IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-建物の基礎構造 図1
  • 特開-建物の基礎構造 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024079271
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20240604BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20240604BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20240604BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/42 A
E02D27/32 A
E04B1/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192119
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 直人
(72)【発明者】
【氏名】河登 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046DA05
2D046DA33
(57)【要約】
【課題】解体時に廃棄物を発生し難く再利用しやすい建物の基礎構造を提供する。
【解決手段】建物の基礎構造は、枠状の鉄骨枠材22と、鉄骨枠材22の内側に配置され端部が鉄骨枠材22に接合されると共に上部架構の柱12の柱脚部12Aが接合された鉄骨接合材24と、を有し、地中に埋設された鉄骨基礎(基礎20)と、鉄骨基礎に載置または固定され、土重量を受ける面状部材30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の鉄骨枠材と、前記鉄骨枠材の内側に配置され端部が前記鉄骨枠材に接合されると共に上部架構の柱の柱脚部が接合された鉄骨接合材と、を有し、地中に埋設された鉄骨基礎と、
前記鉄骨基礎に載置または固定され、土重量を受ける面状部材と、
を備えた建物の基礎構造。
【請求項2】
前記上部架構は前記柱及び梁の接合部がピン接合である、
請求項1に記載の建物の基礎構造。
【請求項3】
前記柱の柱脚部と前記鉄骨接合材との接合部はリブプレートで補強されている、
請求項1または2に記載の建物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建造物の鉄骨柱の基礎を、コンクリートを用いて形成した構成が示されている。この基礎構造では、鉄骨柱の下端部が、コンクリート基礎中に埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-162381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された基礎構造ではコンクリートを用いているため、建造物を解体して鉄骨を再利用する場合は、鉄骨を埋設しているコンクリートを斫り取る必要がある。また、斫り取ったコンクリートは再利用し難いため、産業廃棄物が発生する。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、解体時に廃棄物を発生し難く再利用しやすい建物の基礎構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の建物の基礎構造は、枠状の鉄骨枠材と、前記鉄骨枠材の内側に配置され端部が前記鉄骨枠材に接合されると共に上部架構の柱の柱脚部が接合された鉄骨接合材と、を有し、地中に埋設された鉄骨基礎と、前記鉄骨基礎に載置または固定され、土重量を受ける面状部材と、を備える。
【0007】
請求項1の建物の基礎構造では、鉄骨基礎を構成する鉄骨枠材の内側に、鉄骨接合材が接合されている。そして、この鉄骨接合材には柱の柱脚部が接合されている。また、鉄骨基礎は、面状部材が載置または固定された状態で地中に埋設されている。
【0008】
これにより、面状部材に作用する土荷重が、鉄骨基礎にも作用する。このため、柱の柱脚部に作用する曲げモーメントによって鉄骨基礎が浮き上がることが抑制される。
【0009】
また、柱の柱脚部が接合された鉄骨接合材の端部は鉄骨枠材に接合されているので、柱脚部に曲げモーメントが作用しても、柱の周囲に張り出した鉄骨枠材が地盤を突っ張って、鉄骨基礎が回転し難い。このため、曲げモーメントに対する抵抗力が強い。
【0010】
このように、この建物の基礎構造では、コンクリートを用いなくても、基礎の浮き上がりを抑制できる。コンクリートを用いずに鉄骨材と土との基礎構造とすることで、建物を解体する際に、鉄骨基礎からコンクリートを斫り取る必要がなく、鉄骨基礎を再利用しやすい。また、産業廃棄物としてのコンクリートが発生しない。
【0011】
請求項2の建物の基礎構造は、請求項1に記載の建物の基礎構造において、前記上部架構は前記柱及び梁の接合部がピン接合である。
【0012】
請求項2の建物の基礎構造では、上部架構における柱及び梁の接合部がピン接合である。このため、上部架構に水平力が作用した際、曲げモーメントが柱頭部に作用せず、柱脚部に作用し易い。このため、柱及び梁の接合部が剛接合の場合と比較して、柱脚部に大きな曲げモーメントが作用し易い。
【0013】
請求項2の建物の基礎構造では、請求項1の基礎構造と同様に、柱脚部に作用する曲げモーメントに対して、柱の周囲に張り出した鉄骨枠材が抵抗できるため、比較的大きな曲げモーメントに対して抵抗できる。
【0014】
請求項3の建物の基礎構造は、請求項1または2に記載の建物の基礎構造において、前記柱の柱脚部と前記鉄骨接合材との接合部はリブプレートで補強されている。
【0015】
請求項3の建物の基礎構造では、柱の柱脚部と鉄骨接合材との接合部がリブプレートで補強されている。これにより柱脚部に作用する曲げモーメントに対する抵抗力がさらに高められている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、解体時に廃棄物を発生し難く再利用しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る建物の基礎構造の概略を示す立面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る建物の基礎構造を示す平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る建物の基礎構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0019】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0021】
<建物>
図1には、本発明の実施形態に係る建物10及び建物10の基礎構造の概要が示されている。この図に示す様に、建物10は、複数の柱12、柱12に支持された梁14及び梁14に架け渡された屋根16を備えて形成されている。
【0022】
建物10は、例えばカーポートであり、壁体を備えていない。また、備えていたとしても軽微な構造である。このため、建物10は、住宅や事務所建築などと比較して、重量が非常に軽い。
【0023】
柱12は角型鋼管で形成され、梁14はH形鋼で形成されている。これらの柱12と梁14との接合部J1はピン接合である。柱12の柱脚部12Aは地盤Gに埋設され、地盤Gの内部に、柱12の柱脚部12Aが接合された基礎20が埋設されている。
【0024】
<建物の基礎構造>
建物10の基礎構造は、鉄骨基礎である基礎20及び面状部材30を含んで構成されている。図2(A)、(B)に示す様に、基礎20は、鉄骨枠材22、鉄骨接合材24及び補助材26を備えている。
【0025】
(鉄骨枠材)
鉄骨枠材22は、図2(A)に示すように、X方向に沿う2本の部材22X及びY方向に沿う2本の部材22Yによって、上面視で略正方形の矩形の枠状に形成されている。部材22X及び22YはそれぞれH形鋼によって形成され、部材22Xの両端部のそれぞれに部材22Yの端部が接合されている。
【0026】
(鉄骨接合材)
鉄骨接合材24は、鉄骨枠材22の内側に配置され、端部が鉄骨枠材22に接合されて、略十字形に形成されている。具体的には、鉄骨接合材24は、X方向に沿う2本の部材24X及びY方向に沿う1本の部材24Yを備えている。
【0027】
部材24Yの両端部は、鉄骨枠材22の部材22XにおけるX方向中央に接合されている。2本の部材24Xそれぞれにおける一方の端部は、部材24YにおけるY方向中央に接合されている。つまり、部材24X及び部材24Yの接合部においては、部材24Yが通し材である。2本の部材24Xそれぞれにおける他方の端部は、鉄骨枠材22の部材22YにおけるY方向中央に接合されている。
【0028】
なお、部材22Xと部材24Yとの接合、部材22Yと部材24Xとの接合には、ガセットプレートGP及びスプライスプレートSPが併用されている。一方、部材22Xと部材22Yとの接合には、ガセットプレートGPが用いられている。
【0029】
(補助材)
補助材26は、部材22Yと部材24Yとを連結する部材であり、アングル材によって形成されている。補助材26は、X方向に沿って配置され、両端部が、部材22Y及び部材24Yに接合されている。また、補助材26は、部材22X、24X、22Y及び24Yによって形成される矩形状の構面におけるY方向中央部に配置されている。
【0030】
補助材26は、一方のフランジが、部材22Y及び部材24Yのフランジの面内方向に沿うように配置され、他方のフランジが、上方に突出するように配置されている。また、補助材26における一方のフランジの下面は、部材22Y及び部材24Yの下フランジの下面と略面一に配置されている。
【0031】
なお、補助材26の部材22Y及び部材24Yに対する接合方法は任意であり、フラットバーなどの副資材を介して接合してもよいし溶接によって接合してもよい。
【0032】
(柱の接合構造)
部材24Yの中央部、すなわち鉄骨接合材24の中央部であって基礎20の中央部の上面には、柱12の柱脚部12Aが溶接によって固定されている。また、柱12の柱脚部12Aと鉄骨接合材24(部材24Y)との接合部は、リブプレート40で補強されている。
【0033】
リブプレート40は、ベース部42及び補強部44を備えている。ベース部42は、部材24X及び24Yの上面に配置されて部材24X及び24Yにボルト接合される部材である。補強部44は、下端部がベース部42に溶接され側面が柱脚部12Aに溶接された部材である。
【0034】
リブプレート40は、それぞれの補強部44が、上下方向に沿い、X方向又はY方向に沿うように、柱脚部12Aの4つの側面にそれぞれ配置されている。
【0035】
面状部材30は、図2(B)に示すように、基礎20の下方に配置され、かつ、基礎20に固定された鋼製のメッシュ材である。面状部材30は、直径が約6mm程度の鋼製ワイヤを100mm程度の間隔で格子状に配置して形成されている。この直径及び間隔は、地盤Gを構成する土粒子、砂礫粒子の大きさや硬度等に応じて適宜変更できる。
【0036】
面状部材30は、鉄骨枠材22、鉄骨接合材24及び補助材26の下面に接合されている。面状部材30を鉄骨枠材22、鉄骨接合材24及び補助材26の下面に接合する方法としては、ボルト及びワッシャを用いる。また、溶接を用いてもよい。
【0037】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る建物の基礎構造では、図2(A)に示すように、鉄骨基礎である基礎20を構成する鉄骨枠材22の内側に、鉄骨接合材24が接合されている。そして、この鉄骨接合材24には柱12の柱脚部12Aが接合されている。また、図2(B)に示す様に、基礎20は、面状部材30が固定された状態で地盤Gに埋設されている。
【0038】
これにより、図2(A)に示す部材22X、24X、22Y及び24Yによって形成される矩形状の構面内において、面状部材30の上面に作用する土荷重(土重量)が、基礎20にも作用する。このため、柱12の柱脚部12Aに作用する曲げモーメントによって基礎20が浮き上がることが抑制される。
【0039】
また、柱12の柱脚部12Aが接合された鉄骨接合材24である部材24Yの端部は鉄骨枠材22に接合されているので、柱脚部12Aに曲げモーメントが作用しても、柱12の周囲に張り出した鉄骨枠材22が地盤を突っ張って、基礎20が回転し難い。このため、曲げモーメントに対する抵抗力が強い。
【0040】
このように、この建物の基礎構造では、コンクリートを用いなくても、基礎20の浮き上がりを抑制できる。コンクリートを用いずに鉄骨材と土との基礎構造とすることで、建物10を解体する際に、基礎20からコンクリートを斫り取る必要がなく、基礎20を再利用しやすい。また、産業廃棄物としてのコンクリートが発生しない。
【0041】
また、本発明の実施形態に係る建物の基礎構造では、図1に示す上部架構における柱12及び梁14の接合部J1がピン接合である。このため、上部架構に水平力が作用した際、曲げモーメントが柱頭部に作用せず、柱脚部12Aに作用し易い。このため、柱12及び梁14の接合部が剛接合の場合と比較して、柱脚部12Aに大きな曲げモーメントが作用し易い。
【0042】
しかしながら、本発明の構成によると、柱脚部12Aに作用する曲げモーメントに対して、柱12の周囲に張り出した鉄骨枠材22が抵抗できるため、比較的大きな曲げモーメントに対して抵抗できる。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る建物の基礎構造では、柱12の柱脚部12Aと鉄骨接合材24との接合部がリブプレート40で補強されている。これにより柱脚部12Aに作用する曲げモーメントに対する抵抗力がさらに高められている。
【0044】
<変形例>
上記実施形態において、鉄骨接合材24は、X方向に沿う2本の部材24X及びY方向に沿う1本の部材24Yによって略十字形に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0045】
例えば鉄骨接合材は、X方向及びY方向と交わる方向に沿う十字形状に形成してもよい。この場合、一例として、鉄骨接合材の端部は、鉄骨枠材22の角部に接合する。
【0046】
あるいは、2本の部材24Xを省略して、Y方向に沿う部材24Yのみで構成してもよい。このように鉄骨接合材を形成しても、鉄骨枠材22によって柱12の曲げモーメントに抵抗することができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、面状部材30が、鉄骨枠材22及び鉄骨接合材24の下面(下フランジの下面)に接合しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。一例として、面状部材30は、鉄骨枠材22及び鉄骨接合材24の上面(上フランジの上面)に接合または載置してもよい。
【0048】
別の一例として、面状部材30は、鉄骨枠材22及び鉄骨接合材24の下フランジの上面に接合または載置してもよい。この場合、面状部材30は、適宜分割して構成する。
【0049】
さらに別の一例として、面状部材30は、鉄骨枠材22及び鉄骨接合材24の下フランジと上フランジとの中間部分に配置してもよい。この場合、鉄骨枠材22及び鉄骨接合材24のウェブに、面状部材を接合または載置する補助部材を適宜設けることが好ましい。
【0050】
またさらに、各態様において、面状部材30は、鋼製やアルミ製の板材、木製の板材、樹脂と金属のサンドイッチパネル等の各種複合材等を用いて形成してもよい。また、補助材26は本数を増やしてもよいし、適宜省略してもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、建物10の柱12及び梁14の接合部をピン接合としたが本発明の実施形態はこれに限らない。柱12及び梁14は剛接合としてもよいし半剛接合としてもよい。また、場所毎に剛接合とピン接合とを組み合わせてもよい。柱12及び梁14の接合部をこのように接合しても、鉄骨枠材22によって柱12の曲げモーメントに抵抗することができる。
【0052】
また、上記実施形態においては、柱12を角型鋼管で形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らず、円形鋼管やH形鋼で形成してもよい。柱12の形状に応じて、柱脚部12Aやリブプレートの形状も適宜変更できる。
【0053】
また、上記実施形態においては、柱12の柱脚部12Aと鉄骨接合材24との接合部をリブプレート40で補強しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。リブプレート40は、柱脚部12Aにかかる曲げモーメントに応じて適宜設ければよい。
【0054】
例えば柱12及び梁14を剛接合とした場合、柱脚部12Aに作用する曲げモーメントは比較的小さいくなるので、リブプレート40を省略することもできる。このように、本発明は様々な態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0055】
10 建物
12 柱
12A 柱脚部
14 梁
20 基礎(鉄骨基礎)
22 鉄骨枠材
22X 部材(鉄骨枠材)
22Y 部材(鉄骨枠材)
24 鉄骨接合材
24X 部材(鉄骨接合材)
24Y 部材(鉄骨接合材)
30 面状部材
40 リブプレート
図1
図2