(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079266
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20240604BHJP
A61N 1/39 20060101ALI20240604BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B5/287 300
A61N1/39
A61M25/00 530
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192111
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 純也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰太
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】小塚 拓真
(72)【発明者】
【氏名】白川 泰裕
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
4C267
【Fターム(参考)】
4C053JJ13
4C053JJ23
4C053JJ32
4C127AA02
4C127BB05
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB26
4C267BB27
4C267BB40
4C267BB42
4C267CC19
4C267GG07
4C267GG22
4C267GG23
4C267HH01
(57)【要約】
【課題】体内管腔内に留置した電極を留置箇所からズレにくく好適に保持すること。
【解決手段】体内管腔に挿入されるカテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの表面に設けられた複数の電極部と、カテーテルシャフトに設けられ、カテーテルシャフトの径方向外方の体内管腔の内壁に当接して、カテーテルシャフトを長手方向に移動可能な状態から移動不能な状態に規制する移動規制部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内管腔に挿入されるカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの表面に設けられた複数の電極部と、
前記カテーテルシャフトに設けられ、前記カテーテルシャフトの径方向外方の前記体内管腔の内壁に当接して、前記カテーテルシャフトを長手方向に移動可能な状態から移動不能な状態に規制する移動規制部と、
を有する、
電極カテーテル。
【請求項2】
前記移動規制部は、前記カテーテルシャフトの径方向外方に拡張して、前記体内管腔の内壁に当接する、
請求項1記載の電極カテーテル。
【請求項3】
前記移動規制部は、拡縮可能なバルーンである、
請求項2記載の電極カテーテル。
【請求項4】
前記カテーテルシャフトは、前記移動規制部より前記カテーテルシャフトの先端部側に、前記カテーテルシャフト内外を連通し、薬剤を吐出可能な孔を有する、
請求項3記載の電極カテーテル。
【請求項5】
前記移動規制部は、前記複数の電極部よりも前記先端部側に設けられている、
請求項4記載の電極カテーテル。
【請求項6】
前記電極部は、前記移動規制部より前記先端部側に設けられている、
請求項4記載の電極カテーテル。
【請求項7】
前記移動規制部は、前記カテーテルシャフトに複数設けられ、
前記カテーテルシャフトには、複数の前記移動規制部の間に、前記カテーテルシャフトの外部に薬剤を注入する注入孔が設けられている、
請求項4記載の電極カテーテル。
【請求項8】
前記カテーテルシャフト内部には、前記カテーテルシャフトの延在方向に沿って前記バルーンへの液体を流す内腔部と、前記電極部に接続される配線部とが夫々配設されている、 請求項3記載の電極カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極カテーテルは、先端部に金属製のリング状の電極が配されている。電極カテーテルは、経皮的に血管を通して心臓の内部まで挿入されることにより、心腔内に、電極が留置されて、心臓電気生理学的検査(EPS)において心内心電図を取得したり、電気エネルギーが印加されたりする。
【0003】
電極カテーテルにより心電図を取得する場合、12誘導心電図に比べて、より詳細な心電図を取得できるメリットが有る。
電極カテーテルを用いて心臓に電極を留置する際には、心腔内に挿入された電極カテーテルの先端(遠位端ともいう)の向きを、体外に配置される電極カテーテルの後端(近端または手元側ともいう、)に装着された操作部を操作して変化させる必要である。
【0004】
特に、電極を心腔内において冠状静脈洞(CS:Coronary Sinus)に留置する場合、電極カテーテルの冠状静脈洞への挿入が困難な場合があるので、ガイドワイヤを用いて、電極カテーテルの遠位端を変化させて電極カテーテルを冠状静脈洞に挿入するよう案内する。そして、ガイドワイヤが引き抜かれることにより、電極カテーテルは血管の形状に応じた形状に変形し、電極を所定の位置に留置する。このように留置した電極を介して電位を測定可能にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガイドワイヤを用いて、電極カテーテルの電極を所定の位置に留置する場合でも、心臓の拍動等により、電極カテーテル自体がズレる場合がある。この場合、電極カテーテルとともに電極の留置位置がズレるので、再度ガイドワイヤを挿入して電極カテーテルを操作して電極を所定の位置に留置し直す必要があるという問題がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、体内管腔に留置した電極を留置箇所からズレにくく好適に保持する電極カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電極カテーテルは、
体内管腔に挿入されるカテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの表面に設けられた複数の電極部と、
前記カテーテルシャフトに設けられ、前記カテーテルシャフトの径方向外方の前記体内管腔の内壁に当接して、前記カテーテルシャフトを長手方向に移動可能な状態から移動不能な状態に規制する移動規制部と、
を有する構成を採る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体内管腔に留置した電極を留置箇所からズレにくく好適に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの要部構成を示す先端部の側面図。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの留置状態の説明に供する図。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例1の要部構成を示す先端部の側面図。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例2の要部構成を示す先端部の側面図。
【
図7】本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例2の留置状態の説明に供する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの要部構成を示す先端部の側面図であり、
図2は、
図1のA-A線断面図である。
【0013】
電極カテーテル100は、ハブ10と、カテーテルシャフト20と、移動規制部としてのバルーン40と、電極群50とを有する。
図1に示す電極カテーテル100では、カテーテルシャフト20の先端部分30に電極群50及びバルーン40が設けられている。
【0014】
電極カテーテル100では、例えば、先端部分30を含むカテーテルシャフト20自体が、患者の足の付け根或いは鎖骨下の静脈(大腿静脈或いは鎖骨下静脈から経皮的)に挿入される。そして、カテーテルシャフト20の先端部分30は、患者の心臓内、例えば心房、心室や冠状脈洞に到り、配置されて電極群50を所定の箇所に留置する。なお、体内管腔は、例えば、血管、冠状脈洞、下大静脈等の電極カテーテル100を設置可能な体内の管腔であれば、どこでもよい。
【0015】
ハブ10には、リード線を内包するチューブ15を介して接続されたコネクタ16と、保護チューブ17を介して接続され、ガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤポート18と、バルーンを拡張するために用いられるバルーン拡張用ポート19とが設けられている。
【0016】
カテーテルシャフト20は、可撓性を有し、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等からなる樹脂製チューブである。カテーテルシャフト20は、静脈、心房、心室や冠状脈洞等の体内管腔(特に血管)に挿入され、体内管腔の形状に対応して湾曲自在である。カテーテルシャフト20は、シャフト本体内部に、カテーテルシャフト20の長手方向に沿って延在する複数のルーメンを有する。
【0017】
カテーテルシャフト20は、電極群50の電極51に夫々接続される導電線であるリード線が配設されるリード線用ルーメン26と、ガイドワイヤを通すガイドワイヤルーメン28と、バルーン拡張用ルーメン29とを有する。
【0018】
ガイドワイヤルーメン28は、カテーテルシャフト20において軸と直交する断面中央部分に形成されている。カテーテルシャフト20には、ガイドワイヤルーメン28を挟むように、リード線用ルーメン26とバルーン拡張用ルーメン29が配設されている。
【0019】
カテーテルシャフト20は、先端で開口する孔23を有する。孔23は、ガイドワイヤルーメン28と連続して設けられ、カテーテルシャフト20の内外を挿通し、ガイドワイヤポート18に連続する。ガイドワイヤポート18から挿入されたガイドワイヤ(図示省略)がガイドワイヤルーメン28を通して孔23から突出してガイドとして機能し、カテーテルシャフト20を所望の位置に移動させるよう案内できる。なお、この孔23は、ガイドワイヤを用いて電極カテーテル100(具体的には、電極51)を所定の位置に留置した後、ガイドワイヤを引き抜いて、ガイドワイヤポート18から投入する薬剤の注入孔として用いてもよい。
【0020】
リード線用ルーメン(配線部)26は、リード線を通し、リード線は電極51と、ハブ10のコネクタ16とを接続する。なお、カテーテルシャフト20では、リード線はリード線用ルーメン26に通して電極51に接続された構成にしているが、これに限らず、リード線は、カテーテルシャフト20のシャフト本体に埋設された構成にしてもよい。
【0021】
バルーン拡張用ルーメン(内腔部)29は、バルーン40と、ハブ10のバルーン拡張用ポート19とを連通する。バルーン拡張用ルーメン29は、バルーン拡張用ポート19からバルーン40内部への加圧流体としての生理食塩水等を注入してバルーン40を拡張可能にする。
【0022】
電極群50は、カテーテルシャフト20の先端部分30の表面に、長手方向で所定間隔を空けて配置された複数の電極51を有する。
【0023】
電極51はリング状であり、例えば、EPSに用いられ、留置された箇所の電位を測定可能である。
【0024】
電極51の表面は、カテーテルシャフト20の先端部分30の表面に先端部分30の表面と面一となるように配置されてもよい。
【0025】
電極群50がカテーテルシャフト20において、配設される箇所はどの位置でもよい。また、電極51の数やその間隔をどのように設けても良い。複数の電極51の夫々は、例えば、同幅(カテーテルシャフト20の延在方向の長さ)に形成され、また、隣り合う電極51同士の間には、所定の間隔(電極幅と同じ長さでもよい)が設けられている。また、電極51は、例えば、ステンレス、金や白金の金属等で構成される。
【0026】
電極51の夫々には、カテーテルシャフト20内のリード線用ルーメン26内で延在するリード線(図示省略)が接続されている。リード線は、上述したようにハブ10の内部を経由して、例えば、ポリグラフ検査装置に接続されるコネクタ16に接続されている。なお、本明細書のポリグラフ検査装置40は、心電計或いは心電図検査装置と読み換えてもよい。
【0027】
バルーン40は、カテーテルシャフト20の表面から径方向に張り出すように拡張でき拡縮可能に設けられている。バルーン40は
図1では拡張前の状態を示す。
【0028】
バルーン40は、カテーテルシャフト20の径方向外方(放射方向)に拡張し、電極カテーテル100が挿入される血管の内壁に当接して、カテーテルシャフト20(バルーン40が配設された部位に相当)を長手方向の移動を規制する移動規制部として機能する。移動規制部は、カテーテルシャフト20を囲む血管(体内管腔)の内壁に当接してカテーテルシャフト20ひいては電極群50の長手方向の移動を抑制して、これらを位置決めする。
【0029】
また、バルーン40は、拡張した際に拡径し、全周に亘って血管の内壁に当接する構成としてもよい。この場合、カテーテルシャフト20が挿入された体内管腔において、電極群50が配置されている内部と、バルーン40を挟み逆側の内部とを仕切ることができる。
【0030】
バルーン40は、
図1に示すように、心腔内に挿入される際、通常時では、縮径した状態(しぼんだ状態或いは折り畳まれた状態)となっており、内部に加圧流体としての生理食塩水等を注入することにより拡張(拡径方向に膨張)する(膨らむ)。
【0031】
なお、バルーン40は、折り畳み式のバルーンや、弾性変形して膨縮するバルーンであってもよい。バルーン40は、弾性変形せずに膨らむ袋状体であってもよい。これらバルーンでも、カテーテルシャフト20のバルーン拡張ルーメンを介して内部に加圧流体が注入されて膨張、拡張し径方向に張り出すよう構成可能である。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの留置状態の説明に供する図である。
まず、縮径したバルーン40を有する電極カテーテル100のカテーテルシャフト20の先端部分30を体内管腔内に挿入し、電極群50を所定の位置に留置する。
【0033】
具体的には、電極カテーテル100は、EPSにおいて体内管腔としての冠状静脈洞(CS)の電位を測定する際に、ガイドワイヤを用いて冠状静脈洞(CS)に挿入されて、電極群50は、CS内の所定の位置に留置される。この後ガイドワイヤは引き抜かれる。
【0034】
バルーン拡張ポート19から加圧流体を注入する等することにより、CS内の所定位置まで挿入されたバルーン40は、拡張し、体内管腔の内壁を押圧して拡張して、血管の内壁に当接、カテーテルシャフト20の先端部分30を位置決めする。
このように、バルーン40は、カテーテルシャフト20(詳細には、電極群50の電極51)の体内管腔の延在方向への移動を規制し、位置決めする。これにより、心腔内に留置された電極群50は、留置された位置からの位置ズレが防止される。
【0035】
すなわち、電極カテーテル100の先端のバルーンが、電極群50の留置後、拡張することにより、アンカーとして機能し、一度留置したらカテーテル自体(カテーテルシャフト20、電極群50)の挿入方向のズレを防止する。このように電極カテーテル100によれば、心腔内に留置した電極を、留置箇所からズレることなく好適に保持することができる。
【0036】
バルーン40は、電極群50に対しては、拡張した際でも、電極群50の留置状態を阻害しない位置に配置される。バルーン40は、拡張した際に血管の内周壁に全面的に当接して位置決めされてもよいし、部分的に当接して位置決めされてもよい。バルーン40の拡張時に体内管腔の内周壁に全面的に当接する構成であれば、その位置で体内管腔の内部を仕切ることができる。
【0037】
なお、バルーン40は、移動規制部の一例である。移動規制部は、カテーテルシャフト20が挿入される体内管腔(主に血管)の径方向外方の内壁の部位に当接して、カテーテルシャフト20、ひいては電極群50を、長手方向に移動可能な状態から移動不能な状態に規制するものであればどのように構成されてもよい。
【0038】
例えば、バルーン40に替えた移動規制部として、囲まれる部位を吸引可能な吸引部等を設け、留置された箇所を囲む体内管腔の内壁を吸引する構造としてもよい。すまわち、吸引部が、カテーテルシャフト20の径方向外方の体内管腔の内壁を吸引することで、当該内壁に当接して、カテーテルシャフト20を長手方向に移動可能な状態から移動不能な状態に規制する。これにより、電極カテーテル100は、電極群50の長手方向の移動を規制する。
【0039】
本実施の形態では、バルーン40は電極群50よりも先端部側で、カテーテルシャフト20の先端部分30に設けられている。よって、例えばCS内の所定の位置に配置された電極カテーテル100において、バルーン40の位置よりも血管(冠状静脈洞(CS))の抹消側に、薬剤を注入する場合、拡張したバルーン40よりも抹消側の先端の孔23から薬剤を吐出できる。
【0040】
これにより孔23から吐出された薬剤は、拡張したバルーン40により体内管腔としての冠状静脈洞(CS)の心房側(手元側)への移動が規制され、冠状静脈洞(CS)の抹消側のみ内部に行き渡らせることができる。よって、薬剤の心房側への戻りを無くすことが可能となり、心房側に流れることなく、抹消側にだけ留まらせることができる。
【0041】
また、電極カテーテル100では、バルーン40は、カテーテルシャフト20の先端部分30で拡張してカテーテルシャフト20を位置決めして電極51を留置する。これにより、例えば、電極51を留置したCSの先端の枝分かれした先の細い血管内に別のカテーテルを配置する場合、バルーン40をアンカーとしてCS内に固定したカテーテルシャフト20のガイドワイヤルーメンに、別のカテーテルを通して先の血管内に留置できる。つまり、カテーテルシャフト20に設けられた電極51を所定の位置に留置しながらカテーテルシャフト20が留置された血管よりも先の血管内に別のカテーテルを留置できる。
【0042】
なお、電極カテーテル100においてバルーン(移動規制部)40は、電極群50よりも先端側に配置された構成としたが、これに限らない。
【0043】
<変形例1>
図4は、本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例1の要部構成を示す先端部の側面図である。
図4に示す変形例1としての電極カテーテル100Aは、電極カテーテル100と比較して、バルーン40Aと電極群50Aの位置が異なり、基本的構成及びその機能は同様である。よって、異なる構成要素について説明し、同様の構成については同符号同名称を付して説明は省略する。
【0044】
電極カテーテル100Aは、電極カテーテル100と比較して、カテーテルシャフト20Aの先端部分30Aにおいて、カテーテルシャフト20Aに配設された電極群50Aよりも手元側に設けられた構成である。これにより、電極カテーテル100Aは、バルーン40Aと電極群50Aにより、電極カテーテル100におけるバルーン40と電極群50による同様の効果を奏することができる。加えて、例えば、電極カテーテル100Aが留置されたCS等の体内管腔において、拡張したバルーン40Aよりも先端側の部位において、薬剤等を吐出させた際に、電極分50Aで電位が検出されか否かを測定できる。
【0045】
<変形例2>
図5は、本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例2の要部構成を示す先端部の側面図であり、
図6は、
図5のB-B線断面図である。
【0046】
図5に示す電極カテーテル100Bは、電極カテーテル100の構成において移動規制部としてのバルーンを複数設けるとともに、カテーテルシャフト20Bから体内管腔の一部に薬剤を注入する注入孔60を設けたものであり、それ以外の構成要素及びその機能は同様である。よって、異なる構成要素について説明し、同様の構成については同符号同名称を付して説明は省略する。
【0047】
すなわち、電極カテーテル100Bは、ハブ10Bと、カテーテルシャフト20Bと、移動規制部としての複数のバルーン42、44と、電極群50Bと、注入孔60とを有する。電極カテーテル100Bは、電極カテーテル100と同様に、患者の心臓内、例えば心房、心室や冠状脈洞に配置される。
【0048】
ハブ10Bには、チューブ15を介したコネクタ16、保護チューブを介したガイドワイヤポート18、及びバルーン拡張用ポート19の他に、薬剤注入ポート14が設けられている。
【0049】
カテーテルシャフト20Bは、カテーテルシャフト20と比較して、更なる別のルーメンとして薬剤注入路24を有する。カテーテルシャフト20Bは、シャフト本体内部に、縦断面視中央部のガイドワイヤルーメン28と、その周囲に配設されたリード線用ルーメン26、バルーン拡張用ルーメン29及び薬剤注入路24とを有する。
【0050】
ガイドワイヤルーメン28、リード線用ルーメン26、バルーン拡張用ルーメン29及び薬剤注入路24は、カテーテルシャフト20Bの長手方向に沿って延在する。なお、リード線用ルーメン26、バルーン拡張用ルーメン29及び薬剤注入路24は、周方向で等間隔を空けて配置されている。ガイドワイヤルーメン28は、カテーテルシャフト20Bの先端で開口する孔23に連続する。
【0051】
リード線用ルーメン26は、リード線は電極群50Bの電極51と、ハブ10Bのコネクタ16とを接続する。バルーン拡張用ルーメン29は、バルーン42、44、ハブ10Bのバルーン拡張用ポート19と、を連通する。バルーン拡張用ルーメン29は、バルーン拡張用ポート19からバルーン42、44内部への加圧流体としての生理食塩水等を注入してバルーン42、44を拡張可能にする。なお、バルーン拡張用ルーメン29は、バルーン42、44を個別に加圧流体を注入して、夫々独立して拡張するようにしてもよい。
【0052】
薬剤注入路24は、薬剤注入ポート14と、注入孔60とを接続する。薬剤注入路24は、薬剤注入ポート14から注入された薬剤を通過させて注入孔60に到達させる。
【0053】
電極カテーテル100Bでは、カテーテルシャフト20Bの先端部分30Bにおいて先端に電極群50Bを配設し、電極群50Bよりも手元側に複数のバルーン42、44が所定間隔を空けて設けられている。
【0054】
カテーテルシャフト20Bにおいて、バルーン42、44間の部位には、薬剤をカテーテルシャフト20内から外、つまりバルーン42、44間の領域に注入する注入孔60が設けられている。
【0055】
注入孔60は、カテーテルシャフト20Bの表面を貫通して設けられ、カテーテルシャフト20の内部の薬剤注入路24に連続する。注入孔60は、手元側の薬剤注入ポート14から注入される薬剤を表面からカテーテルシャフト20Bの外部に注入する。
【0056】
バルーン42、44は、それぞれバルーン40と同様にカテーテルシャフト20Bに配設され、それぞれ独立して拡張自在である。
【0057】
図7は、本発明の実施の形態に係る電極カテーテルの変形例2の留置状態の説明に供する図である。
図7に示すように電極カテーテル100BがCS内に挿入されて、バルーン42、44が拡張する。具体的には、CSにおいて部分的な治療を行う場合、電極カテーテル100Bを心腔内に挿入して、その先端部30BをCS内に挿入し、ターゲットとなる治療部位の前後に、バルーン42、44が位置するように電極カテーテル100Bを配置する。
【0058】
次いで、バルーン42、44を拡張して、治療部位の前後を閉鎖し、注入孔60から薬剤を注入する。これによりバルーン42、44間で閉塞される空間に部分的に薬剤Yを注入できる。
【0059】
このように、電極カテーテル100Bは、挿入された血管内で、複数のバルーン42、44を拡張させて、電極群50の長手方向のずれを防止し、電極群50の位置決めを行うことができる。また、この構成では、
図7に示すようにバルーン42、44を拡張して電極群50を所定の位置からずれることなく所定の位置に留置できるとともに、注入孔60を介して、バルーン42、44間に薬剤Yを注入できる。
【0060】
また、電極群50をCS内に留置した状態で、バルーン42、44間の部位に薬剤(造影剤)を注入すれば、CSの電位を計測可能な状態で、CSにおいて部分的にまた、バルーン42よりも先端側に、孔23を介して別の薬剤をいれたときの電位変化を観察できるので、その別の薬剤の効果を確認することができる。
【0061】
なお、電極カテーテル100Bにおいて、カテーテルシャフト20、20A、20Bにおける移動規制部としてのバルーン40、42、44及び電極群50、50Aの数はいくつ設けられてもよい。
【0062】
また、本実施の形態の各電極カテーテル100、100A、100Bは、電極51から、電位差が生じるように電気エネルギーを供給するように構成して、除細動に用いられてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る電極カテーテルは、留置箇所から電極がズレにくく好適に保持できる効果を有し、EPSシステムに用いるものとして有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 ハブ
14 外部ケーブル
16 コネクタ
20、20A、20B カテーテルシャフト
23 孔
24 薬剤注入路
26 リード線用ルーメン(配線部)
28 ガイドワイヤルーメン
29 バルーン拡張用ルーメン(内腔部)
30、30A、30B 先端部分
40、40A、42、44 バルーン(移動規制部)
50、50A、50B 電極群
51 電極(電極部)
60 注入孔
100、100A、100B カテーテル