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特開2024-79190判定装置、判定方法及びコンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079190
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240604BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20240604BHJP
   E01B 35/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G01N21/84 B
E01B35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191986
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宗
(72)【発明者】
【氏名】久積 和正
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
【テーマコード(参考)】
2D057
2G051
【Fターム(参考)】
2D057AB06
2G051AA90
2G051AB20
2G051AC15
2G051CA04
2G051EB01
2G051EB10
2G051EC01
(57)【要約】
【課題】より広い種別の対象物や異常について、軌道において生じている異常を判定すること。
【解決手段】撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定部と、前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定部と、を備える判定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定部と、
前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれるべき部材が欠損していることを異常として判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれている部材の種別を判定し、前記管理単位領域に含まれるべき部材と、判定された部材の種別と、に基づいて部材が欠損していることを異常として判定する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれている部材の種別を判定し、部材の種別毎に予め生成されている学習済モデルを用いて前記部材に状態異常が生じているか否か判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の判定装置。
【請求項5】
撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定ステップと、
前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定ステップと、
を有する判定方法。
【請求項6】
撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定部と、
前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定部と、を備える判定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、判定方法及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から軌道において生じている異常を判定する技術が提案されている。特許文献1には、ラインセンサを用いて締結ボルト天頂面高さを検出することによってボルト緩みを判定する技術が開示されている。特許文献2には、カメラを用いて軌道上を撮影することによって継ぎ目ボルトの脱落を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5283548号公報
【特許文献2】特許第4312728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、軌道材料のうち締結装置あるいは継ぎ目のボルトというように特定の部品に異常検知対象物が限定されていた。そのため、異常検知対象物が一つ以上の部品から構成されている場合や、対象とする軌道上に部品構成が異なる異常検知対象物が複数存在する場合には、適用できないことがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、より広い種別の対象物や異常について、軌道において生じている異常を判定することが可能となる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様は、撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定部と、前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定部と、を備える判定装置である。
【0006】
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の判定装置であって、前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれるべき部材が欠損していることを異常として判定する。
【0007】
(3)本発明の一態様は、上記(2)に記載の判定装置であって、前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれている部材の種別を判定し、前記管理単位領域に含まれるべき部材と、判定された部材の種別と、に基づいて部材が欠損していることを異常として判定する。
【0008】
(4)本発明の一態様は、上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の判定装置であって、前記異常判定部は、前記管理単位領域に含まれている部材の種別を判定し、部材の種別毎に予め生成されている学習済モデルを用いて前記部材に状態異常が生じているか否か判定する。
【0009】
(5)本発明の一態様は、撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定ステップと、前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定ステップと、を有する判定方法である。
【0010】
(6)本発明の一態様は、撮像装置によって判定対象の軌道が撮像された画像において、判定対象となる所定の領域である管理単位領域を判定する管理単位領域判定部と、前記管理単位領域において異常が生じているか否か判定する異常判定部と、を備える判定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、より広い種別の対象物や異常について、軌道において生じている異常を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の判定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
図2】軌道90の詳細を示す図である。
図3】軌道90に用いられる締結装置93の具体例を示す図である。
図4】撮像装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図5】判定装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図6】締結装置情報の具体例を示す図である。
図7】判定結果情報の具体例を示す図である。
図8】画像上で判定された管理単位領域81の具体例を示す図である。
図9】第一態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。
図10】第二態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。
図11】第二態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。
図12】判定装置20の動作の具体例を示すフローチャートである。
図13】レールに沿った視線方向で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。
図14】レール91に沿った軸に水平面上で直交する視線方向で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。
図15】レール91(地面)を鉛直方向から見下ろす視線で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。
図16】撮像装置10が設けられた鉄道車両60の外観例を示す図である。
図17】小型飛行体として構成された撮像装置10の外観の具体例を示す図である。
図18】小型飛行体として構成された撮像装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図19】モデル構築装置30の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。
図20】本実施形態に適用される情報処理装置70のハードウェア構成例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の判定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。判定システム100は、軌道90において生じている異常を判定する。判定システム100は、撮像装置10及び判定装置20を備える。撮像装置10は、軌道90を撮像することによって、軌道90が撮像された画像を記録する。判定装置20は、撮像装置10によって記録された画像を取得し、画像を分析することによって軌道90に異常が生じているか否か判定する。
【0014】
図2は、軌道90の詳細を示す図である。軌道90は、レール(軌条)91、枕木92、締結装置93及び道床94を有する。判定システム100は、軌道90を構成するこれらの部位に異常が生じているか否か判定する。
【0015】
図3は、軌道90に用いられる締結装置93の具体例を示す図である。締結装置93は、複数の対象物を締結するための装置である。締結装置93は、例えばレール91とレール91とを締結するための装置であってもよいし、レール91と枕木92とを締結するための装置であってもよい。このように、締結装置93には複数の種類がある。レール91とレール91とを締結するための装置の具体例として、継ぎ目板93aがある。レール91と枕木92とを締結するための締結装置93の具体例として、犬くぎ、ボルト、線ばねがある。図3(A)は犬くぎの具体例を示す図である。犬くぎは、例えば木製の枕木に用いられる。図3(B)はボルトの具体例を示す図である。ボルトは、例えばPC(プレストレストコンクリート)製の枕木に用いられる。図3(C)は線ばねの具体例を示す図である。線ばねは、例えば鉄製の枕木に用いられる。これらのレール91と枕木92とを締結するための締結装置93は、継ぎ目板93aと枕木92とを締結するために使用されてもよい。このように、判定システム100における異常の判定対象としては、軌道90を構成するこれらの部位がある。例えば、レール91が異常の判定対象である場合には、レール91に生じた亀裂や折損が異常として判定されてもよい。例えば、枕木92が異常の判定対象である場合には、枕木92に生じた割れや腐食が異常として判定されてもよい。例えば、継ぎ目板93aが異常の判定対象である場合には、継ぎ目板93aに生じた亀裂や、継ぎ目板93aに用いられる締結装置(例えばボルト)の脱落、折損、ゆるみが異常として判定されてもよい。例えば、道床94が異常の判定対象である場合には、道床94に噴泥が異常として判定されてもよい。
【0016】
撮像装置10から判定装置20への画像データの受け渡しはどのような形で行われても良い。例えば、撮像装置10及び判定装置20は、それぞれネットワークに接続され、ネットワークを介した通信で画像データが受け渡されても良い。この場合、使用されるネットワークは、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。また、使用されるネットワークは、複数のネットワークが組み合わされて構成されたものであってもよい。撮像装置10及び判定装置20は、赤外線やケーブルを用いた1対1通信を行うことによって、画像データの受け渡しを行っても良い。撮像装置10において画像のデータが記録された記録媒体が判定装置20に接続されることによってデータの受け渡しが行われても良い。その他、画像データの受け渡しの態様はどのような形で行われても良い。
【0017】
図4は、撮像装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。撮像装置10は、例えばスマートフォン、タブレット、携帯型パーソナルコンピューター、ドローン、カメラ装置、専用機器などの情報機器を用いて構成される。撮像装置10は、データ出力部11、撮像部12、操作部13、記憶部14及び制御部15を備える。
【0018】
データ出力部11は、記憶部14に記憶されているデータ(例えば画像データ)を判定装置20に対して出力する。データ出力部11は、例えば通信装置を用いて構成されてもよい。この場合、データ出力部11は、ネットワークを介した通信で判定装置20にデータを送信してもよいし、1対1の通信で判定装置20にデータを送信しても良い。データ出力部11は、着脱可能な記憶装置又は記録媒体が接続され、接続された記憶装置又は記録媒体に対してデータを出力しても良い。この場合、データ出力部11に接続された記憶装置又は記録媒体は、判定装置20に接続される。その他、データ出力部11は、どのような態様で判定装置20に対してデータを出力しても良い。
【0019】
撮像部12は、カメラを用いて構成される。撮像部12は、カメラそのものとして構成されてもよいし、外部機器としてカメラを撮像装置10に接続するためのインターフェースとして構成されてもよい。カメラは、軌道90が設置されている所定の空間を撮像する。撮像部12には、カメラは1台設けられてもよいし、複数台設けられてもよい。カメラが複数台設けられる場合、各カメラは異なる視点から重複する視界を撮像してもよい。撮像部12は、カメラによって撮像された画像のデータを記憶部14に記録する。
【0020】
操作部13は、ユーザーインターフェースを用いて構成される。操作部13は、例えばキーボード、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の操作装置を用いて構成されてもよい。この場合、操作部13は、ユーザーによって行われた操作を示す情報(以下「操作情報」という。)を生成する。操作部13は、他の操作装置(例えばリモートコントローラーやスマートフォン等)から、ユーザーによって行われた操作情報を受信する通信装置を用いて構成されてもよい。撮像装置10に対するユーザーの操作を受け付ける。操作部13は、ユーザーによって行われた操作を示す情報(操作情報)を制御部15に出力する。
【0021】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部14は、撮像部12によって撮像された画像データを記録する。記憶部14は、その他にも、撮像装置10が動作するためのプログラム等のデータを記憶する。
【0022】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部15は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、撮像制御部151及びデータ制御部152として機能する。なお、制御部15の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0023】
撮像制御部151は、撮像部12を制御することによって、判定対象となっている軌道90を撮像する。撮像制御部151は、例えば所定の時間間隔で繰り返し静止画像を撮像してもよいし、連続的に動画像を撮像し続けても良い。撮像制御部151は、軌道90において、異常が生じているか否かの判定対象となる部位を撮像できるように、撮像部12を制御して撮像を行う。撮像制御部151は、操作部13から撮像に関する操作情報を受けた場合には、操作情報にしたがって撮像部12を制御して撮像を行う。
データ制御部152は、記憶部14に記録されている画像データを、データ出力部11を介して出力する。
【0024】
図5は、判定装置20の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。判定装置20は、例えばパーソナルコンピューターやサーバー装置などの情報処理装置を用いて構成される。判定装置20は、データ取得部21、出力部22、操作部23、記憶部24及び制御部25を備える。
【0025】
データ取得部21は、撮像装置10から出力された画像データを取得する。データ取得部21は、撮像装置10のデータ出力部11に応じて構成される。例えば、データ出力部11がネットワークを介した通信で画像データを送信する場合には、データ取得部21はネットワークに接続してデータを受信する装置を用いて構成されてもよい。例えば、データ出力部11がケーブルを介した通信で画像データを送信する場合には、データ取得部21はケーブルを介してデータを受信する装置を用いて構成されてもよい。例えば、データ出力部11が着脱可能な記憶装置又は記録媒体に画像データを記録する場合には、データ取得部21は記憶装置又は記録媒体を装着可能に構成され、装着された記憶装置又は記録媒体から画像データを読み出すように構成されてもよい。その他、データ取得部21は、どのような態様でデータを取得しても良い。
【0026】
出力部22は、制御部25によって得られた判定結果を示す情報を出力する。出力部22は、例えばネットワークを介して通信することによって、他の装置に判定結果を示す情報を送信してもよい。出力部22は、例えばディスプレイ等の画像表示装置を用いて構成され、判定結果を示す情報を表示してもよい。出力部22は、例えば音響出力装置を用いて構成され、判定結果を示す情報を音声や音響として出力してもよい。
【0027】
操作部23は、ユーザーインターフェースを用いて構成される。操作部23は、例えばキーボード、ボタン、ポインティングデバイス、タッチパネル等の操作装置を用いて構成されてもよい。この場合、操作部23は、ユーザーによって行われた操作を示す情報(操作情報)を生成する。操作部23は、ユーザーによって行われた操作を示す情報(操作情報)を制御部25に出力する。
【0028】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部24は、締結装置情報記憶部241、判定モデル記憶部242、画像データ記憶部243及び判定結果情報記憶部244として機能する。
【0029】
締結装置情報記憶部241は、判定対象となる軌道90に用いられる締結装置93に関する情報(締結装置情報)を記憶する。図6は、締結装置情報の具体例を示す図である。締結装置情報は、締結装置93の構成パターンを示す識別情報(以下「構成パターン識別情報」という。)と、各構成パターンで用いられる部材を示す部材情報と、を対応づけて有する。例えば、構成パターン識別情報“111”の構成パターンの締結装置93では、ねじくぎが2つ、タイプレートが1つ用いられる。例えば、構成パターン識別情報“112”の構成パターンの締結装置93では、板バネクリップが2つ、ボルトが2つ、くさびが2つ用いられる。このような締結装置情報が用いられることによって、各締結装置93において部材の不足(欠損)が生じているか否かが判定されてもよい。
【0030】
判定モデル記憶部242は、軌道90の画像に基づいて軌道90に異常が生じているか否か判定するために使用される情報(以下「判定モデル」という。)を記憶する。判定モデルは、例えば他の装置において既知データを用いたモデル構築処理によって得られてもよい。判定モデルは、例えばパターンマッチング処理に用いられるパターンを示す情報であってもよいし、正解ラベルを有する複数の既知データ(教師データ)を用いて教師あり学習を行うことによって得られる学習済モデルを示す情報であってもよいし、他の情報であってもよい。このような判定モデルは、例えば後述するモデル構築装置30によって生成されてもよい。制御部25は、判定モデル記憶部242に記憶される判定モデルを用いることによって、異常が生じているか否かの判定を行う。
【0031】
画像データ記憶部243は、データ取得部21によって取得された画像データを記憶する。画像データ記憶部243に記憶される画像データは、軌道90の異常の判定に使用される。
【0032】
判定結果情報記憶部244は、制御部25によって行われる判定処理の結果を示す情報(判定結果情報)を記憶する。図7は、判定結果情報の具体例を示す図である。判定結果情報は、例えば管理識別番号、判定結果及び異常情報を対応づけて有する。管理識別番号は、軌道90において異常が生じているか否かの判定対象となる単位領域毎に付与される識別情報である。判定結果及び異常情報は、管理識別番号が付与された単位領域毎に記録される。判定結果は、異常が生じているか否かの判定結果を示す情報である。異常情報は、異常が生じていると判定された単位領域において、生じている異常の内容を示す情報である。
【0033】
例えば、1本の枕木92が判定対象の単位領域である場合には、各枕木92の領域に対して管理識別番号が付与され、各枕木92に関して判定結果と異常情報とが記録される。図7の例では、管理識別番号“AA111”が示す単位領域には、異常が生じていると判定され、その異常の内容は線ばねが不足(欠損)しているというものである。管理識別番号“AA112”が示す単位領域には、異常が生じていると判定され、その異常の内容はねじくぎが破損しているというものである。管理識別番号“AA113”が示す単位領域には、異常が生じていないと判定されている。
【0034】
制御部25は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部25は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、データ制御部251、管理単位領域判定部252、異常判定部253及び出力制御部254として機能する。なお、制御部25の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0035】
データ制御部251は、データ取得部21を介して画像データを取得し、画像データ記憶部243に記録する。
【0036】
管理単位領域判定部252は、画像データ記憶部243から判定対象の画像データを取得し、画像データが示す画像において管理単位領域を判定する。判定対象の画像データは、静止画像であることが望ましい。画像データ記憶部243に複数の静止画像の画像データが記録されている場合には、管理単位領域判定部252は撮像された順序にしたがって静止画像の画像データを判定対象の画像データとして取得しても良い。画像データ記憶部243に動画像の画像データが記録されている場合には、所定の基準で動画像データから静止画像の画像データが取得されてもよい。所定の基準とは、例えばフレーム数の周期や時間の周期を示すものであってもよい。
【0037】
管理単位領域は、判定対象の単位領域の一部であってもよい。例えば、判定対象の単位領域が1本の枕木92である場合に、管理単位領域は枕木92に用いられている左右の締結装置93の一方であってもよい。この場合、一つの単位領域に対して、左の管理単位領域及び右の管理単位領域の二つの管理単位領域が対応づけられる。また、判定対象の単位領域は、上述した管理単位領域と一致する領域として定義されてもよい。
【0038】
図8は、画像上で判定された管理単位領域81の具体例を示す図である。図8の例では、各枕木92に設けられている各締結装置93を含む領域が管理単位領域として定義されている。そのため、一つの枕木92において、右の管理単位領域と、左の管理単位領域とが定義される。ただし、図8の例では、各画像は左右いずれか1本のレール91のほぼ真上から撮像されている。すなわち、右側のレール91を判定対象とする画像と、左側のレール91を判定対象とする画像と、がそれぞれ用いられる。そのため、各画像において、右の管理単位領域又は左の管理単位領域のいずれか一方のみが判定対象となる。なお、図8に示される画像は、いずれも左側のレール91を判定対象とする画像である。そのため、図8に示される画像を用いた処理では、左の管理単位領域が判定される。
【0039】
図8(A)の例では、下前方に向けて設置されたカメラが軌道90を撮影することによって得られた画像において二つの管理単位領域81が判定されている。図8(B)の例では、略鉛直下方に向けて設置されたカメラが軌道90を撮影することによって得られた画像において二つの管理単位領域81が判定されている。このように、複数の視線方向で撮像された画像が判定処理に用いられてもよい。管理単位領域判定部252は、処理対象となるそれぞれの画像において管理単位領域を判定する。
【0040】
管理単位領域判定部252は、管理単位領域を判定するためのパターン情報を用いて、パターンマッチングを行うことによって管理単位領域を判定しても良い。管理単位領域判定部252は、学習済モデルを用いて推論処理を行うことによって管理単位領域を判定しても良い。この場合、学習済モデルは、管理単位領域を撮像した画像を教師データとして用いた機械学習を行うことによって得られてもよい。このような学習済モデルは、例えば後述するモデル構築装置30によって生成されてもよい。後述するモデル構築装置30によって生成される管理単位領域判定モデルが、管理単位領域判定部252によって使用されてもよい。この場合、管理単位領域判定モデルは、記憶部24に記憶される。
【0041】
管理単位領域判定部252は、画像処理によって管理単位領域を判定しても良い。例えば、管理単位領域判定部252は、画像においてエッジ抽出処理を実行し、抽出されたエッジが所定の条件を満たす領域を管理単位領域と判定しても良い。所定の条件を満たす領域は、例えば略水平のエッジと、略垂直のエッジとが交差する点を含む所定の大きさの領域である。この場合、略水平のエッジは枕木92によって生じるエッジであり、略垂直のエッジはレール91によって生じるエッジである。
【0042】
異常判定部253は、管理単位領域毎に異常判定処理を実行する。異常判定処理は、その管理単位領域において、軌道90に生じている異常について判定する処理である。異常判定処理では、例えば異常の発生の有無と、発生している異常の内容と、について判定する。異常判定処理では、例えば本来あるべき部材が無いこと(欠損)が異常として判定されてもよい。異常判定処理では、例えば本来あるべき部材はあるもののその部材の状態に異常が生じてしまっていること(状態異常)が異常として判定されてもよい。状態異常の具体例として、部材に破損が生じてしまっていること、部材が変形してしまっていること、部材の締結状態に緩みが生じていること、などがある。以下、異常判定処理について二つの態様を説明する。
【0043】
[第一態様]
異常判定処理の第一態様では、異常判定部253は、管理単位領域の画像を用いて欠損と状態異常とをまとめて判定する。第一態様では、管理単位領域の画像と、その画像において欠損が生じている場合にはその欠損に関する正解情報と、その画像において状態異常が生じている場合にはその状態異常に関する正解情報と、の組み合わせである教師データを複数用いて教師あり学習を行うことによって得られた学習済モデルを用いて異常判定処理が行われる。欠損に関する正解情報は、例えば画像内において欠損が生じている位置を示す情報(例えば矩形の領域の情報)と、欠損している部材を示す情報と、のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0044】
図9は、第一態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。図9において、図中の矩形は管理単位領域を示す。図9(A)では、左上に位置しているねじが緩んでいる。そのため、図9(A)の管理単位領域に関して、学習済モデルを用いた異常判定処理の実行結果として、異常が生じているという判定結果が得られる。異常の内容としては、状態異常が生じているという判定結果が得られる。さらに、異常の内容として、左上に位置しているねじが緩んでいるという判定結果が得られてもよい。
【0045】
図9(B)では、左に位置しているクリップがずれている。そのため、図9(B)の管理単位領域に関して、学習済モデルを用いた異常判定処理の実行結果として、異常が生じているという判定結果が得られる。異常の内容としては、状態異常が生じているという判定結果が得られる。さらに、異常の内容として、左に位置しているクリップがずれているという判定結果が得られてもよい。
【0046】
[第二態様]
異常判定処理の第二態様では、異常判定部253は、まず管理単位領域の画像の中に含まれる各部材を検出する。このとき、異常判定部253は、検出された部材についてその種別を判定してもよい。そして、検出された部材毎に、状態異常について判定する。このとき、異常判定部253は、部材の種別に応じて生成された学習済モデルを用いて異常判定してもよい。さらに、異常判定部253は、判定対象の管理単位領域において検出された部材の種別と種別毎の数とに基づいて部材の欠損の有無を判定する。例えば、異常判定部253は、判定対象の管理単位領域の構成パターンを判定する。異常判定部253は、判定された構成パターンに含まれるべき部材情報を締結装置情報記憶部241から読み出す。そして、異常判定部253は、管理単位領域において検出された部材の種別及び数と、締結装置情報記憶部241に記憶されている構成パターンに応じた部材の種別及び数と、を比較することで、欠損の有無を判定する。異常判定部253は、状態異常の判定結果と欠損の判定結果との論理積を異常判定処理の判定結果として出力してもよい。すなわち、状態異常及び欠損のいずれか一方で異常と判定された場合には、他方が正常であったとしても異常という判定結果が出力されてもよい。以下、第二態様において行われる各処理について説明する。
【0047】
管理単位領域の画像の中に含まれる部材の検出は、例えば部材を判定するための学習済モデルを用いて実行されてもよい。このような学習済モデルは、例えば各部材の画像(と、その画像に含まれる部材の種別を示す正解ラベルと、を有する教師データを用いた学習処理によって生成されてもよい。管理単位領域の画像の中に含まれる部材の検出は、例えば部材を判定するためのパターン情報を用いて実行されてもよい。この場合、異常判定部253は、パターン情報に基づいて管理単位領域の中の複数の領域においてパターンマッチング処理を行い、所定の基準を満たす領域を、使用されているパターン情報に応じた種別の部材が含まれる領域として判定する。
【0048】
検出された部材毎に状態異常について判定する処理は、上述したように、部材の種別に応じて生成された学習済モデルを用いて行われてもよい。このような学習済モデルは、特定の部材について、その部材の正常な状態の画像と、その部材に状態異常が生じている画像と、に対してそれぞれ状態を示す正解ラベルが付与された教師データを用いた学習処理によって生成されてもよい。検出された部材毎に状態異常について判定する処理は、部材の種別と状態異常の内容と、の組み合わせに応じて生成されたパターン情報を用いて行われてもよい。この場合、異常判定部253は、検出された部材の種別に応じたパターン情報に基づいて、検出された部材の画像においてパターンマッチング処理を行い、所定の基準が満たされた場合に、使用されているパターン情報に応じた内容の状態異常が生じているとして判定する。
【0049】
判定対象の管理単位領域の構成パターンの判定は、管理単位領域の構成パターンを判定するための学習済モデルを用いて実行されてもよい。このような学習済モデルは、例えば管理単位領域の画像と、その管理単位領域の構成パターンの正解ラベルと、を有する教師データを用いた学習処理によって生成されてもよい。構成パターンの判定は、判定対象の管理単位領域において検出された部材の種別と種別毎の数とに基づいて行われてもよい。例えば、各構成パターンと、判定対象の管理単位領域において検出された部材の種別と種別毎の数と、の類似度を所定の基準で算出し、最も類似度が高い構成パターンを判定対象の管理単位領域の構成パターンとして判定してもよい。その他、どのような方法によって構成パターンが判定されてもよい。
【0050】
図10は、第二態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。図10では、状態異常と欠損のうち、状態異常について判定された。なお、図10に示される管理単位領域の画像は、図9に示される管理単位領域の画像と同じである。図10において、図中の矩形は検出された各部材を示す。図10(A)では、左上と右下にそれぞれ位置しているねじが検出され、タイプレートが1つ検出されている。それぞれの部材に関して、その部材の種別に応じた学習済モデルを用いた異常判定処理が行われる。これらの部材のうち、左上に位置しているねじが緩んでいる。そのため、図10(A)に関して、学習済モデルを用いた異常判定処理の実行結果として、左上のねじに異常が生じているという判定結果が得られる。さらに、異常の内容として、ねじが緩んでいるという判定結果が得られてもよい。
【0051】
図10(B)では、左に位置しているクリップがずれている。そのため、図10(B)の管理単位領域に関しては、左右それぞれのクリップについて学習済モデルを用いた異常判定処理が実行され、その実行結果として、左のクリップについて異常が生じているという判定結果が得られる。さらに、異常の内容として、クリップがずれているという判定結果が得られてもよい。
【0052】
図11は、第二態様の異常判定処理で判定された異常の具体例を示す図である。図11では、状態異常と欠損のうち、欠損について判定された。図11(A)では、構成パターンとしては、ねじくぎが4つ、タイプレートが1つである。これに対し、判定結果として、ねじくぎが1つ、タイプレートが1つ検出されている。そのため、異常判定部253は、ねじくぎが3つ欠損していると判定する。
【0053】
図11(B)では、構成パターンとしては、剛クリップが2つ、ボルトが2つ、くさびが2つである。これに対し、判定結果として、剛クリップが1つ、ボルトが1つ、くさびが1つ検出されている。そのため、異常判定部253は、剛クリップが1つ、ボルトが1つ、くさびが1つそれぞれ欠損していると判定する。
【0054】
異常判定処理についての説明は以上である。次に、出力制御部254について説明する。出力制御部254は、出力部22を介して異常判定処理の判定結果を出力する。出力部22が通信装置である場合には、出力制御部254は、判定結果を示す情報を他の装置に送信する。出力部22が画像表示装置である場合には、出力制御部254は判定結果を示す情報(文字や画像)を画像表示装置に表示させる。出力部22が音響出力装置である場合には、出力制御部254は判定結果を示す情報(音声)を音響出力装置から出力させる。
【0055】
図12は、判定装置20の動作の具体例を示すフローチャートである。まず管理単位領域判定部252は、判定対象となる画像を取得する(ステップS101)。管理単位領域判定部252は、判定対象となる画像において管理単位領域を判定する(ステップS102)。異常判定部253は、管理単位領域の画像に関して異常判定処理を実行し判定結果を取得する(ステップS103)。出力制御部254は、出力部22を介して判定結果を出力する(ステップS104)。
【0056】
このように構成された判定システム100では、軌道を撮影した画像から自動的に管理単位領域が判定され、管理単位領域において生じている異常が判定される。このように、特定の対象物のみを検知対象とするのではなく、まず管理単位領域を判定してその領域内で異常の判定が行われる。そのため、より広い種別の対象物や異常について、軌道において生じている異常を判定することが可能となる。
【0057】
また、判定される異常の種別には、欠損が含まれる。すなわち、本来あるべき部材が欠損していることが異常として判定される。従来のように最初に判定対象となる部材を検知して異常を判定する場合には、判定対象となる部材が欠損している場合には、その領域についてそもそも判定が行われない可能性があった。一方で、判定システム100では管理単位領域を判定してから欠損についても判定が行われる。したがって、従来では判定することが難しかった部材の欠損についても判定することが可能となる。そのため、より広い種別の異常について、軌道において生じている異常を判定することが可能となる。
【0058】
また、第二態様の異常判定処理において部材の種別毎に生成された学習済モデルが用いられて状態異常が判定される場合には、より精度よく状態異常について判定することが可能となる。
【0059】
次に、撮像装置10のバリエーションについて説明する。撮像装置10は、軌道上をレールに沿って移動する移動体の下部に設けられてもよい。このような移動体の具体例として、鉄道車両がある。図13図15は、鉄道車両の下部に設けられた撮像装置10の構成の具体例を示す図である。図16は、撮像装置10が設けられた鉄道車両60の外観例を示す図である。鉄道車両には、その鉄道車両が走行する軌道90のレール91を撮影するように、双方のレール91(左のレールと右のレール)それぞれに対して撮像装置10が設けられても良い。図16において、鉄道車両60には撮像装置10及び判定装置20が設けられていても良い。以下、各図を用いて特に撮像部12について説明する。
【0060】
図13は、レールに沿った視線方向で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。撮像部12は、フレーム121、遮光部122、照明器具123及びカメラ124を備える。遮光部122、照明器具123及びカメラ124はフレーム121に設けられている。フレーム121は、レール91上を走行する鉄道車両の下部に設けられる。遮光部122は、外光(例えば日光の直接光や反射光)がカメラ124のレンズに侵入することを抑止するように、フレーム121から下方に向けて伸びるように設けられる。照明器具123は、レール91を含む領域を照らすようにレール91に向けて設けられる。カメラ124は、レール91を含む領域を撮像するようにレール91に向けて設けられる。照明器具123の照度とカメラ124の撮像パラメータ(例えばシャッタースピード、絞り等)は、鉄道車両の走行速度や外光の明るさや管理単位領域の間隔やカメラ124とレール91との間の距離等に基づいて設定される。この設定により、画像が過度にぶれることなく、適切な明るさで撮像される。
【0061】
照明器具123及びカメラ124は、レール91の略中心の上部に位置するように配置されることが望ましい。図14は、レール91に沿った軸に水平面上で直交する視線方向で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。フレーム121には、照明器具123として、第一の照明器具123_1と第二の照明器具123_2とが設けられる。第一の照明器具123_1と第二の照明器具123_2とは、それぞれ異なる光軸でレール91の周囲に光を照射する。フレーム121には、カメラ124として、第一のカメラ124_1と第二のカメラ124_2とが設けられる。
【0062】
第一のカメラ124_1と第二のカメラ124_2とは、それぞれ異なる視点から異なる視線方向で撮像するように設けられる。このとき、第一のカメラ124_1の視野(撮像される領域)126_1と第二のカメラ124_2の視野126_2とは、その一部が重複するように設けられてもよい。第一のカメラ124_1は鉄道車両の進行方向前方のレール91を撮像するように設けられ、第二のカメラ124_2はレール91(地面)を略鉛直方向から撮像するように設けられている。第一のカメラ124_1は、例えば水平面に対して斜め下30度~60度方向に向けて撮像するように配置されてもよい。このように設けられた第一のカメラ124_1によって撮像された画像を用いることによって、略鉛直方向から撮像された画像のみでは判定が難しい異常を判定することが可能となる。このような異常の具体例として、ボルトの緩み、クリップの上下の外れのような鉛直方向の変異として生じる異常(ゆがみ)がある。
【0063】
例えば、第一のカメラ124_1によって撮像される画像の具体例が図8(A)に示される画像であり、第二のカメラ124_2によって撮像される画像の具体例が図8(B)に示される画像である。図15は、レール91(地面)を鉛直方向から見下ろす視線で見た場合の撮像部12の構成の具体例を示した図である。図15からも明らかなように、第一の照明器具123_1、第二の照明器具123_2、第一のカメラ124_1及び第二のカメラ124_2はいずれもその中心がレール91の中心の略真上に位置するように設けられる。
【0064】
撮像装置10の撮像部12が図13図15に示されるように構成されることによって、判定対象となる軌道90についてレール91の略真上から鉄道車両の走行に伴って連続して撮像を行うことが可能となる。
【0065】
このように構成された場合、異常判定処理に用いられる学習済モデルは、第一のカメラ124_1によって撮像された画像と第二のカメラ124_2によって撮像された画像とを混在させた教師データを用いた学習処理によって生成されてもよい。また、異常判定処理に用いられる学習済モデルは、第一のカメラ124_1によって撮像された画像のみを含む教師データを用いた学習処理と、第二のカメラ124_2によって撮像された画像のみを含む教師データを用いた学習処理と、をそれぞれ行うことで各カメラに応じて生成されてもよい。カメラに応じて学習済モデルが生成される場合、判定装置20の判定モデル記憶部242は、カメラに応じた学習済モデルをそれぞれ記憶する。異常判定部253は、判定対象の画像が第一のカメラ124_1によって撮像された画像である場合には、第一のカメラ124_1によって撮像された画像を用いて生成された学習済モデルを用いて異常判定処理を行う。異常判定部253は、判定対象の画像が第二のカメラ124_2によって撮像された画像である場合には、第二のカメラ124_2によって撮像された画像を用いて生成された学習済モデルを用いて異常判定処理を行う。このように構成されることによって、異常判定処理の精度をさらに向上させることが可能となる。なお、各画像がどのカメラで撮像されたかについては、例えば画像データに対してその画像の撮影を行ったカメラを示す識別情報(カメラ識別情報)を対応づけて記録することによって判別されてもよい。
【0066】
また、図13図15に示されるように、撮像部12には位置情報取得部125が設けられても良い。位置情報取得部125は、撮像部12の位置を示す情報(位置情報)を取得する。位置情報は、例えば緯度及び経度で表される情報であってもよいし、軌道90が設けられた施設等における基準位置からの相対的な位置を示す情報であってもよいし、他の態様で表されてもよい。この場合、撮像部12は、カメラ124(第一のカメラ124_1及び第二のカメラ124_2)によって撮像された画像と、各画像が撮像された位置を示す位置情報と、を対応づけて出力してもよい。
【0067】
この場合、記憶部14は、撮像された画像と位置情報とを対応づけて記録する。判定装置20の異常判定部253は、判定結果情報において管理識別番号に代えて位置情報を対応づけて記録してもよい。記録される位置情報は、判定に用いられた画像に対応づけられている位置情報である。
【0068】
記憶部24は、位置情報と、その位置に存在する単位領域の管理識別番号と、を対応づけて予め記憶していても良い。この場合、判定装置20の異常判定部253は、判定に用いられた画像の位置情報に対応する管理識別番号を記憶部24から読み出し、読み出された管理識別番号に対応づけて判定結果及び異常情報を記録してもよい。このような処理によって、判定結果情報において管理識別番号と判定結果及び異常情報とが正確に対応づけられていても良い。また、判定装置20の管理単位領域判定部252は、判定対象となる管理識別番号に対応する位置情報を記憶部24から読み出し、その位置情報に対応する画像を画像データ記憶部243から読み出して処理を行ってもよい。
【0069】
図16に示されるような鉄道車両60は、複数の車輪と、車輪を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御装置と、撮像装置10と、を備える。車輪は、判定対象となる軌道90のレール91に接して回転する。駆動部は、エンジンやモーターを用いて構成され、制御装置による制御にしたがって車輪を回転させる。制御装置は、少なくともプロセッサーやメモリー等のハードウェアを備え、操縦者の操作や予め記録されたプログラム等にしたがって鉄道車両60(特に駆動部)の動作を制御する。
【0070】
撮像装置10は、軌道90の上空を移動する飛行体に設けられてもよい。このような飛行体の具体例として、例えばドローンがある。図17は、小型飛行体として構成された撮像装置10の外観の具体例を示す図である。図18は、小型飛行体として構成された撮像装置10の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。小型飛行体として構成された撮像装置10は、データ出力部11、撮像部12、操作部13、記憶部14、制御部15、駆動部16、位置情報取得部17及び本体18を備える。データ出力部11~制御部15(移動制御部153を除く)の構成は、上述した撮像装置10の構成と同様である。
【0071】
移動制御部153は、駆動部16の駆動を制御することによって、撮像装置10の移動を制御する。移動制御部153は、操作部13を介して入力される操作情報に基づいて撮像装置10の移動を制御してもよい。移動制御部153は、撮像部12によって撮像される画像に基づいて撮像装置10の移動を制御してもよい。移動制御部153は、位置情報取得部17によって取得される位置情報に基づいて撮像装置10の移動を制御してもよい。例えば、移動制御部153は、位置情報及び画像に基づいて、判定対象となる軌道90のレール91の上をレール91に沿って略一定の速さで移動するように駆動部16を制御してもよい。
【0072】
駆動部16は、小型飛行体を移動させるために駆動する器具である。駆動部16は、例えばプロペラとして構成されてもよいし、空気等の気体を噴出することによって本体18を移動させるための器具を用いて構成されてもよいし、他の態様で構成されてもよい。本体18は、飛行体の本体であり、撮像装置10が備える各部を保持する。
【0073】
位置情報取得部17は、撮像装置10の位置を示す情報(位置情報)を取得する。位置情報は、例えば緯度及び経度で表される情報であってもよいし、軌道90が設けられた施設等における基準位置からの相対的な位置を示す情報であってもよいし、他の態様で表されてもよい。この場合、撮像制御部151は、撮像部12のカメラによって撮像された画像と、各画像が撮像された位置を示す位置情報と、を対応づけて記憶部14に記録してもよい。このように記録された画像を用いた場合にも、上述した鉄道車両の撮像部12で撮像された画像の位置情報を用いた場合と同様の処理が可能である。すなわち、判定装置20の異常判定部253は、判定結果情報において管理識別番号に代えて位置情報を対応づけて記録してもよい。また、判定装置20の異常判定部253は、判定に用いられた画像の位置情報に対応する管理識別番号を記憶部24から読み出し、読み出された管理識別番号に対応づけて判定結果及び異常情報を記録してもよい。
【0074】
図19は、モデル構築装置30の機能構成の具体例を示す概略ブロック図である。モデル構築装置30は、例えばパーソナルコンピューターやサーバー装置などの情報処理装置を用いて構成される。モデル構築装置30は、通信部31、記憶部32及び制御部33を備える。
【0075】
通信部31は、通信機器である。通信部31は、例えばネットワークインターフェースとして構成されてもよい。通信部31は、制御部33の制御に応じて、ネットワークを介して他の装置とデータ通信する。このようなネットワークは、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワークは、例えばインターネットを用いて構成されてもよいし、ローカルエリアネットワーク(LAN)を用いて構成されてもよい。ネットワークは、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。通信部31は、無線通信を行う装置であってもよいし、有線通信を行う装置であってもよい。
【0076】
記憶部32は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部32は、制御部33によって使用されるデータを記憶する。記憶部32は、例えば既知データ記憶部321及び判定モデル記憶部322として機能してもよい。
【0077】
既知データ記憶部321は、モデル構築装置30において実行されるモデル構築処理に用いられる既知データを記憶する。既知データは、例えば教師あり学習処理に用いられる教師データであってもよい。既知データ記憶部321が記憶する既知データは、例えば管理単位領域を撮像した画像と、その画像が管理単位領域を示すことを示す正解ラベルと、を含む教師データであってもよい。既知データ記憶部321が記憶する既知データは、例えば、軌道90の管理単位領域の画像と、その画像において異常が生じているか否かを示す正解ラベルと、を含む教師データであってもよい。既知データ記憶部321が記憶する既知データは、管理単位領域の画像と、その画像において欠損が生じている場合にはその欠損に関する正解情報と、その画像において状態異常が生じている場合にはその状態異常に関する正解情報と、の組み合わせである教師データであってもよい。既知データ記憶部321が記憶する既知データは、他のデータであってもよい。
【0078】
判定モデル記憶部322は、既知データ記憶部321に記憶される既知データを用いたモデル構築処理によって得られる判定モデルを記憶する。判定モデル記憶部322は、例えば既知データを教師データとして用いた教師あり学習処理によって得られる学習済モデルを判定モデルとして記憶してもよい。
【0079】
管理単位領域判定モデル記憶部323は、既知データ記憶部321に記憶される既知データを用いたモデル構築処理によって得られる管理単位領域判定モデルを記憶する。管理単位領域判定モデル記憶部323は、例えば既知データを教師データとして用いた教師あり学習処理によって得られる学習済モデルを管理単位領域判定モデルとして記憶してもよい。
【0080】
制御部33は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部33は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報制御部331及びモデル構築制御部332として機能する。なお、制御部33の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0081】
情報制御部331は、情報の入出力を制御する。例えば、情報制御部331は、他の機器(情報処理装置や記憶媒体)から既知データを取得し、既知データ記憶部321に記録する。例えば、情報制御部331は、判定モデル記憶部322に記憶されている判定モデルを、他の装置(例えば判定装置20)に対して送信する。例えば、情報制御部331は、管理単位領域判定モデル記憶部323に記憶されている判定モデルを、他の装置(例えば判定装置20)に対して送信する。
【0082】
モデル構築制御部332は、既知データ記憶部321に記憶される既知データを用いてモデル構築処理を行うことで、判定モデルや管理単位領域判定モデルを構築する。モデル構築制御部332は、例えば、既知データ記憶部321に記憶されている既知データを教師データとして用いて教師あり学習処理を実行することで判定モデルや管理単位領域判定モデルを構築してもよい。なお、モデル構築制御部332が実行する処理は教師あり学習処理に限定される必要はない。例えば、モデル構築制御部332は既知データを用いて多変量解析等の統計処理を行うことによって推定モデルを構築してもよい。
【0083】
このような学習処理の具体例として、例えば、分類の機械学習の処理が用いられてもよいし、回帰の機械学習の処理が用いられてもよいし、ニューラルネットワークやディープラーニング等の他の学習技術が用いられてもよい。モデル構築制御部332は、生成された判定モデルを判定モデル記憶部322に記録する。モデル構築制御部332は、生成された管理単位領域判定モデルを管理単位領域判定モデル記憶部323に記録する。このようなモデル構築制御部332によって得られた判定モデルや管理単位領域判定モデルは、判定装置20に対して送信され、判定装置20の判定モデル記憶部242に記録されてもよい。
【0084】
図20は、本実施形態に適用される情報処理装置70のハードウェア構成例の概略を示す図である。情報処理装置70は、プロセッサー71、主記憶装置72、通信インターフェース73、補助記憶装置74、入出力インターフェース75及び内部バス76を備える。プロセッサー71、主記憶装置72、通信インターフェース73、補助記憶装置74及び入出力インターフェース75は、内部バス76を介して互いに通信可能に接続される。情報処理装置70は、例えば判定装置20及びモデル構築装置30に適用されてもよい。この場合、例えばデータ取得部21、出力部22及び通信部31は通信インターフェース73を用いて構成されてもよい。例えば記憶部24及び記憶部32は補助記憶装置74を用いて構成されてもよい。また、制御部25及び制御部33は、プロセッサー71及び主記憶装置72を用いて構成されてもよい。例えばデータ取得部21及び出力部22は入出力インターフェース75を用いて構成されてもよい。
【0085】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0086】
100…判定システム, 10…撮像装置, 20…判定装置, 11…データ出力部, 12…撮像部, 121…フレーム, 122…遮光部, 123…照明器具, 124…カメラ,125…位置情報取得部, 126…視野, 13…操作部, 14…記憶部, 15…制御部, 151…撮像制御部, 152…データ制御部, 153…移動制御部, 16…駆動部, 18…本体, 21…データ取得部, 22…出力部, 23…操作部, 24…記憶部, 241…締結装置情報記憶部, 242…判定モデル記憶部, 243…画像データ記憶部, 244…判定結果情報記憶部, 25…制御部, 251…データ制御部, 252…管理単位領域判定部, 253…異常判定部, 254…出力制御部, 30…モデル構築装置, 31…通信部, 32…記憶部, 321…既知データ記憶部, 322…判定モデル記憶部, 323…管理単位領域判定モデル記憶部, 33…制御部, 331…情報制御部, 332…モデル構築制御部, 60…鉄道車両, 70…情報処理装置, 71…プロセッサー, 72…主記憶装置, 73…通信インターフェース, 74…補助記憶装置, 75…入出力インターフェース, 76…内部バス, 81…管理単位領域, 90…軌道, 91…レール, 92…枕木, 93…締結装置, 93a…継ぎ目板, 94…道床
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20