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特開2024-79252予測装置、予測方法、制御プログラム、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079252
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、制御プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/10 20060101AFI20240604BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B02C17/10
B02C25/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192091
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】豊倉 祥太
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063FF35
4D063GC29
4D063GD02
4D067FF02
4D067GB01
(57)【要約】
【課題】ボールミルを用いた破砕の予測精度を改善する。
【解決手段】予測装置(10)は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測部(14)と、予測された原料の粒度の変化を出力する出力部(15)出力部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測部と、
予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力部と、を備えた予測装置。
【請求項2】
前記原料の前記粒度を複数の階級に分けたとき、
前記衝撃力を用いて、前記原料が砕かれて当該原料の粒度の前記階級が遷移する速度を規定する速度係数を算出する算出部を備え、
前記予測部は、前記速度係数と、前記原料における前記複数の階級それぞれが占める割合を示す体積率とから、前記原料の粒度の変化として、前記体積率の時間的変化を予測する、請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記算出部は、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごとに前記速度係数を算出し、
前記予測部は、前記複数の階級それぞれについて、前記体積率の変化を予測する、請求項2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記複数の階級全てについて、微小時間間隔で、前記体積率の変化量と微小時間経過後の前記体積率とを演算することにより、前記体積率の時間的変化を予測する、請求項2に記載の予測装置。
【請求項5】
前記算出部は、以下に示す式(1)を用いて、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごと前記速度係数を算出し、
【数1】
ここで、kは、速度係数、aおよびcはパラメータであり、
slurryは、原料および溶媒の合計量を示すスラリー量であり、
fiは、衝撃力を複数の階級に分けたときにおける階級がiのときの衝突頻度であり、
collision,iは、階級がiのときの衝撃力であり、
fractureは、原料粒子径に基づく破砕強度であり、
before→afterは、階級の遷移を示し、
前記予測部は、
前記複数の階級それぞれについて、或る階級を注目階級としたとき、
〔〔(注目階級に遷移する前の階級から注目階級への遷移の速度係数)×(注目階級に遷移する前の階級の体積率)〕の遷移の組合せの和〕-〔(注目階級から他の階級への遷移の速度係数の遷移の組合せの和)×(注目階級の体積率)〕
で示す式により得られる注目階級の体積率の微小時間ごとの変化から、前記複数の階級それぞれの体積率の時間的変化を予測する、請求項2に記載の予測装置。
【請求項6】
前記ボールミルの寸法、材質、回転数、ボール径、ボール量、ボール材質および原料の量を条件として導出された前記衝撃力を用いて前記予測部が予測した前記体積率の時間的変化が、所望の体積率となるか否かを判定する判定部を備えた請求項2に記載の予測装置。
【請求項7】
前記条件および当該条件を用いた場合の前記体積率の時間的変化の組合せを教師データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、所望の体積率となる所望条件を導出する導出部を備えた、請求項6に記載の予測装置。
【請求項8】
前記複数の階級の1つは、体積率を最大化すべき粒度の範囲に設定されている請求項2に記載の予測装置。
【請求項9】
ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測ステップと、
予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力ステップと、を含む予測方法。
【請求項10】
請求項1に記載の予測装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記予測部および前記出力部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載した制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料がボールミルにより破砕されるときの大きさの変化を予測する予測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールミルを用いて原料を破砕する装置が知られている。また、ボールミルを用いた破砕のシミュレーション方法も知られている。例えば、非特許文献1には、3サイズクラスの物質収支モデルを用いて、乾式回転ミルの2Dシミュレーションを行う方法が記載されている。また、非特許文献2には、破砕速度係数と破砕エネルギーとを結びつけた破砕物理モデルを用いて、乾式回転ミルの3Dシミュレーションを行う方法が記載されている。また、非特許文献3には、物質収支モデルを用いて、乾式振動ミルの3Dシミュレーションを行う方法が記載されている。また、非特許文献4には、速度係数に原料体積を含めたモデルを用いて、湿式回転ミルの3Dシミュレーションを行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Orozco, L. F., Nguyen, D. H., Delenne, J. Y., Sornay, P., & Radjai, F. (2020). Discrete-element simulations of comminution in rotating drums: Effects of grinding media. Powder Technology, 362, 157-167.
【非特許文献2】Capece, M., Bilgili, E., & Dave, R. N. (2014). Formulation of a Physically Motivated Specific Breakage Rate Parameter for Ball Milling via the Discrete Element Method. AIChE Journal, 60(7), 2404-2415.
【非特許文献3】Capece, M., Dave, R. N., & Bilgili, E. (2018). A pseudo-coupled DEM-non-linear PBM approach for simulating the evolution of particle size during dry milling. Powder Technology, 323, 374-384.
【非特許文献4】Mori, H., Mio, H., Kano, J., & Saito, F. (2004). Ball mill simulation in wet grinding using a tumbling mill and its correlation to grinding rate. Powder Technology, 143-144, 230-239.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、原料を破砕するエネルギーを要素として含む破砕物理モデルを用いてシミュレーションを行っている。エネルギーを用いた場合、質量、速度、時間の要素からエネルギーが大きくなり、実際には破砕されない場合でも破砕に至ると予測される可能性が生じる。よって、ボールミルを用いた破砕の予測精度を改善する余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る予測装置は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測部と、予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力部と、を備える。
【0006】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る予測方法は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測ステップと、予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、ボールミルにおけるボール同士の衝突に伴う衝撃力を用いて原料の粒度の変化を予測するので、エネルギーを用いた場合と比較して正確に粒度の変化を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る破砕条件決定システムの概要を示すブロック図である。
図2】予測装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
図3】衝撃力分布の例を示す図である。
図4】粒度分布の例を示す図である。
図5】粒度分布の例を示す図である。
図6】ボールミルシミュレーション装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図7】予測装置における処理の流れを示すフローチャートである。
図8】パラメータ決定装置と予測装置、ボールミルシミュレーション装置、粒度分布計測装置との関係を示す図である。
図9】破砕物理モデルのパラメータ決定処理の流れを示すシーケンス図である。
図10】時間をあけて複数回計測した粒度分布の例を示す図である。
図11】粒度分布を複数の階級に分けた例を示す図である。
図12】各階級の体積率の時間推移をグラフで示した例を示す図である。
図13】衝撃力分布の例を示す図である。
図14】計測結果と予測装置による予測結果とを示した例を示す図である。
図15】破砕条件決定システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
図16】予測結果の例を示す図である。
図17】予測装置の変形例を示す機能ブロック図である。
図18】予測装置の変形例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態に係る破砕条件決定システム1は、物品の製造に用いる原料を、ボールミルを用いて破砕するときの破砕条件を決定するものである。破砕条件決定システム1は、原料の粒度が所望のものとなるように、ボールミルの破砕条件を決定する。物品とは、例えば、セラミックス製品であり、原料とは、セラミックス製品の元となる原料である。
【0010】
本明細書において破砕とは、ボールミルを用いて原料を砕くことを言う。すなわち、原料の粒が凝集した凝集体を砕いて原料の粒にすること、および原料の粒を砕いて粒よりも小さい紛体にすることを総称して破砕と呼ぶ。換言すれば、一次粒子凝集体が分解されること、つまり解砕されること、および一次粒子のさらなる細分化、つまり粉砕されることを総称して破砕と呼ぶ、
図1に、本開示に係る破砕条件決定システム1の概要を示す。図1に示すように、破砕条件決定システム1は、予測装置10、ボールミルシミュレーション装置20、粒度分布計測装置30、および破砕条件決定装置40を含む。
【0011】
予測装置10は、ボールミルシミュレーション装置20により導出された衝撃力分布、および粒度分布計測装置30により算出された初期体積率を用いて、ボールミルにより原料を破砕するときの、原料の粒度の変化を予測する。衝撃力分布および初期体積率の詳細については後述する。本明細書では、原料の大きさを原料の粒度と呼ぶ。すなわち、原料の粒度とは、原料の一粒一粒が固まって凝集体を形成しているときは、この凝集体の大きさを示す。また、凝集体が破砕されて一粒一粒になったときは、当該1粒の原料の大きさを示す。さらに、一粒の原料が粉砕されてより細かい紛体になったときは、その紛体の大きさを示す。換言すれば、原料の粒度とは、一次粒子、一次粒子凝集体、および一次粒子の粉砕によって生じた粒子の大きさを示す。
【0012】
図2を参照して、予測装置10、ボールミルシミュレーション装置20、粒度分布計測装置30の詳細について説明する。図2は、予測装置10、ボールミルシミュレーション装置20、粒度分布計測装置30の要部構成を示す機能ブロック図である。
【0013】
ボールミルシミュレーション装置20は、与えられた破砕条件下でのボールミルのシミュレーションを実行する。図2に示すように、ボールミルシミュレーション装置20は、破砕条件受付部21、およびシミュレーション部22を含む。
【0014】
破砕条件受付部21は、ボールミルのシミュレーションに用いる破砕条件を受け付ける。破砕条件としては、例えば、ボールミルのミルの寸法、ミルの材質、回転数、ボール径、ボール量、ボールの材質等が挙げられる。ミルの材質またはボールの材質は、例えば、ミル又はボールを構成する材料の密度、ヤング率、ポアソン比又は摩擦係数などを含んでいてもよい。例えば、破砕条件受付部21は、ボールミルシミュレーション装置20に設けられた入力部(図示せず)を介して、ユーザによって入力された破砕条件を受け付ける。破砕条件受付部21が、予め破砕条件が格納されているデータベースから破砕条件を取得する構成であってもよい。
【0015】
シミュレーション部22は、破砕条件受付部21で受け付けた破砕条件でのボールミルのシミュレーションを実行する。ボールミルのシミュレーションとしては、例えば、離散要素法(DEM: discrete element method)を用いることができる。
【0016】
ボールミルシミュレーション装置20は、シミュレーション部22によるシミュレーション結果からボールミルにおけるボールの衝撃力分布を導出する。衝撃力分布とは、ボールミルのボールの挙動を示すものであり、ボール同士の衝突による衝撃力と衝突頻度との関係を示すものである。図3に、衝撃力分布の例を示す。図3に示す例では、横軸に衝撃力(N)、縦軸に衝突頻度(回数)をとったグラフが示されている。ここでは、衝撃力分布を線グラフで示しているが、これに限られるものではなく、衝撃力ごとの衝突頻度を棒の図面で示した棒グラフで示してもよいし、衝撃力ごとの衝突頻度を示す点をそれぞれつないだ折れ線グラフで示してもよい。
【0017】
ボールミルシミュレーション装置20は、導出した衝撃力分布を予測装置10に出力する。
【0018】
粒度分布計測装置30は、ボールミルにより破砕される原料の粒度分布を計測する。図2に示すように、粒度分布計測装置30は、階級分け部31を含む。粒度分布計測装置30は、例えば、レーザー回折・散乱法によって、粒度分布を計測することができる。
【0019】
階級分け部31は、計測した粒度分布を複数の階級に分け、原料がそれぞれの階級に占める割合を算出する。例えば、粒径がd1以下を階級T、d1以上d2以下を階級S、d2以上d3以下を階級M、d3以上を階級Lの4つの階級に分ける場合を考える。この場合で、計測した粒度分布が図4に示すよう割合であったとき、階級分け部31は、階級Tが0%、階級Sが0%、階級Mが25%、階級L4が75%というようにそれぞれの階級に占める割合を算出する。同じように、計測した粒度分布が図5に示すよう割合であったとき、階級分け部31は、階級Tが0%、階級Sが3%、階級Mが90%、階級Lが7%というようにそれぞれの階級に占める割合を算出する。
【0020】
複数の階級の1つは、体積率を最大化すべき粒度の範囲に設定されてもよい。体積率を最大化すべき粒度の範囲とは、ユーザが、体積率が最大化されることを所望する粒度の範囲であってよい。また、複数の階級の1つは、原料の1粒の粒径の範囲が設定されているものであってもよい。例えば、原料の1粒の粒径がd1からd2の場合、階級の1つの範囲がd1からd2となるように設定されてもよい。
【0021】
そして、粒度分布計測装置30は、ボールミルにより粉砕される前の原料の粒度分布から、階級分け部31が算出した、それぞれの階級における原料の割合を初期体積率として予測装置10に出力する。
【0022】
予測装置10は、ボールミルシミュレーション装置20により導出された衝撃力分布、および粒度分布計測装置30により算出された初期体積率を用いて、ボールミルを用いて原料を破砕するときの、原料の粒度の変化を予測する。図2に示すように、予測装置10は、第1取得部11、第2取得部12、算出部13、予測部14、および出力部15を含む。
【0023】
スラリー量取得部19は、入力部(図示せず)を介してユーザから入力されたスラリー量を取得し、算出部13に送出する。スラリー量とは、原料と溶媒との量の合計である。スラリー量を、粒度分布計測装置30によって計測可能である場合、スラリー量取得部19は、スラリー量を、ユーザの入力ではなく、粒度分布計測装置30から取得する構成であってもよい。
【0024】
第1取得部11は、ボールミルシミュレーション装置20から衝撃力分布を取得し、算出部13に送出する。
【0025】
第2取得部12は、粒度分布計測装置30から初期体積率を取得し、予測部14に送出する。
【0026】
算出部13は、第1取得部11が取得した衝突力分布、およびスラリー量取得部19が取得したスラリー量を用いて、原料が砕かれて階級が遷移する速度を規定する速度係数を算出する。算出部13は、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごとに速度係数を算出する。具体的には、算出部13は、以下の式(1)で示される破砕物理モデル51を用いて、速度係数を算出する。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、kは、速度係数であり、aおよびcは、パラメータである。Vslurryは、原料および溶媒の合計の体積を示すスラリー量(m)である。fiは、衝撃力を複数の階級に分けたときにおける階級がiのときの衝突頻度である。Fcollision,iは、階級がiのときの衝撃力(N)である。Ffractureは、原料粒子径に基づく破砕強度(N)であり、dを原料の粒子径(μm)としたときpd(p、qはパラメータ)で表される。before→afterは、階級の遷移前および遷移後を示す。例えば、kL→Mであれば、階級Lから階級Mへ遷移する場合の速度係数kを示す。
【0029】
予測部14は、複数の階級それぞれについて、微小時間間隔で、体積率の変化量と微小時間経過後の体積率とを演算することにより、体積率の時間的変化を予測する。詳細には、予測部14は、前記複数の階級それぞれについて、或る階級を注目階級としたとき、〔〔(注目階級に遷移する前の階級から注目階級への遷移の速度係数)×(注目階級に遷移する前の階級の体積率)〕の遷移の組合せの和〕-〔(注目階級から他の階級への遷移の速度係数の遷移の組合せの和)×(注目階級の体積率)〕で示す式により得られる注目階級の体積率の微小時間ごとの変化から、複数の階級それぞれの体積率の時間的変化を予測する。
【0030】
具体的には、予測部14は、以下の式(2)~式(5)で示される物質収支モデル52を用いて、各階級における体積率の時間的変化を算出する。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、L、M、S、Tは、この順で大きさが小さくなる、原料の粒度の4つの階級を示す。kは、数式1で求めた速度係数である。Vは、原料の体積率であり、添え字は、階級を示す。tは、時間である、
出力部15は、予測部14が予測した結果を出力する。出力部15は予測結果を外部の装置に出力してもよいし、出力部15自身がディスプレイ、スピーカ等を備え、これらを用いて予測結果を出力してもよい。
【0033】
〔衝撃力分布の出力処理〕
次に、図6を参照して、ボールミルシミュレーション装置20による衝撃力分布の出力処理の流れを説明する。図6は、ボールミルシミュレーション装置20における処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
図6に示すように、ボールミルシミュレーション装置20は、まず、破砕条件受付部21で破砕条件を受け付ける(S101)。次に、ボールミルシミュレーション装置20のシミュレーション部22は、受け付けた破砕条件下におけるボールミルのシミュレーションを行う(S102)。上述したように、シミュレーション部22は、離散要素法を用いてシミュレーションを行う。その後、ボールミルシミュレーション装置20は、シミュレーションにより、ボール同士の衝突に伴う衝撃力の分布である衝撃力分布を導出し(S103)、予測装置10に出力する(S104)。
【0035】
〔予測装置10による処理の流れ〕
次に、図7を参照して、予測装置10の処理の流れを説明する。図7は、予測装置10における処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、予測装置10は、第1取得部11にて、ボールミルシミュレーション装置20からボールミルの衝撃力分布を取得する(S201)。また、第2取得部12にて、粒度分布計測装置30から原料の初期体積率を取得する(S202)。さらに、予測装置10は原料投入量、すなわち原料と溶媒との体積の合計量であるスラリー量を取得する(S203)。
【0036】
そして、予測装置10の算出部13は、取得した衝撃力分布および原料投入量と、破砕物理モデル51とを用いて、遷移する階級間ごとの速度係数kを算出する(S204)。次に、予測装置10の予測部14は、算出部13が算出した速度係数k、および取得した初期体積率と、物質収支モデル52とを用いて、階級ごとの体積率の時間的変化を予測する(S205、予測ステップ)。最後に、出力部15は、予測部14の予測結果である階級ごとの体積率の時間的変化を出力する(S206、出力ステップ)。
【0037】
〔破砕物理モデル51のパラメータの決定〕
次に、図8図14を参照して、破砕物理モデル51のパラメータの決定処理について説明する。破砕物理モデル51のパラメータ決定処理では、破砕物理モデル51におけるパラメータa、c、p、qを決定する。
【0038】
図8は、破砕物理モデル51で用いるパラメータを決定するときの破砕物理モデル51のパラメータを決定するパラメータ決定装置50と、予測装置10、ボールミルシミュレーション装置20、粒度分布計測装置30との関係を示す。パラメータ決定装置50は、予測装置10において、破砕条件を決定するための予測処理が行われる前に、予測装置10で用いる破砕物理モデル51のパラメータを決定する。パラメータ決定装置50は、粒度分布計測装置30により計測された計測結果と、予測装置10による予測結果とを比較して、予測装置10に予測処理に用いる破砕物理モデル51のパラメータを決定する。
【0039】
図9は、破砕物理モデル51のパラメータ決定処理の流れを示すシーケンス図である。図9に示すように、パラメータの決定処理では、まず、複数の破砕条件下で、実際にボールミルにおいて原料の破砕処理を行う。そして、粒度分布計測装置30は、複数の破砕条件それぞれにおける粒度分布を、時間をあけて複数回計測する(S301)。
【0040】
図10に、時間をあけて複数回計測した粒度分布の例を示す。図10では、破砕条件A、破砕条件B、および破砕条件Cでの、時間t=0、t=t1、t=t2、…、t=tnにおける粒度分布を示している。破砕条件は3個に限られるものではなく、2個以下であってもよいし、4個以上であってもよい。ここでの破砕条件は、破砕物理モデル51のパラメータを決定するために用いられるものであり、所望の体積率を導出するための破砕条件(図15参照)とは異なっていてよい。
【0041】
次に、粒度分布計測装置30は、計測した粒度分布を複数の階級に分ける(S302)。図11に、粒度分布を複数の階級に分けた例を示す。図11に示す例では、粒径がd1以下の階級T、d1以上d2以下の階級S、d2以上d3以下の階級M、d3以上の階級Lの4つの階級に分けている。
【0042】
そして、粒度分布計測装置30は、各階級の体積率の時間推移を示す情報をパラメータ決定装置50に送信する(S303)。このとき、原料投入量も合わせて送信してもよい。図12に、各階級の体積率の時間推移をグラフで示した例を示す。図12の1201は、階級Tにおける各破砕条件下の体積率の時間推移を示す。図12の1202は、階級Sにおける各破砕条件下の体積率の時間推移を示す。図12の1203は、階級Mにおける各破砕条件下の体積率の時間推移を示す。図12の1204は、階級Lにおける各破砕条件下の体積率の時間推移を示す。
【0043】
一方、ボールミルシミュレーション装置20は、粒度分布計測装置30がステップS301で計測を行った条件と同じ破砕条件(例えば、破砕条件A、破砕条件B、破砕条件C)を設定する(S311)。そして、これらの破砕条件下におけるボールミルシミュレーションを行い(S312)、破砕条件それぞれでのボールシミュレーションの結果、導出された衝撃力分布をパラメータ決定装置50に出力する。
【0044】
図13に衝撃力分布の例を示す。図13に示す例は、図3に示す例と同じように、縦軸を衝突頻度(回数)、縦軸を衝撃力(N)とした線グラフで、破砕条件ごとの衝撃力分布が示されている。
【0045】
パラメータ決定装置50は、取得した各階級の体積率の時間推移から初期体積率を抽出し、原料投入量および各破砕条件における衝撃力分布とともに予測装置10に送信する(S321)。
【0046】
パラメータ決定装置50から、初期体積率、原料投入量および衝撃力分布を取得した予測装置10は、
破砕物理モデル51におけるパラメータを設定し(S331)、設定したパラメータを用いて、各破砕条件における予測処理を行う(S332)。そして、予測処理を行った結果をパラメータ決定装置50に送信する(S333)。
【0047】
予測装置10から予測結果を取得したパラメータ決定装置50は、予測装置10の予測結果と、粒度分布計測装置30から取得した計測結果とを比較する(S322)。そして、予測装置10の予測結果と粒度分布計測装置30の計測結果との差が最小となるように、予測装置10の予測処理に用いる破砕物理モデル51のパラメータを決定する。複数の破砕条件が設定されている場合は、各破砕条件における予測結果と計測結果との差が総合的に最小になるように破砕物理モデル51のパラメータを決定する。具体的には、破砕物理モデル51に用いられるパラメータa、c、p、qの値を決定する。
【0048】
パラメータ決定装置50は、予測装置10の予測結果と粒度分布計測装置30の計測結果との差が最小でなければ、破砕物理モデル51のパラメータを変更して予測装置10に予測処理を実行させる(S324)。予測装置10はパラメータ決定装置50の指示に基づき、変更後のパラメータを用いて予測処理を行い(S332)、予測結果をパラメータ決定装置50に送信する(S333)。パラメータ決定装置50は、変更後のパラメータを用いた予測処理の予測結果と粒度分布計測装置30による計測結果とを比較し(S322)、その差が最小であるか否かを判定する(S323)。そして、パラメータ決定装置50と予測装置10との間でこれらのステップ(S322、S323、S324、S331、S332)を繰り返す。パラメータ決定装置50は、予測装置10による予測結果と、粒度分布計測装置30による計測結果との差が最小となるパラメータを破砕物理モデル51のパラメータとして決定する(S325)。予測装置10による予測結果と粒度分布計測装置30による計測結果との差を最小する方法に、最小二乗法を用いてもよい。
【0049】
図14に、図12に示した計測結果と、予測装置10による予測結果との例を示す。図14の1402は、階級Sにおける各破砕条件下の計測結果と予測結果とを並べたものである。図14の1403は、階級Mにおける各破砕条件下の計測結果と予測結果とを並べたものである。図14の1404は、階級Lにおける各破砕条件下の計測結果と予測結果とを並べたものである。図14に示すように、予測装置10による予測結果が、粒度分布計測装置30による計測結果とほぼ一致するときの破砕物理モデル51のパラメータを予測装置10による予測処理に用いるパラメータとして決定する。
【0050】
〔破砕条件決定処理〕
次に、図15および図16を参照して、破砕条件決定システム1において、製品の製造するときの破砕条件を決定する処理について説明する。図15は、破砕条件決定システム1における処理の流れを示すシーケンス図である。図15に示すように、破砕条件を決定する場合、まず、破砕条件決定装置40にて破砕条件を設定する(S421)。そして、設定した破砕条件をボールミルシミュレーション装置20に送信する。ボールミルシミュレーション装置20は、受け付けた破砕条件で(S401)、ボールミルシミュレーションを実行する(S402)。そして、シミュレーションの結果、導出された衝撃力分布を予測装置10に送信する(S402)。予測装置10は、ボールミルシミュレーション装置20から取得した衝撃力分布を用いて、予測処理を行う(S411)。そして、予測結果を破砕条件決定装置40に出力する(S412)。
【0051】
図16に予測結果の例を示す。図16の1601は、階級Tにおける体積率(%)の時間的変化(秒)を示す。1602は、階級Sにおける体積率(%)の時間的変化(秒)を示す。1603は、階級Mにおける体積率(%)の時間的変化(秒)を示す。1604は、階級Lにおける体積率(%)の時間的変化(秒)を示す。
【0052】
予測装置10から予測結果を取得した破砕条件決定装置40は、予測結果が所望の条件を満たすか否かを判定する(S422)。所望の条件を満たしていなければ(S422でNO)、破砕条件を変更し(S423)、変更後の破砕条件でボールミルシミュレーションを実行するよう、ボールミルシミュレーション装置20に指示する。変更後の破砕条件を受け付けたボールミルシミュレーション装置20は、ステップS401~S403の処理を行い、導出した衝撃力分布を予測装置10に送信する。衝撃力分布を取得した予測装置10は、変更後の衝撃力分布を用いて予測処理を行い(S411)、予測結果を破砕条件決定装置40に送信する(S412)。このように、予測結果が所望の条件を満たすまでステップS401~S403、S411、S412の処理を繰り返す。所望の条件としては、例えば、原料の破砕後の体積率が、階級Sの体積率が最大で階級Tの体積率が最小となるような体積率であることが挙げられる。
【0053】
そして、ステップ422で破砕条件決定装置40が、予測結果が所望の条件を満たすと判定した場合(S422でYES)、そのときの破砕条件を製品の製造における破砕条件として決定する(S424)。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る予測装置10は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測部14と、予測された原料の粒度の変化を出力する出力部15とを備える。より詳細には、予測装置10は、原料の粒度を複数の階級に分けたとき、衝撃力を用いて、原料が砕かれて当該原料の粒度の階級が遷移する速度を規定する速度係数を算出する算出部13を備える。そして、予測部14は、算出部13が算出した速度係数と、原料における複数の階級それぞれが占める割合を示す体積率とから、原料の粒度の変化として、体積率の時間的変化を予測する。
【0055】
これにより、算出部13は、ボールミルにおけるボール同士の衝突に伴う衝撃力を要素として用いて、原料が砕かれたときに原料の大きさが階級間を遷移する速度を規定する速度係数を算出する。そして、予測部14は、この速度係数を用いて、各階級における原料の大きさが占める割合である体積率の変化を求める。よって、ボール同士の衝突による衝撃力を用いて、ボールミルにより原料が砕かれるときの体積率の変化を予測することができる。衝撃力は、エネルギーと異なり、ボールが実際に与える、または受ける力であるので、このような衝撃力を要素とすることにより、エネルギーを要素とするよりも正確に体積率の変化を予測することができる。
【0056】
〔変形例1〕
図17に示すように、予測装置10は、判定部16を含むものであってもよい。判定部16は、予測部14が予測した結果が、ユーザの所望の体積率となるか否かを判定する。判定部16を含むことにより、予測部14により予測された結果が、ユーザの所望の体積率となっているか否かを判定することできる。
【0057】
予測部14が予測する体積率は、ボールミルシミュレーション装置20により導出される衝撃力分布により変わる。そして、衝撃力分布は、ボールミルシミュレーション装置20に入力される破砕条件(ボールミルの寸法、材質、回転数、ボール径、ボール量、ボール材質)、および原料の量によって変わる。よって、破砕条件および原料の量を調整することにより、予測結果をユーザの所望の体積率とすることができる。
【0058】
〔変形例2〕
図18に示すように、予測装置10は、導出部17を含むものであってもよい。導出部17は、破砕条件および当該破砕条件を用いた場合の体積率の時間的変化の組合せを教師データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、予測部14が予測した予測結果から、ユーザの所望の体積率となるような破砕条件(所望条件)を導出する。そして、導出した破砕条件を、出力部15を介して出力する。
【0059】
導出部17を備えることにより、ユーザに対し、ユーザ所望の体積率となる破砕条件を容易に提示することができる。
【0060】
〔ソフトウェアによる実現例〕
予測装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に、算出部13、予測部14、判定部16、導出部17)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0061】
この場合、前記装置は、前記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前記プログラムを実行することにより、前記実施形態で説明した各機能が実現される。
【0062】
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0063】
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0064】
また、前記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0065】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る予測装置は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測部と、予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力部と、を備える。
【0066】
前記の構成によれば、ボール同士の衝突による衝撃力を用いて、ボールミルにより原料が砕かれるときの体積率の変化を予測する。衝撃力は、エネルギーと異なり、ボールが実際に与える、または受ける力であるので、このような衝撃力を要素とすることにより、エネルギーを要素とするよりも正確に体積率の変化を予測することができる。
【0067】
本開示の態様2に係る予測装置は、前記態様1において、前記原料の前記粒度を複数の階級に分けたとき、前記衝撃力を用いて、前記原料が砕かれて当該原料の粒度の前記階級が遷移する速度を規定する速度係数を算出する算出部を備え、前記予測部は、前記速度係数と、前記原料における前記複数の階級それぞれが占める割合を示す体積率とから、前記原料の粒度の変化として、前記体積率の時間的変化を予測する。
【0068】
前記の構成によれば、ボールミルにおけるボール同士の衝突に伴う衝撃力を用いて、原料が砕かれたときに原料の大きさが階級間を遷移する速度を規定する速度係数を算出する。そして、この速度係数を用いて、各階級における原料の大きさが占める割合である体積率の変化を求める。よって、ボール同士の衝突による衝撃力を用いて、ボールミルにより原料が砕かれるときの体積率の変化を予測することができる。
【0069】
本開示の態様3に係る予測装置は、前記態様2において、前記算出部は、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごとに前記速度係数を算出し、前記予測部は、前記複数の階級それぞれについて、前記体積率の変化を予測する。
【0070】
前記の構成によれば、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごとに速度係数を算出するので、複数の階級それぞれについて、正確に体積率の変化を予測することができる。
【0071】
本開示の態様4に係る予測装置は、前記態様2または3において、前記予測部は、前記複数の階級全てについて、微小時間間隔で、前記体積率の変化量と微小時間経過後の前記体積率とを演算することにより、前記体積率の時間的変化を予測する。
【0072】
前記の構成によれば、階級ごとに、正確に体積率の時間的変化を予測することができる。
【0073】
本開示の態様5に係る予測装置は、前記態様2~4の何れかにおいて、前記算出部は、以下に示す式(1)を用いて、遷移前の階級と遷移後の階級との組み合わせごと前記速度係数を算出し、
【0074】
【数3】
【0075】
ここで、kは、速度係数、aおよびcはパラメータであり、Vslurryは、原料および溶媒の合計量を示すスラリー量であり、fiは、衝撃力を複数の階級に分けたときにおける階級がiのときの衝突頻度であり、Fcollision,iは、階級がiのときの衝撃力であり、Ffractureは、原料粒子径に基づく破砕強度であり、before→afterは、階級の遷移を示し、前記予測部は、前記複数の階級それぞれについて、或る階級を注目階級としたとき、〔〔(注目階級に遷移する前の階級から注目階級への遷移の速度係数)×(注目階級に遷移する前の階級の体積率)〕の遷移の組合せの和〕-〔(注目階級から他の階級への遷移の速度係数の遷移の組合せの和)×(注目階級の体積率)〕で示す式により得られる注目階級の体積率の微小時間ごとの変化から、前記複数の階級それぞれの体積率の時間的変化を予測する。
【0076】
本開示の態様6に係る予測装置は、前記態様2~5の何れかにおいて、前記ボールミルの寸法、材質、回転数、ボール径、ボール量、ボール材質および原料の量を条件として導出された前記衝撃力を用いて前記予測部が予測した前記体積率の時間的変化が、所望の体積率となるか否かを判定する判定部を備える。
【0077】
前記の構成によれば、設定された条件により所望の体積率となるか否かを判定できる。
【0078】
本開示の態様7に係る予測装置は、前記態様2~6の何れかにおいて、前記条件および当該条件を用いた場合の前記体積率の時間的変化の組合せを教師データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、所望の体積率となる所望条件を導出する導出部を備える。
【0079】
前記の構成によれば、所望の体積率の時間的変化となる条件を導出できる。
【0080】
本開示の態様8に係る予測装置は、前記態様2~7の何れかにおいて、前記複数の階級の1つは、体積率を最大化すべき粒度の範囲に設定されている。
【0081】
前記の構成によれば、体積率を最大化すべき粒度の範囲に階級の1つを設定するので、予測の結果が所望するものとなっているか否かをユーザが容易に認識できる。
【0082】
本開示の態様9に係る予測方法は、ボールミル使用時のボールの衝突により発生する衝撃力に基づき、前記ボールミルにより破砕される原料の粒度の変化を予測する予測ステップと、予測された前記原料の前記粒度の変化を出力する出力ステップと、を含む。
【0083】
本開示の各態様に係る予測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記予測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記予測装置をコンピュータにて実現させる予測装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【0084】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0085】
1 破砕条件決定システム
10 予測装置
11 第1取得部
12 第2取得部
13 算出部
14 予測部
15 出力部
16 判定部
17 導出部
19 スラリー量取得部
20 ボールミルシミュレーション装置
21 破砕条件受付部
22 シミュレーション部
30 粒度分布計測装置
40 破砕条件決定装置
50 パラメータ決定装置
51 破砕物理モデル
52 物質収支モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18