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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007921
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】歩行車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109331
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和幸
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046CC01
4C046DD08
4C046DD26
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD46
4C046FF02
(57)【要約】
【課題】脚部開閉時のレバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープとによる保持力低下が発生しないレバー構造を備える歩行車を提供すること。
【解決手段】固定フレームである第1フレーム20と、可動フレームである第2フレーム22と、がスライドにより開閉可能に連結されて成る脚部10を備える歩行車1であって、前記第1フレーム20に設けられた第1部材と、前記第2フレームに設けられた第2部材と、が当接することで、前記第2フレーム22の移動が規制されて開脚状態または閉脚状態が保持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレームである第1フレームと、可動フレームである第2フレームと、がスライドにより開閉可能に連結されて成る脚部を備える歩行車であって、
前記第1フレームに設けられた第1部材と、前記第2フレームに設けられた第2部材と、が当接することで、前記第2フレームの移動が規制されて開脚状態または閉脚状態が保持されること
を特徴とする歩行車。
【請求項2】
前記脚部が開脚状態にあるときは、前記第1部材の下端部と前記第2部材の上端部とが当接することで、スライドによる閉脚が規制され、
前記脚部が閉脚状態にあるときは、前記第1部材の上端部と前記第2部材の下端部とが当接することで、スライドによる開脚が規制されること
を特徴とする請求項1記載の歩行車。
【請求項3】
前記第1フレームと前記第2フレームとの一方に設けられる前輪キャスタ、および、他方に設けられる後輪キャスタと、
前記第1フレームに取り付けられるハンドル部と、
前記第1フレームの外周面において径方向に突設された前記第1部材としてのスライドストッパと、
前記第1フレームに対してスライド可能に嵌設され、前記第2フレームの上端に回動可能に固定されるスライドリンクと、
前記第1フレームに対して係脱可能な係止部を有し、前記スライドリンクに回動可能に固定される前記第2部材としての脚開閉レバーと、を備え、
前記脚部が開脚状態にあるときは、前記スライドストッパよりも下側に前記係止部が係合されるように構成され、前記係止部の上端部が前記スライドストッパの下端部に当接することで、スライドによる閉脚が規制され、
前記脚部が閉脚状態にあるときは、前記スライドストッパよりも上側に前記係止部が係合されるように構成され、前記係止部の下端部が前記スライドストッパの上端部に当接することでスライドによる開脚が規制される構成であること
を特徴とする請求項1または2記載の歩行車。
【請求項4】
前記脚開閉レバーの前記係止部は、前記下端部の周方向長さが相対的に短く、前記上端部の周方向長さが相対的に長く形成されていると共に、前記下端部の周方向の両端位置と前記上端部の周方向の両端位置とをそれぞれ結ぶ側縁部が、段差のない滑らかな直線もしくは曲線状に形成されていること
を特徴とする請求項3記載の歩行車。
【請求項5】
前記第1フレームと前記第2フレームとが最も接近した閉脚状態にあるとき、前記係止部の前記下端部と前記スライドストッパの前記上端部との間に遊びが生じるように構成されていること
を特徴とする請求項3記載の歩行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳みが可能な歩行車に関する。
【背景技術】
【0002】
老人や身体の不自由な人等の歩行を補助する歩行車のうち、折畳みが可能なものが知られている(特許文献1:意匠登録第1444318号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1444318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示される歩行車は、前脚フレームと後脚フレームと、が前脚フレームに沿ってスライド可能な連結部材によって開閉(すなわち、展開・折畳み)可能に連結されている。この連結部材は、図7に示すように、樹脂製(PA6)のスライドリンク104と、同じく樹脂製(PA6/GF)の脚開閉レバー106とを備え、脚開閉レバー106のカム部106Aによってスライドリンク104の切り欠き部104Aを変形させ、その弾性力による摩擦力を利用してスライドリンク104のスライドを規制することで、脚部の開閉を保持することができる。
【0005】
しかし、この構造においては、新品時はカム機構が機能するものの、長期間使用すると切り欠き部104Aとカム部106Aとが摩耗し、保持力が低下するという課題があった。また、脚開閉レバー106をロックした状態で常置するとスライドリンク104にクリープが生じ、保持力が低下するという課題があった。これらの課題に対しては、樹脂の弾性力を利用して前脚フレーム100と後脚フレーム102との開閉を保持する機構であることから、剛性の高い材料に代替するというアプローチは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、脚部開閉時のレバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープとによる保持力低下が発生しないレバー構造を備える歩行車を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係る歩行車は、固定フレームである第1フレームと、可動フレームである第2フレームと、がスライドにより開閉可能に連結されて成る脚部を備える歩行車であって、前記第1フレームに設けられた第1部材と、前記第2フレームに設けられた第2部材と、が当接することで、前記第2フレームの移動が規制されて開脚状態または閉脚状態が保持されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、開閉の保持は、第1部材と第2部材との当接により行うため、レバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープによる保持力低下を防止することができる。
【0010】
また、前記脚部が開脚状態にあるときは、前記第1部材の下端部と前記第2部材の上端部とが当接することで、スライドによる閉脚が規制され、前記脚部が閉脚状態にあるときは、前記第1部材の上端部と前記第2部材の下端部とが当接することで、スライドによる開脚が規制されることを特徴とする。
【0011】
また、前記第1フレームと前記第2フレームとの一方に設けられる前輪キャスタ、および、他方に設けられる後輪キャスタと、前記第1フレームに取り付けられるハンドル部と、前記第1フレームの外周面において径方向に突設された前記第1部材としてのスライドストッパと、前記第1フレームに対してスライド可能に嵌設され、前記第2フレームの上端に回動可能に固定されるスライドリンクと、前記第1フレームに対して係脱可能な係止部を有し、前記スライドリンクに回動可能に固定される前記第2部材としての脚開閉レバーと、を備え、前記脚部が開脚状態にあるときは、前記スライドストッパよりも下側に前記係止部が係合されるように構成され、前記係止部の上端部が前記スライドストッパの下端部に当接することで、スライドによる閉脚が規制され、前記脚部が閉脚状態にあるときは、前記スライドストッパよりも上側に前記係止部が係合されるように構成され、前記係止部の下端部が前記スライドストッパの上端部に当接することでスライドによる開脚が規制される構成であることを特徴とする。これによれば、脚開閉レバーには、第1フレームに係合・離脱する時点で弾性変形させる応力が作用するが、開閉の保持は上下端部の当接により行うため、レバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープによる保持力低下を防止することができる。また、スライドリンクは、第1フレームと第2フレームとを連結する機能に限定され、レバー操作による押圧がなくなり、切り欠き部の形成も不要になるため、スライドリンクの耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、前記脚開閉レバーの前記係止部は、前記下端部の周方向長さが相対的に短く、前記上端部の周方向長さが相対的に長く形成されていると共に、前記下端部の周方向の両端位置と前記上端部の周方向の両端位置とをそれぞれ結ぶ側縁部が、段差のない滑らかな直線もしくは曲線状に形成されていることを特徴とする。これによれば、誤操作により係止部がスライドストッパの中間位置に掛かった状態でハンドルに荷重が加わった場合においても、脚開閉レバーがスライドストッパを乗り越え、スライドストッパよりも下側の第1フレームに係合されて開脚状態となるため、安全側に作用させることができる。
【0013】
また、前記第1フレームと前記第2フレームとが最も接近した閉脚状態にあるとき、前記係止部の前記下端部と前記スライドストッパの前記上端部との間に遊びが生じるように構成されていることを特徴とする。これによれば、閉脚状態に幅を持たせることで、力の弱い使用者でも容易に閉脚操作を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脚部開閉時のレバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープとによる保持力低下が発生しないレバー構造を備える歩行車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る歩行車の開脚状態の例を示す側面図である。
図2図1の歩行車の閉脚状態の例を示す側面図である。
図3図1の第1フレームと第2フレームとの連結部分の拡大図である。
図4図2の第1フレームと第2フレームとの連結部分の拡大図である。
図5図1の歩行車のスライドリンクの例を示す斜視図である。
図6図1の歩行車の脚開閉レバーの例を示す斜視図である。
図7】従来の歩行車の前脚・後脚フレームの連結部材の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の実施形態に係る歩行車1の例を示す側面図である。また、図2は、歩行車1の閉脚状態の例を示す側面図である。また、図3は、図1の第1フレーム20と第2フレーム22との連結部分の拡大図である。また、図4は、図2の第1フレーム20と第2フレーム22との連結部分の拡大図である。また、図5(a)は、スライドリンク24の例を示す前方上方からの斜視図であり、図5(b)は、その後方上方からの斜視図である。また、図6(a)は、脚開閉レバー26の例を示す前方上方からの斜視図であり、図6(b)は、その後方上方からの斜視図である。さらに、図7は、従来の歩行車の前脚・後脚フレームの連結部材の例を示す側面図である。なお、説明の便宜上、図中において矢印により歩行車1の前後、左右および上下方向を示している。また、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
この歩行車1は、開閉式(すなわち、展開・折畳み可能な構成)の脚部10を備え、開脚状態において、老人や身体の不自由な人等の歩行を補助するための装置である。
【0018】
本実施形態において、歩行車1は、図1および図2に示すように、地面上に自立する脚部10と、脚部10の上方に設けられたハンドル部12と、を備えている。
【0019】
脚部10は、固定フレームである第1フレーム20と、可動フレームである第2フレーム22と、を備えている。第1フレーム20と第2フレーム22とは、スライドリンク24を介して連結されており、スライドリンク24に取り付けられた脚開閉レバー26によって脚部10の開閉が保持される。
【0020】
先ず、第1フレーム20は、一例として、正面視U字状になるように折り曲げられて形成されたU字パイプ30と、U字パイプ30の左右両側の縦パイプ部30A同士を水平に連結する座部パイプ32と、を備えている。U字パイプ30と座部パイプ32とは、溶接等により一体に形成されており、当該連結箇所よりも上方の外周面において径方向に突設されたスライドストッパ34を備えている。U字パイプ30の上端には、ハンドルフレームリンク36が嵌合されており、ハンドルフレームリンク36に穿設された止め孔の位置に重なるように止め孔が穿設されている(いずれも不図示)。また、U字パイプ30の下部には、前輪キャスタ接続部材42を介して旋回式の前輪キャスタ40が取り付けられている。
【0021】
また、第2フレーム22は、左右両側に配置された縦パイプ44と、左右両側の縦パイプ44同士を連結する座部パイプ46と、を備えている。縦パイプ44と座部パイプ46とは、溶接等により一体に形成されている。縦パイプ44の上端には、スライドリンク24との連結部45が形成されており、縦パイプ44の下部には、固定式の後輪キャスタ48が取り付けられている。
【0022】
なお、第1フレーム20に対して後輪キャスタ48を取り付け、第2フレーム22に対して前輪キャスタ40を取り付け、ハンドル部12を逆向きに突設させる構成としてもよい。
【0023】
上記したように、第1フレーム20と第2フレーム22とは、スライドリンク24を介して連結されている。詳細には、図3および図4に示すように、スライドリンク24のスライド部52が縦パイプ部30Aに対してスライド可能に嵌設され(さらに詳細には、ハンドルフレームリンク36の下端からスライドストッパ34の上端部34aまでの間に嵌設される)、スライドリンク24の連結部54が縦パイプ44の上端に形成された連結部45に回動可能に固定されている。また、スライドリンク24には、脚開閉レバー26が回動可能に固定されており(連結部56と連結部60とによる)、脚開閉レバー26は、縦パイプ部30Aに対して係脱可能な係止部58を有している。
【0024】
また、第1フレーム20と第2フレーム22とには、リンクフレーム50が架設されている。リンクフレーム50の前端は、前輪キャスタ接続部材42に、リンクフレーム50の後端は、縦パイプ44にそれぞれ回動可能に固定されており、脚部10の開閉に連動して展開・折畳みがなされる。
【0025】
ここで、脚部10の開閉操作について説明する。開脚状態から閉脚状態にする場合は、縦パイプ部30Aに係合された脚開閉レバー26を離脱(アンロック)し、スライドリンク24の上端がハンドルフレームリンク36の下端に当接するまで座部パイプ46を引き上げ、再度脚開閉レバー26を縦パイプ部30Aに係合(ロック)する、という操作を行う。また、追加操作として、上記操作を行った後、座部パイプ32に取り付けられた脚固定ベルト(不図示)を座部パイプ46の下側に通し、折り返して係止することで、第1フレーム20と第2フレーム22とを拘持することができる。これによれば、脚開閉レバー26の係合が不十分であった場合においても、閉脚状態を保持することができる。脚固定ベルトとしては、ピン式やサイドリリースバックル式等でもよいが、着脱が容易な面ファスナーから成るものが好ましい。閉脚状態から開脚状態にする場合は、上記操作を逆手順で行えばよい。
【0026】
なお、ここでいう「開脚状態」とは、図3に示すように、スライドストッパ34よりも下側に脚開閉レバー26の係止部58が係合され、係止部58の上端部58aがスライドストッパ34の下端部34bに当接することでスライドによる閉脚が規制(ロック)される状態を指している。また、「閉脚状態」とは、図4に示すように、スライドストッパ34よりも上側に脚開閉レバー26の係止部58が係合され、係止部58の下端部58bがスライドストッパ34の上端部34aに当接することでスライドによる開脚が規制(ロック)される状態を指している。
【0027】
すなわち、スライドストッパ34の端部(上端部34a、下端部34b)に対して脚開閉レバー26の係止部58の端部(下端部58b、上端部58a)を当接させることで脚部10の開閉を保持(規制)する構成である。これによれば、レバー操作によって樹脂を変形させることで開閉を保持していた従来技術とは異なり、脚開閉レバー26(係止部58)には、縦パイプ部30Aに係合・離脱する時点で弾性変形させる応力が作用するが、開閉の保持は端部(上端部58a、下端部58b)の当接により行うため、レバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープによる保持力低下を防止することができる。また、スライドリンク24は、第1フレーム20と第2フレーム22とを連結する機能に限定され、レバー操作による押圧がなくなり、切り欠き部の形成も不要になるため、スライドリンク24の耐久性を向上させることができる。
【0028】
また、第1フレーム20と第2フレーム22とが最も接近した閉脚状態にあるとき、係止部58の下端部58bとスライドストッパ34の上端部34aとの間に遊びが生じるように構成されている。これによれば、閉脚状態に幅を持たせることで、座部パイプ46(第2フレーム22)をハンドルフレームリンク36の下端に当接するまで引き上げる必要がなくなり、老人を始めとする力の弱い使用者でも容易に閉脚操作を行うことができる。
【0029】
スライドリンク24と脚開閉レバー26とは、材料強度が高く、弾性力のある樹脂素材を用いて形成されることが好ましく、一例として、POM(ポリアセタール)が挙げられる。POMは、通常の樹脂素材と比較して機械的強度に優れており、耐摩耗性、耐クリープ性、良摺動性を有することから、本実施形態においては特に好適である。また、樹脂量を削減するために、一例として、図6(b)に示すように、肉盗み部62を形成してもよい。
【0030】
また、脚開閉レバー26の係止部58は、図6(b)に示すように、下端部58bの周方向長さが相対的に短く、上端部58aの周方向長さが相対的に長く形成されており、下端部58bの周方向の両端位置と上端部58aの周方向の両端位置とをそれぞれ結ぶ側縁部58cが、段差のない滑らかな直線もしくは曲線状に形成されている。これによれば、誤操作により係止部58がスライドストッパ34の中間位置に掛かった状態でハンドル部12に荷重が加わった場合においても、係止部58がスライドストッパ34を乗り越え、スライドストッパ34よりも下側の縦パイプ部30Aに係合されることで開脚状態となり、安全側に作用させることができる。
【0031】
ちなみに、座部パイプ32には、座面64が回動可能に取り付けられている。座面64は、開脚状態において、人が着座する椅子として使用することができ、座面64を水平にする(後側へ倒す)ことで、座面64の裏面に座部パイプ46が当接し、前後に離間した二本の座部パイプ32、46によって、使用者を確実に支持することができる。座面64は、座り心地を良くするために、使用者の臀部と大腿部との形状に沿うように浅い凹状に形成されていることが好ましい。座面64の材質は特に限定されず、全面が樹脂製のもの、硬質な芯材にクッションを貼り付けたもの、芯材とクッションとを張り地で覆ったもの等とすることができる。
【0032】
また、座面64の下方には、収納バッグ66が取り付けられている。収納バッグ66は、上方に開口されており、取り付けベルト(不図示)によって座部パイプ32、46に固定されている。取り付けベルトとしては、ピン式やサイドリリースバックル式等でもよいが、収納バッグ66を取り外して持ち運ぶことを考慮すると、着脱が容易な面ファスナーから成るものが好ましい。なお、本実施形態における脚部10の開閉機構によれば、収納バッグ66を付けた状態でも閉脚することできる。
【0033】
ハンドル部12は、第1フレーム20の上方に連結された左右両側のハンドルフレーム70と、ハンドルフレーム70の上端(後端)の把持部72と、ハンドルフレーム70に取り付けられたブレーキレバー74と、左右両側のハンドルフレーム70同士を架設する背凭れベルト76と、を備えている。
【0034】
ハンドルフレーム70は、一本のパイプが略L字状に折り曲げられて形成されており、第1フレーム20のU字パイプ30の内径よりも若干小さい外径を有し、縦パイプ部30Aの内部をスライド可能に連結されている。ハンドルフレーム70には、ハンドル高さを調節するための止め孔80が複数穿設されており、いずれかの止め孔80と、ハンドルフレームリンク36に穿設された止め孔と、縦パイプ部30Aに穿設された止め孔と、に高さ調節ネジ38を貫通させることでハンドル高さを固定することができる。この構成によれば、高さ調節ネジ38を取り外すことでハンドルフレーム70を昇降させることができ、任意の止め孔80に固定することで使用者に合ったハンドル高さに設定することができる。また、止め孔80は段階的に穿設されているため、左右異なる高さの止め孔80に固定した場合においても一見して判別することができる。さらに、歩行中の振動等により高さ調節ネジ38が緩んだ場合においても、ハンドルフレーム70が落ち込むことがないため、高い安全性を得ることができる。
【0035】
把持部72は、人が把持して歩行車1を操作する部分であり、ハンドルフレーム70の上端(後端)にグリップ82が嵌合されている。グリップ82としては、歩行車の役割上、人の手の形に合わせた所謂エルゴノミクスデザインのものが好ましい。これによれば、把持部72を握ることで手との密着感が得られるため、快適な操作性とすることができる。
【0036】
ブレーキレバー74は、把持部72の下方に位置するようにハンドルフレーム70に取り付けられている。ブレーキレバー74の前端には、ブレーキワイヤ84が取り付けられており、ブレーキワイヤ84の他端には、後輪キャスタ48に設けられたブレーキ機構(不図示)が接続されており、ブレーキレバー74を把持部72側へ引き上げることでブレーキが掛かる構成となっている。また、ブレーキレバー74を下側に押し下げることで後輪キャスタ48に設けられたロック機構(不図示)が作動し、後輪キャスタ48の回転をロックすることができる。
【0037】
背凭れベルト76は、左右両側のハンドルフレーム70に嵌設され、前方に向けて凸となるように張り渡されている。これによれば、使用者が座面64に腰掛けたときに背中を凭れさせることができる。背凭れベルト76の両端部には、ブレーキワイヤ84を保持するためのブレーキワイヤ保持部86が設けられている。
【0038】
以上、説明した通り、本発明によれば、脚部開閉時のレバー操作による摺動摩耗と樹脂のクリープとによる保持力低下が発生しないレバー構造を備える歩行車を提供することが可能である。
【0039】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 歩行車
10 脚部
12 ハンドル部
20 第1フレーム
22 第2フレーム
24 スライドリンク
26 脚開閉レバー
34 スライドストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7