(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007924
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】摺動システム
(51)【国際特許分類】
F16C 33/24 20060101AFI20240112BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240112BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20240112BHJP
C23C 26/00 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
F16C33/24 Z
C01B32/05
F16C17/02 Z
F16C33/24 A
C23C26/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109347
(22)【出願日】2022-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)予稿集 ▲1▼発行日 令和3年10月27日~令和3年10月29日 ▲2▼刊行物 トライボロジー会議2021 秋 松江予稿集,A33,一般社団法人日本トライボロジー学会 (2)学会発表 ▲1▼開催日 令和3年9月6日~令和3年9月10日 ▲2▼集会名 トライボロジー会議2021秋 松江 ▲3▼開催場所 オンライン開催
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】行則 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮
(72)【発明者】
【氏名】深谷 良介
(72)【発明者】
【氏名】足立 幸志
(72)【発明者】
【氏名】坪内 正克
【テーマコード(参考)】
3J011
4G146
4K044
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA08
3J011DA01
3J011JA02
3J011KA02
3J011MA02
3J011QA03
3J011QA04
3J011SB12
3J011SB14
3J011SB20
3J011SD04
3J011SE10
4G146AA05
4G146AA16
4G146AA17
4G146AB07
4G146AC21B
4G146AD02
4G146AD17
4G146AD26
4G146AD40
4G146BC09
4G146BC10
4G146CB19
4G146CB32
4G146CB34
4K044AA03
4K044AA06
4K044BA13
4K044BA18
4K044BB01
4K044BC01
(57)【要約】
【課題】より低摩擦化することができる摺動システムを提供する。
【解決手段】相対移動し得る第1摺動部材10及び第2摺動部材20を備え、第1摺動部材10と第2摺動部材20との摺動面間には、水素ガスを含む水素含有雰囲気ガスが存在する。第1摺動部材10の摺動面は、W,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLCにより構成されている。第2摺動部材20の摺動面は、Alを含む酸化物を主成分とするセラミックスにより構成されている。水素含有雰囲気ガスは酸素ガスを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動し得る第1摺動部材及び第2摺動部材を備え、前記第1摺動部材と前記第2摺動部材との摺動面間に、水素ガスを含む水素含有雰囲気ガスが存在する摺動システムであって、
前記第1摺動部材の摺動面は、タングステン(W),ケイ素(Si),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr)及びクロム(Cr)のうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLCよりなり、
前記第2摺動部材の摺動面は、アルミニウム(Al)を含む酸化物を主成分とするセラミックスよりなり、
前記水素含有雰囲気ガスは酸素ガスを含む
ことを特徴とする摺動システム。
【請求項2】
前記第2摺動部材の摺動面は、硬質アルマイトよりなることを特徴とする請求項1記載の摺動システム。
【請求項3】
前記水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度は、1ppm以上10000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の摺動システム。
【請求項4】
前記第1摺動部材の摺動面を構成するDLCに添加される炭化物は、タングステン(W)及び、ケイ素(Si)のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の摺動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対移動し得る第1摺動部材及び第2摺動部材を備え、第1摺動部材と第2摺動部材との摺動面間に水素ガスを含む水素含有雰囲気ガスが存在する摺動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの機械は摺接しつつ相対移動する摺動部材を備えている。このような摺動部材を有する系(本明細書では「摺動システム」と言い、例えば、摺動機械が挙げられる)では、その摺動部分に作用する抵抗力(摺動抵抗)を小さくすることにより、性能の向上と共に稼動に必要なエネルギーの低減が図られる。このような摺動抵抗の低減は、通常、摺動面間に作用する摩擦係数の低減により達成される。摺動面間に作用する摩擦係数は、摺動面の表面状態により異なるため、摩擦係数の低減を図る場合、摺動面の材料の改良が検討される。
【0003】
摺動面の材料としては、例えば、低摩擦化及び耐摩耗性に優れる非晶質炭素(いわゆるダイヤモンドライクカーボン;DLC)が用いられている。例えば、特許文献1には、水素を含有するDLC膜からなる第1面を有する第1部材と、ZrおよびAlの少なくともいずれかを含む酸化物を主成分とするセラミックスからなり、第2面を有する第2部材とを備え、第1面と第2面とが摺動面であり、該摺動面における雰囲気が水素である摺動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の摺動装置では、第2面のセラミックスの硬度が十分でないと、第1面のDLC膜の表面において構造分解が起きず、第2面への炭素移着が不十分となって低摩擦力カーボン膜が形成されないという問題があった。また、第2面の水素による還元反応を抑制しないと、水素脆性破壊による強度低下を招いてしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、より低摩擦化することができる摺動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の摺動システムは、相対移動し得る第1摺動部材及び第2摺動部材を備え、第1摺動部材と第2摺動部材との摺動面間に、水素ガスを含む水素含有雰囲気ガスが存在するものであって、第1摺動部材の摺動面は、タングステン(W),ケイ素(Si),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr)及びクロム(Cr)のうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLC(ダイヤモンドライクカーボン)よりなり、第2摺動部材の摺動面は、アルミニウム(Al)を含む酸化物を主成分とするセラミックスよりなり、水素含有雰囲気ガスは酸素ガスを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の摺動システムによれば、第1摺動部材の摺動面をW,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLCにより構成すると共に、水素含有雰囲気ガスに酸素ガスを含むようにしたので、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により、第1摺動部材の摺動面に含まれる炭化物が優先的に酸化され、第2摺動部材の摺動面への移着元となる炭素の生成を促進することができる。よって、第2摺動部材の摺動面に低摩擦の非晶質カーボン膜の形成を促進することができ、低摩擦化することができる。また、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により、第2摺動部材の摺動面における水素による還元反応を抑制し、水素脆性破壊による強度低下を抑制することができる。
【0009】
また、第2摺動部材の摺動面を硬質アルマイトにより構成するようにしたので、硬度を高く、厚膜化することができ、第1摺動部材の摺動面における構造破壊を促進することができる。更に、硬質アルマイトはポア(細孔)を持つので、第2摺動部材の摺動面への非晶質カーボン膜の定着を促すことができる。
【0010】
更に、水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度を1ppm以上10000ppm以下とするようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【0011】
加えて、第1摺動部材の摺動面を構成するDLCに添加される炭化物として、より酸化されやすいタングステン(W)及び、ケイ素(Si)のうちの少なくとも1種を含むようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る摺動システムにおける摺動時の作用を説明するための模式図である。
【
図2】水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度と、摩擦係数との関係を表す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る摺動システムにおける摺動時の作用を説明するための模式図である。この摺動システムは、相対移動し得る第1摺動部材10及び第2摺動部材20を備え、第1摺動部材10と第2摺動部材20との摺動面間に、水素ガスを含む水素含有雰囲気ガスが存在するものである。本発明でいう「摺動システム」は、第1摺動部材及び第2摺動部材を備え、その摺動面間に水素含有雰囲気ガスが存在すれば足り、機械としての完成体に限らず、その一部を構成する機械要素の組合わせ等でもよい。本発明の摺動システムは、適宜、摺動構造、摺動機械等と換言してもよい。なお、本発明の摺動システムは、例えば、燃料電池車や水素エンジン車用の水素タンクのコンプレッサーに用いることができる。
【0015】
第1摺動部材10及び第2摺動部材20は、相対移動する摺動面を有する機械部品である。例えば、水素タンクのコンプレッサーであれば、第1摺動部材10をシリンダー、第2摺動部材20をピストンとすることができる。
【0016】
第1摺動部材10は、例えば、第1基材の表面に第1摺動被膜としてDLC膜11を有しており、第1摺動部材10の摺動面はDLC膜11により構成されている。第1基材は、各種装置の摺動部品であれば形状及び材質等に特に限定はない。例えば、水素タンクのコンプレッサーであれば、金属系基材(例えばステンレス鋼材)により構成することができる。
【0017】
DLC膜11は、W,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLCにより構成されている。DLCは、炭化水素または炭素の同素体からなる非晶質であり、高硬度で、耐摩耗性、化学的安定性に優れている。W,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物を添加するのは、W,Si,Ti,Zr及びCrは第2摺動部材20の摺動面の構成元素であるAlと同様に酸化されやすいので、これらの炭化物が優先的に酸化されて、第2摺動部材20の摺動面への添加金属酸化物を含むカーボンからなる低摩擦カーボン膜の移着を促進することができるからである。
【0018】
また、DLC膜11を構成するDLCに添加される炭化物は、より酸化されやすいW及びSiのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。炭化物がより優先的に酸化されて、第2摺動部材20の摺動面への移着元となる添加金属酸化物を含むカーボンからなる低摩擦カーボン膜の移着生成をより促進することができるからである。
【0019】
なお、DLC膜11は、例えば、スパッタリング+プラズマCVD複合プロセスにより形成することができる。
【0020】
第2摺動部材20は、例えば、第2基材の表面に第2摺動被膜21を有しており、第2摺動部材20の摺動面は第2摺動被膜21により構成されている。第2基材は、各種装置の摺動部品であれば形状及び材質等に特に限定はないが、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成することが好ましい。第2摺動被膜21を容易に形成することができるからである。
【0021】
第2摺動被膜21は、Alを含む酸化物を主成分とするセラミックスにより構成されている。ここで、主成分とは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、60質量%以上の成分のことである。Alを含む酸化物は、Al以外の元素を含んでいてもよいが、第2摺動被膜21は、AlをAl2O3に換算して60質量%以上含むセラミックスにより構成することが好ましい。第2摺動部材20の摺動面の表面に、酸化され安定なAlを多く存在させることができるからである。
【0022】
特に、第2摺動被膜21は硬質アルマイトにより構成することが好ましい。アルマイトというのは、アルミニウム又はアルミニウム合金を陽極酸化処理することにより得られる酸化皮膜であり、硬質アルマイトは低温の電解浴中で電解処理され、例えば、JIS H8603の1種では硬度がHV400以上のものである。硬質アルマイトにより構成するようにすれば、硬度を高くすることができ、第1摺動部材10の摺動面における構造破壊を促進することができるので好ましい。硬質アルマイトの硬度は、例えば、HV700程度とすることが好ましい。より高い効果を得られるからである。また、アルマイトはポア(細孔)を持つため、第2摺動部材の摺動面への非晶質カーボン膜の定着を促すことができる。
【0023】
水素含有雰囲気ガスは、水素ガスに加えて、酸素ガスを含んでいる。酸素により第1摺動部材10の摺動面に含まれる炭化物を酸化して、第2摺動部材20の摺動面への移着元となるカーボンの生成を促進すると共に、第2摺動部材20の摺動面における水素による還元反応を抑制し、水素脆性破壊による強度低下を抑制するためである。水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度は、1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。この範囲内において、摩擦係数を小さくすることができるからである。
【0024】
この摺動システムにおける低摩擦化のメカニズムは以下のように考えられる。まず、例えば、
図1(A)に示したように、第1摺動部材10と第2摺動部材20とを摺動させると、水素含有雰囲気ガスに含まれる水素により、第2摺動部材20の摺動面、すなわち第2摺動被膜21の表面が還元され、酸化物から酸素が取り除かれて、不安定なAlの表面層22が形成される。また、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により、第1摺動部材10の摺動面、すなわち
図1(A)に〇で示したDLC膜11に含まれるW,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が酸化され、W,Si,Ti,Zr又はCrとの結合が切れた炭素が生成される。その際、W,Si,Ti,Zr及びCrはAlと同等に酸化されやすいので、これらの炭化物が優先的に酸化されると同時に、第2摺動部材20の摺動面におけるAlの還元はある程度制限される。
【0025】
次いで、例えば、
図1(B)に示したように、第2摺動被膜21に形成された表面層22の還元されたAlは不安定で吸着しやすいので、DLC膜11で生成された炭素は、第2摺動被膜21の表面層22が形成された部位に移着する。続いて、例えば、
図1(C)に示したように、第2摺動被膜21の表面に移着した炭素により、表面層33の上に、低摩擦の非晶質カーボン膜23が形成される。非晶質カーボン膜23の厚みは、例えば、数百nm程度である。また、DLC膜11に含まれるW,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により優先酸化されるのが収まると、第2摺動被膜21に形成された表面層22の不安定なAlが水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により再酸化され、水素による還元反応が抑制されて、水素脆性破壊が抑制される。
【0026】
なお、
図1では、DLC膜11に添加されたW,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物を白丸で概念的に表している。
【0027】
このように本実施の形態によれば、第1摺動部材10の摺動面をW,Si,Ti,Zr及びCrのうちの少なくとも1種を含む炭化物が添加されたDLCにより構成すると共に、水素含有雰囲気ガスに酸素ガスを含むようにしたので、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により、第1摺動部材10の摺動面に含まれる炭化物が優先的に酸化され、第2摺動部材20の摺動面への移着元となる炭素の生成を促進することができる。よって、第2摺動部材20の摺動面に低摩擦の非晶質カーボン膜23の形成を促進することができ、低摩擦化することができる。また、水素含有雰囲気ガスに含まれる酸素により、第2摺動部材20の摺動面における水素による還元反応を抑制し、水素脆性破壊による強度低下を抑制することができる。
【0028】
また、第2摺動部材20の摺動面を厚膜の硬質アルマイトにより構成するようにしたので、第2基材を含めた硬度を高くすることができ、第1摺動部材10の摺動面における構造破壊を促進することができる。
【0029】
更に、水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度を1ppm以上1000ppm以下とするようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【0030】
加えて、第1摺動部材10の摺動面を構成するDLCに添加される炭化物として、より酸化されやすいW,Siのうちの少なくとも1種を含むようにしたので、より高い効果を得ることができる。
【実施例0031】
(実施例1-1)
第1摺動部材10として、ステンレス鋼材よりなるディスク状の第1基材の表面に第1摺動被膜としてWC及び水素を添加したDLC膜11を形成した試験片を用意した。また、第2摺動部材20として、アルミニウムよりなる球状の第2基材の表面に硬質アルマイトよりなる第2摺動被膜21を形成した試験片を用意した。用意した試験片について、水素含有雰囲気ガス中において、ボールオンディスク型の摩擦試験を行った。水素含有雰囲気ガスには、酸素ガス900ppmを添加した水素ガスを用いた。温度は25℃一定、荷重は1N、摺動速度は0.1m/sとし、安定化時の摩擦係数を測定した。その結果、摩擦係数μは0.02であった。得られた結果を表1に示す。
【0032】
(実施例1-2,1-3)
実施例1-2では、第1摺動部材10のDLC膜11への添加物をSiC及び水素としたことを除き、他は実施例1-1と同様にして摩擦試験を行い、安定化時の摩擦係数を測定した。実施例1-3では、第2摺動部材20の第2摺動被膜21を酸化アルミニウムにより構成したことを除き、他は実施例1-1と同様にして摩擦試験を行い、安定化時の摩擦係数を測定した。その結果、実施例1-2の摩擦係数μは0.021、実施例1-3の摩擦係数μは0.029であった。得られた結果を実施例1-1と共に表1に示す。
【0033】
(比較例1-1~1-5)
第1摺動部材の第1摺動被膜の材料、第2摺動部材の第2摺動被膜の材料を表1に示したように変えたことを除き、他は実施例1-1と同様にして摩擦試験を行い、安定化時の摩擦係数を測定した。具体的には、比較例1-1は、第1摺動被膜を水素添加DLC、第2摺動被膜を硬質アルマイトとし、比較例1-2は、第1摺動被膜を水素添加DLC、第2摺動被膜を酸化アルミニウムとし、比較例1-3は、第1摺動被膜をWC,水素添加DLC、第2摺動被膜を炭化ケイ素とし、比較例1-4は、第1摺動被膜及び第2摺動被膜を硬質アルマイトとし、比較例1-5は、第1摺動被膜及び第2摺動被膜を水素添加DLCとした。なお、比較例1-4では、第1摺動部材の第1基材をアルミニウムにより構成した。得られた結果を実施例1-1~1-3と共に表1に示す。
【0034】
【0035】
表1に示したように、本実施例によれば、比較例に比べて、摩擦係数を小さくすることができることが分かった。
【0036】
(実施例2)
水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度を0.000002ppm、0.02ppm、2ppm、900ppm、63000ppm、2100000ppmと変化させたことを除き、他は実施例1-1と同様にして摩擦係数を測定した。得られた結果を
図2に示す。
図2に示したように、水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガス濃度を高くするに従い、摩擦係数は小さくなった後、大きくなる傾向が見られた。すなわち、水素含有雰囲気ガスにおける酸素ガスの濃度は、1ppm以上10000ppm以下が好ましいことが分かった。
【0037】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。