(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079244
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】除細動システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240604BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240604BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/33 120
A61B5/287 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192080
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 純也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰太
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】小塚 拓真
(72)【発明者】
【氏名】白川 泰裕
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ13
4C053JJ23
4C127AA02
4C127BB05
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うこと。
【解決手段】右心房内に留置されるRA電極を有するRA用電極カテーテルと、冠状静脈洞に留置されるCS電極を有するCS用電極カテーテルと、RA用電極カテーテル及びCS用電極カテーテルの夫々に心腔内除細動のための電位の異なる電圧を印加する除細動器と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極カテーテル及び第2の電極カテーテルと、
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルの夫々に、独立に電位の異なる電圧を印加する除細動器と、
を有する、
除細動システム。
【請求項2】
前記第1の電極カテーテルは、右心房内に留置されるRA電極を有するRA用電極カテーテルであり、
前記第2の電極カテーテルは、冠状静脈洞に留置されるCS電極を有するCS用電極カテーテルである、
請求項1記載の除細動システム。
【請求項3】
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルの夫々の電極の電位を計測可能な生理検査装置と、
を有する、
請求項1記載の除細動システム。
【請求項4】
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルと前記除細動器との接続状態を、前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルと前記生理検査装置との接続状態に切り替え自在な切替部を更に有する、
請求項3記載の除細動システム。
【請求項5】
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルのうち少なくとも一方の電極カテーテルは、バイディレクショナルカテーテルである、
請求項2記載の除細動システム。
【請求項6】
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルのうち少なくとも一方の電極カテーテルは、ワイヤが挿通されるルーメンを有する、
請求項2記載の除細動システム。
【請求項7】
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルのうち少なくとも一方の電極カテーテルは、前記体内管腔の内壁に当接して、前記カテーテルシャフトの移動を規制する移動規制部を有する、
請求項1記載の除細動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動のアブレーション治療において、原因部位を特定するために心房細動を誘発させた際、又は、術中の自然発作として、心房細動、心房粗動又は心房頻拍が発生することがある。
【0003】
心腔内除細動は、術中に発生した心房細動などを電気的除細動により停止させる必要がある場合に、予め心腔内に留置している電極カテーテルに電気エネルギーを印加することにより細動を除去する。なお、心腔内除細動によれば、体外式除細動に比べて患者に与える電気エネルギーが少なくて済み(例えば体外式除細動が150~200J程度であるのに対して心腔内除細動では30J以下)、患者への負担が小さいといったメリットがある。
【0004】
心腔内除細動は、特許文献1の心腔内除細動カテーテルシステムに示すように、1本のRA-CSカテーテルを用いて行われている。RA-CSカテーテルは、所定間隔を空けて、冠状静脈洞および右心房に夫々配置する2つの電極群を有する。
RA-CSカテーテル1は、上大静脈を介して心臓の上側から心臓内に挿入されることが多いが、
図1に示すように、下大静脈を介して心臓の下側から心臓内に挿入されることもできる。心臓内に上側下側のいずれから挿入されても、
図1に示すように、心臓4内に挿入されたRA-CSカテーテル1は、RA電極2、CS電極3の夫々を、心臓4の右心房4aと冠状静脈洞4bに夫々配置し、これら電極2、3に電気エネルギーを印加して除細動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の心腔内除細動では、一本のRA-CSカテーテル1を操作して、その一本のRA-CSカテーテル1に設けられた電極2、3を留置している。このため、患者の心臓4が標準の大きさと比較して小さ過ぎたり大き過ぎたりする等の心臓4の大きさや心臓4の形状(角度を含む)等によっては、電極カテーテル1を操作した右心房4aと冠状静脈洞4bの最適な箇所への配置が困難になる場合がある。この場合、各電極2、3群に通電しても心房細動が止められない場合や、除細動をかける以外に行う電位の取得やペーシング等も行う場合に対応することが難しい。
【0007】
特に、
図1に示すように下大静脈から心腔内にカテーテル1を挿入する場合、カテーテル1を右心房4a内で輪を描くように一周させて輪形状にした上で、当該カテーテル1の先端を、冠状静脈洞4bに進めるため、各電極2、3の留置さえ困難となる。よって、下大静脈からRA-CSカテーテル1を、比較的に大きな心臓4内に挿入して、各電極2、3の夫々を右心房4aと冠状静脈洞4bに留置する場合、最適な箇所への留置が一層困難である。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うことができる除細動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る除細動システムの一態様は、
第1の電極カテーテル及び第2の電極カテーテルと、
前記第1の電極カテーテル及び前記第2の電極カテーテルの夫々に、独立に電位の異なる電圧を印加する除細動器と、を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来の心腔内除細動を行う際の心腔内にカテーテルの電極を留置した状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る除細動システムの要部構成を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る除細動システムを構成するRA用電極カテーテルを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る除細動システムを構成するCS用電極カテーテルを示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る除細動システムのカテーテルを下大動脈経由で患者の心腔内に留置した状態を模式的に示す図である。
【
図6】RA用電極カテーテルの変形例1を示す平面図である。
【
図7】CS用電極カテーテルの変形例1を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明に到った発明者の知見>
心腔内除細動を行う場合等において、心内心電図を取得するために、まず、複数の電極のついたカテーテル(電極カテーテル)を心臓内に挿入して、夫々の電極を一緒に心臓内の所定の箇所に留置する。
【0013】
電極カテーテルは、心臓内の測定場所である右心房及び冠状静脈洞の夫々に留置するRA電極及びCS電極を有する上述したRA-CSカテーテル、房室結節上に留置するHis電極を有するカテーテル(「His用電極カテーテル」ともいう)、及び、右心室に留置するRV電極を有するカテーテル(「RV用電極カテーテル」ともいう)である。RA-CSカテーテルは、RA電極とCS電極で電位測定及び除細動も可能であり、His用電極カテーテル及びRV用電極カテーテルは、His電極、RV電極で電位測定が可能である。心内心電図は、所定の測定位置に留置された各電極から直接心臓の電気信号を取得してリアルタイムで同時に記録することで形成される。
【0014】
各電極カテーテルが心臓内に挿入される際に、His用電極カテーテルとRV用電極カテーテルは、下大静脈、具体的には、足の付け根から心臓の中に挿入され、RA-CSカテーテルは、上大静脈、具体的には、鎖骨下や頸から挿入される。
【0015】
RA-CSカテーテルを上大静脈から心臓内に挿入する場合、頸(上大静脈の頸静脈)から挿入する場合もあるので、下大静脈からの挿入と比較して、生命のリスクが高く、RA-CSカテーテルを下大静脈から挿入することが考えられる。
【0016】
上述したように、RA-CSカテーテルを下大静脈から挿入して操作して、各電極で心臓を挟むように各電極を留置するには、熟練の技術が必要となる。
【0017】
心臓の大きさ・形状によって、当該心臓において右心房でRA電極が留置される箇所と冠状静脈洞でCS電極が留置される箇所との間の距離は異なる。
【0018】
よって、RA-CSカテーテルの心臓内への挿入を心臓の上側或いは下側のいずれかから行うにせよ、RA-CSカテーテルの操作だけでは、心臓の大きさ・形状に応じた各RA電極及びCS電極の好適な留置は困難である。
【0019】
これに対応して、熟練の操作技術の他に、RA電極とCS電極との間隔が異なるRA-CSカテーテルを複数用意し、心臓の大きさ・形状に応じて変更することが考えられるが、手間とコストが掛かるという問題が生じる。
【0020】
そこで、発明者は、除細動を一本のRA-CSカテーテルで行わず、RA、CSの夫々に容易に電極を留置して、除細動となる電気エネルギーを夫々独立に供給できるよう2本の電極カテーテルを有する構成とするに到った。
【0021】
なお、従来では、2つの電極群を一つのRA-CSカテーテルに設けているので、RA-CSカテーテル自体は、CS電極群とRA電極群とを絶縁したマルチルーメン構造となることが考えられる。
【0022】
すなわち、RA-CSカテーテル内における各ルーメンに、RA用、CS用といった電位の異なる電極に接続されるリード線等が配線またはその絶縁構造が形成されるために、そのルーメンの増加によりカテーテル自体の直径も大きくなり、心臓の大きさによっては、RA電極、CS電極の留置が更に困難になるという問題がある。これに対して、発明者の到った知見では、RA、CSの夫々に別々の電極カテーテルを用いて除細動を行うので、夫々のカテーテル径も小さくできる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
<1>システム構成
図2は、実施の形態に係る除細動システム100の全体構成を示す概略図である。
【0025】
除細動システム100は、右心房内に留置されるRA電極群24を有するRA用電極カテーテル(第1の電極カテーテル、
図3参照)20と、冠状静脈洞に留置されるCS電極群34を有するCS用電極カテーテル(第2の電極カテーテル、
図4参照)30とを用いて心腔内除細動を行うシステムである。
【0026】
除細動システム100は、除細動器12と、接続装置14と、RA用電極カテーテル20、CS用電極カテーテル30と、を有し、更に、心電計としての機能を有するポリグラフ検査装置40を有する。
【0027】
除細動器12、ポリグラフ検査装置40、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30は、接続装置14により接続されている。なお、本明細書のポリグラフ検査装置40は、心電計或いは心電図検査装置と読み換えてもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、接続装置14が除細動器12と別体となっているが、接続装置14は除細動器12と一体に除細動器12に組み込まれていてもよい。また、本実施の形態の除細動システム100は、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30を用いてRA、CSでの電位を測定できるので、他に、His、RV心電検査用のカテーテルを接続して、4つの電極カテーテルを介して心電検査装置としての機能を有してもよい。また、除細動システム100は、体外式除細動を行う機器としての体外パドルが接続可能に構成されてもよい。
【0029】
除細動器12は、RA用電極カテーテル20、CS用電極カテーテル30を用いて心腔内除細動を行うための電気エネルギー、具体的には、電位差が異なるように、または極性が異なるように、夫々独立に印加する電圧を生成する。
【0030】
除細動器12は、接続装置14の切替部16を介して、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30に接続可能である。除細動器12は、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30に接続されることにより、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30の夫々に、生成した電気エネルギー(電位差が異なる電圧)を印加する。例えば、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30で夫々極性の異なる電圧を印加する。
【0031】
除細動器12は、図示しないが、バッテリや昇圧回路、演算回路及び制御回路、LCD(Liquid Crystal Display)、AC電源を入力してDC電源に変換するAC/DC電源部、入出力端子部等を有する。除細動器12は、例えば、RA電極群24の除細動用電極及びCS電極群34の除細動用電極で得た心内電位に基づいて心電図を得るとともに、CS電極群34の除細動用電極及びRA電極群24の除細動用電極に心腔内除細動のための電位の異なる電圧を印加する。
【0032】
<2>電極カテーテルの構成
図3は、本実施の形態のRA用電極カテーテル20の基本構成を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る除細動システムを構成するCS用電極カテーテルを示す平面図である。なお、
図3~
図4に示すRA用電極カテーテル20とCS用電極カテーテル30の基本構成は同様であるが、夫々が備える電極群の構成が異なるようにしてもよい。
【0033】
<RA用電極カテーテル20>
図3に示すRA用電極カテーテル20は、カテーテルシャフト22と、ハンドル23と、RA電極群24と、コネクタ26とを有する。なお、
図3に示すRA用電極カテーテル20は、ハンドル23の操作により、カテーテルシャフト22の先端が延在方向に対して曲がるよう構成されているが、曲がる機能を有していなくてもよい。
【0034】
カテーテルシャフト22は、血管を通過して心腔内に挿入可能に構成され、先端部に、心臓内壁に当接すべくRA電極群24が表出して設けられている。
【0035】
カテーテルシャフト22は、全体的には先端に行くほど硬度が小さくなり、血管及び心腔内への押し込み時に手元側に作用する力に対応する構成とされているが、部分的には手元側よりも先端側の方に硬度が大きい部分があってもよい。
【0036】
RA電極群24は、RA用電極カテーテル20においてカテーテルシャフト22の先端近傍の所定区間に形成されており、RA用電極カテーテル20が心腔内に留置された際、右心房(つまりRA:Right Atrium)上部に置かれる。
【0037】
なお、RA電極群24の長手方向の長さは、患者の心臓サイズに応じて決められる。RA電極群24は、電位計測用と除細動用とを一つで兼用する電極(「兼用電極」とも称する)R1を、複数個有する。この複数個の電極R1はカテーテルシャフト22の所定位置に、延在方向に沿って、所定間隔を空けて並んで配置されている。
【0038】
各電極R1は等間隔で配置されることが好ましく、例えば、各電極R1はリング状であり幅は、1mm~2mm程度とされてもよい。例えば各電極R1幅1mmとし、各電極R1、R1間の幅を1mmとして配置して構成(
図3では例えば16個等間隔で配置)されてもよい。また、各電極R1の幅は、2mm程度とし、各電極R1、R1間の幅を1mmとして配置して構成(例えば、電極R1の幅2mmを8個)されてもよい。このように電位測定及び除細動の双方に適用可能であれば、電極R1の幅、電極R1、R2同士の幅はどのように設定されてもよい。
【0039】
本実施の形態においては、電極R1を、電位計測用として用いる場合、長手方向で適宜選択した一対の電極組R2が基本単位として構成される。
図3における電極組R2は、隣り合う電極R1で構成しているが、便宜上に構成したものであり、一つ置き、二つ置き以上で離れた電極R1同士で電極組R2を構成してもよい。
【0040】
例えば、電位計測の際に、電極組R2として一対の電極R1、R1を隣り合う電極R1、R1同士として双極電位(つまり差電圧)を算出した場合、広範囲な電位の影響を受けることなく局所的な電位のみが反映されたシャープな波形の双極電位を得ることができる。これにより、RAでの各計測ポイントの心内電位のより正確な計測が可能となる。
【0041】
また、本実施の形態において、電極R1を、除細動に用いる場合、RA電極群24は、所定間隔を空けて隣り合う複数の電極R1、R1同士が同電位となるように電気エネルギー(電圧)が供給される。RA電極群24に供給される電気エネルギーは、CS電極群34に供給される電圧とは電位差或いは極性の異なる電圧である。
【0042】
なお、カテーテルシャフト22の材質や、電極R1のカテーテルシャフト22内での内部配線などについては、例えば、特許文献1などに記載されているような、電位測定用電極の配線及び除細動用電極の配線等の既知の構成を適用できる。よって、これらについての詳しい説明は省略する。
【0043】
ハンドル23は、先端にカテーテルシャフト22が取り付けられ、後端にコネクタ26が設けられている。コネクタ26はRA電極群24と電気的に接続されており、これにより、RA電極群24は、コネクタ26が接続されるポリグラフ装置、心電計などの心電図検査装置や除細動器に電気的に接続される。
【0044】
このように、RA用電極カテーテル20は、コネクタ26を介して、RA用電極カテーテル20をどの外部機器(例えばポリグラフ検査装置や除細動器)に接続するかを適宜選択できる。
【0045】
上述した
図3の構成では、RA電極群24内に16個の電極R1が含まれているが、本発明の電極カテーテルはこれに加えてさらなる電位計測用電極を有してもよい。
【0046】
<CS用電極カテーテル30>
図4に示すCS用電極カテーテル30は、カテーテルシャフト32と、ハンドル33と、CS電極群34と、コネクタ36と、を有する。
【0047】
カテーテルシャフト32は、血管を通過して心腔内に挿入可能に構成され、先端部に、心臓内壁に当接すべくCS電極群34が表出して設けられている。
【0048】
カテーテルシャフト32は、例えば、バイディレクショナルタイプのカテーテルシャフトであり、手元側(基端部側)に接続されたハンドル33側の操作により、先端が延在方向に対して両側に曲がるよう構成されている。なお、バイディレクショナルタイプのカテーテルシャフト32の構成は周知の構成と同様に構成されてもよい。
【0049】
また、カテーテルシャフト32は、全体的には先端に行くほど硬度が小さくなり、血管及び心腔内への押し込み時に手元側に作用する力に対応する構成とされているが、部分的には手元側よりも先端側の方に硬度が大きい部分があってもよい。
【0050】
CS電極群34は、CS用電極カテーテル30においてカテーテルシャフト32の先端近傍の所定区間に形成されており、CS用電極カテーテル30が心腔内に留置された際、冠状静脈洞(つまりCS:Coronary Sinus)に置かれる。
【0051】
なお、CS電極群34の長手方向の長さは、患者の心臓サイズに応じて決められる。CS電極群34は、電位計測用と除細動用とを一つで兼用する電極C1を複数個有する。この複数個の電極C1は、カテーテルシャフト32の延在方向の所定位置に、延在方向に沿って、所定間隔を空けて並んで配置されている。
【0052】
各電極C1は、例えば、等間隔で配置されてもよく、例えば、各電極C1はリング状であり幅は、1mm~2mm程度とされてもよい。例えば各電極C1の幅1mmとし、各電極C1、C1間の幅を1mmとして配置して構成(
図4では例えば16個等間隔で配置)されてもよい。また、各電極C1の幅は、2mm程度とし、各電極C1、C1間の幅が1mmとして配置して構成(例えば、電極C1の幅2mmを8個)されてもよい。
【0053】
このように各電極C1が、電位測定及び除細動の双方に適用可能であれば、電極C1の幅、電極C1、C1同士の幅はどのように設定されてもよい。例えば、電極幅2mmの複数の電極C1において電極C1同士の幅が、一つの電極C1が左右で異なる幅で隣り合うように配置した構成としてもよい。この場合、電極C1毎の左で隣り合う幅と、右で隣り合う幅は同じにすることが好ましい。例えば、カテーテルシャフト20において、一つの電極C1の先端側で隣り合う電極との幅2mm、手元側で隣り合う電極との幅5mmとして複数の電極C1を配置する。この配置構成は、幅2mmの電極C1が一方向で2mm離れた電極組を、5mm間隔を開けて配置した構成と同じとなる。
【0054】
本実施の形態においては、電極C1を、電位計測用として用いる場合、長手方向で適宜選択した一対の電極組C2が基本単位として構成される。
図4における電極組C2は、隣り合う電極C1で構成しているが、便宜上に構成したものであり、一つ飛ばした電極R1同士で電極組C2を構成してもよい。
【0055】
例えば、電位計測の際に、電極組C2としての一対の電極C1、C1を隣り合う電極C1、C1同士として双極電位(つまり差電圧)を算出した場合、広範囲な電位の影響を受けることなく局所的な電位のみが反映されたシャープな波形の双極電位を得ることができる。これにより、CSでの各計測ポイントの心内電位のより正確な計測が可能となる。
【0056】
また、本実施の形態において、電極C1を、除細動に用いる場合、CS電極群34は、所定間隔を空けて隣り合う複数の電極C1、C1同士が同電位になるように電気エネルギーが供給される。
【0057】
なお、カテーテルシャフト32の材質や、電極C1のカテーテルシャフト32内での内部配線などについては、例えば、特許文献1などに記載されているような、電位測定用電極の配線及び除細動用電極の配線等の既知の構成を適用できる。よって、これらについての詳しい説明は省略する。
【0058】
ハンドル33は、先端にカテーテルシャフト32が取り付けられ、後端に取り付けられたコネクタ36を介して、CS電極群34と、コネクタ36が接続されるポリグラフ装置、心電計などの心電図検査装置や除細動器とが電気的に接続される。
【0059】
このように、CS電極カテーテル30は、コネクタ36を介して、CS用電極カテーテル30をどの外部機器(例えばポリグラフ検査装置40や除細動器12)に接続するかを適宜選択できる。
【0060】
上述した
図1の構成では、CS電極群34内に16個の電極C1が含まれているが、本発明の電極カテーテルはこれに加えてさらなる電位計測用電極を有してもよい。
【0061】
図5は、本発明の実施の形態に係る除細動システムのカテーテルを下大動脈経由で患者の心腔内に留置した状態を模式的に示す図である。
【0062】
除細動システム100を用いて心腔内除細動を行う場合、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30を、下大静脈から心腔内に挿入する。
【0063】
そして、RA用電極カテーテル20は右心房41内に挿入されて、RA電極群24を右心房41内の内壁面の所定位置に留置する。
【0064】
一方、CS用電極カテーテル30は、冠状静脈洞42に挿入され、CS電極群34を冠状静脈洞42に留置する。
【0065】
切替部16により接続装置14を介して除細動器12とRA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30が接続された状態で、除細動器12は、生成した電気エネルギーを、RA用電極カテーテル20、CS用電極カテーテル30に同期して供給する。
【0066】
これにより、RA用電極カテーテル20、CS用電極カテーテル30の夫々が、同期通電され、除細動を好適に行うことができる。
【0067】
また、除細動の前後において、ポリグラフ検査装置40に接続して、ポリグラフ検査装置40によって、RA用電極カテーテル20のRA電極群24、CS用電極カテーテル30のCS電極群34の夫々の電位を計測するができる。また、除細動システム100は、HiS、RV心電検査用のカテーテルを有し、夫々HiS、RVに、夫々が有するHiS電極群、RV電極群を留置する。これにより、除細動システム100は、RA用電極カテーテル20とCS用電極カテーテル30とともに、HiS、RV心電検査用のカテーテルをポリグラフ検査装置40に接続できる。これより除細動システム100は、RA、CSとともに、His、RVにおける電位を測定することで、心内心電図を測定できる。
【0068】
<効果>
除細動システム100によれば、心腔内除細動を行う際に右心房41内と冠状静脈洞42とに夫々留置されるRA電極群24とCS電極群34は、異なる2本のRA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30により留置される。
【0069】
本実施の形態の除細動システム100によれば、患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うことができる。
【0070】
このように異なる2本のRA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30により、右心房41内と冠状静脈洞42とに夫々に電位(あるいは極性)の異なる電圧を供給する。よって、一本のカテーテルと異なり、内部にRA電極群24の配線とCS電極群34の配線とを確実に絶縁するための絶縁体を設ける必要が無い。これによりRA電極群24とCS電極群34を有する従来の一本のカテーテル内での絶縁破壊の発生を減少させることができる。また、各RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30の夫々において、絶縁体の代わりに、直径を大きくすることなく、リード線の配線、つまり、電極の数を増加することができ、測定する電位の精度を向上させることができる。
【0071】
RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30が別々であるので、右心房41及び冠状静脈洞42へ、夫々専用のカテーテルで、RA電極群24とCS電極群34を夫々留置すればよい。RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30の双方を下大静脈から挿入して、右心房41にRA電極群24を、冠状静脈洞42にCS電極群34を好適な位置に夫々容易に留置できる。
【0072】
また、心内心電図を取得する場合でも、従来と異なり、上大静脈から心腔内にカテーテルを挿入することなく、下大静脈から、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30を挿入して、RA電極群24とCS電極群34を適宜好適な位置に留置できる。これにより、RA用電極カテーテル20とCS用電極カテーテル30を、His用電極カテーテル、RV用電極カテーテルとともに下大静脈から挿入し、各電極を所定の位置に留置することができる。
【0073】
また、RA電極群24とCS電極群34を夫々異なるRA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30に設けている。よって、夫々のカテーテルに極性の異なる配線を施す必要が無いので、その分の領域を用いて、例えば、バイディレクショナルタイプのカテーテル或いは、ルーメン付きカテーテルにすることができる。
【0074】
このように本実施の形態の除細動システム100によれば、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30を夫々下大静脈から挿入して、複雑な操作を行うことなく、RA電極群24、CS電極群34を所定の位置に留置できる。すなわち、電極カテーテルで心臓を囲む必要が無く、患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うことができる。また、RA用電極カテーテル20及びCS用電極カテーテル30の夫々において高度な絶縁機構を有することなく、各電極のリード線を配設できるので、より多くの電極を設けて、つまり従来と異なり多極で、より正確な電位を測定できる。
【0075】
<変形例1>
図6は、RA用電極カテーテルの変形例1を示す平面図である。
図6に示すRA用電極カテーテル20Aは、RA用電極カテーテル20に替えて除細動システム100に用いられる。
【0076】
RA用電極カテーテル20Aは、RA用電極カテーテル20と比較して、ハンドルを有していない点で構造が異なる。
【0077】
RA用電極カテーテル20Aは、カテーテルシャフト22Aと、コネクタ28と、RA電極群24Aとを有する。コネクタ26Aはカテーテルシャフト22Aの基端部に接続され、カテーテルシャフト22A内を通るリード線を介して、電極群24Aの電極R1に夫々接続されている。
【0078】
RA電極が留置される箇所は、下大静脈からRA用電極カテーテル20を挿入すれば、直線的に移動してRAに位置させることができ、強制的に先端部を曲げる機能が無くても、RA用電極カテーテル20自体の操作で所定の位置に留置しやすい。よって、ハンドル23を有していないRA用電極カテーテル20Aを用いてもRA用電極カテーテル20を用いた場合と同様にRA電極R1を留置できる。加えて、RA用電極カテーテル20を用いた場合よりも、安価な電極カテーテルとなり、簡易な安価な構成の心腔内除細動システム100を実現できる。
【0079】
<変形例2>
図7は、CS用電極カテーテルの変形例1を示す平面図であり、
図8は、
図7のA-A線断面図である。
図7に示すCS用電極カテーテル30Aは、ハブ35と、カテーテルシャフト32と、移動規制部としてのバルーン50と、電極群34Aとを有する。
【0080】
CS用電極カテーテル30Aは、例えば、除細動システム100において、電極カテーテル30に替えて用いられる。先端部分32aを含むカテーテルシャフト32自体が、患者の足の付け根の静脈(大腿静脈)から経皮的に挿入されて、電極群34Aが所定の箇所に留置される。
【0081】
ハブ35には、リード線が接続されたコネクタ38と、ガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤポート37と、バルーン50を拡張するために用いられるバルーン拡張用ポート39とが設けられている。
ガイドワイヤポート37、コネクタ38及びバルーン拡張用ポート39は、夫々カテーテルシャフト32に設けられたガイドワイヤルーメン370、リード線用ルーメン380及びバルーン拡張用ルーメン390に夫々接続されている。
【0082】
カテーテルシャフト32は、可撓性を有し、設置された箇所の形状に対応して湾曲自在であり、先端中央に先端孔31を有する。カテーテルシャフト32は、マルチルーメンであり、リード線用ルーメン380、ガイドワイヤルーメン370及びバルーン拡張用ルーメン390を、夫々カテーテルシャフト32の長手方向に沿って延在するように備える。
カテーテルシャフト32の先端部分32aにおいて、先端側に向かって順に電極群34Aとバルーン50とが配設されている。
【0083】
ガイドワイヤルーメン370は、カテーテルシャフト32の軸を含む中央部分に形成され、ガイドワイヤ(図示省略)が挿通される。ガイドワイヤルーメン370は、先端孔31で外部に開口するように形成され、挿通するワイドワイヤを先端孔31から導出可能となっている。先端孔31から導出させたガイドワイヤを用いて、カテーテルシャフト30Aは所定の位置に案内されて設置される。ガイドワイヤルーメン370の周囲には、リード線用ルーメン380とバルーン拡張用ルーメン390が周方向で等間隔を空けて配設されている。なお、先端孔31、ガイドワイヤルーメン370及びガイドワイヤポート37からガイドワイヤを引き抜いて、ガイドワイヤポート37から薬剤を投入して先端孔31から外部に吐出する薬剤吐出路として用いてもよい。
【0084】
リード線用ルーメン380には、リード線が配線され、リード線は電極群34Aの電極R1の夫々とハブ35のコネクタ38とを接続する。コネクタ38はポリグラフ検査装置40や除細動器12等の外部機器に接続される。除細動器12に接続されると、除細動器12は、電極群34Aの電極R1に給電可能であり、ポリグラフ検査装置が接続されると、ポリグラフ検査装置40は、電極R1からの電位測定が可能である。なお、カテーテルシャフト32では、リード線はリード線用ルーメン380に通して電極R1に接続された構成にしているが、これに限らず、リード線は、カテーテルシャフト32自体に埋設されて一体化した構成にしてもよい。
【0085】
バルーン拡張用ルーメン390は、バルーン50と、ハブ35のバルーン拡張用ポート39とを連通し、バルーン拡張用ポート39からバルーン50内部へ、加圧流体としての生理食塩水等を案内して、バルーン50を拡張自在にする。
【0086】
電極群34Aは、電極群34と同様の基本的構成を有し、カテーテルシャフト32の先端部分32aの表面に、長手方向で所定間隔を空けて配置された複数の電極R1を有する。電極群34Aがカテーテルシャフト32において、配設される箇所はどの位置でもよい。また、電極R1の数やその間隔をどのように設けても良い。複数の電極R1の夫々は、例えば、同幅(カテーテルシャフト32の延在方向の長さ)に形成され、また、隣り合う電極R1同士の間には、所定の間隔(電極幅と同じ長さでもよい)が設けられている。また、電極R1は、例えば、ステンレス、金や白金の金属等で構成される。電極群34Aは、除細動を行うための電気エネルギーが供給(電圧が印加)される。
【0087】
バルーン50は、カテーテルシャフト32が挿入されるCS等の体内管腔の内壁に当接して、カテーテルシャフトの移動を規制する移動規制部の一例として機能する。
【0088】
バルーン50は、バルーン拡張用ポート39からバルーン拡張用ルーメン390を介して加圧流体が注入されることで、カテーテルシャフト32の表面から径方向外方(放射方向)に張り出すように拡張可能であり、拡縮自在に設けられている。
図7ではバルーン50は、実線により拡張前の状態が図示され、想像線により拡張後の状態が図示されている。
【0089】
バルーン50は、例えば、CS用電極カテーテル30Aが挿入されるCSの内壁に当接してアンカーとして機能し、カテーテルシャフト32(バルーン50が配設された部位に相当)を、CS内において長手方向の移動を規制する。
【0090】
本実施の形態の心腔内除細動システム100において、CS、RA内に設置したCS用電極カテーテル30Aと、RA用電極カテーテル20、20Aとを用いて、除細動を行う場合、バルーン50をアンカーとして用いることができる。これにより、CS用電極カテーテル30A(カテーテルシャフト32)長手方の移動が規制され、電極群34Aの移動を規制できる。
【0091】
また、バルーン50は、拡張した際に拡径し、全周に亘ってCSの内壁に当接する構成としてもよい。この場合、カテーテルシャフト32が挿入されたCSにおいて、バルーン50を挟み電極群34Aが配置されている内部と、バルーン50より先端側の内部とを仕切ることができる。
【0092】
なお、CS用電極カテーテル30Aのように、CS用電極カテーテル30をガイドワイヤルーメン付カテーテルで構成すれば、CS用電極カテーテル30のルーメンにガイドワイヤを挿通できる。これにより、ガイドワイヤは、冠状静脈洞42の所定の位置にCS電極群34が留置するように、CS用電極カテーテル30を心臓内に案内して、冠状静脈洞42において所望の位置に留置できる。RA用電極カテーテル20をワイドワイヤルーメン付カテーテルで構成してもよく、例えば、CS用電極カテーテル30Aの構成をRA用電極カテーテル20に適応してもよい。
【0093】
なお、RA用電極カテーテル20、20A、CS用電極カテーテル30、30Aにおける電極R1、C1は、それぞれ電位計測用の電極と除細動用の電極を一つの電極で兼ねる構成としたが、夫々の専用とした電極或いは電極群を交互に適宜配置した構成としてもよい。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る除細動システムは、患者の心臓の大きさ・形状に関わらず、心腔内除細動を容易に確実に行うことができる効果を有し、心腔内除細動に用いられるシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0096】
12 除細動器
14 接続装置
16 切替部
20、20A RA用電極カテーテル(第1の電極カテーテル)
22、32 カテーテルシャフト
23、33 ハンドル
24 RA電極群
26、26A、36、36A コネクタ
30、30A CS用電極カテーテル(第2の電極カテーテル)
31 先端孔
34 CS電極群
35 ハブ
40 ポリグラフ検査装置(生理検査装置)
100 心腔内除細動システム
C1、R1 電極
C2、R2 電極組