(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079195
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ヘキサフルオロイソプロパノールを含む接着剤及びコーティング剤
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240604BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240604BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240604BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240604BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09D201/00
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191992
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】597115750
【氏名又は名称】株式会社カネコ化学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】長田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 清
(72)【発明者】
【氏名】金子 智一
【テーマコード(参考)】
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J038JA07
4J038JA17
4J038NA12
4J038PC08
4J040HB04
4J040HB07
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】 樹脂への密着性に優れる、接着剤及びコーティング剤を提供すること。
【解決手段】 ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂同士を接着するための接着剤又は前記樹脂のためのコーティング剤であって、(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、(B)特定のハロゲン系有機化合物と、(C)前記樹脂から選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である、接着剤、及び、コーティング剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂同士を接着するための接着剤であって、
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、
(B)ハロゲン系有機化合物と、
(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、
前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、
成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、
成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である、接着剤。
【請求項2】
接着剤によって接着される樹脂と、成分(C)が同じである、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
工程(A1)一方の樹脂を含む基材に、請求項1又は2に記載の接着剤を適用して、接着部を形成する工程、及び工程(B1)もう一方の樹脂を含む基材を積層して、前記接着部を介して、基材同士を貼り合わせる工程を含み、前記樹脂が、独立して請求項1に定義された樹脂である、接着体の製造方法。
【請求項4】
ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂のためのコーティング剤であって、
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、
(B)ハロゲン系有機化合物と、
(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、
前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、
成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、
成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である、樹脂のためのコーティング剤。
【請求項5】
コーティング剤によってコートされる樹脂と、成分(C)が同じである、請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項6】
工程(C1):樹脂を含む基材に、請求項4又は5に記載のコーティング剤を適用して、樹脂のコーティング剤付き基材を得る工程、及び、工程(D1):樹脂のコーティング剤付き基材から、前記コーティング剤の溶剤部分を除去して、樹脂のコーティング膜付き基材を得る工程を含み、前記樹脂が、請求項4に定義された樹脂である、樹脂のコーティング膜付き基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサフルオロイソプロパノールを含む接着剤及びコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ペプチド類を溶解させるための溶媒として、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)及び塩化メチレンからなる混合溶媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた接着剤やコーティング剤については記載されていない。本発明は、樹脂に対する密着性に優れる、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた、接着剤及びコーティング剤を提供することを課題とする。
【0005】
本発明者らによって、樹脂基材の接着の用途において、ヘキサフルオロイソプロパノールに樹脂を溶解させて溶液とすることで、樹脂に対する密着性に優れる接着剤となることが見いだされた。また、本発明者らによって、樹脂基材への樹脂のコーティングの用途において、ヘキサフルオロイソプロパノールに樹脂を溶解させて溶液とすることで、樹脂に対する密着性に優れるコーティング剤となることが見いだされた。
【0006】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂同士を接着するための接着剤であって、
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、
(B)ハロゲン系有機化合物と、
(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、
前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、
成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、
成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である、接着剤。
[2]接着剤によって接着される樹脂と、成分(C)が同じである、[1]に記載の接着剤。
[3]工程(A1)一方の樹脂を含む基材に、[1]又は[2]に記載の接着剤を適用して、接着部を形成する工程、及び工程(B1)もう一方の樹脂を含む基材を積層して、前記接着部を介して、基材同士を貼り合わせる工程を含み、前記樹脂が、独立して[1]に定義された樹脂である、接着体の製造方法。
[4]ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂のためのコーティング剤であって、
(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、
(B)ハロゲン系有機化合物と、
(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、
前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、
成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、
成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である、樹脂のためのコーティング剤。
[5]コーティング剤によってコートされる樹脂と、成分(C)が同じである、[4]に記載のコーティング剤。
[6]工程(C1):樹脂を含む基材に、[4]又は[5]に記載のコーティング剤を適用して、樹脂のコーティング剤付き基材を得る工程、及び、工程(D1):樹脂のコーティング剤付き基材から、前記コーティング剤の溶剤部分を除去して、樹脂のコーティング膜付き基材を得る工程を含み、前記樹脂が、[4]に定義された樹脂である、樹脂のコーティング膜付き基材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、樹脂に対する密着性に優れる、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた、接着剤及びコーティング剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、試験例6で得られた印字された樹脂基材の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(用語の定義)
「(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール」を「(A)」又は「成分(A)」という場合がある。他の成分についても同様である。
数値範囲に関して「~」は、その両端の値を含むことを意味する。即ち、「1~30質量部」は、「1質量部以上30質量部以下」を意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。
【0010】
[接着剤]
接着剤は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂同士を接着するための接着剤である。
【0011】
また、接着剤は、(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、(B)ハロゲン系有機化合物と、(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である。
【0012】
接着剤は、成分(C)を特定の量で含むため、塗布に適した粘性を有する。そのため、接着剤は、基材への密着性に優れるのみではなく、液だれがしにくく、作業性に優れる。また、接着剤は、接着剤によって貼り合わされる両方の樹脂への密着性に優れるため、接着性に優れた接着剤である。
【0013】
<(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール>
成分(A)は、接着剤の溶剤成分である。1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールは、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールとも呼ばれる。
【0014】
<(B)ハロゲン系有機化合物>
成分(B)は、任意選択的に接着剤に含まれる成分である。即ち、接着剤は、成分(B)を含んでいるか、又は、含まない。接着剤が、成分(B)を必須成分として含む場合、成分(B)を含まない場合(即ち、成分(A)のみを含む場合)に比べて、接着剤の硬化時間が早まり、作業性により優れる傾向がある。接着剤が成分(B)を含む場合、成分(C)の溶解性及び/又は乾燥性が向上する場合がある。これにより、接着剤の作業性が向上する場合がある。
【0015】
成分(B)は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上である。
【0016】
≪(b1)含フッ素オレフィン≫
(b1)含フッ素オレフィンは、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよく、アルコキシ基で置換されていてもよい、フルオロオレフィン化合物である。成分(b1)の炭素原子数は、3~8であることが好ましく、3~7であることが特に好ましい。成分(b1)の不飽和結合の数は、1以上であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。成分(b1)は、水素原子と塩素原子を含み、かつ、臭素原子を含まない、ハイドロクロロフルオロオレフィン化合物であってもよく、水素原子を含み、かつ、塩素原子と臭素原子を含まない、ハイドロフルオロオレフィンであってもよい。
【0017】
成分(b1)としては、(b1-1)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))、(b1-2)(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(E))、(b1-3)(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(Z))、(b1-4)(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HCFO-1336mzz(Z))、(b1-5)メトキシパーフルオロヘプテン(メトキシトリデカフルオロヘプテン)、(b1-6)1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(b1-7)1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、(b1-8)1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン、(b1-9)(Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z))、(b1-10)(E)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(E))、(b1-11)1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン等が挙げられる。
【0018】
成分(b1)の市販品として、CELEFIN(登録商標)1233Z(HCFO-1233zd(Z)、HFO-1233zd(Z))(セントラル硝子株式会社製)、AMOLEA(登録商標)AS-300(AGC株式会社製)((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd(Z))及び安定剤の混合物))、オプテオン(商標)SF33(HCFO-1336mzz(Z)90質量%以上100質量%以下)(三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社製)、オプテオン(商標)SF10(メトキシパーフルオロヘプテン異性体混合物99質量%超)(三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社製)、DR CFX70(開発品)(三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
≪(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)≫
(b2)ハイドロフルオロエーテル(HFE)((b1)含フッ素オレフィンを除く)は、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含む化合物である。成分(b2)の総炭素原子数は、2~20であることが好ましく、3~10であることが特に好ましい。成分(b2)のエーテル結合の数は、1以上であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。
【0020】
成分(b2)としては、(b2-1)1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(別名1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、HFE-347pc-f)、(b2-2)メチルノナフルオロブチルエーテル、(b2-3)メチルノナフルオロイソブチルエーテル、(b2-4)エチルノナフルオロイソブチルエーテル、(b2-5)エチルノナフルオロブチルエーテル、(b2-6)1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、(b2-7)1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、(b2-8)1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ブタン、(b2-9)メチルパーフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
【0021】
≪(b3)ハイドロフルオロカーボン≫
(b3)ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子のみからなる化合物であり、炭素-炭素二重結合を有さない化合物である。成分(b3)としては、(b3-1)1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、(b3-2)1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee)、(b3-3)1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC-c447ef)、(b3-4)1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(HFC-76-13sf)、(b3-5)1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン(HFC-52-13p)、(b3-6)1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン(HFC-569sf)等が挙げられる。
【0022】
≪(b4)ハイドロブロモカーボン≫
(b4)ハイドロブロモカーボンは、ハイドロブロモカーボンは、炭素原子、臭素原子及び水素原子のみからなる化合物である。成分(b4)としては、(b4-1)1-ブロモプロパン(1-ブロモプロパン)及び(b4-2)イソブチルブロマイド等が挙げられる。
【0023】
≪(b5)パーフルオロポリエーテル≫
(b5)パーフルオロポリエーテル(PFPE)は、炭素原子、フッ素原子及び酸素原子のみからなる化合物である。(b5)の市販品としては、ガルデン(登録商標)HT135(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)、ガルデン(登録商標)HT55(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)、ガルデン(登録商標)HT70(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
≪(b6)その他の成分(B)≫
(b6)その他の成分(B)は、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンである。
【0025】
成分(B)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。また、成分(b1)~成分(b6)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0026】
<(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂>
成分(C)は、接着剤の接着成分を構成する成分である。接着剤から成分(A)及び成分(B)が揮発することで、成分(C)が固化し、これにより、接着剤の機能を発揮する。成分(C)は、目的に応じて適宜添加される添加剤を含んでいてもよい。成分(C)は、反応硬化型であってもよい。成分(C)は、市販品を用いてもよい。成分(C)の形態は任意であり、後述する樹脂基材の形態であってもよい。
【0027】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂、ポリヒドロキシ酪酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリエステルアミドイミド樹脂等が挙げられる。
【0028】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合により得られる、ポリエステルである。ポリエチレンテレフタレート樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0029】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4-ブタンジオールとテレフタル酸の脱水縮合により得られる、ポリエステルである。ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0030】
ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂は生分解性コポリエステルの一種である。ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0031】
ポリアミド樹脂は、アミド結合を有する共重合体であり、ω-アミノ酸の重縮合反応で合成されてもよく、ジアミンとジカルボン酸の共縮重合反応で合成されてもよい。ポリアミド樹脂は脂肪族であっても、芳香族であってもよい。ポリアミド樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。ポリアミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂であってもよい。
【0032】
アクリル樹脂としては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。アクリル樹脂は、フッ素原子を有さないことが好ましく、ハロゲン原子を有さないことが特に好ましい。アクリル樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0033】
ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性プラスチックの一種である。モノマー単位同士の接合部が、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)で構成される。ポリカーボネート樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0034】
ポリ乳酸樹脂は、乳酸がエステル結合によって重合した高分子である。ポリ乳酸樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0035】
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂は、ゴム質の重合体であるポリブタジエンが分散された、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体であるアクリロニトリル・スチレン系共重合体であり、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの三成分を主体とする。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0036】
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等のジイソシアナートと、ポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。ウレタン樹脂がフォーム状である場合、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれであってもよい。ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤等が挙げられる。
【0037】
スチロール樹脂は、スチレンをモノマーとするポリマーであり、その硬化物はポリスチレンとも呼ばれる。スチロール樹脂がフォーム状である場合、スチロール樹脂の硬化フォームは、発泡スチロールとも呼ばれる。スチロール樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0038】
ポリアセタール樹脂は、ポリオキシメチレン単位を含むポリマーである。ポリアセタール樹脂は、分子中にオキシメチレン単位以外に、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位等のオキシアルキレン単位を有していてもよい。ポリアセタール樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0039】
フッ素樹脂は、フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂の総称であり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、CTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンジフルオライド)、PVF(ポリビニリデンフルオライド)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、ECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)等が含まれる。フッ素樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。
【0040】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、2,6-ジメチルフェノール(2,6-キシレノール)の酸化重合により得られる。ポリフェニレンエーテル樹脂に配合される添加剤としては、相溶化剤、発泡剤、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂は、他の樹脂とのポリマーアロイである変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)であってもよく、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂とのポリマーアロイであってもよい。
【0041】
<更なる成分>
接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外の成分を含むことができる。このような成分として、(D)更なる成分及び(E)添加剤が挙げられる。
【0042】
≪(D)更なる成分≫
(D)更なる成分としては、(d1)ニトロ化合物、(d2)エーテル、(d3)エステル((d2)エーテルを除く)、(d4)アルコール((d2)エーテルを除く)、(d5)アミド化合物、(d6)クロロオレフィン、(d7)炭化水素及び(d8)塩素化炭化水素((d6)クロロオレフィン及び(d7)炭化水素を除く)が挙げられる。
【0043】
≪(d1)ニトロ化合物≫
(d1)ニトロ化合物は、分子中に1以上のニトロ基を有する化合物であれば特に限定されない。(d1)成分としては、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパン等のニトロアルカンが挙げられる。
【0044】
≪(d2)エーテル≫
(d2)エーテルとしては、炭素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含み、直鎖又は分岐状であってもよく、環状又は非環状であってもよい、エーテル系溶剤である。(d2)成分の具体例としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、1,2-ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
≪(d3)エステル((d2)エーテルを除く)≫
(d3)エステル((d2)エーテルを除く)としては、例えば、モノエステル系溶剤、カルボニル基を二つ有するエステル系溶剤、炭酸エステル系溶剤及び環状エステル系溶剤が挙げられる。また、(d3)成分の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sed-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、大豆脂肪酸メチルエステル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、二塩基酸エステル(DBE)、アセト酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、しゅう酸ジメチル、しゅう酸ジエチル等が挙げられる。(d3)成分は、炭酸ジメチルであってもよい。
【0046】
≪(d4)アルコール((d2)エーテルを除く)≫
(d4)アルコール((d2)エーテルを除く)としては、モノアルコール系溶剤が挙げられる。また、(d4)成分の具体例としては、エタノール、メタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、イソブチルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブチルアルコール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、2-プロピン-1-オール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0047】
≪(d5)アミド化合物≫
(d5)アミド化合物は、アミド結合を有する環状又は非環状の化合物である。(d5)成分としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド等が挙げられる。
【0048】
≪(d6)クロロオレフィン((b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンを除く)≫
(d6)クロロオレフィン((b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンを除く)は、炭素原子及び塩素原子を含み、水素原子を含んでいてもよい、オレフィン化合物である。
【0049】
≪(d7)炭化水素≫
(d7)炭化水素は、炭素及び水素のみからなり、直鎖又は分岐状であってもよく、環状又は非環状であってもよく、炭素-炭素二重結合を有していてもよい、炭化水素系溶剤である。(d7)成分としては、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、シクロヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノナン、イソノナン、デカン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、リモネン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-エチル-2-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、イソドデカン、イソパラフィン類、ナフテン類、芳香族系炭化水素等が挙げられる。炭化水素系溶剤は、合成物であってもよい。
【0050】
≪(d8)塩素化炭化水素((d6)クロロオレフィン及び(d7)炭化水素を除く)≫
(d8)塩素化炭化水素((d6)クロロオレフィン及び(d7)炭化水素を除く)は、塩素原子及び炭素原子を含み、水素原子を含んでいてもよい炭化水素系溶剤である。
【0051】
(D)更なる成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。また、(d1)成分~(d8)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0052】
≪(E)添加剤≫
(E)添加剤は、成分(D)以外の成分であって、成分(A)及び任意選択的に成分(B)を含む溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に制限されない。(E)添加剤としては、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、界面活性剤及びキレート剤等からなる群より選択される1種以上が挙げられる。なお、(E)添加剤は、成分(C)に添加される添加剤であってもよい。
【0053】
紫外線吸収剤及び酸化防止剤は、溶剤組成物の長期保存等における安定性を向上させる成分である。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
【0054】
フェノール系酸化防止剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタドデシル-3-[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート]、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、4-メトキシフェ
ノール、2-メトキシフェノール等が挙げられる。メチルヒドロキノン(2,5-ジヒドロキシトルエン)、4-メトキシフェノールは重合禁止剤としても用いることができる。
【0055】
アミン系酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、N,N-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン誘導体、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル)イソシアヌレート等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤は、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、ジラウリル-3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3-ジオジプロピオネート、ジステアリル-3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンズイミダゾール、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等が挙げられる。リン系酸化防止剤は、トリス-ノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(イソデシル)フォスファイト等が挙げられる。
【0056】
キレート剤は、アミノカルボン酸系のキレート剤が挙げられ、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸やそれらの塩等が好ましい。
【0057】
防錆剤は、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミンが挙げられる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤が挙げられ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤等が好ましい。
【0058】
上記した成分以外の添加剤は、成分(A)及び任意選択的に成分(B)を含む溶剤組成物の分野で慣用されている成分であれば特に限定されず、適宜用いることができる。
成分(E)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0059】
<接着剤の可能性のある態様>
接着剤は、硬化速度の観点から、成分(B)を含むことが好ましい。
接着剤は、硬化速度の観点から、成分(B)が成分(b1)を含むことが好ましい。
接着剤において、成分(C)の全てが、接着剤の溶剤成分(即ち、成分(A)及び成分(B)、又は成分(A)のみ)に溶解して、均一な相を形成していてもよく、成分(C)が溶解剤によってゲル化していてもよい。塗布性の観点から、接着剤において、成分(C)の全てが、接着剤の溶剤成分に溶解して、均一な相を形成していることが好ましい。
【0060】
<接着剤の組成>
接着剤において、各成分の含有量は以下の通りである。
成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量は、20質量部以上100質量部以下であり、30~80質量部であることが好ましく、50~80質量部であることが特に好ましい。成分(A)の含有量が20質量部以上である場合、成分(C)を溶解することが容易となり、接着剤を製造する際の作業性に優れる傾向がある。
【0061】
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量は、1質量部以上30質量部以下であり、1質量部以上22質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、3~14質量部であることが特に好ましい。また、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量は、10重量部超14質量部以下であってもよい。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上である場合、成分(C)により、接着剤の粘度が向上し易く、基材への塗布の作業性が向上する傾向がある。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が30質量部を超える場合、接着剤とした際に成分(C)の溶け残りが生じる場合があり、均一な接着部を得ることが困難になる傾向がある。また、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が22質量部以下である場合、成分(C)の全てが、より素早く接着剤の溶剤成分に溶解して、均一な相を形成し易くなる傾向がある。
【0062】
成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量は、200質量部以上であり、250質量部超であることが好ましく、270質量部以上であることがより好ましく、300質量部以上であることが特に好ましい。成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部未満である場合、接着剤とした際に成分(C)の溶け残りが生じる場合があり、均一な接着部を得ることが困難になる傾向がある。また、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が250質量部超である場合、成分(C)の全てが、より素早くに接着剤の溶剤成分に溶解して、均一な相を形成し易くなる傾向がある。なお、成分(C)の合計100質量部に対する、成分(A)の含有量の上限は、前記した成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対する、成分(C)の含有量を満足する範囲であれば任意である。
【0063】
接着剤の総量を100質量部としたときに、溶剤成分である成分(A)及び成分(B)の含有量の合計は、60質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましく、90質量部以上であることが特に好ましい。残余は、成分(C)、成分(D)及び成分(E)である。なお、接着剤の総量を100質量部としたときに、成分(D)と成分(E)の含有量の合計は、0質量部以上であることができる。成分(D)と成分(E)のそれぞれの含有量は、前記した成分(A)、成分(B)及び成分(C)の含有量の合計となる範囲であれば特に限定されず、20質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、5質量部以下であってもよい。
【0064】
<接着剤の製造方法>
接着剤の製造方法は任意である。接着剤に含まれる原料成分を、公知の方法を適宜選択して行うことで、例えば、撹拌、混合、溶解及び分散からなる群より選択される1種以上の手段を行うことで製造することができる。
【0065】
<接着される樹脂>
接着剤は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂同士を接着するために用いられる。これらの樹脂は、成分(C)において前記した通りである。なお、接着剤によって接着される樹脂から構成される基材を「樹脂基材」という場合がある。
【0066】
樹脂基材には、樹脂の硬化物、及び、樹脂に配合される添加剤を含む樹脂組成物の硬化物が含まれる。また、樹脂の硬化物には、樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物(例えば、紫外線(UV)硬化型の接着剤の硬化物)のほかに、エラストマーのような弾性を有する硬化物、及び、反応希釈剤等の樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇することによって固化した固化物も含まれる。接着される樹脂の形状は任意である。
【0067】
接着部(接着剤が適用される部分)が、前記した樹脂である限り、金属等の他の材質を含んでいてもよい。金属としては、金、銀、亜鉛、ニッケル、鉄、アルミニウム、銅、マンガン、マグネシウム、ステンレス、アルミニウム合金(アルミニウムと、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛及びニッケルからなる1種以上の金属との合金)等が挙げられる。
【0068】
<接着される樹脂の可能性のある態様について>
接着剤によって接着される樹脂は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。接着剤によって接着される樹脂が同じである場合、リサイクルの際に、樹脂基材として用いられた成分の分離が不要となる。接着剤によって接着される樹脂が異なる場合、接着剤によって接着される樹脂の組合せが、ポリカーボネート樹脂とポリアミド樹脂との組合せ、又は、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との組合せである場合は、除かれることが好ましい。
【0069】
<接着剤と接着される樹脂の可能性のある態様について>
接着剤によって接着される樹脂と、成分(C)とは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。接着剤によって接着される樹脂と成分(C)が同じである場合、リサイクルの際に、樹脂基材と接着剤として用いられた成分(C)の分離が不要となる。これにより、リサイクルがより簡便になる。
なお、成分(C)がポリアミド樹脂であり、接着剤によって接着される樹脂がポリアミド樹脂である場合は除かれることが好ましい。
【0070】
<接着剤を用いた接着体の製造方法>
接着剤を用いた接着体の製造方法は、工程(A1)一方の樹脂を含む基材に、前記接着剤を適用して、接着部を形成する工程、及び工程(B1)もう一方の樹脂を含む基材を積層して、前記接着部を介して、基材同士を貼り合わせる工程を含み、ここで、前記樹脂が、独立して、前記に定義された樹脂である。
【0071】
また、接着体の製造方法は、更に、工程(A2):工程(B1)の前に、もう一方の基材に、前記接着剤を適用する工程を含むことができる。接着体の製造方法は、上記工程(A1)及び(B1)、上記工程(A1)、工程(A2)及び(B2)を繰り返して、更なる樹脂を含む基材を接着する工程を含んでいてもよい。
【0072】
接着体の製造方法における基材は、接着される樹脂として前記したものが挙げられる。接着剤を適用する方法としては、特に制限はなく、塗布、散布、スプレーガン等が挙げられる。基材同士を貼り合わせる時間は、所望の効果を達成できる時間であれば特に制限されない。接触時間は、1分間~10時間が好ましく、30分間~2時間であるのが特に好ましい。上記時間の範囲である場合は、基材同士の接着力が十分に発揮される。基材同士を貼り合わせて、接着させる工程の後に、場合により50~80℃の温度で加熱する工程を含んでいてもよい。これにより、硬化がより促進されて、接着力がより高くなる。
【0073】
<接着体の用途>
接着体は、樹脂基材が用いられる通常の用途に用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた接着体は、ペットボトル、フィルム、磁気テープ、衣料用繊維等に使用される。ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた接着体は、電子部品用熱伝導樹脂、自動車用ランプハウジング、レーザー溶着材料、ヒューズケース、コンデンサケース、コネクタ等に使用される。ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂を用いた接着体は、包装材、医療機器、農業用フィルム、合成繊維、不織布等に使用することが期待されている。ポリアミド樹脂を用いた接着体は、エンジンカバー等の自動車部品、工業用バルブ、フィラメント等に使用される。アクリル樹脂を用いた接着体は、風防ガラス、航空機・船舶・自動車等の窓、水槽、レンズ、照明器具、ディスプレー、看板等に使用される。ポリカーボネート樹脂を用いた接着体は、自動車等の部材等に幅広く用いられており、ルーフ、ヘッドランプレンズ等に使用される。ポリ乳酸樹脂を用いた接着体は、3Dプリンター用材料、農業用フィルム、ハウス用シート、食品トレイ、包装用フィルム、レジ袋、化学用繊維等に使用される。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂を用いた接着体は、自動車等の内装及び外装部材等に幅広く用いられており、ホイールキャップ、ホイールカバー、ダッシュボード等に使用される。ウレタン樹脂を用いた接着体は、断熱材等に使用される。スチロール樹脂を用いた接着体は、自動車用ランプレンズやカバー等に使用される。ポリアセタール樹脂を用いた接着体は、ギヤ、ベアリング、ファスナー等に使用される。フッ素樹脂を用いた接着体は、ガスケットやパッキン等のシール材、配管材料・タンク・ポンプ・流量計等のライニング、ケーブル、ローラー等に使用される。ポリフェニレンエーテル樹脂を用いた接着体は、家電製品の機構部品、OA機器のシャーシ、自動車の外装部品、ポンプ等の水廻り部品等に使用される。ポリエーテルイミド樹脂を用いた接着体は、精密機器、自動車部品(ベアリングのリテーナー、スピードセンサ部品、調理用品(タッパウェア等)、家電、医療機器、電気・電子分野(コネクタやプリント基板、ソケット等)の部品等に使用される。
【0074】
[コーティング剤]
コーティング剤は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂のためのコーティング剤である。
【0075】
また、コーティング剤は、(A)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールと、(B)任意選択的に、ハロゲン系有機化合物と、(C)ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチロール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリエーテルイミド樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の樹脂とを含み、前記(B)ハロゲン系有機化合物は、(b1)含フッ素オレフィン、(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)、(b3)ハイドロフルオロカーボン、(b4)ハイドロブロモカーボン、(b5)パーフルオロポリエーテル、(b6-1)p-クロロベンゾトリフルオリド及び(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレンからなる群より選択される1種以上であり、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が1質量部以上30質量部以下であり、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が200質量部以上である。
【0076】
コーティング剤を、樹脂を含む基材に適用(例えば、塗布)し、コーティング剤の溶剤部分が除去される(例えば、揮発する)ことにより、樹脂のコーティング膜が形成される。この時、形成された樹脂のコーティング膜が変色した場合、視認性の優れるコーティング膜となる。樹脂のコーティング膜は、樹脂の像(例えば、文字やバーコード等)であってもよい。
【0077】
コーティング剤において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、コーティングされる樹脂、及びこれらの含有量は、好ましい範囲を含め、接着剤において前記したとおりである。コーティング剤において、コーティングされる樹脂は、好ましい範囲を含め、接着剤において接着される樹脂として前記したとおりである。コーティング剤の製造方法は、接着剤の製造方法で前記した方法が挙げられる。
【0078】
<コーティング剤の可能性のある態様>
コーティング剤に含まれる成分(C)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが特に好ましい。コーティング剤が前記樹脂を含む場合、得られるコーティングが、例えば、乳白色などに変色する傾向がある。これにより、透明な樹脂基材上に、このコーティングによって所望の画像を形成したり、または文字や記号を印刷したりすることができ、デザインなども施すことができる。また、コーティング剤によってコートされる樹脂と、成分(C)とは、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。コーティング剤によってコートされる樹脂と、成分(C)とが、同じである場合、得られるコーティングを分離することなく、コーティング剤によってコートされた樹脂基材をリサイクル性することが可能になり、リサイクル性に優れる。コーティング剤によってコートされる樹脂がポリエステル樹脂であり、コーティング剤に含まれる成分(C)が、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂である場合がより好ましい。また、コーティング剤によってコートされる樹脂がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂であり、コーティング剤に含まれる成分(C)がポリエステル樹脂である場合もより好ましい。ここで、前記ポリエステル樹脂、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂は、透明であることが好ましい。ここで、透明とは、樹脂基材反対側又は内部にあるものが透けて見えることを意味する。
【0079】
<コーティング剤を用いた、樹脂のコーティング膜付き基材の製造方法>
コーティング剤を用いた、樹脂のコーティング膜付き基材の製造方法は、工程(C1):樹脂を含む基材に、前記コーティング剤を適用して、樹脂のコーティング剤付き基材を得る工程、及び、工程(D1):樹脂のコーティング剤付き基材から、前記コーティング剤の溶剤部分を除去して、樹脂のコーティング膜付き基材を得る工程を含み、前記樹脂が、前記に定義された樹脂である。
【0080】
工程(C1)において、コーティング剤を適用する手段としては、特に制限されず、公知の塗布手段を用いることができる。また、所望の像を形成(印字)するために、インクジェットプリンター等の印刷機械を用いてもよい。
【0081】
工程(D1)において、コーティング剤の溶剤部分を除去する方法としては、樹脂のコーティング剤付き基材を放置することが挙げられる。放置温度及び放置時間は、コーティング剤の溶剤部分が除去される温度及び時間であれば、特に制限されない。放置温度は、5℃~40℃であってもよく、30℃~40℃の恒温槽内で放置してもよい。放置時間は、1分間~10時間が好ましく、30分間~2時間であるのが特に好ましい。上記時間の範囲である場合は、コーティング膜の密着力が十分に発揮される。
【0082】
<樹脂のコーティング膜付き基材の用途>
コーティング剤を用いた、樹脂のコーティング膜付き基材は、接着体の用途として前記した用途に用いることができる。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、部は、質量部である。
【0084】
(使用製品)
実施例で使用した成分は以下のとおりである。実施例及び比較例の組成物は、表の組成(質量部)にしたがって、以下の成分をそのまま用いるか、各成分を混合することにより調製した。
【0085】
1.(A)ヘキサフルオロイソプロパノール
(a-1)HFIP:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、東京化成工業株式会社製)
【0086】
2.(B)ハロゲン系有機化合物
(b1)含フッ素オレフィン
(b1-1)1233Z:シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z)、セントラル硝子株式会社製)
(b1-2,b1-3)AS-300:AMOLEA(登録商標)AS-300((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン及び(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン99質量%超と安定剤1質量%未満との混合物)(AGC株式会社製)
(b1-4)SF33:オプテオン(商標)SF33(HCFO-1336mzz(Z)90質量%以上100質量%以下)(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製)
(b2)ハイドロフルオロエーテル((b1)含フッ素オレフィンを除く)
(b2-1)HFE-347pc-f:1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(AGC株式会社製、アサヒクリンAE-3000)
(b3)ハイドロフルオロカーボン
(b3-1)HFC-365mfc:1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(日本ソルベイ株式会社製、SOLKANE(登録商標)365mfc)
(b4)ハイドロブロモカーボン
(b4-1)1-ブロモプロパン(東京化成工業株式会社製)
(b6-2)trans-1,2-ジクロロエチレン(t-DCE)(東京化成工業株式会社製)
【0087】
3.(C)樹脂
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET(1)):仕切板 透明PET 1.0mm厚、注文コード:74529157、ノーブランド品(モノタロウ)
(2)ポリエチレンテレフタレート(PET(2)):市販の飲料用PETボトルを約5mm角に切断したもの
(3)アクリル:アクリル板(透明)、規格:厚さ1mm、幅100mm、長さ100mm、注文コード:45547101、ノーブランド品(モノタロウで購入)
(4)ポリカーボネート(PC):ポリカーボネート樹脂板、品番:KPAC2005-1、長さ300mm、厚さ0.5mm、株式会社光製
(5)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS):ABS樹脂板、型番:ABS-2B、寸法300mm×200mm、厚さ1.0mm、株式会社タカチ電機工業製
(6)ナイロン66(PA66):66ナイロンシート、規格:幅500mm、長さ1m、厚さ1mm、株式会社コクゴ製
なお、PET(1)、PET(2)、アクリル及びポリカーボネート(PC)は、透明であった。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)は、黒色であった。そして、ナイロン66(PA66)は、乳白色であった。
【0088】
4.樹脂板
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET(1)):仕切板 透明PET 1.0mm厚、注文コード:74529157、ノーブランド品(モノタロウ)
(2)ポリエチレンテレフタレート(PET(2)):市販の飲料用PETボトルを約5mm角に切断したもの
(3)アクリル:アクリル板(透明)、規格:厚さ1mm、幅100mm、長さ100mm、注文コード:45547101、ノーブランド品(モノタロウ)
(4)ポリカーボネート(PC):ポリカーボネート樹脂板、品番:KPAC2005-1、長さ300mm、厚さ0.5mm、株式会社光製
(5)アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS):ABS樹脂板、型番:ABS-2B、寸法300mm×200mm、厚さ1.0mm、株式会社タカチ電機工業製
(6)ナイロン66(PA66):66ナイロンシート、規格:幅500mm、長さ1m、厚さ1mm、株式会社コクゴ製
【0089】
5.装置・器具等
(1)瓶:規格瓶(アズワン株式会社製、容量24mL)
(2)天秤:電子天秤(株式会社製島津製作所、TX323N)
【0090】
[試験例1] 樹脂溶解の限界量の確認試験(ゲル化状態を含む)
1.表1に記載の溶剤組成となる溶剤成分を、表1に記載の溶剤全量となるように規格瓶に量り取った。
2.表1に記載のポリエチレンテレフタレート(PET(1)又はPET(2))を、表1に記載の樹脂量となるように別途量り取った。
3.「1.」の工程において量り取った溶剤へ、「2.」の工程において量り取ったPET樹脂を別個に投入して、総重量が5gとなる溶解試験サンプルを作製した。
4.溶解試験サンプルを、それぞれ常温(23℃。以下同じ)で48時間静置した後、樹脂の残渣の有無を確認した。
【0091】
[判定基準]
○:48時間以内に完全溶解できた
●:一部が溶解し、一部がゲル化した
×:固体の溶解残渣があった
【0092】
[試験例2] 接着試験1
接着試験1では、基材と同質の樹脂を溶解させた接着剤を用いた接着試験を行った。
1.試験例1に記載の手順で、表2から表5に記載の樹脂が溶解しているサンプル(接着剤)を作製した。
2.PET(1)を10mm×30mmに切断して、接着試験の基材(樹脂基材)を作製した。
3.前述の基材を2枚用意し、一方の基材の中央へ接着剤(基材と同質の樹脂を溶解させたもの)を0.3g滴下した。
4.もう一方の基材を接着剤の上へ十字になるように重ねて押し付けた。
5.同様に、PET(2)に使用したペットボトルを10mm×30mmに切断して接着試験の基材とし、基材2枚を基材と同質の樹脂を含む接着剤を用いて十字になるように接着させた。表には、接着剤が硬化するまでに要した時間(単位:時間)を記載した。
【0093】
[試験例3] 硬化速度試験
1.表2から表5に記載の組成となるように、試験例1の方法で樹脂を含むコーティング剤を作製した。
2.10mm×30mmに切断した表2から表5に記載の樹脂板上に、「1.」の工程において得られたコーティング剤(基材と同質の樹脂を溶解させたもの)を0.3g滴下して、コーティング膜の硬化性を測定した。表には、コーティング剤が硬化するまでに要した時間(単位:時間)を記載した。
【0094】
[試験例4] 接着試験2
接着試験2では、異種樹脂同士の接着試験、及び基材と異なる樹脂を含む接着剤を用いた接着試験を行った。
1.表6及び表7に記載の組成となるように、試験例1の方法で樹脂を含む接着剤を作製した。
2.表6及び表7に記載の樹脂A、樹脂Bのそれぞれを10mm×30mmに切断して、接着試験の基材を作成した。
3.樹脂板Aの中央へ接着剤を0.3g滴下した。
4.樹脂板Bを接着剤の上へ十字になるように重ねて押し付けた。
5.1時間後、接着できているかを確認した。
【0095】
[判定基準]
○:接着した
●:容易にはがせる程度に軽く接着した
【0096】
[試験例5] コーティング試験
1.試験例1に記載の手順で、表8に記載の樹脂が溶解しているサンプル(コーティング剤)を作製した。
2.表8に記載の樹脂を10mm×30mmに切断して、接着試験の基材(樹脂基材)を作製した。
3.基材の中央へコーティング剤を0.3g滴下した。
4.1時間放置して、溶剤を揮発させて、樹脂のコーティング膜付き基材を得た。
コーティングの状態を以下の判定基準で評価し、膜の白濁の有無を確認した。
【0097】
[判定基準]
○:自然剥離することなく、基材に貼りついたまま硬化した
×:自然剥離した、又は、硬化しなかった
[膜の白濁]
なし:透明な膜が形成された。
あり:乳白色の膜が形成された。
-:未実施、又は、着色による判定不可
【0098】
[試験例6] コーティング形成(印字)試験
実施例29のコーティング剤を用いた。樹脂板C(ポリエチレンテレフタレート(PET(2)))に、ステンレス製薬匙を用いてコーティング剤を塗布し、文字像を形成した。3時間放置して、溶剤を揮発させて、所望の文字が白く印字された樹脂基材を得た。試験例6で得られた樹脂基材は、視認性に優れるコーティング膜付き基材であった。
【0099】
結果を以下の表にまとめる。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
本発明に係る接着剤は、樹脂への接着性に優れる。また、本発明に係るコーティング剤は、樹脂への密着性に優れる。
表1より以下のことがいえる。実施例1~8の比較により、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、成分(C)の含有量が22質量部以下であり、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が270質量部以上である場合、成分(C)が溶解し、より均一な組成を有していた。比較例1は、成分(A)及び成分(B)合計100質量部に対して成分(A)が10質量部のため、溶解残渣が見られた。比較例2は、成分(C)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が180質量部であるため、溶解残渣が見られた。
表2~表5より、接着剤又はコーティング剤が、成分(B)を必須として含む場合、成分(B)を含まない場合と比較して、硬化速度が同等又はより高まった。また、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、成分(A)の含有量が20質量部以上80質量部以下である場合、硬化速度がより高まった。
表6及び表7より、接着剤によって接着される樹脂の組合せ(即ち、樹脂板A及び樹脂板Bの組合せ)が、ポリカーボネート樹脂とポリアミド樹脂との組合せ、及び、ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との組合せ以外である場合は、接着性により優れていた。
表8より、コーティング剤によってコートされる樹脂が透明なポリエステル樹脂であり、コーティング剤に含まれる成分(C)が、透明なアクリル樹脂又は透明なポリカーボネート樹脂である場合、得られるコーティング膜が乳白色であったため、視認性に優れたコーティング膜が得られていた。また、表8より、コーティング剤によってコートされる樹脂が透明なアクリル樹脂、透明なポリカーボネート樹脂又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂であり、コーティング剤に含まれる成分(C)が透明なポリエステル樹脂である場合、得られるコーティング膜が乳白色であったため、視認性に優れたコーティング膜が得られていた。