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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079220
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】積層材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 21/04 20060101AFI20240604BHJP
   B27D 1/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B32B21/04
B27D1/04 G
B27D1/04 A
B27D1/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192035
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】519025895
【氏名又は名称】株式会社上川
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】星野 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 文彦
【テーマコード(参考)】
2B200
4F100
【Fターム(参考)】
2B200AA01
2B200AA07
2B200BA02
2B200BA11
2B200BB15
2B200DA04
2B200DA27
2B200EB06
4F100AK01A
4F100AP01B
4F100BA02
4F100DA20
4F100DG01A
4F100DG10A
4F100EH01
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ28
4F100EJ34A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100GB81
4F100HB00A
4F100JB16A
4F100JL16A
(57)【要約】
【課題】強度を高めることができる積層材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の板材を積層して構成された積層材であって、複数の板材には、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造された第1の板材11と、木製の第2の板材12~15と、が含まれており、第1の板材11および第2の板材12~15は、相互に接着されており、かつ、加熱されながら積層方向に加圧されており、第1の板材11および第2の板材12~15の積層方向に屈曲していることを特徴とする積層材10。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板材を積層して構成された積層材であって、
前記複数の板材には、
廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造された第1の板材と、
木製の第2の板材と、が含まれており、
前記第1の板材および第2の板材は、相互に接着されており、かつ、加熱されながら積層方向に加圧されており、
前記第1の板材および第2の板材の積層方向に屈曲していることを特徴とする積層材。
【請求項2】
前記積層材を構成する前記第1の板材は、粉砕することにより、前記原料として再利用可能であることを特徴とする請求項1に記載の積層材。
【請求項3】
前記積層材を構成する前記第1の板材の表面には、前記廃棄された紙製材料および前記廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とにより形成された模様が露出していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層材。
【請求項4】
複数の板材を積層して積層材を製造する積層材の製造方法であって、
廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造された第1の板材と、
木製の第2の板材と、を準備し、
前記第1の板材および第2の板材を相互に接着して積層する第1の工程と、
前記第1の工程により相互に接着して積層された前記第1の板材および第2の板材を加熱しながら積層方向に加圧するとともに、前記第1の板材および第2の板材の積層方向に屈曲させる第2の工程と、
を有することを特徴とする積層材の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程では、
前記第1の板材に含まれている前記熱可塑性樹脂製材料の軟化点以上の温度にて前記第1の板材を加熱することを特徴とする請求項4に記載の積層材の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程では、
熱硬化性接着剤によって前記第1の板材および第2の板材を相互に接着して積層し、
前記第2の工程では、
前記熱硬化性接着剤が硬化する温度以上にて前記第1の板材および第2の板材を加熱することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の積層材の製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程では、
前記第1の板材の接着面を粗面化した後に前記第1の板材および第2の板材を相互に接着して積層することを特徴とする請求項4に記載の積層材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板材を積層して構成された積層材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の積層材の製造方法として、特許文献1に記載の椅子の製造方法が知られている。その製造方法とは、隣接する木製の単板間に接着剤を介在させて積層した積層材を上側金型と下側金型との間に配置し、その積層材を加熱しながらプレス成形するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-157484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来の製造方法に用いる積層材は、複数の木製の単板を積層したものであるため、合成樹脂製の板よりも曲げ強度が低いという問題がある。
ところで、人類が2030年までに達成すべき具体的な目標として、17の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)が定められている。その中の12番目の目標として「つくる責任つかう責任」という目標があり、その中で「ゴミを減らし、再利用し、資源化すること」という目標が定められている。
そこで、企業や一般家庭から毎日大量に廃棄されているプラスチックゴミ、紙ゴミ、繊維クズを再利用することにより、上記の目標を達成することが課題となっている。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の諸問題を解決するために創出されたものであって、強度を高めることができる積層材およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本願発明は、プラスチックゴミ、紙ゴミ、繊維クズを再利用することにより、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる積層材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
上述した目的を達成するため、本願の第1発明に係る積層材は、
複数の板材を積層して構成された積層材(10:図4)であって、
複数の板材には、
廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造された第1の板材(11)と、
木製の第2の板材(12~15)と、が含まれており、
第1の板材(11)および第2の板材(12~15)は、相互に接着されており、かつ、加熱されながら積層方向に加圧されており、
第1の板材(11)および第2の板材(12~15)の積層方向に屈曲していることを特徴とする。
【0007】
(第1発明の効果)
本願の第1発明によれば、積層材を構成する第1の板材が、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、木製の単板を積層して構成された積層材よりも曲げ強度を高めることができる。
しかも、積層材を構成する第1の板材が、廃棄された紙製材料および繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、廃棄された紙製材料および繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とを再利用することができる。
従って、積層材を製造する者として、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる。
【0008】
(第2発明)
前述した目的を達成するため、本願の第2発明に係る積層材は、前述した第1発明に係る積層材(10:図4)において、
積層材(10)を構成する第1の板材(11)は、粉砕することにより原料として再利用可能であることを特徴とする。
【0009】
(第2発明の効果)
本願の第2発明によれば、積層材を構成する第1の板材は、粉砕することにより原料として再利用可能であるため、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料との再利用を継続することができるので、積層材を製造する者として持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる。
【0010】
(第3発明)
前述した目的を達成するため、本願の第3発明に係る積層材は、前述した第1発明または第2発明に係る積層材(10:図4)において、
積層材(10)を構成する第1の板材(11)の表面には、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とから形成された模様(図2)が露出していることを特徴とする。
【0011】
(第3発明の効果)
本願の第3発明によれば、積層材を構成する第1の板材の表面には、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とから形成された模様が露出しているため、表面に木製の単板の模様が露出しているものとは異なるデザインを施すことができる。
しかも、第1の板材を形成する紙製材料および繊維質材料の少なくとも一方と、熱可塑性樹脂製材料とは不規則に配置されており、第1の板材ごとに異なる模様が露出するため、その積層材を使った製品を製造すれば、唯一無二のデザインの製品を製造することができる。
【0012】
(第4発明)
前述した目的を達成するため、本願の第4発明に係る積層材の製造方法は、
複数の板材を積層して積層材を製造する積層材(10:図4)の製造方法であって、
廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造された第1の板材(11:図4)と、
木製の第2の板材(12~15:図4)と、を準備し、
第1の板材(11)および第2の板材(12~15)を相互に接着して積層する第1の工程(工程2,工程3:図7)と、
第1の工程(工程2,工程3)により相互に接着して積層された第1の板材(11)および第2の板材(12~15)を加熱しながら積層方向に加圧するとともに、第1の板材(11)および第2の板材(12~15)の積層方向に屈曲させる第2の工程(工程4:図7)と、
を有することを特徴とする。
【0013】
(第4発明の効果)
本願の第4発明によれば、積層材を構成する第1の板材が、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、木製の単板を積層して構成された積層材よりも曲げ強度を高めることができる。
しかも、積層材を構成する第1の板材が、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とが混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とを再利用することができる。
従って、積層材を製造する者として、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる。
【0014】
(第5発明)
前述した目的を達成するため、本願の第5発明に係る積層材の製造方法は、前述した第4発明に係る積層材の製造方法において、
第2の工程(工程4:図7)では、
第1の板材(11)に含まれている熱可塑性樹脂製材料の軟化点以上の温度にて第1の板材(11)を加熱することを特徴とする。
【0015】
(第5発明の効果)
本願の第5発明によれば、第1の板材に含まれている熱可塑性樹脂製材料の軟化点以上の温度にて第1の板材を加熱するため、第1の板材に含まれている熱可塑性樹脂製材料を少なくとも軟化させることができるので、第1の板材および第2の板材の積層方向に屈曲させたときに、第1の板材が割れ難くすることができる。
【0016】
(第6発明)
前述した目的を達成するため、本願の第6発明に係る積層材の製造方法は、前述した第4発明または第5発明に係る積層材の製造方法において、
第1の工程(工程2,工程3:図7)では、
熱硬化性接着剤によって第1の板材(11)および第2の板材(12~15)を相互に接着して積層し、
第2の工程(工程4:図7)では、
熱硬化性接着剤が硬化する温度以上の温度にて第1の板材(11)および第2の板材(12~15)を加熱することを特徴とする。
【0017】
(第6発明の効果)
本願の第6発明によれば、第1の板材および第2の板材を相互に接着した熱硬化性接着剤が硬化する温度以上の温度にて第1の板材および第2の板材を加熱することにより、熱硬化性接着剤を硬化させることができるため、積層材の強度を高めることができる。
【0018】
(第7発明)
前述した目的を達成するため、本願の第7発明に係る積層材の製造方法は、前述した第4発明に係る積層材の製造方法において、
第1の工程(工程2,工程3:図7)では、
第1の板材(11)の接着面を粗面化した後に第1の板材(11)および第2の板材(12~15)を相互に接着することを特徴とする。
【0019】
(第7発明の効果)
本願の第7発明によれば、第1の板材の接着面を粗面化した後に第1の板材および第2の板材を相互に接着するため、第1の板材の接着面における接着剤の浸透性を高めることができるので、第1の板材および第2の板材の接着強度を高めることができる。
従って、積層材の曲げ強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る積層材およびその製造方法によれば、強度を高めることができる積層材およびその製造方法を提供することができる。また、本願発明に係る積層材およびその製造方法によれば、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂製材料とを再利用することにより、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる積層材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の実施形態に係る積層材を使用した椅子の斜視図である。
図2図1において符号E2にて示す部分の拡大説明図である。
図3図1において符号E1にて示す部分の拡大説明図である。
図4】積層材の積層状体を示す説明図である。
図5】積層材の製造装置の正面説明図である。
図6図5に示す製造装置によって積層材が屈曲する様子を示す正面説明図である。
図7】積層材の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の実施形態に係る積層材およびその製造方法について図を参照しつつ説明する。
(椅子の構造)
図1は、本実施形態の積層材を使用した椅子の斜視図である。椅子1は、座板2と、背板3と、4つの脚4と、貫(ぬき)5,6と、2つの肘掛け7とを備えている。座板2および背板3は一体成形されており、略90度に屈曲した積層材10により成形されている。座板2の裏面には、座板2を貫5,6に固定するための固定部材(図示省略)が取付けられている。後方の左右の脚4,4は、後方の貫5によって連結されている。前方の左右の脚4(左の脚4は図に表れていない)は、前方の貫6によって連結されている。右側の肘掛け7は、右側の脚4,4の上端に取付けられており、左側の肘掛け7は、左側の脚4の上端に取付けられている。
【0023】
(積層材の構造)
次に、椅子1に使用されている積層材10の構造について図を参照しつつ説明する。
図4に示すように、積層材10は、第1の板材11の上に第2の板材12~15を順番に積層することにより構成されている。なお、図4では、各板材の積層状体を分かり易くするために各板材の厚さを実際の厚さよりも厚く描いてあり、積層材10の全長(図面における左右の長さ)は、実際の全長よりも短く描いてある。また、以下では、第1の板材11および第2の板材12~15に共通の事項を説明する場合は、単に板材ということがある。
【0024】
第1の板材11は、廃棄された熱可塑性樹脂製材料を粉砕したもの(以下、樹脂原料という)と、廃棄された紙製材料を細断したもの(以下、紙製原料という)とを圧縮および加熱することにより形成されている。
廃棄された熱可塑性樹脂製材料は、例えば、企業や一般家庭などで廃棄される熱可塑性樹脂製の容器、製品、部品、製品の製造過程において発生したカスなどであり、樹脂原料は、それらの少なくとも1種類以上を粉砕したものである。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)などである。また、廃棄された紙製材料は、例えば、企業や一般家庭などで廃棄される紙製容器、包装紙、印刷用紙などであり、紙製原料は、それらの少なくとも1種類以上を細断したものである。
図2に示すように、第1の板材11の表裏面には、混合された樹脂原料Rおよび紙製原料Pにより形成された模様が露出している。
【0025】
ところで、第1の板材11における樹脂原料Rおよび紙製原料Pの混合比において、樹脂原料Rの混合比が小さいと、製造過程において積層材10を屈曲させたときに、屈曲部分にヒビや割れが発生したり、強度が不足したりするという問題が発生するおそれがある。また、逆に、樹脂原料Rの混合比が大きいと、積層材10が重くなるし、樹脂原料Rが軟化点に達するまでの加熱時間が長くなるという問題が発生する。
そこで、本実施形態では、第1の板材11における樹脂原料Rおよび紙製原料Pの混合比として、樹脂原料Rが55~60%、紙製原料Pが35~40%とすることにより、上記の各問題が発生しないように創意工夫されている。
【0026】
第1の板材11は、樹脂原料Rおよび紙製原料Pを混合したものを圧縮成形機の型に詰め込み、それを加熱しながら圧縮することにより成形される。原料を加圧する圧力は、例えば、15kg/cm2である。また、加圧時に原料を加熱する温度は、樹脂原料である熱可塑性樹脂を使用して樹脂成形品を成形するときに必要な成形温度である。例えば、樹脂原料Rがポリプロピレンである場合は、200~300℃である。また、成形温度が異なる樹脂が混在している場合は、成形温度が最も高い樹脂の成形温度に設定し、各樹脂が溶融し、成形されるように制御する。
【0027】
第2の板材12~15は、木製の単板であり、例えば、ブナ、カバなどの広葉樹から製造することができる。第2の板材12~15は、それぞれ隣接する板材の木理が相互に交差(例えば、直交)するように積層されている。第1の板材11および第2の板材12~15は接着剤によって相互に接着されている。接着剤として、例えば、メラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤を使用することができる。また、図1に示すように、積層材10は、座板2と背板3との境界において屈曲している。詳しくは、図3に示すように、積層材10は、第1の板材11および第2の板材12~15の積層方向に屈曲角度θにて屈曲している。図示の例では、屈曲角度θは、略90度である。
【0028】
(積層材の製造装置)
次に、本実施形態に係る積層材10の製造装置について図を参照しつつ説明する。
図5および図6に示すように、製造装置60は、ベッド40と、このベッド40の上に配置された下型20と、この下型20の上面に設けられた電極21と、下型20と対向して配置された上型30と、この上型30の下面に設けられた電極31と、上型30を支持するスライド41と、このスライド41を昇降させるピストン50と、スライド41を昇降可能に支持する一対のスライドガイド42,42とを備えている。
【0029】
下型20および上型30は、平板状の積層材10を屈曲した形状に成形するための形状に形成されている。本実施形態では、下型20は凹形状に形成されており、上型30は凸形状に形成されている。また、下型20および上型30の屈曲角度θは、それぞれ略90度である。また、下型20の底部21aおよび上型30の凸部31aは、それぞれ曲面に形成されており、積層材10を屈曲角度θにて屈曲させたときに、屈曲部分が曲面を呈するように工夫されている。
ピストン50は、油圧式のシリンダ(図示省略)に挿入されており、油圧駆動によって進退する。また、電極21,31は、高周波発生装置(図示省略)と電気的接続されており、電極21,31によって挟まれた積層材10を高周波によって加熱する。
【0030】
(積層材の製造方法)
次に、積層材10の製造方法について図7を参照しつつ説明する。
先ず、第1の板材11および第2の板材12~15を準備する(工程1)。次に、第1の板材11および第2の板材12~15の各接着面に熱硬化性接着剤を塗布する(工程2)。このとき、第1の板材11のうち接着剤を塗布する接着面を粗面化し、熱硬化性接着剤が接着面から浸透し易い(接着面に乗り易い)ようにする。次に、第1の板材11の上に第2の板材12~15を順番に積層し、各板材を相互に接着し、積層材10を作成する(工程3)。
【0031】
次に、図5および図6に示すように、積層材10を製造装置60の下型20にセットし、電極21,31を通電させ、上型30を下降させ、積層材10の加熱、加圧および屈曲を行う(工程4)。このとき、積層材10が屈曲を開始したときに、上型30の下降速度を落とし、第1の板材11の屈曲部分に急激に応力が掛からないように注意する。積層材10を加熱および加圧している時間は、予め行った実験によって決定される。具体的には、各板材間に塗布された熱硬化性接着剤が硬化するために必要な時間であり、かつ、第1の板材11を形成している樹脂原料Rの温度が軟化点以上になるために必要な時間に決定される。なお、各板材間に塗布された熱硬化性接着剤が硬化するまでの間は、各板材間の熱可塑性接着剤はゲル状であるため、各板材間の摩擦が小さい。このため、積層材10が屈曲するときに各板材が積層方向とは異なる方向に僅かにずれることにより、各板材に掛かる応力を逃がすことができる。これにより、加圧による応力が屈曲箇所に集中しないようにすることができるので、屈曲途中で屈曲部分にヒビが入ったり、屈曲部分が割れたりしないようにすることができる。
【0032】
次に、上型30を上昇させ、積層材10を下型から取り出し、その取り出した積層材10を養生させる(工程5)。具体的には、積層材10を所定時間自然乾燥させる。このとき、積層材10は加熱および加圧を受けたことにより、各板材間に応力が発生しており、積層材10が積層方向および屈曲方向とは異なる方向に変形するおそれがある。このため、積層材10の周縁の所定箇所を所定の挾持部材(クランパー)によって挾持し、積層材10が変形しないように制御する。次に、積層材10を加工する(工程6)。例えば、NC工作機械を用いて積層材10を所定の形状に加工する。また、図1に示したように、積層材10を椅子1の座板2および背板3として使用する場合は、積層材10の角部を切削してR加工する。また、背板3となる部分に持ち手用の穴を加工する場合もある。さらに、背板3の左右の側面を内側に向けて円弧状に切削加工する場合もある。また、サンダーを用いて、積層材10の表裏面および端面を研削(粗面化)し、各研削面にウレタン塗装などを施す。
次に、積層材10を用いた製品を組み立てる(工程7)。例えば、図1に示したように、積層材10を用いた椅子1を組み立てる。工程2および工程3が本発明の第1の工程の一例であり、工程4が本発明の第2の工程の一例である。
【0033】
(実施形態の効果)
(1)上述した実施形態に係る積層材10およびその製造方法によれば、積層材10を構成する第1の板材11が、廃棄された熱可塑性樹脂製材料および廃棄された紙製材料が混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、木製の単板を積層して構成された積層材よりも強度を高めることができる。
しかも、積層材10を構成する第1の板材11が、廃棄された熱可塑性樹脂製材料および廃棄された紙製材料が混合された原料を圧縮および加熱することにより製造されているため、廃棄された熱可塑性樹脂製材料および廃棄された紙製材料を再利用することもできる。
【0034】
(2)また、前述した実施形態に係る積層材10によれば、積層材10を構成する第1の板材11は、粉砕することにより、第1の板材の原料として再利用可能であるため、廃棄された熱可塑性樹脂製材料および廃棄された紙製材料の再利用を継続することができるので、積層材10を製造する者として、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる。
【0035】
(3)さらに、前述した実施形態に係る積層材10によれば、積層材10を構成する第1の板材11の表面には、熱可塑性樹脂製材料および紙製材料から形成された模様が露出しているため、表面に木製の単板の模様が露出しているものとは異なるデザインを施すことができる。
しかも、第1の板材11を形成する熱可塑性樹脂製材料および紙製材料は不規則に配置されており、第1の板材11ごとに異なる模様が露出するため、その積層材10を使った製品を製造すれば、唯一無二のデザインの製品を製造することができる。
【0036】
(4)さらに、前述した実施形態に係る積層材10の製造方法によれば、第1の板材11に含まれている熱可塑性樹脂製材料の軟化点以上の温度にて第1の板材11を加熱するため、第1の板材11に含まれている熱可塑性樹脂製材料を少なくとも軟化させることができるので、第1の板材11および第2の板材12~15の積層方向に屈曲させたときに、第1の板材11が割れたりし難い。
【0037】
(5)さらに、前述した実施形態に係る積層材10の製造方法によれば、第1の板材11および第2の板材12~15を相互に接着した熱硬化性接着剤が硬化する温度以上の温度で第1の板材11および第2の板材12~15を加熱することにより、熱硬化性接着剤を硬化させることができるため、積層材10の強度を高めることができる。
【0038】
(6)さらに、前述した実施形態に係る積層材10の製造方法によれば、第1の板材11の接着面を粗面化した後に第1の板材11および第2の板材12を相互に接着するため、第1の板材11の接着面における接着剤の浸透性(接着剤の乗り易さ)を高めることができるので、第1の板材11および第2の板材12の接着強度を高めることができる。
従って、積層材10の強度を高めることができる。
【0039】
(7)上述したように、前述した実施形態に係る積層材10およびその製造方法によれば、強度を高めることができる積層材およびその製造方法を提供することができる。また、前述した実施形態に係る積層材10およびその製造方法によれば、廃棄された熱可塑性樹脂および廃棄された紙を再利用することにより、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる積層材およびその製造方法を提供することができる。
【0040】
(他の実施形態)
(1)前述した実施形態の積層材10は、片面のみに第1の板材11を配置したが、両面に第1の板材11を配置することもできる。また、第2の板材の中に第1の板材を配置することもできる。
(2)前述した実施形態では、積層材10の中央部分のみを屈曲させたが、下型20および上型30の形状を変更し、中央部分を含めて複数箇所を屈曲させることもできる。例えば、座板2(図1)の前端を下方に湾曲させることもできる。このように構成した椅子1を用いれば、椅子1に座った者の大腿部の裏が座板2の前端に当たらないようにすることができるため、座り心地を良くすることができる。また、背板3の上端を後方に湾曲させることもできる。
【0041】
(3)前述した実施形態では、第1の板材11における樹脂原料Rおよび紙製原料Pの混合比として、樹脂原料Rが55~60%であり、紙製原料Pが35~40%であることを例示したが、この混合比には限定されるものではなく、樹脂原料Rおよび紙製原料Pの種類や原料の粒度に応じて変更することができる。
(4)第1の板材11の原料として、廃棄された繊維質材料を用いることもできる。また、第1の板材の原料として、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の両方を用いることもできる。この第1の板材11を用いれば、廃棄された紙製材料および廃棄された繊維質材料の少なくとも一方と、廃棄された熱可塑性樹脂とを再利用することにより、持続可能な開発目標の中の12番目の目標を達成することができる積層材およびその製造方法を提供することができる。廃棄された繊維質材料とは、例えば、企業や一般家庭から廃棄された繊維クズ、あるいは、古着、古布および布きれなどを細断または繊維化したもの等であり、天然繊維であるか合成繊維であるかを問わない。
(5)第1の板材11および第2の板材12~15を加熱および加圧して積層材10を得るために必要な加圧時間、圧力、加熱温度および加熱時間などは、第1の板材11を構成する原料の混合比、熱可塑性樹脂の種類、各原料の粒度、各板材の厚さ、第2の板材12~15の種類、得ようとする積層材10の厚さなどに応じて変更することができる。
【0042】
(6)第1の板材11の原料としてガラス、磁器などを含めることもできる。さらに、熱硬化性樹脂を含めることもできる。
(7)前述した実施形態では、接着剤としてメラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤を用いたが、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂を水に分散(エマルション化)した水系接着剤(いわゆる白ボンド)などの溶剤型接着剤などを用いることもできる。この溶剤型接着剤を用いる場合は、工程4(図7)において、溶剤型接着剤に含まれる溶剤が蒸発して硬化する温度以上の温度で第1の板材11および第2の板材12~15を加熱する。
(8)本願発明に係る積層材は、椅子以外の製品、例えば、机、テーブル、棚、植木鉢、ショーケース、壁材、美術品、スケートボードなどのスポーツ用品、さらには、自動車などの車両の構造部分にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 椅子
2 座板
3 背板
10 積層材
11 第1の板材
12~15 第2の板材
20 下型
21 電極
30 上型
31 電極
50 ピストン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7