22を流れる空気において通気抵抗は低減し、フィン13の加工に係る時間も減少することができる。
【0027】
本実施形態の円弧状の整流凸条部22bにおいて、曲率半径は3mm以上10mm以下である。これにより、より好適にフィン13の中央部22cの空気を外側へ向かわせることができる。曲率半径を上記の範囲内とした場合、整流凸条部22bを円弧状にしたことによる放熱性能が向上する効果を得られやすい。
【0028】
本実施形態の整流凸条部22bは空気の全体的な進行方向に対して、50度以上80度以下の角度で傾いている。整流凸条部22bの法線方向に空気は曲がろうとするので、50度以上80度以下の角度で整流凸条部22bが傾斜している場合、急すぎず緩やかすぎない角度でフィン13の中央部22cの空気を外側へ向かわせることができる。
【0029】
整流面部22の幅方向において中央部22cが占める割合は、0%よりも大きく50%以下である。整流面部22の幅方向において中央部22cが占める割合0%よりも大きい場合、長手方向から見たときのフィン13の断面積を十分に小さくできるので、通気抵抗をより低減させることができる。整流面部22の幅方向において中央部22cが占める割合が50%以下のとき、より強い旋回流が形成されるので、中央部22cの空気をより外側に向かわせやすくなり、放熱性能が向上する。これらにより、通気性と熱交換性能を相乗的に向上させることができる。
【0030】
(解析1:本実施形態との比較)
本実施形態のラジエータ1にかかる整流面部22とは異なる形状の整流面部を用意して、本実施形態のラジエータ1の性能と比較する解析を行った。
【0031】
(比較例1)
図5は、比較例1に係る整流面部30を示す図である。図5に示した複数の六角形は、整流面部30の平面部に対してそれぞれ前方向または後方向に傾斜した平面である。隣り合う六角形の傾斜する向きは交互に異なっている。すなわち、比較例1に係る整流面部30には、山部31(整流凸部)と谷部32とが交互に形成されている。山部31は谷部32よりも図5の紙面手前方向に突出している。
【0032】
(比較例2)
図6は、比較例2に係る整流面部40を示す図である。比較例2の整流面部40には、本実施形態と同様に円弧状の整流凸条部41が形成されているものの、本実施形態と異なり、整流凸条部41よりも高さが低い中央部が形成されていない。
【0033】
(解析結果)
図7は、本実施形態のラジエータ1と比較例1および比較例2に係る解析1の結果を示す図である。図7に示すように、比較例1のラジエータと比較すると、本実施形態のラジエータは通気抵抗が14%悪化するものの、放熱量が6%向上する。比較例1に係る整流面部においては、整流面部の中央部を流れる空気を外側に向かわせる効果はほとんどないものと考えられる。このため、整流面部の中央部を流れる空気を外側に向かわせることができる本実施形態のラジエータ1の方が、放熱性能の面で向上していることが確認できた。
【0034】
また、実施形態のラジエータ1は、比較例2のラジエータと比較して、放熱性能が1%悪化するものの、通気抵抗が19%低減される。これにより、整流凸条部よりも突出する高さが低い中央部を形成しても放熱性能はほとんど変化せず、通気抵抗が改善することが確認できた。
【0035】
このように、放熱性能と通気抵抗とにおいては、いずれか一方を向上させるといずれか他方が悪化する関係にあるが、本実施形態のラジエータ1においては、放熱性能と通気抵抗とを比較的高い性能で両立できることが確認できた。
【0036】
(解析2:整流凸条部の曲率半径)
図3に示すような、円弧状の整流凸条部22bについて、どの程度の曲率半径であることが適切かについて検討した。整流凸条部の曲率半径が2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、10mm、20mmであるときのそれぞれについて、放熱性能を比較した。また、比較例1の放熱性能も解析結果に併記した。
【0037】
(解析結果2)
図8は、解析2の解析結果を示している。整流凸条部の曲率半径が変化した場合の放熱性能の近似曲線は、破線で示されている。また、比較例1における放熱性能は、1点鎖線で示されている。
【0038】
本解析から、以下の2つの知見が得られた。
【0039】
(1)曲率半径によって放熱性能は変動する。本解析では曲率半径4mmのときに最も放熱性能が良い結果が出た。比較例1との比較において曲率半径3mm~10mmの場合に比較例1と同等以上の放熱量が得られた。したがって、曲率半径が3mm~10mmとなるように整流凸条部が形成されることが望ましい。
【0040】
(2)曲率半径を増大させることは、整流凸条部の形状が直線に近づくことを意味している。曲率半径4mmから曲率半径が増大すると、放熱量は単調に減少している。直線の整流凸条部は曲率半径が無限大であることとみなすことができるから、同数の整流凸条部が設けられる場合、適切な曲率半径であれば、円弧状の整流凸条部は、直線状の整流凸条部よりも放熱性能の面で優れていることが推察される。換言すれば、同等の放熱性能が期待されるラジエータにおいて、直線状の整流凸条部がフィンに設けられる場合と比較して、円弧状の整流凸条部がフィンに設けられる本数が少なくてもよい。
【0041】
(解析3:整流面部に対して中央部が占める割合)
整流凸条部よりも突出量が小さい中央部が整流面部に対して占める割合について考察した。中央部が全く設けられない場合(割合にして0%の場合)と、中央部が整流面部に対して占める割合が20%の場合、41%の場合、および、55%の場合との放熱性能について解析した。また、それぞれの場合の放熱性能について、比較例1の放熱性能と比較した。
【0042】
図9は、解析3の解析結果を示している。中央部が整流面部に対して占める割合を変化させたときの放熱量の近似曲線は破線で示されている。比較例1における放熱量は、1点鎖線で示されている。
【0043】
図9に示す通り、中央部が整流面部に対して占める割合が増大すると、放熱量は減少する傾向にある。およそ中央部が整流面部に対して占める割合が50%よりも大きくなると、比較例1における放熱量を下回る結果となった。このため、中央部が整流面部に対して占める割合は0%よりも大きく50%以下であることが望ましい。
【0044】
(変形例1)
次に、本実施形態の整流面部22に対して改変を加えた変形例について説明する。図10は変形例1に係る整流面部52を示す図である。図3に示した実施形態の整流面部22と比較すると、整流凸条部52bの形状が直線状である点が異なっている。このような形状の整流凸条部52bにおいても、フィンの中央部52cの空気を外側(平面52a側)へ向かわせることができるので、放熱性能を向上させることができる。整流面部52は、整流面部22と同様に中央部52cが設けられているので、通気抵抗の増大を抑制できる。また、円弧状の整流凸条部52bと比較すると、より簡素な構成でフィンの中央部52cの空気を外側へ向かわせる流れを実現できる。
【0045】
(変形例2)
図11は、変形例2に係る整流面部62を示す図である。図12は、変形例2に係る整流面部62を図11のXII方向から見た図である。図11および図12に示すように、変形例2に係る複数の整流面部には、整流面部62の幅方向の両側に設けられた整流凸条部62bに加えて、中央部62cによって分断されていない非分断整流凸条部63も形成されている。非分断整流凸条部63は、少なくとも1本以上で設けられてもよい。図11に示すように、比較例2には3本の中央部62cによって分断される整流凸条部62bに対して、中央部62cによって分断されない非分断整流凸条部63が1本設けられている。
【0046】
このような整流面部62においても、フィンの中央部62cの空気を外側(平面62a側)へ向かわせることができるので、放熱性能を向上させることができる。本実施形態とは異なり、変形例2の整流面部62の長手方向の全面において中央部62cが設けられるとは限らないものの、図11の例示であれば、整流凸条部4列分のうち3列分については中央部62cが形成されるので、通気抵抗の増大を抑制できる。また、中央部62cによって分断されない非分断整流凸条部63が設けられることによって、フィンの接触部方向(図11における紙面上下方向)の剛性を強化することができる。
【0047】
(変形例3)
図13は、変形例3に係る整流面部72を示す図である。図14は、変形例3に係る整流面部72を図13のXIV方向から見た図である。図13および図14に示すように、変形例3に係る整流面部72には、図3に示した実施形態の整流面部22と同様に中央部72cが設けられているが、中央部72cの突出する高さが、整流凸条部72bよりも低く平面72aよりも高い点が異なっている。このような整流面部72においても、フィンの中央部72cの空気を外側(平面72a側)へ向かわせることができるので、放熱性能を向上させることができる。中央部72cが突出する高さは図3に示した整流面部22よりも高いものの、整流凸条部72bよりも突出する高さが低い中央部72cが設けられるので、通気抵抗の増大を抑制できる。
【0048】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明した。上記の各実施形態は本開示の一例であって、本発明は上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を実施できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
中央部は、整流面部の長手方向において均一の幅で形成されていなくてもよい。例えば、整流面部の長手方向において、中央部の幅が大きくなったり小さくなったりするように形成されてもよい。また、複数の整流凸条部において、その長さ、形状、曲率半径、空気の全体的な進行方向に対して傾く傾斜角度等が互いに異なっていてもよい。
【0050】
以下に列挙される構成もまた、本開示の一部を構成する。
(1):
冷却対象である液体を内部で溜めることが可能な一対のタンクと、
前記タンクの間に設けられ、該液体と空気との間で熱交換を行うコア部と、を備え、
前記コア部は、それぞれの前記タンクの内部と液密に接合されていて、内部に該液体を導入可能な複数のチューブと、複数の前記チューブの間に設けられ、複数の前記チューブと交互に接触するフィンと、を有し、
前記フィンは、複数の前記チューブと接触する接触部と、前記接触部同士の間をつなぐ整流面部とを備え、
前記整流面部は、空気が全体的に流れる方向に延びるように形成されており、
前記整流面部の幅方向の端部が前記接触部であり、
前記整流面部の幅方向の両端部には、長手方向に延びる平面が設けられていて、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の両側には、前記整流面部に垂直な方向に突出する整流凸条部が前記長手方向に複数設けられており、
前記平面に挟まれた領域における幅方向の中央部は、前記整流凸条部よりも突出する高さが低く形成されており、
前記整流凸条部は、幅方向の外側から前記中央部に向かって、空気が全体的に流れる方向に傾いて形成されている、
熱交換器。
(2):
前記整流凸条部は、直線状に設けられている、(1)に記載の熱交換器。
(3):
前記中央部の両側に設けられる前記整流凸条部は、同一曲率半径の円弧状に形成されている、
(1)に記載の熱交換器。
(4):
前記整流凸条部の曲率半径は3mm以上10mm以下である、
(3)に記載の熱交換器。
(5):
前記整流凸条部が空気の全体的な進行方向に対して傾く傾斜角度は50度以上80度以下である、
(1)~(4)のいずれかに記載の熱交換器。
(6):
前記中央部が前記整流面部の幅方向に対して占める割合は0%よりも大きく50%以下である、
(1)~(5)のいずれかに記載の熱交換器。
【符号の説明】
【0051】
1 ラジエータ
2 第一タンク
2a 導入口
3 第二タンク
3a 排出口
4 整流凸条部
10 コア部
11 チューブ
12 エンドプレート
13 フィン
21 接触部
22,30,40,52,62,72 整流面部
22a,52a,62a,72a 平面
22b,41,52b,62b,72b 整流凸条部
63 非分断整流凸条部
22c,52c,62c,72c 中央部
31 山部
32 谷部
θ 角度
図1
図2
図3
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