(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079204
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240604BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192005
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】安形 和晃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA26
2C056EB21
2C056EB34
2C056EB59
2C056EC16
2C056EC32
2C056EC37
2C056EC54
2C056EC56
2C056EC57
2C056FA04
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA02
2C056JA13
2C056KA04
2C056KB08
2C056KB14
2C056KB35
2C056KB37
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】インク流路に設けられたバルブの頻繁な開閉を抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、インク容器61と、インクヘッド50と、インク流路62と、インク流路62に設けられた送液ポンプ63と、インク流路62に設けられたバルブ64と、インクが一時的に貯留される貯留室65aを備えた中間容器65と、貯留室65a内のインクの圧力を測定する圧力センサ66と、を備える。インクジェットプリンタは、貯留室65a内のインクの圧力を圧力センサ66から取得し、取得された圧力が第1閾値を下回ると送液ポンプ63を駆動し、第1閾値よりも大きい第2閾値に到達すると送液ポンプ63を停止する。インクジェットプリンタは、バルブ64が開放されている状態において、取得された圧力が第2閾値よりも大きい第3閾値に到達するまではバルブ64を開放し続け、第3閾値を越えるとバルブ64を閉鎖する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されたインク容器と、
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インク容器と前記インクヘッドとを接続するインク流路と、
前記インク流路に設けられ、駆動時には前記インク容器から前記インクヘッドに向かう方向にインクを送る送液ポンプと、
前記インク流路に設けられ、前記インク流路を開放または閉鎖するバルブと、
インクが一時的に貯留される貯留室を備え、前記インク流路のうち前記送液ポンプおよび前記バルブよりもインクの送り方向下流に設けられた中間容器と、
前記貯留室内のインクの圧力を測定する圧力センサと、
前記インクヘッド、前記送液ポンプ、前記バルブ、および前記圧力センサに接続された制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記貯留室内のインクの圧力を前記圧力センサから取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部によって取得された圧力が予め定められた第1閾値を下回ると前記送液ポンプを駆動し、前記第1閾値よりも大きい第2閾値に到達すると前記送液ポンプを停止する送液制御部と、
前記バルブが開放されている状態において、前記圧力取得部によって取得された圧力が前記第2閾値よりも大きい第3閾値に到達するまでは前記バルブを開放し続け、前記第3閾値を越えると前記バルブを閉鎖するバルブ制御部と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第3閾値は、前記貯留室内のインクの圧力によって前記インクヘッドからインクが漏出する圧力よりも小さく設定されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記バルブ制御部は、前記バルブが開放されている状態から前記バルブを閉鎖した後、前記圧力取得部によって取得された圧力が前記第1閾値を下回ると前記バルブを開放する、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記圧力取得部によって取得された圧力に応じて前記送液ポンプが駆動または停止される制御モードと、前記送液ポンプが停止され続ける停止モードとが登録された登録部を備え、
前記バルブ制御部は、前記停止モードでは前記バルブを閉鎖する、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクヘッドからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタが従来から知られている。例えば、特許文献1には、インクを貯留するインクカートリッジと、インクを吐出するインクヘッドと、インクカートリッジとインクヘッドとを連通させるインク経路と、インク経路を開放または閉鎖可能なバルブと、インクが一時的に貯留される貯留室を有しインク経路に設けられたダンパと、インク経路に設けられインクをインクヘッドに送る供給ポンプと、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、貯留室内のインクの圧力が所定の圧力以下であるかどうかを検出する検出装置がダンパに設けられている。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、貯留室内のインクの圧力が所定の圧力以下であることが検出されると、供給ポンプを駆動してダンパにインクを供給する。
【0003】
特許文献1には、劣化などにより供給ポンプにリークが発生し得ることが記載されている。特許文献1によれば、供給ポンプのリークが継続すると、インクヘッドからインクが意図せずに漏れるおそれがある、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットプリンタの中には、インクを送る送液ポンプに漏れが発生しインクヘッドからインクが漏れるおそれを考慮し、送液ポンプを停止しているときにはバルブを閉鎖し、送液ポンプを駆動しているときにはバルブを開放するものがある。送液ポンプの停止中にバルブを閉鎖することにより、インクヘッドからインクが漏れるおそれを低減することができる。しかし、送液ポンプは間欠的に駆動されるため、それに伴ってバルブも頻繁に開閉される。これにより、バルブの寿命が短くなりやすい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドからインクが漏れるおそれを低減でき、かつ、インク流路に設けられたバルブの頻繁な開閉を抑制できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、インクが収容されたインク容器と、インクを吐出するインクヘッドと、前記インク容器と前記インクヘッドとを接続するインク流路と、前記インク流路に設けられ、駆動時には前記インク容器から前記インクヘッドに向かう方向にインクを送る送液ポンプと、前記インク流路に設けられ、前記インク流路を開放または閉鎖するバルブと、インクが一時的に貯留される貯留室を備え、前記インク流路のうち前記送液ポンプおよび前記バルブよりもインクの送り方向下流に設けられた中間容器と、前記貯留室内のインクの圧力を測定する圧力センサと、前記インクヘッド、前記送液ポンプ、前記バルブ、および前記圧力センサに接続された制御装置と、を備える。前記制御装置は、圧力取得部と、送液制御部と、バルブ制御部と、を備えている。前記圧力取得部は、前記貯留室内のインクの圧力を前記圧力センサから取得する。前記送液制御部は、前記圧力取得部によって取得された圧力が予め定められた第1閾値を下回ると前記送液ポンプを駆動し、前記第1閾値よりも大きい第2閾値に到達すると前記送液ポンプを停止する。前記バルブ制御部は、前記バルブが開放されている状態において、前記圧力取得部によって取得された圧力が前記第2閾値よりも大きい第3閾値に到達するまでは前記バルブを開放し続け、前記第3閾値を越えると前記バルブを閉鎖する。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、第3閾値は、送液ポンプを停止する圧力である第2閾値よりも大きく設定されている。送液ポンプに漏れが発生していない状態では、貯留室内の圧力は第2閾値を大きく超えず、第3閾値には到達しない。かつ、インク経路に設けられたバルブは、開放された状態からは、貯留室内の圧力が第3閾値を越えないと閉鎖されない。よって、かかる制御により、バルブの頻繁な開閉を抑制できる。また、送液ポンプに漏れが発生するなどして、貯留室内のインクの圧力が第3閾値を越えると、バルブは閉鎖される。これにより、貯留室へのインクの供給が停止される。そのため、上記インクジェットプリンタによれば、インクヘッドからインクが漏れるおそれを低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】キャリッジの下面の構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】インク供給システムの構成を示す模式図である。
【
図5】ポンプ制御モードにおける送液ポンプの動作を示すフローチャートである。
【
図7】従来のインクジェットプリンタにおける送液ポンプの動作を示すフローチャートである。
【
図8】従来のインクジェットプリンタにおけるバルブの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[インクジェットプリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0011】
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ20に搭載されたインクヘッド50からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0012】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよい。記録媒体5は、金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ20と、キャリッジ移動装置30と、搬送装置40と、インクヘッド50と、インク供給システム60と、キャッピング装置70と、制御装置100と、を備えている。
【0014】
キャリッジ移動装置30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、キャリッジモータ34と、を備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、キャリッジ20に固定されている。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の右側に設けられたプーリ33aおよび左側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。右側のプーリ33aにはキャリッジモータ34が取り付けられている。キャリッジモータ34は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ34は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ34が駆動するとプーリ33aが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
【0015】
キャリッジ20の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、左右方向に延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12上の記録媒体5は、搬送装置40によって前後方向に移動される。搬送装置40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43と、を備えている。ピンチローラ41はプラテン12の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ43は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
【0016】
図2は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、キャリッジ20の下面には、複数のインクヘッド50が設けられている。インクヘッド50は、インクを吐出するように構成されている。複数のインクヘッド50は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。複数のインクヘッド50の下面には、それぞれ、複数のノズル51が形成されている。ノズル51は、インクが吐出される微細な孔である。インクヘッド50の下面は、それぞれ、複数のノズル51が形成されたノズル面50aを構成している。ノズル面50aにおいて、複数のノズル51は前後方向に並んでノズル列を形成している。ここでは、ノズル列は、1つのインクヘッド50につき2列形成されている。ただし、インクヘッド50およびノズル51の配置は上記したものに限定されるわけではない。インクヘッド50は、ここでは、ピエゾ駆動式のインクジェットヘッドである。ただし、インクヘッド50がインクを吐出する方式はピエゾ駆動式には限定されず、例えば、サーマル式等であってもよい。
【0017】
図1に示すように、インクはインク供給システム60によってインクヘッド50に供給される。
図3は、インク供給システム60の構成を示す模式図である。本実施形態では、インク供給システム60は、ノズル列ごとに設けられている。
図3に示すように、各インク供給システム60は、インクカートリッジ61と、インク流路62と、送液ポンプ63と、バルブ64と、ダンパ65と、を備えている。
【0018】
インクカートリッジ61は、インクが収容されたインク容器の一例である。1つのインクカートリッジ61には、例えば、プロセスカラーインクおよび特色インクのうちの1つのインクが貯留されている。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0019】
インク流路62は、インクカートリッジ61とインクヘッド50とを接続している。インクは、インク流路62を通ってインクカートリッジ61からインクヘッド50に供給される。インク流路62の構成は限定されないが、例えば、可撓性のチューブによって構成されている。
【0020】
送液ポンプ63は、インク流路62に設けられている。送液ポンプ63は、駆動時にはインクカートリッジ61からインクヘッド50に向かう方向にインクを送るように構成されている。本実施形態では、送液ポンプ63は、チューブポンプである。ただし、送液ポンプ63の種類は限定されず、例えば、ダイヤフラムポンプなどであってもよい。図示は省略するが、送液ポンプ63は、ここでは、可撓性のチューブで構成された内部流路と、内部流路をしごくローラと、内部流路に沿ってローラを移動させるモータと、を備えている。送液ポンプ63は、モータを駆動してローラを内部流路に沿って移動させることにより内部流路をしごき、内部流路内のインクを送出する。送液ポンプ63は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0021】
バルブ64は、インク流路62、詳しくは、インク流路62のうちインクカートリッジ61と送液ポンプ63との間の部分に設けられている。バルブ64は、送液ポンプ63よりもインクの送り方向の上流に設けられている。ただし、バルブ64は、送液ポンプ63よりもインクの送り方向の下流に設けられていてもよい。バルブ64は、インク流路62を開放または閉鎖する。バルブ64は、例えば、ソレノイドバルブである。ただし、バルブ64の種類は限定されず、例えば、エア駆動式のバルブであってもよい。バルブ64は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0022】
ダンパ65は、インク流路62のうち、送液ポンプ63およびバルブ64よりもインクの送り方向下流に設けられている。ここでは、ダンパ65は、送液ポンプ63とインクヘッド50との間に設けられている。ダンパ65は、インクが一時的に貯留される貯留室65aを備えた中間容器の一例である。ダンパ65は、貯留室65aに一時的にインクを貯留することにより、インクの圧力変動を緩和している。
【0023】
ダンパ65には、貯留室65a内のインクの圧力を測定する圧力センサ66が設けられている。圧力センサ66は、ここでは、インクの圧力を連続的に測定するセンサである。圧力センサ66は、例えば、ピエゾ素子の圧電効果を利用した圧力センサである。圧力センサ66は、例えば、測定したインクの圧力に対応した電流や電圧を出力するように構成されていてもよい。あるいは、圧力センサ66は、例えば、測定した圧力が設定圧力以上の場合や設定圧力以下の場合に信号を出力するように構成されていてもよい。本実施形態では、圧力センサ66は、インクの圧力が第1閾値T1(
図5参照)を越えるのか否か、第2閾値T2(
図5参照)を越えるのか否か、また、第3閾値T3(
図6参照)を越えるのか否か、を少なくとも区別可能な形で信号を出力する。第1閾値T1、第2閾値T2、および第3閾値T3の詳細については後述する。
【0024】
例えば、測定した圧力が設定圧力を越える場合に信号を出力するように圧力センサ66が構成されている場合、制御装置100は、信号の有無により、インクの圧力が第1閾値T1、第2閾値T2、または第3閾値T3を越えているかどうかを判断する。例えば、測定した圧力に対応する電圧または電流を出力するように圧力センサ66が構成されている場合、制御装置100は、電圧値または電流値から、インクの圧力が第1閾値T1、第2閾値T2、または第3閾値T3を越えているかどうかを判断する。
【0025】
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションP1が設定されている。ホームポジションP1は、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションP1におけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置70が配置されている。
図1に示すように、キャッピング装置70は、キャップ71と、キャップ移動装置72と、吸引ポンプ73とを備えている。キャッピング装置70は、インクヘッド50に装着され、インクヘッド50からインクを吸引する吸引装置の一例である。
【0026】
キャップ71は、インクヘッド50に装着可能に構成されている。キャップ71は、インクヘッド50と同数設けられている。1つのインクヘッド50には1つのキャップ71が装着される。ただし、1つのキャップ71は、複数のインクヘッド50に装着されるように構成されていてもよい。キャップ71は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ71は、ゴム等によって形成されている。インクヘッド50への装着時、キャップ71の上縁がインクヘッド50のノズル面50aに密着される。
【0027】
複数のキャップ71は、1つのキャップ移動装置72によって支持されている。キャップ移動装置72は、複数のキャップ71をインクヘッド50のノズル面50aに装着し、または離間させる。キャップ移動装置72は、キャップ71を下方から支持して上下方向に移動させる。それにより、キャップ71は、インクヘッド50に装着され、また離間される。キャップ移動装置72は、例えば、図示しない駆動モータを備えている。キャップ移動装置72は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。なお、本実施形態では、キャップ移動装置72は、キャップ71を上下方向に移動させてインクヘッド50に装着したが、例えば、斜めにスライドさせて装着するように構成されていてもよい。
【0028】
図1に示すように、吸引ポンプ73は、複数のキャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、インクヘッド50に装着されている状態のキャップ71内を減圧する。吸引ポンプ73は、これによりインクヘッド50からインクを吸引する。吸引ポンプ73は、例えば、減圧ポンプである。吸引ポンプ73は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0029】
図4は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図4に示すように、制御装置100は、キャリッジモータ34と、フィードモータ43と、インクヘッド50と、送液ポンプ63と、バルブ64と、キャップ移動装置72と、吸引ポンプ73と、にそれぞれ電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。また、制御装置100は、圧力センサ66に電気的に接続され、圧力センサ66からの信号を受信している。
【0030】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0031】
図4に示すように、制御装置100は、印刷制御部101と、キャッピング制御部102と、吸引制御部103と、フラッシング制御部104と、圧力取得部105と、送液制御部106と、バルブ制御部107と、モード登録部108と、を備えている。制御装置100は、上記した以外の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0032】
印刷制御部101は、プリンタ10の印刷動作を制御する。印刷制御部101は、キャリッジモータ34を駆動させてキャリッジ20を左右方向に移動させながら、インクヘッド50からインクを吐出させることにより、記録媒体5の一部に画像を印刷する。印刷制御部101は、さらに、フィードモータ43を駆動させて記録媒体5を前後方向に移動させることによって記録媒体5上の印刷位置を移動させる。これらの動作により、記録媒体5上に画像が印刷される。以下では、インクヘッド50からインクが吐出され、画像が形成されるプリンタ10のモードを「印刷モード」とも呼ぶ。
【0033】
キャッピング制御部102は、キャップ移動装置72を制御してキャップ71をインクヘッド50に装着する。非印刷時にキャリッジ20がホームポジションP1に位置付けられたときには、キャッピング制御部102は、基本的にキャップ71をインクヘッド50に装着するように設定されている。
【0034】
吸引制御部103は、キャップ71がインクヘッド50に装着された状態で吸引ポンプ73を制御してキャップ71内を減圧させる。これにより、吸引装置としてのキャッピング装置70によってインクヘッド50からインクが吸引される。かかるインク吸引は、定期的に、または適時に行われる。以下では、キャッピング装置70によってインクヘッド50からインクが吸引されるプリンタ10のモードを「吸引モード」とも呼ぶ。
【0035】
フラッシング制御部104は、インクヘッド50を制御してキャップ71に向かってインクを吐出させ、ノズル51内のインクを廃棄するフラッシングを行う。ただし、フラッシングにおいてインクが吐出されるのは、キャップ71には限定されない。フラッシングにおいてインクが吐出されるのは、例えば、専用のフラッシングステージであってもよい。フラッシングは、定期的に、または適時に行われる。以下では、インクヘッド50からインクを吐出させ、ノズル51内のインクを廃棄するモードを「フラッシングモード」とも呼ぶ。
【0036】
圧力取得部105は、ダンパ65の貯留室65a内のインクの圧力を圧力センサ66から取得する。圧力取得部105は、圧力センサ66から、インクの圧力が第1閾値T1を越えるのか否か、第2閾値T2を越えるのか否か、また、第3閾値T3を越えるのか否か、のデータを少なくとも取得する。
【0037】
送液制御部106は、圧力取得部105によって取得された圧力が第1閾値T1を下回ると送液ポンプを駆動し、第2閾値T2に到達すると送液ポンプ63を停止するように構成されている。第1閾値T1は、貯留室65a内のインクの量が少なくなったことを示す閾値である。第2閾値T2は、貯留室65a内のインクの量が十分な量になったことを示す閾値である。第2閾値T2は、第1閾値T1よりも大きく設定されている。送液制御部106は、かかる制御により、ダンパ65を介してインクヘッド50にインクを供給する。
【0038】
バルブ制御部107は、バルブ64の動作を制御する。バルブ制御部107は、バルブ64が開放されている状態において、圧力取得部105によって取得された圧力が第2閾値T2よりも大きい第3閾値T3に到達するまではバルブ64を開放し続け、第3閾値T3を越えるとバルブ64を閉鎖するように構成されている。第3閾値T3は、貯留室65a内のインクの量および圧力が上限値に達したことを示す閾値である。第3閾値T3は、貯留室65a内のインクの圧力によってインクヘッド50からインクが漏出する圧力よりも小さく設定されている。貯留室65a内のインクの圧力が第3閾値T3を越えるとバルブ64を閉鎖することにより、貯留室65a内のインクの圧力が第3閾値T3を大きく越えることが防止される。これにより、インクヘッド50からインクが漏出することが防止される。
【0039】
また、バルブ制御部107は、バルブ64が開放されている状態からバルブ64を閉鎖した後、圧力取得部105によって取得された圧力が第1閾値T1を下回るとバルブ64を開放するように構成されている。圧力取得部105によって取得された圧力が第1閾値T1を下回ると、送液制御部106の制御により、送液ポンプ63が駆動する。バルブ制御部107は、送液ポンプ63が駆動開始するのに合わせてバルブ64を開放する。
【0040】
モード登録部108には、圧力取得部105によって取得された圧力に応じて送液ポンプ63が駆動または停止されるポンプ制御モードと、送液ポンプ63が停止され続けるポンプ停止モードとが登録されている。ここで、「モードが登録されている」とは、リストとして1つまたは複数のモードが登録されている以外の形態も含み、各モードが「インクが消費されるモード」として認識可能に処理されていることを広く意味する。例えば、各モードは、リストを経由することなく、個別に処理されてもよい。本実施形態では、モード登録部108には、ポンプ制御モードとして、印刷モード、吸引モード、およびフラッシングモードが登録されている。印刷モードでは、画像の印刷のためにインクヘッド50からインクが吐出されることにより、インクが消費され、これに伴い送液ポンプ63が駆動される。吸引モードでは、インクヘッド50からインクが吸引され廃棄されることにより、インクが消費され、これに伴い送液ポンプ63が駆動される。フラッシングモードでは、インクヘッド50からインクが吐出され廃棄されることにより、インクが消費され、これに伴い送液ポンプ63が駆動される。
【0041】
登録されたポンプ制御モードには、印刷モード、吸引モード、およびフラッシングモード以外のモードが含まれていてもよい。ポンプ制御モードの他の例としては、例えば、長時間の不使用によって低下した貯留室65a内の圧力を上げるために送液ポンプ63を駆動する復帰動作などが挙げられる。ポンプ制御モードは、例えば、印刷モード等よりももっと細分化された条件によって構成されていてもよい。または、ポンプ制御モードには、印刷モード、吸引モード、およびフラッシングモードのうちの一部のモードが含まれていなくてもよい。
【0042】
モード登録部108には、送液ポンプ63が停止され続けるポンプ停止モードも登録されている。ここで、ポンプ停止モードは、単に、特定のモードがポンプ制御モードとして登録されていないことであってもよい。ポンプ停止モードは、ポンプ制御モードと区別可能に処理されていればよい。ここでは、ポンプ停止モードは、ポンプ制御モードを構成する印刷モード、吸引モード、およびフラッシングモード以外の全てのモードである。
【0043】
バルブ制御部107は、ポンプ停止モードではバルブ64を閉鎖する。これにより、ポンプ停止モードではインクの移動ができなくなるが、ポンプ停止モードではインクを移動させる必要がないため問題は起こらない。バルブ64を閉鎖することにより、ポンプ停止モードにおけるインクヘッド50からのインク漏れが抑制される。
【0044】
なお、プリンタ10は、インクに第3閾値T3を越える圧力を加えてインクヘッド50から漏出させることにより、インク供給システム60をクリーニングする加圧クリーニングモードを選択可能なように構成されていてもよい。加圧クリーニングモードにおけるインク圧は、ノズル51におけるインクのメニスカスが破壊されず、インクがインクヘッド50から漏出しない圧力(例えば、-0.6~+1kPa)に設定されていてもよい。加圧クリーニングモードにおけるインク圧をメニスカスが破壊されない程度の圧力に設定すると、インクはインクヘッド50から漏出はしないが、膨出し得る。加圧クリーニングモードが準備されている場合、プリンタ10は、加圧クリーニングモード中にバルブ64を開放する他のバルブ制御部を備えていてもよい。または、バルブ制御部107は、ポンプ制御モードおよびポンプ停止モードにおいて上記したようにバルブ64を制御するとともに、加圧クリーニングモードではバルブ64を開放するように構成されていてもよい。
【0045】
[インク供給システムの動作]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10のインク供給システム60が行う動作について説明する。
図5は、ポンプ制御モードにおける送液ポンプ63の動作を示すフローチャートである。
図6は、バルブ64の動作を示すフローチャートである。本実施形態では、送液ポンプ63とバルブ64とは、独立に制御される。なお、比較可能なように、従来のインクジェットプリンタにおける送液ポンプの動作の一例を示すフローチャートを
図7に、従来のインクジェットプリンタにおけるバルブの動作の一例を示すフローチャートを
図8に示す。ここで説明する従来のインクジェットプリンタは、特許文献1の検出装置と同様のセンサを備えたインクジェットプリンタであるものとする。
図7と
図8とは分かれているが、従来のインクジェットプリンタでは、送液ポンプ63の制御とバルブ64の制御とは関連付けられている。
【0046】
図5に示すように、ポンプ制御モードにおける送液ポンプ63の制御のステップS01では、取得された貯留室65a内のインクの圧力(以下では、適宜、「インクの圧力」等と省略記載する)と第1閾値T1とが比較される。ステップS01において、インクの圧力が第1閾値T1以上である場合(ステップS01の結果がNOの場合)、ステップS01が繰り返される。例えばインクの消費によってインクの圧力が第1閾値T1を下回ると(ステップS01の結果がYESとなると)、ステップS02において送液ポンプ63が駆動される。
【0047】
送液ポンプ63の制御のステップS03では、インクの圧力と第2閾値T2とが比較される。ステップS03において、インクの圧力が第2閾値T2を下回っている場合(ステップS03の結果がNOの場合)、送液ポンプ63が駆動され続けるとともに、ステップS03が繰り返される。インクの供給によってインクの圧力が第2閾値T2以上となると(ステップS03の結果がYESとなると)、ステップS04において送液ポンプ63が停止される。ポンプ制御モードであるうちは、上記ステップS01~S04が繰り返される。その結果、送液ポンプ63の駆動および停止が繰り返される。
【0048】
図7に示すように、従来のインクジェットプリンタにおける送液ポンプの制御は、
図5に示した制御と概ね同じである。ただし、特許文献1に記載されているようなセンサでは、インクの圧力が所定の圧力以下であるか、所定の圧力を越えているかを検出できるだけであるため、第1閾値と第2閾値とは、検出方向によるズレを除いて一致している。以下、従来のインクジェットプリンタにおいて、インクの圧力が所定の圧力以下の状態をヒット状態と、所定の圧力を越えている状態をアンヒット状態とも呼ぶ。
【0049】
図7に示すように、従来の送液ポンプの制御のステップS21では、センサがヒット状態かどうかが判定される。ステップS21において、センサがアンヒット状態である場合(ステップS21の結果がNOの場合)、ステップS21が繰り返される。インクの消費によってセンサがヒット状態となる(ステップS21の結果がYESとなると)、ステップS22において送液ポンプが駆動される。
【0050】
ステップS23では、センサがアンヒット状態かどうかが判定される。ステップS23において、センサがヒット状態である場合(ステップS23の結果がNOの場合)、送液ポンプが駆動され続けるとともに、ステップS23が繰り返される。インクの供給によってセンサがアンヒット状態となると(ステップS23の結果がYESとなると)、ステップS24において送液ポンプが停止される。ポンプ制御モードであるうちは、上記ステップS21~S24が繰り返される。その結果、送液ポンプの駆動および停止が繰り返される。
【0051】
次に、バルブ64の制御について説明する。
図6に示すように、バルブ64の制御のステップS11では、ポンプ制御モードかどうかが確認される。ステップS11において、ポンプ停止モード中である場合(ステップS11の結果がNOの場合)、ステップS15においてバルブ64が閉鎖される。または、バルブ64は閉鎖された状態で維持される。ステップS15の後には、ステップS11が繰り返される。
【0052】
ステップS11において、ポンプ制御モード中である場合(ステップS11の結果がYESの場合)、ステップS12において、貯留室65a内のインクの圧力と第3閾値T3とが比較される。ステップS12において、インクの圧力が第3閾値T3を越える場合(ステップS12の結果がNOの場合)、ステップS16においてバルブ64が閉鎖される。第3閾値T3は、インクヘッド50からのインクの漏出するおそれがあるかどうかの判定閾値である。
図5から理解されるように、インクの圧力が第2閾値T2よりも大きい第3閾値T3を越えるということは、送液ポンプ63に漏れが発生している可能性を示している。
図5の制御が正常に行われている状態では、インクの圧力は、第2閾値T2を大きく超えることはない。よって、このまま放置すると、インクヘッド50からインクが漏出するおそれがある。これを防止するため、バルブ64が閉鎖される。また、ステップS16の後には、ステップS11が繰り返される。
【0053】
ステップS12においてインクの圧力が第3閾値T3以下である場合(ステップS12の結果がYESの場合)、ステップS13において、貯留室65a内のインクの圧力と第1閾値T1とが比較される。インクの圧力が第1閾値T1を下回る場合(ステップS13の結果がYESの場合)、ステップS14においてバルブ64が開放される。
図5に示すように、貯留室65a内のインクの圧力が第1閾値T1を下回ると、送液ポンプ63が駆動する。ステップS14では、送液ポンプ63が駆動されるのに合わせてバルブ64が開放される。これにより、インクの移動が可能となる。インクの圧力が第1閾値T1以上である場合(ステップS13の結果がNOの場合)、ステップS11が繰り返される。なお、ステップS14の後にもステップS11が繰り返される。
【0054】
送液ポンプ63に漏れが発生しておらず、モードがポンプ制御モードである場合、バルブ64は、ステップS11、S12、S13、およびS14を経てステップS11に戻るループで制御される。送液ポンプ63に漏れが発生していない場合、ステップS12の結果は基本的に「NO」とならない。このループにおいては、バルブ64は一度開放された後、開放され続ける。すなわち、本実施形態に係るプリンタ10は、バルブ64が開放されている状態において、圧力取得部105によって取得された圧力が第3閾値T3に到達するまではバルブ64を開放し続ける。よって、バルブ64の頻繁な開閉が抑制される。
【0055】
従来のインクジェットプリンタにおけるバルブの制御は、
図8に示すように、送液ポンプの制御と同期されている。
図7の「送液ポンプ駆動」を「バルブ開放」と、「送液ポンプ停止」を「バルブ閉鎖」と読み替えると
図8となる。
図8に示すように、従来のバルブの制御のステップS31では、センサがヒット状態かどうかが判定される。ステップS31において、センサがアンヒット状態である場合(ステップS31の結果がNOの場合)、ステップS31が繰り返される。インクの消費によってセンサがヒット状態となる(ステップS31の結果がYESとなると)、ステップS32においてバルブが開放される。
【0056】
ステップS33では、センサがアンヒット状態かどうかが判定される。ステップS33において、センサがヒット状態である場合(ステップS33の結果がNOの場合)、ステップS33が繰り返される。インクの供給によってセンサがアンヒット状態となると(ステップS33の結果がYESとなると)、ステップS34においてバルブが閉鎖される。ポンプ制御モードであるうちは、上記ステップS31~S34が繰り返される。その結果、バルブの開閉が繰り返される。従来のインクジェットプリンタでは、このようにバルブが頻繁に開閉され、開閉の回数が増えるため、バルブの寿命が短くなりやすかった。それに対し、本実施形態に係るプリンタ10では、上記したように、バルブ64の頻繁な開閉が抑制されている。そのため、バルブ64の寿命を長くすることができる。
【0057】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10によって奏することができる作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係るプリンタ10は、インクが収容されたインクカートリッジ61と、インクを吐出するインクヘッド50と、インクカートリッジ61とインクヘッド50とを接続するインク流路62と、インク流路62に設けられ、駆動時にはインクカートリッジ61からインクヘッド50に向かう方向にインクを送る送液ポンプ63と、インク流路62に設けられ、インク流路62を開放または閉鎖するバルブ64と、インクが一時的に貯留される貯留室65aを備え、インク流路62のうち送液ポンプ63およびバルブ64よりもインクの送り方向下流に設けられたダンパ65と、貯留室65a内のインクの圧力を測定する圧力センサ66と、インクヘッド50、送液ポンプ63、バルブ64、および圧力センサ66に接続された制御装置100と、を備えている。制御装置100は、圧力取得部105と、送液制御部106と、バルブ制御部107と、を備えている。圧力取得部105は、貯留室65a内のインクの圧力を圧力センサ66から取得する。送液制御部106は、圧力取得部105によって取得された圧力が予め定められた第1閾値T1を下回ると送液ポンプ63を駆動し、第1閾値T1よりも大きい第2閾値T2に到達すると送液ポンプ63を停止する。バルブ制御部107は、バルブ64が開放されている状態において、圧力取得部105によって取得された圧力が第2閾値T2よりも大きい第3閾値T3に到達するまではバルブ64を開放し続け、第3閾値T3を越えるとバルブ64を閉鎖する。
【0059】
かかるプリンタ10によれば、上記したように、バルブ64の頻繁な開閉を抑制することができる。かつ、送液ポンプ63に漏れが発生するなどしてインクの圧力が第3閾値T3を越えた場合には、バルブ64を閉鎖することにより、インクヘッド50からのインク漏れを抑制することができる。
【0060】
本実施形態では、第3閾値T3は、貯留室65a内のインクの圧力によってインクヘッド50からインクが漏出する圧力よりも小さく設定されている。かかるプリンタ10によれば、インクヘッド50からのインク漏れを確実に防止することができる。なお、インクヘッド50からインクが漏出し得る程度の圧力に第3閾値T3が設定されていても、バルブ64が閉鎖されるため、少なくとも、インクヘッド50からのインクの漏出量を少量に抑えることが可能である。
【0061】
本実施形態では、バルブ制御部107は、バルブ64が開放されている状態からバルブ64を閉鎖した後、圧力取得部105によって取得された圧力が第1閾値T1を下回るとバルブ64を開放するように構成されている。かかる制御によれば、バルブ64を開閉する頻度をさらに少なくすることができる。例えば、バルブ64が開放されている状態からバルブ64を閉鎖した後、圧力取得部105によって取得された圧力が第3閾値T3を下回るとバルブ64を開放するように構成することも可能であるが、この場合は、本実施形態よりもバルブ64の開閉頻度が高くなり得る。バルブ64が閉鎖される場合、送液ポンプ63の漏れが疑われる。送液ポンプ63が漏れている場合に、インクの圧力が第3閾値T3を下回った時点でバルブ64を開放すると、インクの圧力がすぐに第3閾値T3を越える可能性がある。そうすると、バルブ64の開閉頻度が高くなる。ただし、送液ポンプ63を駆動するときにはバルブ64を開放する必要があるため、バルブ64を閉鎖した後にバルブ64を開放する圧力の閾値は、第1閾値T1が好適である。
【0062】
本実施形態では、制御装置100は、圧力取得部105によって取得された圧力に応じて送液ポンプ63が駆動または停止されるポンプ制御モードと、送液ポンプ63が停止され続けるポンプ停止モードとが登録されたモード登録部108を備えている。バルブ制御部107は、ポンプ停止モードではバルブ64を閉鎖するように構成されている。ポンプ停止モードでバルブ64を閉鎖することにより、ポンプ停止モードにおけるインクヘッド50からのインク漏れをより確実に防止することができる。ポンプ停止モードにおいても、インクの圧力が第3閾値T3を越えるまでバルブ64を開放し続けることは可能であり、それでも、送液ポンプ63が漏れた場合のインクヘッド50からのインク漏れを抑制することはできる。しかし、ポンプ停止モードではインクを移動させる必要がないためバルブ64を開放する必要がなく、バルブ64を閉鎖した方がより確実にインク漏れを防止できる。
【0063】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。
【0064】
例えば、上記実施形態では、インク流路62は、インクカートリッジ61とインクヘッド50とを単純に接続していたが、例えば、インク成分の沈降を防ぐための循環流路、気泡分離装置など、他の構成をさらに備えていてもよい。インク供給システムの構成は、上記したものに限定されない。
【0065】
上記実施形態では、圧力センサ66は、インクの圧力を連続的に測定可能なセンサであったが、それには限定されない。圧力センサは、例えば、インクの圧力が閾値を越えているかどうかをそれぞれ検出する複数の検出装置を備えたセンサであってもよい。
【0066】
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0067】
10 インクジェットプリンタ
50 インクヘッド
60 インク供給システム
61 インクカートリッジ(インク容器)
62 インク流路
63 送液ポンプ
64 バルブ
65 ダンパ(中間容器)
65a 貯留室
66 圧力センサ
100 制御装置
105 圧力取得部
106 送液制御部
107 バルブ制御部
108 モード登録部
T1 第1閾値
T2 第2閾値
T3 第3閾値