(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079201
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】半導体素子形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240604BHJP
H10B 43/27 20230101ALI20240604BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01L21/306 D
H10B43/27
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192001
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石津 岳明
【テーマコード(参考)】
5F043
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F043AA31
5F043AA37
5F043BB22
5F043BB25
5F043DD07
5F043DD08
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE28
5F043EE36
5F043GG10
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP72
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA12
5F083LA16
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR03
5F083PR05
5F101BA45
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】基板のリセスのうち幅を広げる必要のない部分に対して、薬液によるエッチングが行われることを抑制できる半導体素子形成方法を提供する。
【解決手段】半導体素子形成方法は、基材Sに支持された積層構造Lに設けられたリセスRを被覆する第1被覆膜Ps1を形成する工程S10と、第1被覆膜Ps1が形成されたリセスRのうち表面側に位置する部分を、第1被覆膜Ps1の上から選択的に被覆する第2被覆膜Ps2を形成する工程S20と、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で覆われていない部分であるリセス深部Rfの幅を広げるように、リセス深部Rfを第1薬液C1でエッチングする工程S31とを包含する。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に支持された積層構造に設けられたリセスを被覆する第1被覆膜を形成する工程と、
前記第1被覆膜が形成された前記リセスのうち表面側に位置する部分を、前記第1被覆膜の上から選択的に被覆する第2被覆膜を形成する工程と、
前記リセスのうち前記第2被覆膜で覆われていない部分であるリセス深部の幅を広げるように、前記リセス深部を第1薬液でエッチングする工程と
を包含する、半導体素子形成方法。
【請求項2】
前記第1薬液でエッチングする前記工程よりも後において、前記第2被覆膜を除去する工程と、
前記第2被覆膜を除去する前記工程よりも後において、前記第1被覆膜を除去する工程と
を更に包含する、請求項1に記載の半導体素子形成方法。
【請求項3】
前記第1被覆膜を除去する前記工程では、前記第1被覆膜を第2薬液で除去するとともに、前記リセス深部を前記第2薬液でエッチングする、請求項2に記載の半導体素子形成方法。
【請求項4】
前記第1被覆膜を形成する前記工程では、ALD法、オゾン水、過酸化水素水、又は、硫酸過酸化水素水混合液によって、前記第1被覆膜を形成する、請求項1又は請求項2に記載の半導体素子形成方法。
【請求項5】
前記第1被覆膜の表面において前記第2被覆膜の材料を吸着させるための単位面積当たりの吸着サイトの数は、前記積層構造を構成する異なる層のうち、特定層の表面における単位面積当たりの吸着サイトの数よりも多く、
前記特定層は、前記積層構造を構成する異なる前記層のうち、単位面積当たりの吸着サイトの数が最も少ない層を示す、請求項1又は請求項2に記載の半導体素子形成方法。
【請求項6】
前記吸着サイトは、水酸基を含む、請求項5に記載の半導体素子形成方法。
【請求項7】
前記第2被覆膜を形成する前記工程は、
前記リセスのうちの前記リセス深部を、前記第1被覆膜の上から部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、
前記部分充填層を形成した後に撥水剤を供給する工程と、
前記撥水剤を供給することで前記リセスの表面側に、前記第1被覆膜の上から前記第2被覆膜を形成した後に、前記部分充填層及び前記撥水剤を除去する工程と
を含む、請求項1又は請求項2に記載の半導体素子形成方法。
【請求項8】
前記部分充填層を形成する前記工程は、
前記第1被覆膜の上から前記リセスを充填する充填層を形成する工程と、
前記充填層を形成した後で前記充填層を部分的に除去する工程と
を含む、請求項7に記載の半導体素子形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された半導体装置形成方法は、被覆層を形成する工程と、エッチングする工程とを包含する。被覆層を形成する工程において、基材に支持された積層構造に設けられたリセスのうち、積層構造の表面側に位置する部分を選択的に被覆する被覆層を形成する。エッチングする工程において、リセスのうち被覆層よりも深部の径を広げるようにリセスのうち深部を薬液でエッチングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された半導体装置形成方法では、材質の異なる層が交互に積層されることで、積層構造が形成されている。従って、材質の異なる層に対して同時に被覆層を形成する必要がある。
【0005】
本願の発明者は、材質の異なる各層において、被覆層の材料である分子を吸着させるための吸着サイトに着目し、鋭意研究を重ねた。その結果、ある材質の層において被覆層の材料である分子を吸着させるための吸着サイトの数が、別の材質の層における吸着サイトの数よりも少ない場合があるとの知見を得た。その結果、本願の発明者は、吸着サイトの数が少ない層では、被覆層の材料である分子が吸着されていない非吸着領域が増加する可能性のあることを推測した。そして、本願の発明者は、被覆層において非吸着領域が増加すると、リセスにおいて径を広げる必要のない部分における層に対して、薬液によるエッチングが行われる可能性があることを推測した。「径」は「幅」の一例である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板のリセスのうち幅を広げる必要のない部分に対して、薬液によるエッチングが行われることを抑制できる半導体素子形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、半導体素子形成方法は、基材に支持された積層構造に設けられたリセスを被覆する第1被覆膜を形成する工程と、前記第1被覆膜が形成された前記リセスのうち表面側に位置する部分を、前記第1被覆膜の上から選択的に被覆する第2被覆膜を形成する工程と、前記リセスのうち前記第2被覆膜で覆われていない部分であるリセス深部の幅を広げるように、前記リセス深部を第1薬液でエッチングする工程とを包含する。
【0008】
ある実施形態では、前記第1薬液でエッチングする前記工程よりも後において、前記第2被覆膜を除去する工程と、前記第2被覆膜を除去する前記工程よりも後において、前記第1被覆膜を除去する工程とを更に包含する。
【0009】
ある実施形態では、前記第1被覆膜を除去する前記工程では、前記第1被覆膜を第2薬液で除去するとともに、前記リセス深部を前記第2薬液でエッチングする。
【0010】
ある実施形態では、前記第1被覆膜を形成する前記工程では、ALD法、オゾン水、過酸化水素水、又は、硫酸過酸化水素水混合液によって、前記第1被覆膜を形成する。
【0011】
ある実施形態では、前記第1被覆膜の表面において前記第2被覆膜の材料を吸着させるための単位面積当たりの吸着サイトの数は、前記積層構造を構成する異なる層のうち、特定層の表面における単位面積当たりの吸着サイトの数よりも多い。前記特定層は、前記積層構造を構成する異なる前記層のうち、単位面積当たりの吸着サイトの数が最も少ない層を示す。
【0012】
ある実施形態では、前記吸着サイトは、水酸基を含む。
【0013】
ある実施形態では、前記第2被覆膜を形成する前記工程は、前記リセスのうちの前記リセス深部を、前記第1被覆膜の上から部分的に充填する部分充填層を形成する工程と、前記部分充填層を形成した後に撥水剤を供給する工程と、前記撥水剤を供給することで前記リセスの表面側に、前記第1被覆膜の上から前記第2被覆膜を形成した後に、前記部分充填層及び前記撥水剤を除去する工程とを含む。
【0014】
ある実施形態では、前記部分充填層を形成する前記工程は、前記第1被覆膜の上から前記リセスを充填する充填層を形成する工程と、前記充填層を形成した後で前記充填層を部分的に除去する工程とを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板のリセスのうち幅を広げる必要のない部分に対して、薬液によるエッチングが行われることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】本実施形態の基板処理装置のブロック図である。
【
図4】(a)は、本実施形態の基板処理装置を用いて製造される半導体素子の模式的な側面図であり、(b)は、半導体素子の模式的な上面図であり、(c)は、(b)の一部拡大図である。
【
図5】(a)~(e)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図6】(a)~(g)は、比較例に係る半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図7】(a)~(c)は、比較例に係る基板の積層構造の絶縁層の表面の状態を説明するための模式図である。
【
図8】(a)~(c)は、比較例に係る基板の積層構造の犠牲層の表面の状態を説明するための模式図である。
【
図9】(a)(b)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図10】(a)(b)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図11】(a)(b)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図12】(a)(b)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図13】(a)(b)は、本実施形態の半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【
図14】(a)~(c)は、本実施形態の第1被覆膜の表面の状態を説明するための模式図である。
【
図15】本実施形態の半導体素子形成方法のフロー図である。
【
図16】本実施形態の半導体素子形成方法のフロー図である。
【
図17】本実施形態の基板処理装置の模式図である。
【
図18】本実施形態の半導体素子形成方法で形成された半導体素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による半導体素子形成方法の実施形態を説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。なお、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載することがある。典型的には、X軸およびY軸は水平方向に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。また、本願明細書では、発明の理解を容易にするため、互いに直交するx軸、y軸およびz軸を記載することがある。典型的には、x軸およびy軸は、基板または基材の主面に対して平行に延びており、z軸は基板または基材の主面に対して垂直な方向に延びている。
【0018】
まず、
図1を参照して、本発明による基板処理装置100の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の基板処理装置100の模式的な平面図である。
【0019】
基板処理装置100は、基板Wを処理する。基板処理装置100は、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成、膜の少なくとも一部の除去および洗浄のうちの少なくとも1つを行うように基板Wを処理する。
【0020】
基板Wは、半導体基板として用いられる。基板Wは、半導体ウエハを含む。例えば、基板Wは略円板状である。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを一枚ずつ処理する。
【0021】
図1に示すように、基板処理装置100は、複数のチャンバー110と、流体キャビネット100Aと、流体ボックス100Bと、複数のロードポートLPと、インデクサーロボットIRと、センターロボットCRと、制御装置101とを備える。制御装置101は、ロードポートLP、インデクサーロボットIRおよびセンターロボットCRを制御する。
【0022】
ロードポートLPの各々は、複数枚の基板Wを積層して収容する。インデクサーロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、インデクサーロボットIRとチャンバー110との間で基板Wを搬送する。チャンバー110の各々は、基板Wに液体を吐出して、基板Wを処理する。液体は、処理液、除去液、撥水剤および/または薬液を含む。流体キャビネット100Aは、液体を収容する。なお、流体キャビネット100Aは、ガスを収容してもよい。
【0023】
具体的には、複数のチャンバー110は、平面視においてセンターロボットCRを取り囲むように配置された複数のタワーTW(
図1では4つのタワーTW)を形成している。各タワーTWは、上下に積層された複数のチャンバー110(
図1では3つのチャンバー110)を含む。流体ボックス100Bは、それぞれ、複数のタワーTWに対応している。流体キャビネット100A内の液体は、いずれかの流体ボックス100Bを介して、流体ボックス100Bに対応するタワーTWに含まれる全てのチャンバー110に供給される。また、流体キャビネット100A内のガスは、いずれかの流体ボックス100Bを介して、流体ボックス100Bに対応するタワーTWに含まれる全てのチャンバー110に供給される。
【0024】
制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。
【0025】
制御部102は、プロセッサーを有する。制御部102は、例えば、中央処理演算機(Central Processing Unit:CPU)を有する。または、制御部102は、汎用演算機を有してもよい。
【0026】
記憶部104は、データおよびコンピュータプログラムを記憶する。データは、レシピデータを含む。レシピデータは、複数のレシピを示す情報を含む。複数のレシピの各々は、基板Wの処理内容および処理手順を規定する。
【0027】
記憶部104は、主記憶装置と、補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリである。補助記憶装置は、例えば、半導体メモリおよび/またはハードディスクドライブである。記憶部104はリムーバブルメディアを含んでいてもよい。記憶部104は、非一時的コンピューター読取可能記憶媒体の一例に相当する。制御部102は、記憶部104の記憶しているコンピュータプログラムを実行して、基板処理動作を実行する。
【0028】
次に、
図2を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図2は、基板処理装置100の模式図である。
【0029】
基板処理装置100は、チャンバー110と、基板保持部120と、液体供給部130とを備える。チャンバー110は、基板Wを収容する。基板保持部120は、基板Wを保持する。
【0030】
チャンバー110は、内部空間を有する略箱形状である。チャンバー110は、基板Wを収容する。ここでは、基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉型であり、チャンバー110には基板Wが1枚ずつ収容される。基板Wは、チャンバー110内に収容され、チャンバー110内で処理される。チャンバー110には、基板保持部120および液体供給部130のそれぞれの少なくとも一部が収容される。
【0031】
基板保持部120は、基板Wを保持する。基板保持部120は、基板Wの上面(表面)Waを上方に向け、基板Wの裏面(下面)Wbを鉛直下方に向くように基板Wを水平に保持する。また、基板保持部120は、基板Wを保持した状態で基板Wを回転させる。詳細は後述するが、基板Wの上面Waには、リセスの形成された積層構造が設けられている。リセスとは、基板Wに形成された凹部のこと示す。例えば、リセスは、基板Wに形成されたホール又はトレンチである。ホールは、例えば、メモリホールである。
【0032】
例えば、基板保持部120は、基板Wの端部を挟持する挟持式であってもよい。あるいは、基板保持部120は、基板Wを裏面Wbから保持する任意の機構を有してもよい。例えば、基板保持部120は、バキューム式であってもよい。この場合、基板保持部120は、非デバイス形成面である基板Wの裏面Wbの中央部を上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持する。あるいは、基板保持部120は、複数のチャックピンを基板Wの周端面に接触させる挟持式とバキューム式とを組み合わせてもよい。
【0033】
例えば、基板保持部120は、スピンベース121と、チャック部材122と、シャフト123と、電動モーター124と、ハウジング125とを含む。チャック部材122は、スピンベース121に設けられる。チャック部材122は、基板Wをチャックする。典型的には、スピンベース121には、複数のチャック部材122が設けられる。
【0034】
シャフト123は、中空軸である。シャフト123は、回転軸Axに沿って鉛直方向に延びている。シャフト123の上端には、スピンベース121が結合されている。基板Wは、スピンベース121の上方に載置される。
【0035】
スピンベース121は、円板状であり、基板Wを水平に支持する。シャフト123は、スピンベース121の中央部から下方に延びる。電動モーター124は、シャフト123に回転力を与える。電動モーター124は、シャフト123を回転方向に回転させることにより、回転軸Axを中心に基板Wおよびスピンベース121を回転させる。ハウジング125は、シャフト123および電動モーター124を取り囲んでいる。
【0036】
液体供給部130は、基板Wに液体を供給する。典型的には、液体供給部130は、基板Wの上面Waに液体を供給する。
【0037】
液体供給部130は、処理液供給部132と、除去液供給部134と、撥水剤供給部136と、薬液供給部138とを含む。処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138の少なくとも一部は、チャンバー110内に収容される。
【0038】
処理液供給部132は、基板Wの上面Waに処理液を供給する。例えば、処理液は、溶質および揮発性を有する溶媒を含む。基板Wの上面Waに処理液を供給した後、溶媒が揮発することにより、溶質から充填層が形成される。充填層は、溶質成分からなる固体状の膜である。充填層は、基板Wのリセスに残存するパーティクルを保持できる。充填層が形成される際に、基板Wの上面Waに付着していたパーティクルが、基板Wから引き離されて、充填層中に保持される。
【0039】
ここで「固化」とは、例えば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、例えば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。なお、処理液は、パーティクルを保持できる程度に固化または硬化すればよく、溶媒は完全に揮発する必要はない。また、充填層を形成する「溶質成分」とは、処理液に含まれる溶質そのものであってもよいし、溶質から導かれるもの、例えば、化学的な変化の結果として得られるものであってもよい。
【0040】
溶質として、任意の溶媒に対して可溶性で、かつ固化または硬化時に、基板Wの上面に付着していたパーティクルを当該基板Wから引き離して保持した状態で、充填層を形成することができる、種々の樹脂を用いることができる。例えば、溶質として、所定の変質温度以上に加熱する前は水に対して難溶性ないし不溶性で、変質温度以上に加熱することで変質して水溶性になる性質を有する樹脂(以下「感熱水溶性樹脂」と記載する場合がある。)を用いてもよい。
【0041】
感熱水溶性樹脂としては、例えば、所定の変質温度以上(例えば、200℃以上)に加熱することで分解して、極性を持った官能基を露出させて、水溶性を発現する樹脂等を用いることができる。感熱水溶性樹脂は、変質温度以上に加熱すると、水溶性に変質する。
【0042】
ただし、あえて、感熱水溶性樹脂の温度を変質温度未満に留めて、水系の液体に対する難溶性ないし不溶性を維持した状態で充填層を形成してもよい。充填層を形成する際に、処理液の温度を、感熱水溶性樹脂の変質温度未満の温度にすることにより、感熱水溶性樹脂を水溶性に変質させずに、基板Wの上面に、水系の液体に対して難溶性ないし不溶性の充填層を形成する。この場合、充填層からパーティクルを脱落させることなく、塊状態を維持した充填層を基板Wから除去することができる。したがって、高い除去率でパーティクルを除去することができる。
【0043】
なお、処理液に含まれる溶質としては、感熱水溶性樹脂以外に、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等を用いることもできる。
【0044】
溶媒は、水よりも高い揮発性を有することが好ましい。溶媒として、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)を用いることが好ましい。
【0045】
また、処理液は、昇華性物質を含んでもよい。昇華性物質としては、5℃~35℃での蒸気圧が高く、固相から液相を経ずに気相に変化する種々の物質が用いられる。昇華性物質としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、1,3,5-トリオキサン、1-ピロリジンカルボジチオ酸アンモニウム、メタアルデヒド、炭素数20~48程度のパラフィン、t-ブタノール、パラジクロロベンゼン、ナフタレン、L-メントール、フッ化炭化水素化合物等が用いられる。とくに、昇華性物質としては、フッ化炭化水素化合物を用いることができる。
【0046】
フッ化炭化水素化合物としては、例えば、下記化合物(A)~(E)の1種または2種以上を用いることができる。
【0047】
化合物(A):炭素数3~6のフルオロアルカン、またはその誘導体
化合物(B):炭素数3~6のフルオロシクロアルカン、またはその誘導体
化合物(C):炭素数10のフルオロビシクロアルカン、またはその誘導体
化合物(D):フルオロテトラシアノキノジメタン、またはその誘導体
化合物(E):フルオロシクロトリホスファゼン、またはその誘導体
【0048】
なお、化合物(A)としては、式(1)で表される、炭素数3~6のフルオロアルカン、またはその誘導体が挙げられる。
【0049】
CmHnF2m+2-n (1)
〔式中mは3~6の数を示し、nは0≦n≦2m+1の数を示す。〕
【0050】
昇華性物質として、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを用いることが特に好ましい。この化合物は、20℃での蒸気圧が約8266Pa、融点(凝固点)が20.5℃、沸点が82.5℃である。また、融解状態の昇華性物質を混合させる場合、溶媒としては、融解状態の昇華性物質に対して相溶性を示す溶媒が好ましい。また、溶質としての昇華性物質を溶解させる場合には、当該昇華性物質に対し溶解性を示す溶媒が好ましい。
【0051】
また、融解状態の昇華性物質を混合させる場合、溶媒としては、融解状態の昇華性物質に対して相溶性を示す溶媒が好ましい。また、溶質としての昇華性物質を溶解させる場合には、当該昇華性物質に対し溶解性を示す溶媒が好ましい。
【0052】
溶媒としては、例えば、DIW、純水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、エーテル等からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。具体的には、例えば、DIW、純水、メタノール、エタノール、IPA、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヘキサン、トルエン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGPE(プロピレングリコールモノプロピルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、GBL(γ-ブチロラクトン)、アセチルアセトン、3-ペンタノン、2-へプタノン、乳酸エチル、シクロヘキサノン、ジブチルエーテル、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、及びm-キシレンヘキサフルオライドからなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0053】
処理液供給部132は、配管132aと、バルブ132bと、ノズル132nとを含む。ノズル132nは基板Wの上面Waに処理液を吐出する。ノズル132nは、配管132aに接続される。配管132aには、供給源から処理液が供給される。バルブ132bは、配管132a内の流路を開閉する。ノズル132nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0054】
除去液供給部134は、基板Wの上面Waに除去液を供給する。除去液により、処理液の溶質から形成された充填層を除去できる。除去液を供給する時間を制御することにより、基板Wから充填層を選択的に除去できる。
【0055】
除去液としては、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の溶媒を用いることができる。除去液としては、例えばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。特に、水系の液体との相溶性を有する溶媒を用いることが好ましい。例えば、除去液として、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)を用いることが好ましい。
【0056】
除去液供給部134は、配管134aと、バルブ134bと、ノズル134nとを含む。ノズル134nは、基板Wの上面Waに除去液を吐出する。ノズル134nは、配管134aに接続される。配管134aには、供給源から除去液が供給される。バルブ134bは、配管134a内の流路を開閉する。ノズル134nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0057】
撥水剤供給部136は、基板Wの上面Waに、液状の撥水剤を供給する。撥水剤の供給により、基板Wの上面Waに撥水層が形成される。
【0058】
例えば、撥水剤は、末端にメチル基またはシリル基を含む化合物を含む。典型的には、リセスの表面には水酸基(OH基)が存在しているが、撥水剤により、基板Wの表面の水酸基は、メチル基またはシリル基に置換される。なお、撥水剤は、充填層の特性を変化させないことが好ましい。
【0059】
例えば、撥水剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる撥水剤である。典型的には、撥水剤は、シランカップリング剤である。一例では、シランカップリング剤は、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系撥水剤の少なくとも1つを含む。非クロロ系撥水剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも1つを含む。
【0060】
撥水剤供給部136は、配管136aと、バルブ136bと、ノズル136nとを含む。ノズル136nは、基板Wの上面Waに撥水剤を吐出する。ノズル136nは、配管136aに接続される。配管136aには、供給源から撥水剤が供給される。バルブ136bは、配管136a内の流路を開閉する。ノズル136nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0061】
薬液供給部138は、基板Wの上面Waに薬液を供給する。薬液を用いた薬液処理により、基板Wの上面Waを薬液処理できる。薬液処理により、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成および膜の少なくとも一部の除去のいずれかを行うことが可能である。典型的には、薬液は、基板Wのエッチング処理に用いられるエッチング液である。
【0062】
薬液は、フッ酸を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。ただし、フッ酸は、加熱されなくてもよい。また、薬液は、水または燐酸を含んでもよい。
【0063】
さらに、薬液は、過酸化水素水をさらに含んでもよい。また、薬液は、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)または王水(濃塩酸と濃硝酸との混合物)を含んでもよい。
【0064】
薬液供給部138は、配管138aと、バルブ138bと、ノズル138nとを含む。ノズル138nは基板Wの上面Waに薬液を吐出する。ノズル138nは、配管138aに接続される。配管138aには、供給源から薬液が供給される。バルブ138bは、配管138a内の流路を開閉する。ノズル138nは、基板Wに対して移動可能に構成されていることが好ましい。
【0065】
なお、上述したように、処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138のノズル132n、134n、136nおよび138nは移動可能であってもよい。ノズル132n、134n、136nおよび138nは、制御部102によって制御される移動機構にしたがって水平方向および/または鉛直方向に移動できる。なお、本明細書において、図面が過度に複雑になることを避けるために移動機構を省略していることに留意されたい。
【0066】
基板処理装置100は、カップ180をさらに備える。カップ180は、基板Wから飛散した液体を回収する。カップ180は昇降する。例えば、カップ180は、液体供給部130が基板Wに液体を供給する期間にわたって基板Wの側方にまで鉛直上方に上昇する。この場合、カップ180は、基板Wの回転によって基板Wから飛散する液体を回収する。また、カップ180は、液体供給部130が基板Wに液体を供給する期間が終了すると、基板Wの側方から鉛直下方に下降する。
【0067】
上述したように、制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、基板保持部120、処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136、および/またはカップ180を制御する。一例では、制御部102は、電動モーター124、バルブ132b、134b、136bおよび/または138bを制御する。
【0068】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体の設けられた半導体素子の作製に好適に用いられる。典型的には、半導体素子において、基材の上に導電層および絶縁層が積層される。基板処理装置100は、半導体素子の製造時に、導電層および/または絶縁層の洗浄および/または加工(例えば、エッチング、特性変化等)に好適に用いられる。
【0069】
次に、
図1~
図3を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図3は、基板処理装置100のブロック図である。
【0070】
図3に示すように、制御装置101は、基板処理装置100の各種動作を制御する。制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130を制御する。具体的には、制御装置101は、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130に制御信号を送信することによって、インデクサーロボットIR、センターロボットCR、基板保持部120および液体供給部130を制御する。
【0071】
具体的には、制御部102は、インデクサーロボットIRを制御して、インデクサーロボットIRによって基板Wを受け渡しする。
【0072】
制御部102は、センターロボットCRを制御して、センターロボットCRによって基板Wを受け渡しする。例えば、センターロボットCRは、未処理の基板Wを受け取って、複数のチャンバー110のうちのいずれかに基板Wを搬入する。また、センターロボットCRは、処理された基板Wをチャンバー110から受け取って、基板Wを搬出する。
【0073】
制御部102は、基板保持部120を制御して、基板Wの回転の開始、回転速度の変更および基板Wの回転の停止を制御する。例えば、制御部102は、基板保持部120を制御して、基板保持部120の回転数を変更することができる。具体的には、制御部102は、基板保持部120の電動モーター124の回転数を変更することによって、基板Wの回転数を変更できる。
【0074】
制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bをそれぞれ別個に制御して、バルブ132b、134b、136b、138bの状態を開状態と閉状態とに切り替えることができる。具体的には、制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bを制御して、バルブ132b、134b、136b、138bを開状態にすることによって、ノズル132n、134n、136n、138nに向かって配管132a、134a、136a、138a内を流れる処理液、除去液、撥水剤および薬液を通過させることができる。また、制御部102は、液体供給部130のバルブ132b、134b、136b、138bを制御して、バルブ132b、134b、136b、138bを閉状態にすることによって、ノズル132n、134n、136n、138nに向かって配管132a、134a、136a、138a内を流れる処理液、除去液、撥水剤および薬液の供給をそれぞれ停止させることができる。
【0075】
本実施形態の基板処理装置100は、半導体素子を形成するために好適に用いられる。例えば、基板処理装置100は、積層構造の半導体素子として用いられる基板Wを処理するために好適に利用される。半導体素子は、いわゆる3D構造のメモリ(記憶装置)である。一例として、基板Wは、NAND型フラッシュメモリとして好適に用いられる。
【0076】
次に、
図4を参照して、本実施形態の基板処理装置100を用いて半導体素子300として作製された基板Wを説明する。
図4(a)は、基板処理装置100を用いて基板Wを処理して作製された半導体素子300の模式的な側面図であり、
図4(b)は、半導体素子300の模式的な上面図であり、
図4(c)は、
図4(b)の一部拡大図である。なお、
図4では、基板Wの基材Sの主面に対して直交する方向をz方向と示しており、z方向に直交する方向をx方向およびy方向と示している。
【0077】
図4(a)に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Lとを有する。基材Sは、xy平面に広がる薄膜状である。積層構造Lは、基材Sの上面に形成される。基材Sは、積層構造Lを支持する。積層構造Lは、基材Sの上面からz方向に延びるように形成される。
【0078】
なお、
図4(a)に示した基板Wは、基材Sと積層構造Lとの間に、エッチング停止層Esをさらに有することが好ましい。エッチング停止層Esは、例えば、アルミナ(Al
2O
3)から形成される。詳細は後述するが、積層構造Lが、エッチングによって部分的に除去されることにより、リセスRが形成される。
図4の例では、リセスRは、メモリホールである。エッチングの進行は、エッチング停止層Esによって停止される。
【0079】
積層構造Lは、絶縁層Nと、導電層Mとを有する。絶縁層Nと導電層Mとは交互に積層される。例えば、絶縁層Nはシリコン酸化膜から形成される。また、導電層Mは金属から形成される。例えば、導電層Mは、タングステン(W)を含む。
【0080】
複数の絶縁層Nのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。隣接する2つの絶縁層Nの間には導電層Mが設けられている。隣接する2つの絶縁層Nは導電層Mによって支持される。
【0081】
例えば、絶縁層Nの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。また、例えば、導電層Mの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。
【0082】
1層の絶縁層Nの厚さと1層の導電層Mの厚さの合計は20nm以上100nm以下である。積層構造Lは、10層以上100層以下の絶縁層Nと、10層以上100層以下の導電層Mとを備える。
【0083】
積層構造LにはリセスRが設けられる。リセスRは、基材Sの主面に対して垂直の方向に延びる。リセスRは、積層構造Lの表面Laとエッチング停止層Esとの間にわたって延びる。リセスRの延びる方向に対して垂直な方向におけるリセスRの長さを、「リセスRの幅」と定義する。「リセスRの径」は、「リセスRの幅」の一例に相当する。
【0084】
リセスRの口径(径)は、ナノオーダーである。例えば、リセスRの径は、20nm以上300nm以下である。リセスRの径は、50nm以上200nmであってもよい。
【0085】
理想的には、リセスRは、基材Sの主面に対して垂直に形成される。リセスRの表面部分の径(トップ径Wt)は、20nm以上300nm以下であり、50nm以上200nmである。
【0086】
例えば、リセスRのアスペクト比は10以上である。アスペクト比は、リセスRの高さと幅との比率を示す。また、これまでのところ、高さ約1μmのメモリホールをアスペクト比40~50で形成することが報告されており、今後、アスペクト比はさらに増大すると考えられる。例えば、リセスRのアスペクト比の上限は100であってもよく、200であってもよい。
【0087】
図4(a)に示した半導体素子300において、基板WのリセスR内には、円筒状の電荷保持層Hが配置される。電荷保持層Hの内側には、円筒状のチャネル層Chが配置される。例えば、チャネル層Chは、ポリシリコンから形成される。チャネル層Chの内側には、円柱状の誘電体層Dが配置される。誘電体層Dは、シリコン酸化膜から形成される。
【0088】
電荷保持層Hは、3層構造を有してもよい。例えば、電荷保持層Hは、円筒状の内側層H1と、円筒状の中間層H2と、円筒状の外側層H3とを含む。外側層H3は、積層構造Lと接触する。中間層H2は、外側層H3の内側に配置される。内側層H1は、中間層H2の内側に配置される。内側層H1は、チャネル層Chと接触する。このため、積層構造LのリセスRの中心から、誘電体層D、チャネル層Ch、内側層H1、中間層H2および外側層H3が配置される。
【0089】
例えば、内側層H1は、シリコン酸化膜から形成される。内側層H1は、トンネル層とも呼ばれる。
【0090】
例えば、中間層H2は、シリコン窒化膜から形成される。中間層H2は、電荷を蓄積する。中間層H2は、電荷蓄積層とも呼ばれる。
【0091】
例えば、外側層H3は、シリコン酸化膜から形成される。外側層H3は、ブロック層とも呼ばれる。
【0092】
導電層Mおよびチャネル層Chに電圧が印加されることにより、対応する中間層H2に電荷が蓄積される。
図4(a)に示すように、導電層Mに対応して記憶素子Seが形成される。このため、1つのリセスR内には、導電層Mの数に対応する数の記憶素子Seが形成される。
【0093】
なお、
図4(b)に示すように、基板Wには、複数のリセスRが形成されており、リセスRは、基板Wにおいて規則的に配置される。リセスR内にはそれぞれ、電荷保持層H、チャネル層Chおよび誘電体層Dが配置されている。複数のリセスRは、同様の径および高さを有するように設計される。例えば、リセスRごとのトップ径Wtの差は、5%以下であってもよく、3%以下であってもよい。
【0094】
典型的には、リセスRは、積層構造Lに対してドライエッチングを行うことによって形成される。積層構造Lに対してドライエッチングを行ってリセスRを形成する際に、リセスRの深部の径が、リセスRの表面側の径よりも小さくなることがある。特に、積層構造Lの高さおよび/または積層構造Lの積層数が増大すると、リセスRの深部の径は、リセスRの表面側の径よりも小さくなりやすい。また、スループットを向上させるためにドライエッチングの処理期間を短くするほど、リセスRの深部の径は、リセスRの表面側の径よりも小さくなりやすい。
【0095】
図4(a)に示したように、リセスR内には複数の記憶素子Seが形成される。このため、リセスRの径は、表面側部分から深部にわたって一定であることが好ましい。しかしながら、積層構造LにリセスRを形成する場合、リセスRの径が一定にならないことがある。リセスRの径が異なる場合、リセスR内に記憶素子を形成すると、記憶素子の電気的特性が一定にならず、記憶素子の特性を均一化できないことがある。
【0096】
また、一般に、リセスRの径が小さいほど、基材Sに対してより多くの記憶素子を形成できるため、メモリ容量を増大させるためには、リセスRの径が小さいことが好ましい。ただし、リセスRの径が小さいと、リセスRをエッチングするためのエッチング流体の流れが不充分になりやすい。このため、リセスRをエッチングすると、リセスRの位置に応じてエッチングに偏りが生じやすい。具体的には、リセスRの表面側部分は比較的エッチングされやすいのに対して、リセスRの深部は比較的エッチングされにくい。
【0097】
詳細は後述するが、本実施形態によれば、リセスRの径が小さくても、リセスRの深部(以下、「リセス深部Rf」と記載する。)を選択的にエッチングできる。これにより、リセスRの径の不均一性を抑制できる。
【0098】
次に、
図5を参照して、本実施形態の半導体素子形成方法を説明する。本実施形態の半導体素子形成方法の一部は、
図1~
図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて行われる。
【0099】
図5(a)に示すように、基板Wは、基材Sと、積層構造Lとを有する。基材Sは、xy平面に広がる薄膜状である。積層構造Lは、基材Sの上面に形成される。積層構造Lは、基材Sの上面からz方向に延びるように形成される。例えば、積層構造Lは、シリコン酸化膜(SiO
2)およびシリコン窒化膜(SiN)から形成される。積層構造Lは、表面Laを有する。
【0100】
積層構造Lは、絶縁層Nと、犠牲層Saとを有する。絶縁層Nと犠牲層Saとは交互に積層される。複数の絶縁層Nのそれぞれは、基材Sの上面と平行に延びる。隣接する2つの絶縁層Nの間には犠牲層Saが設けられている。隣接する2つの絶縁層Nは犠牲層Saによって支持される。なお、犠牲層Saは、半導体素子300を作製する過程において、
図4に示した導電層Mに置換される。
【0101】
例えば、絶縁層Nの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。絶縁層Nは、シリコン酸化膜から形成される。
【0102】
また、例えば、犠牲層Saの厚さ(z方向に沿った長さ)は、1nm以上50nm以下である。一例では、犠牲層Saは、シリコン窒化膜から形成される。
【0103】
図5(b)に示すように、積層構造LにリセスRを形成する。典型的には、リセスRは、ドライエッチングによって形成される。ドライエッチングによって形成されたリセスRの径(xy平面における長さ)が表面側から深部まで一定であることが理想的であるが、実際には、リセスRの径は表面側から深部まで一定にならないことがある。特に、基板Wのスループットを向上させるためにドライエッチングの処理時間を短縮する場合、リセスRの径が表面側から深部まで一定になりにくい。この場合、リセス深部Rfの径は、リセスRの表面側部分Rnの径よりも小さくなる。
【0104】
なお、例えば、リセス深部Rfは、リセスRのうち基材S側に位置する部分を示す。リセスRの表面側部分Rnは、リセスRのうち表面側に位置する部分を示す。
【0105】
図5(c)に示すように、基板WのリセスRを変形する。例えば、リセス深部Rfの径をドライエッチング後のリセス深部Rfの径よりも選択的に大きくする。一例では、リセス深部Rfの径は、xy平面に沿って10nm未満の長さにわたって広げられる。これにより、基板WのリセスRの径を表面側から深部にわたって均一化できる。
【0106】
図5(d)に示すように、積層構造LのリセスRの内側に電荷保持層Hを形成する。
【0107】
図5(e)に示すように、電荷保持層Hの内側に、チャネル層Chおよび誘電体層Dを形成する。その後、犠牲層Saを導電層Mに置換する。以上のようにして、
図4に示した半導体素子300を形成できる。
【0108】
なお、
図5(b)では、説明が過度に複雑になることを避けるために、リセスRの径は、表面側から深部まで直線的に変化するように示したが、本実施形態はこれに限定されない。ボーイング現象により、リセスRの径は、中央部付近において最も大きくなることがある。
【0109】
次に、
図6を参照して、一般的な半導体素子形成方法を説明する。
図6(a)~
図6(g)は、一般的な半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
【0110】
図6(a)に示すように、基板Wの積層構造LにはリセスRが設けられる。
図6(b)に示すように、リセスRに充填層Fを充填する。
図6(c)に示すように、基板Wに除去液Dsを付与する。除去液Dsは、リセスRに充填された充填層Fを部分的に溶解させる。その結果、充填層Fから、リセス深部Rfを部分的に充填した部分充填層Fpが形成される。
図6(d)に示すように、基板Wに撥水剤Pを供給する。そして、除去液Dsが撥水剤Pに置換される。リセスRの表面側部分Rnは部分充填層Fpには覆われていないため、リセスRの表面側部分Rnにおいて積層構造Lの表面と撥水剤Pとが反応して被覆膜Psが形成される。
【0111】
図6(e)に示すように、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去する。
図6(f)に示すように、リセスRを薬液Cでエッチングする。リセス深部Rfは、絶縁層Nおよび犠牲層Saが露出されているため、薬液Cによってエッチングされる。このため、
図6(f)に示すように、リセス深部Rfに位置する領域Reは、薬液Cによって除去され、リセスRの径が広がるように拡大する。
図6(g)に示すように、薬液Cおよび被覆膜Psを除去する。
【0112】
次に、
図7及び
図8を参照して、積層構造Lの表面の状態を説明する。
図7(a)~
図7(c)は、比較例に係る絶縁層N(
図6)としてのシリコン酸化膜の表面の状態を説明するための模式図である。
【0113】
図7(a)に示すように、絶縁層Nの表面には、複数の吸着サイト10が存在する。複数の吸着サイト10の各々は、水酸基を含む。吸着サイトは、吸着媒としての固体表面のうち、吸着質としての分子を吸着させる領域を示す。
【0114】
図7(b)に示すように、絶縁層Nの表面に撥水剤P(
図6(d))を供給すると、撥水剤Pと吸着サイト10の水酸基とが反応して、被覆膜Ps(
図6(d))が形成される。具体的には、吸着サイト10の水酸基が、撥水剤Pのメチル基またはシリル基に置換されることで、被覆膜Psの材料である分子PsMが絶縁層Nの表面に吸着される。その結果、絶縁層N上に被覆膜Psが形成される。
【0115】
図7(c)に示すように、薬液Cが供給された場合でも(
図6(f))、絶縁層N上に被覆膜Psが形成されているため、絶縁層Nは、エッチングされない。換言すれば、被覆膜Psは、薬液Cから、絶縁層Nを保護している。更に換言すれば、被覆膜Psは、保護膜として機能している。
【0116】
図8(a)~
図8(c)は、比較例に係る犠牲層Sa(
図6)としてのシリコン窒化膜の表面の状態を説明するための模式図である。
【0117】
図8(a)に示すように、犠牲層Saの表面には、複数の吸着サイト11が存在する。複数の吸着サイト11の各々は、水酸基を含む。ただし、犠牲層Saの表面における単位面積当たりの吸着サイト11の数は、
図7(a)に示す絶縁層Nの表面における単位面積当たりの吸着サイト11の数よりも少ない。犠牲層Saがシリコン窒化膜だからである。
【0118】
図8(b)に示すように、犠牲層Saの表面に撥水剤P(
図6(d))を供給すると、撥水剤Pと吸着サイト10の水酸基とが反応して、被覆膜Ps(
図6(d))が形成される。具体的には、吸着サイト11の水酸基が、撥水剤Pのメチル基またはシリル基に置換されることで、被覆膜Psの材料である分子PsMが犠牲層Saの表面に吸着される。その結果、犠牲層Sa上に被覆膜Psが形成される。
【0119】
ただし、犠牲層Saの表面における吸着サイト10の数が少ないため(
図8(a))、犠牲層Sa上の被覆膜Psでは、絶縁層N上の被覆膜Ps(
図7(b))と比べて、被覆膜Psの分子PsMが吸着されていない非吸着領域20が多くなる可能性がある。非吸着領域20が多いことは、被覆膜Psの保護膜としての機能が低下していることを示す。
【0120】
図8(c)に示すように、薬液Cが供給された場合(
図6(f))、犠牲層Sa上の被覆膜Psには非吸着領域20が多いため、犠牲層Saのうち非吸着領域20に対応する部分については、薬液Cによるエッチングが進行する可能性がある。この場合、犠牲層Sa上では、被覆膜Psの保護膜としての機能が低下している。
【0121】
ここで、
図6(d)に示すように、リセスRに撥水剤Pを供給することで、絶縁層Nと犠牲層Saとに対して同時に被覆膜Psを形成している。従って、
図7及び
図8から理解できるように、リセスRの表面側部分Rnの絶縁層Nについては、被覆膜Psの保護膜としての機能が低下していないため、薬液Cによるエッチングは行われない。一方、リセスRの表面側部分Rnの犠牲層Saについては、被覆膜Psの保護膜としての機能が低下しているため、薬液Cによるエッチングが進行する可能性がある。つまり、リセスRにおいて径を広げる必要のない部分(表面側部分Rn)における犠牲層Saに対して、薬液Cによるエッチングが行われる可能性がある。
【0122】
そこで、本実施形態に係る半導体素子形成方法では、被覆膜Psに相当する第2被覆膜Ps2(
図11(a))を形成する前に、吸着サイト数の多い第1被覆膜Ps1(
図9(b))を形成する。
【0123】
次に、
図9~
図13を参照して、本実施形態に係る半導体素子形成方法を説明する。
図9~
図13は、本実施形態に係る半導体素子形成方法を説明するための模式図である。
図9~
図13に示した半導体素子形成方法は、
図5を参照して上述した半導体素子形成方法の一部として好適に用いられる。例えば、
図9~
図13に示した半導体素子形成方法は、
図5(c)に示したリセスRの変形に行われる。本実施形態の半導体素子形成方法は、
図1~
図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて行われる。
【0124】
まず、
図9(a)に示すように、積層構造LにはリセスRが設けられる。例えば、基板Wに対してエッチングを行うことにより、積層構造LにリセスRが形成される。ここでは、絶縁層Nおよび犠牲層SaにリセスRが形成される。リセスRは、エッチング停止層Esにまで達する。絶縁層Nは、典型的には、シリコン酸化膜である。犠牲層Saは、典型的には、シリコン窒化膜である。
【0125】
次に、
図9(b)に示すように、リセス深部Rfから表面側部分Rnにまでわたって、第1被覆膜Ps1を形成する。典型的には、第1被覆膜Ps1は、シリコン酸化膜である。第1被覆膜Ps1の厚さ(x方向に沿った長さ)は、例えば、0.1nm以上10nm以下である。
【0126】
典型的には、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法によって、リセスRに第1被覆膜Ps1を形成する。ALD法は、気相原料(プリカーサ)の供給とパージとを繰り返すことで、原子層を一層ずつ堆積して膜を形成する膜形成方法である。ALD法では、原子の自己制御性を利用する。ALD法によれば、第1被覆膜Ps1を精度良く均一に形成できる。なお、ALD装置(不図示)が、ALD法によって第1被覆膜Ps1を形成する。
【0127】
なお、第1被覆膜Ps1の形成方法は、特に限定されず、例えば、リセスRに対して、オゾン水、過酸化水素水、又は、硫酸過酸化水素水混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:SPM)を供給することによって、第1被覆膜Ps1を形成してもよい。
【0128】
次に、
図10(a)に示すように、第1被覆膜Ps1を覆うように、リセスRに充填層Fを充填する。充填層Fは、例えば、有機物(炭素系材料)である。一例では、充填層Fは、ポリマーである。充填層Fは、レジストから形成されてもよい。例えば、処理液供給部132が基板Wに処理液を供給した後で、処理液から溶媒を揮発させると、処理液の溶質から充填層Fが形成される。ここでは、充填層Fは、第1被覆膜Ps1を覆うように、リセス深部Rfから表面側部分Rnにまでわたって充填する。
【0129】
処理液は、基板Wに付与された後に固体状に変化することが好ましい。処理液自体は液体状であるが、処理液が基板Wに塗布された後に溶媒が揮発することにより、溶質は固体状に変化して充填層Fを形成する。
【0130】
次に、
図10(b)に示すように、基板Wに除去液Dsに付与する。除去液Dsは、充填層Fを溶解させる。ここでは、除去液Dsは、リセスRに充填された充填層Fを部分的に溶解させる。これにより、リセス深部Rfには充填層Fが充填されたまま、リセスRの表面側部分Rnは除去液Dsに置換される。その結果、充填層Fから、リセス深部Rfを部分的に充填した部分充填層Fpが形成される。なお、除去液Dsは、第1被覆膜Ps1を溶解しない。
【0131】
例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを供給する。除去液供給部134は、充填層Fが完全に溶解することなく部分的に溶解するように設定された時間および量の除去液Dsを供給する。例えば、除去液Dsは、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol:IPA)を含む。
【0132】
典型的には、リセスRの深さのうちの半分以上が除去液Dsに置換され、リセスRの深さのうちの充填層Fの半分未満が残って部分充填層Fpとなる。例えば、部分充填層Fpの深さ(z軸方向の長さ)はリセスRの深さのうちの1/3以下である。
【0133】
次に、
図11(a)に示すように、撥水剤Pを供給する。例えば、撥水剤供給部136は、基板Wに撥水剤Pを供給する。部分充填層Fpは、撥水剤Pには影響されず、除去液Dsが撥水剤Pに置換される。これにより、リセス深部Rfには部分充填層Fpが充填されたまま、リセスRの表面側部分Rnの除去液Dsは撥水剤Pに置換される。
【0134】
更に、リセス深部Rfは部分充填層Fpで覆われているが、リセスRの表面側部分Rnは部分充填層Fpには覆われていない。このため、撥水剤Pが供給されると、リセスRの表面側部分Rnにおいて、第1被覆膜Ps1の表面と撥水剤Pとが反応して、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2が形成される。第2被覆膜Ps2は、例えば、シランカップリング反応によって生じた有機シラン化合物の分子膜で構成される。一例では、シランカップリング剤は、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系撥水剤の少なくとも1つを含む。非クロロ系撥水剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも1つを含む。第2被覆膜Ps2の厚さ(x方向に沿った長さ)は、例えば、0.5nm以上5nm以下である。なお、第1被覆膜Ps1は第2被覆膜Ps2の下地であるため、第1被覆膜Ps1を下地膜と呼ぶこともできる。
【0135】
リセス深部Rfは、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で覆われていない部分である。換言すれば、リセス深部Rfは、リセスRのうち第2被覆膜Ps2よりも基材S側に位置する部分である。更に換言すれば、リセス深部Rfは、リセスRのうち第2被覆膜Ps2よりも深い位置に位置する部分である。
【0136】
次に、
図11(b)に示すように、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去する。この場合、リセス深部Rfの部分充填層FpとともにリセスRの表面側の撥水剤Pの一部が除去される。このとき、リセスRを形成した際(例えば、ドライエッチング時)の残渣であるパーティクルも除去されることが好ましい。部分充填層Fpの除去により、リセス深部Rfでは、第1被覆膜Ps1が露出される。一方、リセスRの表面側部分Rnは、第2被覆膜Ps2で被覆されたままである。第2被覆膜Ps2は、第1被覆膜Ps1を被覆している。
【0137】
例えば、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去するために、除去液を付与してもよい。一例では、除去液はIPAを含む。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを供給する。除去液供給部134は、部分充填層Fpが完全に溶解するように設定された時間および量の除去液を供給する。
【0138】
あるいは、部分充填層Fpおよび撥水剤Pを除去するために、基板Wは加熱されてもよい。例えば、部分充填層Fpが昇華性物質から形成される場合、加熱によって部分充填層Fpを昇華させてもよい。
【0139】
次に、
図12(a)に示すように、リセスRを第1薬液C1でエッチングする。典型的には、第1薬液C1は、フッ酸を含む。例えば、第1薬液C1は、1:100~1:2000の範囲で希釈されたフッ酸(希フッ酸)を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。あるいは、第1薬液C1は、水または脱イオン水(Deionized Water:DIW)を含んでもよい。あるいは、第1薬液C1は、燐酸を含んでもよい。あるいは、第1薬液C1は、フッ化物含有リン酸であってもよい。フッ化物含有リン酸は、フッ化物を含むリン酸である。この場合、フッ化物は、フッ化アンモニウムまたは二フッ化水素アンモニウムである。
【0140】
リセス深部Rfでは、第1被覆膜Ps1が露出されているため(
図11(b))、第1被覆膜Ps1が第1薬液C1によってエッチングされる。リセス深部Rfの第1被覆膜Ps1がエッチングされると、絶縁層Nおよび犠牲層Saが露出される。その結果、リセス深部Rfにおいて、絶縁層Nおよび犠牲層Saが第1薬液C1によってエッチングされる。この場合、第1薬液C1は、絶縁層Nと犠牲層Saとを略等速でエッチングする液体である。従って、リセス深部Rfは、第1薬液C1によって略等速でエッチングされる。なお、
図12(a)では、図面が煩雑になるのを回避するために、エッチング後のリセス深部Rfの径を略同じにしている。また、リセス深部Rfにおいて、第1被覆膜Ps1のみを第1薬液C1によってエッチングしてもよい。この場合、第1被覆膜Ps1の全部をエッチングしてもよいし、第1被覆膜Ps1の一部をエッチングしてもよい。
【0141】
一方、リセスRの表面側部分Rnは、第2被覆膜Ps2によって被覆されているため、第1薬液C1によってエッチングされない。このため、
図12(a)に示すように、リセス深部Rfに位置する領域Re1は、第1薬液C1によって除去され、リセスRの径が広がるように拡大する。
【0142】
この場合、例えば、リセス深部Rfの径を、最終的にU[nm]広げることを目的としている場合は、リセス深部Rfの径を、V[nm]広げる。V[nm]は、U[nm]よりも小さい。リセス深部Rfの径をV[nm]広げる理由は、後段(
図13(a))にて第1被覆膜Ps1を除去する際に、リセス深部Rfの絶縁層Nおよび犠牲層Saがエッチングされるからである。なお、第1薬液C1によるエッチング量は、例えば、エッチング時間によって調整される。
【0143】
なお、第1薬液C1は、第1被覆膜Ps1をエッチングするが、第2被覆膜Ps2をエッチングしない液体であるか、又は、第2被覆膜Ps2をほとんどエッチングしない液体である。
【0144】
次に、
図12(b)に示すように、第1薬液C1および第2被覆膜Ps2を除去する。第1薬液C1および第2被覆膜Ps2の除去は、紫外線照射または加熱によって行ってもよい。また、このとき、ドライエッチング時の残渣も除去されることが好ましい。なお、SPMをリセスRに供給することによって、第1薬液C1および第2被覆膜Ps2を除去してもよい。
【0145】
次に、
図13(a)に示すように、第1被覆膜Ps1を第2薬液C2で除去する。第2薬液C2は、例えば、
図12(a)の工程で使用する第1薬液C1と同じである。すなわち、第2薬液C2は、フッ酸を含む。例えば、第2薬液C2は、1:100~1:2000の範囲で希釈されたフッ酸(希フッ酸)を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。あるいは、第2薬液C2は、水またはDIWを含んでもよい。あるいは、第2薬液C2は、燐酸を含んでもよい。あるいは、第2薬液C2は、フッ化物含有リン酸であってもよい。フッ化物含有リン酸は、フッ化物を含むリン酸である。この場合、フッ化物は、フッ化アンモニウムまたは二フッ化水素アンモニウムである。
【0146】
リセスRにおいて、表面側部分Rnの第1被覆膜Ps1が第2薬液C2によってエッチング(除去)されるとともに、リセス深部Rfの絶縁層Nおよび犠牲層Saが、第2薬液C2によってエッチングされる。従って、リセス深部Rfに位置する領域Re2は、第2薬液C2によって除去され、リセスRの径が更に広がるように拡大する。リセス深部Rfの径が、リセスRの手前の径(トップ径)と等しくなるように、広がってもよい。
【0147】
この場合、第2薬液C2は、第1被覆膜Ps1と絶縁層Nと犠牲層Saとを略等速でエッチングする液体である。従って、リセスRにおいて、表面側部分Rnの第1被覆膜Ps1、並びに、リセス深部Rfの絶縁層Nおよび犠牲層Saが、第2薬液C2によって略等速でエッチングされる。なお、
図13(a)では、図面が煩雑になるのを回避するために、エッチング後のリセス深部Rfの径を略同じにしている。また、リセス深部Rfにおいて、第1被覆膜Ps1が残存している場合には、第1被覆膜Ps1、絶縁層Nおよび犠牲層Saが、第2薬液C2によってエッチングされる。
【0148】
ここで、例えば、リセス深部Rfの径を、最終的にU[nm]広げることを目的としている場合は、
図12(a)の工程において、リセス深部Rfの径を、V[nm]広げた。V[nm]は、U[nm]よりも小さい。そこで、
図13(a)の工程では、例えば、リセス深部Rfの径が、(U-V)[nm]広がるように、第2薬液C2によるエッチングを行う。なお、第2薬液C2によるエッチング量は、例えば、エッチング時間によって調整される。
【0149】
次に、
図13(b)に示すように、リセスRから第2薬液C2を除去する。
【0150】
以上のようにして、積層構造LのリセスRの径を調整できる。なお、
図13では、リセスRの形状の変化が容易に理解されるように、リセス深部Rfの径がリセスRのトップ径(口径)と等しくなる一方で、リセス深部Rfの径がリセスRの中央部分の径よりも大きくなるように図示したが、これは、例示に過ぎないことに留意されたい。リセスRは、リセス深部Rfの径がリセスRの中央部分の径と等しくなるようにリセス深部Rfの径は広がってもよい。または、リセスRは、リセス深部Rfの径がリセスRのトップ径および中央部分の径と等しくなるように変形されてもよい。これらの点については、
図12についても同様である。
【0151】
なお、
図10(b)では、除去液Dsを付与することにより、充填層Fは、部分的に除去液Dsに置換される。リセスRの径が小さい場合、除去液Dsが充填層Fの全体を除去するためには比較的長い時間が必要となる。このため、除去液Dsが充填層Fの全体を除去するための時間の途中で除去液Dsによる充填層Fの除去処理を中断することにより、充填層Fを部分的に除去できる。また、
図10(b)に示すように、除去液Dsの量および処理時間等を調整することにより、適切な部分を被覆した部分充填層Fpを残すことができる。
【0152】
また、
図10(b)では、除去液Dsによって充填層Fから部分充填層Fpを形成したが、本実施形態はこれに限定されない。充填層Fが昇華性物質から形成される場合、加熱によって充填層Fから部分充填層Fpを形成してもよい。この場合も、加熱時間および温度を調整することで、充填層Fから、リセス深部Rfを部分的に充填する部分充填層Fpを形成してもよい。
【0153】
なお、基板Wは、複数の記憶素子Seを備えたメモリとして用いられることが好ましい。典型的には、基板Wがメモリとして用いられる場合、基板Wには、径および高さが一定に設計された複数のリセスRが設けられる。このため、記憶容量の大きなメモリに用いられる複数のリセスRを同一の処理によって同時に変形できる。
【0154】
なお、積層構造LにリセスRを形成する際に、ボーイング現象によってリセスRの径が中央部付近において最も大きくなることがある。この場合、第2被覆膜Ps2は中央部付近を覆うことが好ましい。また、リセス深部Rfの径は、リセスRの最も大きい中央部の径と等しくなるように、エッチングによって広げられてもよい。
【0155】
なお、
図11(a)を参照した上述の説明では、第2被覆膜Ps2は、部分充填層Fpの充填されたリセスRに対して液体状の撥水剤Pを供給することによって形成されたが、本実施形態はこれに限定されない。第2被覆膜Ps2は、ガスによって形成されてもよい。
【0156】
次に、
図14を参照して、第2被覆膜Ps2を形成する際の第1被覆膜Ps1の表面の状態を説明する。
図14(a)~
図14(c)は、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2を形成する際の表面の状態を説明するための模式図である。
図14(a)~
図14(c)では、犠牲層Sa(シリコン窒化膜)上の第1被覆膜Ps1が示されている(
図9(b))。なお、絶縁層N(シリコン酸化膜)上にも、犠牲層Sa上と同じ第1被覆膜Ps1が形成される(
図9(b))。
【0157】
図14(a)に示すように、第1被覆膜Ps1の表面には、複数の吸着サイト12が存在する。複数の吸着サイト12の各々は、水酸基を含む。第1被覆膜Ps1の表面における単位面積当たりの吸着サイト12の数は、絶縁層Nの表面における単位面積当たりの吸着サイト10(
図7(a))の数と同程度である。例えば、第1被覆膜Ps1及び絶縁層Nが、シリコン酸化膜だからである。また、第1被覆膜Ps1の表面における単位面積当たりの吸着サイト12の数は、犠牲層Saの表面における単位面積当たりの吸着サイト11(
図8(a))の数よりも多い。
【0158】
図14(b)に示すように、第1被覆膜Ps1の表面に撥水剤Pを供給すると、撥水剤Pと吸着サイト12の水酸基とが反応して、第2被覆膜Ps2が形成される(
図11(a))。具体的には、吸着サイト12の水酸基が、撥水剤Pのメチル基またはシリル基に置換されることで、第2被覆膜Ps2の材料である分子PsMが第1被覆膜Ps1の表面に吸着される。その結果、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2が形成される。この場合、第1被覆膜Ps1の表面における吸着サイト12の数が多いため(
図14(a))、比較例に係る被覆膜Ps(
図8(b))と比べて、第2被覆膜Ps2では、非吸着領域20(
図8(b))は極めて少ない。従って、犠牲層Sa及び絶縁層Nに関係なく、第2被覆膜Ps2の保護膜としての機能は、比較例に係る被覆膜Ps(
図8(b))の保護膜としての機能よりも高い。
【0159】
図14(c)に示すように、第1薬液C1が供給された場合でも(
図12(a))、第2被覆膜Ps2が形成されているため、犠牲層Saは、エッチングされない。換言すれば、第2被覆膜Ps2は、第1薬液C1から、犠牲層Saを効果的に保護している。更に換言すれば、第2被覆膜Ps2は、保護膜として効果的に機能している。具体的には、第1被覆膜Ps1の表面における吸着サイト12の数が多いため(
図14(a))、犠牲層Sa及び絶縁層Nに関係なく、比較例に係る被覆膜Ps(
図8(b))と比べて、第2被覆膜Ps2の保護膜としての機能は高い。
【0160】
以上、
図14を参照して説明したように、本実施形態によれば、第1被覆膜Ps1の表面において第2被覆膜Ps2の材料を吸着させるための単位面積当たりの吸着サイト12の数は、積層構造Lを構成する異なる層(絶縁層N及び犠牲層Sa)のうち、特定層の表面における単位面積当たりの吸着サイトの数よりも多い。この場合、特定層は、積層構造Lを構成する異なる層(絶縁層N及び犠牲層Sa)のうち、単位面積当たりの吸着サイトの数が最も少ない層を示す。本実施形態では、特定層は、犠牲層Saである。このように、本実施形態では、第1被覆膜Ps1の表面の吸着サイト12の数が多いため、犠牲層Sa及び絶縁層Nに関係なく、比較例に係る被覆膜Ps(
図8(b))と比べて、第2被覆膜Ps2の保護膜としての機能は高い。よって、基板WのリセスRのうち径を広げる必要のない部分(表面側部分Rn)における絶縁層N及び犠牲層Saに対して、第1薬液C1によるエッチングが行われることを抑制できる。
【0161】
特に、本実施形態では、第1被覆膜Ps1の表面の吸着サイト12は水酸基を含む。従って、撥水剤Pとして、末端にメチル基またはシリル基を含む化合物を使用することで、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2を容易に形成できる。
【0162】
ここで、本実施形態では、リセスRにおいて、絶縁層N及び犠牲層Saを被覆するように、第1被覆膜Ps1が形成される(
図9(b))。従って、第1被覆膜Ps1上には、保護膜としての機能の高い第2被覆膜Ps2が形成される(
図11(a))。その結果、
図12(a)の工程において、リセスRの表面側部分Rnの絶縁層N及び犠牲層Saは第1薬液C1によってエッチングされない。つまり、リセスRにおいて径を広げる必要のない部分(リセスRの表面側部分Rn)に対して、第1薬液C1によるエッチングが行われることを抑制できる。一方、リセスRにおいて径を広げる必要のある部分(リセス深部Rf)に対して、第1薬液C1によるエッチングを行うことができる。
【0163】
特に、
図6に示す比較例に係る半導体素子形成方法では、犠牲層Sa上の被覆膜Psの保護膜としての機能が低下するため、リセスRにおいて径を広げる必要のない部分(リセスRの表面側部分Rn)における犠牲層Saに対してエッチングが行われる可能性があった(
図8(c))。これに対して、本実施形態に係る半導体素子形成方法では、第1被覆膜Ps1を犠牲層Sa及び絶縁層N上に形成した後に第2被覆膜Ps2を形成することで、絶縁層Nだけでなく、犠牲層Saについても、第1薬液C1によるエッチングが行われることを抑制できる。
【0164】
次に、
図15を参照して本実施形態の半導体素子形成方法を説明する。
図15は、半導体素子形成方法のフロー図である。本実施形態の半導体素子形成方法は、
図1~
図3を参照して上述した基板処理装置100によって好適に行われる。
【0165】
まず、工程S10において、リセスRに第1被覆膜Ps1を形成する(
図9(b))。典型的には、リセスRの表面側部分Rnからリセス深部Rfまでにわたって第1被覆膜Ps1を形成する。具体的には、基材Sに支持された積層構造Lに設けられたリセスRを被覆する第1被覆膜Ps1を形成する。従って、リセスRにおいて露出している絶縁層N及び犠牲層Saが第1被覆膜Ps1によって被覆される。
【0166】
次に、工程S20において、積層構造LにおいてリセスRを部分的に被覆する(
図11(a)、
図11(b))。典型的には、リセスRの表面側部分Rnを選択的に被覆する。具体的には、第1被覆膜Ps1が形成されたリセスRのうち表面側部分Rn(表面側に位置する部分)を、第1被覆膜Ps1の上から選択的に被覆する第2被覆膜Ps2を形成する。第2被覆膜Ps2は、リセスRの表面側部分Rnを被覆する一方で、リセス深部Rfを被覆しない。このため、リセス深部Rfでは、第1被覆膜Ps1が露出される。
【0167】
次に、工程S30において、リセス深部Rfの径を拡張する。リセスRに薬液(第1薬液C1、第2薬液C2)が付与されることにより、リセス深部Rfの径を拡張できる(
図12(a)、
図13(a))。リセスRは第2被覆膜Ps2で部分的に被覆されているため、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で被覆されていないリセス深部Rfの径を部分的に拡張する。これにより、リセス深部Rfの径を拡張できるため、リセスRの径を調整できる。
【0168】
以上、
図15を参照して説明したように、本実施形態では、リセスRの表面側部分Rnにおいて第1被覆膜Ps1の上に第2被覆膜Ps2を形成する(工程S10、S20)。従って、第2被覆膜Ps2の保護膜としての機能が高くなる。その結果、工程S30において、基板WのリセスRのうち径を広げる必要のない部分(表面側部分Rn)の犠牲層Sa及び絶縁層Nに対して、薬液(第1薬液C1)によるエッチングが行われることを抑制できる(
図12(a))。
【0169】
次に、
図16を参照して本実施形態の半導体素子形成方法を説明する。
図16は、半導体素子形成方法のフロー図である。本実施形態の半導体素子形成方法は、
図1~
図3を参照して上述した基板処理装置100を用いて好適に行われる。
【0170】
まず、工程S10において、基板Wの基材Sに支持された積層構造Lに設けられたリセスRを被覆する第1被覆膜Ps1を形成する(
図9(b))。この場合、例えば、基板処理装置100の外部のALD装置によるALD法によって、第1被覆膜Ps1を形成する。なお、オゾン水、過酸化水素水、又は、SPMによって、第1被覆膜Ps1を形成してもよい。この場合は、基板処理装置100の液体供給部130は、例えば、処理液供給部132と同様の構成の流体供給部を備えていてもよい。そして、流体供給部が、オゾン水、過酸化水素水、又は、SPMを、基板Wの上面Waに供給する。なお、絶縁層Nがシリコン酸化膜であり、犠牲層Saがシリコン窒化膜である場合、リセスRに対して、オゾン水、過酸化水素水、又は、SPMを供給することによって、シリコン酸化膜からなる第1被覆膜Ps1を形成できる。
【0171】
次に、工程Saにおいて、基板Wを基板処理装置100に搬入する。ここでは、基板Wは、基材Sおよび積層構造Lを有しており、積層構造LにはリセスRが設けられ、リセスRには第1被覆膜Ps1が形成されている。
【0172】
次に、工程S20において、第1被覆膜Ps1の上から、第2被覆膜Ps2によってリセスRを部分的に被覆する。ここでは、工程S20におけるリセスRの部分的な被覆は、工程S21における充填層Fの形成、工程S22における充填層Fの一部除去(部分充填層Fpの形成)、工程S23における撥水剤供給(第2被覆膜Ps2の形成)、および、工程S24における部分充填層Fpの除去によって行われる。
【0173】
まず、工程S21において、リセスRに充填層Fを充填する(
図10(a))。具体的には、第1被覆膜Ps1の上からリセスRを充填する充填層Fを形成する。例えば、処理液供給部132は、基板Wに処理液を供給する。これにより、基板WのリセスRに充填層Fが充填される。なお、典型的には、処理液が供給された後、基板保持部120は、基板Wの回転数を増大して、基板Wの表面に余剰に残った処理液を基板Wの外方に振り切る。
【0174】
次に、工程S22において、充填層Fの一部を除去する(
図10(b))。つまり、充填層Fを形成した後で(工程S21の後で)充填層Fを部分的に除去する。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを所定期間にわたって供給する。除去液DsがリセスRの充填層Fに付与されることにより、充填層Fを部分的に溶解してリセスR内に部分充填層Fpが形成される。除去液Dsを付与する時間は、リセスRの充填層Fを部分的に除去するように設定される。このとき、リセスRの表面側部分Rnの充填層Fは除去される一方で、リセス深部Rfには部分充填層Fpが残留する。
【0175】
あるいは、充填層Fを所定期間加熱することにより、リセスR内に部分充填層Fpを形成してもよい。例えば、充填層Fが昇華性物質を含む場合、充填層Fを所定期間加熱することにより、充填層Fの一部を昇華させて、リセスR内に部分充填層Fpを形成できる。
【0176】
ここで、工程S21及び工程S22は、「リセスRのうちのリセス深部Rfを、第1被覆膜Ps1の上から部分的に充填する部分充填層Fpを形成する工程」の一例に相当する。
【0177】
次に、工程S23において、基板Wに撥水剤Pを供給する(
図11(a))。つまり、部分充填層Fpを形成した後に(工程S22の後に)撥水剤Pを供給する。撥水剤供給部136は、基板Wに撥水剤Pを供給する。リセス深部Rfに部分充填層Fpの形成されたリセスRに対して、撥水剤Pを付与することにより、リセスRのうち部分充填層Fpの形成されていない表面側部分Rnに撥水剤Pが充填され、撥水層が形成される。撥水層は第1被覆膜Ps1上に形成される。このとき、リセスRの表面側部分Rnにおいて、第1被覆膜Ps1の特性が撥水剤Pによって変化し、リセスRの表面側部分Rnに第2被覆膜Ps2が形成される。このように、撥水剤Pの供給により、第1被覆膜Ps1の上から、リセスRの表面側部分Rnに、撥水層の一部として第2被覆膜Ps2が形成される。
【0178】
次に、工程S24において、部分充填層Fpを除去する(
図11(b))。つまり、撥水剤Pを供給することでリセスRの表面側に、第1被覆膜Ps1の上から第2被覆膜Ps2を形成した後に(工程S23の後に)、部分充填層Fp及び撥水剤Pを除去する。
【0179】
ここでは、撥水剤Pから形成された撥水層のうち第2被覆膜Ps2以外の部分を除去するとともに、部分充填層Fpを除去する。例えば、除去液供給部134は、基板Wに除去液Dsを供給することにより、部分充填層Fpを溶解させるとともに、撥水層のうち第2被覆膜Ps2以外の部分を置換する。このとき、リセスRの表面側部分Rnは、第1被覆膜Ps1の上から第2被覆膜Ps2で被覆される一方で、リセス深部Rfでは第1被覆膜Ps1が露出する。
【0180】
あるいは、部分充填層Fpを所定期間加熱することにより、部分充填層Fpを除去してもよい。例えば、充填層Fが昇華性物質を含む場合、充填層Fを加熱することにより、充填層Fの一部を昇華させて、リセスRから部分充填層Fpを除去できる。
【0181】
次に、工程S30において、リセス深部Rfの径を拡張する。例えば、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で被覆されないリセス深部Rfが部分的にエッチングされ、リセス径が広がる。
【0182】
ここでは、工程S30におけるリセス深部Rfの径の拡張は、工程S31における第1薬液C1によるエッチング、工程S32における第2被覆膜Ps2の除去、および、工程S33における第1被覆膜Ps1の除去によって行われる。
【0183】
まず、工程S31において、第1薬液C1をリセスRに供給する(
図12(a))。例えば、薬液供給部138は、基板Wに第1薬液C1を供給する。これにより、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で被覆されていないリセス深部Rfが部分的にエッチングされる。すなわち、リセスRのうち第2被覆膜Ps2で覆われていない部分であるリセス深部Rfの径を広げるように、リセス深部Rfを第1薬液C1でエッチングする。
【0184】
次に、工程S32において、リセスRから第2被覆膜Ps2を除去する(
図12(b))。つまり、第1薬液C1でエッチングする工程S31よりも後において、第2被覆膜Ps2を除去する。例えば、第2被覆膜Ps2は、紫外線の照射または加熱処理によって第2被覆膜Ps2をアッシングすることで除去してもよい。なお、工程S32は、基板処理装置100の外部で行われてもよい。また、SPMを供給することによって、第2被覆膜Ps2を除去してもよい。この場合は、基板処理装置100の液体供給部130は、例えば、処理液供給部132と同様の構成の流体供給部を備えていてもよい。そして、流体供給部が、SPMを基板Wの上面Waに供給する。
【0185】
次に、工程S33において、リセスRから第1被覆膜Ps1を除去する(
図13(a))。つまり、第2被覆膜Ps2を除去する工程S32よりも後において、第1被覆膜Ps1を除去する。具体的には、リセスRに第2薬液C2を供給することによって、第1被覆膜Ps1を除去する。本実施形態では、第2薬液C2は第1薬液C1と同じである。例えば、薬液供給部138は、基板Wに第2薬液C2を供給する。これにより、リセスRのうち第1被覆膜Ps1が第2薬液C2によって除去される。加えて、リセス深部Rfが第2薬液C2によって更にエッチングされる。そして、第1被覆膜Ps1の除去及びエッチングの完了後に、リセスRから第2薬液C2を除去する(
図13(b))。
【0186】
次に、工程Sbにおいて、基板Wを基板処理装置100から搬出する。以上のようにして、リセス径の変動が抑制された基板Wを形成できる。
【0187】
以上、
図16を参照して説明したように、本実施形態によれば、リセスRに第1被覆膜Ps1を形成し(工程S10)、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2を形成する(工程S20)。従って、リセスRの表面側部分Rnにおいて、絶縁層Nだけでなく、犠牲層Saについても、第1薬液C1によるエッチングが行われることを抑制できる。つまり、基板WのリセスRのうち径を広げる必要のない部分(表面側部分Rn)に対して、第1薬液C1によるエッチングが行われることを抑制できる。
【0188】
また、本実施形態では、第1被覆膜Ps1の材質と第2被覆膜Ps2の材質とは異なっている。従って、第2被覆膜Ps2を除去する工程S32と、第1被覆膜Ps1を除去する工程S33とを異なるタイミングで実行することで、第1被覆膜Ps1及び第2被覆膜Ps2のそれぞれの性質に応じた手法によって、第1被覆膜Ps1及び第2被覆膜Ps2をそれぞれ効果的に除去できる。
【0189】
更に、本実施形態では、工程S33において、第1被覆膜Ps1を第2薬液C2で除去するとともに、リセス深部Rfを第2薬液C2でエッチングしている。従って、除去対象の第1被覆膜Ps1の厚さ(x方向に沿った長さ)を考慮しつつ、リセス深部Rfの径を目標値まで広げることができる。
【0190】
更に、本実施形態では、リセス深部Rfを、第1被覆膜Ps1の上から部分的に充填する部分充填層Fpを形成し、その後で、撥水剤Pによって第2被覆膜Ps2を形成する(工程S20)。このように、簡素なプロセスで、リセスRの表面側部分Rnにおいて、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2を形成できる。
【0191】
具体的には、本実施形態では、第1被覆膜Ps1の上から充填層Fを形成し(工程S21)、更にリセス深部Rfに部分充填層Fpを形成した後に(工程S22)、撥水剤Pによって第2被覆膜Ps2を形成する(工程S23)。従って、リセスRの表面側部分Rnにおいて、第1被覆膜Ps1上に第2被覆膜Ps2を容易に形成できる。
【0192】
次に、
図17を参照して、本実施形態の基板処理装置100を説明する。
図17は、基板処理装置100の模式図である。基板処理装置100は、複数枚の基板Wをまとめて処理できる。
【0193】
基板処理装置100は、基板保持部120と、液体供給部130とを備える。液体供給部130は、処理液供給部132と、除去液供給部134と、撥水剤供給部136と、薬液供給部138とを含む。処理液供給部132、除去液供給部134、撥水剤供給部136および薬液供給部138は、それぞれ液体を貯留する。
【0194】
処理液供給部132は、処理液貯留槽132tを含む。処理液貯留槽132tには、処理液が貯留される。処理液から、充填層が形成される。例えば、処理液は、溶質および揮発性を有する溶媒を含む。あるいは、処理液は、昇華性物質を含む。
【0195】
除去液供給部134は、除去液貯留槽134tを含む。除去液貯留槽134tには、除去液が貯留される。除去液により、処理液から形成された充填層を除去できる。除去液を供給する時間を制御することにより、基板Wから充填層を選択的に除去できる。
【0196】
除去液としては、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の溶媒を用いることができる。除去液としては、例えばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。
【0197】
撥水剤供給部136は、撥水剤貯留槽136tを含む。撥水剤貯留槽136tには、液体の撥水剤が貯留される。撥水剤により、基板Wに撥水層を形成する。撥水剤は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる撥水剤である。撥水剤は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系撥水剤の少なくとも1つを含む。非クロロ系撥水剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも1つを含む。
【0198】
薬液供給部138は、薬液貯留槽138tを含む。薬液貯留槽138tには、薬液が貯留される。薬液を用いた薬液処理により、基板Wを薬液処理できる。薬液処理により、基板Wに対して、エッチング、表面処理、特性付与、処理膜形成および膜の少なくとも一部の除去のいずれかを行うことが可能である。典型的には、薬液は、基板Wのエッチング処理に用いられるエッチング液である。本実施形態では、薬液は、第1薬液C1及び第2薬液C2として使用される。
【0199】
薬液は、フッ酸を含む。例えば、薬液は、1:100~1:2000の範囲で希釈されたフッ酸(希フッ酸)を含む。例えば、フッ酸は、40℃以上70℃以下に加熱されてもよく、50℃以上60℃以下に加熱されてもよい。ただし、フッ酸は、加熱されなくてもよい。また、薬液は、水または燐酸を含んでもよい。
【0200】
さらに、薬液は、過酸化水素水をさらに含んでもよい。また、薬液は、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)または王水(濃塩酸と濃硝酸との混合物)を含んでもよい。あるいは、薬液は、フッ化物含有リン酸であってもよい。フッ化物含有リン酸は、フッ化物を含むリン酸である。この場合、フッ化物は、フッ化アンモニウムまたは二フッ化水素アンモニウムである。
【0201】
基板保持部120は、基板Wを保持する。基板保持部120によって保持された基板Wの主面の法線方向はY方向に平行である。基板保持部120は、複数の基板Wを保持したまま基板Wを移動させる。例えば、基板保持部120は、基板Wを保持したまま鉛直上方または鉛直下方に移動する。あるいは、基板保持部120は、基板Wを保持したまま水平方向に移動してもよい。
【0202】
基板保持部120は、本体板122bと、保持棒124bとを含む。本体板122bは、鉛直方向(Z方向)に延びる板である。保持棒124bは、本体板122bの一方の主面から水平方向(Y方向)に延びる。ここでは、2つの保持棒124bが本体板122bの一方の主面からY方向に延びる。複数の基板Wは、紙面の奥手前方向に複数の基板Wを配列した状態で、複数の保持棒124bによって各基板Wの下縁が当接されて起立姿勢(鉛直姿勢)で保持される。
【0203】
基板処理装置100は、制御装置101をさらに備える。制御装置101は、制御部102および記憶部104を含む。制御部102は、基板保持部120を制御する。
【0204】
本実施形態の基板処理装置100において、制御部102は、枚葉式と同様に、基板保持部120に保持される基板Wを異なる液体で処理することにより、枚葉式について
図9~
図16を参照したのと同様に、基板Wの積層構造Lに設けられたリセスRの径を調整できる。
【0205】
また、本実施形態では、ALD法によって基板WのリセスRに第1被覆膜Ps1を形成して、基板Wを基板処理装置100に搬入する。ただし、オゾン水、過酸化水素水、又は、SPMによって、第1被覆膜Ps1を形成してもよい。この場合は、液体供給部130は、例えば、オゾン水、過酸化水素水、又は、SPMを貯留するための、処理液供給部132と同様の構成の流体供給部を備える。
【0206】
なお、本実施形態において、SPMを供給することによって第2被覆膜Ps2を除去してもよい。この場合は、液体供給部130は、例えば、SPMを貯留するための、処理液供給部132と同様の構成の流体供給部を備える。
【0207】
ここで、
図1~
図17を参照した説明では、基板WのリセスRには、記憶素子Seが配置されたが、本実施形態はこれに限定されない。基板WのリセスRには、記憶素子Seと同様の構成を有するが、記憶素子としては用いられないダミー記憶素子が形成されてもよい。あるいは、基板WのリセスRには、記憶素子Seと電気的に接続するためのコンタクトプラグが形成されてもよい。
【0208】
次に、
図18を参照して本実施形態の半導体素子形成方法で形成された半導体素子300を説明する。
図18は、半導体素子300の模式図である。
【0209】
半導体素子300には、複数のリセスRが設けられている。複数のリセスRは、記憶素子Seの配置されたメモリリセスRsに加えて、コンタクトプラグCpの配置されたコンタクトリセスRcを含む。コンタクトリセスRcは、導電層Mと電気的に接続される。
【0210】
本実施形態の半導体素子形成方法によれば、メモリリセスRsだけでなく、コンタクトリセスRcの径も表面部分から深部にわたって均一化できる。このため、コンタクトリセスRcによる半導体素子を支持する強度を均一化できる。
【0211】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明は、半導体素子形成方法に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0213】
100 基板処理装置
110 チャンバー
120 基板保持部
130 液体供給部
132 処理液供給部
134 除去液供給部
136 撥水剤供給部
138 薬液供給部
W 基板