(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079202
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192002
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
(72)【発明者】
【氏名】馬場 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA35
2E174CA38
2E174DA14
2E174DA33
2E174DA63
(57)【要約】
【課題】長尺な施工部材(例えばサッシ枠)を従来よりも効率良く組み付けることが可能な施工用治具を提供する。
【解決手段】施工用治具1は、建物の躯体Bの外側に取り付けられ、躯体外側から躯体の被組み付け部B2(開口部)に長尺な施工部材S(サッシ枠)を組み付けるために用いられる。施工用治具1は、躯体Bの被組み付け部B2の周辺部分に取り付けられ、躯体外側に向かって延びている躯体取り付け部10と、躯体とは間隔を空けて設けられ、躯体取り付け部10の延出端部から躯体の被組み付け部に対向する位置まで延びている延出部20と、延出部20のうち、躯体の被組み付け部に対向する部分から被組み付け部に向かって延びており、施工部材Sを支持する支持部40とを備えている。支持部40は、施工部材Sと被組み付け部B2を対向させた位置で施工部材Sを支持する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体の外側に取り付けられ、前記躯体の外側から前記躯体の被組み付け部に長尺な施工部材を組み付けるために用いられる施工用治具であって、
前記躯体のうち、前記被組み付け部の周辺部分に取り付けられ、前記躯体の外側に向かって延びている躯体取り付け部と、
前記躯体とは間隔を空けて設けられ、前記躯体取り付け部の延出端部から前記躯体の前記被組み付け部に対向する位置まで延びている延出部と、
前記延出部のうち、前記躯体の前記被組み付け部に対向する部分から前記被組み付け部に向かって延びており、前記施工部材を支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記施工部材と前記被組み付け部を対向させた位置で前記施工部材を支持することを特徴とする施工用治具。
【請求項2】
前記施工用治具は、前記躯体の開口部にサッシ枠を組み付けるために用いられ、
前記躯体取り付け部は、前記開口部よりも上方位置に取り付けられ、
前記延出部は、前記躯体取り付け部の延出端部から下方に延びており、
前記支持部は、前記サッシ枠の上端部となる上枠部を下方から支持することを特徴とする請求項1に記載の施工用治具。
【請求項3】
前記延出部に取り付けられ、前記延出部から前記躯体に向かって突出し、前記延出部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる固定部を備え、
前記固定部は、前記延出部に対する前記固定部の突出長さを長くすることで前記躯体を押圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の施工用治具。
【請求項4】
前記延出部は、上下方向に長尺に延びており、
前記延出部は、上下方向に間隔を空けて複数設けられ、前記支持部の被取り付け部を取り付けるための取り付け部を有し、
前記支持部は、複数の前記取り付け部のうち、所定の前記取り付け部に着脱可能に取り付けられ、
前記支持部の支持面には、前記施工部材の底面に設けられた凹凸形状の被保持部に嵌め合わされる凹凸形状の保持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の施工用治具。
【請求項5】
前記躯体取り付け部は、
前記躯体の外面に形成された隙間に差し込み可能であって、長尺に延びている本体部と、
前記本体部の前記躯体側の端部に設けられ、前記本体部の長尺方向とは交差方向に突出し、前記躯体に掛け止め可能な掛け止め部と、を有し、
前記掛け止め部は、前記隙間に差し込み可能な幅と、前記隙間の幅よりも長く、前記躯体に掛け止め可能な長さと、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の施工用治具。
【請求項6】
請求項1に記載の施工用治具を用いた建物施工方法であって、
前記躯体の外側位置において前記躯体の間口方向に間隔を空けて複数の前記施工用治具を取り付ける治具取り付け工程と、
前記躯体に取り付けられた複数の前記施工用治具それぞれの前記支持部に、長尺な前記施工部材を載置する載置工程と、
前記施工用治具に載置された前記施工部材を前記躯体の前記被組み付け部に向かって移動させ、前記被組み付け部に前記施工部材を組み付ける組み付け工程と、を含むことを特徴とする施工用治具を用いた建物施工方法。
【請求項7】
請求項2に記載の施工用治具を用いた建物施工方法であって、
前記躯体の外側位置において前記躯体の間口方向に間隔を空けて複数の前記施工用治具を取り付ける治具取り付け工程と、
前記躯体に取り付けられた複数の前記施工用治具それぞれの前記支持部に、前記サッシ枠の前記上枠部を載置する載置工程と、
前記施工用治具に載置された前記上枠部に前記サッシ枠の左右の横枠部を組み付け、前記左右の横枠部に下枠部を組み付ける組み立て工程と、
前記施工用治具上で組み立てられ、前記施工用治具に吊り下げられた前記サッシ枠を前記躯体の前記開口部に向かって移動させ、前記開口部に前記サッシ枠を組み付ける組み付け工程と、を含むことを特徴とする施工用治具を用いた建物施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法に係り、建物の躯体の外側から長尺な施工部材を組み付けるために用いられる施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を施工するにあたって、建物の躯体の開口部にサッシ枠(サッシ外枠)を躯体の外側から組み付ける施工作業がある。
上記サッシ枠を組み付ける作業にあたっては、例えば複数の作業者が躯体の土間や床上でサッシ枠をまず組み立てる。そして、複数の作業者が、組み立てたサッシ枠を持ち上げて、サッシ枠を斜めに傾けながら躯体の外側まで持ち運ぶ。そして、複数の作業者がサッシ枠を躯体の外側から組み付けている。そのため、サッシ枠を持ち運ぶときにサッシ枠が損傷する虞がある。また、施工作業に時間を要している。
【0003】
なお、サッシ枠の組み付け作業に用いる施工用治具ではないものの、建物の躯体に組み付けられたサッシ枠にサッシ窓を嵌め込むための施工用治具(サッシ窓吊り具)が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1の施工用治具を利用することで、少人数の作業者によってサッシ窓を嵌め込む作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、建物の躯体にサッシ枠のような長尺な施工部材を躯体外側から組み付ける作業においては、施工部材を損傷する虞があり、また複数の作業者によって時間を要しながら施工部材を組み付ける必要があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、施工現場において長尺な施工部材(例えばサッシ枠)を従来よりも効率良く組み付けることが可能な施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、施工現場において長尺な施工部材を傷つけることなく、施工部材を素早く組み付けることが可能な施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の施工用治具によれば、建物の躯体の外側に取り付けられ、前記躯体の外側から前記躯体の被組み付け部に長尺な施工部材を組み付けるために用いられる施工用治具であって、前記躯体のうち、前記被組み付け部の周辺部分に取り付けられ、前記躯体の外側に向かって延びている躯体取り付け部と、前記躯体とは間隔を空けて設けられ、前記躯体取り付け部の延出端部から前記躯体の前記被組み付け部に対向する位置まで延びている延出部と、前記延出部のうち、前記躯体の前記被組み付け部に対向する部分から前記被組み付け部に向かって延びており、前記施工部材を支持する支持部と、を備え、前記支持部は、前記施工部材と前記被組み付け部を対向させた位置で前記施工部材を支持すること、により解決される。
上記構成により、施工現場において長尺な施工部材を効率良く組み付けることが可能な施工用治具を実現できる。
詳しく述べると、上記施工用治具は、躯体取り付け部と、躯体から間隔を空けて設けられる延出部と、施工部材を支持する支持部とを備えており、支持部が、施工部材と被組み付け部を対向させた位置で施工部材を支持している。
そのため、施工用治具を利用して、躯体の被組み付け部に対向させた位置に長尺な施工部材を載置しておくことができる。そして、施工用治具に載置した施工部材を被組み付け部に向かって移動させることで、施工部材を効率良く組み付けることができる。
また、施工用治具を利用することで、長尺な施工部材を傷つけることを極力防止し、施工部材を素早く組み付けることもできる。
【0008】
このとき、前記施工用治具は、前記躯体の開口部にサッシ枠を組み付けるために用いられ、前記躯体取り付け部は、前記開口部よりも上方位置に取り付けられ、前記延出部は、前記躯体取り付け部の延出端部から下方に延びており、前記支持部は、前記サッシ枠の上端部となる上枠部を下方から支持すると良い。
上記構成により、複数の作業者を必要とせずに、躯体の開口部にサッシ枠を効率良く組み付けることができる。
具体的には、施工用治具を利用することで作業者が躯体の外側位置でサッシ枠(上枠部、左右の横枠部、下枠部)を組み立てることができる。そして、組み立てられ、吊り下げられたサッシ枠を開口部に向かって移動させ、サッシ枠を組み付けることができる。
【0009】
このとき、前記延出部に取り付けられ、前記延出部から前記躯体に向かって突出し、前記延出部からの突出長さを変更可能な状態で設けられる固定部を備え、前記固定部は、前記延出部に対する前記固定部の突出長さを長くすることで前記躯体を押圧すると良い。
上記のように固定部を備えていることで、躯体の外面に施工用治具を安定して固定させることができる。
【0010】
このとき、前記延出部は、上下方向に長尺に延びており、前記延出部は、上下方向に間隔を空けて複数設けられ、前記支持部の被取り付け部を取り付けるための取り付け部を有し、前記支持部は、複数の前記取り付け部のうち、所定の前記取り付け部に着脱可能に取り付けられ、前記支持部の支持面には、前記施工部材の底面に設けられた凹凸形状の被保持部に嵌め合わされる凹凸形状の保持部が形成されていると良い。
上記のように、延出部が複数の取り付け部を有することで、延出部に対して任意の高さ位置に支持部を着脱可能に取り付けることができる。
また上記のように、支持部の支持面には、施工部材の底面の凹凸形状に対応した凹凸形状の保持部が形成されることで、支持部が施工部材を好適に保持することができる。
【0011】
このとき、前記躯体取り付け部は、前記躯体の外面に形成された隙間に差し込み可能であって、長尺に延びている本体部と、前記本体部の前記躯体側の端部に設けられ、前記本体部の長尺方向とは交差方向に突出し、前記躯体に掛け止め可能な掛け止め部と、を有し、前記掛け止め部は、前記隙間に差し込み可能な幅と、前記隙間の幅よりも長く、前記躯体に掛け止め可能な長さと、を有すると良い。
上記構成により、躯体の隙間(例えば目地)に差し込んで躯体に好適に掛け止めすることが可能な施工用治具を実現できる。
詳しく述べると、掛け止め部が、隙間に差し込み可能な幅と、隙間の幅よりも長く、躯体に掛け止め可能な長さとを有している。そのため、例えば、当該隙間に掛け止め部を挿し込んだ後に、施工用治具を回転させることで躯体に掛け止め部を容易に掛け止めることができる。また、施工作業の終了後には、施工用治具を逆回転させることで躯体から容易に取り外すことができる。
【0012】
また前記課題は、施工用治具を用いた建物施工方法によれば、上記施工用治具を用いた建物施工方法であって、前記躯体の外側位置において前記躯体の間口方向に間隔を空けて複数の前記施工用治具を取り付ける治具取り付け工程と、前記躯体に取り付けられた複数の前記施工用治具それぞれの前記支持部に、長尺な前記施工部材を載置する載置工程と、前記施工用治具に載置された前記施工部材を前記躯体の前記被組み付け部に向かって移動させ、前記被組み付け部に前記施工部材を組み付ける組み付け工程と、を含むこと、によっても解決される。
上記構成により、長尺な施工部材を従来よりも効率良く組み付けることが可能な施工用治具を用いた建物施工方法を実現できる。
【0013】
また前記課題は、施工用治具を用いた建物施工方法によれば、上記施工用治具を用いた建物施工方法であって、前記躯体の外側位置において前記躯体の間口方向に間隔を空けて複数の前記施工用治具を取り付ける治具取り付け工程と、前記躯体に取り付けられた複数の前記施工用治具それぞれの前記支持部に、前記サッシ枠の前記上枠部を載置する載置工程と、前記施工用治具に載置された前記上枠部に前記サッシ枠の左右の横枠部を組み付け、前記左右の横枠部に下枠部を組み付ける組み立て工程と、前記施工用治具上で組み立てられ、前記施工用治具に吊り下げられた前記サッシ枠を前記躯体の前記開口部に向かって移動させ、前記開口部に前記サッシ枠を組み付ける組み付け工程と、を含むこと、によっても解決される。
上記構成により、躯体の開口部にサッシ枠を効率良く組み付けることができる。
具体的には、施工用治具を利用することで作業者が躯体の外側位置でサッシ枠を組み立てることができる。そして、組み立てられたサッシ枠を開口部に向かって移動させ、サッシ枠を容易に組み付けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法によれば、施工現場において長尺な施工部材(例えばサッシ枠)を従来よりも効率良く組み付けることが可能となる。
また、施工現場において長尺な施工部材を傷つけることなく、施工部材を素早く組み付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】建物の躯体、サッシ枠(上枠部のみ)、施工用治具の斜視図である。
【
図2】建物の躯体、サッシ枠(組み立て後)、施工用治具の斜視図である。
【
図3】躯体にサッシ枠を組み付けた状態を示す図である。
【
図5】躯体に施工用治具を取り付けた状態を示す図である。
【
図6A】躯体に施工用治具を掛け止める前の状態を示す図である。
【
図6B】躯体に施工用治具を掛け止めた状態を示す図である。
【
図6C】躯体に施工用治具を固定した状態を示す図である。
【
図6D】施工用治具の延出部に支持部を取り付けた状態を示す図である。
【
図6E】施工用治具にサッシ枠(上枠部のみ)を載置した状態を示す図である。
【
図6F】施工用治具にサッシ枠(組み立て後)を載置した状態を示す図である。
【
図6G】躯体の開口部にサッシ枠を組み付けた状態を示す図である。
【
図7】施工用治具を用いた建物施工方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図7を参照して説明する。
本実施形態は、建物の躯体の外側に取り付けられ、躯体外側から躯体の被組み付け部に長尺な施工部材(例えばサッシ枠)を組み付けるために用いられる施工用治具であって、施工現場において施工部材を極力傷つけることなく、施工部材を効率良く組み付けることを可能とする「施工用治具」に関するものである。
また、「施工用治具を用いた建物施工方法」に関するものである。
【0017】
<全体構成>
施工用治具1は、
図1~
図3に示すように、建物の躯体Bの外側に取り付けられ、躯体Bの外側から躯体Bの開口部B2にサッシ枠Sを組み付けるために用いられる。
施工用治具1は、躯体Bの間口方向に長尺なサッシ枠Sを支持するために、躯体Bの間口方向に所定の間隔を空けて複数配置されている。
詳しく述べると、施工用治具1は、躯体Bの開口部B2の外側位置においてサッシ枠Sを組み立てる際に用いられ、かつ、組み立てられたサッシ枠Sを開口部B2に組み付ける際に用いられる。
施工用治具1は、
図2に示すように、サッシ枠Sを吊り下げた状態で支持していることから、サッシ枠吊り治具とも称される。
先に、躯体B、サッシ枠Sについて説明することとする。
【0018】
建物の躯体Bは、
図1~
図3に示すように、建物の上下方向及び間口方向に並ぶ複数の外壁パネルB1と、複数の外壁パネルB1によって囲まれ、サッシ枠Sを組み付けるための開口部B2と、を備えている。
外壁パネルB1は、建物の外部に面して設置される建築用パネルである。具体的には、外壁パネルB1は、
図6Aに示すように、矩形状のパネルフレームB1aと、パネルフレームB1aの表面に固定される矩形状の仕上げ面材B1bと、を備えている。
パネルフレームB1aは、断面U字形状の長尺な鋼材を矩形状に枠組みすることで形成されている。枠組みされたパネルフレームB1aによって囲まれる空間内には、グラスウールや発泡ウレタン等の断熱材が充填されている。
隣り合う外壁パネルB1の間には、気温変化等による膨張を考慮して目地B3(隙間)が形成されている。目地B3には、建物の施工作業又は修繕作業を終えた後、目地材(シーリング材や乾式ガスケット等)が充填されることになる。
【0019】
上記において、施工用治具1は、躯体Bの目地B3に差し込まれ、外壁パネルB1の仕上げ面材B1bに掛け止めされる。
本実施形態では、
図6A、
図6Bに示すように、施工用治具1は、仕上げ面材B1b及びパネルフレームB1aの間の溝部分を利用して仕上げ面材B1bに掛け止めされる。
【0020】
サッシ枠Sは、
図1~
図3に示すように、躯体Bの外側から開口部B2に組み付けられる(嵌め込まれる)枠状の施工用部材である。
具体的には、サッシ枠Sは、アルミ製のサッシ外枠であって、長尺な上枠部S1と、上枠部S1の長尺方向の両端部にそれぞれ組み付けられ、上枠部S1から下方に延びている左右の横枠部S2と、左右の横枠部S2を連結する下枠部S3と、を備えている。
上枠部S1の底面には、
図6Eに示すように、凹凸形状の凹凸部S1aが形成されている。
【0021】
上記において、
図1、
図2に示すように、施工用治具1は、サッシ枠Sの上枠部S1を下方から保持し、またサッシ枠Sを吊り下げるように保持する。
そして、
図3に示すように、作業者によって躯体Bの開口部B2にサッシ枠Sが組み付けられた後には、施工用治具1は躯体Bから取り外される。
【0022】
<施工用治具の構成>
施工用治具1は、
図4、
図5に示すように、躯体Bの外面に取り付けられ、躯体Bの外側に向かって延びている躯体取り付け部10と、躯体Bの延出端部から下方に延びている延出部20と、延出部20から躯体Bに向かって突出し、躯体Bを押圧する固定部30と、延出部20から開口部B2に向かって延びて、サッシ枠Sを支持する支持部40と、を備えている。
【0023】
躯体取り付け部10は、躯体Bの外面のうち、開口部B2の周辺部分(上方部分)に取り付けられ、開口部B2よりも上方位置に取り付けられている。
開口部B2の周辺部分とは、例えば開口部B2に近接した部分(近接した位置)のほか、開口部B2から幾分離れた部分(幾分離れた位置)を含むものである。
詳しく述べると、躯体取り付け部10は、躯体Bの外面に形成された目地B3に差し込み可能であって、長尺に延びている本体部11と、本体部11の躯体B側の端部に設けられ、本体部11の長尺方向とは交差方向(直交方向)に突出し、躯体B(外壁パネルB1)に掛け止め可能な掛け止め部12と、を有している。
【0024】
本体部11は、
図6Aに示すように、目地B3に差し込み可能な幅を有している。
掛け止め部12は、
図6A、
図6Bに示すように、目地B3に差し込み可能な幅と、目地B3の幅よりも長く、外壁パネルB1に掛け止め可能な長さと、を有している。
そのため、目地B3に掛け止め部12を挿し込んだ後に、施工用治具1を回転させることで躯体B(外壁パネルB1)に掛け止め部12を掛け止めることができる。また、サッシ枠Sの組み付け作業の終了後には、施工用治具1を回転(逆回転)させることで躯体Bから容易に取り外すことができる。
言い換えれば、
図6A、
図6Bに示すように、施工用治具1は、目地B3に差し込み可能な「差し込み位置」と、目地B3に差し込み不能であって、外壁パネルB1に掛け止め可能な「掛け止め位置」との間で切り替えることができる。
【0025】
延出部20は、上下方向に長尺に延びており、躯体Bとは所定の間隔を空けて配置されている。
延出部20は、躯体取り付け部10の延出端部に連結金具13を介して連結され、躯体取り付け部10から開口部B2に対向する位置まで下方に延びている。
詳しく述べると、延出部20は、上下方向に長尺な断面U字形状の延出本体21と、延出本体21の上端部に形成され、固定部30を取り付けるためのネジ穴22と、延出本体21の上端部から下端部にわたって形成され、支持部40を取り付けるための取り付け穴23と、を有している。
【0026】
ネジ穴22は、延出本体21の躯体Bに対向する対向面に形成されている。ネジ穴22には、固定部30の軸部材31が締結される。
取り付け穴23は、上下方向に長い長穴であって、延出本体21の躯体Bに対向する対向面に形成され、上下方向に所定の間隔を空けて複数形成されている。
【0027】
固定部30は、延出部20の上端部に貫通して取り付けられ、延出部20から躯体Bに向かって突出し、延出部20からの突出長さを変更可能な状態で設けられている。
詳しく述べると、固定部30は、その軸部材31が延出部20のネジ穴22に螺合されることで延出部20に取り付けられている。そして、固定部30は、その軸部材31とネジ穴22との螺合位置を調整することで、突出長さを変更可能となっている。
【0028】
具体的には、固定部30は、固定クランプであって、長尺な軸部材31と、軸部材31の基端部に設けられ、作業者によって操作される操作部材32と、軸部材31の末端部に設けられ、躯体B(外壁パネルB1)に押し当てられる押し当て部材33と、を有している。
作業者が操作部材32を回転操作することで、延出部20(ネジ穴22)に対する軸部材31の螺合位置が調整され、押し当て部材33が躯体Bの外面を押圧する。
そうすることで、施工用治具1が躯体Bを突っ張った状態となり、躯体Bに固定されることになる。
【0029】
固定部30は、軸部材31の螺合位置を調整することで躯体Bを押圧可能としているが、特に限定されず、任意の押圧手段を採用しても良い。
例えば、固定部30が、所定位置でロックすることが可能なスライド機構を有していても良い。その場合であっても、固定部30が躯体Bを押圧できる。
【0030】
支持部40は、延出部20のうち開口部B2に対向する部分に取り付けられ、延出部20から開口部B2に向かって延びている。
支持部40は、
図1、
図2に示すように、サッシ枠Sと開口部B2を対向させた位置でサッシ枠Sの上枠部S1を下方から支持している。
詳しく述べると、支持部40は、延出部20の任意の高さ位置に取り付けられ、延出部20から開口部B2の手前まで延びている。なお、開口部B2にサッシ枠Sを組み付けるにあたって支障がなければ、支持部40は延出部20から開口部B2まで延びていても良い。
【0031】
具体的には、支持部40は、長尺な支持本体41と、支持本体41の基端部に設けられ、延出部20(取り付け穴23)に取り付けられる取り付けフック42と、を有している。
取り付けフック42は、延出部20に形成された所定の取り付け穴23に着脱可能に取り付けられる。つまりは、支持部40は、延出部20の任意の高さ位置に取り付けられる。
本実施形態では、複数の取り付けフック42が、それぞれ任意の取り付け穴23に取り付けられている。
【0032】
支持本体41の上端部には、サッシ枠Sの上枠部S1を載置可能な支持面43が形成されている。詳しく述べると、支持面43には、上枠部S1の底面に設けられた凹凸部S1aに対応した凹凸形状の保持溝44が形成されている。
支持部40は、
図6Eに示すように、保持溝44と上枠部S1の凹凸部S1aとが嵌め合わされることで、上枠部S1を保持できる。
支持部40からサッシ枠Sを容易に取り外せるように、保持溝44と凹凸部S1aとは比較的緩めに嵌め合わされると良い。
【0033】
なお、支持部40の支持面43に形成される保持溝44は、サッシ枠S(上枠部S1)の底面の形状に対応していれば良く、溝形状に限定されず孔形状であっても良いし、凸形状であっても良い。つまりは、支持面43に、上枠部S1の底面の形状に対応した保持部が形成されていれば良い。
【0034】
上記施工用治具1であれば、躯体Bの外面において開口部B2の周辺部分に施工用治具1を容易に取り付けることができる。また、開口部B2に対向させた位置でサッシ枠Sを保持できる。また、サッシ枠Sを組み付けた後には、躯体Bから施工用治具1を容易に取り外すことができる。
【0035】
<施工用治具を用いた建物施工方法>
次に、施工用治具1を用いた建物施工方法について、
図6A~
図6G、
図7に基づいて説明する。
当該施工方法は、「治具取り付け工程」と、「載置工程」と、「組み立て工程」と、「組み付け工程」とを少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、建物の施工にあたって、上記以外の施工工程については説明を省略する。
【0036】
「治具取り付け工程」では、作業者が、躯体Bの外側位置において躯体Bの間口方向に間隔を空けて複数の施工用治具1を取り付ける(ステップ1(S1))。
具体的には、下記の通りである。
まず、
図6Aに示すように、作業者が躯体Bの目地B3に施工用治具1の躯体取り付け部10を挿し込む(ステップ1-1)。
そして、
図6Bに示すように、作業者が施工用治具1を90度回転させて、躯体Bの外壁パネルB1に掛け止め部12を掛け止める(ステップ1-2)
そして、
図6Cに示すように、作業者が操作部材32を操作し、延出部20(ネジ穴22)に対する固定部30(軸部材31)の螺合位置を調整し、外壁パネルB1に押し当て部材33を押し当てる(ステップ1-3)。つまりは、固定部30が外壁パネルB1に押し当てられ、施工用治具1が躯体Bに固定される。
なお、
図5、
図6Cに示すように、躯体取り付け部10(掛け止め部12)と、固定部30(押し当て部材33)とが外壁パネルB1を介して重なる位置(対向する位置)に配置される。そのため、施工用治具1が外壁パネルB1に強固に固定される。
【0037】
そして、
図6Dに示すように、作業者が延出部20に対し支持部40を所定の高さ位置に取り付ける(ステップ1-4)。
このとき、支持部40が開口部B2に対向する位置に配置される。好ましくは、支持部40に載置されたサッシ枠S(上枠部S1)が、開口部B2の上縁部分に対応する位置に配置されると良い。
【0038】
「載置工程」では、作業者が、躯体B(外壁パネルB1)に取り付けられた複数の施工用治具1それぞれの支持部40に、サッシ枠Sの上枠部S1を載置する(ステップ2)。
このとき、
図6Eに示すように、作業者は、支持部40の支持面43に形成された保持溝44に、上枠部S1の底面に設けられた凹凸部S1aを嵌め合わせる。
そうすることで、施工用治具1(支持部40)が上枠部S1を好適に保持できる。
【0039】
「組み立て工程」では、作業者が、施工用治具1(支持部40)に載置された上枠部S1に左右の横枠部S2及び下枠部S3を組み付けて、サッシ枠Sを完成させる(ステップ3)。
具体的には、
図6Fに示すように、作業者は、支持部40に保持された状態の上枠部S1の両端部に左右の横枠部S2を組み付ける。そして、左右の横枠部S2の下端部に下枠部S3を組み付ける。
そうすることで、
図2に示すように、枠状のサッシ枠Sが組み立てられる。組み立てられたサッシ枠Sは、施工用治具1によって躯体Bの開口部B2に対向した位置で吊り下げられる。
【0040】
「組み付け工程」では、作業者が、施工用治具1に吊り下げられたサッシ枠Sを躯体Bの開口部B2に向かって移動させ、開口部B2にサッシ枠Sを組み付ける(ステップ4)。
具体的には、
図6Gに示すように、作業者は、サッシ枠Sをそのまま開口部B2に向かって横向きに移動させ、開口部B2にサッシ枠Sを嵌め込む。
上記ステップ1~ステップ4の工程を終えて、一連の作業工程を終了する。
なお、サッシ枠Sの組み付け作業の終了後には、躯体Bから施工用治具1を取り外す(
図3参照)。
【0041】
上記の施工用治具1、また施工用治具1を用いた建物施工方法であれば、施工現場においてサッシ枠Sを従来よりも効率良く組み付けることができる。例えば1人の作業者が、サッシ枠Sを組み立てることができ、また躯体B(開口部B2)にサッシ枠Sを組み付けることができる。
また、サッシ枠Sを傷つけることなく、サッシ枠Sを素早く組み付けることができる。
【0042】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図1~
図3に示すように、施工用治具1が、躯体Bの開口部B2にサッシ枠Sを組み付けるために用いられているが、サッシ枠Sに限定されるものではない。
例えば、施工用治具1は、躯体Bの外側から躯体Bの被組み付け部に長尺な施工部材を組み付ける際に用いられても良い。
その場合であっても、施工用治具1を利用して、上記長尺な施工部材を躯体Bの外側から効率良く組み付けることができる。
【0043】
上記実施形態では、
図1に示すように、施工用治具1がサッシ枠Sの上枠部S1を支持しているが、特に限定されず、サッシ枠Sの下枠部S3を支持しても良い。
その場合には、躯体取り付け部10が開口部B2よりも下方位置に配置され、延出部20が躯体取り付け部10から上方に延出すると良い。そして、支持部40が開口部B2に対向する位置に配置されると良い。
なお、施工用治具1がサッシ枠Sの横枠部S2を支持する構成としても良い。
【0044】
上記実施形態では、
図5に示すように、躯体取り付け部10(掛け止め部12)が目地B3に差し込まれ、外壁パネルB1に掛け止めされているが、特に限定されない。
例えば、躯体取り付け部10が躯体Bの外面に固定されても良いし、躯体Bの外面に取り付け金具を介して固定されても良い。その際には、固定部を不要の構成としても良い。
【0045】
上記実施形態では、
図6Eに示すように、支持部40が、保持溝44と上枠部S1の凹凸部S1aとを嵌め合わせることで上枠部S1を保持しているが、その他の保持手段によって上枠部S1を保持しても良い。
例えば、支持部40が、上枠部S1を上下方向又は水平方向から挟み込むようにして保持しても良い。あるいは、支持部40に対して上枠部S1を仮止めしても良い。
【0046】
上記実施形態では、主として本発明に係る施工用治具及び施工用治具を用いた建物施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
B 躯体(建物の躯体)
B1 外壁パネル
B1a パネルフレーム
B1b 仕上げ面材
B2 開口部(被組み付け部)
B3 目地(隙間)
S サッシ枠(長尺な施工部材)
S1 上枠部
S1a 凹凸部(被保持部)
S2 横枠部
S3 下枠部
1 施工用治具(サッシ吊り治具)
10 躯体取り付け部
11 本体部
12 掛け止め部
13 連結金具
20 延出部
21 延出本体
22 ネジ穴
23 取り付け穴(取り付け部)
30 固定部(固定クランプ)
31 軸部材
32 操作部材
33 押し当て部材
40 支持部
41 支持本体
42 取り付けフック(被取り付け部)
43 支持面
44 保持溝(保持部)