(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079203
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20240604BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20240604BHJP
B05B 11/10 20230101ALI20240604BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20240604BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B65D47/34 100
B05B11/00 102E
B05B11/10 102E
F04B9/14 C
B65D83/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192003
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】長村 隆央
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
3H075
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PC03
3E014PD12
3E014PE14
3E014PF09
3E084AA04
3E084AA12
3E084AB01
3E084CC03
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HD01
3E084KB01
3E084LB02
3E084LC01
3E084LC06
3E084LD22
3E084LD26
3H075AA01
3H075BB03
3H075BB22
3H075CC24
3H075CC36
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB13
3H075DB14
3H075DB39
(57)【要約】
【課題】ストッパ部材の意図しない揺動を抑制すること。
【解決手段】容器本体Aの口部A1に装着されるポンプ機構3と、ステム2の上端部に装着された吐出ヘッド5と、後方への回転によって吐出ヘッドを押下げるトリガー部材8と、前後方向に揺動可能とされ、吐出ヘッドの押下げを規制する規制位置P1と吐出ヘッドの押下げを許容する解除位置との間を変位するストッパ部材9とを備え、ストッパ部材は吐出ヘッドの押下げを規制する規制片110と、ロック位置から許容位置に向けて押込み操作可能とされた操作片111と、を備え、操作片は、ロック位置に位置しているときにトリガー部材に形成された第1係止部120に係止してストッパ部材を規制位置に位置決めし、且つ許容位置に位置したときに第1係止部から離脱して規制位置から解除位置に向けたストッパ部材の変位を許容する第2係止部130を有している吐出器1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムを有し、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるポンプ機構と、
前記ステムの上端部に装着されると共に、前方に向けて開口する吐出孔が形成された吐出ヘッドと、
前記ポンプ機構に組み合わされ、前記吐出ヘッドよりも後方に配置された支持部材と、
後方に向けて回転可能に前記支持部材に組み合わされると共に、後方への回転によって前記吐出ヘッドを押下げるトリガー部材と、
前後方向に揺動可能に前記支持部材に組み合わされると共に、前記吐出ヘッドの押下げを規制する規制位置と、前記吐出ヘッドの押下げを許容する解除位置との間を変位するストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材は、
前記規制位置に位置しているときに、前記吐出ヘッドの押下げを規制する規制片と、
前記規制片に弾性変位可能に連結されると共に、ロック位置から許容位置に向けて押込み操作可能とされた操作片と、を備え、
前記操作片は、前記ロック位置に位置しているときに、前記トリガー部材に形成された第1係止部に係止して前記ストッパ部材を前記規制位置に位置決めし、且つ前記許容位置に位置したときに前記第1係止部から離脱して前記規制位置から前記解除位置に向けた前記ストッパ部材の変位を許容する第2係止部を有していることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器において、
前記ストッパ部材は、前記規制位置から後方に向けて揺動することで前記解除位置に変位し、
前記操作片は、前記ステムの中心軸方向から見て、前後方向に交差する左右方向に押込み操作されることで、前記規制片との連結部分を基点として揺動しながら前記ロック位置から前記許容位置に変位し、
前記第2係止部は、前記ロック位置に位置しているときに、前記第1係止部に対して前方から係止されている、吐出器。
【請求項3】
請求項2に記載の吐出器において、
前記第1係止部は、前方を向き、且つ左右方向の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜した第1係止面を有し、
前記第2係止部は、後方を向き、且つ左右方向の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜し、前記第1係止面に対して前方から係止する第2係止面を有している、吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、ステムと、ステムに装着される吐出ヘッドと、ストッパとを具備する吐出器が知られている。
ストッパは、吐出ヘッド及び押下部材のうち少なくとも一方に当接することで吐出ヘッドの下降を規制する規制位置と、吐出ヘッドの下降を許容する解除位置と、の間で前後方向に揺動可能に配設されている。ストッパは、規制位置に位置しているときにステムを挟むように配設された一対の係合部と、一対の係合部にそれぞれ連結された一対の操作部と、を有している。一対の係合部は、一対の操作部が互いに接近するように変位したときに、互いに離れる向きに弾性変位する。
【0003】
このように構成された吐出器を使用する際には、一対の操作部を指先等で摘むことで、一対の操作部同士を互いに接近させるように変位させる。これにより、一対の係合部同士を互いに離間するように弾性変位させることができ、例えばステムに対する一対の係合部の係止を解除することができる。従って、ストッパを規制位置から解除位置に向けて揺動させることができ、押下部材を利用した吐出ヘッドの下方移動が許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の吐出器では、例えば製品運搬時(輸送時)、製品陳列時等、一対の操作部に対して意図しない外力が作用した場合、ステム等に対する一対の係合部の係止が解除されてしまい(外れてしまい)、ストッパが意図せずに規制位置から解除位置に向けて揺動するおそれがあった。この場合、意図せずに吐出ヘッドが下方移動してしまい、ポンプが誤動作する可能性があった。
なお、このような不都合を防止するための対策の一つとして、例えばステム等に対する一対の係合部のサイズ等を大きくして係止力を高めることが考えられる。しかしながら、限られたスペース内で一対の係合部のサイズを大きくするには限界があるうえ、係止力を過度に高めた場合には、一対の操作部の操作性低下に繋がるといった新たな課題を招いてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ストッパ部材の意図しない揺動を抑制することができる吐出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る吐出器は、上方付勢状態で下方移動可能に配設されるステムを有し、内容物が収容される容器本体の口部に装着されるポンプ機構と、前記ステムの上端部に装着されると共に、前方に向けて開口する吐出孔が形成された吐出ヘッドと、前記ポンプ機構に組み合わされ、前記吐出ヘッドよりも後方に配置された支持部材と、後方に向けて回転可能に前記支持部材に組み合わされると共に、後方への回転によって前記吐出ヘッドを押下げるトリガー部材と、前後方向に揺動可能に前記支持部材に組み合わされると共に、前記吐出ヘッドの押下げを規制する規制位置と、前記吐出ヘッドの押下げを許容する解除位置との間を変位するストッパ部材と、を備え、前記ストッパ部材は、前記規制位置に位置しているときに、前記吐出ヘッドの押下げを規制する規制片と、前記規制片に弾性変位可能に連結されると共に、ロック位置から許容位置に向けて押込み操作可能とされた操作片と、を備え、前記操作片は、前記ロック位置に位置しているときに、前記トリガー部材に形成された第1係止部に係止して前記ストッパ部材を前記規制位置に位置決めし、且つ前記許容位置に位置したときに前記第1係止部から離脱して前記規制位置から前記解除位置に向けた前記ストッパ部材の変位を許容する第2係止部を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る吐出器によれば、ストッパ部材が規制位置に位置している場合には、規制片が吐出ヘッドの押下げを規制しているため、トリガー部材を操作したとしてもポンプ機構が作動して内容物が吐出されることがない。
特に、規制片に連結されている操作片がロック位置に位置しているため、第2係止部がトリガー部材に形成された第1係止部に係止しており、ストッパ部材を規制位置に位置決めしている。従って、例えば製品運搬時、製品陳列時等、操作片を介してストッパ部材の全体に対して意図しない外力が作用したとしても、ストッパ部材が不意に揺動して、規制位置から解除位置に変位することを抑制することができる。従って、ポンプ機構の誤動作を防止することができる。
【0009】
内容物の吐出を行う場合には、規制位置に位置しているストッパ部材の操作片を指先等で押込み操作して、ロック位置から許容位置に変位させる。これにより、第2係止部を第1係止部から離脱させて係止を解除できる。そのため、操作片を押込み操作したまま、連続してストッパ部材を揺動操作することができ、規制位置から解除位置に変位させることができる。これにより、吐出ヘッドの押下げを許容することができる。
従って、トリガー部材を後方に向けて操作することで、吐出ヘッドを押下げ操作することができ、ポンプ機構を作動させることができる。その結果、吐出孔を通じて内容物の吐出を行うことや、内容物の吐出後に容器本体内からステム内に内容物を吸上げて、次回への吐出に備えること等ができる。
【0010】
上述のようにストッパ部材の操作片に形成された第2係止部が、トリガー部材に形成された第1係止部に係止することで、ストッパ部材を規制位置に位置決めできるので、従来とは異なり、ストッパ部材の意図しない揺動によって解除位置に不意に変位することを抑制することができる。
その一方、内容物を吐出する場合には、操作片を押込み操作してロック位置から許容位置に変位させる動作と、ストッパ部材を揺動操作して規制位置から解除位置に変位させる動作とを、一連の流れで連続的に行うことができる。従って、操作性を向上することができ、使い易い。
【0011】
(2)前記ストッパ部材は、前記規制位置から後方に向けて揺動することで前記解除位置に変位し、前記操作片は、前記ステムの中心軸方向から見て、前後方向に交差する左右方向に押込み操作されることで、前記規制片との連結部分を基点として揺動しながら前記ロック位置から前記許容位置に変位し、前記第2係止部は、前記ロック位置に位置しているときに、前記第1係止部に対して前方から係止されても良い。
【0012】
この場合には、ストッパ部材が規制位置に位置しているときに、ストッパ部材の第2係止部が第1係止部に対して前方から係止しているので、意図しない外力等によって、ストッパ部材が後方に揺動して解除位置に変位することを効果的に抑制することができる。
また、内容物の吐出を行う場合には、操作片を左右方向に押込み操作してロック位置から許容位置に変位させつつ、操作片の押込み操作の方向とは異なる後方に向けてストッパ部材を揺動操作することができる。従って、操作片の押込み操作とストッパ部材の揺動操作とを明確に区別しながら操作することができ、操作性を向上することができる。
【0013】
(3)前記第1係止部は、前方を向き、且つ左右方向の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜した第1係止面を有し、前記第2係止部は、後方を向き、且つ左右方向の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜し、前記第1係止面に対して前方から係止する第2係止面を有しても良い。
【0014】
この場合には、上述した向きに傾斜させた状態で第1係止面及び第2係止面同士を係止させることができるので、ストッパ部材が規制位置に位置しているときに、意図しない外力等によってストッパ部材が後方に向けて強い応力を受けたとしても、操作片が左右方向の内側に向けて変位し難くすることができる。そのため、操作片が意図せずに許容位置に変位することを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吐出器によれば、ストッパ部材の意図しない揺動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る吐出器の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す状態からトリガー部材を操作して、吐出ヘッドを押下げ操作した状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1に示すトリガー部材及びストッパ部材を下方から見た平面図である。
【
図7】
図3に示すストッパ部材の操作片を押込み操作した状態を示す平面図である。
【
図8】
図1に示すA-A線に沿った横断面図であって、第1係止部と第2係止部とが係止している状態を示す図である。
【
図9】
図8に示す状態から操作片の押込み操作に伴って、第1係止部から第2係止部離脱させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る吐出器の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の吐出器1は、ステム2を有するポンプ機構3と、吐出孔4が形成された吐出ヘッド5と、図示しない内容物が収容された容器本体Aの口部A1にポンプ機構3を装着する装着キャップ6と、ポンプ機構3に組み合わされた支持部材7と、回転可能に支持部材7に組み合わされると共に回転操作によって吐出ヘッド5を押下げるトリガー部材8と、支持部材7に揺動可能に組み合わされるストッパ部材9と、を備えている。
なお、吐出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂材料を用いた成形品とされている。
【0018】
ステム2の中心軸O1は、容器本体Aの容器軸と同軸に配設されている。以下、中心軸O1に沿ってトリガー部材8側を上方、容器本体A側を下方といい、中心軸O1に沿う方向を上下方向という。さらに、上下方向から見た平面視において、中心軸O1に交差する方向を径方向といい、中心軸O1回りに周回する方向を周方向という。さらに径方向のうち互いに直交する一方向を前後方向L1といい、他方向を左右方向L2という。なお、前後方向L1のうち吐出ヘッド5の吐出孔4が向いた方向を前方とし、その逆方向を後方とする。
【0019】
(容器本体)
容器本体Aは、口部A1、肩部(不図示)、胴部(不図示)及び底部(不図示)が上方から順に連設された有底筒状に形成されている。容器本体Aの口部A1の外周面には、雄ねじ部A2が形成されている。
【0020】
(装着キャップ)
装着キャップ6は、容器本体Aの口部A1を径方向の外側から囲む装着筒10と、装着筒10の上端部から径方向の内側に向けて突出した環状のキャップ天壁11と、を備えた有頂筒状に形成され、中心軸O1と同軸に配置されている。
【0021】
装着筒10の内周面には、容器本体Aの口部A1に形成された雄ねじ部A2に螺合する雌ねじ部12が形成されている。これにより、装着キャップ6は、雄ねじ部A2と雌ねじ部12とのねじ結合による螺着によって容器本体Aの口部A1に装着されている。
ただし、装着キャップ6の装着方法は、螺着に限定されるものではなく、例えば容器本体Aの口部A1に対して例えばアンダーカット嵌合によって装着されても構わない。なお、装着キャップ6の外周面には、ローレット加工等の滑り止め処理が施されている。
キャップ天壁11は、パッキン13及び後述するシリンダ20のフランジ部22を挟んで容器本体Aの口部A1の上端開口縁上に配置されている。
【0022】
(ポンプ機構)
ポンプ機構3は、上方付勢状態で下方移動可能に配設され、内部を内容物が流通する筒状のステム2と、容器本体A内に連通するシリンダ20と、シリンダ20内に設けられたボール弁30と、シリンダ20内に上下方向に摺動可能に収容され、ステム2の上下動に伴って移動するピストン40と、ステム2に組み合わされたピストンガイド50と、ステム2を上方付勢する付勢部材60と、シリンダ20に組み合わされたガイドキャップ70と、を備えている。
【0023】
(シリンダ)
シリンダ20は、筒状のシリンダ周壁21及び環状のフランジ部22を有し、中心軸O1と同軸に配設されている。
シリンダ周壁21は、第1シリンダ周壁23と、第1シリンダ周壁23の下方に配置され、第1シリンダ周壁23よりも縮径した第2シリンダ周壁24と、第2シリンダ周壁24の下方に配置され、下方に向かうにしたがって縮径した断面テーパ状の第3シリンダ周壁25と、を備えている。従って、シリンダ周壁21は、上方から下方に向かって直径が3段階に変化した多段筒状に形成されている。
【0024】
第1シリンダ周壁23は、上端部が容器本体Aの口部A1の上端開口縁よりも上方に突出した状態で配置されている。フランジ部22は、第1シリンダ周壁23の外周面から径方向の外側に向けて突出するように形成されている。フランジ部22は、環状のパッキン13を介して容器本体Aの口部A1の上端開口縁上に配置され、装着キャップ6のキャップ天壁11によって、容器本体Aの口部A1の上端開口縁との間に上下方向に挟まれている。
【0025】
これにより、シリンダ20を含むポンプ機構3の全体は、装着キャップ6を介して容器本体Aの口部A1に装着されている。なお、シリンダ20は、容器本体Aの口部A1よりも下方に向けて延び、容器本体Aの内側に入り込むように装着キャップ6を介して容器本体Aの口部A1に取り付けられている。シリンダ周壁21は、上方に向けて開口している。これにより、シリンダ周壁21の内側には、ステム2が上方から挿入されている。
【0026】
なお、第1シリンダ周壁23及び第2シリンダ周壁24は、直筒状に形成されている。さらに第2シリンダ周壁24と第3シリンダ周壁25との接続部分には、シリンダ20内において上方を向いた環状の段差壁26が形成されている。
【0027】
第3シリンダ周壁25の内側には、内容物が流通する流通孔25aが形成されている。さらに第3シリンダ周壁25には、下方に向けて延びる連結筒27が一体に形成されている。連結筒27の内側には、内容物を吸上げるパイプ28の上端部が嵌合されている。これにより、シリンダ20とパイプ28とが一体に組み合わされている。なお、パイプ28の下端開口部は、容器本体Aの底部内に位置する。従って、シリンダ20内は、流通孔25a及びパイプ28を通じて容器本体A内に連通している。
【0028】
さらにフランジ部22には、上方に向けて突出した内側連結筒29が形成されている。内側連結筒29は、キャップ天壁11の内側に配置され、後述するステム2の拡径筒2aを径方向の外側から間隔をあけて囲んでいる。
【0029】
(ボール弁)
ボール弁30は、第3シリンダ周壁25の内側に着座した状態で配置されている。なお、第3シリンダ周壁25の内周面には、径方向の内側に向けて突出したテーパ爪部31が形成され、ボール弁30よりも上方に配置されている。
テーパ爪部31は、例えば周方向に間隔をあけて複数形成されている。ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば環状にテーパ爪部31を形成しても構わない。
【0030】
ボール弁30は、シリンダ20内の圧力が容器本体A内の圧力よりも上昇したとき(加圧時)に、第3シリンダ周壁25に対する着座状態を維持して、パイプ28及び流通孔25aを通じた容器本体A内とシリンダ20内との連通を遮断する。さらにボール弁30は、シリンダ20内の圧力が容器本体A内の圧力よりも低下したとき(減圧時)に、第3シリンダ周壁25から上方に離反して、パイプ28及び流通孔25aを通じた容器本体A内とシリンダ20内との連通を許容する。
【0031】
このように、ボール弁30は、逆止弁として機能すると共にポンプ機構3としての下部弁体として機能する。なお、ボール弁30はテーパ爪部31によって上方への移動量が規制される。ただし下部弁体としては、ボール弁30に限定されるものではなく、例えば3点弁等の多点弁や、その他の弁構造を採用しても構わない。
【0032】
(ステム)
ステム2は、上下方向に延びる筒状に形成されている。ステム2は、吐出ヘッド5が押下げ操作される前の状態において、上端部が後述する上部ガイド筒73よりも上方に突出し、且つ下端部が第1シリンダ周壁23内に収容されるように配置されている(
図1参照)。
ステム2の下端部は、径方向の外側に拡径した拡径筒2aとされている。これにより、ステム2は、上下方向に外径が変化した二段筒状に形成されている。さらに拡径筒2aの下端部には、下方に向けて弾性片2bが形成されている。弾性片2bは、径方向に弾性変形可能とされ、例えば周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0033】
(ピストンガイド)
ピストンガイド50は、ステム2よりも下方に配置された状態で中心軸O1と同軸に配置されている。ピストンガイド50は、有底筒状に形成されている。さらにピストンガイド50の下端部には、径方向の外側に向かって突出した環状のガイドフランジ51を備えている。
【0034】
ピストンガイド50の上端部は、ステム2のうち拡径筒2aよりも上方に位置する部分の内側に嵌合されている。これにより、ピストンガイド50は、ステム2に対して一体的に組み合わされ、ステム2に伴って上下動可能とされている。なお、ピストンガイド50は、下端部がステム2の拡径筒2aよりも下方に離れて位置するように、ステム2に組み合わされている。
【0035】
ピストンガイド50のうち、ガイドフランジ51よりも上方に位置する部分には、ピストンガイド50を径方向に貫通する連通孔52が形成されている。連通孔52は、ピストンガイド50内とシリンダ20内とを連通させる。ガイドフランジ51は、ピストン40を下方から支持する役割を果たしている。
さらにピストンガイド50の下端部には、下方に向けて突出する複数の保持リブ53が形成されている。図示の例では、複数の保持リブ53は、平面視で十字状に配置されるように、中心軸O1を中心として90度の間隔をあけて配置されている。これら複数の保持リブ53は、後述する付勢部材60の上端部を保持する役割を果たしている。
【0036】
このように構成されたピストンガイド50は、吐出ヘッド5の押下げ操作時にガイドフランジ51がピストン40から下方に離間することで、シリンダ20内とステム2内との連通を許容し(
図2参照)、且つステム2の上方移動に伴ってガイドフランジ51がピストン40に対して下方から接触することで、シリンダ20内とステム2内との連通を遮断する(
図1参照)。そのため、ピストンガイド50は、ピストン40と協働として、ポンプ機構3としての上部弁体として機能する。
【0037】
(ピストン)
ピストン40は、ステム2の上下動に連係すると共に第1シリンダ周壁23の内部に上下摺動可能に嵌合されている。ピストン40は、外側ピストン筒41、内側ピストン筒42及び連結筒43を備え、ステム2の拡径筒2aとガイドフランジ51との間に配置された状態で中心軸O1と同軸に配置されている。
【0038】
外側ピストン筒41は、第1シリンダ周壁23の内周面に対して密に摺接している。これにより、外側ピストン筒41と第1シリンダ周壁23の内周面との間には所定のシール性が確保されている。
内側ピストン筒42は、外側ピストン筒41とピストンガイド50との間に配置されている。内側ピストン筒42の上端部は、ステム2の拡径筒2aの内側に下方から入り込むと共に、拡径筒2aの内周面に密に摺接している。内側ピストン筒42の下端部は、ガイドフランジ51に対して上方から離反可能に着座している。
これにより、内側ピストン筒42は、連通孔52を通じたシリンダ20内とピストンガイド50内との連通、及びその遮断を切替えることが可能とされている。なお、吐出ヘッド5の押下げ操作によってガイドフランジ51がピストン40から下方に離間した際(
図2参照)、容器本体A内の内容物は、内側ピストン筒42とピストンガイド50との間を通じて連通孔52に達する。
【0039】
連結筒43は、外側ピストン筒41と内側ピストン筒42とを連結すると共に、周方向の全長に亘って連続して延びている。なお、連結筒43は、ステム2の弾性片2bに対して間隔をあけた状態で、弾性片2bよりも下方に配置されている。
【0040】
(付勢部材)
付勢部材60は、例えばコイルばねとされ、ピストンガイド50を介してステム2を上方に向けて付勢している。なお付勢部材60は、金属製とされている。
付勢部材60は、複数の保持リブ53を径方向の外側から囲んだ状態で、ガイドフランジ51と段差壁26との間に上下方向に圧縮した状態で中心軸O1と同軸に配置されている。これにより、付勢部材60は、ガイドフランジ51を介してステム2を常時上方に向けて付勢している。
【0041】
付勢部材60は、複数の保持リブ53を囲むことで、保持リブ53によって保持されている。これにより、付勢部材60は姿勢が安定した状態で、上端部がガイドフランジ51に対して下方から接触し、且つ下端部が段差壁26に対して上方から接触している。
【0042】
なお、ガイドフランジ51は、付勢部材60による上方付勢によってピストン40(内側ピストン筒42)に対して下方から密に接触するので、ガイドフランジ51とピストン40との間のシール性を適切に維持している。さらに、外側ピストン筒41は、後述するパッキン76に対して下方から接触する。これにより、ステム2及び吐出ヘッド5の最上昇位置で位置決めすることができる。
【0043】
(ガイドキャップ)
図1に示すように、シリンダ20には、中心軸O1と同軸に配置された有頂筒状のガイドキャップ70が組み合わされている。
ガイドキャップ70は、シリンダ20の内側連結筒29を径方向の外側から囲む外側連結筒71と、外側連結筒71の上端部から径方向の内側に向かって突出した環状のキャップ頂壁72と、キャップ頂壁72の内周縁部から上方に向かって突出する上部ガイド筒73と、キャップ頂壁72の内周縁部から下方に向かって突出する下部ガイド筒74と、キャップ天壁11から下方に向かって突出すると共に内側連結筒29の内側に配置される規制筒75と、を備えている。
【0044】
外側連結筒71は、内側連結筒29に対してアンダーカット嵌合により装着されている。これにより、ガイドキャップ70の全体は、シリンダ20を介してポンプ機構3に一体に組み合わされている。なお、外側連結筒71の装着方法は、アンダーカット嵌合による方法に限定されるものではなく、例えば内側連結筒29に対してねじ結合による方法で装着されても構わない。
規制筒75は、内側連結筒29に対して、例えば縦リブ同士の周方向の係止等によって、中心軸O1回りに回り止めがされた状態で内側連結筒29の内側に嵌合されている。これにより、ガイドキャップ70の全体は、中心軸O1回りに回り止めがされた状態でポンプ機構3に組み合わされている。
【0045】
上部ガイド筒73は、ステム2のうち拡径筒2aよりも上方に位置する部分を径方向の外側から囲んでいる。この際、上部ガイド筒73とステム2との間には若干の隙間が確保されている。下部ガイド筒74は、ステム2の拡径筒2aを径方向の外側から囲んでいる。この際、下部ガイド筒74と拡径筒2aとの間には若干の隙間が確保されている。
これにより、上部ガイド筒73及び下部ガイド筒74は、ステム2をガイドして、ステム2のスムーズな上下動をサポートしている。
なお、下部ガイド筒74及び規制筒75と、第1シリンダ周壁23の上端開口縁との間には、環状のパッキン76が配置されている。
【0046】
(吐出ヘッド)
吐出ヘッド5は、ステム2の上端部に嵌合された嵌合筒部80と、嵌合筒部80の上端部から前方に向けて延びた筒状の吐出ノズル81と、を備えている。
嵌合筒部80は、ステム2の内側に嵌合され、ステム2内に連通している。吐出ノズル81は、後端部が閉塞し、且つ前端部が開口した有底筒状に形成され、嵌合筒部80の上端部に一体的に形成されている。吐出ノズル81の内部は、嵌合筒部80内を通じてステム2内に連通している。図示の例では、吐出ノズル81は、前方斜め上方に向けて延びるように形成されていると共に、装着キャップ6よりも前方に向けて突出するように形成されている。
【0047】
吐出ノズル81の内部には、吐出ノズル81に沿って延在するノズル軸部82が配設されている。なおノズル軸部82の外周面と吐出ノズル81の内周面との間には、内容物を流通させる複数の流路溝83が形成されている。
ノズル軸部82の前端部には、内容物を吐出する吐出孔4が形成されたノズルチップ85が装着されている。吐出孔4は、ノズルチップ85に形成されたスピン溝、及びノズル軸部82とノズルチップ85との間に形成された流通路等を介して流路溝83内に連通している。
【0048】
吐出ノズル81の後端部には、ステム2よりも後方に向けて突出した第1突起部86及び第2突起部87が形成されている。第1突起部86及び第2突起部87は、例えば後方に向けて同等の長さを有するように形成されている。第2突起部87は、第1突起部86との間に間隔をあけた状態で第1突起部86よりも上方に配置されている。これにより、第1突起部86と第2突起部87との間には、後方に開口した隙間が確保されている。
なお、第1突起部86の後端部には、下方に向けた突出した係止突起88が形成されている。
【0049】
吐出ノズル81のうちステム2の上方に位置する部分の外面には、円柱状の軸部89が左右方向L2に沿って外向きに突設されている。なお、軸部89は、左右方向L2から見た側面視で、該軸部89の中心を中心軸O1が通る位置に形成されている。
【0050】
(支持部材)
支持部材7はトリガー部材8を支持する部材であって、ガイドキャップ70を介してポンプ機構3に組み合わされている。
支持部材7は、ガイドキャップ70の後部から後方斜め上方に向けて延びるように形成されている。これにより、支持部材7の上端部は、吐出ヘッド5に対して間隔をあけた状態で、吐出ヘッド5よりも後方に配置されている。
【0051】
具体的に支持部材7は、ガイドキャップ70における外側連結筒71、キャップ頂壁72及び上部ガイド筒73に一体に形成され、これら外側連結筒71、キャップ頂壁72及び上部ガイド筒73から後方斜め上方に向けて延びるように形成されている。支持部材7は、左右方向L2に間隔をあけて配置された一対の側壁部90と、側壁部90の後端縁同士を左右方向L2に接続する後壁部91と、を備えている。
【0052】
一対の側壁部90の上端部には、左右方向L2から見た正面視で上方に向けて円弧状に突出した突出片92がそれぞれ形成されている。これら突出片92の外面には、円柱状の回転軸部93が左右方向L2に沿って外向きに突設されている。なお、回転軸部93の中心を通り、且つ左右方向L2に延びる仮想の軸線がトリガー部材8の回転軸線O2として機能する。
後壁部91の内面には、突出片92の内側に位置するように上方に向かって突出し、一対の側壁部90の内面同士及び突出片92同士を左右方向L2に連結する補強壁94が形成されている。さらに側壁部90の周縁部のうち、上部ガイド筒73に連設される部分には、下方に向けて窪む支持孔95が形成されている。
【0053】
(トリガー部材)
トリガー部材8は、支持部材7の上端部に後方に向けて回転可能に組み合わされると共に、後方への回転によって吐出ヘッド5を押下げる操作部材として機能する。本実施形態の吐出器1では、
図1に示すトリガー部材8を回転軸線O2回りに後方に向けて回転させることにより、
図2に示すように、トリガー部材8を利用して吐出ヘッド5を押下げ操作することができる。これにより、吐出孔4を通じて内容物を吐出することが可能となる。
【0054】
図1に示すように、トリガー部材8は、回転軸部93を介して支持部材7の上端部に取り付けられている。これにより、トリガー部材8は、支持部材7に対して回転軸線O2回りに回転可能(揺動可能)に連結されている。
【0055】
トリガー部材8は、吐出ヘッド5を上方から覆う天板部100と、天板部100の前端縁から前方斜め下方に向けて延びる前板部101と、天板部100及び前板部101の左右両側の端縁から下方に向けて延びると共に、左右方向L2に向かい合う一対の側板部102と、を備えている。天板部100と一対の側板部102とで囲まれる空間は、下方に開口した内部空間とされている。吐出ヘッド5の一部は、この内部空間内に配置されている。そのため、一対の側板部102は吐出ヘッド5の一部を左右方向L2から挟むように配置されている。
【0056】
なお、本実施形態のトリガー部材8は、
図3に示すように、下方から見た平面視で、左右方向L2よりも前後方向L1に長い形状とされている。
図3では、吐出ヘッド5の図示を省略している。後述する
図7も同様に吐出ヘッド5の図示を省略している。
【0057】
図1に示すように、天板部100は上方に向けて膨らむように滑らかに湾曲するように形成されている。天板部100の後端部は、支持部材7における後壁部91の上方開口縁に上方から接触している。これにより、トリガー部材8は、回転軸線O2を中心とした、これ以上の上方及び前方への回転が規制された状態で位置決めされている。
【0058】
天板部100の前側部分には、該天板部100を上下方向及び前後方向L1に貫通する貫通孔103が形成されている。貫通孔103は、天板部100における左右方向L2の中央部分に形成されている。これにより、天板部100の前側部分は、左右方向L2に二股に分かれた形状とされている。
そして、貫通孔103内に吐出ノズル81が挿通されている。吐出ノズル81は、貫通孔103を通して天板部100よりも前方に突出している。これにより、トリガー部材8の影響を受けることなく、吐出孔4を通じて内容物を外部に吐出することができる。
【0059】
なお、吐出ノズル81のうちステム2の上方に位置する部分及び後端部は、天板部100によって覆われている。従って、トリガー部材8を後方に向けて操作した際、天板部100を利用して吐出ヘッド5の全体を下方に向けて押下げ操作して、吐出ヘッド5及びステム2を下方移動させることが可能とされている(
図2参照)。
【0060】
前板部101は、下端部が装着キャップ6の前方に間隔をあけて配置されるように、天板部100の前端縁から前方斜め下方にむけて延びている。なお、前板部101の下側部分は、指先を掛けるための指掛部分とされている。
【0061】
一対の側板部102は、吐出ヘッド5の一部及び支持部材7の上端部を左右方向L2から挟むように配置されている。そして一対の側板部102の後部側の内面には、支持部材7の上端部に形成された回転軸部93を収容する軸孔104が形成されている。これにより、トリガー部材8は、回転軸線O2回りに回転可能に支持部材7に支持されている。
【0062】
さらに一対の側板部102の内面には、上方に窪む凹曲面状の窪み部105が形成されている。窪み部105は、吐出ノズル81に形成された軸部89の外周面に上方から接触している。これにより、トリガー部材8は、吐出ノズル81及びステム2を介して付勢部材60からの弾性復元力によって常時上方付勢されている。さらにトリガー部材8を後方に向けて操作したときに、軸部89を介して吐出ヘッド5及びステム2を押下げ操作することが可能とされている。
【0063】
(ストッパ部材)
図1に示すようにストッパ部材9は、支持孔95によって前後方向L1に揺動可能に組み合わされていると共に、吐出ヘッド5の押下げを規制する規制位置P1と、
図2に示すように吐出ヘッド5の押下げを許容する解除位置P2との間を変位する。具体的には、ストッパ部材9は、トリガー部材8の内部空間内に一部が収容された状態でステム2と支持部材7との間に配置され、規制位置P1から後方に向けて揺動することで許容位置に変位する。
【0064】
図1~
図7に示すように、ストッパ部材9は、規制位置P1に位置しているときに、吐出ヘッド5の押下げを規制する規制片110と、規制片110に弾性変位可能に連結されると共に、ロック位置P3(
図3参照)から許容位置P4(
図7参照)に向けて押込み操作可能とされた操作片111と、を備えている。
【0065】
規制片110は、前後方向L1に一定の厚みを有し、左右方向L2の長さがトリガー部材8における一対の側板部102の内側に収まるサイズに形成されていると共に、縦長の板状に形成されている。規制片110の上端部には、該規制片110を前後方向L1に貫通する係止孔112が形成されている。係止孔112は、規制片110の左右方向L2の中央部に形成され、吐出ヘッド5に形成された第1突起部86を挿通可能なサイズとされている。
【0066】
そして規制片110は、規制位置P1に位置しているときに、係止孔112内に第1突起部86を挿通させた状態で、下端部がガイドキャップ70における上部ガイド筒73の上端開口縁に対して上方から接触するように配置される(
図1参照)。
このとき、係止孔112の内面は第1突起部86に対して下方から接触或いは近接し、規制片110の上端部は第2突起部87に対して下方から接触或いは近接している。これにより、規制片110は、第1突起部86及び第2突起部87と、ガイドキャップ70の上部ガイド筒73との間に配置される。従って、吐出ヘッド5の押下げを規制することができる。
さらに第1突起部86の後端部に形成された係止突起88が規制片110の後面に対して後方から係止している。これにより、規制片110が後方に向けて容易に揺動することを抑制することができ、規制位置P1に位置決めし易い。
【0067】
規制片110の下端部には、下方に向けて延びると共に、左右方向L2に間隔をあけて向かい合うように配置された一対の揺動片113が形成されている。一対の揺動片113は、支持部材7における一対の側壁部90よりも左右方向L2の外側に位置し、且つ支持孔95よりも下方に突出するように形成されている。これにより、一対の揺動片113は、一対の側壁部90を左右方向L2から挟み込むように配置されている。なお、一対の揺動片113の下端部は、左右方向L2から見た側面視で下方に向けて突となる半円形状に形成されている。
【0068】
一対の揺動片113の下端部には、左右方向L2に延びると共に一対の揺動片113同士を連結する揺動軸114が形成されている。揺動軸114は、支持部材7に形成された支持孔95内に揺動可能に支持されている。これにより、ストッパ部材9は、揺動軸114の中心を左右方向L2に貫く揺動軸線O3を中心として前後方向L1に揺動可能に支持部材7に支持されている。
【0069】
さらに規制片110には、前方に向けて延びると共に、左右方向L2に間隔をあけて向かい合うように配置された一対の嵌合片115が形成されている。一対の嵌合片115は、規制位置P1に位置しているときに、ステム2のうち上部ガイド筒73よりも上方に位置する部分を径方向の外側から嵌合する。これによっても、規制片110が後方に向けて容易に揺動することを抑制することができ、規制位置P1に位置決めし易い。
【0070】
図3~
図7に示すように操作片111は、左右方向L2に並ぶように一対設けられている。一対の操作片111のそれぞれは、規制片110の後面に連結され、後面から後方に向かって延びる連結片116と、連結片116に対して間隔をあけた状態で連結片116よりも左右方向L2の外側に配置された押込み片117と、連結片116と押込み片117とを左右方向L2に連結する連結リブ118と、を備えている。
【0071】
連結片116は、上下方向の長さが規制片110と同等とされていると共に、揺動片113よりも後方に突出するように形成されている。また連結片116は、下方から見た平面視で、トリガー部材8における一対の側板部102よりも左右方向L2の内側に配置されている。さらに連結片116は、左右方向L2から見た側面視で、上端部が一対の側板部102よりも左右方向L2の内側に配置され、且つ下端部側については一対の側板部102よりも下方に位置するように配置されている。
従って連結片116は、規制位置P1に位置している際、上端部だけがトリガー部材8の内側に配置され、下端部側がトリガー部材8よりも下方に露出している(
図1参照)。
【0072】
押込み片117は、上下方向の長さが連結片116と同等とされていると共に、左右方向L2から見た側面視で、一対の側板部102よりも左右方向L2の外側に配置されている。これにより、トリガー部材8に影響されることなく、押込み片117を左右方向L2の外側から内側に向けて押込み操作することが可能とされている(
図7参照)。
【0073】
連結リブ118は、連結片116の下端部と押込み片117の下端部とを左右方向L2に連結するように形成されている。従って、連結リブ118は、下方から見た平面視で、トリガー部材8における一対の側板部102を左右方向L2に跨ぐように配置されている。これにより、押込み片117を押込み操作することで、操作片111の全体を左右方向L2の内側に向けて押し込むことが可能とされている。
なお、本実施形態では、連結片116と押込み片117とを左右方向L2に連結する補助リブ119が形成されている。ただし、補助リブ119は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0074】
上述のように構成された一対の操作片111は、例えば指先で左右方向L2から挟むように同時に押込み操作されることで、規制片110と連結片116との連結部分を基点として揺動しながら、ロック位置P3から許容位置P4に変位する。この際、
図7に示すように、連結片116のうち規制片110側に位置する前端部は、肉厚が他の部分よりも薄い薄肉部116aとされている。そのため、操作片111の全体が揺動し易く、押込み操作の操作性を良好にすることができる。
【0075】
特に本実施形態の操作片111は、
図1、
図8及び
図9に示すように、トリガー部材8に形成された第1係止部120に対して係止する第2係止部130を備え、ロック位置P3及び許容位置P4に応じて、第1係止部120に対して第2係止部130の係止とその解除を行うことが可能とされている。
具体的に操作片111は、
図3及び
図8に示すようにロック位置P3に位置しているときに、第1係止部120に対して第2係止部130が係止することで、ストッパ部材9を規制位置P1に位置決めしている。そして、
図7及び
図9に示すように操作片111が許容位置P4に位置した場合には、第1係止部120から第2係止部130が離脱して、規制位置P1から解除位置P2に向けたストッパ部材9の変位(揺動)を許容する。
【0076】
(第1係止部、第2係止部)
第1係止部120及び第2係止部130について説明する。
図1及び
図8に示すように、第1係止部120は、トリガー部材8における一対の側板部102の内面に左右方向L2の内側に向かって突出すると共に、上下方向に沿って延びる縦リブ状に形成されている。第1係止部120は、全長に亘って前方を向くと共に、左右方向L2の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜した第1係止面121を有している。
【0077】
第2係止部130は、操作片111における連結片116の上端部側に配置され、上下方向に沿って延びる縦リブ状に形成されている。第2係止部130は、後方を向くと共に、左右方向L2の外側から内側に向かうにしたがって前方に向けて傾斜した第2係止面131を有している。第2係止面131は、第1係止面121に対して同等の傾斜角度とされ、第1係止面121に対して前方から係止している。
ただし、第2係止面131は、第1係止面121に対して近接した状態で第1係止面121に対して前方から向かい合うように配置されていても構わない。
上述のように第1係止部120及び第2係止部130が形成されているため、第2係止部130は操作片111がロック位置P3に位置しているときに第1係止部120に対して前方から係止されている。
【0078】
(吐出器の作用)
次に、上述のように構成された吐出器1を利用して、内容物を吐出する場合について説明する。
はじめに、
図1に示すようにストッパ部材9が規制位置P1に位置している場合には、規制片110が吐出ヘッド5の押下げを規制しているため、トリガー部材8を操作したとしてもポンプ機構3が作動して内容物が吐出されることがない。
【0079】
特に、操作片111がロック位置P3に位置しているため、
図8に示すように第2係止部130の第2係止面131が、トリガー部材8に形成された第1係止部120の第1係止面121に係止しており、ストッパ部材9を規制位置P1に位置決めしている。従って、例えば製品運搬時、製品陳列時等、操作片111を介してストッパ部材9の全体に対して意図しない外力が作用したとしても、ストッパ部材9が不意に後方に向けて揺動して、規制位置P1から解除位置P2に変位することを抑制することができる。従って、ポンプ機構3の誤動作を防止することができる。
【0080】
次に内容物の吐出を行う場合には、規制位置P1に位置しているストッパ部材9の操作片111を、
図7に示す矢印の如く指先等で押込み操作して、操作片111を左右方向L2の内側に向けて揺動させる。これにより、
図3に示すロック位置P3から、
図7に示す許容位置P4に向けて操作片111を変位させることができる。そのため、
図9に示すように第2係止面131を第1係止面121から離脱させて係止を解除できる。
従って、操作片111を押込み操作したまま、連続してストッパ部材9を後方に向けて揺動操作することができ、
図2に示すように規制位置P1から解除位置P2に変位させることができる。これにより、吐出ヘッド5の押下げを許容することができる。
【0081】
従って、
図2に示す矢印Fの如くトリガー部材8を後方に向けて操作することで、吐出ヘッド5を押下げ操作することができ、ポンプ機構3を作動させることができる。その結果、吐出孔4を通じて内容物の吐出を行うことや、内容物の吐出後に容器本体A内からステム2内に内容物を吸上げて、次回への吐出に備えること等ができる。
【0082】
内容物の吐出について、詳しく説明する。
トリガー部材8の操作によって吐出ヘッド5を押下げ操作することで、付勢部材60の上方付勢力に抗して、ステム2及びピストンガイド50を下方移動させることができる。そのため、ステム2の弾性片2bをピストン40に当接させ、且つ弾性変形させながら、ステム2及びピストンガイド50を下方移動させることができる。この際、弾性片2bの弾性変形によって、ピストン40はステム2によって下方に向けて押圧される。
従って、ピストン40の内側ピストン筒42をガイドフランジ51に対して強く圧接させながら、ステム2、ピストンガイド50及びピストン40を一体的に下方移動させることができる。
【0083】
そしてピストン40が下方移動することで、シリンダ20内の圧力が上昇する。ところが、シリンダ20内の圧力が一定値まで高まると、シリンダ20内の圧力の逃げ場がないので、ピストン40の下方移動が抑制された状態となる。
その一方、ステム2及びピストンガイド50は、吐出ヘッド5の押下げ操作によってさらに下方移動し続ける。従って、弾性片2bをさらに弾性変形させながら、ピストン40に対してステム2及びピストンガイド50を下方移動させることができる。これにより、ガイドフランジ51をピストン40の内側ピストン筒42から離間させることができ、ガイドフランジ51と内側ピストン筒42との間のシールを解除することができる。これにより、シリンダ20内とステム2内とを、ピストンガイド50の連通孔52を通じて連通させることができる。
【0084】
従って、シリンダ20内の圧力が高まった内容物をステム2内及び吐出孔4を通じて、外部に向けて勢い良く吐出することができる。そして、これ以降、吐出ヘッド5のさらなる押下げ操作によって、シリンダ20内の内容物を、引き続き勢い良く吐出することができる。
なお、吐出ヘッド5の押下げ操作時、シリンダ20内の圧力上昇によって、流通孔25a及びパイプ28を通じた容器本体A内とシリンダ20内との連通を遮断するようにボール弁30を閉弁させることができる。従って、シリンダ20内の内容物を、吐出孔4を通じて外部に適切に吐出することができる。
【0085】
内容物の吐出後、吐出ヘッド5の押下げ操作を解除すると、付勢部材60による上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストンガイド50と共にステム2を上方に向けて復元移動させることができ、吐出ヘッド5及びステム2を元の位置に復帰させることができる。さらに、吐出ヘッド5が元の位置に復帰することに伴って、トリガー部材8についても元の位置に復帰させることができる。
【0086】
なお、上記過程において、ステム2の上方移動に伴ってガイドフランジ51をピストン40の内側ピストン筒42に対して下方から接触させることができる。これにより、ガイドフランジ51と内側ピストン筒42との間をシールすることができ、シリンダ20内とステム2内との連通を遮断することができる。そして、さらなるステム2の上方移動によって、ピストンガイド50と共にピストン40を上方に移動させることができるので、シリンダ20内の圧力を低下させることができる。
これにより、ボール弁30を上方に離反させて開弁させることができ、流通孔25a及びパイプ28を通じて、容器本体A内からシリンダ20内に内容物を吸い上げることができ、次回の吐出に備えることができる。
【0087】
以上説明したように本実施形態の吐出器1では、ストッパ部材9の操作片111に形成された第2係止部130がトリガー部材8に形成された第1係止部120に係止することで、ストッパ部材9を規制位置P1に位置決めできるので、従来とは異なり、ストッパ部材9の意図しない揺動によって解除位置P2に不意に変位することを抑制することができる。
その一方、内容物を吐出する場合には、操作片111を押込み操作してロック位置P3から許容位置P4に変位させる動作と、ストッパ部材9を揺動操作して規制位置P1から解除位置P2に変位させる動作とを、一連の流れで連続的に行うことができる。従って、操作性を向上することができ、使い易い。
【0088】
さらに内容物の吐出を行う際、操作片111を左右方向L2に押込み操作してロック位置P3から許容位置P4に変位させつつ、操作片111の押込み操作の方向とは異なる後方に向けてストッパ部材9を揺動操作することができる。従って、操作片111の押込み操作とストッパ部材9の揺動操作とを明確に区別しながら操作することができ、操作性を向上することができる。
【0089】
さらに互いに傾斜した第1係止面121及び第2係止面131同士を係止させることができるので、ストッパ部材9が規制位置P1に位置しているときに、意図しない外力等によってストッパ部材9が後方に向けて強い応力を受けたとしても、操作片111が左右方向L2の内側に向けて変位し難くすることができる。そのため、操作片111が意図せずに許容位置P4に変位することを効果的に抑制することができる。
【0090】
さらに操作片111を一対具備しているので、これら操作片111を指先で左右方向L2から挟み込むように同時に押込み操作することができるうえ、連続してストッパ部材9を後方に揺動させて解除位置P2に変位させることができる。従って、例えば片手によるワンタッチでストッパ部材9を操作することができ、さらに操作性を向上することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0092】
例えば上記実施形態では、操作片111を一対設けた構造としたが、この場合に限定されるおのではなく、1つだけ具備する構成にしても構わない。また、ポンプ機構3としては上述の構成に限定されるものではなく、吐出ヘッド5の押下げ操作によって内容物を吐出することができれば、その他のポンプ機構を採用しても構わない。
【0093】
さらに上記実施形態では、支持部材7をガイドキャップ70に一体に形成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば装着キャップ6に一体に形成しても構わない。さらに上記実施形態では、吐出ヘッド5がノズルチップ85を具備する構成としたが、ノズルチップ85は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【符号の説明】
【0094】
L1…前後方向
L2…左右方向
P1…規制位置
P2…解除位置
P3…ロック位置
P4…許容位置
A…容器本体
1…吐出器
2…ステム
3…ポンプ機構
4…吐出孔
5…吐出ヘッド
6…装着キャップ
7…支持部材
8…トリガー部材
9…ストッパ部材
110…規制片
111…操作片
120…第1係止部
121…第1係止面
130…第2係止部
131…第2係止面