(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079236
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240604BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192065
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】常盤 歩夢
(72)【発明者】
【氏名】柏木 航平
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BA12
5H740BB01
5H740BB08
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA02
(57)【要約】
【課題】直列に接続された複数のスイッチング素子のスイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行うことができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数のスイッチ部と、複数のスイッチ部のそれぞれを駆動するための複数の駆動回路と、を有し、複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う主回路部と、主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、を備え、複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、複数の駆動回路のそれぞれは、複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられた複数の調整回路を有し、複数の調整回路のそれぞれは、複数の設定を有し、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを変化させることにより、複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングタイミングを調整できるようにする電力変換装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ部と、前記複数のスイッチ部のそれぞれを駆動するための複数の駆動回路と、を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う主回路部と、
前記複数のスイッチ部のそれぞれに対応する複数の制御信号を前記複数の駆動回路のそれぞれに送信し、前記複数のスイッチ部のスイッチングを制御することにより、前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有するとともに、前記一対の主端子間に電流を流すオン状態と、前記一対の主端子間の電流の流れを遮断するオフ状態と、を有し、前記一対の主端子間の電圧、及び前記制御端子の電圧に応じて、前記オン状態及び前記オフ状態を切り替え、
前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられた複数の調整回路を有し、
前記複数の調整回路のそれぞれは、前記制御装置から入力された前記制御信号を基に、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する複数の駆動信号を生成し、前記複数の駆動信号を前記複数のスイッチング素子の前記制御端子に入力することによって前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングを行うとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングのタイミングを前記制御信号に応じたタイミングよりも遅らせる遅れ時間を設定可能であり、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定を有し、前記複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて前記遅れ時間の長さを変化させることにより、前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングタイミングを調整できるようにする電力変換装置。
【請求項2】
前記複数の調整回路のそれぞれは、
複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子の接続状態を切り替える切替回路と、
前記切替回路を介して前記複数の抵抗素子のいずれかと接続されるコンデンサと、
を有し、
前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定は、前記複数の抵抗素子の複数の接続状態の設定であり、
前記調整回路は、前記複数の抵抗素子の接続状態を切り替え、前記複数の抵抗素子による合成抵抗値を変化させるとともに、前記合成抵抗値と前記コンデンサの静電容量値とによる時定数を変化させることにより、前記複数の抵抗素子の複数の接続状態の設定に応じて前記遅れ時間の長さを変更可能とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数の調整回路のそれぞれは、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定を切り替えるための操作部を有し、
前記操作部は、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定のそれぞれに対応する複数の操作位置を有し、前記複数の設定のうちのいずれか1つの設定を前記複数の操作位置によって任意に選択できるようにする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記複数の調整回路のそれぞれは、
対応する前記スイッチング素子の前記オフ状態から前記オン状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする第1調整部と、
対応する前記スイッチング素子の前記オン状態から前記オフ状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする第2調整部と、
を有する請求項1記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスイッチ部を有し、複数のスイッチ部のスイッチングによって電力の変換を行う電力変換装置がある。こうした電力変換装置において、複数のスイッチ部のそれぞれに直列に接続された複数のスイッチング素子を設けることが行われている。これにより、各スイッチング素子の耐圧の上昇を抑制しつつ、高電圧を出力することが可能となる。
【0003】
一方で、複数のスイッチング素子を直列に接続した電力変換装置では、各スイッチング素子の特性のバラツキなどにより、各スイッチング素子のスイッチングタイミングにバラツキが生じてしまう可能性がある。直列に接続された複数のスイッチング素子のスイッチングタイミングにバラツキが生じると、例えば、直列に接続された複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子のみに過大な電圧が印加され、そのスイッチング素子の故障の要因となってしまう恐れがある。
【0004】
このため、複数のスイッチング素子を直列に接続した電力変換装置において、各スイッチング素子のスイッチングタイミングの調整を行う調整回路を設けることが提案されている。各スイッチング素子は、制御端子を有し、制御端子に入力される駆動信号に応じてオン状態及びオフ状態を切り替える。調整回路は、例えば、多回転型のボリューム抵抗を有し、多回転型のボリューム抵抗の抵抗値の調整によってスイッチング素子に入力される駆動信号のタイミングを調整することにより、スイッチング素子のスイッチングタイミングを調整する。
【0005】
しかしながら、多回転型のボリューム抵抗を有する調整回路では、例えば、スイッチングタイミングの調整幅に対してボリューム抵抗のつまみをどの程度回転させればよいかが把握し難く、調整作業に時間がかかってしまう可能性がある。このため、複数のスイッチング素子を直列に接続した電力変換装置では、スイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行えるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、直列に接続された複数のスイッチング素子のスイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行うことができる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、複数のスイッチ部と、前記複数のスイッチ部のそれぞれを駆動するための複数の駆動回路と、を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う主回路部と、前記複数のスイッチ部のそれぞれに対応する複数の制御信号を前記複数の駆動回路のそれぞれに送信し、前記複数のスイッチ部のスイッチングを制御することにより、前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、を備え、前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有するとともに、前記一対の主端子間に電流を流すオン状態と、前記一対の主端子間の電流の流れを遮断するオフ状態と、を有し、前記一対の主端子間の電圧、及び前記制御端子の電圧に応じて、前記オン状態及び前記オフ状態を切り替え、前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられた複数の調整回路を有し、前記複数の調整回路のそれぞれは、前記制御装置から入力された前記制御信号を基に、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する複数の駆動信号を生成し、前記複数の駆動信号を前記複数のスイッチング素子の前記制御端子に入力することによって前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングを行うとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングのタイミングを前記制御信号に応じたタイミングよりも遅らせる遅れ時間を設定可能であり、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定を有し、前記複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて前記遅れ時間の長さを変化させることにより、前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングタイミングを調整できるようにする電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、直列に接続された複数のスイッチング素子のスイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行うことができる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
【
図2】実施形態に係るスイッチ部及び駆動回路を模式的に表すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る調整回路を模式的に表すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る調整回路の動作の一例を模式的に表す表である。
【
図5】実施形態に係る調整回路の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
【
図6】実施形態に係る調整回路の変形例を模式的に表すブロック図である。
【
図7】実施形態に係る調整回路の変形例を模式的に表すブロック図である。
【
図8】変形例の調整回路の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、主回路部12と、制御装置14と、を備える。
【0013】
主回路部12は、複数のスイッチ部21~26と、複数のスイッチ部21~26のそれぞれに対して逆並列に接続された複数の整流素子31~36と、複数のスイッチ部21~26のそれぞれに対して並列に接続された電荷蓄積素子40と、複数のスイッチ部21~26のそれぞれを駆動するための複数の駆動回路41~46と、を有する。
【0014】
主回路部12は、複数のスイッチ部21~26のスイッチングにより、電力の変換を行う。主回路部12は、例えば、三相ブリッジ接続された6つのスイッチ部21~26を有する。主回路部12は、例えば、三相2レベルインバータである。
【0015】
主回路部12では、各スイッチ部21~26の両端が、一対の直流端子d1、d2となり、スイッチ部21とスイッチ部22との接続点、スイッチ部23とスイッチ部24との接続点、及びスイッチ部25とスイッチ部26との接続点が、それぞれ3つの交流端子a1~a3となる。
【0016】
主回路部12は、各交流端子a1~a3を介して交流回路と接続される。交流回路は、例えば、交流の電力系統や交流負荷などである。各交流端子a1~a3は、例えば、図示を省略した遮断器や変圧器などを介して交流回路と接続される。また、主回路部12は、一対の直流端子d1、d2を介して直流回路と接続される。直流回路は、例えば、直流電源や直流負荷などである。主回路部12は、例えば、各スイッチ部21~26のスイッチングにより、直流から交流への変換及び交流から直流への変換の少なくとも一方を行う。
【0017】
各スイッチ部21~26は、例えば、一対の主端子を有する。また、各スイッチ部21~26は、オン状態と、オフ状態と、を有する。オン状態は、一対の主端子間に電流を流す状態である。オフ状態は、一対の主端子間の電流の流れを遮断する状態である。なお、オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、主回路部12の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。
【0018】
各整流素子31~36は、対応する各スイッチ部21~26の一対の主端子に対して逆並列に接続されている。各整流素子31~36の順方向は、各スイッチ部21~26の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。各整流素子31~36は、いわゆる還流ダイオードである。
【0019】
但し、主回路部12の構成は、上記に限定されるものではない。主回路部12は、例えば、単相2レベルインバータなどでもよい。交流電力は、三相交流電力に限ることなく、単相交流電力などでもよい。主回路部12は、例えば、3レベルインバータなどのマルチレベルインバータなどでもよい。主回路部12の構成は、複数のスイッチ部21~26のスイッチングにより、電力の変換を行うことが可能な任意の構成でよい。また、主回路部12による電力の変換は、直流電力から別の直流電力の変換、あるいは交流電力から別の交流電力への変換などでもよい。主回路部12による電力の変換は、電力を別の電力に変換する任意の変換でよい。
【0020】
制御装置14は、主回路部12による電力の変換の動作を制御する。制御装置14は、複数のスイッチ部21~26のそれぞれに対応する複数の制御信号を複数の駆動回路41~46のそれぞれに送信する。各駆動回路41~46は、制御装置14から入力された制御信号に基づいて、各スイッチ部21~26のオン状態及びオフ状態を切り替える。このように、制御装置14は、各駆動回路41~46に制御信号を送信し、各スイッチ部21~26のスイッチングを制御することにより、主回路部12による電力の変換を制御する。
【0021】
図2は、実施形態に係るスイッチ部及び駆動回路を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、スイッチ部21は、複数のスイッチング素子50と、複数のスナバ回路52と、を有する。駆動回路41は、複数の調整回路54を有する。なお、他のスイッチ部22~26の構成は、スイッチ部21の構成と実質的に同じであり、他の駆動回路42~46の構成は、駆動回路41の構成と実質的に同じであるから、これらについての詳細な説明は省略する。
【0022】
複数のスイッチング素子50は、直列に接続されている。複数のスイッチング素子50は、スイッチ部21の一対の主端子21a、21bの間に直列に接続される。これにより、主回路部12では、スイッチ部21~26の両端に印加される電圧を複数のスイッチング素子50で分担することができる。従って、複数のスイッチング素子50に高い耐圧が必要となることを抑制しつつ、比較的高い電圧の電力変換を行うことができる。
【0023】
複数のスイッチング素子50は、一対の主端子と、制御端子と、を有する。また、複数のスイッチング素子50は、オン状態と、オフ状態と、を有する。各スイッチ部21~26と同様に、オン状態は、一対の主端子間に電流を流す状態である。オフ状態は、一対の主端子間の電流の流れを遮断する状態である。オフ状態は、一対の主端子間に完全に電流が流れない状態に限ることなく、主回路部12の動作に影響の無い範囲の微弱な電流が一対の主端子間に流れる状態でもよい。各スイッチ部21~26のオン状態は、換言すれば、複数のスイッチング素子50の全てがオン状態になった状態である。各スイッチ部21~26のオフ状態は、換言すれば、複数のスイッチング素子50の少なくともいずれかがオフ状態になった状態である。
【0024】
複数のスイッチング素子50は、一対の主端子間の電圧、及び制御端子の電圧に応じて、オン状態及びオフ状態を切り替える。複数のスイッチング素子50は、例えば、IGBTやMOSFETなどの自励式の半導体素子である。但し、複数のスイッチング素子50は、これに限ることなく、オン状態及びオフ状態を任意に切り替えることが可能な任意の素子でよい。
【0025】
複数のスナバ回路52は、複数のスイッチング素子50のそれぞれに対応して設けられている。複数のスナバ回路52のそれぞれは、複数のスイッチング素子50のそれぞれと並列に接続される。スナバ回路52は、スイッチング素子50の遮断時に生じる過渡的な高電圧を抑制する。
【0026】
各スナバ回路52は、例えば、抵抗器52aとコンデンサ52bとの直列接続体を有する。抵抗器52aは、換言すれば、スイッチング素子50の一対の主端子間に設けられる。コンデンサ52bは、換言すれば、抵抗器52aとスイッチング素子50の一方の主端子との間に設けられる。
【0027】
この例において、各スナバ回路52は、いわゆるRCスナバ回路である。但し、各スナバ回路52の構成は、RCスナバ回路に限ることなく、スイッチング素子50に並列に接続され、スイッチング素子50の遮断時に生じる過渡的な高電圧を抑制可能な任意の構成でよい。また、各スナバ回路52は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
【0028】
複数の調整回路54は、複数のスイッチング素子50のそれぞれに対応して設けられている。複数の調整回路54のそれぞれは、複数のスイッチング素子50のそれぞれの制御端子と接続される。また、複数の調整回路54のそれぞれは、制御装置14と接続される。換言すれば、複数の調整回路54は、制御装置14と、複数のスイッチング素子50の制御端子と、のそれぞれの間に設けられる。複数の調整回路54は、制御装置14から出力されたスイッチ部21(駆動回路41)に対する制御信号の入力を受ける。このように、複数の調整回路54のそれぞれには、制御装置14から出力されたスイッチ部21に対する同じ制御信号が入力される。
【0029】
複数の調整回路54は、制御装置14から入力された制御信号を基に、複数のスイッチング素子50のそれぞれに対応する複数の駆動信号を生成し、生成した複数の駆動信号を複数のスイッチング素子50の制御端子に入力することによって複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングを行う。換言すれば、複数の調整回路54は、生成した複数の駆動信号を複数のスイッチング素子50の制御端子に入力し、複数のスイッチング素子50の制御端子の電圧の大きさを変化させることにより、複数のスイッチング素子50のオン状態及びオフ状態を切り替える。
【0030】
この際、複数のスイッチング素子50のスイッチングのタイミングは、複数のスイッチング素子50の特性のバラツキや複数のスナバ回路52の特性のバラツキなどにより、各スイッチング素子50の制御端子に同じ駆動信号を入力したとしても変化してしまう可能性がある。
【0031】
このため、複数の調整回路54は、入力された制御信号を基に複数のスイッチング素子50のスイッチングを行うとともに、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングを調整できるようにする。複数の調整回路54は、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングを調整するように複数の駆動信号の生成を行うことにより、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングの調整を可能にする。
【0032】
複数の調整回路54は、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングのアンバランスを抑制し、複数のスイッチング素子50を実質的に同時にスイッチングできるようにする。これにより、例えば、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングのバラツキにより、複数のスイッチング素子50のうちの一部のスイッチング素子50のみに過大な電圧が印加されてしまうことなどを抑制することができる。
【0033】
図3は、実施形態に係る調整回路を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、調整回路54は、複数の抵抗素子60と、切替回路62と、コンデンサ64と、論理積回路66と、を有する。また、調整回路54は、入力端子54aと、出力端子54bと、を有する。入力端子54aは、制御装置14と接続される。制御装置14から出力された制御信号は、入力端子54aに入力される。出力端子54bは、対応するスイッチング素子50の制御端子と接続される。
【0034】
論理積回路66は、一対の入力端子66a、66bと、出力端子66cと、を有する。論理積回路66は、換言すれば、AND回路である。論理積回路66の一方の入力端子66aは、調整回路54の入力端子54aと接続される。これにより、入力端子66aには、制御装置14からの制御信号が入力される。出力端子66cは、調整回路54の出力端子54bと接続される。従って、この例では、論理積回路66の出力が、駆動信号として対応するスイッチング素子50の制御端子に入力される。
【0035】
複数の抵抗素子60の一端は、それぞれ調整回路54の入力端子54aと接続される。これにより、複数の抵抗素子60にも、制御装置14からの制御信号が入力される。複数の抵抗素子60の他端は、切替回路62と接続される。
【0036】
切替回路62は、複数の抵抗素子60のそれぞれに対応して設けられた複数のスイッチ62aと、複数のスイッチ62aの開閉を切り替えるための操作部62bと、を有する。複数のスイッチ62aのそれぞれの一端は、複数の抵抗素子60のそれぞれの他端と接続される。複数のスイッチ62aのそれぞれの他端は、論理積回路66の他方の入力端子66bと接続される。
【0037】
切替回路62は、複数のスイッチ62aの開閉を切り替えることにより、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替える。切替回路62は、例えば、調整回路54の入力端子54aと論理積回路66の入力端子66bとの間における複数の抵抗素子60の並列接続数を任意に切り替える。
【0038】
切替回路62は、上記のように、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替えることにより、複数の抵抗素子60による合成抵抗値を変化させる。切替回路62は、例えば、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替えることにより、調整回路54の入力端子54aと論理積回路66の入力端子66bとの間の抵抗値を、複数の抵抗素子60による合成抵抗値に応じて変化させる。切替回路62は、例えば、複数のスイッチ62aの開閉を切り替え、複数の抵抗素子60のうちの並列に接続する抵抗素子60の数を変化させることにより、複数の抵抗素子60による合成抵抗値を任意に変化させる。
【0039】
操作部62bは、例えば、回転式の操作部である。切替回路62は、例えば、操作部62bの操作位置(回転位置)に応じて複数のスイッチ62aの開閉を切り替える。操作部62bは、例えば、複数の抵抗素子60の接続状態の組み合わせの数に応じた複数の操作位置を有する。換言すれば、複数の操作位置のそれぞれは、複数の抵抗素子60による複数の接続状態のそれぞれに対応する。これにより、操作部62bは、複数の抵抗素子60の複数の接続状態のうちのいずれか1つの接続状態を複数の操作位置によって任意に選択できるようにする。切替回路62は、例えば、アブソリュート形のロータリエンコーダである。
【0040】
但し、切替回路62の構成は、上記に限ることなく、複数のスイッチ62aの開閉を切り替えることにより、複数の抵抗素子60の接続状態を任意に切り替えることが可能な任意の構成でよい。操作部62bは、回転式の操作部に限ることなく、例えば、スライド式の操作部などでもよい。操作部62bは、複数の操作位置を有し、手動操作の入力を受けて操作位置を切り替えることにより、複数の抵抗素子60の複数の接続状態を任意に切り替えることが可能な任意の操作部でよい。
【0041】
コンデンサ64の一端は、切替回路62を介して複数の抵抗素子60のいずれかと接続されるとともに、論理積回路66の他方の入力端子66bと接続される。コンデンサ64の他端は、例えば、グランド電位の端子と接続される。換言すれば、コンデンサ64は、入力端子66bに対して並列に接続される。
【0042】
論理積回路66の一方の入力端子66aには、上記のように、制御装置14からの制御信号が入力される。論理積回路66の他方の入力端子66bには、制御装置14からの制御信号が、複数の抵抗素子60及び切替回路62を介して入力される。入力端子66bには、より詳しくは、制御装置14からの制御信号が、複数の抵抗素子60のうちの切替回路62によって接続された抵抗素子60を介して入力される。
【0043】
論理積回路66は、入力端子66aに入力された制御信号と、入力端子66bに入力された制御信号と、の論理積を演算し、論理積の演算結果を駆動信号として対応するスイッチング素子50の制御端子に入力する。
【0044】
図4は、実施形態に係る調整回路の動作の一例を模式的に表す表である。
図4は、複数の抵抗素子60の数を4つとした場合の調整回路54の動作の一例を表す。
図4に表したように、複数の抵抗素子60の抵抗値は、それぞれ異なる抵抗値に設定される。切替回路62は、例えば、複数のスイッチ62aの開閉を切り替え、複数の抵抗素子60のうちの並列に接続する抵抗素子60の数を任意に変化させるとともに、並列に接続する抵抗素子60の組み合わせを任意に変化させる。
【0045】
これにより、複数の抵抗素子60による合成抵抗値をより細かく設定することが可能となる。例えば、
図4に表したように、複数の抵抗素子60の数を4つとし、4つの抵抗素子60のそれぞれの抵抗値を異なる値に設定した場合には、並列に接続する抵抗素子60の組み合わせを変化させることで、複数の抵抗素子60による合成抵抗値を16通りに変化させることができる。但し、複数の抵抗素子60のそれぞれの抵抗値は、同じでもよい。複数の抵抗素子60のそれぞれの抵抗値は、必要な合成抵抗値のパターンなどに応じて任意に設定すればよい。
【0046】
図5は、実施形態に係る調整回路の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図5は、制御装置14から論理積回路66の入力端子66aに入力される制御信号(
図5のA)と、複数の抵抗素子60及び切替回路62を介して論理積回路66の入力端子66bに入力される制御信号(
図5のB)と、論理積回路66の出力端子66cから出力される駆動信号(
図5のC)と、のそれぞれの一例を模式的に表す。
【0047】
図5に表したように、制御信号は、電圧の高い状態と、電圧の低い状態と、を有する。電圧の高い状態は、例えば、スイッチ部21のオン状態に対応し、電圧の低い状態は、例えば、スイッチ部21のオフ状態に対応する。制御信号は、例えば、電圧の高い状態と、電圧の低い状態と、を所定の周期で繰り返すとともに、電圧の高い状態及び電圧の低い状態の比率を変化させることによって各スイッチ部21~26のスイッチングの制御を行うための制御信号である。制御信号は、例えば、PWM制御用の制御信号である。制御信号は、例えば、ゲート信号、あるいはゲート指令などと呼ばれる場合もある。
【0048】
論理積回路66の出力である駆動信号は、入力端子66a及び入力端子66bの双方の入力が電圧の高い状態の時に、電圧の高い状態となり、入力端子66a及び入力端子66bの少なくとも一方の入力が電圧の低い状態の時に、電圧の低い状態となる。このように、駆動信号も、制御信号と同様に、電圧の高い状態と、電圧の低い状態と、を有する。各スイッチング素子50は、例えば、駆動信号(制御端子)の電圧の高い状態の時にオン状態となり、駆動信号(制御端子)の電圧の低い状態の時にオフ状態となる。
【0049】
但し、制御信号の電圧の大きさ、各スイッチング素子50の制御端子の電圧の大きさ、及び各スイッチング素子50のオン・オフの関係は、上記に限定されるものではない。制御信号の電圧の大きさ、各スイッチング素子50の制御端子の電圧の大きさ、及び各スイッチング素子50のオン・オフの関係は、各スイッチング素子50の特性に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
図5に表したように、複数の抵抗素子60及び切替回路62を介して論理積回路66の入力端子66bに入力される制御信号には、制御装置14から入力された元の制御信号に対して時定数τに応じた遅れが生じる。このため、入力端子66aに入力される制御信号と、入力端子66bに入力される制御信号と、の論理積によって演算される駆動信号にも、制御装置14から入力された元の制御信号に対して時定数τに応じた遅れが生じる。
【0051】
複数の抵抗素子60による合成抵抗値をRcom、コンデンサ64の静電容量値をC1とする場合、時定数τは、τ=Rcom×C1で表すことができる。従って、調整回路54では、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替え、複数の抵抗素子60による合成抵抗値Rcomを変化させることにより、時定数τを変化させることができる。
【0052】
コンデンサ64は、例えば、切替回路62を介して接続された複数の抵抗素子60のいずれかとともにRCローパスフィルタを構成する。調整回路54は、例えば、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替え、複数の抵抗素子60による合成抵抗値Rcomを変化させ、RCローパスフィルタの特性を変化させることにより、時定数τを変化させる。
【0053】
このように、調整回路54は、時定数τを変化させ、入力端子66bに入力される制御信号の遅れ時間の長さを変化させることにより、対応するスイッチング素子50のスイッチングタイミングを調整できるようにする。また、調整回路54は、元の制御信号と、遅れ時間を変化させた後の制御信号と、の論理積の演算結果を駆動信号として出力する。これにより、例えば、遅れ時間の変化に応じて駆動信号の立ち上がり及び立ち下がりに傾き(なまり)が生じ、スイッチング素子50がオフ状態からオン状態又はオン状態からオフ状態に緩やかに変化し、損失が大きくなってしまうことを抑制することができる。
【0054】
調整回路54は、例えば、時定数τを変化させることにより、駆動信号の電圧の低い状態から電圧の高い状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。換言すれば、調整回路54は、例えば、時定数τを変化させることにより、対応するスイッチング素子50のオフ状態からオン状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。
【0055】
このように、複数の調整回路54のそれぞれは、複数のスイッチング素子50のスイッチングのタイミングを制御信号に応じたタイミングよりも遅らせる遅れ時間を設定可能である。複数の調整回路54のそれぞれは、遅れ時間の長さの異なる複数の設定を有し、複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを変化させることにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングを任意に調整できるようにする。
【0056】
この例において、遅れ時間の長さの異なる複数の設定は、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定である。複数の調整回路54は、換言すれば、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定を有し、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを変化させることにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングを任意に調整できるようにする。
【0057】
調整回路54は、例えば、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替え、複数の抵抗素子60による合成抵抗値Rcomを変化させるとともに、合成抵抗値Rcomとコンデンサ64の静電容量値とによる時定数τを変化させることにより、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定に応じて遅れ時間の長さを変更可能とする。
【0058】
複数の調整回路54は、初期状態においては、例えば、
図4の表に表した7番目の設定や8番目の設定など、遅れ時間の長さの異なる複数の設定のうちの中間的な設定を選択した状態としておく。電力変換装置10では、例えば、初期状態の遅れ時間が設定された状態において、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングの確認が行われる。スイッチングタイミングの確認は、例えば、各スイッチング素子50が過電圧とならない程度の電圧が、スイッチ部21の両端に印加された状態で行われる。例えば、複数のスイッチング素子50のうちの最も多いオンタイミングのスイッチング素子50に合わせるように、他のスイッチング素子50のオンタイミングを調整する。
【0059】
例えば、4つのスイッチング素子50が直列に接続されている場合に、2つのスイッチング素子50のスイッチングタイミングが実質的に同じで、1つのスイッチング素子50のスイッチングタイミングが2つのスイッチング素子50よりも速く、残りの1つのスイッチング素子50のスイッチングタイミングが2つのスイッチング素子50よりも遅い場合には、タイミングの速いスイッチング素子50の遅れ時間を長くするように複数の抵抗素子60の接続状態の設定を調整し、タイミングの遅いスイッチング素子50の遅れ時間を短くするように複数の抵抗素子60の接続状態の設定を調整する。これにより、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングのアンバランスを抑制し、複数のスイッチング素子50を実質的に同時にスイッチングさせることができる。この例では、複数のスイッチング素子50を実質的に同時にオフ状態からオン状態に切り替えることができる。
【0060】
以上、説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10では、複数の調整回路54のそれぞれが、遅れ時間の長さの異なる複数の設定を有し、複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを変化させることにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングを任意に調整できるようにする。
【0061】
これにより、電力変換装置10では、例えば、スイッチングタイミングの調整幅に対して適切な設定を選択するだけで、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングの調整を適切に行うことができる。例えば、多回転型のボリューム抵抗を用いた場合のように、スイッチングタイミングの調整幅に対してボリューム抵抗のつまみをどの程度回転させればよいかが分からず、調整作業に時間がかかってしまうといった事態を抑制することができる。従って、電力変換装置10では、直列に接続された複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行うことができる。
【0062】
また、電力変換装置10では、調整回路54が、複数の抵抗素子60の接続状態を切り替え、複数の抵抗素子60による合成抵抗値Rcomを変化させるとともに、合成抵抗値Rcomとコンデンサ64の静電容量値とによる時定数τを変化させることにより、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定に応じて遅れ時間の長さを変更可能とする。これにより、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを適切に変化させ、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングを適切に調整することができる。
【0063】
また、例えば、多回転型のボリューム抵抗を用いた場合には、ボリューム抵抗のつまみを何回転させているかを目視のみで認識することが難しく、スイッチングタイミングの調整作業に時間がかかってしまう可能性がある。これに対し、電力変換装置10では、複数の調整回路54のそれぞれが、遅れ時間の長さの異なる複数の設定を切り替えるための操作部62bを有し、操作部62bは、遅れ時間の長さの異なる複数の設定のそれぞれに対応する複数の操作位置を有し、複数の設定のうちのいずれか1つの設定を複数の操作位置によって任意に選択できるようにする。これにより、電力変換装置10では、遅れ時間の長さの異なる複数の設定の現在の設定を操作部62bの操作位置により、目視で容易に確認することができ、複数のスイッチング素子50のスイッチングタイミングの調整作業をより簡単に行うことができる。
【0064】
図6は、実施形態に係る調整回路の変形例を模式的に表すブロック図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に表したように、この例の調整回路54では、複数の抵抗素子60が直列に接続されている。複数の抵抗素子60は、調整回路54の入力端子54aと論理積回路66の入力端子66bとの間に直列に接続されるように設けられる。
【0065】
この例では、複数のスイッチ62aのそれぞれの一端が、複数の抵抗素子60のそれぞれの入力端子54aと反対側の端部と接続される。複数のスイッチ62aのそれぞれの他端は、論理積回路66の他方の入力端子66bと接続される。これにより、この例の切替回路62では、複数のスイッチ62aの開閉を切り替えることにより、調整回路54の入力端子54aと論理積回路66の入力端子66bとの間における複数の抵抗素子60の直列接続数を任意に切り替えることができる。複数の抵抗素子60は、換言すれば、切替回路62を介して調整回路54の入力端子54aと論理積回路66の入力端子66bとの間に直列に接続される。
【0066】
また、この例では、切替回路62において、操作部62bが省略され、制御部62cが設けられている。制御部62cは、例えば、外部の機器と通信を行い、外部の機器から複数のスイッチ62aの開閉を切り替えるための切替情報の入力を受ける。切替情報は、換言すれば、遅れ時間の長さの異なる複数の設定を切り替えるための情報である。
【0067】
制御部62cは、入力された切替情報に応じて複数のスイッチ62aの開閉を切り替える。これにより、この例では、外部の機器から入力された切替情報に応じて複数のスイッチ62aの開閉を切り替えることができる。換言すれば、この例では、外部の機器から入力された切替情報に応じて遅れ時間の長さの異なる複数の設定を切り替えることができる。この例において、複数の調整回路54は、遅れ時間の長さの異なる複数の設定のうちのいずれか1つの設定を外部の機器から入力される切替情報によって任意に選択できるようにする。
【0068】
制御部62cは、例えば、図示を省略した記憶部を有し、外部の機器から入力された切替情報を記憶部に記憶させる。制御部62cは、記憶部に記憶された切替情報に基づいて複数のスイッチ62aの開閉を切り替える。記憶部は、例えば、不揮発性の記憶部である。これにより、例えば、調整回路54が電源を一度消失した際などにも、記憶部に記憶された切替情報に基づいて各スイッチ62aの開閉の設定を維持することができる。
【0069】
また、制御部62cは、外部の機器からの要求に応じて記憶部に記憶された切替情報を外部の機器に送信する。外部の機器は、例えば、複数の調整回路54のそれぞれから受信した切替情報を表示部などに表示する。これにより、この例では、遅れ時間の長さの異なる複数の設定の現在の設定を外部の機器において容易に確認することができる。
【0070】
この例において、複数の抵抗素子60及び切替回路62は、例えば、1つのパッケージに収められたデジタルポテンショメータである。但し、複数の抵抗素子60及び切替回路62は、必ずしも一体に設けられている必要はなく、それぞれ別の部材として構成してもよい。
【0071】
このように、調整回路54の構成は、複数の抵抗素子60を並列に接続する構成に限ることなく、複数の抵抗素子60を直列に接続する構成などでもよい。調整回路54の構成は、遅れ時間の長さの異なる複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて遅れ時間の長さを変化させることにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングを調整可能な任意の構成でよい。
【0072】
上記の各実施形態では、遅れ時間の長さの異なる複数の設定として、複数の抵抗素子60の複数の接続状態の設定を表している。これに限ることなく、例えば、複数のコンデンサ64を設けることにより、複数のコンデンサ64の複数の接続状態の設定を、遅れ時間の長さの異なる複数の設定としてもよい。
【0073】
上記のように、時定数τは、抵抗値と静電容量値との積で求めることができる。従って、調整回路54は、例えば、複数のコンデンサ64の接続状態を切り替え、複数のコンデンサ64による合成容量値を変化させるとともに、1つの抵抗素子60の抵抗値と複数のコンデンサ64の合成容量値とによる時定数τを変化させることにより、複数のコンデンサ64の複数の接続状態の設定に応じて遅れ時間の長さを変更可能としてもよい。調整回路54は、例えば、複数の抵抗素子60と複数のコンデンサ64とのそれぞれの接続状態を切り替える構成としてもよい。
【0074】
図7は、実施形態に係る調整回路の変形例を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、この例では、複数の調整回路54のそれぞれが、第1調整部71と、第2調整部72と、を有する。第1調整部71は、対応するスイッチング素子50のオフ状態からオン状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。第2調整部72は、対応するスイッチング素子50のオン状態からオフ状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。
【0075】
第1調整部71は、例えば、複数の抵抗素子80と、切替回路82と、コンデンサ84と、否定論理積回路86と、を有する。第2調整部72は、例えば、複数の抵抗素子90と、切替回路92と、コンデンサ94と、否定論理積回路96と、を有する。
【0076】
否定論理積回路86は、一対の入力端子86a、86bと、出力端子86cと、を有する。否定論理積回路96は、一対の入力端子96a、96bと、出力端子96cと、を有する。否定論理積回路86、96は、換言すれば、NAND回路である。
【0077】
第1調整部71の否定論理積回路86の一方の入力端子86aは、調整回路54の入力端子54aと接続される。これにより、入力端子86aには、制御装置14からの制御信号が入力される。否定論理積回路86の出力端子86cは、第2調整部72の否定論理積回路96の一方の入力端子96aと接続される。否定論理積回路96の出力端子96cは、調整回路54の出力端子54bと接続される。従って、この例では、否定論理積回路96の出力が、駆動信号として対応するスイッチング素子50の制御端子に入力される。
【0078】
複数の抵抗素子80、切替回路82、及びコンデンサ84の構成、及び複数の抵抗素子90、切替回路92、及びコンデンサ94の構成は、
図3に関して説明した複数の抵抗素子60、切替回路62、及びコンデンサ64の構成と実質的に同じであるから、これらについての詳細な説明は省略する。
【0079】
第1調整部71の否定論理積回路86の他方の入力端子86bには、制御装置14からの制御信号が、複数の抵抗素子80及び切替回路82を介して入力される。入力端子86bには、より詳しくは、制御装置14からの制御信号が、複数の抵抗素子80のうちの切替回路82によって接続された抵抗素子80を介して入力される。
【0080】
否定論理積回路86は、入力端子86aに入力された制御信号と、入力端子86bに入力された制御信号と、の否定論理積を演算し、否定論理積の演算結果を第2調整部72の否定論理積回路96の一方の入力端子96aに入力する。
【0081】
第2調整部72の否定論理積回路96の他方の入力端子96bには、第1調整部71からの制御信号が、複数の抵抗素子90及び切替回路92を介して入力される。入力端子96bには、より詳しくは、第1調整部71からの制御信号が、複数の抵抗素子90のうちの切替回路92によって接続された抵抗素子90を介して入力される。
【0082】
否定論理積回路96は、入力端子96aに入力された制御信号と、入力端子96bに入力された制御信号と、の否定論理積を演算し、否定論理積の演算結果を駆動信号として対応するスイッチング素子50の制御端子に入力する。
【0083】
図8は、変形例の調整回路の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図8は、制御装置14から第1調整部71の否定論理積回路86の入力端子86aに入力される制御信号(
図8のA)と、複数の抵抗素子80及び切替回路82を介して否定論理積回路86の入力端子86bに入力される制御信号(
図8のB)と、否定論理積回路86の出力端子86cから第2調整部72の否定論理積回路96の入力端子96aに入力される制御信号(
図8のC)と、複数の抵抗素子90及び切替回路92を介して否定論理積回路96の入力端子96bに入力される制御信号(
図8のD)と、否定論理積回路96の出力端子96cから出力される駆動信号(
図8のE)と、のそれぞれの一例を模式的に表す。
【0084】
図8に表したように、複数の抵抗素子80及び切替回路82を介して否定論理積回路86の入力端子86bに入力される制御信号には、制御装置14から入力された元の制御信号に対して時定数τ1(複数の抵抗素子80及びコンデンサ84による時定数)に応じた遅れが生じる。
【0085】
否定論理積回路86の出力は、入力端子86a及び入力端子86bの双方の入力が電圧の高い状態の時に、電圧の低い状態となり、入力端子86a及び入力端子86bの少なくとも一方の入力が電圧の低い状態の時に、電圧の高い状態となる。
【0086】
このため、否定論理積回路86の出力は、入力端子86a及び入力端子86bの双方に入力される制御信号が、スイッチング素子50のオン状態に対応する電圧の高い状態となった際に、電圧の高い状態から電圧の低い状態に切り替わる。この際、否定論理積回路86の出力の電圧の高い状態から電圧の低い状態に切り替わるタイミングにも、制御装置14から入力された元の制御信号に対して時定数τ1に応じた遅れが生じる。
【0087】
第1調整部71は、時定数τ1を変化させ、入力端子86bに入力される制御信号の遅れ時間の長さを変化させることにより、対応するスイッチング素子50のオフ状態からオン状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。
【0088】
また、
図8に表したように、複数の抵抗素子90及び切替回路92を介して否定論理積回路96の入力端子96bに入力される制御信号には、否定論理積回路86から入力端子86aに入力される制御信号に対して時定数τ2(複数の抵抗素子90及びコンデンサ94による時定数)に応じた遅れが生じる。
【0089】
否定論理積回路96の出力は、入力端子96a及び入力端子96bの双方に入力される制御信号が、電圧の高い状態となった際に、電圧の高い状態から電圧の低い状態に切り替わる。この際、否定論理積回路96の出力の電圧の高い状態から電圧の低い状態に切り替わるタイミングにも、否定論理積回路86から入力端子86aに入力される制御信号に対して時定数τ2に応じた遅れが生じる。
【0090】
第2調整部72は、時定数τ2を変化させ、入力端子96bに入力される制御信号の遅れ時間の長さを変化させることにより、対応するスイッチング素子50のオン状態からオフ状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする。
【0091】
このように、この例では、複数の調整回路54のそれぞれが、第1調整部71と、第2調整部72と、を有する。これにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのオンタイミング及びオフタイミングを適切に調整することができる。これにより、複数のスイッチング素子50のそれぞれのスイッチングタイミングのバラツキをより適切に抑制することができる。例えば、直列に接続された複数のスイッチング素子50のうちの一部のスイッチング素子50のみに過大な電圧が印加され、そのスイッチング素子50の故障の要因となってしまうことなどをより適切に抑制することができる。
【0092】
なお、第1調整部71及び第2調整部72の構成は、上記に限定されるものでない。第1調整部71の構成は、対応するスイッチング素子50のオフ状態からオン状態への切り替わりのタイミングを適切に調整可能な任意の構成でよい。第2調整部72の構成は、対応するスイッチング素子50のオン状態からオフ状態への切り替わりのタイミングを適切に調整可能な任意の構成でよい。
【0093】
本実施形態は、以下の態様を含む。
(付記1)
複数のスイッチ部と、前記複数のスイッチ部のそれぞれを駆動するための複数の駆動回路と、を有し、前記複数のスイッチ部のスイッチングにより、電力の変換を行う主回路部と、
前記複数のスイッチ部のそれぞれに対応する複数の制御信号を前記複数の駆動回路のそれぞれに送信し、前記複数のスイッチ部のスイッチングを制御することにより、前記主回路部による電力の変換を制御する制御装置と、
を備え、
前記複数のスイッチ部のそれぞれは、直列に接続された複数のスイッチング素子を有し、
前記複数のスイッチング素子は、一対の主端子と、制御端子と、を有するとともに、前記一対の主端子間に電流を流すオン状態と、前記一対の主端子間の電流の流れを遮断するオフ状態と、を有し、前記一対の主端子間の電圧、及び前記制御端子の電圧に応じて、前記オン状態及び前記オフ状態を切り替え、
前記複数の駆動回路のそれぞれは、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応して設けられた複数の調整回路を有し、
前記複数の調整回路のそれぞれは、前記制御装置から入力された前記制御信号を基に、前記複数のスイッチング素子のそれぞれに対応する複数の駆動信号を生成し、前記複数の駆動信号を前記複数のスイッチング素子の前記制御端子に入力することによって前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングを行うとともに、前記複数のスイッチング素子のスイッチングのタイミングを前記制御信号に応じたタイミングよりも遅らせる遅れ時間を設定可能であり、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定を有し、前記複数の設定のうちのいずれか1つの設定を任意に選択できるようにし、選択された設定に応じて前記遅れ時間の長さを変化させることにより、前記複数のスイッチング素子のそれぞれのスイッチングタイミングを調整できるようにする電力変換装置。
【0094】
(付記2)
前記複数の調整回路のそれぞれは、
複数の抵抗素子と、
前記複数の抵抗素子の接続状態を切り替える切替回路と、
前記切替回路を介して前記複数の抵抗素子のいずれかと接続されるコンデンサと、
を有し、
前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定は、前記複数の抵抗素子の複数の接続状態の設定であり、
前記調整回路は、前記複数の抵抗素子の接続状態を切り替え、前記複数の抵抗素子による合成抵抗値を変化させるとともに、前記合成抵抗値と前記コンデンサの静電容量値とによる時定数を変化させることにより、前記複数の抵抗素子の複数の接続状態の設定に応じて前記遅れ時間の長さを変更可能とする付記1記載の電力変換装置。
【0095】
(付記3)
前記複数の調整回路のそれぞれは、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定を切り替えるための操作部を有し、
前記操作部は、前記遅れ時間の長さの異なる複数の設定のそれぞれに対応する複数の操作位置を有し、前記複数の設定のうちのいずれか1つの設定を前記複数の操作位置によって任意に選択できるようにする付記1又は2に記載の電力変換装置。
【0096】
(付記4)
前記複数の調整回路のそれぞれは、
対応する前記スイッチング素子の前記オフ状態から前記オン状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする第1調整部と、
対応する前記スイッチング素子の前記オン状態から前記オフ状態への切り替わりのタイミングを調整可能とする第2調整部と、
を有する付記1~3のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…電力変換装置、 12…主回路部、 14…制御装置、 21~26…スイッチ部、 31~36…整流素子、 40…電荷蓄積素子、 41~46…駆動回路、 50…スイッチング素子、 52…スナバ回路、 54…調整回路、 60…抵抗素子、 62…切替回路、 64…コンデンサ、 66…論理積回路、 71…第1調整部、 72…第2調整部、 80…抵抗素子、 82…切替回路、 84…コンデンサ、 86…否定論理積回路、 90…抵抗素子、 92…切替回路、 94…コンデンサ、 96…否定論理積回路